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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035757
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】蓋用積層材、包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220225BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220225BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220225BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B15/08 F
B32B27/18 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140292
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】羽野 隆之
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA12
3E086AB01
3E086AD05
3E086AD06
3E086AD23
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB51
3E086BB74
3E086BB75
3E086CA01
3E086CA11
3E086DA08
4F100AA21B
4F100AB01C
4F100AB10C
4F100AB33C
4F100AJ06A
4F100AK01A
4F100AK01D
4F100AK07D
4F100AK15B
4F100AK22B
4F100AK41E
4F100AK51E
4F100AL01B
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100CA13B
4F100CA19A
4F100CA19D
4F100EH46B
4F100EJ65E
4F100EJ86B
4F100GB15
4F100GB18
4F100HB00B
4F100HB31B
4F100JB16D
4F100JD01C
4F100JK06
4F100JK12A
4F100JK16
4F100JK16A
4F100JL12D
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最表面が保護樹脂層で被覆されかつその内面側に印刷層が配置させられている金属ラミネート包材よりなる蓋用積層材であって、保護樹脂層に衝撃等の外力が加わっても印刷層の剥がれや脱落、ズレ等の欠陥が生じない蓋用積層材の提供。
【解決手段】保護樹脂層11の最外表面に滑剤Sを存在させることにより外力を最外表面に沿って逃がす蓋用積層材10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を充填した容器の開口を覆うようにしてその開口周縁部に熱融着させられる蓋用の積層材であって、
外側より順に、
保護樹脂層と、
印刷層と、
金属箔よりなるバリア層と、
熱可塑性樹脂よりなるヒートシール層とを有し、
かつ、
前記保護樹脂層の最外表面に滑剤が存在していることを特徴とする、
蓋用積層材。
【請求項2】
前記ヒートシール層をなす熱可塑性樹脂に滑剤が含ませられている、請求項1の蓋用積層材。
【請求項3】
前記滑剤が存在させられた前記保護樹脂層の最外表面の動摩擦係数が0.05~0.5である、請求項1又は2の蓋用積層材。
【請求項4】
前記保護樹脂層の最外表面に存在する前記滑剤の量が0.05~1.0μg/cm2である、請求項1~3のいずれかの蓋用積層材。
【請求項5】
内容物を充填した容器の開口周縁部に請求項1~4のいずれかの蓋用積層材よりなる蓋が熱融着させられてなる、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種内容物を充填した容器を熱封緘するための蓋用の積層材と、この積層材よりなる蓋で熱封緘された包装体とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳酸菌飲料、清涼飲料及びヨーグルト等の食品、顆粒製剤及び錠剤等の医薬品、並びにガーゼ及びナフキン等の衛生用品といった多くの製品(以下、単に内容物ということがある。)は、合成樹脂や金属、紙等よりなる成形容器に充填したのち、熱融着性樹脂よりなるヒートシール層が最下面に配置させられている蓋で熱封緘することによって、密封された包装体の状態で市場を流通し、店頭に陳列される。
【0003】
前記蓋は一般に、内容物を光やガス、水分等より保護する目的で各種の金属ラミネート包材より作製する。この金属ラミネート包材は、厚さ中間にアルミニウム合金箔等の金属箔よりなるバリア層が配置させられた積層材であり、バリア層の外面側に印刷層を設け、内容物の商品名及び成分等の情報や、バーコード、図柄等を表示することがある。また、それら印刷情報の保護を図るため、印刷層に保護樹脂層としてポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムを積層したり、特許文献1~3で示されるように、各種コーティング剤よりなるオーバープリントコート層を形成したりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-031016号公報
【特許文献2】特開2014-062234号公報
【特許文献3】特開2019-206387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで前記包装体は、工場から倉庫、販売店を経て消費者の元に運ばれるが、搬送時ないし運搬時の振動や取り扱い時の不手際等により、蓋の表面に強い摩擦が生じたり衝撃が加わったりすることがあり、印刷層が保護樹脂層ごと剥がれたり、脱落したり、印刷面にズレが生じたりする。特に蓋が例えば図4で示されるようなスカート部を有するキャップ状の形態である場合には、エッジ部でそうした欠陥が生じやすい。
【0006】
上記問題を解消する手段としては、例えば保護樹脂層を架橋性の高い熱硬化性のオーバーコート剤で形成したり、印刷インキ層を例えば紫外線硬化型インキで構成したりする方法が挙げられるが、いずれも一定の効果は認められるものの、コーティング剤や印刷インキの種類が制限され得る点で汎用性を欠く。
【0007】
