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特開2022-35913振動系、平面スピーカー及びアクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器
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  • 特開-振動系、平面スピーカー及びアクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035913
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】振動系、平面スピーカー及びアクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/04 20060101AFI20220225BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20220225BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H04R7/04
H04R1/10 101B
G10K11/178
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178396
(22)【出願日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】202021776150.9
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010854045.0
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】520416196
【氏名又は名称】深▲せん▼市傲声智能有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shenzhen Ausounds Intelligent Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】606B, 6th Floor, Xuyuan Building, No. 5003 Longgang Avenue, Nanlian Community, Longgang Street, Longgang District, Shenzhen, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】丘 鋭
【テーマコード(参考)】
5D005
5D016
5D061
【Fターム(参考)】
5D005BA02
5D005BA13
5D016AA01
5D016AA13
5D016DA02
5D061FF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】振動膜が変形しにくい平面スピーカーの、アクティブノイズキャンセリングヘッドホンを提供する。
【解決手段】アクティブノイズキャンセリングヘッドホンにおいて、振動系は振動膜本体100を含み、振動膜本体100は、発音フィルムと、補強構造と、固形部材とを含む。発音フィルムは、両側に第二フィルムを配置する。補強構造は発音フィルムの発音エリアに設置し、発音フィルムを少なくとも発音エリアにおいて広げて平らに保つ。固形部材は前記発音エリア以外の他の箇所に設置し、振動膜本体の強度を増大する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動膜本体を含む振動系であって、前記振動膜本体は、
発音エリアを有する少なくとも一つの発音フィルムと、
前記発音フィルムの発音エリアに設置されて、前記発音フィルムを少なくとも前記発音エリアにおいて広げて平らに保つ補強構造と、
前記発音フィルム上において前記発音エリア以外の他の箇所に設置されて、前記振動膜本体の強度を増大する固形部材と、を含む
ことを特徴とする振動系。
【請求項2】
前記発音フィルムはその厚さ方向において順に積層されて複数配置され、複数の前記発音フィルムは第一フィルム、及び前記第一フィルムの両側にそれぞれ設置されている少なくとも一つの第二フィルムを含み、
前記補強構造は前記第一フィルムの発音エリアに設置されて、前記第二フィルムの発音エリアは透かし彫りとして設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動系。
【請求項3】
前記固形部材はシート状で前記第二フィルム上の前記発音エリア以外の他の箇所に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の振動系。
【請求項4】
前記固形部材はスチールシートとして設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動系。
