(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035888
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220225BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20220225BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/165 301
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140505
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】印宮 丈晴
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA22
2C056EA26
2C056EB07
2C056EB34
2C056EB50
2C056EC56
2C056EC57
2C056FA03
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA38
2C056JA01
2C056JA04
2C056JA06
2C056JA10
2C056JA13
2C056JA16
2C056JA17
2C056JB04
2C056JC13
2C056KB25
2C056KB27
2C056KC01
2C056KC05
2C056KC11
(57)【要約】
【課題】インクタンク33Kの供給口33Keと記録ヘッド32Kのインク導入口32Kaとを接続する構成において、加圧することで記録ヘッド32Kのノズル32Kdからインクを吐出させることができる構成を提供する。
【解決手段】
記録ヘッド32Kは、インクタンク33Kの供給口33Keから供給されるインクをフィルタ33Kdを介してインク導入口32Kaから受け入れる。インクタンク33Kと記録ヘッド32Kは、供給口33Keとインク導入口32Kaが接続する接続位置と、これらが離間する離間位置とを相対移動可能である。記録装置は、離間位置にある状態で、ヘッド液室32Kcの内部を加圧しノズル32Kdからインクを出す加圧クリーニングを実行可能であり、その際にヘッド液室32Kcの内部にかかる圧力がノズル32Kdのメニスカス強度より大きく、フィルタ32Kbのメニスカス強度より小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容する第一収容部と、第一のフィルタと、前記第一のフィルタが設けられ、前記第一収容部に収容されたインクを前記第一のフィルタを介して供給可能な供給口と、を有するインクタンクと、
第二のフィルタと、前記第二のフィルタが設けられ、前記供給口から供給されるインクを前記第二のフィルタを介して受け入れ可能な受入口と、前記受入口から受け入れたインクを収容する第二収容部と、インクを吐出する複数の吐出部と、を有する記録ヘッドと、
前記第二収容部の内部を加圧可能なポンプと、を備え、
前記インクタンクと前記記録ヘッドは、前記供給口と前記受入口とが接続する接続位置と、前記供給口と前記受入口とが離間する離間位置と、の間を相対移動可能であり、
前記インクタンクと前記記録ヘッドが前記離間位置にある状態で、前記第二収容部の内部を前記ポンプにより加圧して前記吐出部からインクを出すモードを実行可能で、
前記モードの実行時の前記第二収容部の内部にかかる圧力が前記複数の吐出部の有するメニスカス強度より大きく、前記第二のフィルタの有するメニスカス強度より小さい、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インクタンクと前記記録ヘッドが前記接続位置にある状態では、前記第一のフィルタと前記第二のフィルタが接触する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記供給口及び前記受入口を囲うように、両端部がそれぞれ前記インクタンク及び前記記録ヘッドに固定され、前記インクタンクと前記記録ヘッドの前記相対移動に応じて伸縮可能な筒状の囲い部材を備え、
前記囲い部材は、少なくとも前記インクタンクと前記記録ヘッドが前記離間位置にあるときに開口するように形成された開口部を有する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記インクタンクと前記記録ヘッドが前記接続位置にあるときに閉じるように、前記囲い部材の伸縮動作に応じて開閉可能に形成されている、
ことを特徴とする、請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドは、前記複数の吐出部の吐出口が開口した吐出面を有し、
前記吐出面を摺擦して清掃可能な清掃部材を備え、
前記モードの実行後に引き続いて前記清掃部材にて前記吐出面を清掃する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記ポンプは、前記第二収容部の内部を吸引可能であり、
前記清掃部材による前記吐出面の清掃後に、引き続いて前記インクタンクと前記記録ヘッドが前記接続位置にある状態で前記ポンプにより前記第二収容部の内部を吸引する、
ことを特徴とする、請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記モードの実行時における前記第二収容部の内部への加圧前に、自動で前記インクタンクと前記記録ヘッドを前記接続位置から前記離間位置に相対移動可能な離間機構を備えた、
ことを特徴する、請求項1ないし6の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクタンクと前記記録ヘッドとを前記相対移動可能に保持するキャリッジと、
前記キャリッジを第一の位置から第二の位置に移動可能な移動手段と、を備え、
前記離間機構は、前記移動手段による前記キャリッジの前記第一の位置から前記第二の位置への移動に連動して前記インクタンクと前記記録ヘッドとを前記離間位置に相対移動させる、
ことを特徴とする、請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記離間機構は、
前記インクタンクと前記記録ヘッドとを前記接続位置に保持可能な保持部と、
前記キャリッジの前記第一の位置から前記第二の位置への移動に連動して前記保持部による保持を解除可能な解除部と、
前記解除部により前記保持が解除されたときに、前記インクタンクを前記離間位置に移動させるタンク移動部と、を備えた、
ことを特徴とする、請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記キャリッジが前記第二の位置よりも前記第一の位置から遠い第三の位置に移動したときに、前記インクタンクと当接して、前記インクタンクを前記接続位置に移動させる当接部材を備えた、
ことを特徴とする、請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置として、例えば、印字終了後に、記録ヘッド内を加圧してノズルからインクを吐出させるモードを実行する構成が提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の構成の場合、記録ヘッドとインクカートリッジを繋ぐインク流路に圧を加える加圧部を設け、加圧部によりインク流路内を加圧することで、インクをノズルから吐出するようにしている。この際、加圧部とインクカートリッジの間のインク流路に逆止弁を設けて、加圧部からインクカートリッジへのインクの逆流を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、インクカートリッジ(インクタンク)の供給口と記録ヘッドの受入口とを直接接続して、インクタンクから記録ヘッドにインクを供給するインクタンク構成がある。但し、このインクタンク構成の場合、上述の特許文献1に記載の構成のように、加圧部により加圧される流路を形成することは難しい。即ち、上述のインクタンク構成に引用文献1に記載の構成をすることが難しい。