本発明は、外側より順に保護樹脂層、印刷層、金属箔よりなるバリア層、及び熱可塑性樹脂よりなるヒートシール層が積層させられた蓋用積層材であって、保護樹脂層に衝撃等の外力が加わったり強い摩擦が生じたりしても印刷層の剥がれや脱落、ズレ等の欠陥が生じない積層材を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、蓋用積層材を構成する保護樹脂層に何らかの物体が接触して外力が加わったとしても、この外力を蓋の最外表面に沿って逃すことができれば、保護樹脂層の材料や印刷インキの種類を特段制限せずとも印刷層の前記欠陥を防止できると着想した。そして、保護樹脂層の最外表面に滑剤を存在させて前記外力に因る摩擦力を低減させることにより、前記課題を解決可能な蓋を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち本発明は、下記構成よりなる蓋用積層材、及びこの蓋用積層材を要素とする包装体、に関する。
【0009】
1) 内容物を充填した容器の開口を覆うようにしてその開口周縁部に熱融着させられる蓋用の積層材であって、外側より順に、保護樹脂層と、印刷層と、金属箔よりなるバリア層と、熱可塑性樹脂よりなるヒートシール層とを有し、かつ、前記保護樹脂層の最外表面に滑剤が存在していることを特徴とする、蓋用積層材。
【0010】
2)前記ヒートシール層をなす熱可塑性樹脂に滑剤が含ませられている、1)の蓋用積層材。
【0011】
3)前記滑剤が存在させられた前記保護樹脂層の最外表面の動摩擦係数が0.05~0.5である、1)又は2)の蓋用積層材。
【0012】
4)前記保護樹脂層の最外表面に存在する前記滑剤の量が0.05~1.0μg/cm2である、1)~3)のいずれかの蓋用積層材。
【0013】
5)内容物を充填した容器の開口周縁部に1)~4)のいずれかの蓋用積層材よりなる蓋が熱融着させられてなる、包装体。
【発明の効果】
【0014】
1)の蓋用積層材は、その最外面が保護樹脂層で形成されているとともに、この保護樹脂層の最外表面に滑剤が存在させられている。そのため、この保護樹脂層は外部滑性を奏するようになり、衝撃等の外力が加わっても、摩擦力が低減させられていることから、それら外力が保護樹脂層の最外表面に沿って逃されるようになる。その結果、保護樹脂層の下面に配置させられている印刷層に脱落や剥離等の欠陥が生じ難くなる。それ故、この蓋用積層材よりなる蓋で内容物を含む容器を熱封緘した包装体は、例えば輸送のさい包装体どうしが衝突したり、複数をパッキングした状態で上側の包装体の底部とその下側の包装体の蓋上面とが擦れ合ったりする等して何らかの外力が蓋に加わったとしても、印刷層に欠陥が生じ難く、印字された商品情報や意匠のズレや掠れ等が回避可能となる。このことは、例えば販売時に商品棚で包装体を重ねて陳列するさい、上側の包装体の底部と下側の包装体の蓋とが擦れ合ったり、商品棚から包装体が落下して蓋上面に衝撃が加わったりする場合でも同様である。
【0015】
2)の蓋用積層材は、その最内面のヒートシール層をなす熱融着性樹脂に滑剤が予め含ませられているため、量産時にロール状に巻き取られた状態で一定の内部圧力・温度に付されると、熱融着性樹脂に含まれる滑剤が徐々にブリードアウトしてヒートシール層の最内表面に析出し、この析出した滑剤が、ヒートシール層に隣接して接触させられている保護樹脂層の最外表面に移行する。そして、巻き戻し後の蓋用積層材は、保護樹脂層の最外表面に滑剤が存在させられる結果、外部滑性を発現するようになり、1)の蓋用積層材と同様の効果を奏する。
【0016】
3)の蓋用積層材は、1)又は2)の蓋用積層材において、滑剤が最外表面に存在させられている保護樹脂層の動摩擦係数が所定範囲に限定されているため、何らかの外力が加わっても印刷層の欠陥がより生じ難い。また、この蓋用積層材は外部滑性が適切に調節されているため、これよりなる蓋で熱封緘した包装体を開封するさい、蓋における指の滑りも生じにくくなり、開封作業が容易となる。
【0017】
4)の蓋用積層材は、1)~3)のいずれかの蓋用積層材において、保護樹脂層の最外表面に存在させられた滑剤の量が所定範囲に限定されているため、印刷層の欠陥が一層生じ難くなる。
【0018】
5)の包装体は、内容物を充填した容器の開口周縁部に1)~4)のいずれかの蓋用積層材よりなる蓋が熱融着させられてなる密封体であり、この蓋の最外面が外部滑性のある所定の保護樹脂層で被覆されている。そのため、例えば輸送のさい包装体どうしが衝突したり、複数をパッキングした状態で上側の包装体の底部とその下側の包装体の蓋上面とが擦れ合ったりする等、外力が蓋に加わったとしても、印刷層に欠陥が生じ難くなり、印字された商品情報や意匠のズレや掠れ等が回避可能となる。このことは、例えば販売時に商品棚で包装体を重ねて陳列するさい、上側の包装体の底部と下側の包装体の蓋とが擦れ合ったり、商品棚から包装体が落下して蓋上面に衝撃が加わったりする場合でも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の蓋用積層材の垂直断面図である。
図2】本発明の蓋用積層材よりなるコイルと、このコイルにおける蓋用積層材の垂直断面図と、このコイルを巻き戻した状態における蓋用積層材の垂直断面図とを示す。
図3】本発明の包装体の一実施形態の垂直断面図である。
図4】スカート部を有するキャップ状の蓋の斜視図である。
図5】本発明の蓋用積層材の保護樹脂層について、外部滑性を試験する方法の概念図である。
図6】本発明の包装体をなす蓋の保護樹脂層について、外部滑性を試験する方法の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の蓋用積層材と包装体を図1~6を通じて詳細に説明するが、それら図面により本発明の技術範囲が限定されることはない。
【0021】
図1は、本発明の蓋用積層材(10) (以下、単に積層材(10)と略す。)の断面図である。図1(a)の積層材(10)は、外側より順に、保護樹脂層(11)と、印刷層(12)と、外面側アンカーコート層(13)と、バリア層(14)と、内面側アンカーコート層(15)と、緩衝材層(16)と、ヒートシール層(17)とがこの順で積層させられている。また、保護樹脂層(11)の最外表面には粒子状の滑剤(S)が付着させられおり、滑剤(S)よりなる所定厚みの滑剤層(11S)が観念される。図1(b)は、図1(a)の積層材(10)において滑剤(S)の形態が捨象され、単一の滑剤層(11S)が観念的に形成させられている様子を模式的に示す。図1(c)は、図1(b)の積層材(10)において、ヒートシール層(17)に粒子状の滑剤(S)が含ませられている様子を模式的に示す。図1(d)は、図1(c)の積層材(10)において、滑剤(S)がヒートシール層(17)の最内表面にブリードアウトさせられている様子を模式的に示す。なお、各図における滑剤(S)及び滑剤層(11S)の形態や、ヒートシール層(17)における滑剤(S)の分布状態はいずれも本発明の実施形態を便宜的かつ観念的に描写したものである。また、各図において、外面側アンカーコート層(13)、内面側アンカーコート層(15)及び緩衝材層(16)はいずれも省略可能である。
