(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035918
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】木質バイオマスボイラーの燃焼灰を使用した媒染剤の製造方法とその媒染剤を使用する染色方法
(51)【国際特許分類】
D06P 1/36 20060101AFI20220225BHJP
D06P 1/34 20060101ALI20220225BHJP
D06P 3/60 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
D06P1/36 A
D06P1/34
D06P3/60 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181853
(22)【出願日】2020-10-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2020138774
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520315707
【氏名又は名称】寺田 真治
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】寺田 真治
【テーマコード(参考)】
4H157
【Fターム(参考)】
4H157AA02
4H157BA05
4H157BA32
4H157DA24
(57)【要約】
【課題】木質バイオマスボイラーで発生するフライ・アッシュの新しい用途を提供する。
【解決手段】木質バイオマスボイラー2で木質燃料を燃焼させるときに発生するフライ・アッシュ12を水と混合した後に静置することによって得られる上澄み液を媒染剤として使用して、動植物から得られる繊維、その繊維の織布、その繊維の不織布のいずれかを植物染料によって染色する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動植物から得られる繊維を植物染料と媒染剤とを使用して染色する染色方法であって、
前記媒染剤として、木質バイオマスボイラーにおいて木質バイオマスとして使用される木材を燃焼させることによって得られるフライ・アッシュを水10lに対して1~4kgの範囲で混合した混合物を作り、前記混合物を所要時間静置して得られる前記混合物の上澄み液を前記媒染剤として使用することを特徴とする前記染色方法。
【請求項2】
前記木材は、針葉樹と広葉樹とのうちの少なくとも一方を含む請求項1記載の染色方法。
【請求項3】
前記針葉樹は、少なくともトドマツを含む請求項2記載の染色方法。
【請求項4】
前記木質バイオマスは、その形態が前記木材の材部、樹皮、これらから得られるチップ、おが粉、ペレットのいずれかである請求項1~3のいずれかに記載の染色方法。
【請求項5】
前記植物染料として前記媒染剤を使用することにより前記植物の色素を抽出した抽出液を作り、前記抽出液で前記繊維を染色する請求項1~4のいずれかに記載の染色方法。
【請求項6】
前記植物染料は、白樺の樹皮およびミントの葉のいずれかを前記媒染剤に浸漬し、加熱して得られる抽出液である請求項5記載の染色方法。
【請求項7】
前記媒染剤を使用して先媒染を行う請求項1~6のいずれかに記載の染色方法。
【請求項8】
前記媒染剤を使用して後媒染を行う請求項1~7のいずれかに記載の染色方法。
【請求項9】
前記繊維は、前記先媒染の後に濃染処理を施す請求項7記載の染色方法。
【請求項10】
動植物から得られる繊維を染色する染色方法において使用される媒染剤であって、
前記媒染剤が、木質バイオマスボイラーにおいて木質バイオマスとして使用される木材を燃焼させることによって得られるフライ・アッシュを水と混合して混合物を作り、前記混合物を所要時間静置して得られる前記混合物の上澄み液であることを特徴とする前記媒染剤。
【請求項11】
前記媒染剤は、草木と混合されて前記草木の色素を抽出した抽出液となって、前記染色方法においての植物染料として使用される請求項10記載の媒染剤。
【請求項12】
前記媒染剤は、先媒染および後媒染のうちの少なくとも一方において使用するものである請求項10または11記載の媒染剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマスボイラーで得られる燃焼灰を使用した媒染剤とその媒染剤を使用する染色方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
動植物から得られる繊維、たとえばウールや再生セルロースを含むセルロース繊維等の繊維と、それらの繊維で作られた織布や不織布を草木類から得られる染料によって染色することは、草木染めとして広く知られている。その草木染めでは、繊維と染料との結合を強化したり、分離を防いだりするために媒染剤が広く使用されている。例えば、特許文献1には、セルロース繊維をタンパク質及び媒染剤の含有液に浸漬した後、天然染料の含有溶液に、そのセルロース繊維を浸漬して染色する方法の発明が記載されている。
【0003】
