(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035875
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】断熱性を備えた接着剤
(51)【国際特許分類】
C08L 101/14 20060101AFI20220225BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220225BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220225BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220225BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220225BHJP
C08K 7/24 20060101ALI20220225BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220225BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220225BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C08L101/14
C09J201/00
C09J11/04
C09D201/00
C09D7/61
C08K7/24
C08K3/36
C08K3/22
C08K3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140486
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】520320723
【氏名又は名称】日本特殊塗装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520320734
【氏名又は名称】日本断熱塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】小畠 啓造
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002DE138
4J002DE147
4J002DH008
4J002DJ017
4J002DL006
4J002DM006
4J002FA096
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD208
4J002GH01
4J002GJ01
4J038EA011
4J038HA126
4J038HA446
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA21
4J038MA08
4J038NA01
4J038NA14
4J040HA136
4J040HA306
4J040KA05
4J040KA23
4J040LA07
4J040LA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接着性を備えつつ断熱性を保持する断熱性接着剤を与える組成物,及び断熱性接着剤の製造方法の提供。
【解決手段】セラミック系またはガラス系のバルーン粒子と,水ならびに水溶性樹脂と,光触媒物質と,多孔質粒子と,からなることを特徴とする組成物。多孔質粒子として,好適には,シリカ系多孔質粒子,アルミ系多孔質粒子のいずれか又は複数を選択することができる。
【効果】当該組成物により,断熱性能に加え,接着性能を発揮することができる。これにより,例えば建物内部における断熱性ウレタンの接着の際に用いることができ,重畳的な断熱性能を発揮することができる。また,当該組成物は,ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物を含まないで構成されることから,化学物質アレルギーが起こりにくい安全性の高い接着剤として用いることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック系またはガラス系のバルーン粒子と,
水ならびに水溶性樹脂と,
光触媒物質と,
多孔質粒子と,
からなることを特徴とする組成物。
【請求項2】
多孔質粒子が,シリカ系多孔質粒子,アルミ系多孔質粒子のいずれか又は複数から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
シリカ系多孔質粒子が,無機ケイ素を主原料とする多孔質粒子である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
アルミ系多孔質粒子が,アルミナである請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
光触媒物質が,酸化チタン,チタンアパタイトのいずれか又は複数から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
バルーン粒子が,球状体粒子である請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
バルーン粒子が,酸化アルミニウムである請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
接着剤として用いられる請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
断熱塗料として用いられる請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
比重が1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子に,水および水溶性樹脂を混錬して,バルーン粒子に水溶性樹脂がコーティングされた一次混錬物を得る第1混錬工程と,
