(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035807
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20220225BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220225BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220225BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20220225BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20220225BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220225BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220225BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
H05B33/22 Z
H05B33/12 B
G09F9/30 338
G09F9/30 365
H01L29/78 626A
H01L29/78 612Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140368
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝井 宏充
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
3K107AA02
3K107BB01
3K107CC31
3K107CC41
3K107CC42
3K107DD37
3K107DD39
3K107DD89
3K107EE04
3K107FF15
3K107HH05
5C094AA21
5C094BA03
5C094BA27
5C094DA13
5C094DB01
5C094EA10
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5C094FB15
5F110BB01
5F110CC01
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5F110DD01
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5F110EE02
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5F110EE06
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5F110GG05
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5F110HK03
5F110HK07
5F110HK21
5F110HL02
5F110HL03
5F110HL04
5F110HL07
5F110HL08
5F110NN02
5F110NN73
5F110NN78
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電流供給ラインの電圧変動を抑制した縦型有機発光トランジスタによるディスプレイを提供する。
【解決手段】基板30と、複数の縦型有機発光トランジスタ20と、ゲート電極20gに電圧を供給するデータラインと、それぞれのゲート電極20gとデータラインの間に接続され、ゲート電極20gへの電圧の供給を制御する薄膜トランジスタ21と、ゲート電極21gに接続され、薄膜トランジスタ21を切り替える信号を伝送するゲートラインと、縦型有機発光トランジスタ20の形成領域の外側で、かつ、第三方向に関し、基板30からの距離がゲート電極20gと同一、又はゲート電極20gよりも基板30から離間した領域において、第一方向に配線され、ソース電極20sと接触して縦型有機発光トランジスタ20に電流を供給する複数の電流供給ライン12とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に、第一方向と前記第一方向とは直交する第二方向にアレイ状に配置された、前記第一方向及び前記第二方向とは直交する第三方向において、前記基板側からゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の順に形成され、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に発光層を有する複数の縦型有機発光トランジスタと、
前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極に電圧を供給するデータラインと、
それぞれの前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極と前記データラインの間に接続され、前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極への電圧の供給を制御する薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの前記ゲート電極に接続され、前記薄膜トランジスタの通電と遮断とを切り替える信号を伝送するゲートラインと、
前記縦型有機発光トランジスタの形成領域の外側で、かつ、前記第三方向に関し、前記基板からの距離が前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極と同一、又は前記ゲート電極よりも前記基板から離間した領域において、前記第一方向に配線され、前記縦型有機発光トランジスタの前記ソース電極と接触して前記縦型有機発光トランジスタに電流を供給する複数の電流供給ラインとを備えることを特徴とするディスプレイ。
【請求項2】
前記縦型有機発光トランジスタの前記発光層は、前記複数の縦型有機発光トランジスタに跨るように形成されており、
