(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035736
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 23/02 20060101AFI20220225BHJP
F02B 37/007 20060101ALI20220225BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F02D23/02 A
F02B37/007
F02B37/00 400C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140256
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠 昌幸
【テーマコード(参考)】
3G005
3G092
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005EA24
3G005EA26
3G005FA02
3G005HA05
3G005JA13
3G005JA24
3G005JA39
3G092AA18
3G092BB01
3G092DB03
3G092DB05
3G092EA01
3G092EA02
3G092EA09
3G092EA11
3G092FA04
3G092GA17
3G092GA18
3G092HA04Z
3G092HA16Z
3G092HE01Z
3G092HE06X
(57)【要約】
【課題】2機のターボチャージャを有する内燃機関において、シングルターボモードとツインターボモードの、どちらのモードも有り得るターボ切替領域にて出力トルクが目標トルクとなるように制御する際、よりシンプルな処理にて、シングルターボモードの場合の出力トルクと、ツインターボモードの場合の出力トルクとの差をより低減することができる、内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の運転領域として、シングルターボモードの1ターボ領域と、ツインターボモードの2ターボ領域と、1ターボ領域と2ターボ領域の間にターボモードの切り替えが発生するターボ切替領域とが設定され、ターボ切替領域の場合、シングルターボモードの場合の出力トルクと、ツインターボモードの場合の出力トルクとの差が小さくなるように、シングルターボモードの場合の噴射量とツインターボモードの場合の噴射量とを異なる値とする。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ターボチャージャと第2ターボチャージャを有する内燃機関の運転状態を検出し、検出した前記運転状態に基づいて、前記内燃機関のシリンダ内へ燃料を噴射する噴射量を制御するとともに前記第1ターボチャージャのみを用いて過給するシングルターボモードと前記第1ターボチャージャ及び前記第2ターボチャージャの双方を用いて過給するツインターボモードとを切り替える、内燃機関の制御装置において、
前記制御装置には、前記内燃機関の運転領域として、
前記シングルターボモードで制御する前記運転領域である1ターボ領域と、
前記ツインターボモードで制御する前記運転領域である2ターボ領域と、
前記1ターボ領域と前記2ターボ領域の間に設定されて前記シングルターボモードから前記ツインターボモードへの切り替えまたは前記ツインターボモードから前記シングルターボモードへの切り替えが発生する前記運転領域であるターボ切替領域と、が設定されており、
前記制御装置は、
前記運転状態に基づいて前記内燃機関の目標トルクを求め、前記内燃機関の出力トルクが前記目標トルクに近づくように前記噴射量を求める際に、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合には、前記シングルターボモードで制御した場合の前記内燃機関の出力トルクと、前記ツインターボモードで制御した場合の前記内燃機関の出力トルクとの差が小さくなるように、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量とが異なる値となるように前記噴射量を求める、切替領域噴射量調整部を有している、
内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記制御装置には、
前記1ターボ領域から前記ターボ切替領域を経由して前記2ターボ領域へとまたがって、許容される前記噴射量の上限量である許容上限噴射量が設定されており、
前記制御装置は、
前記切替領域噴射量調整部にて、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記許容上限噴射量を、前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記許容上限噴射量よりも大きな値とする、
あるいは、前記切替領域噴射量調整部にて前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記切替領域噴射量調整部にて、前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記許容上限噴射量を、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記許容上限噴射量よりも小さな値とする、
内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記シングルターボモードで制御した場合における前記内燃機関の吸気及び排気の際に使われる運動エネルギーの損失である1ターボ時ポンピング損失と、前記ツインターボモードで制御した場合における前記内燃機関の吸気及び排気の際に使われる運動エネルギーの損失である2ターボ時ポンピング損失と、を推定し、推定した前記1ターボ時ポンピング損失と前記2ターボ時ポンピング損失との差であるポンピング損失差を求める、ポンピング損失推定部を有しており、
前記制御装置は、
前記切替領域噴射量調整部にて、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記ポンピング損失差に基づいてターボモード調整噴射量を求め、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量及び前記許容上限噴射量を、前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量及び前記許容上限噴射量に対して、前記ターボモード調整噴射量だけ増量する、
あるいは、前記切替領域噴射量調整部にて、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記ポンピング損失差に基づいて前記ターボモード調整噴射量を求め、前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量及び前記許容上限噴射量を、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量及び前記許容上限噴射量に対して、前記ターボモード調整噴射量だけ減量する、
内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記シングルターボモードで制御した場合における前記内燃機関の熱エネルギーの損失である1ターボ時冷却損失と前記1ターボ時ポンピング損失とを含むエネルギー損失である1ターボ時総合損失と、前記ツインターボモードで制御した場合における前記内燃機関の熱エネルギーの損失である2ターボ時冷却損失と前記2ターボ時ポンピング損失とを含むエネルギー損失である2ターボ時総合損失と、を推定し、推定した前記1ターボ時総合損失と前記2ターボ時総合損失との差である総合損失差を求める、総合損失推定部を有しており、
前記制御装置は、
