(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035699
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】棒状化粧料繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/20 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
A45D40/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140198
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 新
(72)【発明者】
【氏名】春山 陽
(57)【要約】
【課題】棒状化粧料の交換の際にレフィル容器のような廃棄物がなく、棒状化粧料を容易に交換する。
【解決手段】リードホルダ8、イジェクションロッド7、プロペリングロッド6、圧縮スプリング9を備える機構部4とスリーブ1を同期回転可能とし、バレル2とスクリュー3を同期回転可能とし、スリーブ1とバレル2の相対回転により機構部4を繰り出しリードホルダ8が前進限1hに達すると、プロペリングロッド6がスクリュー3と同期回転可能に係合し、スリーブ1とバレル2との同方向へのさらなる相対回転により、プロペリングロッド6及びイジェクションロッド7を圧縮スプリング9を圧縮させながら繰り出し、イジェクションロッド7の棒状部7aをリードホルダ8の芯くわえ部8a内に進入させることにより、芯くわえ部8a内の棒状化粧料Mを押し出し手指を汚さずに吐き出させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料を収容可能なスリーブと、
前記スリーブと相対回転可能に係合するバレルと、
軸線方向に伸縮するバネ部が設けられると共に、前記バネ部より軸線方向後方の内周に雌螺子が設けられ、前記バレルの内部に同期回転可能に配設されたスクリューと、
前記スリーブ及び前記バレルの内部に収容され、前記棒状化粧料を繰り出すための機構部と、を備えた棒状化粧料繰出容器であって、
前記機構部は、
前記棒状化粧料を把持可能な芯くわえ部を備え、前記スリーブに同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合するリードホルダと、
前記リードホルダの内部に配設され軸線方向前方へ延びる棒状部を備え、前記リードホルダに同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合するイジェクションロッドと、
外周に前記雌螺子に螺合する雄螺子を備え、前記イジェクションロッドに同期回転可能且つ軸線方向移動不能に係合するプロペリングロッドと、
前記リードホルダと前記イジェクションロッドとの間に挟まれる圧縮スプリングと、を備え、
前記スリーブに設けられ、前記スリーブと前記バレルとが相対回転されると、前記雌螺子と前記雄螺子の螺合作用により繰り出された前記機構部の前記リードホルダが達する前進限と、
前記プロペリングロッドに設けられ、前記リードホルダが前記前進限に達すると、前記スクリューと同期回転可能に係合する係合部と、
前記スクリューの後部に設けられ、前記プロペリングロッドの前記係合部が前記スクリューに同期回転可能に係合した状態で、前記スリーブと前記バレルとが同方向へさらに相対回転されると、前記バレルの内部に設けられた突起が当接し前記バネ部を圧縮させながら前方へ押し出されるスロープと、を有し、
前記スロープが押し出されることにより前記プロペリングロッド及び前記イジェクションロッドが前記圧縮スプリングを圧縮させながら繰り出され、前記イジェクションロッドの前記棒状部が前記リードホルダの前記芯くわえ部内に進入することを特徴とする棒状化粧料繰出容器。
【請求項2】
前記バレルの前記突起が前記スロープの起端から終端まで当接し移動する際において、前記イジェクションロッドが繰り出される長さは、前記リードホルダの前記芯くわえ部の軸線方向の芯くわえ長さと同等以上であることを特徴とする請求項1記載の棒状化粧料繰出容器。
【請求項3】
前記スロープを前記スクリューの周方向に沿って単数又は複数備え、