前記電流供給ラインと前記発光層との間に、バンク層を備えることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記バンク層は、前記ソース電極と前記発光層との間であって、前記第三方向に見たときに、前記ゲート電極とは異なる領域に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記電流供給ラインと前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極との間に有機樹脂層を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記有機樹脂層が、前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極と前記縦型有機発光トランジスタの前記ソース電極の間に、前記第三方向から見たときに、前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極の周端部と重複するように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記第二方向に配線され、前記複数の電流供給ラインのうちの、少なくとも二つの前記電流供給ラインを接続する、少なくとも一つの補助ラインを備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記補助ラインは、前記電流供給ラインと同じ層に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記補助ラインと前記発光層との間に、バンク層を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記縦型有機発光トランジスタのソース電極は、少なくとも二以上の前記縦型有機発光トランジスタに跨って形成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体素子による光源素子の実用化が進み、有機半導体素子を光源素子としたディスプレイが市販されるようになっている。そして、有機半導体素子を光源素子としたディスプレイの開発においては、今もなお、さらなる性能向上に向けて、高輝度化、高精細化、低消費電力化、長寿命化といった検討が継続して行われている。
【0003】
従来の、有機半導体素子を発光素子としたディスプレイの画素は、有機発光ダイオード(「OLED」とも称される。)と有機発光ダイオードに流す電流の制御を行うトランジスタで構成される。有機発光ダイオードは、アノード電極とカソード電極の間に挟まれた有機EL層に、基板上に形成された薄膜トランジスタ(「TFT」とも称される。)から入力される電流に応じて発光するデバイスである。
【0004】
ところが、当該構成に対して下記特許文献1には、制御素子の数を減らし、発光面積を大きくして高輝度化させるための素子として、ゲート電極に印加する電圧を制御することで、流れる電流を調整するトランジスタであって、かつ、当該トランジスタ自体に流れる電流量に応じて発光する縦型有機発光トランジスタ(「VOLET」とも称される。)が記載されている。また、下記特許文献2は、縦型有機発光トランジスタを用いたディスプレイが記載されており、ディスプレイの大幅な高輝度化が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/036071号
【特許文献2】特表2014-505324号公報
【特許文献3】特開2018-197864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに、近年では、ディスプレイは、家庭用のテレビやパソコン用のディスプレイにとどまらず、駅構内の広告や、イベント会場の背景等、その使用用途は多様化している。これにより、現在ディスプレイの開発においては、上述の性能向上と共に、大型化も一つの大きな課題となっている。
【0007】
有機半導体素子を用いたディスプレイは、表示部には、画素を形成する有機発光ダイオードや薄膜トランジスタ等が配置され、当該表示部の外縁部に、これらを駆動するドライバが配置される。このような構成は、現在もなお、一般的な構成として多くのディスプレイで採用されている。
【0008】
この構成によれば、ディスプレイが大型化すると、表示部全体にわたって各素子を制御や駆動するために、外縁部に配置された各ドライバから出力される信号の伝送距離が長くなる。そうすると、ドライバと各素子を接続する配線が長くなり、ドライバと素子の間の配線の抵抗値が大きくなってしまう。配線の抵抗値が大きくなると、例えば、流れる電流による電圧降下(「IR-Drop」とも称される。)や、信号の遅延や劣化を引き起こす要因となる。
【0009】
特に、発光素子に電流を供給するための電流供給ラインは、配線の抵抗値が大きくなると、電流供給部から各発光素子に電流を流すために同じ電圧が印加された場合であっても、電流供給部から離れるにつれて、配線の抵抗値と流れる電流に応じて電圧が降下してしまう。そうすると、画像データの表示に必要な電流値に対して実際に供給される電流量が低下してしまう。そして、この影響が顕著になると、輝度が徐々に低下していることを人が視認できるほどの表示不良が生じてしまう。さらに、電流供給ラインは、多くの場合、一列に配列された発光素子群で共有される構成であるため、電流供給ラインの配線の抵抗値にバラつきが生じると各ラインに輝度の差異が生じ、ライン状の表示不良が発生してしまう。
【0010】
上記課題を対策する方法として、上記特許文献3に記載されているような、各画素の発光輝度を検出し、データラインに電圧降下分を考慮した電圧を供給するという方法を電流供給ラインに適用することが考えられる。しかし、複雑な回路の追加となれば、発光領域を大幅に圧迫して高輝度化を阻害してしまう。さらには、素子が増えてしまうことから故障や不具合が発生しやすくなるおそれがある。
【0011】
また、ドライバを配置している外縁部の利用や外部機器の追加等も考えられるが、外縁部の大型化や外部機器の追加は、様々な使用用途が求められているにも関わらず、ディスプレイの使用態様や配置場所を制限させてしまうことになる。
【0012】
さらに、フィードバック等による制御で、変動分を想定した電圧値を印加する場合、算出方法に誤差が生じてしまう場合も考えられ、輝度の変化が表示不良として視認できないように補正されない可能性が少なからずある。したがって、表示不良の対策は、輝度の変化の補正で対策されるよりも、デバイスの構造で対策される方が望ましい。
【0013】
ここで、本発明者は、縦型有機発光トランジスタによるディスプレイを検討したところ、縦型有機発光トランジスタには、さらに、次のような課題があることも見出した。
【0014】
縦型有機発光トランジスタは、電界効果トランジスタと同様に、ソース電極、ゲート電極及びドレイン電極を備える構成である。しかし、縦型有機発光トランジスタは、薄膜トランジスタ等の電界効果トランジスタとは異なり、縦型有機発光トランジスタは、ソース電極とドレイン電極の間に有機EL層及び有機半導体層を含む発光層が設けられている。これらの材料の特性により、縦型有機発光トランジスタは、薄膜トランジスタ等の電界効果トランジスタに比べて、ソース電極(アノード電極)とドレイン電極(カソード電極)の間に流れる電流が、当該電極間に印加されている電圧の影響を受けやすいという特徴がある。
【0015】
つまり、縦型有機発光トランジスタによるディスプレイは、従来の有機発光ダイオードと薄膜トランジスタの構成よりも電流供給ラインの電圧降下に対して輝度の変動が大きく、上述したような表示不良がより表れやすいという特徴がある。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑み、電流供給ラインの電圧変動を抑制した縦型有機発光トランジスタによるディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のディスプレイは、
基板と、
