(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035822
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】捻り加工装置および捻り加工方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20220225BHJP
H02K 15/085 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H02K15/04 F
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140390
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 修
(72)【発明者】
【氏名】大場 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】真杉 豊
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ06
5H615QQ12
5H615QQ27
5H615SS04
5H615SS09
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】コストアップを抑制しつつ、複数のスロットから周方向に隣り合うように突出するセグメントコイルの脚部を先端部がステータコアの軸心に対して傾斜するように高精度に成形する
【解決手段】捻り加工装置は、予め定められた治具回転方向に回転させられると共にステータコアに向けて軸方向に移動させられる円筒状の捻り治具と、捻り治具と一体に回転可能であると共に捻り治具に対して移動可能な押さえ治具とを含み、捻り治具は、スロットから突出した対応する脚部の治具回転方向における後側の表面をそれぞれ押圧する複数の押圧部と、押圧部により押圧されて倒された対応する脚部の先端部の治具回転方向における前側の表面をそれぞれ支持する複数の支持部とを含み、押さえ治具は、対応する先端部の治具回転方向における後側の表面にそれぞれ当接可能な複数のクランプ部を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ径方向に延在すると共に周方向に間隔をおいて形成された複数のスロットを含むステータコアと、互いに異なる前記スロットに差し込まれる一対の脚部を有すると共に対応する前記脚部の先端部同士の電気的接合によりステータコイルを形成する複数のセグメントコイルとを含むステータの製造に用いられ、前記複数のスロットから前記周方向に隣り合うように突出する複数の前記脚部を前記先端部が前記ステータコアの軸心に対して傾斜するように倒しながら前記軸心の周りに捻る捻り加工装置であって、
前記ステータコアの前記軸心の周りに予め定められた回転方向に回転させられると共に前記ステータコアに向けて軸方向に移動させられる円筒状の捻り治具であって、前記スロットから突出した対応する前記脚部の前記回転方向における後側の表面をそれぞれ押圧する複数の押圧部と、前記押圧部に押圧されて倒された対応する前記脚部の前記先端部の前記回転方向における前側の表面をそれぞれ支持する複数の支持部とを含む捻り治具と、
前記捻り治具と一体に回転可能であると共に、前記捻り治具に対して移動可能な押さえ治具であって、対応する前記先端部の前記回転方向における前記後側の表面にそれぞれ当接可能な複数のクランプ部を含み、前記捻り治具の前記複数の支持部の各々が対応する前記脚部の前記先端部を支持するのに応じて、前記複数のクランプ部の各々が対応する前記先端部の前記回転方向における前記後側の表面を押さえ付けるように前記捻り治具に対して移動する押さえ治具と、
を備える捻り加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の捻り加工装置において、
前記複数の支持部の各々が対応する前記脚部の前記先端部を支持するのに応じて前記複数のクランプ部の各々が対応する前記先端部を押さえ付けるように前記捻り治具に対して前記押さえ治具を移動させる移動機構を更に備える捻り加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載の捻り加工装置において、
前記押さえ治具は、前記複数のクランプ部を前記周方向に間隔をおいて支持する環状部を含み、
前記捻り治具は、それぞれ前記軸方向に延在するように前記周方向に間隔をおいて内周面に形成された複数のガイド溝を含み、
前記複数のガイド溝の各々は、対応する前記クランプ部を摺動自在に支持し、
前記複数の支持部の各々は、対応する前記ガイド溝の開口端と間隔をおいて対向するように前記捻り治具に形成されている捻り加工装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の捻り加工装置において、
前記複数の押圧部の各々は、前記回転方向における前記前側から前記後側に向かうにつれて前記ステータコアに近接するように湾曲する凸曲面を含み、
前記複数の支持部の各々は、それに対応した前記脚部に前記回転方向における前記前側で隣り合う前記脚部を押圧する前記押圧部と一体に形成されている捻り加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載の捻り加工装置において、
前記複数の押圧部の各々は、前記凸曲面に連続して延在する傾斜面を含み、
前記複数の支持部の各々は、前記傾斜面の前記ステータコアから離間した側で対応する前記先端部の前記回転方向における前記前側の表面を支持する支持面と、前記傾斜面により押さえ付けられた前記脚部の前記先端部の頂部を受ける受け面とを含む捻り加工装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のステータにおいて、
前記脚部の前記先端部の前記回転方向における前記後側の表面は、前記回転方向における前記前側に傾斜するように形成されている捻り加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載のステータにおいて、