また、木質燃料を使用するバイオマスボイラーは、木質バイオマスボイラーと呼ばれ周知である。加えて、このボイラーを使用することによって生じる燃焼灰を活用するための研究もおこなわれている。例えば、非特許文献1には、燃焼灰を農地等の肥料として活用するに当たって行った燃焼灰の成分分析の結果が報告されている。非特許文献2には、木質バイオマス燃焼灰の林地還元に向けた基礎的知見が記載されている。その知見には、燃焼灰の化学分析の結果が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-222722号公報
【非特許文献1】岩手県林業技術センター研究成果速報 No.234
【非特許文献2】折橋 健 他 木質バイオマス燃焼灰の林地還元に向けた基礎知見 九大演報,92:13-18,2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1には、木質バイオマス燃焼灰における含有量試験で有害成分が非常に少なかったこと、燃焼灰を融雪剤や有機肥料として活用することが記載されている。含有量試験の結果によれば、広葉樹や針葉樹の燃焼灰にクロム等の重金属が微量含まれている。また、非特許文献2には、燃焼灰がカルシウム、カリウムを含有し、また燃焼灰における重金属類の含有量がこの文献で参照した資料における許容上限値もしくは基準値と同等またはそれ未満であること、燃焼灰には苗木に施用する利用方法があることが記載されている。
【0006】
特許文献1が開示しているものは、セルロース繊維の染色にタンパク質と媒染剤とを使用する染色方法であって、その媒染剤は従来周知のものである。
【0007】
そこで、本発明では、非特許文献1,2に記載されている燃焼灰の成分分析の結果に注目し、燃焼灰を使用して媒染剤を作ることにより、燃焼灰の利用範囲の拡大の一助とするとともに、草木染めの技術分野において使用する媒染剤に多様性を持たせることの一助とすることを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決すための本発明は、第1発明と第2発明とによって構成される。
前記第1発明が対象とするのは、動植物から得られる繊維を植物染料と媒染剤とを使用して染色する染色方法である。
この染色方法において、第1発明が特徴とするところは、前記媒染剤として、木質バイオマスボイラーにおいて木質バイオマスとして使用される木材を燃焼させることによって得られるフライ・アッシュを水10lに対して1~4kgの範囲で混合した混合物を作り、前記混合物を所要時間静置して得られる前記混合物の上澄み液を前記媒染剤として使用すること、にある。
【0009】
第1発明の実施態様の一つにおいて、前記木材は、針葉樹と広葉樹とのうちの少なくとも一方を含む。
【0010】
第1発明の実施態様の他の一つにおいて、前記針葉樹は、少なくともトドマツを含む。
【0011】
第1発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記木質バイオマスは、その形態が前記木材の材部、樹皮、これらから得られるチップ、おが粉、ペレットのいずれかである。
【0012】
第1発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記植物染料として前記媒染剤を使用することにより前記植物の色素を抽出した抽出液を作り、前記抽出液で前記繊維を染色する。
【0013】
第1発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記植物染料は、白樺の樹皮およびミントの葉のいずれかを前記媒染剤に浸漬し、加熱して得られる抽出液である。
【0014】
第1発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記媒染剤を使用して先媒染を行う。
【0015】
第1発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記媒染剤を使用して後媒染を行う。
【0016】
第1発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記繊維は、前記先媒染の後に濃染処理を施す。
【0017】
本発明における第2発明が対象とするのは、動植物から得られる繊維を染色する染色方法において使用される媒染剤である。
かかる第2発明が特徴とするところは、前記媒染剤が、木質バイオマスボイラーにおいて木質バイオマスとして使用される木材を燃焼させることによって得られるフライ・アッシュを水と混合して混合物を作り、前記混合物を所要時間静置して得られる前記混合物の上澄み液である。
【0018】
第2発明の実施態様において、前記媒染剤は、草木と混合されて前記草木の色素を抽出した抽出液となって、前記染色方法においての植物染料として使用されるものである。
【0019】
第2発明の実施態様の他の一つにおいて、前記媒染剤は、先媒染および後媒染のうちの少なくとも一方において使用するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明における第1,第2発明は、染色における媒染剤として木質バイオマスボイラーの燃焼灰として発生するフライ・アッシュを利用するから、木質バイオマスの利用範囲を広げることができ、また従来の媒染剤に加えて新たな媒染剤を草木染の技術分野に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】木質バイオマスボイラーのシステムの概略図。