【0005】
本発明は、インクタンクの供給口と記録ヘッドの受入口とを接続する構成において、加圧することで記録ヘッドのノズルからインクを吐出させることができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インクを収容する第一収容部と、第一のフィルタと、前記第一のフィルタが設けられ、前記第一収容部に収容されたインクを前記第一のフィルタを介して供給可能な供給口と、を有するインクタンクと、第二のフィルタと、前記第二のフィルタが設けられ、前記供給口から供給されるインクを前記第二のフィルタを介して受け入れ可能な受入口と、前記受入口から受け入れたインクを収容する第二収容部と、インクを吐出する複数の吐出部と、を有する記録ヘッドと、前記第二収容部の内部を加圧可能なポンプと、を備え、前記インクタンクと前記記録ヘッドは、前記供給口と前記受入口とが接続する接続位置と、前記供給口と前記受入口とが離間する離間位置と、の間を相対移動可能であり、前記インクタンクと前記記録ヘッドが前記離間位置にある状態で、前記第二収容部の内部を前記ポンプにより加圧して前記吐出部からインクを出すモードを実行可能で、前記モードの実行時の前記第二収容部の内部にかかる圧力が前記複数の吐出部の有するメニスカス強度より大きく、前記第二のフィルタの有するメニスカス強度より小さい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上述のインクタンク構成において、加圧することで記録ヘッドのノズル内からインクを吐出させることができる構成を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)本実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図、(b)(a)α部の拡大図。
【
図2】本実施形態に係るインクジェット記録装置の制御ブロック図。
【
図3】本実施形態に係るキャップ位置での記録ヘッド周囲の概略斜視図。
【
図4】本実施形態に係るキャップ位置での記録ヘッド周囲の概略断面図。
【
図5】(a)記録ヘッドとインクタンクとが接続したときの記録ヘッド周囲の断面図、(b)記録ヘッドとインクタンクとが離間した時の記録ヘッド周囲の断面図。
【
図6】(a)記録ヘッドとインクタンクとが接続したときの接続部の断面拡大図、(b)記録ヘッドとインクタンクとが離間した時の接続部の断面拡大図。
【
図7】(a)インクタンクのロック時の記録ヘッド周囲の断面図、(b)インクタンクのロックの解除時の記録ヘッド周囲の断面図。
【
図8】(a)ロック解除部材の退避時の記録ヘッド周囲の断面図、(b)キャリッジが上昇端へ到達した時の記録ヘッド周囲の断面図。
【
図9】本実施形態に係る加圧クリーニングを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~9を用いて本実施形態について説明する。
[インクジェット記録装置]
まず、
図1を用いてインクジェット記録装置の概略構成について説明する。
図1は本実施形態に係るインクジェット記録装置としての記録装置1の概略断面図である。記録装置1は、ホストコンピュータ(パーソナルコンピュータ)12などの外部端末に接続され、外部端末から送信された画像データなどの記録情報に基づき、記録媒体に情報を記録する(画像を形成する)。ここで、記録媒体に記録される情報は、例えば、文字、図形、模様、パターンなどの画像である。また、「記録媒体」には、紙、布、プラスチック・フィルムなどのシート、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革など、インクを受容可能なものを含む。本実施形態では、記録媒体を用紙(図示せず)とする。
【0010】
このような記録装置1は、
図1に示すように、搬送機構2、画像形成部3、回復部4、制御部5(
図2)、移動手段としての移動部6(
図3など)等を有する。搬送機構2は、記録前の用紙を保持し、画像形成部3に用紙を分離搬送する。画像形成部3は、搬送機構2より搬送された用紙に画像形成を行う。画像形成後の用紙は、搬送機構2により機外へ搬送され機外に載置される。
【0011】
回復部4は、画像形成部3の画像形成動作を安定させるため、画像形成部3への回復動作を行う。回復部4が行う回復動作としては、ワイピング動作、吸引クリーニング、加圧クリーニング等がある。移動部6は、画像形成部3を上下方向に移動させる。制御部5は、搬送機構2、画像形成部3、回復部4、移動部6等の記録装置1が有する各構成の動作を制御する。以下、各構成について詳しく説明する。
【0012】
[搬送機構]
まず、搬送機構2について
図1、2を用いて説明する。搬送機構2は、給紙部20、分離部21、搬送部22、排紙部23を有する。給紙部20は、記録用の用紙を保持し、分離部21へ給紙する。分離部21は、給紙された用紙のうち、最上位の用紙を他の用紙から分離し、分離された用紙を搬送部22に搬送する。搬送部22にて、搬送された用紙をそのまま画像形成部3に搬送する。画像形成部3にて用紙に画像形成を行い、画像形成された用紙は、搬送部22により排紙部23へ搬送され、排紙部23により機外に排出される。以下、搬送機構2について、具体的に説明する。
【0013】
給紙部20は、給紙トレイ20aと給紙ローラ20bを有し、給紙トレイ20a上に積載された用紙(図示せず)を給紙ローラ20bによって分離部21に給送する。分離部21は、分離ローラ21aと分離パッド21bを有し、給紙された用紙を1枚ずつ捌いて搬送部22へと送る。
【0014】
搬送部22は、用紙を載置して搬送する搬送ベルト22g、搬送ベルト22gとの間で用紙を挟持する搬送ローラ22fを有する。搬送ベルト22gは、張架ローラ22a、22b、22cに張架されており、搬送モータ2a(
図2参照)により回転駆動される。複数の張架ローラのうちの張架ローラ22aは、搬送ベルト22gと不図示のベルト駆動ローラ間での滑りによる搬送速度のズレの発生しないように、搬送ベルト22gに引張力としてのテンションをかけるためのテンションローラでもある。
【0015】
搬送ローラ22fと後述する排紙ローラ23aは、それぞれ搬送ベルト22gの用紙が載置される面のうち、画像形成部3よりも用紙の搬送方向上流側と下流側に外れた領域に配置されている。また、搬送ローラ22fは張架ローラ22bの下流に位置するローラ22dと搬送ベルト22gを挟んで対向する位置に配置され、排紙ローラ23aは張架ローラ22cと搬送ベルト22gを挟んで対向する位置に配置されている。
【0016】
また、搬送ベルト22gは、搬送ローラ22fと排紙ローラ23aとの間で用紙を表面に吸着するようにしている。ベルト表面への吸着は、空気の吸引により行っても良いし、静電的に行っても良い。搬送部22は、搬送ローラ22fと搬送ベルト22gとで形成される上流側ニップ部で用紙を挟持しつつ、更に、搬送ベルト22gにより用紙を吸着しながら画像形成部3へ搬送する。
【0017】