前記脚部の前記先端部の前記回転方向における前記後側の表面は、凸曲面状に形成されている捻り加工装置。
【請求項8】
それぞれ径方向に延在すると共に周方向に間隔をおいて形成された複数のスロットを含むステータコアと、互いに異なる前記スロットに差し込まれる一対の脚部を有すると共に対応する前記脚部の先端部同士の電気的接合によりステータコイルを形成する複数のセグメントコイルとを含むステータの製造に用いられ、前記複数のスロットから前記周方向に隣り合うように突出する複数の前記脚部を前記先端部が前記ステータコアの軸心に対して傾斜するように倒しながら前記軸心の周りに捻る捻り加工方法であって、
複数の押圧部を含む円筒状の捻り治具を前記ステータコアの前記軸心の周りに予め定められた回転方向に回転させながら前記ステータコアに向けて軸方向に移動させ、前記スロットから突出した複数の前記脚部の前記回転方向における後側の表面を前記複数の押圧部により押圧し、
前記押圧部に押圧されて倒された複数の前記脚部の前記先端部の前記回転方向における前側の表面を前記捻り治具の前記複数の支持部により支持すると共に、複数のクランプ部を含む押さえ治具を前記捻り治具に対して移動させて、複数の前記脚部の前記先端部の前記回転方向における前記後側の表面を前記複数のクランプ部により押さえ付け、前記捻り治具および前記押さえ治具を前記回転方向に一体に回転させる、
捻り加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステータコアおよびステータコイルを含むステータの製造に用いられる捻り加工装置および捻り加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のスロットを有するステータコアと当該ステータコアに巻回されたステータコイルとを含む回転電機ステータの製造方法として、挿入工程と、曲げ工程と、押圧工程とを含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる方法の挿入工程は、U字状のコイル線(セグメントコイル)の一対の脚部をステータコアの互いに異なるスロットに差し込み、各スロットからステータコアの軸方向と平行に突出させるものである。曲げ工程および押圧工程では、ステータコアと同軸に回転可能であって当該ステータコア側に突出する複数の爪部を含む治具が用いられる。複数の爪部は、ステータコア側に突出するように当該ステータコアの周方向における第1方向側に形成された凸曲面である第1面と、当該周方向における第2の方向側に形成された周方向に対して直交する平面または第1方向側に窪んだ凹曲面である第2面とをそれぞれ含む。曲げ工程は、各爪部の第1面を一対の脚部の一方のスロットから突出した部分に接触させた状態で、治具を周方向における第1方向に回転させながら軸方向におけるステータコア側に移動させる。これにより、当該一方の脚部が、スロットから突出した部分の根元側端部を曲げ起点としてステータコアの周方向における第1方向に曲げられる。更に、押圧工程は、各爪部の第2面を一方の脚部の第1方向側の先端に接触させた状態で、当該先端が根元側端部に近づくように、治具を周方向における第1方向に回転させながら軸方向におけるステータコア側に移動させる。これにより、第1方向に曲げられた脚部の先端が、根元から第1の方向に所定量だけ離れた最終押圧位置までステータコアの周方向における第2方向(根元側)に押圧される。かかる方法によれば、コイル線の長さのばらつきの影響を抑えつつ、ステータコアの端面から突出したコイル線の脚部の全体をステータコアの軸心に対して傾斜するように周方向に曲げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のステータの製造方法は、治具によりコイル線の脚部を押圧して当該脚部を周方向に曲げるものであり、脚部の根元部における曲率半径を小さくしてステータコア(コイルエンド部)の軸長を短縮化すると共に脚部の先端の周方向における位置の精度を向上させるためには、成形荷重を大きくする必要がある。このため、上記ステータの製造方法を用いる場合、治具等の成形設備の剛性を高めることが必要となり、コストアップを招いてしまう。
【0005】
そこで、本開示は、コストアップを抑制しつつ、複数のスロットから周方向に隣り合うように突出するセグメントコイルの脚部を先端部がステータコアの軸心に対して傾斜するように高精度に成形することができる捻り加工装置および捻り加工方法の提供を主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の捻り加工装置は、それぞれ径方向に延在すると共に周方向に間隔をおいて形成された複数のスロットを含むステータコアと、互いに異なる前記スロットに差し込まれる一対の脚部を有すると共に対応する前記脚部の先端部同士の電気的接合によりステータコイルを形成する複数のセグメントコイルとを含むステータの製造に用いられ、前記複数のスロットから前記周方向に隣り合うように突出する複数の前記脚部を前記先端部が前記ステータコアの軸心に対して傾斜するように倒しながら前記軸心の周りに捻る捻り加工装置であって、前記ステータコアの前記軸心の周りに予め定められた回転方向に回転させられると共に前記ステータコアに向けて軸方向に移動させられる円筒状の捻り治具であって、前記スロットから突出した対応する前記脚部の前記回転方向における後側の表面をそれぞれ押圧する複数の押圧部と、前記押圧部に押圧されて倒された対応する前記脚部の前記先端部の前記回転方向における前側の表面をそれぞれ支持する複数の支持部とを含む捻り治具と、前記捻り治具と一体に回転可能であると共に、前記捻り治具に対して移動可能な押さえ治具であって、対応する前記先端部の前記回転方向における前記後側の表面にそれぞれ当接可能な複数のクランプ部を含み、前記捻り治具の前記複数の支持部の各々が対応する前記脚部の前記先端部を支持するのに応じて、前記複数のクランプ部の各々が対応する前記先端部の前記回転方向における前記後側の表面を押さえ付けるように前記捻り治具に対して移動する押さえ治具とを含むものである。