第1混錬工程で得られた一次混錬物に,比重が1を超える光触媒物質を混錬して,水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子に光触媒材料が結合された二次混錬物を得る第2混錬工程と,
第2混錬工程で得られた二次混錬物に,多孔質粒子を混錬する第3混錬工程と,
からなることを特徴とする断熱性接着剤の製造方法。
【請求項11】
多孔質粒子が,シリカ系多孔質粒子,アルミ系多孔質粒子のいずれか又は複数から選択される請求項10に記載の断熱性接着剤の製造方法。
【請求項12】
シリカ系多孔質粒子が,無機ケイ素を主原料とする多孔質粒子である請求項11に記載の断熱性接着剤の製造方法。
【請求項13】
アルミ系多孔質粒子が,アルミナである請求項11又は12に記載の断熱性接着剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,断熱性を備えた接着剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱性塗料は,現代社会において,極めて高い有用性を有する。
すなわち,温暖化が進む現代社会において,断熱塗料により建物内部の温度上昇を抑制することができ,特に夏の暑い時期には極めて高い効果を発揮する。結果として,建物内部における冷房に必要な電力の大幅な削減を達成することができる。
このような効果から断熱性塗料は,省エネルギーに高い貢献が可能なエコな製品といえる。
【0003】
ところで,断熱性塗料の一つに,先行技術に記載の製品,マサコート(登録商標,非特許文献1。以下,当該製品を「先行塗料」という)がある。かかる先行塗料は,バルーン粒子,水溶性樹脂,光触媒物質からなり,所定の製造方法で混錬等を行うことにより製造される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】断熱塗料「マサコート(登録商標)」,製品紹介ページ(URL;http://jsc-eco.jp/masacoat.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出願人である日本特殊塗装株式会社は,先行塗料の事業会社であり,これに関する特許権ならびに商標権を有している。出願人は,先行塗料の有用性をさらに高めるべく,研究開発に着手したものである。
上記事情を背景として,先行塗料の有用性をさらに高めた技術開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は,鋭意研究の結果,先行塗料に多孔質粒子を添加することにより,塗料の粘着性が増加し,接着性能を発揮することを見出した。かかる組成物は,接着性を備えつつ,断熱性を保持していることを確認し,断熱性接着剤の発明を完成させた。
【0008】
本発明は,以下の構成からなる。
[1]セラミック系またはガラス系のバルーン粒子と,水ならびに水溶性樹脂と,光触媒物質と,多孔質粒子と,からなることを特徴とする組成物。
[2]多孔質粒子が,シリカ系多孔質粒子,アルミ系多孔質粒子のいずれか又は複数から選択される[1]に記載の組成物。
[3]シリカ系多孔質粒子が,無機ケイ素を主原料とする多孔質粒子である[2]に記載の組成物。
[4]アルミ系多孔質粒子が,アルミナである[2]又は[3]に記載の組成物。
【0009】
[5]光触媒物質が,酸化チタン,チタンアパタイトのいずれか又は複数から選択される[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]バルーン粒子が,球状体粒子である[1]から[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]バルーン粒子が,酸化アルミニウムである[1]から[5]のいずれかに記載の組成物。
【0010】
[8]接着剤として用いられる[1]から[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]断熱塗料として用いられる[1]から[8]のいずれかに記載の組成物。
【0011】
[10]比重が1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子に,水および水溶性樹脂を混錬して,バルーン粒子に水溶性樹脂がコーティングされた一次混錬物を得る第1混錬工程と,第1混錬工程で得られた一次混錬物に,比重が1を超える光触媒物質を混錬して,水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子に光触媒材料が結合された二次混錬物を得る第2混錬工程と,第2混錬工程で得られた二次混錬物に,多孔質粒子を混錬する第3混錬工程と,からなることを特徴とする断熱性接着剤の製造方法。
[11]多孔質粒子が,シリカ系多孔質粒子,アルミ系多孔質粒子のいずれか又は複数から選択される[10]に記載の断熱性接着剤の製造方法。
[12]シリカ系多孔質粒子が,無機ケイ素を主原料とする多孔質粒子である[11]に記載の断熱性接着剤の製造方法。
[13]アルミ系多孔質粒子が,アルミナである[11]又は[12]に記載の断熱性接着剤の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により,先行塗料の有用性を高めた技術の提供が可能となった。すなわち,本発明の組成物によれば,断熱性のみならず,接着性能をも合わせて発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の組成物と断熱性塗料の接着性能を,経時的に比較した様子を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組成物は,セラミック系またはガラス系のバルーン粒子と,水ならびに水溶性樹脂と,光触媒物質と,多孔質粒子とからなることを特徴とする。
すなわち,かかる組成物は,断熱性を備えつつ,接着効果を発揮するものであり,断熱性接着剤として用いることができる。
【0015】