この時、用紙と画像との搬送方向の位置を合わせるため、画像形成部3と搬送ローラ22fの間には用紙検知センサ(図示せず)が設けられており、用紙の先端位置を検知可能である。このセンサの検知結果を基に画像形成部3における記録ヘッド32K、32C、32M、32Yのインク吐出タイミングと用紙の位置を合わせるように記録ヘッド32K、32C、32M、32Yからのインクの吐出を制御している。
【0018】
排紙部23は、排紙ローラ23aと排紙トレイ23bとを有する。排紙ローラ23aによって排紙された用紙は、排紙トレイ23bに載置される。この排紙トレイ23bは駆動手段(図示せず)により、上下に昇降動作可能に本体によって支持され、積載された用紙の積載枚数に応じて、排紙トレイ23bを上下させ、良好な積載状態を保つようになっている。上述のように、搬送部22は、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yのインク吐出によって画像形成された後の用紙を排紙部23に受け渡し、排紙部23は、排紙ローラ23aと搬送ベルト22gとで形成される下流側ニップ部で用紙を挟持しつつ機外に排紙する。
【0019】
[画像形成部]
次に、画像形成部3について
図1、2を用いて説明する。画像形成部3は、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yと、インクタンク33K、33C、33M、33Yと、を有する。4つの記録ヘッド32K、32C、32M、32Yは、それぞれブラック、シアン、マジェンタ、イエローの色のインクに対応しており、用紙の搬送方向(矢印A方向)に沿って配置されている。搬送方向において各記録ヘッド32K、32C、32M、32Yはその順で互いに平行に配置されている。
【0020】
また、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yは、いわゆるラインヘッドである。つまり、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yは、用紙の搬送方向と交差する方向(本実施形態では矢印A方向と直交する方向、幅方向)に沿ってそれぞれ吐出部としてのノズル32Kd、32Cd、32Md、32Yd(
図1(b)参照)を所定の密度で配置したものとなっている。
【0021】
また、ノズル32Kd、32Cd、32Md、32Ydの配置幅は、使用する用紙の最大記録幅以上の幅としている。これにより、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yを移動(走査)させることなく、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yに設けられたヒータ(図示せず)を駆動することによってノズル35Kdからインクを吐出して記録を行うことが可能となる。
【0022】
4つのインクタンク33K、33C、33M、33Yは、それぞれブラック、シアン、マジェンタ、イエローの色のインクを収容可能であり、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yの上部に脱着可能に設けられている。さらに、インクタンク33K、33C、33M、33Yと記録ヘッド32K、32C、32M、32Yとは直接接続可能である。この記録ヘッド32K、32C、32M、32Yとインクタンク33K、33C、33M、33Yとの接続部であるインクタンク構成に関しては後に詳しく説明する。
【0023】
インクタンク33K、33C、33M、33Yは、それぞれ自己負圧を発生する負圧発生手段(図示せず)を内部に設け、保持されたインクを負圧に保っている。自己負圧を発生させることで、インク供給経路におけるインク移動により生じる圧力損失によって、ノズル32Kd、32Cd、32Md、32Ydからインクが漏れることを抑制できる。また、自己負圧を発生させることで、ノズル32Kd、32Cd、32Md、32Ydに形成されるメニスカスを安定させることができる。自己負圧発生手段の構成の例としては、インクタンク33K、33C、33M、33Y内部に多孔質の吸収体を設け、その毛管力を利用して内部に負圧を発生させるものがある。
【0024】
また、本実施形態において、インクタンク33K、33C、33M、33Yの自己負圧は、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yのノズル32Kd、32Cd、32Md、32Ydに発生する毛管力よりも小さくなるように設定されている。つまり、ノズル32Kd、32Cd、32Md、32Ydの毛管力による吸引力は、インクタンク33K、33C、33M、33Yの自己負圧によるインクを液室内へ保持する力よりも強い。これにより、ノズル32Kd、32Cd、32Md、32Ydからインクが吐出などにより減ると、インクタンク33K、33C、33M、33Yから吐出による消費分の量のインクが自動でノズル32Kd、32Cd、32Md、32Ydに供給される。
【0025】
さらに記録ヘッド32K、32C、32M、32Y内のインク量は、センサ(図示せず)により検知できる構成となっている。検知結果が所定より少ない場合、負圧発生手段として、例えば
図4に示すポンプ70を用いて記録ヘッド32K、32C、32M、32Y内を負圧にする。これにより、インクタンク33K、33C、33M、33Yから記録ヘッド32K、32C、32M、32Y内にインクを吸引し供給できる構成としている。
【0026】
これらの仕組みにより、記録ヘッド32K、32C、32M、32Y内は所定のインク量を維持できるようになっており、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yは安定してインク吐出を行うことが可能となっている。なお、記録ヘッド32K、32C、32M、32Y内を負圧にする負圧発生手段は、ポンプ70とは別のポンプとしてもよい。
【0027】
[回復部]
ここで回復部4について
図2~4を用いて詳しく説明する。なお、
図3は移動部6に保持された画像形成部3と、回復部4とを斜めから見た図である。
図4は、
図3について記録ヘッド32Kの部分を幅方向に切断した、回復部4周りの断面図である。なお、以後は4つの記録ヘッド32K、32C、32M、32Yは同じ構成のため、記録ヘッド32Kのみ説明して、他の3つの記録ヘッドの説明は省略する。また、インクタンク33K、33C、33M、33Yも同様にして、インクタンク33Kのみ説明する。
【0028】
回復部4は、
図3、4に示すように、キャップユニット40、清掃部材としてのワイパーブレード41、ワイパーブレード41をクリーニングする不図示のクリーナ、ワイパーブレード41を保持する不図示のワイパーブレード保持部材等の回復用部材を有する。また、回復部4は、後述するキャップ40a内に溜まった廃インクを廃インクチューブ74を介して吸引可能なポンプ71や、廃インクを廃液として処理するための廃液タンク73を有する。
【0029】
キャップユニット40は、記録ヘッド32Kのノズル32Kdを乾燥から保護するためのキャップ40aと、キャップ40aを記録ヘッド32Kに近づける方向に付勢する加圧ばね40dとを有する。また、キャップユニット40は、記録装置1に移動可能に保持されている。キャップユニット40は、不図示の機構によって、例えば搬送方向と交わる幅方向(
図1における表裏方向)に移動される。なお、キャップユニット40は搬送方向に移動される構成であってもよい。
【0030】
