(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035920
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/46 20060101AFI20220225BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220225BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220225BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220225BHJP
A61K 31/4365 20060101ALI20220225BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20220225BHJP
C12N 9/14 20060101ALN20220225BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
A61K38/46 ZNA
A61K45/00
A61P9/10
A61K31/519
A61K31/4365
A61K31/7076
C12N9/14
C12N15/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187268
(22)【出願日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】63/067,388
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2019年(令和1年)11月11日にウェブサイトのアドレスhttps://www.ahajournals.org/doi/10.1161/circ.140.suppl_1.11146において公開 (2)2019年(令和1年)11月18日に開催されたAmerican Heart Association’s 2019 Scientific Sessionsにおいてポスター発表
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】レイフ・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン・ニランデル
(72)【発明者】
【氏名】オーラ・フィエルストレーム
(72)【発明者】
【氏名】リナ・バディモン
【テーマコード(参考)】
4B050
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD11
4B050LL01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084DC22
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZC191
4C084ZC192
4C084ZC422
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086CB05
4C086CB08
4C086CB29
4C086EA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】心筋梗塞、及び急性虚血性脳卒中(AIS)などの虚血性イベントの治療に使用され得る効果的かつ安全な治療法、並びに再発性の虚血性イベントを予防し得る安全な治療法の提供。
【解決手段】組換えアピラーゼタンパク質をP2Y12阻害剤と併用して投与することによって、ST分節上昇型心筋梗塞及び急性虚血性脳卒中などの、患者における虚血性イベントを治療する。P2Y12阻害剤が、チカグレロル、クロピドグレル、チクロピジン、プラスグレル、及びカングレロルからなるリストから選択される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアピラーゼタンパク質をP2Y12阻害剤と併用して投与するステップを含む、患者における虚血性イベントを治療する方法。
【請求項2】
前記組換えアピラーゼタンパク質を前記P2Y12阻害剤と併用して前記患者に投与するステップを含む、患者における虚血性イベントを治療する方法で使用するための組換えアピラーゼタンパク質。
【請求項3】
前記組換えアピラーゼタンパク質を前記P2Y12阻害剤と併用して前記患者に投与するステップを含む、患者における虚血性イベントを治療する方法で使用するための組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤。
【請求項4】
前記P2Y12阻害剤を前記患者に投与するステップを含み、前記P2Y12阻害剤が組換えアピラーゼタンパク質と併用して投与される、患者における虚血性イベント治療する方法で使用するためのP2Y12阻害剤。
【請求項5】
前記組換えアピラーゼタンパク質及び前記P2Y12阻害剤を前記患者に同時投与するステップ、又は前記組換えアピラーゼタンパク質及び前記P2Y12阻害剤を前記患者に、任意選択的に同じ日に、逐次投与するステップを含む、請求項1に記載の方法、又は請求項2~4のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項6】
a.前記組換えアピラーゼタンパク質を前記患者に投与するステップと、それに続く前記P2Y12阻害剤を逐次投与するステップ;又は
b.前記P2Y12阻害剤を前記患者に投与するステップと、それに続く前記組換えアピラーゼタンパク質を逐次投与するステップ
を含む、請求項5に記載の方法、又は請求項5に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項7】
前記組換えアピラーゼタンパク質が、前記患者への前記P2Y12阻害剤の投与の24時間以内又は12時間以内に前記患者に投与される、請求項1、5又は6のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~6のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項8】
前記方法が、前記P2Y12阻害剤と併用して投与される前記組換えアピラーゼタンパク質の少なくとも24時間後に開始して、前記P2Y12阻害剤を前記患者に少なくとも毎日投与するステップをさらに含み、任意選択的に、これらの毎日の投与が、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、又は少なくとも6ヶ月間継続される、請求項1及び請求項5~7のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~7のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項9】
前記P2Y12阻害剤が、チカグレロル、クロピドグレル、チクロピジン、プラスグレル、及びカングレロルからなるリストから選択される、請求項1及び請求項5~8のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~8のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項10】
前記P2Y12阻害剤がチカグレロルである、請求項9に記載の方法、又は請求項9に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項11】
前記組換えアピラーゼタンパク質が、配列番号1の49~485位と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、可溶性CD39L3タンパク質である、請求項1及び請求項5~10のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~10のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項12】
前記組換えアピラーゼタンパク質が、配列番号1の49~485位に記載されるアミノ酸配列を有する参照CD39L3タンパク質と比較して、1つ又は複数の修飾を含み、前記修飾が、前記参照アピラーゼと比較して増加したADPアーゼ活性をもたらし、又は前記修飾が、前記参照アピラーゼと比較して減少したATPアーゼ活性と組み合わされた前記参照アピラーゼと同じADPアーゼ活性をもたらす、請求項11に記載の方法、又は請求項11に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項13】
前記組換えアピラーゼタンパク質が、前記参照CD39L3タンパク質と比較して67位及び69位に置換を含み、前記位置が配列番号1に従って番号付けされている、請求項12に記載の方法、又は請求項12に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項14】
前記67位の置換がグリシンにであり、前記69位の置換がアルギニンにである、請求項13に記載の方法、又は請求項13に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項15】
前記組換えアピラーゼタンパク質が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1及び請求項5~14のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~14のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項16】
前記組換えアピラーゼタンパク質が、10mg~1000mgの用量で投与される、請求項1及び請求項5~15のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~15のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項17】
a.前記P2Y12阻害剤がチカグレロルであり、60~200mg、任意選択的に180mgの用量で投与され;
b.前記P2Y12阻害剤がクロピドグレルであり、75~600mg、任意選択的に300mg又は600mgの用量で投与され;
c.前記P2Y12阻害剤がチクロピジンであり、250~500mg、任意選択的に500mgの用量で投与され;
d.前記P2Y12阻害剤がプラスグレルであり、5~60mg、任意選択的に60mgの用量で投与され;又は
e.前記P2Y12阻害剤がカングレロルであり、30μg/kgの静脈内ボーラスと、それに続く毎分4μg/kgの静脈内注入の用量で投与される、請求項1及び請求項5~16のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~16のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項18】
