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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035864
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】帯電防止性成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/16 20060101AFI20220225BHJP
   C08K 3/017 20180101ALI20220225BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C09K3/16 102G
C08K3/017
C08L23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140471
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】北條 智也
(72)【発明者】
【氏名】金井 繁
(72)【発明者】
【氏名】田所 淳人
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002EY016
4J002FD106
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】本発明は、表面固有抵抗値が1010Ω未満と帯電防止効果が優れており、空気中を浮遊する塵埃(微小粒子)が表面に付着しにくく、軽量で機械的強度が優れている帯電防止性成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】メルトフローレイト(MFR)が0.5(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤0.01~1.0重量部よりなり、表面固有抵抗値が1010Ω未満であることを特徴とする帯電防止性成形品及びその製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレイト(MFR)が0.5(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤0.01~1.0重量部よりなり、表面固有抵抗値が1010Ω未満であることを特徴とする帯電防止性成形品。
【請求項2】
帯電防止剤が、一般式(1)で表される帯電防止剤であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性成形品。
【化1】
(式中、R、Rはそれぞれ独立に、炭素数12~22のアシル基又はHであり、かつ、R、Rの少なくとも一方は炭素数12~22のアシル基であり、R、R、Rは、それぞれ独立に、CH3、C25、CH2OH、C24OH、CH2CH(CH3)OH、炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基であり、かつ、R、R、Rの少なくとも一つが炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基である。)
【請求項3】
(1)高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤5.0~20.0重量部よりなる樹脂組成物を溶融混錬して粒子状体を得る工程、及び、
(2)メルトフローレイト(MFR)が0.5(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂100重量部と得られた上記粒子状体0.2~5.0重量部よりなる樹脂組成物をブロー成形する工程
からなることを特徴とする請求項1又は2記載の帯電防止性成形品の製造方法。
【請求項4】
帯電防止剤が、一般式(1)で表される帯電防止剤であることを特徴とする請求項3記載の帯電防止性成形品の製造方法。
【化1】
(式中、R、Rはそれぞれ独立に、炭素数12~22のアシル基又はHであり、かつ、R、Rの少なくとも一方は炭素数12~22のアシル基であり、R、R、Rは、それぞれ独立に、CH3、C25、CH2OH、C24OH、CH2CH(CH3)OH、炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基であり、かつ、R、R、Rの少なくとも一つが炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基である。)

























【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品容器、工業薬品容器、精密機器容器等の帯電防止性成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック成形品は軽量で機械的強度が大きく且つ製造が容易なので、広く使用されているが、プラスチック成形品は帯電し易く、空気中を浮遊する塵埃(微小粒子)が表面に付着し易いという欠点があった。そのため、食品分野、工業薬品分野、精密機器分野等クリーン性が要求される分野においては、プラスチックに界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系誘導体等の低分子タイプ帯電防止剤、高分子タイプ帯電防止剤、カーボンブラック等を練り込むことにより、帯電防止性を付与することが行われていた。
【0003】
しかしながら、低分子タイプ帯電防止剤は成形品表面にブリ-ドしないと帯電防止効果を発揮できず、成形品表面にブリ-ドすると、帯電防止剤は内容物や接触物に移行してしまい内容物や接触物を汚染すると共に、帯電防止効果が低下するという欠点があった。
【0004】