前記バレルの前記突起の前記スロープに対する当接が当該スロープの終端を越えると、前記圧縮スプリングの付勢力により、前記バレルの前記突起が前記スロープの起端に移動し前記イジェクションロッドの棒状部が芯くわえ部から退出するまで後退することを特徴とする請求項1又は2記載の棒状化粧料繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状化粧料繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状化粧料を繰り出して使用する棒状化粧料繰出容器にあっては、棒状化粧料が消費され替え時となったら、詰め替え用として例えば別売りされているレフィル容器と交換するものが知られている。このレフィル容器は、近年、廃棄物処理や地球資源の保護の観点から問題となっており、エコロジカルな容器が求められている。
【0003】
レフィル容器を用いないで棒状化粧料を交換するには棒状化粧料のみを交換すれば良いが、特に、芯径の小さい棒状化粧料を芯チャックから取り除くには手間がかかると共に手指も汚れてしまう。
【0004】
以下の特許文献1に記載の固形棒状化粧料容器は、進退可能なネジ棒及びネジ棒と共に進退する中空筒状のチャックガイドを最後端位置に下げ、ネジ棒の上底の上に平板状の芯チャックを入れて軸筒を垂直状に立て、ネジ棒の上底と平板状の芯チャックと中空筒状のチャックガイドで囲まれた空間に、泥状又は練り状の化粧料を充填し、この化粧料が、芯チャックの上に乗るだけでなく、芯チャックの穿孔を通って裏面へと入り込み、その状態で固化することにより、棒状化粧料が装填された状態となっている。
【0005】
そして、この固形棒状化粧料容器では、チャックガイドから突出している棒状化粧料を使い切った後は、チャックガイドから独立に芯チャックのみが前進し残りの棒状化粧料を押し出して使用できる構成のため、棒状化粧料をギリギリまで使用でき、その後のネジ棒の前進により、棒状化粧料及び芯チャックを固形棒状化粧料容器から吐き出させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、棒状化粧料をぎりぎりまで使用できるものの、そもそも棒状化粧料の交換を目的としていないため、棒状化粧料の交換はできない。また、吐き出した芯チャックは廃棄物として廃棄することになるため、環境保護の問題は依然として残る。
【0008】
そこで、本発明は、棒状化粧料の交換の際にレフィル容器のような廃棄物がなく環境保護を図りつつ、手指を汚さずに棒状化粧料を吐き出すことができると共に容易に交換できる棒状化粧料繰出容を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による棒状化粧料繰出容器は、棒状化粧料を収容可能なスリーブと、スリーブと相対回転可能に係合するバレルと、軸線方向に伸縮するバネ部が設けられると共に、バネ部より軸線方向後方の内周に雌螺子が設けられ、バレルの内部に同期回転可能に配設されたスクリューと、スリーブ及びバレルの内部に収容され、棒状化粧料を繰り出すための機構部と、を備えた棒状化粧料繰出容器であって、機構部は、棒状化粧料を把持可能な芯くわえ部を備え、スリーブに同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合するリードホルダと、リードホルダの内部に配設され軸線方向前方へ延びる棒状部を備え、リードホルダに同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合するイジェクションロッドと、外周に雌螺子に螺合する雄螺子を備え、イジェクションロッドに同期回転可能且つ軸線方向移動不能に係合するプロペリングロッドと、リードホルダとイジェクションロッドとの間に挟まれる圧縮スプリングと、を備え、スリーブに設けられ、スリーブとバレルとが相対回転されると、雌螺子と雄螺子の螺合作用により繰り出された機構部のリードホルダが達する前進限と、プロペリングロッドに設けられ、リードホルダが前進限に達すると、スクリューと同期回転可能に係合する係合部と、スクリューの後部に設けられ、プロペリングロッドの係合部がスクリューに同期回転可能に係合した状態で、スリーブとバレルとが同方向へさらに相対回転されると、バレルの内部に設けられた突起が当接しバネ部を圧縮させながら前方へ押し出されるスロープと、を有し、スロープが押し出されることによりプロペリングロッド及びイジェクションロッドが圧縮スプリングを圧縮させながら繰り出され、イジェクションロッドの棒状部がリードホルダの芯くわえ部内に進入することを特徴としている。
【0010】