前記方法がアスピリンを前記患者に投与するステップをさらに含み、任意選択的に、前記アスピリンが50~325mgで投与される、請求項1及び請求項5~17のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~17のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項19】
前記虚血性イベントが急性虚血性脳卒中又は一過性虚血性発作である、請求項1及び請求項5~18のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~18のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項20】
前記虚血性イベントが急性冠動脈症候群である、請求項1及び請求項5~18のいずれか一項に記載の方法、又は請求項2~18のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項21】
前記虚血性イベントがSTセグメント上昇型心筋梗塞(STEMI)である、請求項20に記載の方法、又は請求項20に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項22】
前記組換えアピラーゼタンパク質が前記P2Y12阻害剤と併用して、前記虚血性イベントの発症後24時間以内、又は12時間以内、又は6時間以内に、前記患者に投与される、請求項20又は請求項21に記載の方法、又は請求項20又は請求項21に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【請求項23】
方法が、前記組換えアピラーゼタンパク質を前記P2Y12阻害剤と併用して投与した後、48時間未満、24時間未満、12時間未満、6時間未満に、前記患者に対して外科的又は非外科的再灌流療法を実施することをさらに含み、任意選択的に、前記外科的又は非外科的再灌流療法が、経皮的冠動脈介入(PCI)、血栓摘出術又は血栓溶解療法である、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法、又は請求項20~22のいずれか一項に記載の使用のための組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えアピラーゼタンパク質をP2Y12阻害剤と併用して投与することによって、特に、ST分節上昇型心筋梗塞及び急性虚血性脳卒中などの、患者における虚血性イベントを治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞(MI)は、世界各地で入院及び死亡の主要原因である((非特許文献1))。治療せずに放置すると、MIは血流不足(虚血)ひいては酸素不足のために、心筋に不可逆的な損傷をもたらす。したがって、MIの治療の主要な目標は、再灌流療法を通じて心筋損傷を減少させることを目的として、正常な冠状動脈血流の回復を促進することである。再灌流療法は、典型的には、血流を増加させて血栓症を軽減するための血栓溶解療法などの治療法の使用を伴い、経皮的冠動脈介入(PCI)などの外科的及び非外科的手法と組み合わされる。早期の再灌流及びPCIが好ましく、転帰の改善に結びついており、ガイドラインでは、PCIは、MI症状の発症から12時間以内に実施すべきであると提言されている((非特許文献2))。
【0003】
脳血管疾患は、脳への血液の循環に影響を与える状態を指し、急性虚血性脳卒中(AIS)及び一過性脳虚血性発作(TIA)が含まれる。脳血管疾患は、世界的な死亡と重度の長期障害の主要な原因である((非特許文献3)及び(非特許文献4))。MIと同様に、主要な目標は、再灌流療法を通じて脳組織損傷を減少させることを目的として、正常な脳血流の回復を促進することである。再灌流療法は、血栓摘出術などの介入技術と組み合わされる、血流量を増加させ血栓症を緩和するための血栓溶解療法などの治療の使用を伴う。早期の再灌流が好ましく、転帰の改善に結びついており、ガイドラインは、適格な患者では、症状の発症から4、5時間以内に血栓溶解再灌流を実施し、6時間以内に血栓摘出術を実施することを推奨している((非特許文献5))。
【0004】
血栓形成に対処して二次的な血栓性イベントを防ぐために、いくつかの治療戦略が利用可能であり、タンパク質ベース治療薬及び低分子治療薬の2つのクラスに分類される。低分子治療薬の例としては、クロピドグレル、チカグレロル、プラスグレル、及びカングレロルなどのP2Y12受容体阻害剤が挙げられ、これらは血小板を阻害して血栓を予防するそれらの能力について知られている。二次予防における心血管系の罹患率と死亡率の低下に対する、クロピドグレルとチカグレロルの双方の有効性は臨床試験で実証されており、どちらの薬剤も血栓性イベントの予防に使用することが承認されている。例えば、英国国立医療技術評価機構(NICE)は、急性冠動脈症候群(ACS)の成人のための治療法として、チカグレロルと低用量アスピリンの併用を最長12か月間推奨している。しかし、これらのP2Y12受容体阻害剤には出血のリスクを伴い、したがって患者が、処方情報と現行のガイドラインに従ってこの治療を受けるように、注意しなくてはならない。非心筋塞栓性AIS又はTIA後に、引き続く脳卒中のリスクを低下させる、現行の治療ガイドラインにおける最高レベルのエビデンスがある抗血小板剤はアスピリンであるが、クロピドグレルもまた使用される。最近、米国((非特許文献6))及び中国((非特許文献7))のガイドラインでは、AISとTIAの24時間以内のアスピリンとクロピドグレルの併用が推奨されており、チカグレロルとアスピリンについてもまた、アスピリン単独に優る恩恵が示されている((非特許文献8))。
【0005】
最近の研究では、組換えアピラーゼをタンパク質ベースの治療薬として使用することが検討されている。アピラーゼ(エクトATPジホスホヒドロラーゼ)は、ATPからADPへ、そしてADPからAMPへの代謝を触媒する酵素のグループを構成する。体内では、ATP及びADPのアピラーゼ誘導加水分解によって生成されたAMPが、遍在的に発現される細胞外CD73/エクト5’-ヌクレオチダーゼによってアデノシンに変換される。最初に知られたヒトアピラーゼであるCD39は、元来、活性化リンパ球及び内皮細胞上の細胞表面タンパク質として同定されており、様々な生体外及び生体内研究により、アピラーゼが血管の完全性を維持でき、炎症と血栓症を生理的に抑制できることが示されている((非特許文献9))。
【0006】
アピラーゼは、ATP及びADPのレベルを減少させることによって、ATP及びADPと、3つの全ての血小板P2受容体(P2X
1、P2Y
1、及びP2Y
12)との相互作用を減少させ、ひいては血小板の活性化と動員を阻害するように作用する。P2Y
12受容体の低分子阻害剤とは対照的に、ADP及びATPレベルを枯渇させるためのアピラーゼの使用は、前臨床モデルにおける出血レベルの増加をもたらさない。アピラーゼは、その抗血小板効果に加えて、心臓保護効果及び脳組織保護効果もまた有しており、これらは、i)炎症誘発性ATP及びADP分子の枯渇;及びii)下流のアピラーゼ作用を通じて産生された抗炎症性アデノシンのレベルの増加によって媒介されるものと理解される。内因性アピラーゼの作用機序のさらなる情報は、(非特許文献10)の
図1で提供される。
【0007】
(非特許文献10)は、ヒトCD39ファミリーのメンバーである可溶性CD39L3の組換え最適化形態の設計と製造について報告している。得られた組換えタンパク質は、「APT102」又は「AZD3366」と称される。著者らは、この組換えタンパク質が、天然アピラーゼよりも、4倍高いアデノシンジホスファターゼ活性及び50倍長い血漿半減期を示し、動物モデルにおけるAPT102による治療が、出血時間の増加なしに梗塞サイズを減少させたことを報告している。クロピドグレル単独での対応する治療は、このモデルでは心臓保護的ではなかった一方で、APT102とクロピドグレル治療を併用しても、APT102単独で見られた保護的有効性は変化しなかった((非特許文献10)の
図6)。(非特許文献11)は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)とAPT102の併用が、tPA又はAPT102単独と比較して、死亡率及び梗塞体積を減少させたことを報告している。データはまた、APT102が、出血性変化を増加させることなく、tPA媒介再灌流の治療可能時間域を安全に延長してもよいことを示唆する。
【0008】
チカグレロルなどのP2Y12受容体阻害剤を伴う、最適な抗血小板及び抗血栓療法にもかかわらず、新たな心筋梗塞イベントのリスクはなおも毎年約10%であり、これらの治療の強度を高めることは、有効性を改善せずに出血リスクを増加させる((非特許文献12);(非特許文献13))。クロピドグレル又はチカグレロルとアスピリンとを用いた二重抗血小板療法の恩恵を探究する、AIS/TIA患者における最近の研究は、急性期(イベント後1~3ヶ月間)における、残存する5~8%の新たな虚血性脳卒中イベントのリスクを示唆している((非特許文献14);(非特許文献15);(非特許文献8))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7247300B1号明細書
【特許文献2】欧州特許第2133430B1号明細書
【特許文献3】欧州特許第2523971B1号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/024045号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2017/182589号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Asaria et al.(2017)
【非特許文献2】Ibanez et al.(2018)
【非特許文献3】Roth et al.(2018)
【非特許文献4】Kyu et al.(2018)
【非特許文献5】Powers et al.(2018)
【非特許文献6】Power et al.(2018)
【非特許文献7】Wang et al.(2017)
【非特許文献8】Johnston et al.(2020)
【非特許文献9】Robson et al.(2005)
【非特許文献10】Moeckel et al.(2014)
【非特許文献11】Tan et al.(2014)
【非特許文献12】Wallentin et al.(2009)
【非特許文献13】Jernberg et al.(2015)
【非特許文献14】Wang et al.(2013)
【非特許文献15】Johnston et al.(2018)
【非特許文献16】Sun et al.(2011)
【非特許文献17】Moekel et al.(2015)
【非特許文献18】Altschul et al.(1990)
【非特許文献19】Pearson and Lipman(1988)
【非特許文献20】Smith and Waterman(1981)
【非特許文献21】Picher,et al.,Biochem.Pharmacol.(1938)51:1453
【非特許文献22】Baykov,et al.,Anal.Biochem.(1988)171:266