【
図2】容器に入れたフライ・アッシュと水との混合物を示す図。
【
図5】容器に入れた白樺の樹皮と媒染剤との混合物を示す図。
【
図6】ガーゼ生地の染色後の状態を容器とともに示す図。
【
図7】比較例である染色後のガーゼ生地を容器とともに示す図。
【
図9】AとBとによって実施例2と比較例2とのガーゼ生地を示す図。
【
図11】後媒染をした実施例のハンカチCと後媒染をしていない比較例のハンカチDとを示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
添付の図面を参照して、本発明に係る媒染剤とその媒洗剤を使用する染色方法との詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0023】
図1は、木質バイオマスを燃焼させて得られる燃焼灰のうち、本発明で使用するフライ・アッシュを分離して取り出すことのできる木質バイオマスボイラーのシステムの要部をシステム1として模式的に例示する図である。システム1は、ボイラー本体2を有し、本体2における内部の下方部分には燃焼炉があり、上方部分には熱交換器があるが、それら下方部分と上方部分との図示は省略されている。システム1はまた、ボイラー本体2に対する燃料供給部3と、バーナー4と、燃焼用の空気送入部6とを有する。ボイラー本体2からは、煙道であるガス排出路7と、蒸気排出路8と、ボトム・アッシュ(主灰)排出路9が延びている。ガス排出路7は、エアヒータ15を通り、ボイラー本体2に併設されているサイクロン11にまで延びている。サイクロン11の下端部には、フライ・アッシュ(飛灰)収容ボックス12が付属している。燃料供給部3では、燃料である木質バイオマス(図示せず)がボイラー本体2の燃焼炉に適量ずつ供給される。木質バイオマスとして供給される木材等には、木材生産で発生する林地残材や、木材加工工程で生じる端材等があり、これらは適宜のサイズに整えられた材部、樹皮、チップ、おが粉、ペレット等の形態の木質燃料として扱われる。燃焼後のバイオマスは、一部のものがボトム・アッシュ(主灰)となって排出路9から取り出され、一部のものがガス排出路7を通ってサイクロン11に進み、排ガスから分離されてフライ・アッシュ(飛灰)となって収容ボックス12に集積する。本発明では、このフライ・アッシュを後記媒染剤を作るための出発原料(素材)として使用する。媒染剤の出発原料となるフライ・アッシュを得るための木質燃料は、針葉樹および/または広葉樹から得られる木材、またはその木材を主体とするものである。その木材を主体とするということは、木質燃料に加工されたり木質燃料として供給されたりする過程において、針葉樹および広葉樹以外の草木類が10質量%以下の割合で混入することを禁じるものではないことを意味している。
【0024】
本発明が木質燃料として、針葉樹および/または広葉樹から得られる木材を主体とするということは、非特許文献1,2に記載されているように、その木材から得られる燃焼灰に有害ではない程度に金属類、特にニッケルやクロム等の金属が含まれるからである。媒染剤がこれらの金属を含むことによって媒染剤としての効果を発揮するものであることは草木染めの世界においてよく知られている。また、本発明が燃焼灰としてボトム・アッシュではなくて、フライ・アッシュを使用するのは、媒染剤の製造において邪魔となる異物の混入がないということの他に、燃焼灰に含まれる金属の割合が木材そのものに含まれる場合の割合よりも高くて、しかも水中への溶出が容易であるという考察に基づいている。
【0025】
本発明に係る染色方法は、草木染と呼ばれる類の染色方法の一つである。その方法において、染色の対象となるものは植物または動物から得られる繊維、その繊維を使用する織布や不織布である。植物から得られる繊維の例には、綿や麻を形成しているセルロース繊維の他に、レイヨン繊維等の再生セルロース繊維がある。この染色方法においてはまた、染料として、通常草木と呼称される植物から得られるものを広く使用することができる。この染色方法においてはまた、広く一般的に知られている媒染剤を使用することが可能である。ただし、本発明においては、その媒染剤として、木質バイオマスボイラーで木質燃料を燃焼させることによって得られるフライ・アッシュを出発原料として調製されたものを使用する。かかる媒染剤は、先媒染用のものとしても後媒染用のものとしても使用できる。また、後媒染用のものとして使用するときの態様には、その媒染剤を染料と混合した状態で使用する態様と、染色用の素地を染色後に媒染剤に浸漬する態様とが含まれる。なお、従来の草木染において使用されることのある濃染剤は、本発明に係る染色方法においても使用可能である。
【0026】
本発明ではまた、草木染めにおいて一般的に使用されている植物染料を使用することができる。ただし、本発明の好ましい一例においては、本発明が提供する媒染剤に植物を浸漬して、その植物の色素を媒染剤により抽出した抽出液を作り、その抽出液を植物染料として使用する。その植物に限定はないが、好ましいものの一例として白樺の樹皮やミントの葉を挙げることができる。このような植物染料を使用するときの染色用素地は、本発明に係る媒染剤を使用しての先媒染が施されているというものであることが好ましいが、その先媒染が施されていない素地であってもよい。