このような棒状化粧料用繰出容器によれば、リードホルダ、イジェクションロッド、プロペリングロッド及び圧縮スプリングを備える機構部と、スリーブとが同期回転可能とされると共に、バレルとスクリューとが同期回転可能とされ、スリーブとバレルとが相対回転されると、スクリューの雌螺子とプロペリングロッドの雄螺子の螺合作用が働いて機構部が繰り出される。機構部のリードホルダが前進限に達すると、今度は、プロペリングロッドが、スクリューと同期回転可能に係合し、さらに、スリーブとバレルとが同方向へ相対回転されると、バレルの内部に設けられた突起がスクリューのスロープに当接しスクリューのバネ部を圧縮させながらスロープが前方へ押し出されることにより、プロペリングロッド及びイジェクションロッドが圧縮スプリングを圧縮させながら繰り出され、イジェクションロッドの棒状部がリードホルダの芯くわえ部内に進入する。このため、芯くわえ部に把持され残されている棒状化粧料が、イジェクションロッドの棒状部により押し出され、手指を汚さずに棒状化粧料を吐き出させることができる。そして、新規の棒状化粧料を容易に装填できる。すなわち、棒状化粧料の交換の際にレフィル容器のような廃棄物がなく環境保護を図りつつ、棒状化粧料を容易に交換できる。また、容器内に圧縮スプリング、スクリューのバネ部が配設されているため、容器に衝撃が加わっても棒状化粧料を衝撃から守ることができる。
【0011】
ここで、バレルの突起がスロープの起端から終端まで当接し移動する際において、イジェクションロッドが繰り出される長さは、リードホルダの芯くわえ部の軸線方向の芯くわえ長さと同等以上であると、確実に棒状化粧料を吐き出させることができる。
【0012】
また、スロープをスクリューの周方向に沿って単数又は複数備え、バレルの突起のスロープに対する当接が当該スロープの終端を越えると、圧縮スプリングの付勢力により、バレルの突起がスロープの起端に移動しイジェクションロッドの棒状部が芯くわえ部から退出するまで後退する構成であると、スリーブとバレル(スクリュー)を逆方向に相対回転させなくてもイジェクションロッドの棒状部が芯くわえ部から退出しているため、手間をかけることなく棒状化粧料を芯くわえ部へ押し込み把持させることができ、棒状化粧料を一層容易に装填できる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、棒状化粧料の交換の際にレフィル容器のような廃棄物がなく環境保護を図りつつ、棒状化粧料を容易に交換できると共に、容器に衝撃が加わっても棒状化粧料を衝撃から守ることができる棒状化粧料繰出容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る棒状化粧料繰出容器を示す縦断面図であり、初期状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る棒状化粧料繰出容器を示す縦断面図であり、リードホルダが前進限に達した状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る棒状化粧料繰出容器を示す縦断面図であり、イジェクションロッドが最大に繰り出された状態を示す図である。
【
図4】
図2中のスリーブ及びバレル内を示す斜視図である。
【
図8】
図7中のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】
図1及び
図4中のプロペリングロッドを示す斜視図である。
【
図22】
図21中のXXII-XXII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による棒状化粧料繰出容器の好適な実施形態について
図1~
図22を参照しながら説明する。
図1~
図3は、本発明の実施形態に係る棒状化粧料繰出容器を示す縦断面図であって、
図1は、初期状態を示す図、
図2は、リードホルダが前進限に達した状態を示す図、
図3は、イジェクションロッドが最大に繰り出された状態を示す図、また、
図4は、スリーブ及びバレル内を示す斜視図、
図5及び
図6は、バレルを示す各図、
図7及び
図8は、スクリューを示す各図、
図9~
図11は、プロペリングロッドを示す各図、
図12~
図15は、イジェクションロッドを示す各図、
図16~
図20は、リードホルダを示す各図、
図21及び
図22は、スリーブを示す各図である。
【0016】