前記切替領域噴射量調整部にて、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記総合損失差に基づいて前記ターボモード調整噴射量を求める、
内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両や建設機械等に搭載された内燃機関には、より大きな駆動トルクを得るために、排気ガスのエネルギーを用いて過給するターボチャージャを備えた内燃機関がある。さらに、2機のターボチャージャを備えた内燃機関がある。
【0003】
例えば並列に配置された2機の比較的小型のターボチャージャを有する内燃機関は、1機の大型のターボチャージャのみを有する内燃機関と比較して、レスポンスの向上と低回転領域からトルクを得ることができる等のメリットがある。しかし、2機のターボチャージャを備えた内燃機関では、運転状態に応じて、1機のターボチャージャのみで過給するシングルターボモードで制御する場合と、2機のターボチャージャで過給するツインターボモードで制御する場合と、を切り替える必要がある。
【0004】
例えば2機のターボチャージャを有する内燃機関の運転領域として、1ターボ領域と2ターボ領域とターボ切替領域との3つの運転領域が設定されている。1ターボ領域は、内燃機関の負荷が比較的小さく(排気流量が比較的小さく)、シングルターボモードで制御する運転領域である。2ターボ領域は、内燃機関の負荷が比較的大きく(排気流量が比較的大きく)、ツインターボモードで制御する運転領域である。ターボ切替領域は、1ターボ領域と2ターボ領域の間の領域であって、シングルターボモードからツインターボモード、またはツインターボモードからシングルターボモード、への切り替えが発生する運転領域である。また内燃機関には、運転領域内における運転状態に応じた目標トルクが設定されており、運転状態に応じた出力トルクが目標トルクに近づくように(目標トルクとなるように)燃料の噴射量が制御される。
【0005】
内燃機関の運転状態が1ターボ領域内である場合、シングルターボモードとされてツインターボモードに切り替わることがないので、目標トルクを発生させる燃料の噴射量は1つの値に決まる。同様に、内燃機関の運転状態が2ターボ領域内である場合、ツインターボモードとされてシングルターボモードに切り替わることがないので、目標トルクを発生させる燃料の噴射量は1つの値に決まる。しかし、内燃機関の運転状態がターボ切替領域内である場合、目標トルクを発生させる燃料の噴射量は、シングルターボモードで制御している場合の噴射量と、ツインターボモードで制御している場合の噴射量とでは、異なる噴射量となる。
【0006】
ツインターボモードの場合は並列に配置された2機のターボチャージャに排気を分割して流すことになるので、全排気を1機のターボチャージャに流すシングルターボモードの場合と比較して、排気の圧損が少ない(いわゆるポンピング損失が少ない)。このため、同じ燃料量を噴射しても、シングルターボモードの場合よりもツインターボモードの場合のほうが、内燃機関の出力トルクが大きくなる。この点を考慮せずにシングルターボモードからツインターボモード、あるいはツインターボモードからシングルターボモードに切り替えると、トルクの変動が発生してユーザがはっきりと体感できるレベルのショックが発生する可能性があるので好ましくない。
【0007】
例えば特許文献1には、エンジンの燃焼室内の圧力を圧力センサにて直接検出することなくエンジンの発生する軸トルクを推定可能な、エンジンの制御装置が開示されている。特許文献1に記載の制御装置は、熱発生開始時期(または燃焼開始から所定クランク角度までの燃焼期間)である運転状態に基づいて、燃焼室内のガスの燃焼中のクランク角度における燃焼質量、燃焼室内のガスの燃焼中のクランク角度における燃焼質量割合、熱発生パターンのいずれか一つを推定し、推定したいずれか一つの値に基づいて、エンジンの発生する軸トルクを推定し、点火時期を制御してトルクの急変を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、エンジンの燃焼室内の圧力を圧力センサにて直接検出してはいないが、熱発生開始時期(または燃焼期間)の検出と、燃焼質量または燃焼質量割合または熱発生パターンのいずれか一つを推定し、推定したいずれか一つの値に基づいてエンジンの発生する軸トルクを推定する処理が複雑であり、処理の量も多く、制御装置への負荷が大きくなるので、あまり好ましくない。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、2機のターボチャージャを有する内燃機関において、シングルターボモードとツインターボモードの、どちらのモードも有り得るターボ切替領域にて出力トルクが目標トルクとなるように制御する際、よりシンプルな処理にて、シングルターボモードの場合の出力トルクと、ツインターボモードの場合の出力トルクとの差をより低減することができる、内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、第1ターボチャージャと第2ターボチャージャを有する内燃機関の運転状態を検出し、検出した前記運転状態に基づいて、前記内燃機関のシリンダ内へ燃料を噴射する噴射量を制御するとともに前記第1ターボチャージャのみを用いて過給するシングルターボモードと前記第1ターボチャージャ及び前記第2ターボチャージャの双方を用いて過給するツインターボモードとを切り替える、内燃機関の制御装置である。前記制御装置には、前記内燃機関の運転領域として、前記シングルターボモードで制御する前記運転領域である1ターボ領域と、前記ツインターボモードで制御する前記運転領域である2ターボ領域と、前記1ターボ領域と前記2ターボ領域の間に設定されて前記シングルターボモードから前記ツインターボモードへの切り替えまたは前記ツインターボモードから前記シングルターボモードへの切り替えが発生する前記運転領域であるターボ切替領域と、が設定されている。そして、前記制御装置は、前記運転状態に基づいて前記内燃機関の目標トルクを求め、前記内燃機関の出力トルクが前記目標トルクに近づくように前記噴射量を求める際に、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合には、前記シングルターボモードで制御した場合の前記内燃機関の出力トルクと、前記ツインターボモードで制御した場合の前記内燃機関の出力トルクとの差が小さくなるように、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量とが異なる値となるように前記噴射量を求める、切替領域噴射量調整部を有している、内燃機関の制御装置である。
【0012】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関の制御装置であって、前記制御装置には、前記1ターボ領域から前記ターボ切替領域を経由して前記2ターボ領域へとまたがって、許容される前記噴射量の上限量である許容上限噴射量が設定されている。そして、前記制御装置は、前記切替領域噴射量調整部にて、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記許容上限噴射量を、前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記許容上限噴射量よりも大きな値とする、あるいは、前記切替領域噴射量調整部にて前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記切替領域噴射量調整部にて、前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記許容上限噴射量を、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量と前記許容上限噴射量よりも小さな値とする、内燃機関の制御装置である。