【0027】
なお、本発明に係る媒染剤、その媒染剤とともに使用する植物染料は、通常、一定の組成を有するというものではない。それゆえ、これらを使用しての本発明に係る染色方法では、好みの染色状態にある染色品を得るために、媒染剤の調製を含む染色作業上の諸条件、たとえば温度や時間、混合比率等の諸条件は、染色作業の試行錯誤を繰り返しながら決められることが好ましい。
【0028】
次に、本発明に係る染色方法を実施例に基づいて説明すると、以下のとおりである。
1.フライ・アッシュの入手
(1)木質バイオマスボイラーとしては、三津橋農産株式会社北町工場(北海道下川町北町)に設置された木質バイオマスボイラー((株)タカハシキカン製造、型式KT-H)を使用した。
【0029】
(2)木質燃料としては、トドマツが80~90質量%、カラマツが20~10質量%を占める木材の製造現場で生じた材部(端材)や樹皮等を木質燃料としてバイオマスボイラーで燃焼させ、木質バイオマスボイラーの燃焼室の下流側に設置されたマルチサイクロンでフライ・アッシュを捕集し、以下の実施例において使用した。この木質燃料もまた、それを得たときの木材と同様に、トドマツが80~90質量%、カラマツが20~10質量%を占めていると推定された。
【0030】
2.媒染剤の調製
(1)1.(2)項で捕集したフライ・アッシュは、水道水10lに対して、好ましくは、0.5~5kgの範囲で混合して、フライ・アッシュと水との混合物を得る。その混合物は静置してフライ・アッシュを沈殿させ、それによって上澄み液を得る。本発明で使用するフライ・アッシュは天然物由来のものであるから、その組成が一定のものというわけではない。したがって、フライ・アッシュの水に対する混合比率にはかなり大きな幅を持たせておくということになる。ただし、以下の実施例および比較例においては、水道水10lに対して2kgのフライ・アッシュを混合した混合物を作り、それを24時間静置してフライ・アッシュを沈殿させることにより、上澄み液を得た。このときのフライ・アッシュと水(上澄み液を)との状態は
図2における容器(青色)の内容物のとおりであった。
【0031】
(2)2.(1)項における上澄み液を布地でろ過することによって、媒染剤を調製した。ろ液である媒染剤の外観は
図3における容器の内容物のとおりであった。
(3)
図3の媒染剤は、試料名「木質バイオマスボイラ燃焼灰上澄み液」として、地方独立行政法人「北海道立総合研究機構」に試験・分析を依頼した。同機構による試験・分析の結果は、以下のとおりであった。
pH 12.7
クロム(mg/L) 0.10
ニッケル(mg/L) 検出されず(定量下限 0.04)
上記試験・分析の結果から明らかなように、本発明に係る媒染剤には、媒染剤として広く一般的に使用されているクロムが微量ではあるが含有されている、と考えられる。
【0032】
3.染色の実施例1
(1)植物染料を得るために
図4に示す白樺の樹皮を用意した。
図4において、樹皮は10l用のほうろう引きの白い容器にその容器の1/2程度にまで入れてある。その容器には、2.(2)項で調製した媒染剤を樹皮がひたひたにつかるところまで注ぎ入れた。
【0033】
(2)ほうろう引きの容器を加熱し、樹皮と媒染剤との混合物を70~80℃の温度で1時間加熱した。加熱後の樹皮と媒染剤との混合物の状態は
図5のとおりであった。
【0034】
(3)加熱後の混合物は、温度が15~40℃にまで下がるのを待ってから上澄みの部分を布地でろ過し、ろ液を染料(第1染料)とした。上澄みの部分をろ過するときの温度は、上澄みの部分の色の変化の度合いや染色作業の進捗状況等に応じて決めることができる。
【0035】
(4)綿糸95質量%とレーヨン5質量%とを含むガーゼ生地を染色用素地として用意し、その素地は2.(2)項で調製した媒染剤(15~25℃)に30分間浸漬することによって先媒染処理を施した。媒染剤に浸漬中のガーゼ生地は、10分間に1回の割合で揺らすようにして泳がせ、ガーゼ生地と媒染剤とをむらなく接触させた。なお、本発明に係る媒染剤は、それを使用するときの効果の現れ方などを勘案して、つまり必要に応じて、その温度を25℃以上に設定することもできる。また、本発明では、本発明に係る媒染剤を使用した先媒染処理をアルカリ先媒染ということがある。
【0036】
(5)先媒染処理を施したガーゼ生地は、15~40℃の第1染料に30分間浸漬して染色し、ガーゼ生地の外観(染色状態)を観察した。その染色状態は、
図6の乳白色の容器に入れてあるガーゼ生地のとおりであった。なお、第1染料の温度は、ガーゼ生地が好ましい染色状態となるように適宜設定することのできる温度である。
【0037】
4.染色の比較例1
(1)白樺の樹皮2kgを10l用のほうろう引きの容器に入れ、樹皮がひたひたになるところまで水道水を入れて約1時間、70~80℃で加熱した後にろ過して比較例としての染料(第1比較染料)とした。
【0038】
(2)実施例1で使用したガーゼ生地と同じ生地を第1比較染料に30分間浸漬し、
図7における乳白色の容器における染色後のガーゼ生地の外観(染色状態)を観察した。
【0039】
5.染色の実施例2
(1)実施例1の工程(2)において樹皮と媒染剤との混合液を70~80℃で加熱したことに代えて、その混合液を沸騰するまで加熱し、混合液の泡の色が赤くなったところで加熱を止めて、所要の温度、例えば15~40℃になるまで静置した。