前記基板上に、第一方向と前記第一方向とは直交する第二方向にアレイ状に配置された、前記第一方向及び前記第二方向とは直交する第三方向において、前記基板側からゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の順に形成され、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に発光層を有する複数の縦型有機発光トランジスタと、
前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極に電圧を供給するデータラインと、
それぞれの前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極と前記データラインの間に接続され、前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極への電圧の供給を制御する薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの前記ゲート電極に接続され、前記薄膜トランジスタの通電と遮断とを切り替える信号を伝送するゲートラインと、
前記縦型有機発光トランジスタの形成領域の外側で、かつ、前記第三方向に関し、前記基板からの距離が前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極と同一、又は前記ゲート電極よりも前記基板から離間した領域において、前記第一方向に配線され、前記縦型有機発光トランジスタの前記ソース電極と接触して前記縦型有機発光トランジスタに電流を供給する複数の電流供給ラインとを備えることを特徴とする。
【0018】
本明細書における「縦型有機発光トランジスタの形成領域」とは、縦型有機発光トランジスタのゲート電極とソース電極との間に、閾値以上の電圧が印加された時に、ソース電極から、発光層を介してドレイン電極に向かって電流が流れて光を出射する領域をいう。
【0019】
半導体の製造工程は、材料や成長方向等に応じて、基板上に所定の順序で材料を積層させるように行われ、一般的に各素子間を接続する配線層と、素子自体を形成する層は、別々に形成される。このため、例えば、電流供給ラインのような配線を下層の金属配線と同一のレイヤにより作製した場合、同一レイヤの他配線との電流リークを防止するために配線幅が制限されたり、多くの配線と絶縁膜を介して交差する際に異物等によるより発生する配線間リークを防いだり、配線段差の乗り越えによる断線などを防止するために配線層の膜厚に制限を受けることになる。
【0020】
また、下層に形成した電流供給ラインと縦型有機発光トランジスタのソース電極を電気的に接続するためには、何層もの絶縁膜を貫通するコンタクトホールを形成する必要がある。
【0021】
しかしながら、コンタクトホールは、配線の幅の制約や、特性バラつきや形成精度の観点から、あまり大きく形成することができず、電圧降下にほとんど寄与しない程の抵抗値まで下げることが難しく、また、コンタクトホール部分での接触不良などが懸念される。
【0022】
そこで、上記構成とすることで、電流供給ラインは、配線幅や配線膜厚における制限が緩和され、より低抵抗な配線を作成することが可能になる、またコンタクトホールについての制約も緩和されるため、低抵抗な接続を得ることができる。また層構成によってはコンタクトホールを介することなく、電流供給ラインと縦型有機発光トランジスタのソース電極とを直接接続することができる。
【0023】
したがって、電流を供給するドライバから、縦型有機発光トランジスタのソース電極に至るまでの経路の抵抗値が、コンタクトホールを介さない分だけ小さくなる。これらの効果によって、縦型有機発光トランジスタのソース電極に供給される電圧の変動が抑制され、表示不良の発生が抑制される。
【0024】
また、有機発光素子を用いたディスプレイは、一つの光出射方式として、基板を介して光が出射される方式がある。この場合、当該構成において、発光層から出射される光が遮られてしまわないように、縦型有機発光トランジスタよりも基板側は、できる限り配線や薄膜トランジスタ等が少ないことが好ましい。基板を通過させて光を出射する方式は「ボトムエミッション方式」とも称され、電極間の配線接続がしやすく作製が容易といったメリットを有する。また、基板とは反対側に光を出射する方式は、「トップエミッション方式」とも称され、上記構成は、トップエミッション方式のディスプレイを形成することもできる。
【0025】
上記構成とすることで、縦型有機発光トランジスタのゲート電極よりも基板側は、電流供給ラインが形成されなくなり、より広範な発光領域が確保される。したがって、上記構成のディスプレイは、従来よりも高輝度となるという効果も奏する。
【0026】
上記ディスプレイにおいて、
前記縦型有機発光トランジスタの前記発光層は、前記複数の縦型有機発光トランジスタに跨るように形成されており、
前記電流供給ラインと前記発光層との間に、形成されたバンク層を備えていても構わない。
【0027】
また、上記ディスプレイにおいて、
前記バンク層は、前記ソース電極と前記発光層との間であって、前記第三方向に見たときに、前記ゲート電極とは異なる領域に形成されていても構わない。
【0028】
電流供給ラインは、ソース電極に電流を供給するラインであり、電流供給ラインと発光層が通電してしまうと、ゲート電極に印加される電圧に無関係に発光するおそれがある。
【0029】
そこで、上記構成とすることで、発光層と電流供給ラインとが通電することがなくなり、リーク電流を含む意図しない電流が抑制され、意図しない発光が抑制される。
【0030】
なお、電流供給ラインと発光層との間には、バンク層以外が含まれていてもよい。例えば、ソース電極が土台となる表面層にカーボンナノチューブによる電極材料が形成された構成が考えられる。この場合は、電流供給ラインと発光層との間に、バンク層とカーボンナノチューブによるソース電極が形成されている。
【0031】
上記ディスプレイは、
前記電流供給ラインと前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極との間に有機樹脂層を備えていても構わない。
【0032】
さらに、上記ディスプレイにおいて、
前記第三方向に関し、前記有機樹脂層が、前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極と前記縦型有機発光トランジスタの前記ソース電極の間に、前記縦型有機発光トランジスタの前記ゲート電極の周端部と重複するように形成されていても構わない。
【0033】
本明細書における、各層に関する「周端部」とは、各層を第三方向から見たときの、縁からある程度の幅を持った最外周の領域である。有機樹脂層と重複する当該周端部の幅は、数十nm~数μmの範囲である。発光領域の確保や薄膜トランジスタのサイズ、リーク電流及び寄生容量の低減等の観点から、より具体的には、当該幅は、200nm~5μmの範囲が好ましく、500nm~2μmの範囲がより好ましい。
【0034】
電流供給ラインは、ゲート電極等が近くに存在する場合、リーク電流を発生させてしまう危険がある。例えば、ゲート電極に対してリーク電流が発生する場合、ゲート電極の電圧が、電流供給ラインの電圧であるソース電極電圧に近づくように変動してしまう。
【0035】