【非特許文献23】Gayle Ill,et al.(J.Clin Invest.(1998)101:1851-1859)
【非特許文献24】Marcus,A.J.,et al.(J.Clin Invest.(1991)88:1690-1696)
【非特許文献25】Thygesen et al.(2018)
【非特許文献26】Vilahur et al.(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、心筋梗塞、及び急性虚血性脳卒中(AIS)などの虚血性イベントの治療に使用され得る効果的かつ安全な治療法、並びに再発性の虚血性イベントを予防し得る安全な治療法に対する必要性が依然として存在する。本発明は、上記考察に鑑みて考案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、P2Y12阻害剤と併用した組換えアピラーゼタンパク質の投与が、P2Y12阻害剤単独の個々の使用と比較して、改善された心臓保護的恩恵を提供すると判定した。これは、併用治療が、心筋梗塞(例えば、ST上昇型心筋梗塞)などの心臓の虚血性イベント、及び急性虚血性脳卒中などの脳内の虚血性イベントの効果的な治療として使用され得て、例えば、虚血性イベント(例えば、心筋梗塞の結果として形成される心臓の損傷、又は急性虚血性脳卒中の結果として形成される脳損傷)に起因する傷害を予防又は改善するために、及び再発性虚血性イベントを予防するために、使用され得ることを示唆する。
【0013】
特に、本発明者らは、P2Y
12(例えば、チカグレロル)阻害剤と併用した組換えアピラーゼタンパク質(例えば、AZD3366)の投与が、心筋梗塞(MI)の動物モデルにおいて、梗塞サイズを減少させ心機能を改善するのに驚くほど効果的であることを実証した。これは、P2Y
12阻害剤の使用が、AZD3366単独で観察された心臓保護効果に影響を与えないと報告する、(非特許文献10)の
図6で報告された結果に反している。
【0014】
さらに、理論による拘束は望まないが、併用治療によって提供される改善された心臓保護効果は、細胞外アデノシンレベルの増加をもたらすP2Y12阻害剤によって、少なくとも部分的に引き起こされると考えられる。AZD3366の心臓保護効果には、細胞外アデノシンのレベルの増加も含まれると報告されているため、同じ経路に作用し、同じ最終産物のレベルを調節する2つの薬剤(P2Y12阻害剤及び組換えアピラーゼタンパク質)の併用が、単剤のみの使用で観察されるよりも高い心臓保護効果を誘導することは予想外であった。
【0015】
チカグレロルと併用してAZD3366を投与しても、チカグレロル単独と比較して、動物モデルにおける出血レベルを有意に増加させないこともまた判定された。このことは、例えば、P2Y12阻害剤が既に承認されている病状を治療するためのP2Y12阻害剤の単独使用と比較して、併用療法を使用しても出血増加の観点から有意な追加的なリスクがないことを示唆するので、重要である。
【0016】
これらの結果は、同じ経路又は相補的な経路上で、抗血小板活性を増加させ又は抗血栓活性を増加させることが、任意の有益な有効性の効果との組み合せで、出血のリスクを増加させることが一貫して観察された、以前の臨床試験からの観察とは対照的である。
【0017】
このように、提案された併用は、MIなどの状況において、同じ生物学的経路に起因する効果を標的化して強化することによって、純臨床便益が改善され得る、予想外の最初の例である。
【0018】
したがって、本開示の一態様は、組換えアピラーゼタンパク質をP2Y12阻害剤と併用して投与することを含む、患者における虚血性イベントを治療する方法を提供する。
【0019】
別の態様では、本開示は、組換えアピラーゼタンパク質を患者に投与することを含む、患者における虚血性イベントを治療する方法で使用するための組換えアピラーゼタンパク質を提供し、組換えアピラーゼタンパク質はP2Y12阻害剤と併用して投与される。
【0020】
さらなる態様では、本開示は、組換えアピラーゼタンパク質をP2Y12阻害剤と併用して患者に投与することを含む、患者における虚血性イベントを治療する方法で使用するための組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤を提供する。
【0021】
なおも別の態様では、本開示は、P2Y12阻害剤を患者に投与することを含む、患者における虚血性イベントを治療する方法で使用するためのP2Y12阻害剤を提供し、P2Y12阻害剤は組換えアピラーゼタンパク質と併用して投与される。
【0022】
別の態様では、本開示は、患者における虚血性イベントを治療するための薬剤の製造における、組換えアピラーゼタンパク質及び/又はP2Y12阻害剤の使用を提供し、治療は、組換えアピラーゼタンパク質をP2Y12阻害剤と併用して患者に投与することを含む。
【0023】
P2Y12阻害剤は、チカグレロル、クロピドグレル、チクロピジン、プラスグレル、及びカングレロルからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、P2Y12阻害剤は、チカグレロル、クロピドグレル、及びプラスグレルからなる群から選択される。好ましくは、P2Y12阻害剤は、チカグレロル又はクロピドグレルである。さらにはより好ましくは、P2Y12阻害剤は、チカグレロルである。
【0024】
組換えアピラーゼタンパク質は、組換えヒトCD39L3アピラーゼ、任意選択的に可溶性組換えヒトCD39L3アピラーゼであってもよい。アピラーゼは、(特許文献1)、(特許文献2)、及び(特許文献3)のいずれか1つに記載されるような、可溶性CD39L3又はADPアーゼ強化アピラーゼであってもよい。例示的な組換えヒトCD39L3アピラーゼは、配列番号2として本明細書に提供される。
【0025】
いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、配列番号1の49~485位と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む、可溶性CD39L3タンパク質であり、組換えアピラーゼタンパク質はADPアーゼ活性及びATPアーゼ活性を保つ。いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、参照アピラーゼと比較して、1つ又は複数の修飾(例えば、アミノ酸置換)を含み、前記参照アピラーゼは、野生型アピラーゼ(例えば、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有するアピラーゼ)又は可溶性アピラーゼ(例えば、配列番号1の49~485位に記載されるアミノ酸配列を有する可溶性アピラーゼ)であってもよい。
【0026】
これらの修飾は、参照アピラーゼと比較して増加したADPアーゼ活性をもたらしてもよく、又は参照アピラーゼと比較して減少したATPアーゼ活性と組み合わされた参照アピラーゼと同じADPアーゼ活性をもたらしてもよい。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の修飾は、67位及び69位における置換を含んでもよく、又はそれからなってもよく、位置は配列番号1に従って番号付けされている。67位の置換はグリシンであってもよく、69位の置換はアルギニンであってもよく、又は67位の置換はアラニンであってもよく、69位の置換はアルギニンであってもよい。好ましくは、67位の置換はグリシンであり、69位の置換はアルギニンである。
【0027】
いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列(AZD3366)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。特に例示的な実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
場合によっては、虚血イベントが発生したときに、患者は既に、P2Y12阻害剤による治療を受けていてもよい。例えば、急性冠動脈症候群(ACS)の治療におけるチカグレロルの処方情報は、180mgの「負荷」用量で治療を開始し、次に、ACSイベント後最初の1年間は90mgの「維持」用量を1日2回投与し、1年後は60mgを1日2回投与することを記載する。したがって、患者は、過去2年間に以前の虚血性イベントを経験していてもよく、ここで治療されている虚血性イベントが発生したときに、例えば、チカグレロルの1日2回服用などのP2Y12阻害剤による長期治療を現在受けていてもよい。上述したように、最適抗血小板及び抗血栓療法にもかかわらず、新たな虚血性イベントが発生するリスクが残っている。
【0029】
例えば、患者は、本方法が実施されるのに先だって72時間前、又は36時間前、又は48時間前、又は24時間前、又は20時間前、又は16時間前、又は12時間前、又は8時間前、又は6時間前に、P2Y12阻害剤を受け(投与され)ていてもよい。例えば、P2Y12阻害剤がチカグレロルである場合などのいくつかの実施形態では、患者は、8~16時間前、例えば12時間前にP2Y12阻害剤を投与されている(すなわち、1日2回投与される維持用量の一部として)。
【0030】
その他の場合には、患者は現在P2Y12阻害剤による治療を受けていなくてもよい。このような患者は、「ナイーブ」患者として記載されている。これは、患者がP2Y12阻害剤を投与されたことがない状況、並びに患者が以前にP2Y12阻害剤を投与されたことがあるが、本方法を実施する前の少なくとも24時間、48時間、72時間又は1週間に、投与が実施されていない状況を含む。
【0031】
好ましい実施形態では、方法は、組換えアピラーゼタンパク質に加えて、患者(例えば、P2Y12阻害剤による治療又は別の治療を受けている患者、又はナイーブ患者)に、P2Y12阻害剤を投与することを含む。典型的に、方法は、例えば、同時又は逐次など、別々に投与される別々の製剤として、P2Y12阻害剤及び組換えアピラーゼタンパク質を投与することを含む。熟練した医師又はその他の熟練した医療関係者は、患者に各治療剤を投与する最適な投与様式を決定し得る。
【0032】
逐次投与が用いられる場合、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤は、好ましくは、互いに24時間、12時間、1時間以内、又はより好ましくは30分以内に投与される。いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質が最初に投与され、P2Y12阻害剤の逐次投与がそれに続く。いくつかの実施形態では、P2Y12阻害剤が最初に投与され、組換えアピラーゼタンパク質の逐次投与がそれに続く。
【0033】
いくつかの実施形態では、治療される虚血性イベントは、急性冠動脈症候群である。急性冠動脈症候群としては、ST分節上昇型心筋梗塞(STEMI)、非ST分節上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、及び不安定狭心症が挙げられる。好ましい実施形態では、治療される虚血性イベントは、患者におけるST分節上昇型心筋梗塞(STEMI)である。