【0013】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る内燃機関の制御装置であって、前記制御装置は、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記シングルターボモードで制御した場合における前記内燃機関の吸気及び排気の際に使われる運動エネルギーの損失である1ターボ時ポンピング損失と、前記ツインターボモードで制御した場合における前記内燃機関の吸気及び排気の際に使われる運動エネルギーの損失である2ターボ時ポンピング損失と、を推定し、推定した前記1ターボ時ポンピング損失と前記2ターボ時ポンピング損失との差であるポンピング損失差を求める、ポンピング損失推定部を有している。そして、前記制御装置は、前記切替領域噴射量調整部にて、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記ポンピング損失差に基づいてターボモード調整噴射量を求め、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量及び前記許容上限噴射量を、前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量及び前記許容上限噴射量に対して、前記ターボモード調整噴射量だけ増量する、あるいは、前記切替領域噴射量調整部にて、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記ポンピング損失差に基づいて前記ターボモード調整噴射量を求め、前記ツインターボモードで制御した場合の前記噴射量及び前記許容上限噴射量を、前記シングルターボモードで制御した場合の前記噴射量及び前記許容上限噴射量に対して、前記ターボモード調整噴射量だけ減量する、内燃機関の制御装置である。
【0014】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係る内燃機関の制御装置であって、前記制御装置は、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記シングルターボモードで制御した場合における前記内燃機関の熱エネルギーの損失である1ターボ時冷却損失と前記1ターボ時ポンピング損失とを含むエネルギー損失である1ターボ時総合損失と、前記ツインターボモードで制御した場合における前記内燃機関の熱エネルギーの損失である2ターボ時冷却損失と前記2ターボ時ポンピング損失とを含むエネルギー損失である2ターボ時総合損失と、を推定し、推定した前記1ターボ時総合損失と前記2ターボ時総合損失との差である総合損失差を求める、総合損失推定部を有している。そして、前記制御装置は、前記切替領域噴射量調整部にて、前記運転状態に基づいて判定した前記運転領域が前記ターボ切替領域である場合、前記総合損失差に基づいて前記ターボモード調整噴射量を求める、内燃機関の制御装置である。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、内燃機関の運転状態に基づいて判定した運転領域がターボ切替領域である場合、シングルターボモードで制御した場合の出力トルクと、ツインターボモードで制御した場合の出力トルクとの差が小さくなるように、シングルターボモードの場合の燃料の噴射量と、ツインターボモードの場合の燃料の噴射量とが異なる値となるように噴射量を求める。これにより、2機のターボチャージャを有する内燃機関において、シングルターボモードとツインターボモードの、どちらのモードも有り得るターボ切替領域にて出力トルクが目標トルクとなるように制御する際、よりシンプルな処理とすることができる。また、このシンプルな処理にて、シングルターボモードの場合の出力トルクと、ツインターボモードの場合の出力トルクとの差をより低減することができる、
【0016】
同一の運転状態の場合に同一の燃料の噴射量であっても、上述したとおり、ツインターボモードの場合のほうがシングルターボモードの場合よりも内燃機関の出力トルクが大きくなる。第2の発明によれば、シングルターボモードとツインターボモードのどちらのモードも有り得るターボ切替領域において、シングルターボモードの場合の噴射量と許容上限噴射量を、ツインターボモードの場合の噴射量と許容上限噴射量よりも大きな値とする。または、ツインターボモードの場合の噴射量と許容上限噴射量を、シングルターボモードの場合の噴射量と許容上限噴射量よりも小さな値とする。これにより、よりシンプルな処理にて、シングルターボモードの場合の出力トルクと、ツインターボモードの場合の出力トルクとの差をより低減することができる。
【0017】
第3の発明によれば、シングルターボモードで制御した場合の1ターボ時ポンピング損失と、ツインターボモードで制御した場合の2ターボ時ポンピング損失とを推定し、ポンピング損失差を求め、ポンピング損失差に基づいてターボモード調整噴射量を求める。これにより、よりシンプルな処理にて、シングルターボモードの場合の出力トルクとツインターボモードの場合の出力トルクとの差をより低減することができる適切な補正量(ターボモード調整噴射量)を求めることができる。
【0018】
第4の発明によれば、シングルターボモードの場合とツインターボモードの場合における運動エネルギーの差であるポンピング損失差に、さらに熱エネルギーの差を加えた総合損失差に基づいてターボモード調整噴射量を求める。これにより、シングルターボモードの場合の出力トルクとツインターボモードの場合の出力トルクとの差を、さらに低減することができる適切な補正量(ターボモード調整噴射量)を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の内燃機関の制御装置を有する内燃機関システムの例を説明する図である。
【
図2】
図1に示す内燃機関システムにおいて、シングルターボモードの場合の吸気の経路と排気の経路を説明する図である。
【
図3】
図1に示す内燃機関システムにおいて、ツインターボモードの場合の吸気の経路と排気の経路を説明する図である。
【
図4】シングルターボモードの場合とツインターボモードの場合の内燃機関の出力トルクの差を説明する図である。
【
図5】内燃機関の運転領域を、1ターボ領域、ターボ切替領域、2ターボ領域、に区分した例を説明する図である。
【
図6】
図5に示した運転領域に対して、目標トルクを設定した例を説明する図である。
【
図7】
図6に示した目標トルクに対して、出力トルクが目標トルクとなるように燃料噴射量を設定した例を説明する図である。
【
図8】
図7に示した燃料噴射量に対して、許容上限噴射量を設定した例を説明する図である。
【
図9】
図8に対して、燃料噴射量についてはターボ切替領域ではツインターボモードの燃料噴射量を採用し、許容上限噴射量についてはツインターボモードの許容上限噴射量を採用した例を説明する図である。
【
図10】
図7に示す例に対して、2ターボ領域において燃料噴射量の特性G11に沿った燃料噴射量とした場合では2ターボ領域のトルクがトルク特性TQ20となる例を説明する図である。
【
図11】制御装置の処理手順の例を説明するフローチャートである。
【
図12】
図11に示すフローチャートにおける処理SA000の詳細を説明するフローチャートである。
【
図13】
図11に示すフローチャートにおける処理SB000の詳細を説明するフローチャートである。
【
図14】ターボ切替領域内においてシングルターボモードからツインターボモードに切り替えた場合における最終噴射量及び最終許容上限噴射量を徐々に減量する例を説明する図である。
【
図15】ターボ切替領域内においてツインターボモードからシングルターボモードに切り替えた場合における最終噴射量及び最終許容上限噴射量を徐々に増量する例を説明する図である。
【
図16】その他の実施の形態において、
図9に対して、燃料噴射量についてはターボ切替領域ではシングルターボモードの燃料噴射量を採用し、許容上限噴射量についてはシングルターボモードの許容上限噴射量を採用した例を説明する図である。
【