【0040】
(2)所要の温度にまで下がった混合液を布地でろ過し、ろ液を染料(第2染料)とした。第2染料は、
図8において白い容器に入れられている。
【0041】
(3)染色用の素地である綿100%のタオル地を実施例1と同様に媒染剤に30分間浸漬して先媒染処理を施し、さらに、その後に濃染剤KLC-1(商品名)による濃染処理を施した。その濃染処理は、室温において80mlのKLC-1を水道水2lと混合し、得られた混合液にタオル地を気泡が入らないように気をつけながら浸漬し、30~60分間放置するというものである。
【0042】
(4)濃染処理を施したタオル地を絞って余分な水分(混合液)を取り去った後に第2染料に30分間浸漬して、染色した。
【0043】
(5)染色後のタオル地を水洗いして余分な染色液を洗い流した。
【0044】
(6)水洗いした染色後のタオル地は、洗濯機で洗い、乾燥させて
図9のAのタオル地を得た。
【0045】
6.染色の比較例2
(1)染色の実施例2において先媒染処理を施すことなく濃染処理を施したタオル地について、染色の比較例1における4.(1)項の第1比較染料に30分間浸漬した。
【0046】
(2)浸漬後のタオル地を染色の実施例2における工程の5.(5),5.(6)項と同様に水洗いし、洗濯機で洗濯後に乾燥させて
図9のBのタオル地を得た。
【0047】
7.実施例1,2と比較例1,2との対比
(1)染色の実施例1と比較例1との染色状態は、
図6,7によって対比することができる。
図6は、本発明に係る媒染剤を先媒染に使用してガーゼ生地を染色したときの結果を示し、
図7はその媒染剤を使用しないでガーゼ生地を染色したときの結果を示している。両図のガーゼ生地のそれぞれは、第1染料と第1比較染料とのそれぞれに浸漬された状態にあるが、それでも、実施例1のガーゼ生地の方が比較例1のガーゼ生地よりも色濃く染色された状態にあることがわかる。
【0048】
(2)染色の実施例2と比較例2との染色状態は、
図9におけるAとBとのタオル地によって知ることができる。
図9においてAは色が濃く、Bは色が淡いことからわかるように、本発明に係る媒染剤を使用したアルカリ先媒染の有無が濃染処理を施したタオル地であっても、染色状態の違いとなって現れていることは明白である。肉眼で見ると、実施例2である
図9のAのタオル地は、濃いサーモンピンク色に染まり、洗濯を繰り返しても簡単には色落ちすることがなかった。一方、比較例である
図9のBのタオル地は、淡いサーモンピンク色に染まったが、洗濯を繰り返すと、容易に色落ちするという現象が見られた。
【0049】
8.染色の実施例3
(1)「2.媒染剤の調製」で使用したフライ・アッシュ500gを、水道水5lに対して混合することにより得られた混合物を24時間静置した。その後に、その混合物をろ過することによって、媒染剤(第2媒染剤)を調製した。
【0050】
(2)染色用の素地として市販のガーゼ生地のハンカチを2枚用意し、それを水道水に浸漬後、絞ることによって湿らせた。
【0051】
(3)草木染め染料を得るためにミントの葉を用意した(
図10参照)。
【0052】
(4)ミントの葉100gと水道水3lとを10l用のほうろう引きの容器に入れ、70~80℃で30分間加熱した後に、一度煮沸させてから加熱をやめ、所要の温度、例えば15~40℃になるまで放置した。その後に、上澄みの部分を布地でろ過し、ろ液を染料(第3染料)とした。
【0053】
(5)2lの第3染料に水道水で湿らせた(2)項の2枚のハンカチのうちの1枚のハンカチを浸漬し、続いて1lの第2媒染剤を加えて30分間放置することによって後媒染処理を施した。その後に第3染料から引き上げたハンカチの状態は、
図11のハンカチCのとおりであった。
【0054】
(6)
図11のハンカチCを水道水で洗い、乾燥させたときの状態は、
図12のハンカチCのとおりであった。
【0055】
9.染色の比較例3
(1)8.(2)項における2枚のハンカチのうちのもう1枚を2lの第3染料に浸漬し、第2媒染剤を加えることなく30分間放置した。
【0056】
(2)その後に第3染料から引き上げたハンカチの状態は、
図11におけるハンカチDのとおりであった。
【0057】
(3)
図11のハンカチDを水道水で洗い、乾燥させたときの状態は
図12のハンカチDのとおりであった。
【0058】
10.実施例3と比較例3との対比
(1)
図11,12における実施例3と比較例3との対比によって明らかなように、ハンカチCはハンカチDよりも色濃く染色されている。このように、本発明に係る媒染剤は、第3染料を一例とする染料とともに使用する態様の後媒染においても、その媒染剤を使用することによる固有の効果の存在を確認することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 木質バイオマスボイラーの要部
2 木質バイオマスボイラーの本体
11 サイクロン
【手続補正書】
【提出日】2021-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動植物から得られる繊維を植物染料と媒染剤とを使用して染色する染色方法であって、