【0007】
本開示の捻り加工装置は、ステータコアの複数のスロットから周方向に隣り合うように突出する複数のセグメントコイルの脚部を先端部がステータコアの軸心に対して傾斜するように倒しながら軸心の周りに捻るものである。捻り加工装置は、ステータコアの軸心の周りに予め定められた回転方向に回転させられると共にステータコアに向けて軸方向に移動させられる円筒状の捻り治具と、捻り治具と一体に回転可能であると共に、当該捻り治具に対して移動可能な押さえ治具とを含む。捻り治具は、スロットから突出した対応する脚部の回転方向における後側の表面をそれぞれ押圧する複数の押圧部と、押圧部により押圧されて倒された対応する脚部の先端部の回転方向における前側の表面をそれぞれ支持する複数の支持部とを含む。また、押さえ治具は、対応する先端部の回転方向における後側の表面にそれぞれ当接可能な複数のクランプ部を含む。更に、押さえ治具は、捻り治具の複数の支持部の各々が対応する脚部の先端部を支持するのに応じて、複数のクランプ部の各々が対応する先端部の回転方向における後側の表面を押さえ付けるように捻り治具に対して移動する。これにより、複数の脚部の先端部が捻り治具の支持部と押さえ治具のクランプ部とによって把持され、捻り治具および押さえ治具を上記回転方向に更に回転させることで、複数の脚部を引っ張りながら倒すと共にステータコアの軸心の周りに捻ることが可能となる。従って、成形荷重の増加を抑えても、各脚部の根元部(ステータコアの端面付近)における曲率半径を小さくしてステータコア(コイルエンド部)の軸長を短縮化すると共に各脚部の先端部の周方向における位置の精度を向上させることができる。この結果、捻り治具等の剛性を高めることによるコストアップを抑制しつつ、複数のスロットから周方向に隣り合うように突出するセグメントコイルの脚部を先端部がステータコアの軸心に対して傾斜するように高精度に成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の捻り加工装置を用いて製造される電動機のステータを示す概略構成図である。
【
図3】
図1のステータに含まれるステータコイルの要部を示す拡大図である。
【
図4】
図1のステータに含まれるステータコイルの要部を示す拡大図である。
【
図5】本開示の捻り加工装置を示す概略構成図である。
【
図7】本開示の捻り加工装置の捻り治具の要部を示す拡大図である。
【
図8】本開示の捻り加工装置によるステータコアから突出する複数の脚部の加工手順を説明するための正面図である。
【
図9】本開示の捻り加工装置によるステータコアから突出する複数の脚部の加工手順を説明するための拡大図である。
【
図10】本開示の捻り加工装置によるステータコアから突出する複数の脚部の加工手順を説明するための正面図である。
【
図11】本開示の捻り加工装置によるステータコアから突出する複数の脚部の加工手順を説明するための正面図である。
【
図12】本開示の捻り加工装置によるステータコアから突出する複数の脚部の加工手順を説明するための拡大図である。
【
図13】本開示の捻り加工装置によるステータコアから突出する複数の脚部の加工手順を説明するための正面図である。
【
図14】本開示の捻り加工装置によるステータコアから突出する複数の脚部の加工手順を説明するための正面図である。
【
図15】本開示の捻り加工装置によるステータコアから突出する複数の脚部の加工手順を説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示の捻り加工装置10を用いて製造される電動機のステータ1を示す概略構成図であり、
図2は、ステータ1を示す平面図である。これらの図面に示すステータ1は、図示しないロータと共に、例えば電気自動車やハイブリッド車両の走行駆動源あるいは発電機として用いられる三相交流電動機(回転電機)を構成する。本実施形態のステータ1は、環状のステータコア2と、ステータコイル3u(U相コイル)と、ステータコイル3v(V相コイル)と、ステータコイル3w(W相コイル)とを含む。
【0011】
ステータ1のステータコア2は、例えばプレス加工により略円環状に形成された電磁鋼板2p(
図2参照)を複数積層してカシメにより積層方向に連結することにより形成される。ただし、ステータコア2は、例えば強磁性粉体を加圧成形すると共に焼結させることより環状に形成されてもよい。
図2に示すように、ステータコア2は、ロータが配置される中心孔2oと、環状の外周部(ヨーク部)から軸心(
図1における一点鎖線参照)に向けて径方向に延在すると共に周方向に一定の間隔をおいて隣り合う複数のティース部2tと、互いに隣り合うティース部2tの間に形成された複数(本実施形態では、例えば48個)のスロット2sとを含む。複数のスロット2sは、それぞれステータコア2の径方向に延在すると共に一定の間隔をおいての周方向に並び、中心孔2oで開口する。また、各スロット2s内には、図示しないインシュレータ(絶縁紙)が配置される。
【0012】
ステータコイル3u,3v,3wは、それぞれ複数のセグメントコイル(コイル線材)4を電気的に接合することにより形成され、本実施形態では、シングルスター結線(1Y結線)により互いに結線される。セグメントコイル4は、例えばエナメル樹脂等からなる絶縁被膜が表面に成膜された平角線を略U字状に曲げ加工することにより形成された電気導体であり、一対(2つ)の脚部40と、当該一対の脚部40を繋ぐ連結部とを有する。また、セグメントコイル4の各脚部40の先端部Tでは、絶縁被膜が除去されて導電体が露出している。本実施形態において、各脚部40の先端部Tは、
図3に示すように、セグメントコイル4のステータコア2への組み付けに先立って、打ち抜き加工により先細かつ短辺側の側面が凸曲面状に延在するように形成される。更に、先端部Tの絶縁被膜は、当該打ち抜き加工後に例えばレーザー照射により剥離される。
【0013】