ワイパーブレード41は、長手方向が搬送方向に沿ってキャップユニット40上に配置された板状の部材である。また、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yに対して一つのワイパーブレード41が配置される。また、ワイパーブレード41は、キャップユニット40が幅方向へ移動した時にワイパーブレード41が各色の吐出面32Kd1、32Cd1、32Md1、32Yd1を摺擦し清掃できる高さ、位置に、ワイパーブレード41を配置している。
【0031】
また、キャップ40aは、記録ヘッド32Kのノズル32Kdを覆って圧接可能なゴム部を有する。キャップ40aは、ノズル32Kdがキャップ40aにより覆われる位置に記録ヘッド32Kが移動することで、加圧ばね40dにより記録ヘッド32Kへ付勢される。この時、キャップ40aは、キャップ40aの先端に設けられたゴム部が記録ヘッド32Kに圧接されることで、記録ヘッド32Kの有するノズル32Kdを密閉することが可能な構成となっている。さらにキャップ40a内にはインク吸収体40bが設けられ、ノズル32Kdから排出された一定量のインクを保持できる。
【0032】
また、キャップ40aの底には、インク流路72が設けられている。このインク流路72と、圧力付与手段であるポンプ71と、廃液タンク73とは、廃インクチューブ74により連結されており、ノズル32Kdから排出されたインクはポンプ71を駆動することで廃液タンク73へ送ることが可能となっている。また、その際にインクが溢れるのを防止するため、廃液タンク73内にはインク吸収体73a(
図1参照)が設けられている。
【0033】
また、キャップ40aの端部には、待機時にキャップ40a内の空気の膨張によりノズル32Kd内にエアーを押し込むことが無いように空気の逃げ道として、大気開放バルブ40cが設けられている。これにより、温度変化などでキャップ40a内の空気が膨張した場合でも、膨張した分の空気は大気開放バルブ40cから出ていく。また、記録装置1には、大気開放バルブ40cのエアー導入を塞ぐことが可能な弁40eが設けられている。記録ヘッド32Kをキャップ40aによりキャップして、この弁40eを閉じることで、記録ヘッド32Kをキャップ40aにより密閉できる構成となっている。
【0034】
[移動部]
移動部6について、
図2~4を用いて説明する。移動部6は、キャリッジ61、移動手段としてのキャリッジモータ6a、不図示の昇降機構を有する。このキャリッジ61は、キャリッジモータ6a(
図2)に駆動される不図示の昇降機構により上下方向に移動される。この昇降機構は、上下方向に配設された不図示のレールを備えている。キャリッジ61は、キャリッジモータ6aが駆動することによりレールに沿って上下方向に移動する。
【0035】
また、キャリッジ61は、記録ヘッド32Kを保持して、上下方向に移動可能となっている。さらに、後述する構成により、キャリッジ61は記録ヘッド32Kの上部にインクタンク33Kを脱着可能に保持できる。以上から、キャリッジ61の上下方向の移動により、記録ヘッド32Kは、記録媒体に記録可能な記録位置と、ノズル32Kdを上述のキャップ40a(
図3)で覆う第一の位置としてのキャップ位置と、ワイピング動作を行うワイピング位置と、加圧クリーニングなどを行う、第二の位置としての加圧クリーニング位置等の位置とへ移動することができる。記録ヘッドの位置における各動作については後程くわしく説明する。
【0036】
[制御部]
図2を用いて、制御部5の説明を行う。
図2は、記録装置1の制御系を示した制御ブロック図である。制御手段としての制御部5は、記録装置1内に搭載されており、記録ヘッド32K、32C、32M、32Y等の記録装置1全体の動作を制御している。
図2に示すように、制御部5は、CPU50、プログラムメモリ52、ワーキングメモリ53、データメモリ54、インターフェース55、入力ポート56、出力ポート57、モータドライバ58、記録制御回路59、システムバス51などを有する。
【0037】
CPU50の入力側には、インターフェース55を介してホストコンピュータ12、入力ポート56を介して操作キー13が接続されている。また、CPU50の出力側には、出力ポート57及びモータドライバ58を介してキャリッジモータ6aと、搬送モータ2aと、ポンプモータ70aと、ポンプモータ71aが接続されており、記録制御回路59を介して記録ヘッド32Kが接続されている。モータドライバ58は駆動信号を受けて各モータを動作させる。
【0038】
画像情報は、ホストコンピュータ12からインターフェース55を通じて記録装置1の制御部5に送信され、制御部5内のCPU50にて処理される。ユーザは操作キー13を操作することで、記録の指令情報が入力ポート56を通じて制御部5に送信される。そして、制御部5はプログラムメモリ52の有するプログラムやワーキングメモリ53やデータメモリ54などを使用し、送られた画像情報への画像処理を行う。引き続いて、記録制御回路59は画像処理結果から記録ヘッド32K、32C、32M、32Yのインク吐出制御を行い、記録を実行する。
【0039】
[キャリッジの動作]
次に、上述の記録ヘッド32K並びにインクタンク33Kを保持しているキャリッジ61の動作について説明する。上述の通り、キャリッジ61は、記録ヘッド32K並びにインクタンク33Kを記録位置、キャップ位置、ワイピング位置、加圧クリーニング位置等に移動可能である。記録ヘッド32Kが記録位置にある時に記録ヘッド32Kは記録動作を行い、キャップ位置にある時に待機や吸引クリーニングを行い、ワイピング位置にある時にワイピング動作を行い、加圧クリーニング位置にある時に加圧クリーニングを行う。
【0040】
記録位置は、用紙が載置されて搬送される搬送ベルト22gよりも所定の距離だけ上方にある位置である。所定の距離は、記録ヘッド32Kと用紙との距離が適切な距離となるように設定されている。記録ヘッド32Kと用紙の距離が遠くなると、用紙に滴下されたインク滴の挙動がばらつき、滴下された位置もばらつく虞がある。このインク滴のばらつきにより、画像の鮮明さがなくなり、ぼやけた画像となってしまう。一方、記録ヘッド32Kと用紙の距離が近すぎると記録ヘッド32Kに用紙が接触してしまうといった問題が発生する虞がある。以上を考慮して記録位置を決めている。
【0041】
つまり、画像形成(印刷)を行う際はキャリッジ61が降下し、それに伴い記録ヘッド32Kがキャップ位置から記録位置まで降下する。この時、
図1(b)に示すキャップユニット40は、不図示の機構により幅方向(
図1(a)の紙面表裏方向)に退避しており、記録ヘッド32Kが記録位置まで降下することができる。その後、記録装置1は、上述のようにホストコンピュータ12から送信される記録情報に基づき、記録ヘッド32K~32Yにインクを吐出させることで用紙に記録を行う。
【0042】
キャップ位置は、
図1(a)のように、記録ヘッド32Kのノズル32Kdをキャップ40aが覆える位置である。キャップ40aを有するキャップユニット40は、搬送ベルト22gの上方の回復位置と、回復位置から幅方向に退避した退避位置とに不図示の機構により移動可能である。記録ヘッド32Kが記録位置にある時に、キャップユニット40は退避位置におり、記録ヘッド32Kがキャップ位置に移動すると、キャップユニット40は回復位置に移動する。
【0043】
キャップ位置では、待機時のノズル32Kdの保護や、吸引クリーニングが行われる。ここで吸引クリーニングとは、上述の回復部4による記録ヘッドの回復動作の一つである。吸引クリーニングは、記録ヘッド32Kのノズル32Kdがゴミ等による目詰まりしてインクの吐出に支障が出ることを抑制すべく、ノズル32Kdから多量のインクを引き出してノズル32Kd内のインクをリフレッシュさせる動作である。