【請求項5】
前記スチールシートの厚さが0.2~0.6mmである
ことを特徴とする請求項4に記載の振動系。
【請求項6】
隣り合う各二つの前記発音フィルムの間、及び前記発音フィルムと前記補強構造との間は減衰接着剤により接着されて固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の振動系。
【請求項7】
前記減衰接着剤の厚さが11~15μmである
ことを特徴とする請求項6に記載の振動系。
【請求項8】
前記補強構造は前記発音フィルムの反対する両側にそれぞれ設置されている第一補強構造及び第二補強構造を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の振動系。
【請求項9】
前記第一補強構造と前記第二補強構造の材質はいずれも銅箔である
ことを特徴とする請求項8に記載の振動系。
【請求項10】
前記第二補強構造は前記振動系の導電端と電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項8に記載の振動系。
【請求項11】
前記第一補強構造は前記発音エリアにおいてグリッド状に配置された第一銅線部を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の振動系。
【請求項12】
前記第二補強構造は前記発音エリアにおいて複数回の折り曲げにより形成された第二銅線部を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の振動系。
【請求項13】
前記発音フィルムの厚さが9~15μmである
ことを特徴とする請求項1に記載の振動系。
【請求項14】
前記補強構造の厚さが15~20μmである
ことを特徴とする請求項1に記載の振動系。
【請求項15】
請求項1に記載の振動系を含む
ことを特徴とする平面スピーカー。
【請求項16】
さらにボトムシェルを含み、前記ボトムシェルの一方側には前記振動系の取付用の取付槽が設置され、前記ボトムシェルの他方側には前記取付溝に連通する案内チューブ構造が設置されている
ことを特徴とする請求項15に記載の平面スピーカー。
【請求項17】
請求項15に記載の平面スピーカーを含む
ことを特徴とするアクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器。
【請求項18】
前記アクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器はアクティブノイズキャンセリングヘッドホンである
ことを特徴とする請求項17に記載のアクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドホン製品の技術分野に関し、具体的には、振動系、平面スピーカー及びアクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスブルートゥースは人々によりよい使用の便利をもたらし、アクティブノイズキャンセリングは人々により静かで快適な聴音体験をもたらす。しかしながら、その音質問題、例えば音の歪み、感度の低さは、多くの使用者がワイヤレスブルートゥースアクティブノイズキャンセリングヘッドホンを使用する過程においてよく言及する問題であり、現在の使用者にとっての使用上の痛点となっている。
【0003】
平面スピーカーは有効振動面積が大きく、分割震動が小さく、磁石と振動膜との距離が短く、磁場の磁束密度が高いなどの特徴があるので、その音の表現において歪みが小さく、過渡が速く、周波数応答範囲が広く、細部までの表現が細かいなどの長所があることで、例えばモニターヘッドホン(有線ヘッドホン形態)とHiFiヘッドホン(有線ヘッドホン形態)などの電子機器に広く応用され、多くのヘッドホンマニアに愛されている。
【0004】
しかしながら、伝統的な平面スピーカーのF0(スピーカーの最低共振周波数或いは共鳴周波数、F0と略称する)が高く、振動膜が変形しやすく、製品の一貫性が悪く、ノイズキャンセリングヘッドホンの調整需要には合致しないので、平面スピーカーをアクティブノイズキャンセリングブルートゥースヘッドホンに適用できた実際の製品は未だにない。平面スピーカーをアクティブノイズキャンセリングブルートゥースヘッドホンにうまく適用するには、克服しなければならない技術的チャレンジが待ち構えている
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、伝統的な平面スピーカーの振動膜が変形しやすく、F0が高く、製品の一致性が悪くて、平面スピーカーをアクティブノイズキャンセリングヘッドホンに適用することが困難な問題を解決するとともに、平面スピーカーの発音フィルムが生産加工や組立において生産不良率が高い問題を解決できる振動系、平面スピーカー及びアクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明が提案する振動系は振動膜本体を含み、前記振動膜本体は、