【0022】
図2は、図1(c)の積層材(10)を、そのヒートシール層(17)が内面となるように芯材に巻回させてロール状のコイルとなした場合における、層構成の概念図である。図2(a)は、図2(b)のコイル状の積層材(10)をエージングさせることによって、ヒートシール層(17)の最内表面にブリードアウトさせられた滑剤(S)が、同ヒートシール層(17)の下面に密着させられている保護樹脂層(11)の最外表面と接触し、同ヒートシール層(17)と同保護樹脂層(11)の界面に所定厚みの滑剤層(11S)が形成されている様子を模式的に示す。図2(b)は、積層材(10)を巻回させてなるコイルの模式図である。図2(c)は、巻き戻された積層材(10)において、保護樹脂層(11)の最外表面には滑剤(S)よりなる所定厚みの滑剤層(11S)が形成されているとともに、ヒートシール層(17)の最内表面には、前記ブリードアウトに因る析出相の一部が残存させられている様子を模式的に示す。なお、図2(a)及び図2(c)において、外面側アンカーコート層(13)、内面側アンカーコート層(15)及び緩衝材層(16)は全て省略されている。
【0023】
図3は、積層材(10)よりなる蓋(1)で容器(2)を熱封緘してなる包装体(3)の断面図である。図3(a)の包装体(3)は、蓋(1)が枚葉状でありかつ容器(2)の開口周縁部(21)が略水平状で有意の幅をもつフランジの態様である。図3(b)の包装体(3)は、蓋(1)がキャップ状でありかつ開口周縁部(21)が略起立状リムの態様である。各包装体(3)には内容物(C)が充填されている。
【0024】
保護樹脂層(11)は、積層材(10)及び蓋(1)の各最外面を構成するとともに、それらの強度や耐久性、耐候性、耐薬品性等を高める。そして、保護樹脂層(11)の最外表面には滑剤(S)が存在させられているため、蓋(1)と他の物体とが擦り合ったり、蓋(1)に衝撃等が加わったりしても、それら外力が保護樹脂層(11)の最外表面に沿って逃されるようになるため、包装体(3)の輸送時や陳列時に不意に生じ得る印刷層(12)の欠陥を未然に防止することが可能となる。なお、「存在している」とは、具体的には、滑剤(S)が何らかの外部手段により保護樹脂層(11)の最外表面に付着させられている趣旨であり、吸着、結着、蒸着及び溶着等の態様を含む。但し、保護樹脂層(11)内部に滑剤(S)を予め含ませておき、これをブリードアウトにより析出させて保護樹脂層(11)の最外表面に定着させる態様は除かれる。
滑剤(S)としては、各種公知のワックス及び/又は界面活性剤を特に制限なく使用できる。
ワックスとしては、天然ワックス及び/又は合成ワックスを使用できる。天然ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、蜜蝋、鯨蝋、シェラック蝋及びラノリンワックス等の動植物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト及びセレシン等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びペトロラタム等の石油ワックスが挙げられ、これらは単独で、或いは二種以上を組み合わせて使用できる。一方、合成ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びフィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系合成ワックス;硬化ヒマシ油及び硬化ヒマシ油誘導体等の水素化ワックス;ポリエチレン・ポリプロピレン共重合物にスチレンをグラフト変性させてなるワックス、シリコン系ワックス(シリコーンワックス)、フッ素系ワックス及びアミド系ワックス(オレイン酸アミド、リシノール酸アミド、エルカ酸アミド、N,N'-メチレンビスステアリン酸アミド、N,N'-エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリン酸物モノメチロールアミド、シリノール酸アミドワックス及びステアリン酸エステルワックス等)並びにこれらの複合体等の変性ワックスが挙げられ、これらは単独で、或いは二種以上を組合せて利用できる。ワックスの中でも、炭化水素系合成ワックスと変性ワックス(特にシリコン系ワックス及びアミド系ワックス)は、材料として安定であるのみならず、保護樹脂層(11)の最外表面に存在させた場合に分散性(拡散性)に優れる他、保護樹脂層(11)の外部滑性が一層良好となる点で好ましい。また、炭化水素系合成ワックスと変性ワックスは、後述のヒートシール層(17)に含ませた場合において、熱封緘時に溶融させられたヒートシール層(17)の流動性を調節する手段としても好適である。ワックスの形状は特に限定されず、ペースト状、フレーク状ないし粒子状であってよい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤よりなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、リシノレイン酸硫酸エステルソーダ、リシノレイン酸エステル硫酸エステルソーダ、硫酸化アミド、オレフィンの硫酸エステル塩、脂肪族アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、こはく酸エステルスルフォン酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、第一アミン塩、第三アミン塩、第四級アンモニウム化合物、ピリジン誘導体等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミノ又は脂肪族アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
ワックス及び界面活性剤は併用してもよく、界面活性剤の作用により、各種媒体中におけるワックスの分散性が良好となり、保護樹脂層(11)の最外表面により均質な滑剤層(11S)を形成できる場合がある。
【0025】
保護樹脂層(11)は、各種公知のオーバーコート剤及び/又は合成樹脂フィルムで構成できる。オーバーコート剤は、各種公知のバインダー樹脂を溶媒に溶解させてなる組成物である。バインダー樹脂としては、例えば、硝化綿(ニトロセルロース)、シェラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等の有機溶剤が挙げられ、二種以上を組合せてもよい。また、必要に応じ、メラミン系硬化剤やエポキシ系硬化剤、エポキシメラミン系硬化剤等の硬化剤を併用できる。また、オーバーコート剤よりなる保護樹脂層(11)は、シングルコートであってもよいし、二層以上のマルチコートであってもよい。一方、合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等よりなるポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、並びに延伸ポリプロピレン等よりなるポリオレフィンフィルムが挙げられ、同種又は異種のフィルムを二以上組合せてもよい。オーバーコート剤と合成樹脂フィルムを組合せる場合には、合成樹脂フィルムの上面にオーバーコート剤を適用するのが好ましい。保護樹脂層(11)全体の厚みは特に制限されないが、印刷層(12)の保護機能や、ヒートシール時の熱伝導性等を考慮すると、通常1~25μm、好ましくは1~15μmである。