各セグメントコイル4の2つの脚部40は、それぞれステータコア2の互いに異なるスロット2sに挿通され、ステータコア2の一方の端面(
図1における上端面)から突出した各セグメントコイル4の脚部40には、本開示の捻り加工装置10を用いた捻り加工が施される。より詳細には、複数のセグメントコイル4は、例えば6つの脚部40が複数のスロット2sの各々から径方向に隣り合って突出するようにステータコア2に組み付けられ、複数のスロット2sの各々から突出してステータコア2の周方向に隣り合う複数の脚部40により複数の層が形成される。以下、ステータコア2の最外周側で周方向に隣り合う複数の脚部40(先端部T)の層を「第1層」といい、径方向内側の層を順番に「第2層」、「第3層」、…といい、最内周側で周方向に隣り合う複数の脚部40の層を「第6層」という。
【0014】
そして、本実施形態において、例えばステータコア2の外周側から奇数番目(奇数層上)の脚部40は、捻り加工装置10により周方向における一側に倒されながらステータコア2の軸心周りに捻られ、偶数番目(偶数層上)の脚部40は、捻り加工装置10により周方向における他側に倒されながらステータコア2の軸心周りに捻られる。これにより、互いに対応する2つの脚部40の先端部T同士が径方向に隣り合い、径方向に隣り合う2つの先端部Tは、それぞれステータコア2の軸心に対して傾斜すると共に周方向に沿って互いに逆向きに延在する。
【0015】
捻り加工の完了後、各セグメントコイル4の先端部Tは、図示しないクランプ装置によりクランプされた状態で、ステータコア2の径方向に隣り合う対応する他のセグメントコイル4の先端部Tに溶接(本実施形態では、レーザー溶接)により電気的に接合される。より詳細には、
図4に示すように、径方向内側(
図4中上側)に位置する一方(偶数層)の先端部Tの外側面Tsoと、径方向外側(
図4中下側)に位置する他方(奇数層)の先端部Tの内側面Tsiとが、レーザー溶接部WLを介して互いに接合される。これにより、複数のステータコイル3u,3v,3wがステータコア2に対して分布巻きにより巻回される。
【0016】
上述のようにしてステータコア2に巻回される複数のステータコイル3u,3v,3wにおいて、多数の先端部T同士の接合部は、所定数ずつ径方向に並んでステータコア2の軸方向における
図1中上側(リード側)の端面から外側に突出する環状のコイルエンド部3aを形成する。上述のように、複数のスロット2sから突出した複数の脚部40は、径方向に隣り合う2つの脚部40の先端部Tがそれぞれステータコア2の軸心に対して傾斜すると共に周方向に沿って互いに逆向きに延在するように倒される。従って、ステータ1では、セグメントコイル4の先端部T同士の接合部を多数含むコイルエンド部3aの軸長を大幅に短縮化することができる。
【0017】
更に、本実施形態において、各脚部40の先端部Tは、打ち抜き加工により先細かつ短辺側の側面が凸曲面状に延在するように形成されている(
図3参照)。すなわち、各先端部Tの脚部40の倒し方向と反対側(
図3における上側)の表面は、当該倒し方向側に傾斜するように形成されている。これにより、コイルエンド部3aの軸長をより一層短縮化することが可能となる。加えて、各先端部Tの倒し方向と反対側の表面を曲面状に形成することで、先端部T同士の接合面積を充分に確保しつつ、コイルエンド部3aをよりフラットにすることが可能となる。なお、ステータコイル3u,3v,3wにおいて、複数のセグメントコイル4の連結部は、ステータコア2の軸方向における
図1中下側の端面から外側に突出する環状のコイルエンド部3bを形成する。
【0018】
また、ステータコア2のスロット2sに挿通された多数のセグメントコイル4のうち、3つのセグメントコイル4の一方の脚部40は、他のセグメントコイル4に接合されず、
図1および
図2に示すように、引出線Lu,LvまたはLwとして利用される。引出線Luは、U相のステータコイル3uに含まれるものであり、引出線Lvは、V相のステータコイル3vに含まれるものであり、引出線Lwは、W相のステータコイル3wに含まれるものである。ステータコイル3uの引出線Luは、
図2に示すように、U相端子5uに電気的に接合されたU相動力線6uの先端部に電気的に接合される。また、ステータコイル3vの引出線Lvは、V相端子5vに電気的に接合されたV相動力線6vの先端部に電気的に接合される。更に、ステータコイル3wの引出線Lwは、W相端子5wに電気的に接合されたW相動力線6wの先端部に電気的に接合される。U相端子5u、V相端子5vおよびW相端子5wは、三相交流電動機のハウジングにステータ1が組み付けられた際に当該ハウジングに設置された図示しない端子台に固定され、図示しない電力線を介してインバータ(図示省略)に接続される。
【0019】
更に、ステータコア2には、
図1中上側のコイルエンド部3a側から
図1中下側のコイルエンド部3b側に向けてワニス等の樹脂(熱硬化性樹脂)が塗布される。当該樹脂が硬化することで、各セグメントコイル4や図示しないインシュレータがステータコア2に固定される。また、本実施形態のステータ1は、コイルエンド部3aを覆う環状のモールド部8を含む。モールド部8は、樹脂により形成されており、当該樹脂が隣り合うセグメントコイル4同士の隙間に入り込むことで、先端部T同士の接合部や、引出線Lu-Lwと動力線6u-6wとの接合部といった導電体の露出部が良好に絶縁される。ただし、セグメントコイル4の先端部T同士の接合部といった導電体の露出部には、絶縁用の粉体が塗布されてもよい。
【0020】
図5は、本開示の捻り加工装置10を示す概略構成図であり、