【0044】
印刷を行わない待機時にノズル32Kdの乾燥を防止するため、キャップ40aによりノズル32Kdの密閉を行う。具体的には、まず、キャリッジ61と共に記録ヘッド32Kをキャップ位置に移動させる。次に、退避位置で待機する上述のキャップユニット40を、ノズル32Kdを覆うために回復位置へ幅方向に移動させる。これにより、キャップユニット40の有するキャップ40aがノズル32Kdを覆うキャッピングを行う。記録動作やクリーニングを行っていない待機時は、記録ヘッド32Kとキャップユニット40はこの状態で待機している。
【0045】
また、記録ヘッド32Kは、吸引クリーニングを行う時も同様に、キャップ位置に移動する。吸引クリーニングは、上述のようにすべてのノズル32Kd~32Ydからインクを排出させて、ノズル32Kd~32Yd内のインクをリフレッシュするものである。具体的には、ノズル32Kd~32Ydをキャップ40aで密閉した状態でポンプ71を駆動させ、キャップ40a内に高い負圧をかけてノズル32Kd~32Ydから吸引を行う。キャップ40aによるノズル32Kd~32Ydのキャッピングでは、上述のように弁40eを閉めることで、キャップ40a内を密閉する。
【0046】
ワイピング位置は、キャップユニット40を幅方向に移動させることで、記録ヘッド32Kの吐出面32Kd1をキャップユニット40に設置されているワイパーブレード41で摺擦できる位置である。すなわち、ワイピング位置はキャップ位置よりも上方に位置し、記録ヘッド32Kがワイピング位置に移動した後、キャップユニット40を幅方向に移動させることでワイパーブレード41を記録ヘッド32Kの吐出面32Kd1を摺擦することができる。加圧クリーニング位置は、ワイピング位置よりも上方にあり、本実施形態における加圧クリーニングを実施可能な位置である。
【0047】
ここで、ワイピング動作、加圧クリーニングについて説明する。ワイピング動作は、記録ヘッド32Kの吐出口32Kd2が形成された吐出面32Kd1に付着した不要な異物(塵埃など)やインク滴等を、ワイパーブレード41により除去する、回復動作の一つである。ワイピング動作を単独で行う時は、不図示の昇降機構でキャリッジ61を上昇させることで記録ヘッド32Kをワイピング位置に移動させる。また、本実施形態では、後述の吸引クリーニングや加圧クリーニングの後にワイピング動作を行う。この場合、記録ヘッド32Kはキャップ位置や加圧クリーニングに位置にあるため、ワイピング位置に移動した上でワイピング動作を行う。
【0048】
また、モードとしての加圧クリーニングは、記録ヘッド32Kに備わる第二収容部としてのヘッド液室32Kc内に加圧エアーを送り込み、ノズル32Kd内からゴミ等と一緒にインクを排出させつつ、ワイパーブレード41によるノズル32Kd周囲の清掃を行う動作である。加圧クリーニングを行う時は、不図示の昇降機構でキャリッジ61を上昇させることで、記録ヘッド32Kをワイピング位置よりも上方にある加圧クリーニング位置に移動させる。そして、記録ヘッド32K内を微加圧し、ノズル32Kdからインクが染みだす程度の排出を行う。
【0049】
その後引き続き、ワイパーブレード41によるノズル32Kdの清掃を行う。この時、上述したように記録ヘッド32Kは加圧クリーニング位置にあるため、記録ヘッド32Kをワイピング位置に下降させてからワイパーブレード41による清掃を行う。また、加圧クリーニングの行われるタイミングは、ユーザからの指示があったタイミングの他に、記録が一定期間行われずにキャッピング状態で所定時間放置され、その後記録の指令を受けた場合等である。
【0050】
清掃後、引き続いてポンプ70でエアーを排出してヘッド液室32Kc内を減圧させる。これによりインクタンク33Kよりヘッド液室32Kc内にインクが供給され、一定の負圧に保たれる。以上のように、記録ヘッド32Kが記録動作や回復動作等を行えるように、キャリッジ61は、記録ヘッド32Kを記録位置、キャップ位置、ワイピング位置、加圧クリーニング位置に移動可能である。
【0051】
ここで、従来では、インクカートリッジがキャリッジに搭載されていないオフキャリッジタイプの記録ヘッドにおいて、記録ヘッドとインクカートリッジを繋ぐインク流路に圧を加える装置構成にてノズルからインクを吐出させるようにしていた。本実施形態では、オンキャリッジタイプの記録ヘッドでも上述の加圧クリーニングを行えるようなインクタンクの構成となっている。以下にインクタンク構成の説明を行う。
【0052】
[インクタンク構成]
オンキャリッジタイプの記録ヘッドについて加圧クリーニングを実行可能なインクタンクの構成について
図2~8を用いて説明する。また、記録ヘッド32Kおよびインクタンク33K、それらを移動させるキャリッジ61の構成について、
図3、4、5(a)、(b)を用いて説明する。
【0053】
図3に示す4つの記録ヘッド32K、32C、32M、32Yは、それぞれブラック、シアン、マジェンタ、イエローの4色に対応し、インクタンク33K、33C、33M、33Yも同様にブラック、シアン、マジェンタ、イエローの4色対応する。キャリッジ61は、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yと、それぞれに対応したインクタンク33K、33C、33M、33Yを保持可能な保持部としての固定部材80を備える。これにより、記録ヘッド32K、32C、32M、32Yとインクタンク33K、33C、33M、33Yとは、4色一体となって移動できるようにキャリッジ61に保持されている。
【0054】
次に、
図4、5(a)、(b)を用いて記録ヘッド32Kの周囲について詳細を説明する。
図4は、記録ヘッド32Kの周囲に関する断面図である。
図5(a)は、記録ヘッド32Kとインクタンク33Kとが接続した時の記録ヘッド32K周囲の断面図である。
図5(b)は、記録ヘッド32Kとインクタンク33Kとが離間した時の記録ヘッド32K周囲の断面図である。記録ヘッド32Kには、そのヘッド液室32Kc内を加圧可能なポンプ70に接続される圧力導入チューブ70bが接続される。また、記録ヘッド32Kにおける、インクタンク33Kとの接続部にはインクの受入口としてのインク導入口32Kaが設けられる。
【0055】
また、記録ヘッド32Kのインク導入口32Kaの接続する側には第二のフィルタとしてのフィルタ32Kbが設けられ、記録ヘッド32Kはフィルタ32Kbを介してインク導入口32Kaにインクタンク33Kからのインクを受け入れ可能に構成されている。すなわち、記録ヘッド32Kは、フィルタ32Kbと、供給口33Keからフィルタ32Kbを介して受け入れ可能なインク導入口32Kaと、インク導入口32Kaから受け入れたインクを収容するヘッド液室32Kcとを備える。さらに、記録ヘッド32Kには、インクを吐出するための吐出口32Kd2を有する複数のノズル32Kdが設けられている。
【0056】
一方、インクタンク33Kは、インクを収容するタンク液室33Kcと、タンク液室33Kcに収容されたインクを供給する供給口33Keとを有する。
図5(a)に示すように、インクタンク33Kの供給口33Keの接続する側には第一のフィルタとしてのフィルタ33Kdが設けられている。供給口33Keは、フィルタ33Kdを介してタンク液室33Kcのインクを供給可能である。したがって、インクタンク33Kは、インクタンク33Kの第一収容部としてのタンク液室33Kcから供給口33Keとフィルタ33Kdを介して記録ヘッド32Kにインクを供給するように構成されている。
【0057】