また絶縁膜を介してゲート電極とは別の層に電流供給ラインを形成する場合であってもゲート電極と電流供給ラインが重なる場合には、寄生容量が発生してしまい、どちらかの電圧変動が一方の電圧に影響を与える場合や、電極に対する充電の際により大きな電流が必要となってしまう場合がある。
【0036】
そうすると、縦型有機発光トランジスタは、所定の輝度となるようにデータラインからゲート電極に供給される電圧が僅かに変動し、所定の輝度で発光しなくなってしまう。
【0037】
また、基板上に積層されていく方向を上とすると、縦型有機発光トランジスタは、上述したように、薄膜トランジスタよりも上側に形成される。薄膜トランジスタの上側に形成される層は、薄膜トランジスタの形状により、大きな凹凸やエッジが形成されてしまう。そして、層間を跨ぐ程の凹凸や、層が分断されてしまう程のエッジが形成されてしまうと、リーク電流経路が形成されることで、電流供給ラインからのリーク電流が発生してしまうおそれがある。
【0038】
上記構成とすることで、電流供給ラインの基板側に形成された層に対して発生するリーク電流及び寄生容量の発生を抑制することができる。
【0039】
また、電流供給ラインが薄膜トランジスタの上側に積層されて形成される場合、有機樹脂層が薄膜トランジスタによって形成される凹凸やエッジを覆い、面を均す効果も奏する。これにより、従来よりも平坦化された面上に、配線も含めた別の層を形成することができるため、配線の出来栄え等のバラつきも抑制され、歩留まりが改善される。
【0040】
なお、有機樹脂層は、リーク電流及び寄生容量がより抑制されるために、縦型有機発光トランジスタのゲート電極とソース電極の間に形成される絶縁膜層よりも誘電率が低い材料で形成されていることが好ましい。また、有機樹脂層は、電流供給ライン、縦型有機発光トランジスタのゲート電極と接触するように構成されていなくても構わない。
【0041】
本明細書における有機樹脂層は、絶縁膜としてリーク電流及び寄生容量を低減するために層の一部を覆うように形成されることから、「オーバーコート層」とも称されることがある。
【0042】
上記ディスプレイは、
前記第二方向に配線され、前記複数の電流供給ラインのうちの、少なくとも二つの前記電流供給ラインを接続する、少なくとも一つの補助ラインを備えていても構わない。
【0043】
さらに、上記ディスプレイにおいて、
前記補助ラインは、前記電流供給ラインと同じ層に形成されていても構わない。
【0044】
上記構成とすることで、電流供給ラインが格子状に配線されるため、電流を供給するドライバから各縦型有機発光トランジスタのソース電極までの抵抗値が低減される。また、一部の電流供給ラインにおいて、配線の劣化や断線が発生しても、不具合が生じた電流供給ラインに接続された縦型有機発光トランジスタは、補助ラインを介して別の電流供給ラインから電流が供給される。
【0045】
さらに、電流供給ラインと補助ラインとを同じ層として形成することで、電流供給ラインと補助ラインは、コンタクトホールを介さずに直接接続される。これにより、ドライバから縦型有機発光トランジスタのソース電極までの抵抗値を低減させることができる。
【0046】
上記ディスプレイは、
前記電流供給ラインと前記発光層との間に、バンク層を備えていても構わない。
【0047】
上記構成とすることで、上述した電流供給ラインの場合と同様に、発光層と補助ラインとが通電するおそれがなくなり、意図しない発光や、リーク電流を含む意図しない電流の発生を抑制することができる。したがって、補助ラインから生じるリーク電流は、ほとんどなくなり、電流供給ラインを流れる電流量への影響も低減される。このため、電流供給ラインの電圧変動が、さらに抑制される。
【0048】
上記ディスプレイにおいて、
前記縦型有機発光トランジスタのソース電極は、少なくとも二以上の前記縦型有機発光トランジスタに跨って形成されていても構わない。
【0049】
上記構成とすることで、ドライバから各縦型有機発光トランジスタに供給される電流は、所定の幅で配線された電流供給ラインではなく、ソース電極が電流供給ラインとしての機能を有し、電流が拡散するように各縦型有機発光トランジスタへ電流が供給される。したがって、ドライバから各縦型有機発光トランジスタのソース電極までの抵抗値が大きく抑制される。
【0050】
また、例えば、ドライバ付近のコンタクトホールを多く形成できる領域において、縦型有機発光トランジスタのソース電極を形成する層に接続させることで、電流供給ラインと各縦型有機発光トランジスタのソース電極との間で発生する抵抗値を最小限に抑えることができる。
【0051】
なお、上記構成が採用される場合、ドライバから各縦型有機発光トランジスタまでの抵抗値を低減させる観点から、ソース電極を構成する材料が、配線として形成される電流供給ラインの材料よりも低抵抗である、例えば、カーボンナノチューブといった材料で形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、電流供給ラインの電圧変動を抑制した縦型有機発光トランジスタによるディスプレイが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】ディスプレイの一実施形態の一部の模式的な構成図である。
【
図2】
図1のディスプレイの領域A1における発光部の回路図である
【
図3A】発光部とその周辺の一実施形態の模式的な素子構成の上面図である。
【
図3B】
図3Aから電流供給ライン12を取り除いた状態の図面である。
【
図5A】作製工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図5B】作製工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図5C】作製工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図5D】作製工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図5E】作製工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図5F】作製工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図5G】作製工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図5H】作製工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図5I】作製工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図6】発光部とその周辺の一実施形態の模式的な素子構成の上面図である。
【
図9】発光部とその周辺の別実施形態の模式的な素子構成をYZ平面で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明のディスプレイの構成について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0055】
[第一実施形態]
図1は、ディスプレイ1の一実施形態の一部の模式的な構成図である。