図6は、捻り加工装置10を示す斜視図である。これらの図面に示す捻り加工装置10は、中心軸CAの周りに同心円状に配列される複数(本実施形態では、例えば6個)の円筒状の捻り治具11,12,13,14,15,16と、中心軸CAの周りに同心円状に配列されると共にそれぞれ対応する捻り治具11,12,13,14,15または16に対して軸方向に移動可能な複数(本実施形態では、例えば6個)の押さえ治具21,22,23,24,25,26と、回転駆動機構17と、移動機構(昇降機構)18と、制御装置100とを含む。回転駆動機構17は、複数の捻り治具11-16を中心軸CAの周りに各々について予め定められた方向に回転させると共にステータコア2に対して軸方向に進退移動(接近離間)させるものである。また、移動機構18は、押さえ治具21,22,23,24,25,26をそれぞれに対応した捻り治具11,12,13,14,15または16に対して軸方向に進退移動(接近離間)させるものである。制御装置100は、図示しないコンピュータを含み、回転駆動機構17および移動機構18を制御する。
【0021】
図6および
図7に示すように、複数の捻り冶具11-16のうち、最外周側に配置される捻り治具11は、中心軸CAに沿って延在する円筒部110と、円筒部110の一端(
図6における上端)に形成された短尺円筒状(環状)のフランジ部111と、円筒部110の他端(
図6における下端)に周方向に間隔をおいて(等間隔に)形成された複数(本実施形態では、例えば48個)の押圧部112と、それぞれ隣り合う押圧部112の間に形成される複数(本実施形態では、例えば48個)の切欠部114と、円筒部110の他端に周方向に間隔をおいて(等間隔に)形成された複数(本実施形態では、例えば48個)の支持部115とを含む。
【0022】
捻り治具11の円筒部110は、ステータコア2の最外周側で周方向に隣り合う第1層の複数の脚部40(先端部T)により形成される円周の直径に応じた内径および外径を有する。また、円筒部110およびフランジ部111の内周面には、それぞれ捻り治具11の軸方向に沿って延在すると共に径方向外側に窪んだ複数(本実施形態では、例えば48個)のガイド溝11gが周方向に間隔おいて(等間隔に)形成されている。本実施形態において、各ガイド溝11gは、略矩形状の断面形状を有する凹部であり、隣り合う押圧部112の間、すなわち対応する切欠部114で開口するように円筒部110およびフランジ部111に形成されている。
【0023】
複数の押圧部112の各々は、捻り治具11の予め定められた回転方向(
図7における矢印方向、以下、「治具回転方向」という。)における前側から後側に向かうにつれて
図7中下側に向けて(フランジ部111から離間するように)湾曲する凸曲面112pと、当該凸曲面112pに連続して延在する傾斜面112sとを含む。本実施形態において、傾斜面112sは、捻り治具11の治具回転方向における前側から後側に向かうにつれて
図7中下側に向けて(フランジ部111から離間するように)傾斜する平坦面である。また、複数の支持部115の各々は、対応するガイド溝11gの
図7における下側の開口端と間隔をおいて対向するように対応する押圧部112と一体化されており、当該押圧部112の傾斜面112sの一部を画成する。更に、各支持部115は、対応する傾斜面112sのステータコア2から離間した側(
図7における上側)で当該傾斜面112sに沿って延在する支持面115sと、傾斜面112sと支持面115sとを繋ぐように形成された受け面115rとを含む。
【0024】
捻り治具11に対応した押さえ治具21は、短尺円筒状の環状部211と、当該環状部211により周方向に間隔をおいて(等間隔に)支持された複数(本実施形態では、例えば48個)のクランプ部215とを含む。環状部211は、捻り治具11のフランジ部111と概ね同一の内径および外径を有する。複数のクランプ部215は、それぞれ押さえ治具21の軸方向に沿って延在するようにフランジ部211の底面の内周側領域から延出されている。更に、複数のクランプ部215の各々は、略矩形状の断面形状を有し、捻り治具11の対応するガイド溝11g内に遊嵌される。これにより、各クランプ部215が対応するガイド溝11gにより摺動自在に支持されることで、捻り治具11と押さえ治具21とを一体に回転させると共に、押さえ治具21を捻り治具11に対して軸方向に進退移動させることが可能となる。
【0025】
また、捻り加工装置10の捻り治具12は、上記捻り治具11と共通の構造を有し、ステータコア2の第2層の複数の脚部40(先端部T)により形成される円周の直径に応じた内径および外径を有する図示しない円筒部を含む。更に、捻り治具13は、上記捻り治具11と共通の構造を有し、ステータコア2の第3層の複数の脚部40(先端部T)により形成される円周の直径に応じた内径および外径を有する図示しない円筒部を含む。また、捻り治具14は、上記捻り治具11と共通の構造を有し、ステータコア2の第4層の複数の脚部40(先端部T)により形成される円周の直径に応じた内径および外径を有する図示しない円筒部を含む。更に、捻り治具15は、上記捻り治具11と共通の構造を有し、ステータコア2の第5層の複数の脚部40(先端部T)により形成される円周の直径に応じた内径および外径を有する図示しない円筒部を含む。また、捻り治具16は、上記捻り治具11と共通の構造を有し、ステータコア2の第6層の複数の脚部40(先端部T)により形成される円周の直径に応じた内径および外径を有する図示しない円筒部を含む。
【0026】
更に、捻り加工装置10の押さえ治具22は、上記押さえ治具21と共通の構造を有し、捻り治具12により軸方向に摺動自在かつ当該捻り治具12と一体回転可能に支持される。また、押さえ治具23は、上記押さえ治具21と共通の構造を有し、捻り治具13により軸方向に摺動自在かつ当該捻り治具13と一体回転可能に支持される。更に、押さえ治具24は、上記押さえ治具21と共通の構造を有し、捻り治具14により軸方向に摺動自在かつ当該捻り治具14と一体回転可能に支持される。また、押さえ治具25は、上記押さえ治具21と共通の構造を有し、捻り治具15により軸方向に摺動自在かつ当該捻り治具15と一体回転可能に支持される。更に、押さえ治具26は、上記押さえ治具21と共通の構造を有し、捻り治具16により軸方向に摺動自在かつ当該捻り治具16と一体回転可能に支持される。
【0027】
捻り加工装置10の回転駆動機構17は、捻り治具11-16と個別に連結可能に構成されている。本実施形態において、回転駆動機構17は、例えば奇数層の複数の脚部40(先端部T)に対応した捻り治具11,13および15(並びに押さえ治具21,23および25)を