インクタンク33Kと記録ヘッド32Kとが接続位置にある状態では、フィルタ33Kdとフィルタ32Kbが接触する。本実施形態では、インクタンク33Kのフィルタ33Kdは、スポンジ状の柔らかい材質で構成され、インク供給時には、記録ヘッド32Kのフィルタ32Kbに押し付けられることでフィルタ33Kdが多少つぶされた状態で使用される。なお、インク供給のために記録ヘッド32Kを負圧にした時、その吸引力が供給口33Keに作用すれば、フィルタ33Kdとフィルタ32Kbが必ずしも接触していなくてもよい。
【0058】
一方、記録ヘッド32K側のフィルタ32Kbは細かいメッシュで構成されている。このメッシュの細かさについては、後述する所定のメニスカス強度を有するように設定される。これらのフィルタ33Kd、フィルタ32Kb、ノズル32Kdに形成された吐出口32Kd2には、タンク液室33Kcやヘッド液室32Kcにインクが供給されると、それらの開口部に気液界面であるメニスカスが形成される。このようなメニスカスは、ノズル32Kdや、フィルタ32Kb、フィルタ33Kd等が有するメッシュといった小さい開口に、インクが充填されて表面張力が作用することで形成される。
【0059】
このメニスカスは、気液界面にかかる圧力に対してメニスカスを維持するための反力としてのメニスカス力を有し、これを超えた圧力がインク側からかかると、メニスカスが破れてインクが漏れ出す。言い換えると、ヘッド液室32Kcやタンク液室33Kcのメニスカスが保持するインクの圧力よりも大きいメニスカス力を持たせることで、ヘッド液室32Kcやタンク液室33Kc内のインクを漏れさせずに保持可能である。一方、気体側の圧力がメニスカス力を超えると、この場合もメニスカスが破れ、気体が保持されたインクの内部に泡として入り込む。
【0060】
このメニスカスが破れない最大の圧力であるメニスカス強度について、本実施形態では、ノズル32Kdに形成されるメニスカスよりもフィルタ32Kbに形成されるメニスカスのほうが強くなるようにフィルタ32Kbのメッシュの細かさを選定している。なお、メニスカスは気液界面にかかる圧力に対してメニスカスを維持するための反力としてのメニスカス力を有し、メニスカス強度とはメニスカスの有する最大のメニスカス力となる。なお、メニスカス強度は、液体の表面張力、液体と固体(インクとノズルやフィルタの素材)との接触角、開口の周囲長で決まる。一般的に、細かい開口であるほどメニスカス強度が高く、本実施形態では、開口の細かさでメニスカス強度を調整している。
【0061】
本実施形態において、記録ヘッド32Kのフィルタ32Kbのメニスカス強度はノズル32Kdのメニスカス強度よりも強くなるように設定している。例えば、ノズル32Kdの開口は、20μm×20μmの寸法で感光性エポキシ樹脂にて成形されている。記録ヘッド32K側のフィルタ32Kbは、ノズル32Kdよりもメニスカス強度が大きくなるように、また、記録ヘッド32K内へのごみ混入を防ぐ目的もあり、線径30μmのSUSフィルタを採用している。
【0062】
ここで、本実施形態における記録装置1は、キャリッジ61の移動に伴って記録ヘッド32Kとインクタンク33Kとを、接続位置と離間位置とに移動可能であり、
図4、
図5(a)、(b)、
図6(a)、(b)を用いて、その構成及び動作について説明する。
図6(a)は、記録ヘッド32Kとインクタンク33Kとが接続した状態の接続部の断面拡大図で、
図6(b)は、記録ヘッド32Kとインクタンク33Kとが離間した状態の接続部の断面拡大図である。
【0063】
図4に示すように、インクタンク33Kは、係合部33Kaをキャリッジ61に形成された被係合部61aに係合させることでキャリッジ61に対して、この係合位置を中心に揺動可能に支持されている。また、インクタンク33Kは、係合部33Kaと幅方向反対側に形成された係合部33Kbが固定部材80と係合することで、インクタンクの供給口33Keと記録ヘッド32Kのインク導入口32Kaとは接続されるように構成されている。また、インクタンク33Kは、固定部材80と係合部33Kbとの係合が外れることで、係合部33Kaと被係合部61aとの係合位置を中心として揺動可能となり、供給口33Keとインク導入口32Kaとが離間されるように構成されている。すなわち、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kとは、供給口33Keとインク導入口32Kaとが接続する接続位置と、供給口33Keとインク導入口32Kaとが離間する離間位置と、の間を相対移動可能である。
【0064】
記録ヘッド32Kとインクタンク33Kとの接続部分に関する詳細を説明する。記録ヘッド32Kとインクタンク33Kの接続部には、蛇腹の筒状ゴム部材であるインクタンクジョイント部材81が設けられている。囲い部材としてのインクタンクジョイント部材81は、供給口33Ke及びインク導入口32Kaを囲うように、両端部がそれぞれインクタンク33K及び記録ヘッド32Kに固定される。また、インクタンクジョイント部材81は、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kの相対移動に応じて伸縮可能である。即ち、
図6(a)に示すように、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kの接続時には、インクタンクジョイント部材81が縮んだ状態となる。一方、
図6(b)に示すように、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kの接続解除時には、インクタンクジョイント部材81が伸びた状態となる。
【0065】
このインクタンクジョイント部材81は、外気との密閉を行うものではなく、接続部にゴミ等が侵入することを防ぐ目的で配置されている。このために、インクタンクジョイント部材81をインクタンク33Kと記録ヘッド32Kの相対移動に応じて伸縮可能とし、インクタンク33Kの位置に拘わらず、インクタンクジョイント部材81により接続部を覆うようにしている。また、インクタンクジョイント部材81がインクタンク33Kと記録ヘッド32Kが接続位置にあるときは、インクタンクジョイント部材81が弾性的に縮んだ状態となることで、インクタンクジョイント部材81の弾性復元力により記録ヘッド32Kからインクタンク33Kを離間位置へと付勢している。
【0066】
さらに、インクタンクジョイント部材81には、
図6(b)に示すように、少なくともインクタンク33Kと記録ヘッド32Kが離間位置にあるときに開口するように設けられた開口部としての空気導入口81aが設けられている。空気導入口81aは、インクタンクジョイント部材81が伸びる際に、内部にエアーを導入するための開口である。本実施形態では、空気導入口81aの開閉は、インクタンクジョイント部材81の伸縮動作に応じて行われる。即ち、空気導入口81aは、
図6(a)に示すように、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kとが接続位置にある時に閉じ、
図6(b)に示すように、離間位置にある時に開くように開閉可能に形成されている。これにより、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kとが離間位置にある時、開口した空気導入口81aからフィルタ33Kd、32Kbの間に空気が入り、供給口33Keとインク導入口32Kaとにインクと空気との気液界面であるメニスカスが形成可能となる。
【0067】