本発明の組成物について,例えば建物内部における断熱性ウレタンの接着の際に用いることができる。これにより,重畳的な断熱性能を発揮することが可能となり,建物の断熱性能を飛躍的に向上させる効果を有する。
また,本発明の組成物は,ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物を含まないで構成される。これより,例えば,本発明の組成物を建物内部の壁紙接着の際に用いることにより,断熱性を発揮しつつ,化学物質アレルギーが起こりにくい安全性の高い接着剤として用いることができるという効果を有する。
なお,本発明の組成物は,断熱性接着剤として用いられるものであるが,他の用途を排除する趣旨ではない。すなわち,本発明の組成物については,断熱性と接着性を備えた効果の発揮を趣旨とするものであるが,接着効果のみ,もしくは断熱効果のみの発揮を期待して用いてもよく,単なる塗料として外観の変更ないし保護を主たる効果として用いることもできる。
【0016】
本発明の組成物は,先行塗料の技術である特許第4446403号の技術を基礎とするものである。
すなわち,先行塗料は,バルーン粒子,水溶性樹脂,光触媒物質からなり,所定の製造方法で混錬等を行うことにより製造される。本発明の組成物は,かかる先行塗料に,さらに多孔質粒子を添加することにより製造される。これより,本発明の組成物に関する組成成分ないし製造方法の一部(第1混錬工程,第2混錬工程)は,特許第4446403号に準じて行えばよい。
以下では,特許第4446403号の技術で製造される断熱性塗料を,特許組成物ないし先行塗料と略する。
【0017】
本発明の組成物を製造する際は,先行塗料に,多孔質粒子を添加し,混錬することで製造される。
先行塗料に対して添加する多孔質粒子の量については,多孔質粒子の種類や接着性能等を勘案して,適宜,調整することができる。典型的には,先行塗料に対して,添加する多孔質粒子を,0.1から0.5重量比,より好ましくは0.1から0.45重量比,さらに好ましくは0.1から0.4重量比,特に好ましくは0.1から0.35重量比,最も好ましくは0.1から0.3重量比とすることができる。
【0018】
本発明において多孔質粒子は,特許組成物に粘性を与えることで接着効果を発揮する役割を果たす。多孔質粒子は,かかる役割を果たす限り特に限定する必要はなく,種々の多孔質粒子を用いることができる。
多孔質粒子の大きさについては,本発明の組成物における接着性能を勘案し適宜変更することができるが,典型的には,1000μm以下とすることができ,より好ましくは500μm以下,さらに好ましくは200μm以下,特に好ましくは100μm以下とすることができる。
【0019】
本発明において多孔質粒子として,シリカ系多孔質粒子ないしアルミ系多孔質粒子を用いることが好ましい。これにより,特許組成物に適度な粘性を与え接着性を向上させる効果を有する。
さらに,本発明において多孔質粒子として,シリカ系多孔質粒子とアルミ系多孔質粒子を合わせて用いることが好ましい。これにより,特許組成物に粘性を与え,接着性をより優れた性能とすることができる効果を有する。
【0020】
本発明においてシリカ系多孔質粒子は,ケイ素化合物を含んだ多孔質粒子として定義される。このようなシリカ系多孔質粒子として,無機ケイ素化合物を用いることが好ましく,典型的には,結晶シリカを用いることができる。また,シリカ系多孔質粒子は,化学的に製造されたものを用いてもよいし,天然由来のものを加工して用いてもよい。
シリカ系多孔質粒子は,先行塗料を原料として,典型的には,3から30%,より好ましくは3から27%,さらに好ましくは5から27%,特に好ましくは5から25%,最も好ましくは5から23%の重量比で添加することができる。
【0021】
本発明においてアルミ系多孔質粒子は,アルミを含んだ多孔質粒子ないし微粒子として定義される。このようなアルミ系多孔質粒子として,無機アルミ系多孔質粒子を用いることが好ましく,典型的には,アルミナ(Al2O3)を用いることができる。
アルミ系多孔質粒子は,先行塗料を原料として,典型的には,3から30%,より好ましくは3から27%,さらに好ましくは3から25%,特に好ましくは3から23%,最も好ましくは3から20%の重量比で添加することができる。
【0022】
本発明の組成物は,比重が1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子に,水および水溶性樹脂を混錬して,バルーン粒子に水溶性樹脂がコーティングされた一次混錬物を得る第1混錬工程と,第1混錬工程で得られた一次混錬物に,比重が1を超える光触媒物質を混錬して,水溶性樹脂をバインダーとしてバルーン粒子に光触媒材料が結合された二次混錬物を得る第2混錬工程と,第2混錬工程で得られた二次混錬物に,多孔質粒子を混錬する第3混錬工程により製造される。
すなわち,特許組成物は,当該第1混錬工程と第2混錬工程とで製造されるものであり,第2混錬工程で製造された組成物(二次混錬物)に,多孔質粒子を加え混錬することにより得られるものである。
【実施例0023】
<<実験例>>
<製造方法>
1.特許第4446403号により製造された断熱性塗料(商品名,マサコート(登録商標),日本特殊塗装株式会社製)を原料として用いた。
2.断熱性塗料に,結晶シリカ(株式会社山森土本鉱業所製),アルミナ(住友化学株式会社製)を添加し,十分に混錬することにより,本発明の組成物を製造した。なお,それぞれ断熱性塗料に対し,結晶シリカを15%,アルミナを5%の重量比で添加した。
【0024】
<実験結果>
1.金属製被験物質を用いて接着性能を評価した結果を
図1に示す。図中,左が本発明の組成物(実施例),右が断熱性塗料(比較例)の結果である。
(1) 接着直後において,それぞれ接着した状態を保っていた。
(2) 12時間後,比較例では,金属性被験物質がはがれており,接着状態が保たれていなかった。これに対し,実施例では,12時間後,24時間後においても接着状態が保たれていた。
2.これらの結果から,本発明の組成物が,接着性能を有していることが示された。