図5における反時計方向に回転させながらステータコア2に向けて軸方向に移動(接近離間)させる。また、回転駆動機構17は、例えば偶数層の複数の脚部40(先端部T)に対応した捻り治具12,14および16(並びに押さえ治具22,24および26)を
図5における時計方向に回転させながらステータコア2に向けて軸方向に移動(接近離間)させる。すなわち、捻り治具11,13および15の治具回転方向は、
図5における反時計方向であり、捻り治具12,14および16の治具回転方向は、
図5における時計方向である。捻り加工装置10の移動機構18は、押さえ治具21-26と個別に連結可能に構成されており、押さえ治具21-26を環状部211等がフランジ部111等に接近または離間するようにそれぞれに対応した捻り治具11-15または16に対して軸方向に移動させる
【0028】
上述のような捻り加工装置10を用いてステータコア2のリード側(
図1および
図6における上側)の端面から突出した複数の脚部40に捻り加工を施す際には、まず、複数のセグメントコイル4が組み付けられたステータコア2を複数のスロット2sから突出した複数の脚部40が上方を向くように捻り加工装置10の下方に捻り治具11-16と同軸に位置決めする。更に、複数の脚部40の先端部Tを捻り治具11-16の対応する押圧部112等に当接させる。なお、引出線Lu,LvまたはLwとなるセグメントコイル4の脚部40は、捻り加工装置10を用いた捻り加工の前に、ステータコア2の外周に向けて予め曲げられる。
【0029】
ステータコア2が捻り加工装置10に対して位置決めされると、制御装置100は、複数の捻り冶具11-16のうち、例えば、外周側から1番目および2番目の捻り治具11および12を中心軸CAの周りに互いに逆方向に回転させながらステータコア2に接近(下降)させるように回転駆動機構17を制御する。以後、制御装置100は、外周側から順番に、外周側から3番目および4番目の捻り治具13および14、並びに外周側から5番目および6番目の捻り治具15および16を中心軸CAの周りに互いに逆方向に回転させながらステータコア2に接近させるように回転駆動機構17を制御する。また、制御装置100は、複数の捻り冶具11-16を中心軸CAの周りに回転させる際に、所定のタイミングで押さえ治具21-26をそれぞれに対応した捻り治具11-15または16に対して接近させるように移動機構18を制御する
【0030】
これにより、複数の捻り冶具11-16のうち、奇数番目の捻り治具11,13および15は、中心軸CAの周りの一方向に回転させられ、偶数番目の捻り治具12,14および16は、中心軸CAの周りの他方向(逆方向)に回転させられる。この結果、ステータコア2の外周側から奇数番目すなわち奇数層上の複数の脚部40は、周方向における一側に倒されながら中心軸CAすなわちステータコア2の軸心周りに捻られ、偶数番目すなわち偶数層上の複数の脚部40は、周方向における他側に倒されながらステータコア2の軸心周りに捻られる。そして、互いに対応する2つの脚部40の先端部Tは、それぞれステータコア2の軸心に対して傾斜すると共にステータコア2の周方向に沿って互いに逆向きに延在する状態で径方向に隣り合う。
【0031】
続いて、
図8から
図15を参照しながら、捻り加工装置10の捻り治具11および押さえ治具21によるステータコア2の各スロット2sの第1層(最外層)から突出する複数の脚部40の加工手順について詳細に説明する。
【0032】
ステータコア2が捻り加工装置10に対して位置決めされた際、各脚部40の先端部Tは、
図8および
図9に示すように、対応するスロット2sの第1層から突出してステータコア2の軸方向に沿って延在し、各先端部Tの捻り治具11の治具回転方向における後側の表面は、当該捻り治具11の対応する押圧部112の凸曲面112pの当接する。また、各先端部Tの治具回転方向における前側の表面と、当該治具回転方向における前側に位置する支持部115の受け面115rとの間には、周方向の隙間が形成される。更に、ステータコア2に対しては、それぞれ隣り合う脚部40の間でステータコア2の端面に当接するように複数の曲げ治具(カフサ)19が配置される。また、ステータコア2が捻り加工装置10に対して位置決めされた際、押さえ治具21は、移動機構18により捻り治具11に対して定められた初期位置(初期高さ)に保持される。押さえ治具21が初期位置に維持される間、各クランプ部215の遊端部(環状部211側とは反対側の端部)は、
図9に示すように、対応する切欠部114内に僅かに突出し、各クランプ部215の端面215pと、対応する捻り治具11の支持部115(支持面115s)との間には、充分な隙間が形成される。
【0033】
捻り加工装置10の制御装置100は、ステータコア2が捻り加工装置10に対して位置決めされた後、捻り治具11および押さえ治具21を中心軸CAの周りに予め定められた治具回転方向に一体に回転させると共にステータコア2に接近させるように回転駆動機構17を制御する。回転駆動機構17は、捻り治具11に対して回転方向における成形荷重と軸方向における成形荷重とを付与する。これにより、ステータコア2の対応するスロット2sの第1層から突出する各脚部40は、捻り治具11の対応する押圧部112により押圧され、
図10に示すように、対応する曲げ治具19との接触部を支点として、ステータコア2の周方向における一側すなわち捻り治具11の治具回転方向における前側に倒されていく。
【0034】
捻り治具11の回転に伴って、各脚部40が当該捻り治具11によりステータコア2の周方向における一側に倒されていくと、各先端部Tの捻り治具11の治具回転方向における前側の表面は、
図11に示すように、当該治具回転方向における前側で隣り合う支持部115の支持面115sに当接する。また、各先端部Tの上記治具回転方向における後側の表面は、
図11に示すように、対応するクランプ部215の端面215pと対向する。制御装置100は、各先端部Tが治具回転方向における前側で隣り合う支持部115の支持面115sに当接するタイミングで、捻り治具11に対して押さえ治具21を移動(下降)させるように移動機構18を制御する。