図17】その他の実施の形態において、
図13に示す処理SB000からの変更個所を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
●[内燃機関システム1の構成の例(
図1)]
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。まず
図1を用いて、車両に搭載された内燃機関システム1の構成の例について説明する。本実施の形態の説明では、内燃機関の例として、車両に搭載された内燃機関10(例えばディーゼルエンジン)を用いて説明する。また
図1に示す内燃機関システム1は、第1ターボチャージャ31と第2ターボチャージャ32とを有する過給システム30を有している。
【0021】
以下、内燃機関システム1について、
図1を用いて吸気側(
図1の上方)から排気側(
図1の下方)に向かって順に説明する。吸気管11Aの流入側には、吸気流量検出手段21(例えば、吸気流量センサ)、大気圧検出手段22D(例えば、圧力センサ)、吸気温度検出手段22E(例えば、温度センサ)、が設けられている。吸気流量検出手段21は、内燃機関10が吸入した空気の流量に応じた検出信号を制御装置70に出力する。大気圧検出手段22Dは、雰囲気の大気の圧力(大気圧)に応じた検出信号を制御装置70に出力し、吸気温度検出手段22Eは、内燃機関10が吸入した空気の温度(外気温度)に応じた検出信号を制御装置70に出力する。吸気管11Aの流出側は、第1吸気流入通路11B1と第2吸気流入通路11B2の二股に分岐しており、第1吸気流入通路11B1の流入側と第2吸気流入通路11B2の流入側とに接続されている。
【0022】
第1吸気流入通路11B1の流出側は、第1ターボチャージャ31の第1コンプレッサ31Aの吸気流入口に接続されている。また第1吸気流入通路11B1の途中には、吸気バイパス通路11CBの流出側が接続されている。第1コンプレッサ31Aの吸気吐出口は、第1吸気吐出通路11C1の流入側に接続され、第1吸気吐出通路11C1の流出側は、第2吸気吐出通路11C2の流出側と吸気最終合流点PA3にて合流されて合流吸気通路11Dの流入側に接続されている。第1コンプレッサ31Aは第1タービン31Bにて回転駆動され、第1吸気流入通路11B1から吸入した空気を圧縮して第1吸気吐出通路11C1へ吐出する。
【0023】
第2吸気流入通路11B2の流出側は、第2ターボチャージャ32の第2コンプレッサ32Aの吸気流入口に接続されている。第2コンプレッサ32Aの吸気吐出口は、第2吸気吐出通路11C2の流入側に接続され、第2吸気吐出通路11C2の流出側は、第1吸気吐出通路11C1の流出側と吸気最終合流点PA3にて合流されて合流吸気通路11Dの流入側に接続されている。第2コンプレッサ32Aは第2タービン32Bにて回転駆動され、第2吸気流入通路11B2から吸入した空気を圧縮して第2吸気吐出通路11C2へ吐出する。吸気バイパス通路11CBは、第2吸気吐出通路11C2の吸気分岐点PA1から分岐されて第1吸気流入通路11B1の吸気中間合流点PA2に接続されている。
【0024】
吸気切替弁62は、第2吸気吐出通路11C2における吸気バイパス通路11CBとの分岐点である吸気分岐点PA1よりも吸気下流側に設けられて、制御装置70からの制御信号に基づいて第2吸気吐出通路11C2を開閉する。また吸気バイパス弁61は、吸気バイパス通路11CBに設けられて、制御装置70からの制御信号に基づいて吸気バイパス通路11CBを開閉する。第2吸気吐出通路11C2における吸気分岐点PA1から吸気切替弁62の間には、過給圧検出手段22Gが設けられている。過給圧検出手段22Gは、例えば圧力センサであり、自身が設けられている位置の第2吸気吐出通路11C2内の吸気の圧力に応じた検出信号を制御装置70に出力する。
【0025】
合流吸気通路11Dの流入側は、第1吸気吐出通路11C1の流出側と第2吸気吐出通路11C2の流出側とが接続され、合流吸気通路11Dの流出側は、吸気マニホルド11Eの流入側に接続されている。また合流吸気通路11Dには、過給圧検出手段22F、インタークーラ38、制御装置70から制御されるスロットル装置33等が設けられている。過給圧検出手段22Fは、例えば圧力センサであり、合流吸気通路11D内の吸気の圧力に応じた検出信号を制御装置70に出力する。
【0026】
また合流吸気通路11Dには、EGR通路13Aの流出側が接続されている。EGR通路13Aの流入側は排気マニホルド12A2に接続されている。そしてEGR通路13Aには、EGRクーラ34と、制御装置70から制御されるEGR弁35が設けられている。
【0027】
吸気マニホルド11Eには、吸気マニホルド11E内の過給圧を検出する吸気マニホルド内過給圧検出手段22A(例えば、圧力センサ)と、吸気マニホルド11E内の吸気温度を検出する吸気マニホルド内吸気温度検出手段28A(例えば、温度センサ)が設けられている。吸気マニホルド内過給圧検出手段22Aは、吸気マニホルド11E内の吸気(過給された吸気)の圧力に応じた検出信号を制御装置70に出力する。吸気マニホルド内吸気温度検出手段28Aは、吸気マニホルド11E内の吸気の温度に応じた検出信号を制御装置70に出力する。
【0028】
吸気マニホルド11Eの流出側は、内燃機関10の各シリンダに接続されている。
【0029】
内燃機関10は複数のシリンダを有しており、インジェクタ43A~43Hが、それぞれのシリンダに設けられている。インジェクタ43A~43Hには、コモンレール42から燃料配管を介して燃料が供給されており、インジェクタ43A~43Hは、制御装置70からの制御信号によって駆動され、それぞれのシリンダ内に燃料を噴射する。
【0030】
コモンレール42には、制御装置70からの制御信号に基づいて駆動される燃圧調整ポンプ41から燃料が供給されている。またコモンレール42には、コモンレール42内の燃料の圧力を検出する燃圧検出手段23(例えば、圧力センサ)が設けられている。燃圧検出手段23は、検出した燃料圧力に応じた検出信号を制御装置70に出力する。制御装置70は、燃圧検出手段23からの検出信号に基づいた燃料圧力が目標燃料圧力となるように燃圧調整ポンプ41を制御する。
【0031】
内燃機関10には、クランク角度検出手段25A(例えば回転センサ)、カム角度検出手段25B(例えば回転センサ)、クーラント温度検出手段24(例えば温度センサ)等が設けられている。クランク角度検出手段25Aは、内燃機関10のクランクシャフトの回転角度に応じた検出信号を制御装置70に出力する。制御装置70は、クランク角度検出手段25Aからの検出信号に基づいて内燃機関10の回転数を検出する。カム角度検出手段25Bは、内燃機関10のカムシャフトの回転角度に応じた検出信号を制御装置70に出力する。クーラント温度検出手段24は、内燃機関10内に循環されている冷却用クーラントの温度に応じた検出信号を制御装置70に出力する。
【0032】
内燃機関10の排気側には排気マニホルド12A1、12A2の流入側が接続され、排気マニホルド12A1の流出側には第1排気流入通路12B1の流入側が接続され、排気マニホルド12A2の流出側には第2排気流入通路12B2の流入側が接続されている。また第1排気流入通路12B1の流出側は第1タービン31Bの排気流入口に接続され、第2排気流入通路12B2の流出側は第2タービン32Bの排気流入口に接続されている。また第1排気流入通路12B1の流入側と第2排気流入通路12B2の流入側は、排気連通通路12BBにて連通されている。
【0033】
第1タービン31Bの排気吐出口には、第1排気吐出通路12C1の流入側が接続され、第1排気吐出通路12C1の流出側は、第2排気吐出通路12C2の流出側と排気最終合流点PB3にて合流されて合流排気通路12Dの流入側に接続されている。第2タービン32Bの排気吐出口には、第2排気吐出通路12C2の流入側が接続され、第2排気吐出通路12C2の流出側は、第1排気吐出通路12C1の流出側と排気最終合流点PB3にて合流されて合流排気通路12Dの流入側に接続されている。そして合流排気通路12Dの流出側は、酸化触媒51の流入側に接続されている。