発音エリアを有する発音フィルムと、
前記発音フィルムの発音エリアに設置されて、前記発音フィルムを少なくとも前記発音エリアにおいて広げて平らに保つ補強構造と、
前記発音フィルム上において前記発音エリア以外の他の箇所に設置されている固形部材と、を含む。
【0007】
一実施例において、前記発音フィルムはその厚さ方向において順に積層されて複数配置され、複数の前記発音フィルムは第一フィルム、及び前記第一フィルムの両側にそれぞれ設置されている少なくとも一つの第二フィルムを含み、
前記補強構造は前記第一フィルムの発音エリアに設置されて、前記第二フィルムの発音エリアは透かし彫りとして設置されている。
【0008】
一実施例において、前記固形部材はシート状で前記第二フィルム上の前記発音エリア以外の他の箇所に配置されている。
【0009】
一実施例において、前記固形部材をスチールシートとして設置している。
【0010】
一実施例において、前記スチールシートの厚さは0.2~0.6mmである。
【0011】
一実施例において、隣り合う各二つの前記発音フィルムの間、及び前記発音フィルムと前記補強構造との間は減衰接着剤により接着されて固定されている。
【0012】
一実施例において、前記減衰接着剤の厚さは11~15μmである。
【0013】
一実施例において、前記補強構造は前記発音フィルムの反対する両側にそれぞれ設置されている第一補強構造及び第二補強構造を含む。
【0014】
一実施例において、前記第一補強構造と前記第二補強構造の製造材質はいずれも銅箔であり、且つ前記第二補強構造は前記振動系の導電端と電気的に接続されるために用いられる。
【0015】
一実施例において、前記第一補強構造は前記発音エリアにおいてグリッド状に配置された第一銅線部を含む。
【0016】
一実施例において、前記第二補強構造は前記発音エリアにおいて複数回の折り曲げにより形成された第二銅線部を含む。
【0017】
一実施例において、前記発音フィルムの厚さは9~15μmである。
【0018】
一実施例において、前記補強構造の厚さは15~20μmである。
【0019】
それに、上記目的を実現するために、本発明ではさらに振動系を含む平面スピーカーを提案する。前記振動系は振動膜本体を含み、前記振動膜本体は、
発音エリアを有する少なくとも一つの発音フィルムと、
前記発音フィルムの発音エリアに設置されて、前記発音フィルムを少なくとも前記発音エリアにおいて広げて平らに保つ補強構造と、
前記発音フィルム上において前記発音エリア以外の他の箇所に設置されている固形部材と、を含む。
【0020】
一実施例において、前記平面スピーカーはさらにボトムシェルを含み、前記ボトムシェルの一方側には取付槽が設置され、前記取付槽は前記振動系の取付用であり、前記ボトムシェルの他方側には前記取付溝に連通する案内チューブ構造が設置されている。
【0021】
それに、上記目的を実現するために、本発明はさらに上記のような平面スピーカーを含むアクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器を提案する。
【0022】
一実施例において、前記アクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器はアクティブノイズキャンセリングヘッドホンである。
【0023】
本発明が提案する技術案では、一つの第一フィルムと二つの第二フィルムを積層して張り合わせるように設置することで、振動膜本体の厚さを増大して、振動膜本体の剛性を向上させることができる。グリッド状の第一補強構造を設置し且つ複数回の折り曲げにより第二補強構造を形成することで、振動膜本体にしわができるのを有効に防止できる。スチールシートを設置することで、振動膜本体の強度を向上させて、振動膜本体にしわができる問題を有効に解決できる。複数の発音フィルム、補強構造及びスチールシートなどを設置することで、振動膜本体の重さを増大できる。第二フィルムの発音エリアを透かし彫りとして設置するなどして発音フィルムの厚さを小さくし、減衰接着剤の厚さを制限することで、いずれも振動膜本体の順応性を向上させて、F0の低減に役立つことが可能である。それに、案内チューブ構造を設置することで、アクティブノイズキャンセリングヘッドホン全体のF0を低減し、且つ低周波数エネルギーを強化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施例及び従来技術の技術案をより明確に説明するため、以下では、実施例或いは従来技術の説明に必要とされる添付図面を簡単にs説明する。下記説明における添付図面は本発明の一部の実施例に過ぎないことは明らかであって、当業者にとって、創造的な労働を行わないことを前提に、これらの添付図面が示す構造により他の添付図面を得ることができる。