本実施形態の棒状化粧料繰出容器は、例えば、アイライナー、アイブロー、リップライナー、コンシーラー等を始めとした種々の棒状化粧料を収容し、使用者が必要に応じて適宜出没可能とするものであり、特に芯径の細い棒状化粧料に好適なものである。
【0017】
図1に示すように、棒状化粧料繰出容器100は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状を呈するものであり、容器前部を構成するスリーブ1と、容器後部を構成するバレル2と、を外形形状として備え、これらのスリーブ1及びバレル2内に、雌螺子3aを有しバレル2と同期回転可能とされるスクリュー3と、棒状化粧料Mを把持すると共に雌螺子3aに螺合する雄螺子6aを有し、スリーブ1と同期回転可能且つ軸線方向に移動可能とされ、スリーブ1とバレル2の相対回転による雌螺子3a及び雄螺子6aの螺合作用によって進退可能な機構部4と、を収容して構成されている。
【0018】
バレル2は、例えばABS等からなり、
図5に示すように、軸線方向に長尺な有底円筒状に構成される。バレル2には、その内周面に底部から先端側の軸線方向中程近くまで延びる縦リブ2aが、機構部4を構成する後述のプロペリングロッド6の径方向のガタツキを抑止するためのものとして、
図6に示すように、周方向に沿って90°等配の位置に設けられている。
【0019】
図5に示すように、縦リブ2aのうち、径方向に対向する一対の縦リブ2a,2aは軸線方向前方へさらに延在しており、この延在部(突起)2bが、スクリュー3を同期回転させるものとして設けられている。また、バレル2の先端部の内周面には、スリーブ1を装着するための凸部2cが円環状に設けられている。
【0020】
スクリュー3は、例えばPOM等からなり、
図7及び
図8に示すように、軸線方向に長尺な略円筒状に構成される。スクリュー3は、先端部及び後端部を除く部分に、軸線方向に伸縮するバネ部(樹脂バネ)3bを備え、後端部の内周面に、上記雌螺子3aが設けられている。
【0021】
スクリュー3の後端部の外周面には、略レ字状を左右反転させた形状に凹設された案内部3cが設けられている。この案内部3cは、起端3dから軸線方向後方へ沿って螺旋状に傾斜して延びるスロープ(傾斜通路)3eと、当該スロープ3eの終端3fから軸線方向前方へ直線状に延びる直線部3gと、を備え、このスロープ3e及び直線部3gからなる案内部3cが周方向に沿って2個が連ねて設けられている。スクリュー3の案内部3cは、棒状化粧料Mの取り出し時に、バレル2の延在部2bを案内するためのものである。
【0022】
スリーブ1は、例えばABS等からなり、
図21及び
図22に示すように、軸線方向中程の外周面に段差部1aを有する段付き円筒状に構成され、この段差部1aより後側に続く小径の円筒部が、バレル2に内挿される内挿部とされると共に、段差部1aより前側に続く大径で先端に向けて先細り形状となる円筒部が、バレル2の先端から突出し使用者により摘まれる摘み部とされる。このスリーブ1の段差部1aより後側の外周面には、バレル2の円環状の凸部2cに軸線方向に係合するための凹部1bが円環状に設けられている。
【0023】
スリーブ1には、
図22に示すように、先端の開口1cから軸線方向中程迄貫通し棒状化粧料Mを収容し摺動を可能とする棒状化粧料孔1dが設けられると共に、この棒状化粧料孔1dの周囲の複数箇所(ここでは四等配の位置)に、開口1cの近傍から軸線方向中程に亘って、機構部4を構成する後述するリードホルダ8の芯くわえ部8aの把持片8e及び把持片延長部8bを収容し摺動を可能とする溝1fが連設され、これらの棒状化粧料孔1d及び溝1fにより、棒状化粧料M、リードホルダ8の芯くわえ部8aの把持片8e及び把持片延長部8bが摺動する進退孔1eが構成されている。また、スリーブ1の進退孔1eに続く軸線方向中程から後端へ亘っては、リードホルダ8の把持片延長部8b、後述する円筒部8cが摺動する円形孔1gが設けられている。この円形孔1gと当該円形孔1gより縮径する進退孔1eとの境界面1hが、リードホルダ8の前進限とされている。
【0024】
そして、
図1に示すように、上記スクリュー3は、その後端側からバレル2に内挿され、スリーブ1が、その内挿部からバレル2の先端側に内挿され、その段差部1aがバレル2の先端面に突き当てられ、その凹部1bがバレル2の凸部2cに軸線方向に係合することにより、バレル2に対してスリーブ1が回転可能且つ軸線方向に移動不能に装着される。また、スクリュー3は、そのバネ部3bが、スリーブ1の後端面とバレル2の延在部2b(