なお、空気導入口81aは、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kとが離間位置から接続位置に相対移動する時に開いていればよく、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kとが接続位置にある時に閉じない構成であってもよい。また、空気導入口81aはインクタンクジョイント部材の81の伸縮動作に応じて開閉しなくてもよい。また、本実施形態では、インクタンク33Kをキャリッジ61に揺動自在に支持する被係合部61a及び係合部33Kaと、インクタンク33Kを離間位置に向けて付勢するインクタンクジョイント部材81とで、インクタンク33Kを接続位置から離間位置に移動させる、タンク移動部8を構成する。
【0068】
また、本実施形態の場合、キャリッジ61の昇降動作に連動してインクタンク33Kの接続位置と離間位置との間の移動動作を行うようにしている。このために、記録装置1は、自動でインクタンク33Kと記録ヘッド32Kを接続位置から離間位置に相対移動可能な離間機構14を備えている。離間機構14は、
図7(a)、(b)に示すように上述の保持部としての固定部材80と、解除部としてのロック解除部材9と、上述のタンク移動部8とを有する。ロック解除部材9は、第一の位置としてのキャップ位置から第二の位置としての加圧クリーニング位置への移動に連動して固定部材80によるインクタンク33Kの固定(保持)を解除可能である。第二の位置は、キャップ位置よりも上側の位置である。
【0069】
固定部材80は、キャリッジ61に支持されており、上述のように、インクタンク33Kの係合部33Kbと係合することで、インクタンク33Kを接続位置に固定する。このような固定部材80は、金属などの弾性を有する板状部材により形成されており、キャリッジ61に支持される支持部80bと、係合部33Kbと係合可能な係止部80aと、ロック解除部材9と係合可能な解除係合部80cとを有する。支持部80bは、係止部80aを係合部33Kbに係合される方向及び係合部33Kbとの係合が解除される方向に揺動可能に基端部がキャリッジ61に固定されている。係止部80aは、支持部80bの先端部からインクタンク33K側に折れ曲がるように形成されている。解除係合部80cは、係止部80aの先端部から上方に折れ曲がるように設けられ、上方に向かう程、インクタンク33Kから離れる方向に傾斜するように形成されている。
【0070】
ロック解除部材9は、インクタンク33Kが接続位置にあるときに、固定部材80の上方に位置し、回転中心9aを中心に回転可能に記録装置1に支持されている。ロック解除部材9は、キャリッジ61と共に上昇した固定部材80の解除係合部80cと係合することで、固定部材80をインクタンク33Kから離れる方向に揺動させて、係止部80aと係合部33Kbの係合を解除する。この際、ストッパ部材10によりロック解除部材9の揺動が阻止されている。
【0071】
ストッパ部材10は、キャリッジ61の上昇に連動し、回転中心10aを中心に
図4の矢印E方向(上から見て反時計回り方向)に回転するように構成されており、通常時は加圧バネ(図示せず)によって矢印Eの逆方向に付勢されている。本実施形態では、固定部材80の解除係合部80cとロック解除部材9との係合時には、ストッパ部材10がロック解除部材9と係合可能な位置に位置し、キャリッジ61がさらに上昇すると、キャリッジ61の一部と係合することでストッパ部材10が加圧バネの付勢力に抗して矢印E方向に回動して、ロック解除部材9が固定部材80が通る経路から退避するようにしている。
【0072】
上述のように、本実施形態では、固定部材80と、タンク移動部8と、ロック解除部材9とにより、記録ヘッド32Kとインクタンク33Kとを固定部材80によるロックを解除することで、自動で接続位置から離間位置に移動できる、離間機構14を構成している。また、加圧クリーニングの実行時は、ヘッド液室32Kc内部への加圧前にキャリッジ61が上昇するように制御されている。すなわち、離間機構14は、加圧クリーニング実行時におけるヘッド液室32Kc内部への加圧前に自動でインクタンク33Kと記録ヘッド32Kを接続位置から離間位置に相対移動可能である。
【0073】
[加圧クリーニング]
本実施形態における上述の構成を用いることで、オンキャリッジタイプのインクタンク構成で加圧クリーニングを実行可能である。本実施形態では、従来の構成における記録ヘッドの加圧時にインクがインクタンクへの逆流することを抑制するための逆止弁等の電磁弁の代替として、気液界面であるメニスカスを利用している。即ち、加圧クリーニング実行時に、インクタンク33Kを離間位置とすることで、記録ヘッド32Kのインク導入口32Kaと、インクタンク33Kの供給口33Keとを離間させている。これにより、インク導入口32Kaに設けられたフィルタ32Kbの表面に気液界面であるメニスカスが形成される。そして、この状態で加圧クリーニングを実行すべく、ヘッド液室32Kc内を加圧しても、このメニスカスによりインク導入口32Kaからインクが漏れることを抑制できる。このために本実施形態では、加圧クリーニング実行時に加圧されるヘッド液室32Kc内のインクの圧力を、ノズル32Kdのメニスカス強度よりも大きく、記録ヘッド32Kのフィルタ32Kbのメニスカス強度よりも小さく設定してある。
【0074】
このように本実施形態の、記録装置1は、記録ヘッド32Kとインクタンク33Kを離間することで、ポンプ70を駆動させ圧力導入チューブ70bを介してエアーを記録ヘッド32K内に導入してノズル32Kdを加圧し、インクを排出させる加圧クリーニングを実行できる。そして、加圧クリーニング実行時にフィルタ32Kbからインクが排出されることを抑制できる。
【0075】
次に、
図7(a)、(b)、
図8(a)、(b)、
図9を用いて実際の加圧クリーニング実行時のシーケンス動作を説明する。
図7(a)は、記録ヘッド32Kがキャップ位置にある状態の記録ヘッド32K周囲の断面図を示す。
図7(b)は、インクタンク33Kの固定部材80がロック解除部材9によりロック解除が行われる位置の記録ヘッド32K周囲の断面図を示す。
図8(a)は、ロック解除部材9が退避する位置の記録ヘッド32K周囲の断面図を示す。
図8(b)は、キャリッジ61の上昇端への到達時にインクタンク33Kがロックされる位置の記録ヘッド32K周囲の断面図を示す。
図9は、加圧クリーニング説明のためのフローチャート図である。
【0076】
通常、待機状態では、
図7(a)に示すように、記録ヘッド32Kはキャップ40a(
図7では図示せず)にノズル32Kdを覆われた第一の位置としてのキャップ位置で、且つ、インクタンク33Kが接続された状態で待機している。この状態から加圧クリーニングを行う際には、記録装置1は、次のように動作する。この動作について、
図9のフローチャートに沿って説明する。まず、制御部5は、加圧クリーニング開始が指令されたら(S1)、キャリッジモータ6a(
図2参照)を上昇方向に回転させる(S2)。
【0077】
モータを回転させるとキャリッジ61が図中矢印H方向に上昇し、
図7(b)示すように固定部材80はロック解除部材9により図中矢印D方向に回転中心9aを中心に回転する。つまり、キャリッジ61の第一の位置から第二の位置への移動に連動して、インクタンク33Kを固定する固定部材80がロック解除部材9によりロック解除が行われ、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kとが離間位置に相対移動させられる。
【0078】