【0026】
滑剤(S)が存在させられた保護樹脂層(11)の最外表面の外部滑性の程度は、動摩擦係数(JIS K7125)で評価できる。この値は特に限定されないが、0.05~0.5程度であると、印刷層(12)の欠陥がより生じ難くなり、また、包装体(3)を開封するさい指の滑りが生じにくくなるため、開封作業も容易となる。かかる観点より、動摩擦係数は、好ましくは0.1~0.3である。
【0027】
保護樹脂層(11)の最外表面に存在させられた滑剤(S)の量も特に限定されないが、所期の外部滑性や、印刷層(12)の欠陥防止性等を考慮すると、通常0.05~1.0μg/cm2、好ましくは0.1~0.5μg/cm2である。
【0028】
印刷層(12)は、保護樹脂層(11)と、後述の外面側アンカーコート層(13)又はバリア層(14)との間に介在させられる層であり、文字や図形、記号を形成し、蓋(1)に包装体(3)の内容物(C)の情報や、意匠を与える。印刷層(12)は、ベタ塗りのような連続的な層であってもよいが、図1で示すように断続的な層であってよく、後者層はグラビア印刷やオフセット印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷法で形成できる。また、印刷層(12)は単色刷りであってもよいし、多色刷りであってもよい。また、印刷層(12)は単層刷りであってもよいし、二層以上の多層刷りであってもよい。印刷層(12)を構成する印刷インキとしては、バインダー樹脂及び溶媒よりなる各種公知のビヒクルに着色材を各種公知の手段で分散させてなる組成物を利用できる。バインダー樹脂としては、例えば、硝化綿(ニトロセルロース)、シェラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の活性エネルギー線で硬化しないタイプのバインダー樹脂が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化型のバインダー樹脂としては、各種公知のジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレート、並びに分子内に(メタ)アクリロイル基を5~6個有する(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリレート類には、各種公知のウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートといった変性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。また、活性エネルギー線硬化型バインダー樹脂には、光重合開始剤として、ベンゾフェノン系開始剤やアセトフェノン系開始剤、ベンゾイン系開始剤等を組合せることができる。また、バインダー樹脂には、硬化剤として、例えば多官能イソシアネートや多官能エポキシ化合物、多官能オキサゾリン化合物、ケチミン化合物、メラミン化合物等を組合せることができる。また、溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等の有機溶剤を使用できる。また、バインダー樹脂が活性エネルギー線硬化型の樹脂である場合には、各種公知の (メタ)アクリレートを反応性希釈剤として使用できる。一方、着色材としては、顔料及び/又は染料が挙げられる。顔料としては二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト、パライト、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、沈降性シリカ、エアロジル、タルク、アルミナホワイト、マイカ、合成ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、カーボンブラック、マグネタイト及びベンガラ等の有機系若しくは無機系の顔料を例示できる。染料としては、アントラキノン系染料、アゾ系染料及びキノリン系染料等を例示できる。印刷インキにおける着色材の含有量は特に限定されず、通常は0.5~40重量%であるが、印刷層(12)の強度を確保し、その内部脱落や内部剥離を抑制する観点より2~15重量%が好ましい。また、着色材の大きさも特に限定されず、顔料の場合には、平均一次粒子径が通常0.1~5μm、好ましくは0.5~3μmである。なお、印刷インキには、添加剤として、例えば各種公知のシランカップリング剤や、硬化剤、帯電防止剤等を適量含めてもよい。印刷層(12)全体の厚みは特に限定されず、通常、一層当たり0.5~2μm、好ましくは0.5~1.5μmである。
【0029】
外面側アンカーコート層(13)は、バリア層(14)の外面側表面に必要に応じて形成させられる任意の層であり、保護樹脂層(11)及び/又は印刷層(12)と、バリア層(14)との間に介在させることによって、それら層どうしの接着性ないし密着性を高め、デラミネーションを防ぐことが容易となる。外面側アンカーコート層(13)を構成するアンカーコート剤としては、例えば、硝化綿(ニトロセルロース)、シェラック樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。ポリウレタン樹脂をベースとするアンカーコート剤としては、二液硬化型ポリエーテル-ウレタン樹脂系接着剤及び/又は二液硬化型ポリエステル-ウレタン樹脂系接着剤が好ましく、硬化剤として、例えば多官能イソシアネートや多官能エポキシ化合物、多官能オキサゾリン化合物、ケチミン化合物等を併用できる。外面側アンカーコート剤として、保護樹脂層(11)をなす樹脂及び/又は前記印刷インキをなすバインダー樹脂と同一又は同種の樹脂よりなるものを選択すると、外面側アンカーコート剤層(13)と、前記保護樹脂層(11)及び/又は前記印刷層(12)との密着性が更に良好になり、デラミネーションや、印刷層(12)の欠陥を防止しやすくなる。外面側アンカーコート層(13)の厚みは特に限定されず、通常1~5μmである。外面側アンカーコート層には滑剤(S)及び前記着色材が含まれない。
【0030】