図5参照)の先端部との間に挟み込まれると共に、スロープ3eの起端3dと直線部3g(
図4及び
図7参照)との間にバレル2の延在部2bの先端部が進入することにより、軸線方向後方から見て機構部4の繰り出し方向となる時計回りにバレル2を回転すると(
図7参照)、スロープ3eの起端3dとバレル2の延在部2bの先端部との間に作動抵抗が生じ、バレル2とスクリュー3が同期回転可能とされている。
【0025】
機構部4は、
図1及び
図4に示すように、棒状化粧料Mを把持可能な芯くわえ部8aを備え、スリーブ1に回転方向に係合するリードホルダ8と、リードホルダ8の内部に配設され軸線方向前方へ延びる棒状部7aを備え、リードホルダ8に回転方向に係合すると共に軸線方向に移動可能なイジェクションロッド7と、イジェクションロッド7から軸線方向後方へ延び、イジェクションロッド7に回転方向に係合すると共に、スクリュー3に対する螺合機能を有するプロペリングロッド6と、リードホルダ8とイジェクションロッド7との間に挟まれる圧縮スプリング9と、を備えている。
【0026】
プロペリングロッド6は、例えばPOM等からなり、
図1、
図9~
図11に示すように、軸線方向に長尺な略丸棒状に構成される。プロペリングロッド6は、先端部及び後端部を除く部分に、軸線方向に延びる雄螺子6aを、スクリュー3の雌螺子3aに螺合するものとして備えている。この雄螺子6aは、軸線方向に沿って径方向に対向する位置の面がカットされており、カットされた面を挟むようにして軸線方向に延びている。すなわち、雄螺子6aは、軸線方向に沿って断続的に螺旋を描くように設けられている。
【0027】
また、プロペリングロッド6は、雄螺子6aより軸線方向前側で雄螺子6aが設けられている側が、雄螺子6aの軸部と同径で軸線方向前方へ延びる一対の延出部6bとされると共に、この一対の延出部6bを除く部分が、縮径された軸部とされている。この縮径された軸部に対して延出部6bは、径方向に突出する凸部とされ、この延出部6bが、イジェクションロッド7に回転方向に係合するためのものとして設けられている。
【0028】
プロペリングロッド6の一対の延出部6bを含む部分の軸線方向前側は縮径された軸部とされ、この縮径された軸部の軸線方向前側が、プロペリングロッド6の先端部6cとされている。先端部6cは、軸線方向後側の縮径された軸部に対して拡径されており、先端側へ向かうに従い段階的に縮径する軸部とされている。この先端部6cの後端面6dが、イジェクションロッド7に軸線方向に係合するためのものとして設けられている。
【0029】
また、プロペリングロッド6の後端部には、拡径されたフランジ6eが、スクリュー3の後端面に密着して係合し同期回転可能とするためのものとして設けられている。
【0030】
イジェクションロッド7は、例えばPOM等からなり、
図1、
図12~
図15に示すように、先端に棒状部7aを備えると共に、棒状部7aの軸線方向後側に、段階的に拡径する軸部が連設されている。後端部の円筒部7bは、プロペリングロッド6の雄螺子6aより前側の先端部6c、延出部6bを収容するためのものであり、
図15に示すように、筒孔の後半部の径方向に対向する位置には、プロペリングロッド6の延出部6bが進入し回転方向に係合するための凹部7jが、一対軸線方向に所定長延びるように設けられている。
【0031】
また、円筒部7bの凹部7jより前方には、径方向に対向する位置に筒内外を連通する一対の窓7cが設けられている。窓7cの軸線方向後端直下の内周面には、内側へ突出する凸部7kが、プロペリングロッド6の先端部6cの後端面6dの軸線方向後方への移動を阻止するものとして設けられている。また、円筒部7bの筒孔の先端は閉じられており、この先端面7iが、プロペリングロッド6の先端部6cの軸線方向前方への移動を阻止するものとして設けられている。
【0032】
図12~
図15に示すように、イジェクションロッド7の円筒部7bより軸線方向前側には丸棒状の軸部7dが連設され、軸部7dより軸線方向前側には、軸部7dを縮径した丸棒状の軸部7eが連設されている。軸部7eの周方向に沿った90°等配の位置には、軸線方向へ延びる突条7fがそれぞれ設けられている。突条7fのうち、径方向に対向する一対の突条7fの先端部には、リードホルダ8に回転方向に係合すると共にリードホルダ8に対して軸線方向に移動するための凸部7gが設けられている。この凸部7gの後端面7hは、リードホルダ8に対する後退を阻止するためのものとして設けられている。また、凸部7gが設けられていない突条7fは、補強用のためのものである。