図1】本発明が提案するアクティブノイズキャンセリングヘッドホンの一実施例の斜視模式図である。
図2】本発明が提案する平面スピーカーの一実施例の斜視模式図である。
図3図1におけるボトムシェルの一角度から見た構造模式図である。
図4図1におけるボトムシェルのもう一つの角度から見た構造模式図である。
図5図1における振動膜本体の一角度から見た構造模式図である。
図6図1における振動膜本体のもう一つの角度から見た構造模式図である。
図7図5における振動膜本体の分解模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施例における添付図面と組み合わせ、本発明の実施例における技術案を明確且つ完全に説明する。説明される実施例は本発明の全ての実施例ではなく、一部の実施例に過ぎないことは明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わないことを前提に得られる全ての他の実施例は、本発明の保護の範囲に属す。
【0026】
もし本発明の実施例で方向性指示(例えば上、下、左、右、前、後...)に関わる場合、当該方向性指示はある特定の姿勢(添付図面に示す)における各部品間の相対的位置関係、運動状況等を説明するためだけに用いられ、仮に当該特定の姿勢が変わる場合、当該方向性指示もそれ相当に変わることは説明すべきである。
【0027】
また、本発明の実施例において「第一」、「第二」等の説明に関わる場合、当該「第一」、「第二」等の説明は、説明のために利用されるだけであって、その相対的重要性を提示又は暗示する、或いは提示される技術的特徴の数を暗示的に指定するように理解すべきではない。これにより、「第一」、「第二」に限定されている特徴は明示的或いは暗示的に少なくとも一つの当該特徴を含んでもよい。また、全文において現れた「及び/又は」は三つの並行する案を含むことを意味する。「A及び/又はB」を例に取ると、A案、或いはB案、或いはAとBとが同時に満たされる案を含むことになる。また、各実施例の技術案はお互いに組み合わせることができる。ただし、当業者が実現できることはその基礎である。技術案の組み合わせに矛盾が生じるか、実現できない場合には、このような技術案の組み合わせが存在しない、且つ本発明が主張する保護範囲にないと理解すべきである。
【0028】
本発明によれば、アクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器を提案する。前記アクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器はスマートバンド、スマートウォッチ或いはアクティブノイズキャンセリングヘッドホンなどとしてもよい。説明の便宜上、図1を参照し、以下の実施例はいずれもアクティブノイズキャンセリングヘッドホンを例として前記アクティブノイズキャンセリングウェアラブル機器を説明する。前記アクティブノイズキャンセリングウェアラブル電子機器は平面スピーカーを含み、図2から図4は前記平面スピーカーの具体的な実施例である。
【0029】
具体的に、前記平面スピーカー200は通常、振動系及び磁気回路構造を含み、前記平面スピーカー200の主な動作原理としては次になる。前記振動系は通常、振動膜構造及びボイスコイル構造を含む。パワーアンプにより増幅した音声電流がボイスコイル構造を流れると、この音声電流が磁気回路構造において起こした音声変化磁束は振動膜構造に作用し、振動膜構造内の導電構造と相互誘導磁場を起こし、当該相互誘導磁場は音声磁場と互いに作用して、振動膜構造を振動させて声を出す。具体的には、先行技術を参照することができるが、ここでは制限を設けない。前記磁気回路構造はダブル磁気回路構造を採用してもよい。磁石としては高性能のN52ネオジム-鉄-ホウ素材料をすることで、感度を向上させて、歪みを低減するのに役立つ。前記振動系のインピーダンスとしては32オームを採用でき、これによりSPL(Sound Pressure Level,音圧レベル)の向上に役立つ。
【0030】
本発明が提案する振動系は振動膜本体100を含み、前記振動膜本体100は少なくとも一つの発音フィルム、補強構造及び固形部材を含む。前記発音フィルムは発音エリア113を有し、前記補強構造は前記発音フィルムの発音エリア113に設置されて、前記発音フィルムを少なくとも前記発音エリア113において広げて平らに保って、第一フィルム111の変形の減少に役立ち、前記固形部材は前記発音フィルム上において前記発音エリア113以外の他の箇所に設置されている。補強構造と固形部材により、発音フィルムの全体としての変形の低減に役立つことで、振動膜本体100の歪みを低減するとともに、製品の一貫性を向上させることができ、振動膜本体100の生産と組立体に有利で、歩留まり率の向上に役立つ。
【0031】