図1に示すように、本実施形態のディスプレイ1は、アレイ状に配列された、後述される縦型有機発光トランジスタ20を含む発光部10と、データライン11と、電流供給ライン12と、ゲートライン13と、補助ライン14とを備える。
【0056】
また、ディスプレイ1は、外縁部において、データライン11に縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極に表示する画像データに応じた電圧を供給するソースドライバ15aと、電流供給ライン12に電流を供給し、縦型有機発光トランジスタ20のソース電極に電流を供給する電流供給部15b、ゲートライン13に薄膜トランジスタ21の制御信号を出力するゲートドライバ15cを備える。
【0057】
図2は、
図1のディスプレイ1の領域A1における発光部10の詳細回路図である。
図2に示すように、発光部10は、縦型有機発光トランジスタ20と、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極への電圧供給を制御する薄膜トランジスタ21と、縦型有機発光トランジスタ20のソース電極とゲート電極の間に形成されるコンデンサ23を備える。なお、
図1及び
図2の説明においては、電流供給ライン12が配線されている方向をX方向(第一方向)、補助ライン14が配線されている方向をY方向(第二方向)として説明する。
【0058】
データライン11は、表示する画像に応じて、縦型有機発光トランジスタ20の発光輝度を調整するために、ソースドライバ15aから出力された電圧を、薄膜トランジスタ21を介して縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極に印加する配線である。本実施形態において、データライン11は、X方向に形成されているが、Y方向に形成されていても構わない。
【0059】
電流供給ライン12は、X方向に配列されている各縦型有機発光トランジスタ20群に接続されるように、縦型有機発光トランジスタ20の形成領域の外側において、X方向に複数配線されている。各電流供給ライン12は、縦型有機発光トランジスタ20群に含まれるそれぞれの縦型有機発光トランジスタ20のソース電極に、電流供給部15bから出力された電流を供給する。
【0060】
ゲートライン13は、薄膜トランジスタ21のゲート電極に接続され、ゲートドライバ15cから出力された制御信号を薄膜トランジスタ21のゲート電極に向かって伝送し、薄膜トランジスタ21のオン/オフを切り替えることで、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極とデータライン11との通電を制御する。本実施形態においては、ゲートライン13は、Y方向に形成されているが、X方向に形成されていても構わない。
【0061】
補助ライン14は、X方向に配列されている発光部10の間でY方向に配線されて、複数の電流供給ライン12を接続している。なお、補助ライン14は、X方向に配列されている全ての発光部10間に形成されていなくても構わない。本実施形態においては、電流供給ライン12がX方向、補助ライン14がY方向に形成されているが、電流供給ライン12がY方向、補助ライン14がX方向に形成されていても構わない。
【0062】
コンデンサ23は、薄膜トランジスタ21がオフ状態である間、表示している画像を所定の時間維持するために配置されている、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極とソース電極との間の電圧保持用素子である。
【0063】
次に、基板上に形成される各素子の構造について説明する。
図3Aは、発光部10とその周辺の一実施形態の模式的な素子構成の上面図であり、
図3Bは、
図3Aから電流供給ライン12を取り除いた状態の図面である。
図4は、
図3AのA-A´断面図である。
図3B及び
図4に示すように、縦型有機発光トランジスタ20と薄膜トランジスタ21は、データライン11、ゲートライン13によって区分けされた領域に一組形成されている。
【0064】
また、
図3A及び
図3Bで図示される縦型有機発光トランジスタ20は、上述したように、形成領域とも称する一部の領域を切り抜いて図示されているが、本実施形態の縦型有機発光トランジスタ20のドレイン電極層20dや発光層(有機半導体層20a、有機EL層20c)、ソース電極層20s等は、
図4に示すように、複数の縦型有機発光トランジスタ20に跨って形成されている。
【0065】
基板30は、光に対して透過性を備え、縦型有機発光トランジスタ20から放射された光を外部に出射する。具体的な材料については後述する。
【0066】
以下の説明において、データライン11と電流供給ライン12が配線される方向をX方向(第一方向)、ゲートライン13が配線される方向をY方向(第二方向)、これらと直交する方向をZ方向(第三方向)として説明する。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0067】
縦型有機発光トランジスタ20の構成は、+Z側の層からカソード電極に相当するドレイン電極層20d、発光層を形成する有機EL層20cと有機半導体層20a、表面層31の表面にカーボンを含む導電性材料(本実施形態においては、カーボンナノチューブ)を塗布するように構成されたソース電極層20s、さらに-Z側に誘電体で構成されるゲート絶縁膜層20hを介してゲート電極層20gが形成されている。
【0068】
上記構成の縦型有機発光トランジスタ20は、ゲート電極層20gに電圧が印加されると、有機半導体層20aとソース電極層20sの間のショットキー障壁が変化し、所定の閾値を超えたところでソース電極層20sから有機半導体層20aと有機EL層20cに対して電流が流れることで発光する。
【0069】
有機半導体層20aと電流供給ライン12との間には、これらを電気的に絶縁するためバンク層24が形成されている。
図4においてX方向が図示されていないが、ソース電極層20sは、電流供給ライン12の+Z側のXY平面に塗布されて、電流供給ライン12と直接接触するように形成されている。すなわち、有機半導体層20aと電流供給ライン12との間にバンク層24が形成されており、有機半導体層20aと電流供給ライン12(ソース電極層20s)は、電気的に絶縁されている。
【0070】
また、電流供給ライン12に基板30側(―Z側)は、これらを電気的に絶縁するための有機樹脂層32が形成されている。ここで、本実施形態における有機樹脂層32は、電流供給ライン12から生じるリーク電流を抑制するために、ゲート絶縁膜層20hを構成する材料よりも誘電率が低い材料で構成されているが、ゲート絶縁膜層20hを構成する材料よりも誘電率が大きい材料で構成されていても構わない。有機樹脂層32を構成する具体的な材料は後述する。
【0071】
さらに、本実施形態における有機樹脂層32は、ソース電極層20sとゲート電極層20gの間に生じるリーク電流を抑制するために、ゲート電極層20gの周端部と重複するようにソース電極層20sとゲート電極層20gの間に形成されていることとがより望ましい。
【0072】