又、高分子タイプ帯電防止剤は、5~20重量%と多量に添加する必要があり、成形の際に高い剪断力を与えないと分散しにくく、帯電防止効果を発揮できないという欠点があった。更に、カーボンブラックは、多量に添加する必要があり、黒色の成形品しか得られない、カーボンブラック自体が脱落して混入する等の欠点があった。
【0005】
これらの欠点を解消するために、種々の提案がなされている。例えば、「ポリエチレン樹脂材料を複数層に積層しながらブロー成形によって形成される樹脂容器であって、当該樹脂容器における最外側の層であり、ポリエチレン樹脂材料に高分子型帯電防止剤を配合して表面固有抵抗値において1×1010~1×1013Ωを有する最外層と、上記最外層よりも容器内側に位置する層であり、他のブロー成形品から除去され回収された余剰材料を用いた再使用材層とを備え、上記再使用材層は、容器内収納物に接する層であることを特徴とする帯電防止性樹脂容器。」(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記帯電防止性樹脂容器は少なくとも2層構造であり、製造が困難であり、表面固有抵抗値が1010~1013Ωと帯電防止効果の低いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6346771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、表面固有抵抗値が1010Ω未満と帯電防止効果優れおり、空気中を浮遊する塵埃(微小粒子)が表面に付着しにくく、軽量で機械的強度が優れている帯電防止性成形品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
[1]メルトフローレイト(MFR)が0.5(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤0.01~1.0重量部よりなり、表面固有抵抗値が1010Ω未満であることを特徴とする帯電防止性成形品、
[2]帯電防止剤が、一般式(1)で表される帯電防止剤であることを特徴とする前記[1]記載の帯電防止性成形品、
【化1】
(式中、R、Rはそれぞれ独立に、炭素数12~22のアシル基又はHであり、かつ、R、Rの少なくとも一方は炭素数12~22のアシル基であり、R、R、Rは、それぞれ独立に、CH3、C25、CH2OH、C24OH、CH2CH(CH3)OH、炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基であり、かつ、R、R、Rの少なくとも一つが炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基である。)
[3](1)高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤5.0~20.0重量部よりなる樹脂組成物を溶融混錬して粒子状体を得る工程、及び、
(2)メルトフローレイト(MFR)が0.5以下の高密度ポリエチレン樹脂100重量部と得られた上記粒子状体0.2~5.0重量部よりなる樹脂組成物をブロー成形する工程
からなることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の帯電防止性成形品の製造方法、及び、
[4]帯電防止剤が、一般式(1)で表される帯電防止剤であることを特徴とする前記[3]記載の帯電防止性成形品の製造方法
【化1】
(式中、R、Rはそれぞれ独立に、炭素数12~22のアシル基又はHであり、かつ、R、Rの少なくとも一方は炭素数12~22のアシル基であり、R、R、Rは、それぞれ独立に、CH3、C25、CH2OH、C24OH、CH2CH(CH3)OH、炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基であり、かつ、R、R、Rの少なくとも一つが炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基である。)
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の帯電防止性成形品及びその製造方法の構成は上述の通りであり、帯電防止性成形品は表面固有抵抗値が1010Ω未満と帯電防止効果が優れており、空気中を浮遊する塵埃(微小粒子)が表面に付着しにくく、その効果は長期間保持され、且つ、軽量で機械的強度が優れている。又、その製造方法は容易であり、安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の帯電防止性成形品は、メルトフローレイト(MFR)が0.5(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤0.01~1.0重量部よりなり、表面固有抵抗値が1010Ω未満であることを特徴とする。
【0012】
上記高密度ポリエチレン樹脂は、中低圧法で重合され、密度が0.945~0.965g/cmのポリエチレン樹脂であり、微量のプロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等のαーオレフィンが共重合されていてもよい。
【0013】
本発明の帯電防止性成形品は、ブロー成形法により成形されるのが好ましいので、上記高密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、フィルム成形性が優れており、特に、ブロー成形可能であり、機械的強度が大きいものが好ましく、0.5(g/10分)以下である。
【0014】
ブロー成形は、溶融状態の高密度ポリエチレン樹脂よりなるパリソンを垂下し、ガスをパリソン内に注入しながら成形金型で加圧して成形する。パリソンの溶融粘度が低い場合及びパリソンが大きく重い場合は、パリソンが自重で切断してブロー成形できなくなる。従って、大きな帯電防止性成形品を成形する際には、メルトフローレイト(MFR)は小さい方が好ましく、0.01~0.4(g/10分)が好ましい。尚、MFRとは、JIS K 7210に規定されている熱可塑性樹脂の溶融粘度を表す指標である。