前記平面スピーカー200においてコーン型スピーカーのコーンを比較的平らでストレートな前記振動膜本体100に入れ替えることで、コーン型スピーカーの前室効果を取り除いて、ボイスコイル構造が前記振動膜本体100を押す時、前記振動膜本体100でより均一に分布した音の放射を発するようにして、より平坦な周波数応答にして、より広い振動範囲を得ることができ、これにより帯域幅周波数帯において歪みを低減することができる。
【0032】
上記目的を実現するために、前記平面スピーカー200の振動膜本体100としては、良好な剛性を有しなくてはならない。
【0033】
前記振動膜本体100の剛性を向上させる方法としては、複数種類存在する。
【0034】
補強構造:本実施例において、発音フィルムの発音エリア113に補強構造を設置することで、使用過程において発音フィルムを広げて平らに保つことを確保することができ、これにより前記発音フィルムのしわにより前記発音フィルムの有効振動面積を減らし、歪みを起こして且つ製品の一貫性を損ねる問題を避けることができる。そして、補強構造の設置により、ある程度振動膜本体100の重さを増大して、F0の低減に役立つことが可能になる。
【0035】
図7を参照し、一実施例において、前記補強構造は前記発音フィルムの反対する両側にそれぞれ設置されている第一補強構造121及び第二補強構造122を含む。前記第一補強構造121と前記第二補強構造122の製造材質はいずれも銅箔であり、且つ第二補強構造122は前記振動系の導電端と電気的に接続されるために用いられる。前記銅箔は十分な強度を有するとともに、同時に良好な導電性を有するので、前記第一補強構造121及び前記第二補強構造122を統一的に銅箔材料により製造されるようにすることで、前記補強構造の加工の簡略化に役立つ。前記第二補強構造122は前記振動系を構成する上記導電構造に相当するが、ここでは詳しい説明を省く。
【0036】
さらに、一実施例において、前記第一補強構造121を第一銅線部として設置することで、前記第一フィルム111の発音エリア113に強化リブを設置するのに相当し、上記強化作用を発揮することができる。他の実施例において、前記第一銅線部を前記第一フィルム111の発音エリア113上でグリッド状に配置されるか、あるいはスポット状に分散して配置されるように設置することができるが、複数回の分析とテストによりわかるように、前記第一補強構造121をグリッド状に配置されるように設置する方が、前記振動膜本体100の感度の向上及び前記第一フィルム111の歪みの低減効果がより良くなる。具体的に、グリッド状により、振動膜本体100全体としての振動時の剛性を強化することができ、グリッド面全体の振幅の同期を実現でき、スピーカーの歪みが低減する。この方法により、振動膜本体100に求められる軽便(使用される材料が少ない)及び剛性への要求を満たすことが可能になる。前記グリッド状としては、円形メッシュ、菱形メッシュ或いは他の多角形メッシュとしてもよい。前記第一補強構造121により前記第一フィルム111の発音エリア113をカバーする範囲は、実際の需要により調整できる。例えば、前記発音エリア113の膜面全体をカバーするように設置してもいいし、前記発音エリア113の一部の膜面をカバーするように設置してもいい。
【0037】
グリッド状に配置される銅箔層の具体的な形成方法について、本設計において制限を設けないことは、説明しておく必要がある。例えば、銅箔膜層全体を前記減衰接着剤130により前記第一フィルム111の発音エリア113に接着して固定し、そしてエッチング、現像などの方法により前記グリッド状構造を形成することで、加工や成形をより容易にして、且つ前記第一補強構造121と前記第一発音フィルムとの間の接続強度の強化にも役立つ。
【0038】
一実施例において、前記第二補強構造122は前記発音エリア113において複数回の折り曲げにより形成された第二銅線部を含む。前記第二銅線部は前記第一フィルム111を広げて平らに保つとともに、導電作用もあるので、前記第二銅線部の配置ルートを二つずつ交差させて且つ複雑に設置すれば、前記第二銅線部の導電機能には不利になる。よって、本実施例では、第二銅線部を前記発音エリア113において複数回の折り曲げにより構成されるように設置する。具体的に、前記第二銅線部は複数のカーブセクションと複数のストレートセクションを含み、各前記カーブセクションの反対する両端はそれぞれ前記ストレートセクションに接続されて、折り曲げて曲がりくねった導電ルートを形成することで、前記第二補強構造122の補強機能及び導電機能を両立させることが可能になる。
【0039】
複数のフィルムの積層:実施例において、前記発音フィルムはその厚さ方向において順に積層されて複数配置され、複数の前記発音フィルムは第一フィルム111、及び前記第一フィルム111の両側にそれぞれ設置されている少なくとも一つの第二フィルム112を含む。複数の前記発音フィルムを一方向に順に積層して設置することにより、前記振動膜本体100の全体としての厚さを有効に増大するとともに、前記振動膜本体100の全体形状を保つことが可能になる。前記発音フィルムの積層数が少なすぎると、剛性を向上させる目的が実現できなくなる。前記発音フィルムの積層数が多すぎると、前記振動膜本体100の質量の増大を招きやすくなり、発音の効果に影響してしまう。よって、一つの具体的な実施例において、前記第一フィルム111は一つ設置してもよく、前記第二フィルム112は二つ設置してもよい。