【0033】
イジェクションロッド7の棒状部7aは、軸部7eの先端に連設され、軸線方向に長尺な細径の丸棒状に構成されている。この棒状部7aは、消費された棒状化粧料Mを、リードホルダ8の芯くわえ部8aから吐き出させるためのものである。
【0034】
リードホルダ8は、例えばPBT等からなり、
図1、
図4、
図16~
図20に示すように、先端部に、棒状化粧料Mを把持するための芯くわえ部8aを備えると共に、後端部に、芯くわえ部8aより拡径した円筒部8cを備え、芯くわえ部8aと円筒部8cとの間が、イジェクションロッド7の棒状部7aを収容する棒状部ホルダ8dとされている。
【0035】
芯くわえ部8aは、挿入される棒状化粧料Mをくわえて把持するものであり、周方向に沿って90°間隔で設けられ、スリーブ1の溝1fに進入する4個の把持片8eと、棒状化粧料Mの後端面を突き当てる底面8fと、を備えて構成されている。なお、把持片8eの個数は、複数であれば限定されず、把持片8eの内面に、軸線方向に延びる突条8kを、棒状化粧料Mをめり込ませるものとして設けるのが、より好ましい。
【0036】
棒状部ホルダ8dは、芯くわえ部8aの底面8fを先端面として軸線方向後方へ延び円筒部8cに達するパイプ8gと、パイプ8gの周囲に連設され、把持片8eを軸線方向後方へ延長し円筒部8cに達する把持片延長部8bと、を備えている。パイプ8gの筒孔は、イジェクションロッド7の棒状部7aが進退するためのものである。
【0037】
円筒部8cは、棒状部ホルダ8dより拡径されており、その段差面8hが、スリーブ1の前進限(境界面)1hに突き当たるものとして設けられている。
【0038】
円筒部8cには、径方向に対向する位置に筒内外を連通する一対の窓8iが設けられている。窓8iは、イジェクションロッド7の凸部7gが進入し進退可能とすると共に、イジェクションロッド7を回転方向に係合するためのものである。窓8iの軸線方向長は、イジェクションロッド7の移動長とほぼ同じとされている。
図19に示すように、窓8iの軸線方向後端直下の内周面には、内側へ突出する凸部8jが、イジェクションロッド7の凸部7gの軸線方向後方への移動を阻止するものとして設けられている。また、円筒部8cの筒孔の先端側の形状は、イジェクションロッド7の軸部7e及び突条7fの先端側に倣った形状とされている。
【0039】
そして、
図1に示すように、プロペリングロッド6は、その雄螺子6aがスクリュー3の雌螺子3aに螺合した状態でバレル2に内挿され、その後端部のフランジ6eがバレル2の後端内面に突き当たった後退限に位置している。
【0040】
また、プロペリングロッド6の先端側に対してイジェクションロッド7の後端側が内挿され、プロペリングロッド6の延出部6bが、イジェクションロッド7の凹部7jに進入し回転方向に係合することにより、イジェクションロッド7がプロペリングロッド6と同期回転可能とされる。また、プロペリングロッドの先端部6cが、イジェクションロッド7の円筒部7bの筒孔の先端側に進入し、その先端部6cの後端面6dが、イジェクションロッド7の凸部7kに突き当たると共に、先端部6cの先端面が、イジェクションロッド7の円筒部7bの筒孔の先端面7iに対面することにより、イジェクションロッド7がプロペリングロッド6に対して軸線方向移動不能とされる。
【0041】
圧縮スプリング9は、イジェクションロッド7の円筒部7bの先端面に当接するように外挿されると共に、イジェクションロッド7の先端側に対してリードホルダ8の後端側が内挿され、圧縮スプリング9は、リードホルダ8の後端部とイジェクションロッド7の円筒部7bの先端面との間に挟まれるようにして配設される(
図4参照)。
【0042】
イジェクションロッド7の棒状部7aは、リードホルダ8のパイプ8gの筒孔に進入し、イジェクションロッド7の軸部7e、突条7fは、リードホルダ8の円筒部8cの筒孔に進入する。イジェクションロッド7の凸部7gは窓8iに進入し回転方向に係合することにより、リードホルダ8がイジェクションロッドに同期回転可能とされる。また、イジェクションロッド7の凸部7gが窓8iに進入することにより、リードホルダ8がイジェクションロッド7に軸線方向移動可能にされる。このリードホルダ8は圧縮スプリング9によりイジェクションロッド7に対して前方へ付勢されることにより、リードホルダ8の凸部8jがイジェクションロッド7の凸部7gの後端面7hに当接した状態となっている。