【0034】
排気切替弁63は、第2排気流入通路12B2における排気連通通路12BBとの接続個所よりも排気下流側に設けられている。排気切替弁63は、制御装置70からの制御信号に基づいて、第2排気流入通路12B2を開閉する。
【0035】
また第1排気吐出通路12C1には、第1排気吐出通路12C1内の排気の圧力を検出する排気圧力検出手段22B(例えば圧力センサ)、第1排気吐出通路12C1内の排気の温度を検出する排気温度検出手段26(例えば温度センサ)等が設けられている。排気圧力検出手段22Bは、検出した圧力に応じた検出信号を制御装置70に出力し、排気温度検出手段26は、検出した温度に応じた検出信号を制御装置70に出力する。
【0036】
第1タービン31Bには、第1タービン31Bの排気流入口から第1タービン31Bへと導かれる排気ガスの流路である第1タービン内流路の開度(閉度)を調整することで排気の流速を調整可能な複数の第1可変ノズル31Cが設けられている。第1可変ノズル31Cは、制御装置70からの制御信号に応じて動作するノズル駆動手段31D(例えば電動モータ)にて動作される。またノズル開度検出手段31E(例えば回転角度センサ)は、第1可変ノズル31Cの開度に応じたノズル駆動手段31Dの動作状態(この場合、電動モータの回転角度)に応じた検出信号を制御装置70に出力する。なお、第2タービン内流路の開度(閉度)を調整する第2可変ノズル32C、ノズル駆動手段32D、ノズル開度検出手段32Eも同様であるので、これらの説明は省略する。
【0037】
酸化触媒51の流出側は、DPF52(微粒子捕集フィルタ)の流入側に接続されている。酸化触媒51は、内燃機関10の排気中のHC(炭化水素)とCO(一酸化炭素)を酸化して浄化する。
【0038】
DPF52の流出側は、尿素SCR53の流入側に接続されており、DPF52は、排気中の微粒子を捕集する。またDPF52には、DPF52の流入側と流出側の圧力差を検出する差圧検出手段22C(例えば差圧センサ)が設けられている。差圧検出手段22Cは、DPF52の流入側と流出側の圧力差に応じた検出信号を制御装置70に出力する。制御装置70は、差圧検出手段22Cからの検出信号に基づいた差圧から、DPF52に堆積された微粒子の量を推定することができる。
【0039】
尿素SCR53は、図示省略した尿素水添加弁から噴射された尿素を用いて、排気中のNOx(窒素酸化物)を還元して浄化する。
【0040】
アクセルペダル踏込量検出手段27(例えばアクセルペダル踏込角度センサ)は、アクセルペダルに設けられており、運転者によるアクセルペダルの踏込量に応じた検出信号を制御装置70に出力する。
【0041】
制御装置70は、CPU71、RAM72、記憶手段73、EEPROM74、タイマ75等を有している。RAM72、記憶手段73、EEPROM74、タイマ75等は、各種のバスにてCPU71と接続されている。記憶手段73は、例えばFlashROM等の記憶装置であり、後述する処理を実行するためのプログラムやデータ等が記憶されている。またCPU71は、後述する切替領域噴射量調整部71A、ポンピング損失推定部71B、総合損失推定部71C等を有しているが、これらの詳細については後述する。
【0042】
●[シングルターボモードの場合と、ツインターボモードの場合の、吸気の経路及び排気の経路の違いと、出力トルクの違い(
図2~
図4)]
図2は、
図1に示す内燃機関システム1において、第1ターボチャージャ31のみを用いて過給するシングルターボモードにおける吸気の経路(
図2中の太実線)と排気の経路(
図2中の太点線)を示している。シングルターボモードの場合、吸気バイパス弁61と吸気切替弁62と排気切替弁63は、制御装置70から閉じる側に制御されている。また
図3は、
図1に示す内燃機関システム1において、第1ターボチャージャ31と第2ターボチャージャ32の双方を用いて過給するツインターボモードにおける吸気の経路(
図3中の太実線)と排気の経路(
図3中の太点線)を示している。ツインターボモードの場合、吸気バイパス弁61は制御装置70から閉じる側に制御され、吸気切替弁62と排気切替弁63は制御装置70から開く側に制御されている。
【0043】
図2に示すシングルターボモードの場合の排気の経路では、
図3に示すツインターボモードの場合の排気の経路と比較して、排気マニホルド12A1、12A2の双方からの排気が第1排気流入通路12B1にまとめられる。従って、
図2に示すシングルターボモードの場合の排気マニホルド12A1、12A2内の排気の圧力は、
図3に示すツインターボモードの場合の排気マニホルド12A1、12A2内の排気の圧力よりも高くなる。別の言い方をすると、
図3に示すツインターボモードの場合の排気の経路では、
図2に示すシングルターボモードの場合の排気の経路と比較して、排気マニホルド12A1、12A2からのそれぞれの排気が、第1排気流入通路12B1と第2排気流入通路12B2のそれぞれに分散されて流れる。従って、
図3に示すツインターボモードの場合の排気マニホルド12A1、12A2内の排気の圧力は、
図2に示すシングルターボモードの場合の排気マニホルド12A1、12A2内の排気の圧力よりも低くなる。
【0044】
以上により、
図4に示すように、同じ運転状態で同じ燃料噴射量であっても、シングルターボモードの場合のポンピング損失である1ターボ時ポンピング損失SP1は、ツインターボモードの場合のポンピング損失である2ターボ時ポンピング損失SP2よりも大きくなる。
【0045】
なお、
図4におけるポンピング損失は、内燃機関10の吸気及び排気の際に使われる運動エネルギーの損失である。また
図4におけるその他の損失は、内燃機関10の熱エネルギーの損失である冷却損失を含む損失であり、排気損失や機械損失なども含む。シングルターボモードの場合の、ポンピング損失である1ターボ時ポンピング損失SP1と、冷却損失を含む1ターボ時その他損失SR1と、を含む損失を1ターボ時総合損失SS1とする。またツインターボモードの場合の、ポンピング損失である2ターボ時ポンピング損失SP2と、冷却損失を含む2ターボ時その他損失SR2と、を含む損失を2ターボ時総合損失SS2とする。1ターボ時ポンピング損失SP1は、2ターボ時ポンピング損失SP2よりも大きく、1ターボ時総合損失SS1は、2ターボ時総合損失SS2よりも大きい。従って、同じ燃料噴射量であっても、ツインターボモードの場合の内燃機関10の出力トルクである2ターボ時出力トルクTQ2は、シングルターボモードの場合の内燃機関10の出力トルクである1ターボ時出力トルクTQ1よりも大きくなる。
【0046】
●[内燃機関の運転領域、目標トルク、燃料噴射量、許容上限噴射量の設定(
図5~
図10)]
図5は、内燃機関10の運転状態に基づいた運転領域の例を示している。制御装置70の記憶手段には、内燃機関10の運転状態に応じた運転領域が設定されている。例えば運転領域は、
図5に示すように、内燃機関10の回転数に応じた3つの領域が設定されている。回転数が第1回転数N1よりも低い領域は、シングルターボモードで制御する運転領域である1ターボ領域に設定されている。回転数が第2回転数N2以上の領域は、ツインターボモードで制御する運転領域である2ターボ領域に設定されている。そして回転数が第1回転数N1以上かつ第2回転数N2未満の領域(1ターボ領域と2ターボ領域の間の領域)は、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替え、またはツインターボモードからシングルターボモードへの切り替えが発生する運転領域であるターボ切替領域に設定されている。以降の説明では、回転数に応じて運転領域を区分した例で説明するが、回転数に限定されず、排気流量や、過給圧等に応じて運転領域を区分してもよい。
【0047】
図6は、