バリア層(14)は金属箔よりなり、内容物(C)をガスや水蒸気、光等から保護する。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔及びニッケル箔等が挙げられ、バリア機能、成形性及びコスト等を考慮するとアルミニウム箔が好適である。アルミニウム箔としては、純アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が挙げられ、軟質材(O材)及び硬質材(H18材)のいずれかであればよい。特にJIS H4160で規定される1000系のアルミニウム合金箔のO材又は8000系アルミニウム合金箔のO材は成形性の点で好ましく、とりわけA1N30H-O、A8021H-O及びA8079H-Oが好適である。また、金属箔の片面又は両面には、それら界面における接着強度を向上させる目的で、下地層を、所定の化成処理液を用いて形成できる。化成処理液としては、例えば、リン酸と、クロム系化合物と、フッ素系化合物及び/又はバインダー樹脂とを含む水-アルコール溶液が挙げられる。クロム系化合物としてはクロム酸及び/又はクロム(III)塩を、フッ素系化合物としてはフッ化物の金属塩及び/又はフッ化物の非金属塩を、バインダー樹脂としてはアクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を、夫々例示できる。化成処理液の使用量は特に限定されず、通常、金属箔の片面当たりのクロム付着量が0.1~50mg/m2となる範囲である。バリア層(14)の厚みは特に限定されないが、通常5~50μmである。この範囲であると、ピンホールの発生や振動に因るクラックを防止しやすくなり、またヒートシール時の伝熱性を確保しやすくなる。かかる観点より、当該厚みは、好ましくは7~35μmである。
【0031】
内面側アンカーコート層(15)は、バリア層(14)の内面側表面に必要に応じて形成させられる任意の層であり、バリア層(14)と、任意の緩衝材層(16)又はヒートシール層(17)との間に介在させることによって、それら層どうしの密着性を高め、デラミネーションを防ぐことが容易となる。内面側アンカーコート層(15)を構成するアンカーコート剤としては、かかる密着性を考慮すると、各種公知のポリウレタン樹脂系接着剤が好ましい。特に二液硬化型ポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤及び/又は二液硬化型ポリエステル-ポリウレタン樹脂系接着剤が好適であり、硬化剤として、例えば多官能イソシアネートや多官能エポキシ化合物、多官能オキサゾリン化合物、ケチミン化合物等を併用できる。内面側アンカーコート層(15)の厚みは特に限定されないが、前記密着性やデラミネーションを考慮すると通常1~5μm、好ましくは1~3μmである。
【0032】
緩衝材層(16)は、バリア層(14)又は内面側アンカーコート層(15)とヒートシール層(17)との間に配置させられる任意の層であり、本発明の包装体(3)に振動や衝撃等の外力が加わった場合に生じ得るバリア層(14)のクラックや、包装体(3)開封時の蓋(1)の破れを防止することが可能となる。緩衝材層(16)は各種公知の合成樹脂で構成でき、例えば、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレン等のポリプロピレン類、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、並びに、ポリ(エチレン-プロピレン)ランダム共重合体及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体等のポリエチレン・プロピレン類等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂のうちポリエチレン類は、ヒートシール層(17)が後述のホットメルト接着剤や多層シーラントフィルムである場合に好適である。また、ポリプロピレン類は、ヒートシール層(17)がポリプロピレン類やポリエステル類等の場合に好適である。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。緩衝材層(16)は、前記合成樹脂よりなるフィルム(延伸又は無延伸)で構成してもよいが、押出法で構成するのが好ましい。緩衝材層(16)の厚みは特に限定されないが、通常10~50μmである。かかる範囲であると、前記したバリア層(14)のクラックや蓋(1)の破れを防止しやすくなる。かかる観点より、当該厚みは、好ましくは25~35μmである。
【0033】
ヒートシール層(17)は、蓋(1)の最下面を構成するとともに容器(2)の開口周縁部と熱融着させられる層であり、各種公知の熱融着性樹脂フィルム及び/又はホットメルト接着剤よりなる。 ヒートシール層(17)の厚みは特に限定されないが、シール精度やシール強度を考慮すると、通常10~60μm、好ましくは15~50μmである。
熱融着性樹脂フィルムは、無延伸フィルム又は延伸フィルムのいずれかであればよい。熱融着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂及びポリスルホン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレン等のポリプロピレン類、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、並びに、ポリ(エチレン-プロピレン)ランダム共重合体及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体等のポリエチレン・プロピレン類等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。ポリビニル樹脂としてはポリスチレン樹脂等を例示できる。熱融着性樹脂フィルムは、上記構成樹脂を二種以上組合せたものであってよく、例えばそれら樹脂を共押出ししてなる多層フィルムや、ポリプロピレン類よりなるフィルムとポリビニル樹脂よりなるフィルムを任意の順序で組合せてなる多層シーラントフィルムが挙げられる。また、熱融着性樹脂フィルムには、前記した滑剤(S)を予め含ませてよい。具体的には、例えば、熱融着性樹脂フィルムが二層以上のフィルムよりなる場合には、最内表面をなすフィルムを、滑剤(S)を予め練り込んだ熱融着性樹脂で構成できる。当該滑剤(S)として前記変性ワックスを、特にアミド系ワックスを選択すると、本発明の積層材(10)を巻回しコイル状態で保管するさい生じ得るヒートシール層(17)と保護樹脂層(11)とのブロッキングを好適に予防できる。また、滑剤(S)の添加量は特に限定されないが、熱融着性樹脂の重量を基準として通常100ppm~8000ppm、好ましくは500ppm~3000ppmであればよい。