前記媒染剤として、木質バイオマスボイラーにおいて木質バイオマスとして使用される木材を燃焼させることによって得られるフライ・アッシュを水10Lに対して1~4kgの範囲で混合した混合物を作り、前記混合物を所要時間静置して得られる前記混合物の上澄み液を前記媒染剤として使用することを特徴とする前記染色方法。
【請求項2】
前記木材は、針葉樹と広葉樹とのうちの少なくとも一方を含む請求項1記載の染色方法。
【請求項3】
前記針葉樹は、少なくともトドマツを含む請求項2記載の染色方法。
【請求項4】
前記木質バイオマスは、その形態が前記木材の材部、樹皮、これらから得られるチップ、おが粉、ペレットのいずれかである請求項1~3のいずれかに記載の染色方法。
【請求項5】
前記植物染料として前記媒染剤を使用することにより前記植物の色素を抽出した抽出液を作り、前記抽出液で前記繊維を染色する請求項1~4のいずれかに記載の染色方法。
【請求項6】
前記植物染料は、白樺の樹皮およびミントの葉のいずれかを前記媒染剤に浸漬し、加熱して得られる抽出液である請求項5記載の染色方法。
【請求項7】
前記媒染剤を使用して先媒染を行う請求項1~6のいずれかに記載の染色方法。
【請求項8】
前記媒染剤を使用して後媒染を行う請求項1~7のいずれかに記載の染色方法。
【請求項9】
前記繊維は、前記先媒染の後に濃染処理を施す請求項7記載の染色方法。
【請求項10】
動植物から得られる繊維を染色する染色方法において使用される媒染剤の製造方法であって、
木質バイオマスボイラーにおいて木質バイオマスとして使用される木材を燃焼させることによって得られるフライ・アッシュを水と混合して混合物を作り、前記混合物を所要時間静置して得られる前記混合物の上澄み液を前記媒染剤とすることを特徴とする前記媒染剤の製造方法。
【請求項11】
前記媒染剤は、草木と混合されて前記草木の色素を抽出した抽出液となって、前記染色方法においての植物染料として使用される請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
前記媒染剤は、先媒染および後媒染のうちの少なくとも一方において使用される請求項10または11記載の製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、木質バイオマスボイラーで得られる燃焼灰を使用した媒染剤の製造方法とその媒染剤を使用する染色方法とに関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
前記課題を解決すための本発明は、第1発明と第2発明とによって構成される。
前記第1発明が対象とするのは、動植物から得られる繊維を植物染料と媒染剤とを使用して染色する染色方法である。
この染色方法において、第1発明が特徴とするところは、前記媒染剤として、木質バイオマスボイラーにおいて木質バイオマスとして使用される木材を燃焼させることによって得られるフライ・アッシュを水10Lに対して1~4kgの範囲で混合した混合物を作り、前記混合物を所要時間静置して得られる前記混合物の上澄み液を前記媒染剤として使用すること、にある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明における第2発明が対象とするのは、動植物から得られる繊維を染色する染色方法において使用される媒染剤の製造方法である。
かかる第2発明が特徴とするところは、木質バイオマスボイラーにおいて木質バイオマスとして使用される木材を燃焼させることによって得られるフライ・アッシュを水と混合して混合物を作り、前記混合物を所要時間静置して得られる前記混合物の上澄み液を前記媒染剤とすることにある。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
第2発明の実施態様において、前記媒染剤は、草木と混合されて前記草木の色素を抽出した抽出液となって、前記染色方法においての植物染料として使用される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
第2発明の実施態様の他の一つにおいて、前記媒染剤は、先媒染および後媒染のうちの少なくとも一方において使用される。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明における第1,第2発明は、染色における媒染剤として木質バイオマスボイラーの燃焼灰として発生するフライ・アッシュを利用するから、木質バイオマスの利用範囲を広げることができ、また従来の染色方法と媒染剤の製造方法に加えて新たな染色方法と媒染剤の製造方法を草木染の技術分野に提供することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
添付の図面を参照して、本発明に係る媒染剤の製造方法とその媒洗剤を使用する染色方法との詳細を説明すると、以下のとおりである。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