【0015】
又、上記高密度ポリエチレン樹脂の重量平均分子量は、重量平均分子量が10万未満の場合には、機械的強度又は耐クリープ性等が低下し、逆に、50万を超えると、溶融粘度が高くなり、熱溶融成形性が低下し、均一な帯電防止性成形品が得られにくくなるので10万~50万が好ましい。尚、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。
【0016】
上記高密度ポリエチレン樹脂に、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ペンテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体、エチレン-オクテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等のオレフィン系樹脂が、機械的強度等の物性が低下しない範囲で少量添加されてもよい。
【0017】
又、従来から熱可塑性樹脂の成形の際に一般に使用されている、熱安定剤、耐熱向上剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、衝撃改良剤、防曇剤、難燃剤、着色剤等の添加剤が、必要に応じて、上記高密度ポリエチレン樹脂に添加されてもよい。
【0018】
上記帯電防止剤としては、例えば、界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系誘導体等の低分子タイプ帯電防止剤、高分子タイプ帯電防止剤、カーボンブラック等のプラスチックの加工に従来から使用されている界面活性剤が挙げられる。
【0019】
又、上記帯電防止剤としては、一般式(1)で表される帯電防止剤が好ましい。
【化1】
【0020】
式中、R、Rはそれぞれ独立に、炭素数12~22のアシル基又はHであり、かつ、R、Rの少なくとも一方は炭素数12~22のアシル基であり、R、R、Rは、それぞれ独立に、CH3、C25、CH2OH、C24OH、CH2CH(CH3)OH、炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基であり、かつ、R、R、Rの少なくとも一つが炭素数12~22のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数合計13~25のアシルオキシアルキル基、又は炭素数合計14~25のアシルアミノアルキル基である。
【0021】
一般式(1)で表される帯電防止剤の具体的な例としては、例えば、下記化学式(2)~(12)で表される。
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
【化10】
【0030】
【化11】
【0031】
【化12】
【0032】
上記帯電防止剤は、無機充填剤粉末の表面に吸着させて粉末状帯電防止剤としてもよい。無機充填剤粉末としては、従来からプラスチック成形体に使用している無機充填剤粉末であれば、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、クレー等が挙げられる。
【0033】
又、上記帯電防止剤が表面に吸着した無機充填剤粉末を製造する方法は、特に限定されず、例えば、帯電防止剤を溶解した有機溶媒に無機充填剤粉末を供給し、撹拌混合して帯電防止剤を無機充填剤粉末の表面に吸着させた後、有機溶媒を蒸発する方法が挙げられる。
【0034】
上記、有機溶媒としては、上記帯電防止剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0035】
本発明の帯電防止性成形品は、高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤0.01~1.0重量部よりなり、表面固有抵抗値が1010Ω未満である。
【0036】
上記帯電防止剤は、帯電防止性能が優れており、成形品表面にブリ-ドしにくく、経時による成形品内の濃度減少が小さいので、高密度ポリエチレン樹脂100重量部に対し帯電防止剤の添加量は0.01~1.0重量部であり、好ましくは、0.1~0.8重量部である。
【0037】
又、本発明の帯電防止性成形品の表面固有抵抗値は1010Ω未満であり帯電防止性能はすぐれているが、好ましくは、10~10Ωである。
【0038】
本発明の帯電防止性成形品の製造方法は、(1)高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤5.0~20.0重量部よりなる樹脂組成物を溶融混錬して粒子状体を得る工程、及び、(2)メルトフローレイト(MFR)が0.5(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂100重量部と得られた上記粒子状体0.2~5.0重量部よりなる樹脂組成物をブロー成形する工程からなる。
【0039】
上記工程(1)は、高濃度の帯電防止剤を含有する粒子状体を得る工程である。上記高密度ポリエチレン樹脂は前記高密度ポリエチレン樹脂と同種のものが使用可能であるが、高濃度の帯電防止剤が均一に分散されるのが好ましので、本発明の帯電防止性成形品を構成する高密度ポリエチレン樹脂の流動性と同一又はそれより優れているのが好ましく、メルトフローレイト(MFR)は、帯電防止性成形品を構成する高密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレイト(MFR)のより大きい方が好ましい。
【0040】
上記帯電防止剤としては、例えば、界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系誘導体等の低分子タイプ帯電防止剤、高分子タイプ帯電防止剤、カーボンブラック等のプラスチックの加工に従来から使用されている界面活性剤が挙げられ、一般式(1)で表される帯電防止剤が好ましい。