【0034】
本明細書で実証されるように、組換えアピラーゼタンパク質(例えば、AZD3366)とP2Y12阻害剤(例えば、チカグレロル)の併用投与は、心筋梗塞の前臨床動物モデルにおいて心臓保護効果をもたらし、それは、プラセボ及びP2Y12阻害剤のみを使用した治療と比較して、梗塞サイズを減少させ心機能を改善した。以上のように、心筋梗塞に続く早期再灌流が好ましく、転帰の改善に結びついている。したがって、急性冠動脈症候群(例えば、STEMI)に罹患した患者における、P2Y12阻害剤と併用したアピラーゼタンパク質の投与は、好ましくは、急性冠動脈症候群の発症に続いてできる限り速やかに、好ましくは、患者が経皮的冠動脈介入(PCI)を受ける前など、患者が経皮的冠動脈介入(PCI)を受ける時点に可能な限り近い時点で、実行されなければならない。
【0035】
その他の実施形態では、治療される虚血性イベントは、急性虚血性脳卒中である。毎年、7万人の人口当たり100人の新しい患者が虚血性脳卒中を発症する。治療なしでは、55人の患者は1年以内に死亡し、又は介助が必要になる。100人の患者のほとんどは軽度又は一過性の脳卒中を有し、抗血小板薬のみが投与されて再発が減少される。約25~35人の患者は再灌流療法を受け、それによって5~6人の患者は死亡又は介助の必要から救われ、障害なしの患者が増加する。したがって、急性虚血性脳卒中(AIS)に関連する罹患率と死亡率を低下させることは、満たされていない臨床的必要性である。
【0036】
前臨床試験及び臨床試験では、虚血性脳卒中イベント後に脳卒中を治療及び/又は予防するためのP2Y12阻害剤とアスピリンの使用が評価されている。さらに、前臨床データは、組換えアピラーゼタンパク質AZD3366を使用して、虚血性脳卒中の動物モデルにおいて、再灌流が促進され、再閉塞が減少し、脳内出血が減少され得ることを実証している((非特許文献16);(非特許文献11))。したがって、AZD3366とP2Y12阻害剤の併用投与に関連した、本明細書に記載される前臨床心筋梗塞動物モデルにおける有益な結果は、虚血性脳卒中の治療においてもまた有益であり得ることが認識された。例えば、併用療法は、虚血性脳卒中に罹患した患者における梗塞サイズを減少させ及び/又は脳損傷を減少させてもよく、この効果は、再発性の虚血性イベントの予防に加えて、P2Y12阻害剤単独と比較して出血のリスクを顕著に増加させることなく達成されてもよい。
【0037】
下でさらに詳述されるように、経口P2Y12阻害剤の作用発現にかかる時間は典型的に数時間であり、これは、虚血性イベント(例えば、急性冠動脈症候)の発症後、P2Y12阻害剤が非常に早い時期に投与されたとしても、関連する損傷(例えば、心筋梗塞の結果として形成される心臓損傷)又は再発性虚血性イベントのリスクから、患者が保護されない数時間の期間があることを意味する。対照的に、組換えアピラーゼタンパク質AZD3366は、前臨床モデルにおいて、静脈内投与の数分以内に高レベルの活性を示し、用量次第で24時間を超えてこの活性を維持することが示されている((非特許文献17))。したがって、組換えアピラーゼタンパク質を早期に投与することで、十分なレベルのP2Y12阻害剤が、その抗血栓効果を主に発揮するために患者の血流中で生物学的に利用可能になる前に、心筋梗塞又はAISの初期段階において、抗血栓効果及び組織保護効果が提供されることが認識された。
【0038】
したがって、いくつかの実施形態では、虚血性イベント(例えば、STEMIなどの急性冠動脈症候群、又はAIS又はTIAなどの急性脳血管性イベント)の発症後、24時間以内、又は18時間以内、又は12時間以内、又は6時間以内、又は4時間以内、又は2時間以内、又は1時間以内、又は30分以内に、組換えアピラーゼタンパク質がP2Y12と併用して患者に投与される。いくつかの実施形態では、方法は、P2Y12阻害剤と併用した組換えアピラーゼタンパク質の投与に続いて、48時間未満、24時間未満、12時間未満、6時間未満、3時間未満、2時間未満、又は1時間未満に、外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、PCI、血栓摘出術又は血栓溶解療法)を患者に実施することをさらに含む。特定の実施形態では、虚血性イベントは心筋梗塞(例えば、STEMI)であり、再灌流療法はPCIである。特定の実施形態では、虚血性イベントはAISであり、再灌流療法は血栓摘出術である。特定の実施形態では、虚血性イベントは心筋梗塞(例えば、STEMI)又はAISであり、再灌流療法は血栓溶解療法(例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター)である。特定の実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤は、外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、PCI、血栓摘出術又は血栓溶解療法)の間に、患者の血流中で生物学的に利用可能であり続ける。
【0039】
いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、10~1000mgの用量で投与される。
【0040】
いくつかの実施形態では、P2Y12阻害剤はチカグレロルであり、例えば、60mg、90mg、120mg又は180mgなどの60~200mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、チカグレロルは、その推奨負荷用量である180mgで投与される。
【0041】
いくつかの実施形態では、P2Y12阻害剤はクロピドグレルであり、例えば、75mg、150mg、225mg、300mg、375mg、450mg、525mg又は600mgなどの75~600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、クロピドグレルは、その推奨負荷用量である300mg又は600mgで投与される。
【0042】
いくつかの実施形態では、P2Y12阻害剤はチクロピジンであり、例えば、250mg又は500mgなどの250~500mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、チクロピジンは、その推奨負荷用量である500mgで投与される。
【0043】
いくつかの実施形態では、P2Y12阻害剤はプラスグレルであり、例えば、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、又は60mgなどの5~60mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、プラスグレルは、その推奨負荷用量である60mgで投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、P2Y12阻害剤がカングレロルであり、30μg/kgの静脈内ボーラスと、それに続く毎分4μg/kgの静脈内注入の用量で投与される。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法は、例えば、組換えアピラーゼタンパク質がP2Y12阻害剤及びアスピリンと併用して投与されるように、アスピリンを患者に投与することをさらに含む。これらの実施形態では、方法は、典型的には、例えば、同時又は逐次など、別々に投与される別々の製剤として、組換えアピラーゼタンパク質、P2Y12阻害剤及びアスピリンを投与することを含む。アスピリンは、50~325mgの用量で投与されてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、方法は、例えば、組換えアピラーゼタンパク質がP2Y12阻害剤及び血栓溶解療法と併用して投与されるように、血栓溶解療法(例えば、tPA)を患者に投与することをさらに含む。これらの実施形態では、方法は、典型的には、例えば、同時又は逐次など、別々に投与される別々の製剤として、組換えアピラーゼタンパク質、P2Y12阻害剤、及び血栓溶解療法を投与することを含む。
【0047】
本発明のもう一つの態様は、本明細書に記載される組換えアピラーゼタンパク質とP2Y12阻害剤とを含むキットに関し、任意選択的に、キットはアスピリンをさらに含む。
【0048】
本発明は、このような組み合わせが明らかに禁忌であるか、又は明示的に回避される場合を除き、記載される態様及び好ましい特徴の組み合わせを含む。
【0049】
ここで添付の図面を参照して、本発明の原理を例示する実施形態及び実験を論じる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】心筋梗塞のブタ動物モデルにおける梗塞サイズ減少及び心機能改善の観点から、組換えアピラーゼタンパク質AZD3366の投与が、チカグレロル単独の投与に比べて、追加的な恩恵な利点を与えたかどうかを調べるために用いた実験プロトコルを図示する。BSL=ベースライン;MI=心筋梗塞;Sac=殺処分。
【
図2】チカグレロル(T)の投与、1mg/kgのAZD3366(AZD1)の投与、3mg/kgのAZD3366(AZD3)の投与、及びAZD3366とチカグレロルの併用投与(T+AZD1)に続いて測定された出血量を示す、マウス尾部出血実験から得られた結果を示す。結果は、AZD3366とチカグレロルの併用投与が、チカグレロル単独(T)で見られた以上に出血量を増加させなかったことを実証する。平均±SEMが示される。ns;有意でない、***;P<0.001(一方向ANOVA+ダネット(Dunnet’s)の多重比較検定)。
【発明を実施するための形態】
【0051】
ここで添付の図面を参照して、本発明の態様及び実施形態を論じる。さらなる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。本文中に記載される全ての文献は、参照により本明細書に援用される。
【0052】
組換えアピラーゼタンパク質
アピラーゼ(EC3.6.1.5)は、アデノシン三リン酸(ATP)からアデノシン一リン酸(AMP)への、アデノシン二リン酸(ADP)からAMPへのリン酸無水結合の加水分解を触媒する。CD39ファミリーメンバー(エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ(E-NTPDアーゼ)ファミリーメンバーとも称される)は、最も良く特性解析されたアピラーゼのいくつかに相当する。ヒトCD39ファミリーメンバーとしては、以下の表に記載されるような天然タンパク質が挙げられる。
【0053】
【0054】
いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、組換えヒトアピラーゼタンパク質又はその操作されたバージョンである。いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、組換えヒトアピラーゼタンパク質又はその操作されたバージョンの断片である。一般に、本発明の組換えヒトアピラーゼタンパク質又はその操作されたバージョンに関して本明細書で使用される「断片」という用語は、全長タンパク質の酵素活性(ADPアーゼ及びATPアーゼ活性など)を保つ、N末端及び/又はC末端短縮タンパク質に関する。いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、例えば、上記の表に記載される天然タンパク質又はその操作されたバージョンのいずれかなどのCD39ファミリーのメンバーである。