ホットメルト接着剤としては、ベース樹脂及び粘着付与樹脂を含む組成物が挙げられる。ベース樹脂としては、ポリオレフィン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体を例示でき、ポリオレフィン樹脂としては前記したものが、また酢酸ビニル共重合体としては例えばエチレン・エチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体が挙げられる。粘着付与樹脂としては、ロジン及び/又は不均化ロジン等のロジン類、ロジン類とグリコール、グリセリン及びペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル類、並びにテルペン及び/又はスチレン等を構成モノマーとする炭化水素樹脂等を例示できる。ホットメルト接着剤には、前記した滑剤(S)を予め含ませてよい。この滑剤(S)としては、ホットメルト接着剤よりなるヒートシール層(17)の最内表面にブリードアウトするものであれば特に限定されないが、前記ワックスが好ましく、特に前記合成ワックスのうち炭化水素系合成ワックス及び/又は変性ワックスが好適である。具体的には、シリコン系ワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びポリエチレン・ポリプロピレン共重合物にスチレンをグラフト変性させてなるワックス並びにそれらの複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のワックスが好ましく、これによれば本発明の積層材(10)をロール状態で保管するさい生じ得るヒートシール層(17)と保護樹脂層(11)とブロッキングを好適に予防できる。また、任意に各種添加剤を使用でき、例えばアンチブロッキング剤や帯電防止剤挙げられる。ホットメルト接着剤におけるポリオレフィン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体及び粘着付与樹脂並びに滑剤(S)及び添加剤の含有量は特に限定されず、例えば順に5~50重量%、10~30重量%、15~30重量%、25~55重量%及び0~1重量%である(合計100重量%)。ホットメルト接着剤は、例えば、バリア層(14)、内面側アンダーコート層(15)又は緩衝材層(16)にホットアプリケーターやグラビアコーター等を用いて塗工できる。また、ホットメルト接着剤に代えて、フィルム状のホットメルト接着材を用いてもよく、この接着材にも滑剤(S)を予め含ませることができる。また、ホットメルト接着剤に前記熱融着性樹脂フィルムを組合せてヒートシール層(17)を構成してもよい。
ヒートシール層(17)と容器(2)とを同一又は同種の合成樹脂で構成すると、シール精度及び強度が高まり、例えばシール面に塵芥等の夾雑物が付着していても、蓋(1)と容器(2)の開口周縁部(21)との熱融着性が高まる。
【0034】
積層材(10)は、例えばドライラミネート法や溶融押し出しラミネート法、ヒートラミネート法等の各種公知の方法で製造でき、これら工法は組合せてもよい。積層材(10)をなす保護樹脂層(11)の最外表面に滑剤(S)を存在させる方法は特に限定されず、例えば塗布法や転写法、蒸着法等が挙げられる。
塗布法では、例えば、保護樹脂層(11)の最外表面をなす前記オーバーコート剤よりなる塗膜又は前記合成樹脂フィルムに、前記有機溶剤に滑剤(S)に溶解又は分散させてなる滑剤溶液乃至分散体を公知の塗布手段によって塗布し、有機溶剤を揮発させることにより、滑剤(S)を保護樹脂層(11)の最外表面に存在させることができる。また、滑剤(S)として前記ワックスに適量の前記界面活性剤を組合せたものを用いると塗布性が向上し、より均一な厚みの滑剤層(11S)が形成されやすくなる傾向にある。塗布手段は特に限定されず、例えば、スプレーコート法やグラビアロールコート法、リバースロールコート法等が挙げられる。滑剤溶液乃至分散体における滑剤の濃度は特に限定されないが、通常、重量基準で500 ppm~10000ppm程度である。保護樹脂層(11)の最外表面に存在する滑剤(S)が分散相を形成する場合には、図1(a)で観念されるような断続的な滑剤層(11S)が形成され得る。また、当該滑剤(S)が連続相を形成する場合には、図1(b)で観念されるような連続的な滑剤層(11S)が形成され得る。
転写法では、例えば、滑剤(S)を予め含ませた前記熱融着性樹脂でヒートシール層(17)を形成してなる積層材(10)を、このヒートシール層(17)が内側となるように適当な芯材に連続的に巻きつけてゆき、図2(b)で示されるような、ヒートシール層(17)と保護樹脂層(11)とが密着させられた一本のコイル(ロール)を一旦作製する。次いで、このコイルを所定温度下に所定時間放置し、エージングを行うことにより、滑剤(S)をヒートシール層(17)の最内表面にブリードアウトさせる。そうすると、そのように析出した滑剤(S)が、該ヒートシール層(17)と密着させられている保護樹脂層(11)の最外表面に移行し乃至転写させられ、滑剤(S)の種類や滑剤(S)とヒートシール層(17)をなす熱融着性樹脂との組合せ、エージング条件にもよるが、図2(a)で示すように、ヒートシール層(17)と保護樹脂層(11)の界面に滑剤層(11S)が形成させられると考えられる。この滑剤層(11S)は連続相であってもよいし、分散相であってもよい。一方、このコイルを巻き戻した後の積層材(10)は、前記保護樹脂層(11)の最外表面に滑剤(S)が存在させられているとともに、ヒートシール層(17)の最内表面には、図2(c)で示されるように、前記ブリードアウトした滑剤(S)が残存させられていると考えられる。なお、転写法はコイルを作製せずとも行える。具体的には、例えば方形状の積層材(10)を複数枚用意し、ヒートシール層(17)と保護樹脂層(11)とが接触するように重なり合わせたのち、上部より所定重量のウェイトを乗せ、エージングさせることによっても、保護樹脂層(11)の最外表面に滑剤(S)を存在させることができる。いずれの方法においても、ヒートシール層(17)に含ませられる滑剤(S)としては、例えばシリコン系ワックスやポリエチレンワックス、アミド系ワックスが好適である。エージングの条件は特に限定されず、例えば室温~70℃程度、1~15日程度であればよい。
蒸着法では、例えば、真空チャンバー中で滑剤(S)を加熱して気化させ、保護樹脂層(11)の最外表面にクラスター分子として蒸着させればよい。この態様だと、図1(b)で示されるような、連続的な単一層よりなる滑剤層(11S)を容易に形成できる。
上記した方法は二以上を組合せてもよい。具体的には、例えば、ヒートシール層(17)に滑剤(S)を予め含ませてなる積層材(10)の保護樹脂層(11)の最外表面に、該滑剤(S)と同一又は異なる滑剤(S)よりなる滑剤層(11S)を前記塗布法により予め形成しておき、前記転写法を実施することによって、該保護樹脂層(11)の最外表面に、ヒートシール層(17)に含ませられていた滑剤(S)を移行させることができる。この場合、最終的な滑剤層(11S)は、塗布法に拠った形態と転写法に拠った形態とが混成した複合層と言い得る。