図5に示した運転領域に対して、内燃機関10の耐久性や内燃機関10を搭載した車両の目標運動性能等に基づいて設定された目標トルクTgTQが、内燃機関の回転数に応じて(運転領域に応じて)設定された例を示している。
【0048】
図7は、
図5に示した運転領域に対して、内燃機関10の出力トルクが
図6に示した目標トルクとなるように燃料噴射量を設定した例を示している。上述したように、同じ燃料噴射量であっても、シングルターボモードの場合の出力トルクよりも、ツインターボモードの場合の出力トルクのほうが大きい。従って、シングルターボモードの場合は特性G1の燃料噴射量、ツインターボモードの場合は特性G2の燃料噴射量、となった例を示している。なお、同じ回転数であっても、平地走行時、登坂時、降坂時等、運転状態に応じて燃料噴射量(及び目標トルク)は異なるので、ここでは、ある運転状態Aの場合の例として説明する。なお、燃料噴射量の特性G1と特性G2との差ΔQは、上述した総合損失差に基づいた燃料噴射量であり、後述するターボモード調整噴射量に相当している。
【0049】
図8は、
図6に示した燃料噴射量に対する、許容上限噴射量を設定した例を示している。許容上限噴射量は、内燃機関10の出力トルクや耐久性等に基づいた上限の燃料噴射量が設定されている。許容上限噴射量は、シングルターボモードの燃料噴射量である特性G1に対して、シングルターボモードの場合の特性LM1、ツインターボモードの燃料噴射量である特性G2に対して、ツインターボモードの場合の特性LM2、が設定されている。
【0050】
図8に示す燃料噴射量の特性G1、G2は、ターボ切替領域では2通りあり、1本の燃料噴射量の特性G3にするために、
図9に示すように、1ターボ領域では特性G1、ターボ切替領域及び2ターボ領域では特性G2、とした特性G3を(仮の)燃料噴射量とする。同様に、
図8に示す許容上限噴射量の特性LM1、LM2は、ターボ切替領域では2通りあり、1本の許容上限噴射量の特性LM3とするために、
図9に示すように、1ターボ領域では特性LM1、ターボ切替領域及び2ターボ領域では特性LM2、とした特性LM3を(仮の)許容上限噴射量とする。以降に説明するフローチャートでは、燃料噴射量については、まず(仮の)燃料噴射量である特性G3に基づいて算出した後、シングルターボモード等の場合に補正(調整)する。同様に、許容上限噴射量については、まず(仮の)許容上限噴射量である特性LM3に基づいて算出した後、シングルターボモード等の場合に補正(調整)する。なお、許容上限噴射量(特性LM3)は、1ターボ領域からターボ切替領域を経由して2ターボ領域へとまたがって、許容される燃料噴射量の上限量として設定されている。
【0051】
なお、比較用として図示した
図10に示すように、燃料噴射量を、1ターボ領域及びターボ切替領域では特性G1、2ターボ領域では特性G1を延長した特性G11とした場合、シングルターボモードで制御した場合の特性TQ10と、ツインターボモードで制御した場合の特性TQ20と、に段差ΔTQが発生するので、燃料噴射量を段差なく連続させた特性G11は、好ましくない。
【0052】
●[制御装置70の処理手順(
図11)]
次に
図11に示すフローチャートを用いて、制御装置70(CPU71)の処理手順の例について説明する。
図11に示す処理は、例えば所定時間間隔(例えば、数[ms]~数10[ms]間隔)で起動され、起動されると、制御装置70(CPU71)は、ステップS010へと処理を進める。
【0053】
ステップS010にて制御装置70は、上述した種々の検出手段からの検出信号や、種々のアクチュエータの制御信号等に基づいて、内燃機関10の運転状態を検出する。運転状態には、内燃機関の回転数、アクセルペダル踏込量、燃料噴射量などが含まれている。そして制御装置70は、運転状態に基づいて目標トルクを求め、ステップS015へ処理を進める。例えば制御装置70は、内燃機関の回転数、燃料噴射量、アクセルペダル踏込量等に基づいて目標トルクを求める。
【0054】
ステップS015にて制御装置70は、運転状態に基づいて運転領域を判定し、ステップS020へ処理を進める。例えば制御装置70は、内燃機関の回転数に基づいて、
図5に示す1ターボ領域、ターボ切替領域、2ターボ領域、のいずれの運転領域であるかを判定し、判定した運転領域を記憶する。
【0055】
ステップS020にて制御装置70は、運転領域と運転状態に基づいて、シングルターボモードで制御するか、ツインターボモードで制御するか、を判定する。例えば制御装置70は、運転領域が1ターボ領域である場合はシングルターボモードで制御すると判定し、運転領域が2ターボ領域である場合はツインターボモードで制御すると判定する。また運転領域がターボ切替領域である場合は、予め設定された切替条件と運転状態等に基づいて、シングルターボモードで制御するか、ツインターボモードで制御するか、を判定し、必要に応じてターボモードの切替制御を実行して、ステップS025へ処理を進める。
【0056】
ターボモードの切替制御では、制御装置70は、現在、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替え中である1-2助走モード(
図14参照)の途中、あるいはシングルターボモードからツインターボモードへの切り替え開始、と判定した際には、1-2助走モードに応じて排気切替弁、吸気バイパス弁、吸気切替弁を制御する(
図14参照)。また制御装置70は、現在、ツインターボモードからシングルターボモードへの切り替え中である2-1助走モード(
図15参照)の途中、あるいはツインターボモードからシングルターボモードへの切り替え開始、と判定した際には、2-1助走モードに応じて排気切替弁、吸気バイパス弁、吸気切替弁を制御する(
図15参照)。また制御装置70は、ターボモードが、1-2助走モード、2-1助走モードではなく、シングルターボモードであると判定した場合は、排気切替弁、吸気バイパス弁、吸気切替弁をシングルターボモードに応じて制御(
図14、
図15参照)する。また制御装置70は、ターボモードが、1-2助走モード、2-1助走モードではなく、ツインターボモードであると判定した場合は、排気切替弁、吸気バイパス弁、吸気切替弁をツインターボモードに応じて制御(
図14、
図15参照)する。なお、1-2助走モード、2-1助走モードの期間T1、T2(
図14、
図15参照)は、例えば1[秒]程度である。また、ターボモードの判定とターボモードの切替制御は、既存の処理と同様であるので、詳細については省略する。
【0057】
ステップS025にて制御装置70は、内燃機関の回転数と許容上限噴射量特性(
図9に示した特性LM3の許容上限噴射量特性)に基づいて、(仮)許容上限噴射量を求めて記憶し、ステップS030へ処理を進める。
【0058】
ステップS030にて制御装置70は、運転領域が1ターボ領域であるか否かを判定する。制御装置70は、運転領域が1ターボ領域である場合(Yes)はステップS050Cへ処理を進め、運転領域が1ターボ領域でない場合(No)はステップS035へ処理を進める。
【0059】
ステップS035へ処理を進めた場合、制御装置70は、運転領域が2ターボ領域であるか否かを判定する。制御装置70は、運転領域が2ターボ領域である場合(Yes)はステップS050Bへ処理を進め、運転領域が2ターボ領域でない場合(No)はステップS040へ処理を進める。
【0060】
ステップS050Bへ処理を進めた場合、制御装置70は、2ターボ領域内でツインターボモードで制御した場合の噴射量として、目標トルクとなるように(近づくように)
図9に示す特性G3に基づいて燃料噴射量を求め、求めた燃料噴射量を(仮)噴射量に記憶する。また制御装置70は、2ターボ領域内でツインターボモードで制御した場合の許容上限噴射量として、ステップS025にて求めた(仮)許容上限噴射量を最終許容上限噴射量に記憶して、ステップS060へ処理を進める。
【0061】
ステップS050Cへ処理を進めた場合、制御装置70は、1ターボ領域内でシングルターボモードで制御した場合の噴射量として、目標トルクとなるように(近づくように)