【0035】
本実施形態において、制御装置100は、捻り治具11および押さえ治具21が回転開始から予め定められた第1角度θ
1だけ回転すると、各先端部Tが対応する支持部115の支持面115sに当接するとみなし、捻り治具11に対して押さえ治具21をステータコア2側に所定距離だけ移動させるように移動機構18を制御する。これにより、押さえ治具21は、
図12に示すように、捻り治具11の複数の支持部115の各々が対応する脚部40の先端部Tを支持するのに応じて、複数のクランプ部215の各々が対応する先端部Tの治具回転方向における後側の表面を押さえ付けるように捻り治具11に対して移動する。この結果、複数の脚部40の先端部Tは、それぞれ捻り治具11の支持部115(支持面115s)と押さえ治具21のクランプ部215(端面215p)とによってしっかりと把持される。
【0036】
押さえ治具21をステータコア2側に移動させた後、制御装置100は、移動機構18に捻り治具11に対する押さえ治具21の位置を保持させる。また、捻り治具11および押さえ治具21は、継続して中心軸CAの周りに予め定められた治具回転方向に一体に回転する。これにより、ステータコア2の対応するスロット2sの第1層から突出する各脚部40の先端部Tは、
図13に示すように、捻り治具11の支持部115と押さえ治具21のクランプ部215とによって把持されて捻り治具11の治具回転方向における前側に引っ張られる。また、各脚部40は、
図13に示すように、先端部Tよりも連結部側の部分(絶縁皮膜が除去されていない部分)に当接する対応する押圧部112の凸曲面112pにより押圧される。この結果、第1層の各脚部40は、ステータコア2の周方向における一側に倒されながら、中心軸CAすなわちステータコア2の軸心の周りに捻られる。
【0037】
更に、捻り治具11および押さえ治具21の回転に伴い、捻り治具11の各押圧部112の傾斜面112sは、
図14および
図15に示すように、先端部Tよりも連結部側の部分(絶縁皮膜が除去されていない部分)に密接し、各支持部115の受け面115rは、治具回転方向における後側の傾斜面112sにより押さえ付けられた脚部40の先端部Tの頂部を受け止める。そして、制御装置100は、捻り治具11および押さえ治具21が回転開始から予め定められた第2角度θ
2(θ
2>θ
1)だけ回転すると、捻り治具11および押さえ治具21の回転を停止させるように回転駆動機構17を制御する。更に、制御装置100は、
図14および
図15に示すように、押さえ治具21を上記初期値に戻すように移動機構18を制御する。これにより、ステータコア2の各スロット2sの第1層から突出する複数の脚部40に対する捻り加工が完了する。
【0038】
なお、本実施形態では、上述のような第1層の複数の脚部40に対する捻り加工と同時に、捻り治具12および押さえ治具22を捻り治具11等と逆方向に回転させると共に、押さえ治具22を捻り治具12に対して移動(下降)させることにより、第2層の複数の脚部40に対して捻り加工が施される。更に、第1および第2層の複数の脚部40に対する捻り加工の完了後、第3および第4層の脚部40に対する捻り加工と、第5および第5層の脚部40に対する捻り加工とが順番に実行される。
【0039】
以上説明したように、本開示の捻り加工装置10は、それぞれ径方向に延在すると共に周方向に間隔をおいて形成された複数のスロット2sを含むステータコア2と、互いに異なるスロット2sに差し込まれる一対の脚部40を有すると共に対応する脚部40の先端部T同士の電気的接合により複数のステータコイル3u,3v,3wを形成する複数のセグメントコイル4とを含むステータ1の製造に用いられる。すなわち、捻り加工装置10は、ステータコア2の複数のスロット2sから周方向に隣り合うように突出する複数のセグメントコイル4の脚部40を先端部Tがステータコア2の軸心に対して傾斜するように倒しながら軸心の周りに捻るものである。
【0040】
上記実施形態において、捻り加工装置10は、それぞれ回転駆動機構17により中心軸CAすなわちステータコア2の軸心の周りに予め定められた治具回転方向に回転させられると共にステータコア2に向けて軸方向に移動させられる複数の円筒状の捻り治具11-16と、捻り治具11-16と一体に回転可能であると共に、当該捻り治具11-16に対して移動可能な押さえ治具21-26とを含む。捻り治具11(12-16)は、スロット2sから突出した対応する脚部40の治具回転方向における後側の表面をそれぞれ押圧する複数の押圧部112と、押圧部112により押圧されて倒された対応する脚部40の先端部Tの治具回転方向における前側の表面をそれぞれ支持する複数の支持部115とを含む。また、押さえ治具21(22-26)は、対応する先端部Tの治具回転方向における後側の表面にそれぞれ当接可能な複数のクランプ部215を含む。更に、押さえ治具21(22-26)は、捻り治具11-16の複数の支持部115の各々が対応する脚部40の先端部Tを支持するのに応じて、複数のクランプ部215の各々が対応する先端部Tの治具回転方向における後側の表面を押さえ付けるように捻り治具11(12-16)に対して移動可能である。
【0041】
複数のセグメントコイル4の脚部40に捻り加工に施す際、捻り加工装置10の制御装置100は、複数の押圧部112を含む円筒状の捻り治具11(12-16)をステータコア2の軸心の周りに治具回転方向に回転させながらステータコア2に向けて軸方向に移動させる。捻り治具11(12-16)が回転しながら軸方向に移動すると、複数の押圧部112は、スロット2sから突出した複数の脚部40の治具回転方向における後側の表面を押圧する。また、制御装置100は、押圧部112により押圧されて倒された複数の脚部40の先端部Tの治具回転方向における前側の表面が捻り治具11(12-16)の複数の支持部115により支持されるのに応じて、複数のクランプ部215を含む押さえ治具21(22-26)を捻り治具11(12-16)に対して移動させる。複数のクランプ部215は、複数の脚部40の先端部Tの治具回転方向における後側の表面を支持し、捻り治具11(12-16)および押さえ治具21(22-26)は、治具回転方向に一体に回転する。