本実施形態のディスプレイ1は、基板30は、可視光に対して透過性を有する素材で構成され、ゲート電極層20gとソース電極層20sは、可視光が通過できるような間隙を有するように構成されることで、有機EL層20cから出射した光が、基板30を通過して外に出射されることで画像を表示する。
【0073】
薄膜トランジスタ21は、酸化物半導体層21aを介してソース電極層21sとドレイン電極層21dが接続され、酸化物半導体層21aの下層に、絶縁膜層又は誘電体層を介してゲート電極層21gが形成されている。それぞれ、ゲート電極層21gに電圧が印加されると、酸化物半導体層21aにチャネルが形成され、ソース電極層21sとドレイン電極層21dが通電する。
【0074】
薄膜トランジスタ21は、ソース電極層21sがデータライン11に接続され、ドレイン電極層21dが縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gに接続される。
【0075】
図3Bに示すように、縦型有機発光トランジスタ20は、高輝度化のために、データライン11、ゲートライン13によって区分けされた領域のほぼ全体を埋め尽くすように形成される。薄膜トランジスタ21は、縦型有機発光トランジスタ20の発光領域に対して影響が小さいように、区分けされた当該領域の角に、できる限り小さく形成される。
【0076】
図3A~
図4において、コンデンサ23は図示されていないが、
図3Aに示すように、本実施形態の縦型有機発光トランジスタ20は、ソース電極層20sとゲート電極層20gがゲート絶縁膜層20hを介して対向するように配置される。これにより、縦型有機発光トランジスタ20は、寄生素子としてのコンデンサ23を有し、当該コンデンサ23で電圧維持の機能を果たすこともできる。このような寄生素子のコンデンサ23では、容量値が足りない場合は、追加で別のコンデンサを形成しても構わない。
【0077】
以下、各層に用いられる材料を例示列挙する。
【0078】
ゲートライン13及び補助ライン14は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、銅(Cu)及びその組み合わせによる合金等を採用し得る。
【0079】
基板30は、ガラス材、又はPET(Poly Ethylene Terephthalate)、PEN(Poly Ethylene Naphthalate)、ポリイミドといったプラスチック材等を採用し得る。
【0080】
縦型有機発光トランジスタ20のドレイン電極層20dは、単層又は多層グラフェン、カーボンナノチューブ、アルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、酸化モリブデン(MoXOY)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、金(Au)そのほかの組み合わせによる合金等を採用し得る。
【0081】
縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gは、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ガリウム(Ga)等の金属でドープされた酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In2O3)、二酸化スズ(SnO2)、酸化カドミウム(CdO)等の金属ドープ、非ドープ透明導電性酸化物及びこれらの組み合わせを含む材料、又は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)及びタンタル(Ta)、及びこれらの組み合わせ、さらにはp又はnドープのケイ素(Si)やガリウムヒ素(GaAs)等を採用し得る。
【0082】
縦型有機発光トランジスタ20の表面層31とゲート電極層20gの間のゲート絶縁膜層20hは、酸化ケイ素(SiOX)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化イットリウム(Y2O3)、チタン酸鉛(PbTiOX)、チタン酸アルミニウム(AlTiOX)、ガラス及びパリレンポリマー、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ポリメチルメタクリレート、フルオロポリマー等の有機化合物等を採用し得る。
【0083】
縦型有機発光トランジスタ20の有機半導体層20aは、ナフタレン、アントラセン、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、及びこれらの誘導体のような線形縮合多環芳香族化合物(又はアセン化合物)と、例えば銅フタロシアニン(CuPc)系化合物、アゾ化合物、ペリレン系化合物、及びこれらの誘導体のような顔料と、例えばヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、アリルビニル化合物、ピラゾリン系化合物、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、アリルアミン化合物、低分子量アミン誘導体(a-NPD)、2,2’,7,7’-テトラキス(ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(スピロ-TAD)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアモノビフェニル(スピロ-NPB)、4,4’、4”-トリス[N-3-メチルフェニル-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(mMTDATA)、2,2’,7,7’-テトラキス(2,2-ジフェニルビニル)-9,9-スピロビフルオレン(スピロ-DPVBi)、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、トリス(4-メチル-8キノリノラト)アルミニウム(Almq3)、及びこれらの誘導体のような低分子化合物と、例えば、ポリチオフェン、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)、ビフェニル基含有ポリマー、ジアルコキシ基含有ポリマー、アルコキシフェニルPPV、フェニルPPV、フェニル/ジアルコシキPPVコポリマー、ポリ(2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)、ポリ(アニリン)(PAM)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリ(ビニルピレン)、ポリ(ビニルアントラセン)、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒドハロゲン化樹脂、及びこれらの変性物のようなポリマー化合物と、例えば、5,5_-ジパーフルオロヘキシルカルボニル-2,2_:5_,2_:5_,2_-クアテルチオフェン(DFHCO-4T)、DFH-4T、DFCO-4T、P(NDI2OD-T2)、PDI8-CN2、PDIF-CN2、F16CuPc、及びフラーレン、ナフタレン、ペリレン、並びにオリゴチオフェン誘導体のようなn型輸送有機低分子、オリゴマー、若しくはポリマー、さらには、チエノ[3,2-b]チオフェン、ジナフチル[2,3-b:2’,3’-f]チエノ[3,2-b]チオフェン(DNTT)、2-デシル-7-フェニル[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン(BTBT)等のチオフェン環を有する芳香族化合物等を採用し得る。