【0055】
組換えアピラーゼタンパク質は、例えば、CD39ファミリーのメンバーであってもよいアピラーゼタンパク質の膜貫通ドメインを構成するアミノ酸残基の一部又は全部を欠くアピラーゼタンパク質などの、可溶性組換えヒトアピラーゼタンパク質であってもよい。例えば、ヒトCD39L3は、配列番号1に示される529アミノ酸残基のタンパク質であり、特定の例示的な可溶性CD39L3アピラーゼタンパク質は、配列番号1の49~485位に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0056】
組換えアピラーゼタンパク質の文脈における、「操作された」又は「その操作されたバージョン」という用語は、操作されたタンパク質が、参照アピラーゼタンパク質と類似しているが同じではないアミノ酸配列を有することを意味する。配列同一性は、一般には、アルゴリズムGAP(Wisconsin GCGパッケージ、Accelerys Inc,San Diego USA)を参照して定義される。GAPはNeedleman and Wunschアルゴリズムを用いて、2つの完全な配列を整列させ、一致数を最大化させてギャップ数を最小化させる。GAPの使用が好ましくあってもよいが、例えば、一般にデフォルトパラメータを用いて、BLAST((非特許文献18)の方法を使用する)、FASTA((非特許文献19)の方法を使用する)、又はSmith-Watermanアルゴリズム((非特許文献20))、又は前出の(非特許文献18)のTBLASTNプログラムなどのその他のアルゴリズムが用いられてもよい。特に、psi-Blastアルゴリズムが用いられてもよい。
【0057】
参照アピラーゼタンパク質は、野生型アピラーゼタンパク質(例えば、完全長のCD39L3アピラーゼタンパク質)又は可溶性アピラーゼタンパク質(例えば、配列番号1の49~485位に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質)であってもよい。操作された組換えアピラーゼタンパク質は、例えば、参照アピラーゼと比較して酵素活性(例えば、ADPアーゼ活性)を変化させる置換、及び/又は参照アピラーゼの酵素活性を実質的に変化させない機能的に保存的な置換などの1つ又は複数のアミノ酸置換を含んでもよい。操作された組換えアピラーゼタンパク質は、例えば、タンパク質のN又はC末端に、参照アピラーゼの酵素活性(例えば、ADPアーゼ及びATPアーゼ活性など)を実質的に変化させない、1つ又は複数のアミノ酸欠失又は付加を含んでもよい。操作された組換えアピラーゼタンパク質は、参照アピラーゼタンパク質と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を有してもよい。例えば、配列番号2(AZD3366)に記載される組換えアピラーゼタンパク質は、配列番号1の49~485位に記載されるアミノ酸配列を有する、可溶性CD39L3アピラーゼタンパク質の操作されたバージョンである。
【0058】
好ましい実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、CD39L3タンパク質又はその操作されたバージョンである。組換えアピラーゼタンパク質は、配列番号1と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を有してもよい。なおもより好ましい実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、可溶性CD39L3タンパク質又はその操作されたバージョンである。組換えアピラーゼタンパク質は、配列番号1の49~485位に記載されるアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を有してもよい。
【0059】
CD39L3の操作されたバージョン(例えば、強化アピラーゼ)を含む可溶性組換えアピラーゼタンパク質の設計、製造、及び使用は、それらの全体が参照により本明細書に援用される、(特許文献1)、(特許文献2)、及び(特許文献3)に記載される。本明細書に記載される組換えアピラーゼタンパク質は、これらの公開に記載されるアピラーゼのいずれかであってもよい。
【0060】
(特許文献2)は、ADPアーゼ強化アピラーゼを記載する。これらのADアーゼ強化アピラーゼは、参照アピラーゼの修飾形態を含み、修飾は、参照アピラーゼと比較して増加したADPアーゼ活性をもたらし、又は参照アピラーゼと比較して減少したATPアーゼ活性と組み合わされた参照アピラーゼと同じADPアーゼ活性をもたらす。例示的なADPアーゼ強化アピラーゼとしては、CD39L3の67位及び69位に置換を含むものが挙げられ、ここで位置番号付けは配列番号1に従う。具体的には、ADPアーゼ強化アピラーゼとしては、R67G置換及びT69R置換を含むタンパク質8742;及びR67A置換及びT69R置換を含むタンパク質8906が挙げられる。
【0061】
この活性を決定するために使用される例示的なATPアーゼ及びADPアーゼアッセイは、(特許文献2)で開示される。例えば、可精製された溶性ADPアーゼ強化アピラーゼのATPアーゼ及びADPアーゼ酵素活性は、8mM CaCl2、200μM基質(ATPアーゼのためのATP又はADPアーゼのためのADP)、50mMイミダゾール、及び50mMトリス、pH7.5を含有する1mlの溶液中で、37℃で測定され得る((非特許文献21))。反応は停止され、放出された無機リン酸塩は、0.25mlのマラカイトグリーン試薬の添加によって測定され得る((非特許文献22))。630nmでの分光光度分析に基づき、ATPアーゼ(又はADPアーゼ)の1単位は、37℃で1分当たりの1μmoleの無機リン酸塩の放出に相当する。Kmやkcatなどの酵素の重要な運動定数は、例えば、ミカエリス・メンテン式にデータを当てはめることによって得られてもよい。生化学的機能のモニタリングに有用なその他のアッセイとしては、これらに限定されるものではないが、どちらも(非特許文献23)によって記載される放射線測定法、HPLCアッセイ;又は(非特許文献24)によって記載されるラジオTLCアッセイが挙げられる。
【0062】
したがって、本明細書に記載される組換えアピラーゼタンパク質は、配列番号1の49~485位として記載されるアミノ酸配列を有する参照アピラーゼ(すなわち、CD39L3の可溶性バージョン)と比較して、1つ又は複数の修飾(例えば、アミノ酸置換)を含んでもよい。これらの修飾は、参照アピラーゼと比較して増加したADPアーゼ活性をもたらしてもよく、又は参照アピラーゼと比較して減少したATPアーゼ活性と組み合わされた参照アピラーゼと同じADPアーゼ活性をもたらしてもよい。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の修飾は、67位及び69位における置換を含んでもよく、又はそれからなってもよく、位置は配列番号1に従って番号付けされている。67位の置換はグリシンであってもよく、69位の置換はアルギニンであってもよく、又は67位の置換はアラニンであってもよく、69位の置換はアルギニンであってもよい。好ましくは、67位の置換はグリシンであり、69位の置換はアルギニンである。
【0063】
(特許文献3)は、例えば、80%を超えるアピラーゼ分子上が、同じEVLP構成N末端を有するような均質なN末端を含むアピラーゼと、アピラーゼを製造する方法とを記載する。均質な(homogenous)N末端を有するこれらのタンパク質は、3.0~4.5の範囲の平均等電点を有すること、及び/又はウサギ及びブタにおける改善された半減期を有することが記載されている。
【0064】
したがって、本明細書に記載される組換えアピラーゼタンパク質は、(特許文献3)に記載されるように、80%を超えるアピラーゼ分子が同じN末端を有するような均質な(homogenous)N末端を含んでもよく、このN末端はEVLPである。
【0065】
特定の実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、(例えば、上記のADPアーゼ強化アピラーゼにおける置換に加えて)、1つ又は複数の機能的に保存的な置換をさらに含んでもよい。機能的に保存的な置換は、同等の非置換タンパク質と比較して、1つ又は複数の機能的特性(例えば、酵素活性)に影響を与えない(又は実質的に影響を与えない)置換である。いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の機能的に保存的な置換を含む。
【0066】
好ましい実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、配列番号2と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含み、任意選択的に、67位のアミノ酸残基はグリシンであり、69位のアミノ酸残基はアルギニンであり、位置は、配列番号1に従って番号付けされている。例えば、組換えアピラーゼタンパク質は、1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の)機能的に保存的な置換を有する、配列番号2のアミノ酸配列を含んでもよく、任意選択的に、67位のアミノ酸残基はグリシンであり、69位のアミノ酸残基はアルギニンであり、位置は配列番号1に従って番号付けされている。例示的な実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0067】
P2Y12阻害剤
P2Y12阻害剤は、チカグレロル、クロピドグレル、チクロピジン、プラスグレル、及びカングレロルからなるリストから選択されてもよい。本明細書における、P2Y12阻害剤への言及は、これらの化合物のいずれか、並びに例えば活性代謝産物などの任意の代謝産物を含む。いくつかの実施形態では、P2Y12阻害剤は、例えば、チカグレロル、クロピドグレル、及びプラスグレルからなるリストから選択されるなど、チカグレロル、クロピドグレル、チクロピジン、及びプラスグレルからなるリストから選択されてもよい。好ましい実施形態では、P2Y12阻害剤は、チカグレロル又はクロピドグレルであってもよい。特に好ましい実施形態では、P2Y12阻害剤は、チカグレロルである。
【0068】
チカグレロル[(1S,2S,3R,5S)-3-[7-[[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-シクロペンタンジオール]は、可逆的に結合する経口P2Y(12)受容体拮抗薬である。チカグレロルはまた、受動拡散型ヌクレオシド輸送体-1(ENT-1)を阻害することによって、局所的な内因性アデノシンレベルを増加させ、アデノシン誘導応答を強化することが記録されている。チカグレロルは、急性冠動脈症候群及び以前の心筋梗塞がある患者における血栓性イベントの予防について承認されており、AIS及び一過性虚血性発作については、規制当局へ申請中である。これは、以下の化学構造を有する:
【化1】
【0069】
チカグレロルは、米国及び欧州をはじめとする複数の所管範囲において使用が承認されている、BRILINTA(登録商標)(又は欧州ではBRILIQUE)として知られている医薬品の有効成分である。チカグレロルは、現在、60mg及び90mgの即時放出錠剤の形で市販されている。(特許文献4)は、経口投与のためのチカグレロルを含有する特定の医薬製剤を開示する。(特許文献5)は、チカグレロルの急速崩壊経口剤形を開示する。
【0070】
チカグレロルは、典型的に経口投与後に迅速に吸収される。クロピドグレル及びプラスグレルとは異なり、チカグレロルはプロドラッグでなく、活性のために代謝活性化を必要としない。それにもかかわらず、チカグレロルは広範囲に代謝され、チカグレロル及びその活性でおよそP2Y12等効力の代謝産物(AR-C124910XX)が、血漿中の主要な循環成分を構成する。チカグレロル及びその活性代謝産物の血漿濃度は、用量依存様式で増加し;ピーク濃度はそれぞれ、約1.5時間及び2.5時間以内に達成される。血小板凝集の最大阻害は、投与後およそ2時間で観察され、これは投与後8時間を超えて維持される。チカグレロル及びその活性代謝産物の平均排出半減期は、薬剤ラベルにそれぞれ、7時間及び9時間と記載されている。中止に続いて、血小板活性は5日後にベースラインに戻る。
【0071】
好ましい実施形態では、チカグレロルは、組換えアピラーゼタンパク質と併用して、180mgの負荷用量で経口投与される。チカグレロルは、例えば、(特許文献5)に記載されるように、口内分散性錠剤(ODT)の形態で投与されてもよい。1つ又は複数の後続の維持用量が、負荷用量の後に、例えば、組換えアピラーゼタンパク質なしで投与されてもよい。上記のとおり、180mgの初期負荷用量に続いて、チカグレロルの処方情報は、ACSイベント後最初の1年間は90mgの維持用量を1日2回投与し、1年後は60mgを1日2回投与することを記載する。1つ又は複数の後続の維持用量は、1日2回90mgの用量のチカグレロル、又は1日2回60mgの用量のチカグレロルを含んでもよい。処方情報は、チカグレロルを1日75~100mgの維持用量のアスピリンと共に投与することをさらに記載する。したがって、1つ又は複数の後続の維持用量は、75~100mgの1日用量のアスピリンを投与することをさらに含んでもよい。
【0072】
P2Y12受容体阻害剤は、クロピドグレルであってもよい。クロピドグレルは、通常、経口経路で投与される。いくつかの実施形態では、クロピドグレルは、組換えアピラーゼタンパク質と併用して、300mg又は600mgの負荷用量で投与される。1つ又は複数の後続の維持用量は、約75mgのクロピドグレルを含んでもよく、負荷用量の後に、例えば、組換えアピラーゼタンパク質なしで投与されてもよい。上記のチカグレロルと同様に、クロピドグレルの維持用量が、75~100mgの1日用量のアスピリンと共に投与されてもよい。
【0073】
クロピドグレルはプロドラッグであり、その活性のために代謝活性化を必要とする。活性代謝産物のピーク血漿濃度は、経口用量に続いておよそ30~60分で発生し、投与に続いて約2時間で用量依存的血小板凝集抑制が観察され、約8時間後にピーク血小板阻害が観察される。単回用量に続いて、2時間で用量依存的血小板凝集阻害が観察される。クロピドグレルが、75mgの単回投与に続いておよそ6時間の排出半減期を有する一方で、その活性代謝産物は、およそ30分間の排出半減期を有する。中止後、血小板凝集及び出血時間は、約5日間で徐々にベースラインに戻る。
【0074】
P2Y12受容体阻害剤は、プラスグレルであってもよい。プラスグレルは、典型的に経口経路で投与される。いくつかの実施形態では、プラスグレルは、組換えアピラーゼタンパク質と併用して、60mgの負荷用量で投与される。1つ又は複数の後続の維持用量は、約5mg又は10mgのプラスグレルを含んでもよく、負荷用量の後に、例えば、組換えアピラーゼタンパク質なしで投与されてもよい。上記のチカグレロルと同様に、プラスグレルの維持用量が、75~100mgの1日用量のアスピリンと共に投与されてもよい。
【0075】
プラスグレルはプロドラッグであり、薬理学的活性代謝産物に迅速に代謝される。活性代謝産物のピーク血漿濃度は投与の約30分後に発生し、約2時間で血小板阻害のピークに達する。それは、約7.4時間の排出半減期を有する。
【0076】
P2Y12受容体阻害剤は、チクロピジンであってもよい。チクロピジンは、典型的に経口経路で投与される。いくつかの実施形態では、チクロピジンは、典型的に経口経路で投与される。いくつかの実施形態では、チクロピジンは、組換えアピラーゼタンパク質と併用して、500mgの負荷用量で投与される。1つ又は複数の後続の維持用量は、約250mgのチクロピジンを含んでもよく、負荷用量の後に、例えば、組換えアピラーゼタンパク質なしで投与されてもよい。上記のチカグレロルと同様に、チクロピジンの維持用量が、75~100mgの1日用量のアスピリンと共に投与されてもよい。
【0077】
チクロピジンのピーク血漿レベルは、典型的に経口投与の約2時間後に観察される。単回投与に続く半減期は、7~13時間の範囲である。反復投与に続く半減期は、約4~5日間である。
【0078】
P2Y12受容体阻害剤は、カングレロルであってもよい。カングレロルは、ボーラスとして、持続注入として、又はボーラスとそれに続く持続注入として、静脈内投与されてもよい。いくつかの実施形態では、カングレロルは、30μg/kgの静脈内ボーラスとして投与され、毎分4μg/kgの静脈内注入が即座にそれに続く。
【0079】
カングレロルは、注入開始から30分以内に迅速に定常状態の血漿レベル及び血小板凝集阻害に達し、血漿半減期は短く、約9分未満である。最大血小板阻害は、15分以内に達成される。カングレロルの排出半減期は約3~6分間であり、血小板応答は典型的に、中止の15分以内にベースラインに戻る。
【0080】
治療及び投与
本明細書に記載される使用のための方法及び製品は、患者(例えば、ヒト患者)における虚血性イベントを治療するためのものであり、これには、血液供給が、例えば、患者の心臓又は脳など患者の身体の特定の部分に制限されている疾患及び障害が含まれ、制限は血餅(血栓)に起因してもよい。心臓における虚血性イベントとしては、急性冠動脈症候群が挙げられる。脳内の虚血性イベントは急性脳血管性イベントと称され、急性虚血性脳卒中(AIS)及び一過性虚血性発作(TIA)が含まれる。急性冠動脈症候群としては、ST分節上昇型心筋梗塞(STEMI)又は非ST分節上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に分類される心筋梗塞、及び不安定狭心症が含まれる。好ましい実施形態では、治療は、患者におけるST分節上昇型心筋梗塞(STEMI)の治療である。
【0081】
心筋梗塞は、一般に臨床的にSTEMI及びNSTEMIに分類される。これらは心電図(ECG)の変化に基づいており、医師又はその他の熟練した医療関係者によって診断され得る。心筋梗塞のタイプは、(非特許文献25)に記載された心筋梗塞の普遍的な定義に準拠して定義されたもの、又はそれに由来するものであってもよい。
【0082】
本明細書に記載される治療方法では、組換えアピラーゼタンパク質は、P2Y12阻害剤と併用して投与される。「併用」という用語の使用は、この文脈では、投与に続いて(例えば、30分以内、1時間以内、2時間以内、又は3時間以内)、P2Y12阻害剤(及び/又はその代謝産物)と組換えアピラーゼタンパク質とが、どちらも患者の血流中で生物学的に利用可能である(すなわち、活性効果を有する)ことを意味することが意図される。動物モデルにおいて、組換えアピラーゼタンパク質AZD3366の投与は、(用量に応じて)5分以内に抗血小板作用をはじめとする顕著な酵素活性をもたらし、3~4週間(用量に応じて)はベースラインに戻らない一方で、P2Y12阻害剤が投与に続いて活性化するまでには、典型的により長時間かかる。例えば、チカグレロルの最大活性は、通常は、投与後2時間までは観察されず、8時間より長く維持される。
【0083】
したがって、組換えアピラーゼタンパク質とP2Y12阻害剤とを物理的に同時に投与することは、組換えアピラーゼタンパク質とP2Y12阻害剤とを併用投与するためには必ずしも必要ではない。むしろ、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤がどちらも患者の血流中で生物学的に利用可能であることを条件に、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤のいずれか1つが先に投与され、もう1つの薬剤が後から(例えば、1時間以上後に)投与されてもよい。
【0084】
さらに、虚血性イベントを呈する一部の患者には、例えば、以前の虚血性イベント後の維持用量の一部として、既に定期的にP2Y12阻害剤が投与されていてもよい。このような患者は、本明細書では、「現在P2Y12阻害剤による治療を受けている」と言及される。例えば、90mgのチカグレロルが、維持用量の一部として典型的に1日2回投与される。本明細書の方法に従って組換えアピラーゼタンパク質が投与されるこのような患者においては、阻害剤(及び/又はその代謝産物)は患者の血流中で依然として生理活性であると見なされるので、P2Y12阻害剤の別の用量を投与することは必ずしも必要でなくてもよい。代案としては、血流中の生理活性P2Y12阻害剤のレベルを補充するために、P2Y12阻害剤の通常の負荷用量よりも少ない用量が投与されてもよい。例えば、チカグレロルの場合、チカグレロルが患者の血流中で依然として生理活性であれば、180mgの典型的な負荷用量とは対照的に、60mg又は90mg又は150mgの用量が投与されてもよい。有効用量は、熟練した医師又はその他の熟練した医療関係者によって決定されてもよい。しかし、好ましくは、患者が現在P2Y12阻害剤による治療を受けている場合であっても、方法は、患者にP2Y12阻害剤(例えば、負荷用量)を投与することをまだ含む。
【0085】
P2Y12阻害剤は、阻害剤の最後の用量が、P2Y12阻害剤の平均排出半減期、P2Y12阻害剤の平均排出半減期の2倍以上、又はP2Y12阻害剤の平均排出半減期の3倍以上、又はP2Y12阻害剤の平均排出半減期の5倍以上、又は約10日間に相当する期間以内に投与されたのであれば、患者の血流中で依然として生理活性であると見なされてもよい。例えば、チカグレロルの場合、平均排出半減期はチカグレロルで7時間であり、その活性代謝産物で9時間である。したがって、チカグレロルは、最後の用量が直近の9時間以内、直近の18時間以内、直近の27時間以内、直近の36時間以内、又は直近の45時間以内であれば、患者の血流中で生理活性であると見なされてもよい。代案としては、P2Y12阻害剤は、投与中止に続いて活性がベースラインに戻るまで、血流中で生理活性であると見なされてもよいが、これはチカグレロルの場合は5日後である。
【0086】