図1は、木質バイオマスを燃焼させて得られる燃焼灰のうち、本発明で使用するフライ・アッシュを分離して取り出すことのできる木質バイオマスボイラーのシステムの要部をシステム1として模式的に例示する図である。システム1は、ボイラー本体2を有し、本体2における内部の下方部分には燃焼炉があり、上方部分には熱交換器があるが、それら下方部分と上方部分との図示は省略されている。システム1はまた、ボイラー本体2に対する燃料供給部3と、バーナー4と、燃焼用の空気送入部6とを有する。ボイラー本体2からは、煙道であるガス排出路7と、蒸気排出路8と、ボトム・アッシュ(主灰)排出路9が延びている。ガス排出路7は、エアヒータ15を通り、ボイラー本体2に併設されているサイクロン11にまで延びている。サイクロン11の下端部には、フライ・アッシュ(飛灰)収容ボックス12が付属している。燃料供給部3では、燃料である木質バイオマス(図示せず)がボイラー本体2の燃焼炉に適量ずつ供給される。木質バイオマスとして供給される木材等には、木材生産で発生する林地残材や、木材加工工程で生じる端材等があり、これらは適宜のサイズに整えられた材部、樹皮、チップ、おが粉、ペレット等の形態の木質燃料として扱われる。燃焼後のバイオマスは、一部のものがボトム・アッシュ(主灰)となって排出路9から取り出され、一部のものがガス排出路7を通ってサイクロン11に進み、排ガスから分離されてフライ・アッシュ(飛灰)となって収容ボックス12に集積する。
媒染剤の製造方法に係る本発明では、このフライ・アッシュを後記媒染剤を作るための出発原料(素材)として使用する。媒染剤の出発原料となるフライ・アッシュを得るための木質燃料は、針葉樹および/または広葉樹から得られる木材、またはその木材を主体とするものである。その木材を主体とするということは、木質燃料に加工されたり木質燃料として供給されたりする過程において、針葉樹および広葉樹以外の草木類が10質量%以下の割合で混入することを禁じるものではないことを意味している。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
本発明に係る製造方法において、木質燃料として、針葉樹および/または広葉樹から得られる木材を主体とするということは、非特許文献1,2に記載されているように、その木材から得られる燃焼灰に有害ではない程度に金属類、特にニッケルやクロム等の金属が含まれるからである。媒染剤がこれらの金属を含むことによって媒染剤としての効果を発揮するものであることは草木染めの世界においてよく知られている。また、本発明が燃焼灰としてボトム・アッシュではなくて、フライ・アッシュを使用するのは、媒染剤の製造において邪魔となる異物の混入がないということの他に、燃焼灰に含まれる金属の割合が木材そのものに含まれる場合の割合よりも高くて、しかも水中への溶出が容易であるという考察に基づいている。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明に係る染色方法ではまた、草木染めにおいて一般的に使用されている植物染料を使用することができる。ただし、本発明の好ましい一例においては、本発明に係る製造方法によって提供される媒染剤に植物を浸漬して、その植物の色素を媒染剤により抽出した抽出液を作り、その抽出液を植物染料として使用する。その植物に限定はないが、好ましいものの一例として白樺の樹皮やミントの葉を挙げることができる。このような植物染料を使用するときの染色用素地は、本発明によって提供される媒染剤を使用しての先媒染が施されているというものであることが好ましいが、その先媒染が施されていない素地であってもよい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
なお、本発明によって提供される媒染剤、その媒染剤とともに使用する植物染料は、通常、一定の組成を有するというものではない。それゆえ、これらを使用しての本発明に係る染色方法では、好みの染色状態にある染色品を得るために、媒染剤の調製を含む染色作業上の諸条件、たとえば温度や時間、混合比率等の諸条件は、染色作業の試行錯誤を繰り返しながら決められることが好ましい。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
2.媒染剤の調製
(1)1.(2)項で捕集したフライ・アッシュは、水道水10
Lに対して、好ましくは、0.5~5kgの範囲で混合して、フライ・アッシュと水との混合物を得る。その混合物は静置してフライ・アッシュを沈殿させ、それによって上澄み液を得る。本発明
に係る製造方法で使用するフライ・アッシュは天然物由来のものであるから、その組成が一定のものというわけではない。したがって、フライ・アッシュの水に対する混合比率にはかなり大きな幅を持たせておくということになる。ただし、以下の実施例および比較例においては、水道水10
Lに対して2kgのフライ・アッシュを混合した混合物を作り、それを24時間静置してフライ・アッシュを沈殿させることにより、上澄み液を得た。このときのフライ・アッシュと水(上澄み液を)との状態は
図2における容器(青色)の内容物のとおりであった。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
(2)2.(1)項における上澄み液を布地でろ過することによって、媒染剤を調製した。ろ液である媒染剤の外観は
図3における容器の内容物のとおりであった。
(3)
図3の媒染剤は、試料名「木質バイオマスボイラ燃焼灰上澄み液」として、地方独立行政法人「北海道立総合研究機構」に試験・分析を依頼した。同機構による試験・分析の結果は、以下のとおりであった。
pH 12.7
クロム(mg/L) 0.10