【0042】
これにより、複数の脚部40の先端部Tが捻り治具11(12-16)の支持部115と押さえ治具21-26のクランプ部215とによって把持され、捻り治具11(12-16)および押さえ治具21(22-26)を上記治具回転方向に更に回転させることで、複数の脚部40を引っ張りながら倒すと共にステータコア2の軸心(中心軸CA)の周りに捻ることが可能となる。従って、成形荷重の増加を抑えても、各脚部40の根元部(ステータコア2の端面付近)における曲率半径を小さくしてステータコア2すなわちコイルエンド部3aの軸長を短縮化すると共に各脚部40の先端部Tの周方向における位置の精度を向上させることができる。この結果、捻り治具11(12-16)等の剛性を高めることによるコストアップを抑制しつつ、複数のスロット2sから周方向に隣り合うように突出するセグメントコイル4の脚部40を先端部Tがステータコア2の軸心に対して傾斜するように高精度に成形することが可能となる。
【0043】
また、捻り加工装置10は、複数の支持部115の各々が対応する脚部40の先端部Tを支持するのに応じて複数のクランプ部215の各々が対応する先端部Tの治具回転方向における後側の表面を押さえ付けるように捻り治具11(12-16)に対して押さえ治具21(22-26)を移動させる移動機構18を含む。これにより、複数の脚部40の先端部Tが対応する支持部115により支持されるまで、各クランプ部215と対応する脚部40との干渉を抑制することが可能となる。
【0044】
更に、押さえ治具21(22-26)は、複数のクランプ部215を周方向に間隔をおいて支持する環状部211を含む。また、捻り治具11(12-16)は、それぞれ軸方向に延在するように周方向に間隔をおいて内周面に形成された複数のガイド溝11gを含み、複数のガイド溝11gの各々は、対応するクランプ部215を摺動自在に支持する。更に、複数の支持部115の各々は、対応するガイド溝11gの開口端と間隔をおいて対向するように捻り治具11(12-16)に形成される。これにより、捻り治具11(12-16)と押さえ治具21(22-26)とを一体に回転させると共に、押さえ治具21(22-26)を捻り治具11(12-16)に対して軸方向に移動させて複数の脚部40の先端部Tの治具回転方向における後側の表面を複数のクランプ部215により押さえ付けることが可能となる。
【0045】
また、複数の押圧部112の各々は、治具回転方向における前側から後側に向かうにつれてフランジ部111から離間してステータコア2に近接するように湾曲する凸曲面112pを含み、複数の支持部115の各々は、対応する押圧部112と一体に形成される。より詳細には、各支持部115は、それに対応した(それが支持する)脚部40に治具回転方向における前側で隣り合う脚部40を押圧する押圧部112と一体に形成される。これにより、捻り治具11(12-16)を回転させることで、複数の脚部40の各々を対応する押圧部112により押圧して倒すと共に、各脚部40を捻り治具11(12-16)の治具回転方向の前側に位置する支持部115により支持することが可能となる。
【0046】
更に、複数の押圧部112の各々は、凸曲面112pに連続して延在する傾斜面112sを含む。また、複数の支持部115の各々は、傾斜面112sのステータコア2から離間した側で対応する先端部Tの治具回転方向における前側の表面を支持する支持面115sと、治具回転方向における後側の傾斜面112sにより押さえ付けられた脚部40の先端部Tの頂部を受ける受け面115rとを含む。これにより、各傾斜面112sと各受け面115rとで各脚部40を拘束し、複数の脚部40の根元部における曲率半径のばらつきを小さくすると共に、各脚部40の先端部Tの周方向における位置の精度をより向上させることが可能となる。
【0047】
そして、セグメントコイル4において、先端部Tの脚部40の倒し方向と反対側、すなわち治具回転方向における後側の表面は、治具回転方向における前側に傾斜する凸曲面状に形成されている。これにより、ステータコイル3u,3v,3wのコイルエンド部3aの軸長をより短縮化すると共に、当該コイルエンド部3aをよりフラットにすることが可能となる。
【0048】
なお、上記実施形態において、移動機構18により押さえ治具21等を捻り治具11等に対して移動させる際に、捻り治具11等の回転等を一旦停止させてもよい。また、移動機構18は、エアシリンダ、油圧シリンダ等の液圧アクチュエータ、電動モータ、電磁アクチュエータ等を含む駆動機構であってもよく、捻り治具11等の回転に連動して押さえ治具21等を軸方向に進退移動させるカム機構等を含む駆動機構であってもよい。
【0049】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の発明は、ステータの製造分野等において利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ステータ、2 ステータコア、2o 中心孔、2p 電磁鋼板、2s スロット、2t ティース部、3a,3b コイルエンド部、3u,3v,3w ステータコイル、4 セグメントコイル、40 脚部、5u U相端子、5v V相端子、5w W相端子、6u U相動力線、6v V相動力線、6w W相動力線、8 モールド部、10 捻り加工装置、11,12,13,14,15,16 捻り冶具、11g ガイド溝、17 回転駆動機構、18 移動機構、19 曲げ治具、21,22,23,24,25,26 押さえ治具、100 制御装置、110 円筒部、111 フランジ部、112 押圧部、112p 凸曲面、112s 傾斜面、114 切欠部、115 支持部、115r 受け面、115s 支持面、211 環状部、215 クランプ部、215p 端面、CA 中心軸、Lu,Lv,Lw 引出線、T 先端部。