虚血性イベントを示すその他の患者は、以前にP2Y12阻害剤を投与されていなくてもよく、又は例えば、P2Y12阻害剤が、患者の血流中でもはや生理活性であると見なされないように、以前のP2Y12阻害剤投与が中断されていてもよい。これらの患者は、「ナイーブ」患者と称されてもよい。ナイーブ患者では、組換えアピラーゼタンパク質をP2Y12阻害剤と併用して投与するために、方法は、P2Y12阻害剤を患者に投与するステップを含むことが必要である。
【0087】
組換えアピラーゼタンパク質とP2Y12阻害剤は、例えば、静脈内注射を介して、複合製剤として投与されてもよい。代案としては、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤の患者への投与は、同時又は逐次であってもよい。同時投与は、本明細書の用法では、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤の双方を、患者に実質的に同時に(例えば、互いに10分以内、5分以内、又は1分以内に)、任意選択的に、異なる投与経路を介して投与することを指す。例えば、経口投与によって提供されるP2Y12阻害剤の1分以内の組換えアピラーゼタンパク質の静脈内注射は、同時投与と見なされるであろう。
【0088】
逐次投与が用いられる場合、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤は、好ましくは、互いに24時間、18時間、12時間、6時間、2時間、1時間以内、又はより好ましくは30分以内に投与される。いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質が最初に投与され、P2Y12阻害剤の逐次投与がそれに続く。いくつかの実施形態では、P2Y12阻害剤が最初に投与され、組換えアピラーゼタンパク質の逐次投与がそれに続く。
【0089】
いくつかの実施形態では、虚血性イベント(例えば、STEMIなどの急性冠動脈症候群)の発症後、24時間以内、又は18時間以内、又は12時間以内、又は6時間以内、又は4時間以内、又は2時間以内、又は1時間以内、又は30分以内に、組換えアピラーゼタンパク質がP2Y12阻害剤と併用して患者に投与される。本明細書で言及される虚血性イベントの発症は、虚血性イベントの1つ又は複数の症状(例えば、STEMIの場合には胸痛)の発症時であってもよく、又は患者が治療のために病院に到着する前又は直後に実施されてもよい診断(例えば、急性冠動脈症候群の場合には心電図を介して)時であってもよい。
【0090】
好ましくは、急性冠動脈症候群又はAISに罹患した患者に外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、経皮的冠動脈介入(PCI)、血栓摘出術又は血栓溶解療法)が実施される前に、組換えアピラーゼタンパク質がP2Y12阻害剤と併用して投与される。
【0091】
PCIは、限定することなく、バルーン血管形成術、ステント留置術、回転式又はレーザー式アテローム切除術、及び/又は近接照射療法を含んでもよい。ステントが留置される事例では、ステントは、限定することなく、当該技術分野で公知のように、ベアメタルステント、薬剤溶出ステント、吸収性ステントなどであってもよい。
【0092】
組換えアピラーゼタンパク質とP2Y12阻害剤の併用によって提供される心臓及び脳組織に対する保護効果は、再灌流療法に続く循環の回復に起因する組織又は機能への任意の傷害を予防し及び/又は緩和するのに有用であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、組換えアピラーゼタンパク質の投与に続いて、48時間未満、24時間未満、12時間未満、6時間未満に、患者に外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、PCI、血栓摘出術又は血栓溶解療法)を実施することをさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤はどちらも、外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、PCI、血栓摘出術又は血栓溶解療法)を実施する前に、患者に投与される。その他の実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質が、外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、PCI)を実施する前に患者に投与され、P2Y12阻害剤が、外科的再灌流療法を実施した直後、例えば、6時間以内、4時間以内、2時間以内、又は1時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤は、外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、PCI、血栓摘出術又は血栓溶解療法)の間に、患者の血流中で生物学的に利用可能であり続ける。
【0093】
本開示は、i)組換えアピラーゼタンパク質とP2Y12阻害剤の同時又は逐次投与;ii)虚血性イベントの発症に関する投与のタイミング;及びiii)外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、PCI、血栓摘出術又は血栓溶解療法)に関する投与のタイミングに関する上記のいずれかのタイミングが組み合わされている、実施形態を含む。例えば、方法は、虚血性イベントの発症から6時間以内に組換えアピラーゼタンパク質を投与することを含んでもよく、方法は、患者に対して外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、PCI、血栓摘出術又は血栓溶解療法)を12時間未満、又は6時間未満で実施することをさらに含み、P2Y12阻害剤は、組換えアピラーゼタンパク質を投与してから6時間以内に患者に投与され、任意選択的に、組換えアピラーゼタンパク質及びP2Y12阻害剤はどちらも、外科的又は非外科的再灌流療法(例えば、PCI、血栓摘出術又は血栓溶解療法)を実施する前に、患者に投与される。
【0094】
本明細書に記載の方法のいずれかは、アスピリンを患者に投与することをさらに含んでもよい。アスピリンは、典型的に、P2Y12阻害剤及び組換えアピラーゼタンパク質とは別個の製剤として投与され、P2Y12阻害剤及び組換えアピラーゼタンパク質のどちらか片方又は双方と同時に、又はそれと連続して投与される。いくつかの実施形態では、アスピリンは、P2Y12阻害剤を投与してから、24時間、18時間、12時間、6時間、2時間、1時間以内又はより好ましくは30分以内に投与される。いくつかの実施形態では、アスピリンは、組換えアピラーゼタンパク質を投与してから、24時間、18時間、12時間、6時間、2時間、1時間以内又はより好ましくは30分以内に投与される。いくつかの実施形態では、アスピリンは、P2Y12阻害剤又は組換えアピラーゼタンパク質と同時投与される。いくつかの実施形態では、虚血性イベント(例えば、急性冠動脈症候群(STEMIなど)、AIS又はTIA)の発症後、24時間以内、又は18時間以内、又は12時間以内、又は6時間以内、又は4時間以内、又は2時間以内、又は1時間以内、又は30分以内に、アスピリンがP2Y12阻害剤と併用して患者に投与される。
【0095】
アスピリンは、例えば、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、162mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg又は350mgなどの50mg~325mgの用量で患者に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、アスピリンは、例えば、162mgなどの、50mg~200mg、又は100mg~200mgの用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、アスピリンは、例えば、300mg又は325mgなどの、200mg~350mg、又は250~325mgで患者に投与される。いくつかの実施形態では、アスピリンは、75mg~150mg、又は75mg~100mgの用量で患者に投与される。
【0096】
本明細書で病状を治療する文脈で使用される「治療」という用語は、一般に、例えば、病状の進行の抑制などの何らかの所望の治療効果が達成される、ヒトの治療及び治療に関連し、進行速度の低下、進行速度の停止、病状の退行、病状の改善、及び病状の治癒を含む。予防的措置としての治療(すなわち、予防法、予防)もまた含まれる。
【0097】
本明細書に記載される組換えアピラーゼタンパク質の投与は、例えば、ボーラス注射、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、持続続注入、徐放、又はその他の薬学的に許容可能な技術によって提供されてもよい。理想的には、組換えアピラーゼタンパク質は、生理学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有する、薬学的に許容可能な形態で患者に投与されるであろう。このような希釈剤及び賦形剤は、中性緩衝化生理食塩水、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、低分子量ポリペプチド(例えば、10アミノ酸未満のポリペプチド)、アミノ酸、炭水化物(例えば、グルコース、デキストロース、スクロース、又はデキストラン)、EDTAなどのキレート化剤、安定剤(グルタチオンなど)を含んでもよい。さらに、投与時に、酵素の最大活性のために、例えば、カルシウム(Ca2+)などの組換えアピラーゼタンパク質のための補基質が投与されてもよい。このような担体及び希釈剤は、推奨される用量及び濃度で患者に無毒であるように選択される。
【0098】
本明細書に記載されるP2Y12阻害剤の投与は、使用される特定のP2Y12阻害剤に依存するであろう。例えば、チカグレロル、クロピドグレル、チクロピジン、及びプラスグレルは、典型的に、薬学的に許容可能な経口剤形で患者に投与される一方で、カングレロルは、典型的に静脈内注射を介して患者に投与される。
【0099】
組換えアピラーゼタンパク質の用量要件は、年齢、人種、体重、身長、性別、治療持続期間、投与方法、組換えアピラーゼタンパク質の生物学的活性、及び病状の重症度又はその他の臨床的変数次第で、著しく変動してもよい。有効用量は、熟練した医師又はその他の熟練した医療関係者によって決定されてもよい。
【0100】
方法は、組換えアピラーゼタンパク質を単一有効量として、P2Y12阻害剤の適切な用量(例えば、負荷用量)と併用して、任意選択的に、存在する場合にはアスピリンと併用して、投与することを含んでもよい。組換えアピラーゼタンパク質の単一有効量のみが典型的に使用される一方で、方法は、長期治療又は維持治療の一部として、負荷用量に続いて、P2Y12阻害剤の1つ又は複数の経口用量を定期的に投与することをさらに含んでもよい。例えば、P2Y12阻害剤は、初期負荷用量に続いて、数週間、数ヶ月間、又は数年間にわたり、例えば上記の維持用量で、1日に1回又は2回投与されてもよい。P2Y12阻害剤の維持用量は、当該技術分野で公知のように、アスピリンと共に投与されてもよい。虚血性イベントに続くP2Y12阻害剤の長期治療又は維持治療は、当該技術分野で公知であり、適切な用量及びタイミングは、熟練した医師又はその他の熟練した医療関係者によって決定され得る。