図9に示す特性G3に基づいて燃料噴射量を求め、求めた燃料噴射量を(仮)噴射量に記憶する。また制御装置70は、1ターボ領域内でシングルターボモードで制御した場合の許容上限噴射量として、ステップS025にて求めた(仮)許容上限噴射量を最終許容上限噴射量に記憶して、ステップS060へ処理を進める。
【0062】
ステップS040へ処理を進めた場合、制御装置70は、処理SA000を実行してステップS050Aへ処理を進める。なお処理SA000は、総合損失差とターボモード調整噴射量を算出する処理であり、詳細については後述する。
【0063】
ステップS050Aにて制御装置70は、処理SB000を実行してステップS060へ処理を進める。なお処理SB000は、ターボ切替領域での(仮)噴射量、最終許容上限噴射量を算出する処理であり、詳細については後述する。
【0064】
なお処理SB000の処理を実行している制御装置70(CPU71)は、ターボ切替領域である場合には、シングルターボモードで制御した場合の内燃機関10の出力トルクと、ツインターボモードで制御した場合の内燃機関10の出力トルクとの差が小さくなるように、シングルターボモードで制御した場合の(燃料)噴射量とツインターボモードで制御した場合の(燃料)噴射量とが異なる値となるように(燃料)噴射量を求める、切替領域噴射量調整部71A(
図1参照)に相当している。
【0065】
ステップS060へ処理を進めた場合、制御装置70は、(仮)噴射量が最終許容上限噴射量以下であるか否かを判定する。制御装置70は、(仮)噴射量が最終許容上限噴射量以下である場合(Yes)はステップS065Aへ処理を進め、(仮)噴射量が最終許容上限噴射量以下でない場合(No)はステップS065Bへ処理を進める。
【0066】
ステップS065Aへ処理を進めた場合、制御装置70は、(仮)噴射量を最終噴射量に記憶し、
図11に示す処理を終了する。
【0067】
ステップS065Bへ処理を進めた場合、制御装置70は、最終許容上限噴射量を最終噴射量に記憶し、
図11に示す処理を終了する。
【0068】
そして制御装置70は、図示省略したインジェクタの駆動処理にて、最終噴射量を用いてインジェクタを制御する。
【0069】
●[処理SA000の詳細(
図12)]
次に
図12に示すフローチャートを用いて、処理SA000(総合損失差とターボモード調整噴射量の算出)の詳細について説明する。制御装置70は、
図11に示すステップS040に処理を進めた場合、
図12に示すステップSA010へ処理を進める。
【0070】
ステップSA010にて制御装置70は、ステップS010にて検出した運転状態に基づいて、シングルターボの場合のポンピング損失である1ターボ時ポンピング損失と、ツインターボの場合のポンピング損失である2ターボ時ポンピング損失と、を推定する。そして制御装置70は、1ターボ時ポンピング損失と2ターボ時ポンピング損失との差であるポンピング損失差を求めて記憶し、ステップSA020へ処理を進める。なお、運転状態に基づいてポンピング損失を算出する方法には、種々の方法があり、特に限定しない。
【0071】
ステップSA010の処理を実行している制御装置70(CPU71)は、1ターボ時ポンピング損失と2ターボ時ポンピング損失とを推定し、ポンピング損失差を求める、ポンピング損失推定部71B(
図1参照)に相当している。なお、1ターボ時ポンピング損失は、シングルターボモードで制御した場合における内燃機関の吸気及び排気の際に使われる運動エネルギーの損失である。また2ターボ時ポンピング損失は、ツインターボモードで制御した場合における内燃機関の吸気及び排気の際に使われる運動エネルギーの損失である。またポンピング損失差は、1ターボ時ポンピング損失と2ターボ時ポンピング損失との差である。
【0072】
ステップSA020にて制御装置70は、検出した運転状態に基づいて、シングルターボモードの場合の冷却損失である1ターボ時冷却損失と、ツインターボモードの場合の冷却損失である2ターボ時冷却損失と、を推定し、ステップSA030へ処理を進める。なお、運転状態に基づいて冷却損失を算出する方法には、種々の方法があり、特に限定しない。
【0073】
ステップSA030にて制御装置70は、1ターボ時ポンピング損失と1ターボ時冷却損失を含む1ターボ時総合損失を推定し、2ターボ時ポンピング損失と2ターボ時冷却損失を含む2ターボ時総合損失を推定する。なお、1ターボ時総合損失、2ターボ時総合損失には、(1ターボ時、2ターボ時の)機械損失や排気損失等の損失を含めてもよい。そして制御装置70は、1ターボ時総合損失と2ターボ時総合損失との差である総合損失差を求めて記憶し、ステップSA040へ処理を進める。
【0074】
ステップSA020、SA030の処理を実行している制御装置70(CPU71)は、1ターボ時総合損失と2ターボ時総合損失とを推定し、総合損失差を求める、総合損失推定部71C(
図1参照)に相当している。なお1ターボ時総合損失は、シングルターボモードで制御した場合における内燃機関の熱エネルギーの損失である1ターボ時冷却損失と1ターボ時ポンピング損失とを含むエネルギー損失である。また2ターボ時総合損失は、ツインターボモードで制御した場合における内燃機関の熱エネルギーの損失である2ターボ時冷却損失と2ターボ時ポンピング損失とを含むエネルギー損失である。また総合損失差は、1ターボ時総合損失と2ターボ時総合損失との差である。
【0075】
ステップSA040にて制御装置70は、総合損失差に基づいてターボモード調整噴射量を求めて記憶し、
図12に示す処理を終了し、
図11に示すステップS060へ処理を進める。なお、ターボモード調整噴射量は、総合損失差であるトルクを発生させるために必要な燃料量である。なお、ステップSA020、SA030の処理を省略して、総合損失差の代わりにポンピング損失差を用いてターボモード調整噴射量を求めてもよい。
【0076】
●[処理SB000の詳細(
図13)]
次に
図13に示すフローチャートを用いて、処理SB000(ターボ切替領域での(仮)噴射量、最終許容上限噴射量の算出)の詳細について説明する。制御装置70は、
図11に示すステップS050Aに処理を進めた場合、
図13に示すステップSB010へ処理を進める。
【0077】
ステップSB010にて制御装置70は、ターボ切替領域内でツインターボモードで制御した場合の噴射量として、目標トルクとなるように(近づくように)
図9に示す特性G3に基づいて燃料噴射量を求め、求めた燃料噴射量を2ターボ噴射量に記憶する。また制御装置70は、2ターボ噴射量にターボモード調整噴射量を加算(増量)した噴射量を1ターボ噴射量に記憶する。また制御装置70は、ターボ切替領域内でツインターボモードで制御した場合の許容上限噴射量として、
図9に示す特性LM3に基づいて許容上限噴射量を求め、求めた許容上限噴射量を2ターボ許容上限噴射量に記憶する。また制御装置70は、2ターボ許容上限噴射量にターボモード調整噴射量を加算(増量)した噴射量を1ターボ許容上限噴射量に記憶する。そして制御装置70は、ステップSB015へ処理を進める。
【0078】
ステップSB015にて制御装置70は、現在、1-2助走モード(シングルターボモードからツインターボへの切替中、
図14参照)であるか否かを判定する。制御装置70は、1-2助走モードである場合(Yes)はステップSB410へ処理を進め、1-2助走モードでない場合(No)はステップSB020へ処理を進める。
【0079】
ステップSB020へ処理を進めた場合、制御装置70は、現在、2-1助走モード(ツインターボモードからシングルターボモードへの切替中、
図15参照)であるか否かを判定する。制御装置70は、2-1助走モードである場合(Yes)はステップSB310へ処理を進め、2-1助走モードでない場合(No)はステップSB030へ処理を進める。
【0080】
ステップSB030へ処理を進めた場合、制御装置70は、現在、シングルターボモードであるか否かを判定する。制御装置70は、シングルターボモードである場合(Yes)はステップSB120へ処理を進め、シングルターボモードでない場合(No)はステップSB220へ処理を進める。