【0040】
前記第二フィルム112の発音エリア113は透かし彫りになるように設置されている。前記第一フィルムは主な発音機能を発揮し、前記第二フィルム112は補助的な発音機能を発揮するとともに、前記振動膜本体100の剛性を向上させるためのものなので、前記第二フィルム112の発音エリア113を透かし彫りとして、前記振動膜本体100の前記発音エリア113における厚さを増加しないようにしてもよい。第二フィルム112により前記第一フィルム111を挟持してその位置を制限し、前記第一フィルム111上の前記発音エリア113以外の他の箇所の剛性を向上させて、当該箇所における変形を避けることが可能である。さらには、上記の補強構造を前記第一フィルム111の発音エリア113に設置する案と組み合わせて、前記第一フィルム111の全体としての剛性の強化に役立ち、膜体全体の変形を避ける。
【0041】
固形部材:前記第一フィルム111の正常の発音に影響することなく、前記振動膜本体100の全体強度を強化するためのものである。よって、一実施例において、前記固形部材はシート状で前記第二フィルム112上の前記発音エリア113以外の他の箇所に配置されている。前記固形部材をシート状として設置することで、前記固形部材の占める空間を減少させ、これにより前記振動膜本体100の全体厚さを減少させることが可能になる。そして、シート状で設置された前記固形部材と前記発音フィルムとの間がより密接して張り合わせられるようになり、できるだけ多く両者の接続面積を増大して、前記振動膜本体100の全体強度を向上させることに役立つ。前記固形部材を前記第二フィルム112上に設置することで、前記第一フィルム111の発音エリア113に対する干渉を減少させて、これにより前記振動膜本体100の発音効果及び品質を保証できる。
【0042】
さらに、一実施例において、前記固形部材をスチールシート140として設置する。前記スチールシート140は比較的小さい寸法や厚さに形成されると同時に、十分な強度を提供して、前記振動膜本体100が変形しないように保証できる。
【0043】
一実施例において、前記スチールシート140は減衰接着剤130で前記第二フィルム112上に熱圧着により固定されている。即ち、前記スチールシート140と前記第二フィルム112とは熱圧着と接着との二種類の固定接続方法を組み合わせているので、より操作しやすくなり、製品の位相と周波数応答の一貫性を向上させるとともに、生産率を上げて、不良率を下げることが可能となる。
【0044】
振動膜本体100を具体的にアクティブノイズキャンセリングヘッドホンに応用する場合、順に二つの前記第二フィルム112及びその間に挟まれるように設置された第一フィルム111とともに構成されるように前記振動膜本体100を設置する。前記第一フィルム111の反対する両側にはそれぞれ、グリッド状に設置された第一補強構造121、及び複数回の折り曲げにより形成された第二補強構造122が形成され、隣接する前記発音フィルムと前記補強構造との間は減衰接着剤130により接着され固定されている。それに、前記第一補強構造121に近い前記第二フィルム112上に、前記第一フィルム111から離れた側にはスチールシート140が設置されている。
【0045】
図7を参照し、一実施例において、前記発音フィルムの厚さは9~15μmである。前記発音フィルムの厚さをあまりに厚く設定すると、前記振動膜本体100の全体厚さを増大しやすくしてしまい、前記発音フィルムの振動発音には不利になることは、理解できるであろう。前記発音フィルムの厚さをあまりに薄く設定すると、前記振動膜本体100の全体剛性を低減しやすくしてしまい、前記発音フィルムは使用過程において変形ひいては破損しやすくなる。前記発音フィルムの厚さが9~15μmである場合、特に前記発音フィルムの厚さが12μmである場合、音質の向上及び前記発音フィルムの変形の低減に役立つ。
【0046】
前記補強構造の厚さは15~20μmである。前記補強構造が第一補強構造121と第二補強構造122を含む場合、前記第一補強構造121及び前記第二補強構造121それぞれの厚さを15~20μm、さらには18μmに設定すると、前記振動膜本体100の強度の向上、及び低周波数エネルギーの向上に役立つことは、説明しておく必要がある。前記第一補強構造121及び前記第二補強構造122それぞれの厚さがいずれも18μmであり、且つ材質が銅であることにより、前記振動膜本体100の重さ及び強度を増大し、低周波数エネルギーを向上させることが可能となる。前記第一補強構造121のグリッド状設置により、前記振動膜本体100に存在する変形により歪みと一貫性に影響してしまう問題を解決でき、これにより、前記振動膜本体の品質を保証し、且つ製品の生産加工歩留まり率を向上させることが可能となる。