また、保護樹脂層(11)上に存在させられた滑剤(S)がワックスを含む場合には、その融点以上の温度に積層材(10)を置き、滑剤(S)を部分的ないし全体的に溶融させることにより保護樹脂層(11)の最外表面に濡れ広がらせ、蓋(1)の外部滑性を高めることもできる。
【0035】
蓋(1)は、積層材(10)を加工したものであり、寸法及び形状は特に限定されず、容器(2)の形状や、包装体(3)の開封様式に応じて適宜決定できる。具体的には、図2(a)で示されるように、容器(2)が上方開口のカップ形状であって開口周縁部(21)が略水平なフランジ状である場合には、蓋(1)は本体部(1a)よりなる枚葉状の部材であってよく、必要に応じタブやノッチ等の開封用切掛を形成できる。また、図2(b)で示されるように、容器(2)が上方開口のボトル形状であって開口周縁部(21)がリム状である場合には、蓋(1)は、図3(b)及び図4で示すようなキャップ形状であってよい。
【0036】
図4は、キャップ状の蓋(1)の斜視図であり、この蓋(1)は、本体部(1a)と、本体部(1a)の周縁より垂下状に伸びたスカート部(1b)とよりなる。なお、図示は省略するが、容器(2)が図3(b)で示されるようなボトル形状であっても、開口周縁部(21)をフランジ状に形成できることはもとよりであり、この場合も蓋(1)にはスカート部(1b)が形成されていてよい。また、同じく図示は省略するが、容器(2)はプレス・スルー・パック(PTP)用の容器であってもよく、この場合、蓋(1)は本体部(1a)よりなるシート状の部材であり得る。
【0037】
図5は、蓋(1)(積層材(10))をなす保護樹脂層(11)の外部滑性を評価する方法の概念図である。本図の装置(4)は、本発明の蓋(1)を載置する水平台(41)と、保護樹脂層(11)の上方に配置される金属製の支柱(42)と、支柱(42)の底面に接続される金属製の球状端子(43)とで構成されており、球状端子(43)の表面は綿ガーゼ(図示外)で覆われている。また、本図において、蓋(1)は便宜上、保護樹脂層(11)、印刷層(12)及びバリア層(14)のみで構成される。評価方法の詳細は実施例で説明する。
【0038】
容器(2)は、蓋(1)との熱融着性や、内容物(C)の性状に応じて素材を選定する。素材としては、ヒートシール層(17)を構成する前記熱融着性樹脂フィルム又は前記ホットメルト接着剤と同一若しくは同種の樹脂が好ましいが、ガラス、鉄、銅、アルミニウム等も使用できる。特に、容器(2)の開口周縁部(21)を熱融着性樹脂で形成するとともに、蓋(1)のヒートシール層(17)も同一又は同種の熱融着性樹脂で構成すると、包装体(3)のシール精度及び強度が良好となり、密封性が高まる。容器(2)の形状も特に限定されず、カップ形状、ボトル形状、筒状等が挙げられる。容器(2)がボトル形状の場合には、図3(b)で示すようにネック部分をテーパー形状とすると、安定したシールが可能となる。容器(2)の製造法は特に限定されず、例えば深絞りやブロー成形、真空成形、圧空気成形が挙げられる。
【0039】
内容物(C)は特に限定されず、例えば経口摂取される製品が挙げられる。具体的には、乳製品や乳飲料、清涼飲料、ハム、チーズ、カレー、ソース等の固形状若しくは液状の食料品、又は、液状若しくは固形状の医薬品等を例示できる。また、ナフキンやガーゼ、コットン等の衛生用品も内容物(C)足り得る。
【0040】
包装体(3)は、内容物(C)を充填した容器(2)に、本発明の蓋(1)を、各種公知のシール装置を用いて熱融着させ、封緘したものである。シール条件は特に制限されず、蓋(1)や容器(2)の材料種、シール装置のスペック等に応じて適宜決定する。
【0041】
図6は、包装体(3)の蓋(1)における保護樹脂層(11)の外部滑性を直接評価する方法の概念図である。本図の装置(5)は、段ボール等の包装材(51)と、その内部に収容された複数のサンプル(52)とよりなる。各サンプル(52)は、二個の包装体(3)を横方向に連接させて、側面よりポリエチレンフィルム等の結束フィルム(53)で拘束した組物である。サンプル(52)の数は特に限定されず、包装材(51)の寸法や包装体(3)の大きさに応じて適宜決定すればよい。本図では、3組のサンプルが上下方向に間仕切り材(54)を介して積層させられている。間仕切り材(54)としては、例えば、段ボールのように表面に凹凸があり一定の強度を有する素材を用いることができる。但し間仕切り材(54)は任意であり、省略できる。評価方法の詳細は実施例で説明する。
【実施例0042】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、それら具体例により本発明の技術範囲が限定されることはない。
【0043】
<蓋(1)の作製>
実施例1
JIS H4160で規定されるA8079H-O材である厚さ25μmのアルミニウム箔の片面に、市販の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系アンカーコート剤に白色顔料(二酸化チタン)を10重量%分散させてなる白色インキを塗膜厚みが約1.5μmとなるようにグラビアロールで塗工し、印刷層を形成させた。次いで、この印刷層の表面に、硝化綿の酢酸エチル溶液(不揮発分10重量%)を塗工し、乾燥させることにより、厚さ2μmの保護樹脂層を形成させて、中間部材を作製した。次いで、この中間部材のアルミニウム箔のもう一方の面に、市販の二液硬化型ポリエステルポリウレタン系接着剤を塗工して厚さ2μmの内面側アンカーコート層を形成させた。次いで、この内面側アンカーコート層に、厚さ40μmの滑剤含有無延伸ポリプロピレンフィルム(主成分:ポリプロピレン樹脂(ランダムコポリマー)、滑剤:エルカ酸アミド(1000ppm))を貼り合わせてヒートシール層を形成し、積層材A0を作製した。次いで、積層材A0を、ヒートシール層が内側になるように巻回させてコイルを作製し、このコイルを40℃で10日間エージングさせることによって、ヒートシール層の最内表面に滑剤をブリードアウトさせると同時に、これを保護樹脂層の最外表面に転写させた。次いで、このコイルを巻き戻すことにより、本発明に係る積層材Aを準備した。積層材Aの保護樹脂層の動摩擦係数をJIS K7125に準拠して測定(以下、同様)したところ0.25であった。
【0044】
実施例2