ニッケル(mg/L) 検出されず(定量下限 0.04)
上記試験・分析の結果から明らかなように、本発明に
よって提供される媒染剤には、媒染剤として広く一般的に使用されているクロムが微量ではあるが含有されている、と考えられる。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
3.染色の実施例1
(1)植物染料を得るために
図4に示す白樺の樹皮を用意した。
図4において、樹皮は10
L用のほうろう引きの白い容器にその容器の1/2程度にまで入れてある。その容器には、2.(2)項で調製した媒染剤を樹皮がひたひたにつかるところまで注ぎ入れた。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
(4)綿糸95質量%とレーヨン5質量%とを含むガーゼ生地を染色用素地として用意し、その素地は2.(2)項で調製した媒染剤(15~25℃)に30分間浸漬することによって先媒染処理を施した。媒染剤に浸漬中のガーゼ生地は、10分間に1回の割合で揺らすようにして泳がせ、ガーゼ生地と媒染剤とをむらなく接触させた。なお、本発明によって提供される媒染剤は、それを使用するときの効果の現れ方などを勘案して、つまり必要に応じて、その温度を25℃以上に設定することもできる。また、本発明では、本発明によって提供される媒染剤を使用した先媒染処理をアルカリ先媒染ということがある。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
4.染色の比較例1
(1)白樺の樹皮2kgを10L用のほうろう引きの容器に入れ、樹皮がひたひたになるところまで水道水を入れて約1時間、70~80℃で加熱した後にろ過して比較例としての染料(第1比較染料)とした。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
(3)染色用の素地である綿100%のタオル地を実施例1と同様に媒染剤に30分間浸漬して先媒染処理を施し、さらに、その後に濃染剤KLC-1(商品名)による濃染処理を施した。その濃染処理は、室温において80mlのKLC-1を水道水2Lと混合し、得られた混合液にタオル地を気泡が入らないように気をつけながら浸漬し、30~60分間放置するというものである。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
7.実施例1,2と比較例1,2との対比
(1)染色の実施例1と比較例1との染色状態は、
図6,7によって対比することができる。
図6は、本発明に
よって提供される媒染剤を先媒染に使用してガーゼ生地を染色したときの結果を示し、
図7はその媒染剤を使用しないでガーゼ生地を染色したときの結果を示している。両図のガーゼ生地のそれぞれは、第1染料と第1比較染料とのそれぞれに浸漬された状態にあるが、それでも、実施例1のガーゼ生地の方が比較例1のガーゼ生地よりも色濃く染色された状態にあることがわかる。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
(2)染色の実施例2と比較例2との染色状態は、
図9におけるAとBとのタオル地によって知ることができる。
図9においてAは色が濃く、Bは色が淡いことからわかるように、本発明に
よって提供される媒染剤を使用したアルカリ先媒染の有無が濃染処理を施したタオル地であっても、染色状態の違いとなって現れていることは明白である。肉眼で見ると、実施例2である
図9のAのタオル地は、濃いサーモンピンク色に染まり、洗濯を繰り返しても簡単には色落ちすることがなかった。一方、比較例である
図9のBのタオル地は、淡いサーモンピンク色に染まったが、洗濯を繰り返すと、容易に色落ちするという現象が見られた。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
8.染色の実施例3
(1)「2.媒染剤の調製」で使用したフライ・アッシュ500gを、水道水5Lに対して混合することにより得られた混合物を24時間静置した。その後に、その混合物をろ過することによって、媒染剤(第2媒染剤)を調製した。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
(4)ミントの葉100gと水道水3Lとを10L用のほうろう引きの容器に入れ、70~80℃で30分間加熱した後に、一度煮沸させてから加熱をやめ、所要の温度、例えば15~40℃になるまで放置した。その後に、上澄みの部分を布地でろ過し、ろ液を染料(第3染料)とした。
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
(5)2
Lの第3染料に水道水で湿らせた(2)項の2枚のハンカチのうちの1枚のハンカチを浸漬し、続いて1
Lの第2媒染剤を加えて30分間放置することによって後媒染処理を施した。その後に第3染料から引き上げたハンカチの状態は、
図11のハンカチCのとおりであった。
【手続補正25】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
9.染色の比較例3
(1)8.(2)項における2枚のハンカチのうちのもう1枚を2Lの第3染料に浸漬し、第2媒染剤を加えることなく30分間放置した。