この時、ロック解除部材9は、回転中心9aを中心に回転できないように、ストッパ部材10により回転を規制されている。この固定部材80の回転動作により、固定部材80の係止部80aとインクタンク33Kの係合が解除される。インクタンク33Kは、インクタンクジョイント部材81の弾性力により、キャリッジ61との係合部33Kaを回転中心に図中矢印C方向に回転する。
【0079】
この状態からさらにキャリッジ61の上昇を続けると、ストッパ部材10によってロック解除部材9の回転移動が規制されていた状態から、ストッパ部材10がキャリッジ61によって押される。これにより、ストッパ部材10は図中の矢印E方向に回転中心10aを中心に回転し、ロック解除部材9の上方向の規制を解除する。規制が解除されたロック解除部材9は、図中矢印G方向に回転中心9aを中心に回転する。そして、
図8(a)に示すように、インクタンク33Kが離間位置に移動した時にキャリッジモータ6aを停止させる(S3)。
【0080】
これにより、インクタンクジョイント部材81の中にあるインクタンク33Kと記録ヘッド32Kの接続部には空気が介在し、インク導入口32Kaは遮断された状態となる。この時、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kのフィルタ33Kd、32Kbそれぞれにメニスカスが形成されるため、メニスカス力により、インクが漏れだすことはない。
【0081】
この状態から記録ヘッド32Kとポンプ70の間にある加圧弁(図示せず)を開ける(S4)。そして、ポンプ70を加圧方向に回転駆動させ(S5)、所定の時間経過したところでポンプモータ70aの回転駆動を停止させる(S7)。このポンプ70の回転により、圧力導入チューブ70bから図中矢印I方向に空気が記録ヘッド32K内に送り込まれ、ヘッド液室32Kc内のインクの圧力が高まる。
【0082】
この時、加圧クリーニング実行時のヘッド液室32Kc内のインクの圧力は、ノズル32Kdのメニスカス強度よりも大きく、記録ヘッド32Kのフィルタ32Kbのメニスカス強度より小さくなるように設定されている。これにより、記録ヘッド32Kのフィルタ32Kbからは、メニスカス力により、インクが漏れ出すことはなく、ノズル32Kdからはインクが排出される。なお、本実施形態における、加圧クリーニング実行時のヘッド液室32Kc内のインクの圧力は、+10mmAq程度となるように、ポンプ70で加圧している。
【0083】
このポンプ70を回転させる時間は、ノズル32Kdのメニスカス力にあわせて設定されており、本実施形態では予め決めてある所定の時間、ポンプ70を回転させている。なお、記録ヘッド32K内の圧力がノズル32Kdのメニスカス力を上回るようにポンプ70を回転できるのであれば、これに限らない。例えば、記録ヘッド32K内に圧力センサを設け、圧力センサの値に応じてポンプ70を回転させるような制御方式でもよい。
【0084】
所定の加圧を行った後、加圧弁を閉じる(S8)ことで加圧クリーニングは終了する。しかし、このままでは、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kの流路接続が解除された、解除位置のままとなっているため、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kの接続動作を行う。即ち、
図8(a)に示したロック解除部材9によるロックが解除された第二の位置から、更にキャリッジモータ6aを上昇方向に回転させる(S9)。キャリッジ61の一部には、
図8(a)に示すように退避状態のロック解除部材9の下方に当接部61bが形成されている。
図8(a)の状態からキャリッジ61が上昇すると、
図8(b)に示すように当接部61bがロック解除部材9に当接し、ロック解除部材9を退避位置に保持する。そして、キャリッジ61が
図8(b)に示す第三の位置としてのインクタンクロック位置に移動した時に、キャリッジモータ6aを停止させる(S10)。
【0085】
この位置では、インクタンク33Kは記録装置1に備わる当接部材としてのインクタンクロック部11に押され、図中矢印C‘方向に回転移動する。この際、インクタンク33Kが回動することで、固定部材80の係止部80aの位置が係合部33Kbの位置と整合する。そして、固定部材80の復元力で係止部80aが係合部33Kbと係合して、インクタンク33Kがロックされる。つまり、記録装置1は、キャリッジ61が第三の位置に移動した時に、インクタンク33Kと当接して、インクタンク33Kを接続位置に移動させるインクタンクロック部11を備えている。
【0086】
また、この時、インクタンク33Kは、キャリッジ61との係合している部位を中心として回転し、インクタンクジョイント部材のうち回転の中心に近い側からインクタンクジョイント部材34を押圧し、つぶしていく。インクタンクジョイント部材81のうち回転の中心から遠い側に空気導入口81aが形成されているため、つぶされていく接続部内の空気はつぶされるに従って図中矢印H方向に排出されていく。これにより、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kのフィルタ33Kd、32Kb間に空気を噛みこむことが無いようにすることができる。インクタンク33Kが接続位置でロックされた状態で、ロック位置からキャリッジモータ6aを下降方向に回転させ(S11)、
図7(a)のキャップ位置までキャリッジ61を下降させる。
【0087】
キャリッジ61の下降開始時には、
図8(b)に示すように、ロック解除部材9は固定部材80の移動軌跡から逃げた状態でキャリッジ61の当接部61bによって保持されている。ここから、ロック解除部材9は、キャリッジ61が下降して、当接部61bによる保持が解除されることで回転中心9aを中心に回転し、
図7(a)の状態にもどる。また、ストッパ部材10も加圧バネ(図示せず)のバネ力により、回転中心10aを中心に矢印Eと逆方向に回転し
図7(a)の状態に戻る。この状態で、記録ヘッド32Kは、キャップ40aによってノズル32Kdを保護し、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kとは、接続位置に移動し、流路接続もなされ、印刷指示を待つ待機状態となる。
【0088】
よって、本実施形態では、キャリッジ61の動きに伴って自動でインクタンク33Kと記録ヘッド32Kとの接続解除を行い、フィルタ32Kbにメニスカス力による弁機能を持たせ、記録ヘッド32K内を加圧する加圧クリーニングを行うことができる。なお、インクタンク33Kと記録ヘッド32Kとの接続解除は、ユーザの手によって行う構成であってもよい。この場合においても、本実施形態のインクタンク33Kの供給口33Keと記録ヘッド32Kのインク導入口32Kaとを接続するインクタンク構成について、ヘッド液室32Kc内を加圧することで記録ヘッド32Kのノズル32Kdからインクを吐出できる。
【符号の説明】
【0089】
41・・・ワイパーブレード(清掃部材)/1・・・記録装置(インクジェット記録装置)/32K、32C、32M、32Y・・・記録ヘッド/8・・・タンク移動部/9・・・ロック解除部材(解除部)/33K、33C、33M、33Y・・・インクタンク/80・・・固定部材(保持部)/81・・・インクタンクジョイント部材(囲い部材)/32Kd、32Cd、32Md、32Yd・・・ノズル(吐出部)/32Ka・・・インク導入口(受入口)/33Ke・・・供給口/33Kd・・・フィルタ(第一のフィルタ)/32Kb・・・フィルタ(第二のフィルタ)/11・・・インクタンクロック部(当接部)/14・・・離間機構/70・・・ポンプ/33Kc・・・タンク液室(第一収容部)/32Kc・・・ヘッド液室(第二収容部)/32Kd2・・・吐出口