【0043】
この状態で、イジェクションロッド7の棒状部7aの先端面は、リードホルダ8の芯くわえ部8aの底面8fと面一になっている。
【0044】
そして、スリーブ1の溝1fに、リードホルダ8の把持片8e及び把持片延長部8bが進入するように、スリーブ1をリードホルダ8に外挿し、スリーブ1をバレル2に押し込むことにより、前述したように、バレル2に対してスリーブ1が回転可能且つ軸線方向に移動不能に装着される。この状態で、棒状化粧料Mは、リードホルダ8の芯くわえ部8aに把持され、
図1に示す初期状態の棒状化粧料繰出容器100が得られる。
【0045】
この棒状化粧料繰出容器100では、プロペリングロッド6は後退限に位置し、棒状化粧料Mの先端面は、開口1cの近傍に位置している。
【0046】
次に、このような構成を有する棒状化粧料繰出容器100の作用を説明する。使用者により、スリーブ1とバレル2とが、機構部4を繰り出す繰り出し方向に相対回転されると、バレル2の延在部2b(
図5及び
図6参照)と、スクリュー3のスロープ3eの起端3d(
図4及び
図7参照)との間に生じる作動抵抗により、バレル2とスクリュー3が同期回転可能とされているため、スクリュー3の雌螺子3a及び機構部4のプロペリングロッド6の雄螺子6aの螺合作用によって機構部4が繰り出され(前進し)、すなわち、互いに同期回転可能とされたプロペリングロッド6、イジェクションロッド7、リードホルダ8及び圧縮スプリング9が繰り出され、棒状化粧料Mがスリーブ1の開口1cから出現し、塗布に供される。プロペリングロッド6の繰り出し時には、バレル2の縦リブ2a(
図5及び
図6参照)により、プロペリングロッド6の後端部のフランジ6eが径方向にガイドされガタツキが防止されている。
【0047】
そして、塗布が終了し、スリーブ1とバレル2とが逆方向(繰り戻し方向)に相対回転されると、雌螺子3a及び雄螺子6aの螺合作用によって機構部4が後退し、棒状化粧料Mがスリーブ1の開口1cから没入する。
【0048】
そして、使用に連れ棒状化粧料Mが消費されると、機構部4の位置は軸線方向前方に前進していき、棒状化粧料Mをほぼ使い切ると、
図2に示すように、機構部4のリードホルダ8の段差面8hが、スリーブ1の前進限1hに突き当たり、リードホルダ8の繰り出しが阻止される。このとき、リードホルダ8の把持片8eの先端面とスリーブ1の溝1fの先端面との間には隙間Sがある。このように隙間Sを設けているのは、リードホルダ8の把持片8eの先端面がスリーブ1の溝1fの先端面に当接し棒状化粧料Mに衝撃が伝わってしまうのを防ぐためである。
【0049】
この状態で、繰り出されていた機構部4のプロペリングロッド6のフランジ6eが、スクリュー3の後端面に当接し密着することにより前進が規制され、この状態で、同方向へスリーブ1とバレル2とが相対回転されると、バレル2の延在部2b(
図5参照)とスクリュー3のスロープ3eの起端3d(
図7参照)との間に生じる作動抵抗をバレル2の回転力が上回り、スクリュー3がプロペリングロッド6に係合した状態とされ、スクリュー3とプロペリングロッド6とが同期回転可能となる。
【0050】
すると、バレル2の延在部2bがスクリュー3の螺旋状のスロープ3e(
図7参照)を迫り上がっていき、スクリュー3のバネ部3bを圧縮させながらスロープ3eが前方へ押し出されることにより、プロペリングロッド6及びイジェクションロッド7が圧縮スプリング9を圧縮させながら繰り出される。このとき、イジェクションロッド7は、その凸部7gが、リードホルダ8の窓8iを前進し、イジェクションロッド7の棒状部7aがリードホルダ8の芯くわえ部8a内に進入する。
【0051】
そして、バレル2の延在部2bがスクリュー3のスロープ3eの終端3f(
図7参照)に達すると、イジェクションロッド7の棒状部7aが前進限になり、
図3に示すように、棒状部7aの先端面が、把持片8eの先端面とほぼ面一になり、棒状化粧料が芯くわえ部8aから押し出され、吐き出される。
【0052】
そして、棒状化粧料Mを吐き出し、バレル2の延在部2bがスクリュー3のスロープ3eの終端3fを越えると、圧縮スプリング9の付勢力により、バレル2の延在部2bがスロープ3eの起端3dに移動し、イジェクションロッド7の棒状部7aが芯くわえ部8aから自動的に退出する(
図2参照)。スリーブ1とバレル2とを続けて同方向へ相対回転すると、カチャカチャという音を繰り返し同様な動作を繰り返す。
【0053】