【0084】
ここで、縦型有機発光トランジスタ20は、エネルギー準位が適合する有機半導体を適切に選定することによって、OLEDディスプレイに標準的に用いられる、正孔注入層・正孔輸送層・有機EL層・電子輸送層・電子注入層などを好適に用いることができる。そして、外部に出射する光の色は、上述の有機EL層20cを構成する材料を選択することによって赤、緑、青といった色の光を出射するように調整される。また、縦型有機発光トランジスタ20は、白色光を出射する構成とすることもでき、同じ縦型有機発光トランジスタ20を用いて、カラーフィルタで所望の色の光を選択して出射するといった構成とすることもできる。
【0085】
表面層31は、ソース電極層20s(特に、CNT層)の固着を目的としてゲート絶縁膜層20hの上に形成される層である。表面層31を形成する材料としては、シランカップリング材料、アクリル樹脂等から形成されるバインダー樹脂を含む組成物を塗布することで形成することができる。
【0086】
バンク層24は、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等の無機絶縁性材料、ポリイミド樹脂、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、ノボラック樹脂等の有機絶縁材料等を採用し得る。
【0087】
有機樹脂層32は、ポリイミド樹脂、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、ノボラック樹脂などの有機絶縁材料等の絶縁性を有する感光性材料を採用し得る。
【0088】
薄膜トランジスタ21に構成される酸化物半導体層21aは、In-Ga-Zn-O系半導体、Zn-O系半導体(ZnO)、In-Zn-O系半導体(IZO(登録商標))、Zn-Ti-O系半導体(ZTO)、Cd-Ge-O系半導体、Cd-Pb-O系半導体、CdO(酸化カドミウム)、Mg-Zn-O系半導体、In-Sn-Zn-O系半導体(例えばIn2O3-SnO2-ZnO)、In-Ga-Sn-O系半導体等を採用し得る。
【0089】
本実施形態において、薄膜トランジスタ21は、酸化物半導体による薄膜トランジスタとしたが、アモルファスシリコンによる薄膜トランジスタであっても構わない。また、p型とn型のいずれであっても構わない。さらに、具体的な構成として、スタガード(staggerd)型、インバーテッド・スタガード(inverted staggerd)型、コープレーナ(coplanar)型、インバーテッド・コープレーナ(inverted coplanar)型等のいずれの構成をも採用し得る。
【0090】
なお、縦型有機発光トランジスタ20としては、上記特許文献1及び2にも記載されている縦型有機発光トランジスタ20も採用することができ、さらには、上記特許文献3の構成を採用することもできる。
【0091】
次に、各層の作製工程を簡単に説明する。
図5A~
図5Xは、作製工程の途中のディスプレイ1の一の縦型有機発光トランジスタ20周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。以下、図面を参照しながら各工程を説明する。
【0092】
また、隣接する縦型有機発光トランジスタ20との位置関係や、縦型有機発光トランジスタ20同士の間の構造、すなわち、形成領域の外側の構造がわかるように、Y方向に三つ並んだ縦型有機発光トランジスタ20が形成される図面で説明する。
【0093】
なお、図示される領域の外側は、同じパターンで繰り返されるものでなくても構わない。例えば、
図5D等に示すように、薄膜トランジスタ21は、(+X、-Y)側に形成されているが、ディスプレイ1全体において、X方向における中央部よりも-X側では、(-X、+Y)側に形成する等、任意のパターンで形成してもよい。
【0094】
図5Aに示すように、最初は、基板30を準備する(ステップS1)。
【0095】
ステップS1の後、
図5Bに示すように、基板30上に薄膜トランジスタ21のゲート電極層21gと、ゲート電極層21gに接続されるゲートライン13が形成される(ステップS2)。
【0096】
ステップS2の後、図示しない絶縁膜が全体にわたって形成されて、その上に
図5Cに示すように、薄膜トランジスタ21のゲート電極層21gの+Z側に酸化物半導体層21aが形成される(ステップS3)。
【0097】
ここでの「全体にわたって形成」とは、縦型有機発光トランジスタ20が形成される画像表示領域全体にわたって形成されることいい、ドライバが配置された外縁部全体まで形成されることをいうものではない。このことは、以下の説明においても同様である。
【0098】
ステップS3の後、
図5Dが示すように、薄膜トランジスタ21の酸化物半導体層21a上に、Y方向に離間してドレイン電極層21dとデータライン11が形成される(ステップS4)。データライン11は、酸化物半導体層21aとZ方向において重複する部分で薄膜トランジスタ21のソース電極層21sを構成する。
【0099】
ステップS4の後、図示しないパッシベーション膜が全体にわたって形成された後、
図5Eに示すように、薄膜トランジスタ21のドレイン電極層21dと縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gとの連絡するコンタクトホール21cが形成される(ステップS5)。
【0100】
ステップS5の後、
図5Fに示すように、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gが形成される(ステップS6)。
【0101】
ステップS6の後、
図5Gが示すように、縦型有機発光トランジスタ20の形成領域の外側の表面層31上に、有機樹脂層32が形成される(ステップS7)。なお、
図5Gにおいて破線で示す領域は、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gの全体を示している。つまり、有機樹脂層32は、Z方向において縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gの周端部と重複するように形成される。本実施形態では、重複している領域の幅は、薄膜トランジスタ21が形成されている領域を除いて、ゲート電極層20gの外縁から2μmとなるように有機樹脂層32を構成した。
【0102】
ステップS7の後、縦型有機発光トランジスタ20のゲート絶縁膜層20hが全体にわたって形成され、ゲート絶縁膜層20h上に表面層31が形成される(ステップS8)。ゲート絶縁膜層20hと表面層31は、全体にわたって形成され、図示すると下層の構成全体が確認できなくなるため、
図5G~
図5Iにおいて図示されていない。
【0103】
ステップS8の後、