【0081】
ステップSB120へ処理を進めた場合、制御装置70は、(仮)噴射量に1ターボ噴射量を記憶してステップSB130へ処理を進める。
【0082】
ステップSB130にて制御装置70は、最終許容上限噴射量に1ターボ許容上限噴射量を記憶して
図13に示す処理を終了し、
図11に示すステップS060へ処理を進める。
【0083】
ステップSB220へ処理を進めた場合、制御装置70は、(仮)噴射量に2ターボ噴射量を記憶してステップSB230へ処理を進める。
【0084】
ステップSB230にて制御装置70は、最終許容上限噴射量に2ターボ許容上限噴射量を記憶して
図13に示す処理を終了し、
図11に示すステップS060へ処理を進める。
【0085】
ステップSB310に処理を進めた場合、制御装置70は、1ターボ噴射量と2ターボ噴射量の差であるターボモード調整噴射量ΔQ21(
図15参照)と、切替タイマ(2-1助走モードの経過時間であり、
図15参照)とに基づいた増加量を算出してステップSB320へ処理を進める。
【0086】
ステップSB320にて制御装置70は、2ターボ噴射量に増加量を加算した噴射量を(仮)噴射量に記憶してステップSB330へ処理を進める。
【0087】
ステップSB330にて制御装置70は、2ターボ許容上限噴射量に増加量を加算した噴射量を最終許容上限噴射量に記憶して
図13に示す処理を終了し、
図11に示すステップS060へ処理を進める。ステップSB310~SB330の処理にて、
図15に示すように、2-1助走モードの際、(仮)噴射量、最終許容上限噴射量を徐々に増加させ、急変を回避する。
【0088】
ステップSB410に処理を進めた場合、制御装置70は、1ターボ噴射量と2ターボ噴射量の差であるターボモード調整噴射量ΔQ12(
図14参照)と、切替タイマ(1-2助走モードの経過時間であり、
図14参照)とに基づいた減少量を算出してステップSB420へ処理を進める。
【0089】
ステップSB420にて制御装置70は、1ターボ噴射量から減少量を減算した噴射量を(仮)噴射量に記憶してステップSB430へ処理を進める。
【0090】
ステップSB430にて制御装置70は、1ターボ許容上限噴射量から減少量を減算した噴射量を最終許容上限噴射量に記憶して
図13に示す処理を終了し、
図11に示すステップS060へ処理を進める。ステップSB410~SB430の処理にて、
図14に示すように、1-2助走モードの際、(仮)噴射量、最終許容上限噴射量を徐々に減少させ、急変を回避する。
【0091】
●[その他の実施の形態(
図16、
図17)]
上述した実施の形態の説明では、目標トルクとなるように(近づくように)
図9に示す燃料噴射量の特性G3、許容上限噴射量の特性LM3を用いた。燃料噴射量の特性G3は、ターボ切替領域ではツインターボモードの燃料噴射量の特性G2を採用している。また許容上限噴射量の特性LM3は、ターボ切替領域ではツインターボモードの許容上限噴射量の特性LM2を採用している。
【0092】
これに対して、以下に説明する、その他の実施の形態では、
図16に示すように、燃料噴射量では特性G4を用い、許容上限噴射量には特性LM4を用いる。燃料噴射量の特性G4は、ターボ切替領域ではシングルターボモードの燃料噴射量の特性G1を採用している点が異なる。また許容上限噴射量の特性LM4は、ターボ切替領域ではシングルターボモードの許容上限噴射量の特性LM1を採用している点が異なる。
【0093】
上記の相違点により、制御装置70の処理は、
図13に示す処理SB000のステップSB010の処理が、
図17に示す処理SB000のステップSB010Aに変更される。以下、変更されたステップSB010Aの処理について説明する。なお、他の処理に変更はないので他の処理の説明については省略する。制御装置70は、
図11に示すステップS050Aに処理を進めた場合、
図17に示すステップSB010Aへ処理を進める。
【0094】
ステップSB010Aにて制御装置70は、ターボ切替領域内でシングルターボモードで制御した場合の噴射量として、
図16に示す特性G4に基づいて燃料噴射量を求め、求めた燃料噴射量を1ターボ噴射量に記憶する。また制御装置70は、1ターボ噴射量からターボモード調整噴射量を減算(減量)した噴射量を2ターボ噴射量に記憶する。また制御装置70は、ターボ切替領域内でシングルターボモードで制御した場合の許容上限噴射量として、
図16に示す特性LM4に基づいて許容上限噴射量を求め、求めた許容上限噴射量を1ターボ許容上限噴射量に記憶する。また制御装置70は、1ターボ許容上限噴射量からターボモード調整噴射量を減算(減量)した噴射量を2ターボ許容上限噴射量に記憶する。そして制御装置70は、ステップSB015へ処理を進める。
【0095】
以上、本実施の形態にて説明した内燃機関の制御装置によれば、2機のターボチャージャを有する内燃機関において、シングルターボモードとツインターボモードの、どちらのモードも有り得るターボ切替領域にて出力トルクが目標トルクとなるように制御する際、よりシンプルな処理にて、シングルターボモードの場合の出力トルクと、ツインターボモードの場合の出力トルクとの差をより低減することができる。
【0096】
本発明の内燃機関の制御装置は、本実施の形態で説明した構成、構造、処理手順、動作等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。また、内燃機関システムについては、本実施の形態にて説明したものに限定されず、第1ターボチャージャと第2ターボチャージャを備えた種々の内燃機関システムに適用することが可能である。
【0097】
また制御装置の処理手順については、本実施の形態にて説明した処理手順に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 内燃機関システム
10 内燃機関
11A 吸気管
11B1 第1吸気流入通路
11B2 第2吸気流入通路
11C1 第1吸気吐出通路
11C2 第2吸気吐出通路
11CB 吸気バイパス通路
11D 合流吸気通路
11E 吸気マニホルド
12A1、12A2 排気マニホルド
12B1 第1排気流入通路
12B2 第2排気流入通路
12BB 排気連通通路
12C1 第1排気吐出通路
12C2 第2排気吐出通路
12D 合流排気通路
13A EGR通路
21 吸気流量検出手段
22A 吸気マニホルド内過給圧検出手段
22B 排気圧力検出手段
22C 差圧検出手段
22D 大気圧検出手段
22E 吸気温度検出手段
22F 過給圧検出手段
22G 過給圧検出手段
23 燃圧検出手段
24 クーラント温度検出手段
25A クランク角度検出手段
25B カム角度検出手段
26 排気温度検出手段
27 アクセルペダル踏込量検出手段
28A 吸気マニホルド内吸気温度検出手段
30 過給システム
31 第1ターボチャージャ
31A 第1コンプレッサ
31B 第1タービン
31C 第1可変ノズル
31D、32D ノズル駆動手段
31E、32E ノズル開度検出手段
32 第2ターボチャージャ
32A 第2コンプレッサ
32B 第2タービン
32C 第2可変ノズル
33 スロットル装置
34 EGRクーラ
35 EGR弁
38 インタークーラ
41 燃圧調整ポンプ
42 コモンレール
51 酸化触媒
52 DPF
53 尿素SCR
61 吸気バイパス弁
62 吸気切替弁
63 排気切替弁
70 制御装置
71 CPU
71A 切替領域噴射量調整部
71B ポンピング損失推定部
71C 総合損失推定部
73 記憶手段
PA1 吸気分岐点
PA2 吸気中間合流点
PA3 吸気最終合流点
PB3 排気最終合流点
SP1 1ターボ時ポンピング損失
SP2 2ターボ時ポンピング損失
SR1 1ターボ時その他損失
SR2 2ターボ時その他損失
SS1 1ターボ時総合損失
SS2 2ターボ時総合損失