そして、棒状化粧料Mを吐き出したら、使用者は、新規の棒状化粧料Mを持ちながら芯くわえ部8aへ押し込み把持させることにより、棒状化粧料Mが装填される。なお、バレル2の延在部2bがスクリュー3のスロープ3eの終端3fに達する前に棒状化粧料Mが吐き出される構成や、圧縮スプリング9がない構成であると、イジェクションロッド7の棒状部7aが芯くわえ部8aから自動的に退出しないため、使用者は、スリーブ1とバレル2とを逆方向(繰り戻し方向)に相対回転し、イジェクションロッド7の棒状部7aを芯くわえ部8aから後退させる必要がある。
【0054】
このように、本実施形態においては、リードホルダ8、イジェクションロッド7、プロペリングロッド6及び圧縮スプリング9を備える機構部4と、スリーブ1とが同期回転可能とされると共に、バレル2とスクリュー3とが同期回転可能とされ、スリーブ1とバレル2とが繰り出し方向に相対回転されると、スクリュー3の雌螺子3aとプロペリングロッド6の雄螺子6aの螺合作用が働いて機構部4が繰り出され、機構部4のリードホルダ8が前進限1hに達すると、今度は、プロペリングロッド6が、スクリュー3と同期回転可能に係合し、さらに、スリーブ1とバレル2とが同方向へ相対回転されると、バレル2の内部に設けられた延在部2bがスクリュー3のスロープ3eに当接しスクリュー3のバネ部3bを圧縮させながらスロープ3eが前方へ押し出されることにより、プロペリングロッド6及びイジェクションロッド7が圧縮スプリング9を圧縮させながら繰り出され、イジェクションロッド7の棒状部7aがリードホルダ8の芯くわえ部8a内に進入するため、芯くわえ部8aに把持され残されている棒状化粧料Mが、イジェクションロッド7の棒状部7aにより押し出され、手指を汚さずに棒状化粧料Mを吐き出させることができる。また、新規の棒状化粧料Mを芯くわえ部8aへ押し込み把持させることにより、棒状化粧料Mを装填できる。すなわち、棒状化粧料Mの交換の際にレフィル容器のような廃棄物がなく環境保護を図りつつ、棒状化粧料Mを容易に交換できる。また、容器内に圧縮スプリング9、スクリュー3のバネ部3bが配設されているため、容器に衝撃が加わっても棒状化粧料Mを衝撃から守ることができる。
【0055】
また、バレル2の延在部2bがスロープ3eの起端3dから終端3fまで当接し移動する際において、イジェクションロッド7が繰り出される長さが、リードホルダ8の芯くわえ部8aの軸線方向の芯くわえ長さと同等とされているため、確実に棒状化粧料Mを吐き出させることができる。なお、イジェクションロッド7が繰り出される長さを、リードホルダ8の芯くわえ部8aの軸線方向の芯くわえ長さと同等より長くしても、確実に棒状化粧料Mを吐き出させることができる。
【0056】
また、スロープ3eをスクリュー3の周方向に沿って単数又は複数備え、バレル2の延在部2bのスロープ3eに対する当接が当該スロープ3eの終端3fを越えると、圧縮スプリング9の付勢力により、バレル2の延在部2bがスロープ3eの起端3dに移動しイジェクションロッド7の棒状部7aが芯くわえ部8aから退出するまで後退し、スリーブ1とバレル2を逆方向に相対回転させなくてもイジェクションロッド7の棒状部7aが芯くわえ部8aから退出するため、手間をかけることなく棒状化粧料Mを芯くわえ部8aへ押し込み把持させることができ、棒状化粧料Mを一層容易に装填できる。
【0057】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、プロペリングロッド6の後端部のフランジ6eを、スクリュー3に密着し同期回転可能に係合する係合部としているが、別途設けた係合部によりスクリュー3と同期回転可能としても良い。
【0058】
また、上記実施形態においては、設計上の観点から特に好適であるとして、スロープ3eを、スクリュー3の周方向に沿って2個設けているが、単数でも3個以上であっても良い。
【0059】
また、棒状化粧料M、バレル2、スリーブ1等の各部品の形状は円形に限定されず、角形、楕円形、扁平形等であっても良い。
【符号の説明】
【0060】
1…スリーブ、1h…前進限、2…バレル、2b…延在部(突起)、3…スクリュー、3a…雌螺子、3b…バネ部、3d…起端、3e…スロープ、3f…終端、4…機構部、6…プロペリングロッド、6a…雄螺子、6e…フランジ(係合部)、7…イジェクションロッド、7a…棒状部、8…リードホルダ、8a…芯くわえ部、9…圧縮スプリング、100…棒状化粧料繰出容器、M…棒状化粧料。