【0047】
一実施例において、隣り合う各二つの前記発音フィルムの間、及び前記発音フィルムと前記補強構造との間は減衰接着剤130により接着されて固定され、これにより前記振動膜本体100の各膜層を安定して接続し、一体となった設置を実現する。前記発音フィルムと前記補強構造との間にある前記減衰接着剤130の厚さは11~15μmであり、そしてさらに、前記発音フィルムと前記補強構造との間に位置する前記減衰接着剤130の厚さを13μmに設定することにより、できるだけ前記振動膜本体100の厚さとの均衡を保って、且つ前記発音フィルムと前記補強構造との間の接続安定性を強化でき、これにより音質の向上及び前記発音フィルムの変形の低減にも役立つとともに、前記振動膜本体100の順応性の向上により、F0の低減にも役立てる。
【0048】
一実施例において、前記スチールシート140の厚さは0.2~0.6mmであり、且つさらに、前記スチールシート140の厚さは0.5mmである。前記スチールシート140の厚さを比較的大きく設定すると、前記振動膜本体100の全体厚さを直接増大してしまい、且つ前記第一フィルム111の振動効果に影響し、前記振動膜本体100の発音品質を低下させやすくなる。前記スチールシート140の厚さを比較的小さく設定すると、前記スチールシート140による強化作用を弱くしてしまい、前記発音フィルムが変形しやすい問題を解決できなくなる。前記スチールシート140の厚さを0.2~0.6mm、特に0.5mmに設定することで、寸法と強度の考慮を両立させることができ、よりよく製品の位相と周波数応答の一貫性を向上させ、且つよりよく製品の生産歩留まり率を向上させることが可能となることは、テストにより確認された。
【0049】
前記平面スピーカー200において、図2から図4を参照し、前記平面スピーカー200はさらにボトムシェル201を含み、前記ボトムシェル201の一方側には取付槽202が設置され、前記取付槽202は前記振動系及び前記磁気回路構造などの構成部材の取付用であり、前記ボトムシェル201の他方側には前記取付溝202に連通する案内チューブ構造203が設置され、前記案内チューブ203は低音案内チューブ構造203であり、低周波数のエネルギーを改善してそしてF0を低減し、ノイズキャンセリングに必要な低周波数を実現するのに役立つ。前記案内チューブ構造203は前記ボトムシェル201の底部に沿って延伸し、且つ両端がそれぞれ前記取付槽202及び前記ボトムシェル201の外部環境の中とそれぞれ連通している。前記案内チューブ構造203は前記ボトムシェル201上に貫通するように形成されたチューブ状構造としてもよい。あるいは、前記ボトムシェル201の外底壁に一つの槽状構造を凹むように設けて、そして前記槽状構造の少なくとも一部の槽口に一つの盖板構造を被せるように設置し、前記槽状構造及び前記盖板構造が共同で囲いあって前記案内チューブ構造203を構成してもよい。
【0050】
まとめると、平面スピーカー200をアクティブノイズキャンセリングヘッドホンに応用するにあたり、二つの難題が存在し、その一つは振動膜本体100にしわができやすいことであり、その二つはF0が比較的高いことである。その中でも:
振動膜本体100にしわができる問題に対して、振動膜本体100にしわができると、音の歪みが多くなりやすく、しかも製品の一貫性も悪くなる。よって、本願の実施例では、一つの第一フィルム111と二つの第二フィルム112を積層して張り合わせるように設置することで、振動膜本体100の厚さを増大して、振動膜本体100の剛性を向上させることができる。上記グリッド状の第一補強構造121を設置し且つ複数回の折り曲げにより第二補強構造122を形成することで、振動膜本体100にしわができるのを有効に防止できる。スチールシート140を設置することで、振動膜本体100の強度を向上させて、振動膜本体にしわができる問題を有効に解決できる。
【0051】
F0が比較的高い問題に対して、本願の実施例では、複数の発音フィルム、補強構造及びスチールシート140などを設置することで、振動膜本体100の重さを増大できる。第二フィルム112の発音エリアを透かし彫りとして設置するなどして発音フィルムの厚さを小さくし、減衰接着剤の厚さを制限することで、いずれも振動膜本体100の順応性を向上させて、F0の低減に役立つことが可能である。それに、案内チューブ構造を設置することで、アクティブノイズキャンセリングヘッドホン全体のF0を低減し、且つ低周波数エネルギーを強化できる。
【0052】
以上に述べたことは本発明の好ましい実施例にすぎず、それによって本発明の特許の範囲を制限するわけではない。本発明の発明構想の下で、本発明の明細書及び添付図面の内容を利用してなされた等価構造変換、或いは他の関連する技術分野への直接/間接的なの応用は、何れも本発明の特許の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7