【0041】
帯電防止剤は工程(2)において希釈され、帯電防止性成形品は高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤0.01~1.0重量部よりなるのであるから、上記帯電防止剤の添加量は、高密度ポリエチレン樹脂100重量部に対し、5.0~20.0重量部である。
【0042】
粒子状体を得るには、公知の任意の方法が採用されればよく、例えば、上記高密度ポリエチレン樹脂と帯電防止剤よりなる樹脂組成物を押出機に供給し、加熱し溶融混錬して押出し、次に、小さく切断してペレット化する方法が挙げられる。
【0043】
上記工程(2)は、メルトフローレイト(MFR)が0.5(g/10分)以下の高密度ポリエチレン樹脂100重量部と得られた上記粒子状体0.2~5.0重量部よりなる樹脂組成物をブロー成形する工程である。
【0044】
帯電防止性成形品は高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤0.01~1.0重量部よりなり、上記粒子状体は高密度ポリエチレン樹脂100重量部と帯電防止剤5.0~20.0重量部よりなるのであるから、上記粒子状体の添加量は、高密度ポリエチレン樹脂100重量部に対し、0.2~5.0重量部である。
【0045】
ブロー成形法とは、樹脂組成物を押出機に供給し、溶融状態で押出成形して筒状のパリソンを成形し、次いで、得られたパリソンを成形金型に供給し、パリソン内にガスを吹き込みながら、成形金型を型締めして成形品を製造する方法である。
【0046】
ブロー成形法により成形することにより、内容量が少量のものから200リットル以上の大容量のものまで容易に製造することができる。又、単層だけでなく、2層以上の多層の成形品を容易に製造することができる。
【0047】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0048】
実施例で使用した高密度ポリエチレン樹脂及び高分子系帯電防止剤は下記の通りである。
高密度ポリエチレン樹脂
・HDPE-1;旭化成社製、ブログレード、MFR=0.30、密度=0.949g/cm
・HDPE-2;京葉ポリエチレン社製、ブログレード、MFR=0.15、密度=0.953g/cm
・HDPE-3;京葉ポリエチレン社製、ブログレード、MFR=0.03、密度=0.954g/cm
高分子系帯電防止剤:三洋化成社製、商品名「ペレスタットVH230」
【0049】
又、帯電防止剤含有粒子状体の製造方法は下記の通りである。
帯電防止剤(A)含有粒子状体の製造
化学式(2)で表される帯電防止剤が40重量%溶解されているエタノール溶液50重量部に炭酸カルシウム粉末80重量部を供給し、よく撹拌混合した後、エタノールを蒸発させて帯電防止剤を20重量%含有する帯電防止性炭酸カルシウム粉末を得た。
【0050】
高密度ポリエチレン樹脂(京葉ポリエチレン社製、ブログレード、MFR=0.35、密度=0.956g/cm)50重量部と得られた帯電防止性炭酸カルシウム粉末50重量部を混合し押出した後、切断して直径約5mmの帯電防止剤含有粒子状体を得た。尚、得られた帯電防止剤含有粒子状体の帯電防止剤の含有量は10重量%であった。
【0051】
帯電防止剤(B)含有粒子状体の製造
化学式(3)で表される帯電防止剤が40重量%溶解されているエタノール溶液50重量部に炭酸カルシウム粉末80重量部を供給し、よく撹拌混合した後、エタノールを蒸発させて帯電防止剤を20重量%含有する帯電防止性炭酸カルシウム粉末を得た。
【0052】
高密度ポリエチレン樹脂(京葉ポリエチレン社製、ブログレード、MFR=0.35、密度=0.956g/cm)50重量部と得られた帯電防止性炭酸カルシウム粉末50重量部を混合し押出した後、切断して直径約5mmの帯電防止剤含有粒子状体を得た。尚、得られた帯電防止剤含有粒子状体の帯電防止剤の含有量は10重量%であった。
【0053】
(実施例1、2、比較例1~5)
【0054】
表1に示した所定量の高密度ポリエチレン樹脂、帯電防止剤含有粒子状体及び高分子系帯電防止剤よりなる樹脂組成物を押出機に供給し、パリソンを成形し、次に、パリソンを成形金型でブロー成形することにより、表1に示したように20リットル~200リットルの有底円筒状容器を製造した。
【0055】
得られた有底円筒状容器の表面固有抵抗値を測定し、結果を表1に示した。又、成形性を○×で示した。美麗な有底円筒状容器が得られた場合は○で示し、有底円筒状容器の外表面に凹凸が発生した場合は×で示した。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例3~5)
表2に示した所定量の高密度ポリエチレン樹脂及び帯電防止剤含有粒子状体よりなる外層用の樹脂組成物と、表2に示した所定の内層用高密度ポリエチレン樹脂を2層押出機に供給し、パリソンを成形し、次に、パリソンを成形金型でブロー成形することにより、表1に示したように20リットル~100リットルの2層有底円筒状容器を製造した。
【0058】
得られた有底円筒状容器の外表面の表面固有抵抗値を測定し、結果を表2に示した。又、得られた有底円筒状容器の外表面に凹凸は発生せず美麗であり、成形性は良好と判断し、○で示した。
【0059】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の帯電防止性成形品は、表面固有抵抗値が1010Ω未満と帯電防止効果優れおり、空気中を浮遊する塵埃(微小粒子)が表面に付着しにくく、その効果は長期間保持され、且つ、軽量で機械的強度が優れている。又、その製造方法は容易であり、安価に製造することができる。特に、2層以上の多層の帯電防止性成形品や内容量が200リットル以上の巨大な帯電防止性成形品であっても容易且つ安価に製造することができる。