図5Hが示すように、有機樹脂層32上に電流供給ライン12がX方向に形成され、各電流供給ライン12をY方向に接続するように補助ライン14が形成される(ステップS9)。本実施形態では、電流供給ライン12と補助ライン14は、異なる層に形成されるため、層間を接続するコンタクトホール14cも形成されている。なお、コンタクトホール14cの形成箇所や構成は、それぞれ任意の箇所に、適した形状や個数で形成して構わない。
【0104】
ステップS9の後、フォトリソグラフィにより、電流供給ライン12の所定の位置に、ソース電極を接続するためのコンタクトホールが開口される(ステップS10)。
【0105】
ステップS10の後、カーボンナノチューブによる縦型有機発光トランジスタ20のソース電極層20sが、全体にわたって形成される(ステップS11)。ソース電極層20sは、図示すると下層の全ての構成が確認できなくなるため、以下の
図5Iにおいては図示されない。
【0106】
ステップS11の後、
図5Iが示すように、バンク層24が形成される(ステップS12)。
【0107】
ステップS12の後は、発光層となる有機半導体層20a、有機EL層20c及びドレイン電極層20dが全体にわたって形成されて、
図3A~
図4に示す構成が形成される。
【0108】
以上のような作製工程によって、上記構成のディスプレイ1とすることで、電流供給ライン12は、補助ライン14によって接続され、補助ライン14との接続部では、接続されている他の電流供給ライン12の接続部の電圧値が共有される。つまり、電流供給ライン12の抵抗値のバラつきによって一部に極端な電圧降下が生じたとしても、補助ライン14に接続された他の電流供給ライン12によって、電圧が持ち上げられることになる。そして、本実施形態のように、電流供給ライン12と補助ライン14との接続箇所が多い程、ディスプレイ1は、全体にわたって、電流供給ライン12の電圧が均一化されることになる。
【0109】
このようにして、補助ライン14で接続されている電流供給ライン12の電圧が均一化される。したがって、それぞれの電流供給ライン12において、局所的な電圧降下が生じにくく、表示不良が視認されにくい、表示品質が向上されたディスプレイ1が実現される。
【0110】
なお、本実施形態においては、縦型有機発光トランジスタ20のドレイン電極層20d、有機半導体層20a、有機EL層20c、ソース電極層20sのいずれもが、複数の縦型有機発光トランジスタ20に跨るように形成されているが、いずれも、縦型有機発光トランジスタ20毎に形成されていても構わない。
【0111】
また、各層が縦型有機発光トランジスタ20毎に形成され、電流供給ライン12からのリーク電流を発生しないような場合には、バンク層24や有機樹脂層32は、形成されなくても構わない。
【0112】
[第二実施形態]
本発明のディスプレイ1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0113】
図6は、発光部10とその周辺の、第一実施形態とは別の一実施形態の模式的な素子構成の上面図である。
図6に示すように、電流供給ライン12と補助ライン14は、コンタクトホール14cを介して接続される構成ではなく、同じ層において同じ材料で、一体的に形成されていても構わない。また、電流供給ライン12と補助ライン14は、同じ層であって、異なる材料、又は異なる層であって、同じ材料で形成されていても構わない。
【0114】
図7は、
図6のB-B´断面図である。
図7に示すように、補助ライン14が、バンク層24と有機樹脂層32によって挟まれるように構成されていても構わない。
【0115】
上記構成とすることで、電流供給ライン12と一体的に形成される補助ライン14においても、有機半導体層20aや有機EL層20cとの間で発生するリーク電流を抑制することができる。
【0116】
なお、バンク層24は、Z方向から見たときに、ソース電極層20sと有機半導体層20aとの間であって、ゲート電極層20gとは異なる領域に形成されていても構わない。また、第二実施形態においても、ドレイン電極層20d等の各層が縦型有機発光トランジスタ20毎に形成され、補助ライン14からのリーク電流がほとんど発生しない場合には、バンク層24や有機樹脂層32が形成されなくても構わない。
【0117】
図8は、
図7とは別の、
図6のB-B´断面図である。
図8に示すように、有機樹脂層32がゲート電極層20gと同一平面上に構成されていても構わない。当該構成の場合は、表面層31とゲート絶縁膜層20hに、縦型有機発光トランジスタ20のソース電極層20sと電流供給ライン12とを連絡するコンタクトホールが形成される。
【0118】
さらに、当該構成の場合は、XY平面上において、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gと電流供給ライン12との距離が十分離れていれば、有機樹脂層32が形成されず、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gと電流供給ライン12とが同一平面上に形成されていても構わない。
【0119】
第二実施形態においては、
図4に示すようなYZ平面の断面で見た場合であっても、Z方向に関して、バンク層24、ソース電極層20s、電流供給ライン12、有機樹脂層32、表面層31及びゲート絶縁膜層20hが形成される位置の配置関係は同じである。なお、補助ライン14の-Z側には有機樹脂層32を形成し、電流供給ライン12の-Z側には有機樹脂層32を形成しないように、必ずしも構成される層が一致している必要はない。
【0120】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0121】
〈1〉
図9は、発光部10とその周辺の別実施形態の模式的な素子構成をYZ平面で切断したときの断面図である。
図9に示すように、有機樹脂層32が、ゲート電極層20gとソース電極層20sとの間の一部に形成されていない、すなわち、ゲート電極層20gの周端部と重複していない構成としても構わない。また、ゲート電極層20gとソース電極層20sとの間には、全く有機樹脂層32が形成されていない構成としても構わない。
【0122】
〈2〉 各実施形態において上述したディスプレイ1が備える構成、材料及び作製工程は、あくまで一例であり、本発明は、上述された各構成、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0123】
1 : ディスプレイ
10 : 発光部
11 : データライン
12 : 電流供給ライン
13 : ゲートライン
14 : 補助ライン
14c : コンタクトホール
15a : ソースドライバ
15b : 電流供給部
15c : ゲートドライバ
20 : 縦型有機発光トランジスタ
20a : 有機半導体層
20c : 有機EL層
20d : ドレイン電極層
20g : ゲート電極層
20h : ゲート絶縁膜層
20s : ソース電極層
21 : 薄膜トランジスタ
21a : 酸化物半導体層
21c : コンタクトホール
21d : ドレイン電極層
21g : ゲート電極層
21s : ソース電極層
23 : コンデンサ
24 : バンク層
30 : 基板
31 : 表面層
32 : 有機樹脂層