実施例1で作製したのと同じ中間部材を準備し、そのアルミニウム箔のもう一方の面に、市販の二液硬化型ポリエステルポリウレタン系接着剤を塗工して厚さ2μmの内面側アンカーコート層を形成した。 次いで、この内面側アンカーコート層に低密度ポリエチレンを押し出して、厚さ30μmの緩衝材層を形成した。次いで、この緩衝材層に、ホットメルト接着剤をグラビアロールで20μm厚となるように塗工したのち冷却し、ヒートシール層を形成させることによって、積層材B0を作製した。このホットメルト接着剤の組成はエチレン・エチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体(13重量%)、ポリエチレン樹脂(融点95℃)(31重量%)、シリコン系ワックス及びポリエチレンワックス(計45重量%)、粘着付与剤(10重量%)、及びアンチブロッキング剤を含む添加剤(1重量%)(合計100重量%)であった。次いで、積層材B0を、ヒートシール層が内側になるように巻回させてコイルを作製し、このコイルを40℃で10日間エージングさせることによって、ヒートシール層の最内表面に滑剤をブリードアウトさせると同時に、これを保護樹脂層の最外表面に転写させた。次いで、このコイルを巻き戻すことにより、本発明に係る積層材Bを準備した。積層材Bの保護樹脂層の動摩擦係数は0.45であった。
【0045】
実施例3
実施例1で作製したのと同じ中間部材を準備し、そのアルミニウム箔のもう一方の面に、市販の二液硬化型ポリエステルポリウレタン系接着剤を塗工して厚さ2μmの内面側アンカーコート層を形成した。次いで、この内面側アンカーコート層に低密度ポリエチレンを押し出して、厚さ30μmの緩衝材層を形成した。次いで、この緩衝材層に、滑剤を含まない厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(主成分:ポリプロピレン樹脂(ランダムコポリマー))を貼り合わせて、ヒートシール層を形成させたのち、40℃で10日間エージングさせることによって、積層材C0を作製した。次いで、積層材C0の保護樹脂層の最外表面に、ポリエチレンワックスを重量基準で1000ppm含むメチルエチルケトン溶液をスプレーしたのち、フェルト布で軽く拭きとり、120℃で1分間乾燥させることにより、本発明に係る積層材Cを作製した。積層材Cの保護樹脂層の動摩擦係数は0.07であった。
【0046】
比較例
前記積層材A0、B0及びC0はいずれも共通の中間部材を利用しており、かつ、この中間部材をなす保護樹脂層の最外表面には滑剤が存在させられていないため、前記積層材A0を比較例に代表させた。該積層材A0の保護樹脂層の動摩擦係数は1.2であった。
【0047】
<滑剤存在量の測定>
積層材Aより試験片A1(10cm×10cm)を50枚用意した。次いで、一の試験片A1を電子天秤(新光電子株式会社、HTR-220)で秤量したのち、保護樹脂層の表面を、エタノールを含浸させた不織布でふき取ってから、再度秤量した。次いで、この試験片A1の重量差分(μg)を、当該試験片の面積(100cm2)で除することにより、滑剤の存在量(μg/cm2)を求めた。また、他の49枚の試験片A1についてもそれぞれ同様にして滑剤の存在量(μg/cm2)を求めた。そして、50枚全てについての滑剤存在量の合計値を、試験片の全枚数(50枚)で除することにより、積層材Aの保護樹脂層の最外表面における滑剤存在量を平均値として求めたところ、0.28μg/cm2であった。積層材B及びCについても同様にして同平均値を求めた。なお、結果を表1に示す。
【0048】
<蓋用積層材の外部滑性評価(試験1)>
積層材Aより試験片A2(5cm×20cm)を切り出し、ステンレス製の水平支持台に載置し、四辺を粘着テープで固定した。次いで、試験片A2の上面に所定の摺動部材を設置した。この摺動部材は、図5で示されるような総重量1kgの治具であり、球状端子(SUS304)の直径は10mmであった。また、この球状端子は綿ガーゼで被覆させられていた。次いで、この摺動部材を降下させることにより、その球状端子を、綿ガーゼを介して、保護樹脂層に軽く圧接させた。次いで、この部材を左右方向に、往復距離が2cm/秒となるよう動かし、印刷面に掠りが生じる等、印刷層の外観が変化するまで摺動させた。なお、往復回数は30回を上限とした。評価は、変化が生じるまでの往復回数が1~10回以内であれば不良(×)と、11~20回であればやや良好(△)と、21~30回以内であれば良好(○)とした。結果、試験片A2は30回であり良好(○)であった。試験片B、C及びA0についても同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0049】
<包装体の作製、蓋の外部滑性評価(試験2)>
積層材Aより所定寸法の蓋A(80mm×80mm)を切り出した。次いで、ポリスチレン樹脂製で所定寸法のフランジ付カップ状容器(口径66mmφ、底径57mmφ、高さ26mm、フランジ幅7mm)に水54ccを入れ、その開口を覆うようにして蓋Aをそのヒートシール層側より被せ、上部より150℃に熱したステンレス板を1.0秒間押圧させることにより、密封された包装体Aを作製した。また、同様の方法により、包装体Aを更に23個作製した。次いで、二個の包装体Aを水平台に並べ、フランジ部分どうしを当接させた状態で、側面よりポリエチレンフィルムを巻きつけて結束し、一組のサンプルを作製した。同様の方法で一組のサンプルを更に11個作製した。次いで、図6で示されるように、所定寸法の段ボール箱(縦11cm×横24cm×奥行き19cm)の底面に前記サンプルを計三組並べ、それらの蓋の上面に間仕切り材として厚さ1mmの段ボールシート(24cm×19cm)を載置し、更にその上に前記サンプルを計三組並べた。この作業を繰り返し、合計12組の前記サンプルをパッキングした。次いで、この段ボール箱を粘着テープで梱包した後、市販の振盪装置(ヤマト科学(株)製、SA31)にかけて、所定条件(120rpm、振幅50mm)で100時間振盪させた。次いで、この段ボール箱を開梱し、24個の包装体A全てについて蓋の上面を目視判断し、夫々について印刷層の剥がれ部分を数えた。評価は、剥がれ部分の個数が0~2個であれば良好(○)と、3~10個であればやや良好(△)と、11個以上であれば不良(×)とした。結果、包装体Aは剥がれ部分の個数が0個であり良好(○)であった。積層材B 、C及びA0についても同様にして包装体B 、C及びA0を作製し、同様の方法で蓋B 、C及びA0の外部滑性を評価した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の蓋用積層材は、食品その他物品を収容した容器を熱封緘するための蓋として好適であり、その保護樹脂層に不意の外力が運搬時や陳列時に加わったとしても、印刷層に剥がれやズレ等の欠陥が生じ難いため、経済的な価値が高い。
【符号の説明】
【0052】
(10)蓋用積層材、(S)滑剤、(11S)滑剤層、(11) 保護樹脂層、(12)印刷層、(13)外面側アンカーコート層、(14)バリア層、(15)内面側アンカーコート層、(16)緩衝材層、(17)ヒートシール層、(1)蓋、(2)容器、(21)開口周縁部、(C)内容物、(3)包装体、(4)外部滑性評価装置、(5)外部滑性評価装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6