【0101】
組換えアピラーゼタンパク質は、組換えアピラーゼタンパク質と薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物として投与されてもよい。P2Y12阻害剤は、P2Y12阻害剤と薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物として投与されてもよい。
【0102】
「薬学的に許容可能」という用語は、本明細書の用法では、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答、又はその他の問題又は合併症なしで、妥当な利点/リスク比に見合う、当該対象(例えば、ヒト)の組織と接触する使用に適した、化合物、成分、材料、組成物、剤形などに関する。それぞれの担体、希釈剤、賦形剤などもまた、製剤のその他の成分と適合性であるという意味で、「許容可能」でなければならない。
【0103】
適宜、それらの特定の形態で表現され、又は開示された機能を実施するための手段の観点から表現され、又は開示された結果を得るための方法又は工程の観点から表現された、上記の説明で開示され、又は以下の請求項で開示され、又は添付の図面で開示された特徴は、別々に、又はこのような特徴の任意の組み合わせで、本発明の多様な形態を実現するために利用されてもよい。
【0104】
本発明は、上記の例示的な実施形態と併せて説明されているものの、多くの同等の修正及びバリエーションは、本開示を与えられたときに、当該技術分野の当業者には明らかであろう。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は、例示的であり、限定的ではないと見なされる。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、説明された実施形態に様々な変更が加えられてもよい。
【0105】
いかなる疑問を避けるために、本明細書で提供されるあらゆる理論的説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望まない。
【0106】
本明細書で使用されるあらゆるセクション見出しは、内容構成の目的のためにのみ使用され、説明される主題を制限すると解釈されるものではない。
【0107】
後続の特許請求の範囲を含めた本明細書全体を通じて、文脈上別段の必要がない限り、「含む(comprise)」及び「含む(include)」という語、そして「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(including)」などのバリエーションは、記載された整数又はステップ又は整数群又はステップ群の包含を含意するが、いかなるその他の整数又はステップ又は整数群又はステップ群の排除も含意しないものと理解されるであろう。
【0108】
本明細書及び添付の特許請求範囲の用法では、文脈上例外が明記されていない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数指示対象を含むことに留意すべきである。範囲は、本明細書では、1つの特定の「およその」値から、及び/又は別の特定の「およその」値までとして表現されてもよい。このような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/又は別の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」の使用によって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。数値に関する「約」という用語は任意選択的であり、例えば、±10%を意味する。
【実施例0109】
実施例1-ブタにおいて実施された実験の材料と方法
実験デザイン
通常の固形飼料を与えられたランドレース種ブタ(n=20;体重約40kg)をランダムに(Excelランダム関数)4群に分配し、以下を投与した:
I)経口プラセボ対照(心筋梗塞(MI)誘導の2時間前、n=5)
II)チカグレロルの負荷用量(180mg;n=5;MI誘導の2時間前経口)
III)チカグレロルの負荷用量(180mg;n=5;MI誘導の2時間前経口、及び再灌流の10分前に1mg/kgのAZD3366静注)
IV)チカグレロルの負荷用量(180mg;n=5;MI誘導の2時間前経口、及び再灌流の10分前に3mg/kgのAZD3366静注)
その後、ブタに、本質的に(非特許文献26)に記載されるように、左中前下行冠動脈の一時的な(90分間)バルーン閉塞(実験的MI)を実施し、その後、再灌流を行った。続く42日間にわたり、ブタに、プラセボ(群I)又はチカグレロル(90mg/bid、群II~IV)を毎日経口維持投与し、MI後3日目(初期組織修復期)及び42日目(後期組織修復期)に、連続心臓磁気共鳴(CMR)評価を実施した。
【0110】
【0111】
MIの実験的誘導
MI導入の当日、動物に、疼痛及び創傷感染の予防として、ブプレノルフィン(0.03mg/kg)及びセファゾリン(25mg/kg)をそれぞれ投与し、次に、ケタミン(30mg/kg)、キシラジン(2.2mg/kg)、及びアトロピン(0.05mg/kg)の筋肉内注射を投与することによって麻酔をかけた。静穏化させた時点で動物に気管内挿管し、イソフルラン吸入(2%)によって麻酔を維持した。MI導入処置を開始する前に、耳の辺縁静脈内に配置されたラインを通じて、悪性心室性不整脈の予防として、1.000mLの生理食塩水中のアミオダロン(300mg)及びリドカイン(150mg)の注入(250mL/時間)を開始し、ヘパリンのボーラス(100U/kg)を投与して、カテーテル内の血餅形成を防止した。MIは、(非特許文献26)に以前に記載されたように、左前下行冠動脈の中間部の低侵襲閉鎖型胸部心筋バルーン閉塞によって、実験的に誘導した。完全な冠動脈虚血(血管造影で検証された)を90分間維持した。虚血期間の終わりに、バルーンを完全に収縮させ、動物を回復させた。心電図(ECG)及び血行動態パラメータは、手順全体を通じて継続的に記録し、MI誘導の前後にS5-1セクターアレイトランスデューサーを備えた心エコー検査システム(Phillips iE33)を用いて、左心室駆出率の初期悪化を記録した(LVEF、胸骨傍長軸図を用いたMモード解析;(非特許文献26))。
【0112】
3T-CMRの取得及び解析:包括的及び局所的構造及び機能解析
CMR試験は、MI後3日目(初期組織修復期)及び42日目(後期組織修復期)に、全ての動物で連続的に実施した。試験は、3.0T-CMRシステム(AchievaVR、Philips,Amsterdam,The Netherlands)上で実施し、CMR画像取得は、治療の観点から盲検化されたCMR専門技術者が行った。CMR試験のために、動物をケタミン、キシラジン、及びアトロピンからなるカクテルの筋肉内注射で麻酔し、プロポフォールの継続的な静脈内注入によって維持して、機械的換気を確保した。動物を頭から仰臥位に配置させ、可撓性のフェーズドアレイ表面コイルを胸部の上に配置させた時点で、ECGゲーティングを用いて心臓の静止画像を取得した。以下の専用CMRシーケンスを全例で取得した:壁運動(WM)及び心機能を評価するための「シネ」平衡定常状態自由歳差運動(bSSFP)イメージングシーケンス;心筋浮腫を評価するためのT2強調短タウ反転回復(T2w-STIR)シーケンス;微小血管閉塞を試験するための初期のガドリニウム強化(再流現象なし);心筋壊死の量及び程度を評価するための後期ガドリニウム強化(LGE)。全てのCMR試験は、同一スキームに従った。最初に、スカウト画像[T1-ターボフィールドエコー(TFE)シーケンス]を取得して、心臓の真の軸の場所を突き止め、心臓全体を含む視野を定義した。その後、水平及び垂直の双方の長軸(4チャンバー及び2チャンバービュー)で、そして左心室(LV)全体をカバーする複数の連続する短軸画像で、bSSFPシネイメージングを実施した。短軸シネシーケンスにおいて、本発明者らは、WM及び心機能の正しい評価を保証するために、全てのスライスの24の心相を取得した。シネシーケンスを取得した時点で、T2w-STIRシーケンスを得て心筋浮腫を評価した。その後、ガドリニウムベースの造影剤(Gd-GTPA、MagnevistVR、Berlex Laboratories Inc.,Wayne,NJ,USA)を0.1mmol/kgの用量で静脈内に注入した。初期ガドリニウム強化シーケンスは、造影剤投与の1分後に取得した。造影剤投与の10分後に、LGEシーケンスを得た。CMRシーケンスのための技術的パラメータの詳細、包括的及び局所的機能/解剖学的パラメータのための解析プロトコルは、以前公開されている(非特許文献26)。
【0113】
実施例2-心筋梗塞のブタモデルにおける心臓損傷、機能、及び出血に対するAZD3366及びチカグレロルの効果
実験を実施し、組換え可溶性形態のADPアーゼであるAZD3366(APT102とも称される)の投与が、梗塞サイズ減少及び心機能改善の観点から、チカグレロル単独の投与に追加的な恩恵を与えるかどうかを調べた。方法及び解析は、実施例1に記載されるように実施した。
【0114】
心臓損傷評価
ブタ動物モデルにおける心臓損傷評価実験の結果は、以下の表に示される。
【0115】
【0116】
【0117】
チカグレロル単独と比較したチカグレロル+3mg/kgのAZD3366での壊死面積のさらなる減少、及びチカグレロル+1mg/kgのAZD3366での壊死面積の数値的減少は、併用による用量依存的に強化された心臓保護効果を実証する。このモデルはヒト疾患の最良の前臨床モデルであるので、これはヒトにおける治療効果を示唆する最も強力な証拠である。
【0118】
心機能評価
ブタ動物モデルにおける心機能評価実験の結果は、以下の表に示される。
【0119】
【0120】
【0121】
チカグレロル単独と比較したチカグレロル+3mg/kgのAZD3366の壁運動スコアのさらなる改善は、心筋梗塞に続く心機能の治癒及び回復の強化を実証する。梗塞サイズ減少及び機能改善の同時発生は、急性心臓保護作用様式を心臓の機能回復の改善に結び付ける。このモデルはヒト疾患の最良の前臨床モデルであるので、これはヒトにおける治療効果を示唆する最も強力な証拠である。
【0122】
実施例3-マウス尾部出血に対するAZD3366及びチカグレロルの効果
この試験の目的は、マウス生体内における、AZD3366単独での、又はチカグレロルとの併用での、出血リスク及び血小板凝集阻害を評価することであった。
【0123】
実験プロトコル
C57Bl6マウスに、AZD3366又はビヒクルを静脈内ボーラスで投与した。別の群では、マウスに、AZD3366とチカグレロル、又はチカグレロルのみをボーラス及びチカグレロルの持続注入として投与した。投与群、投与量、及び投与体積は、以下の表に記載される通りであった。
【0124】
【0125】
t=20分で尾部切断を行い、出血量及びBTを60分間記録した。t=80分の実験終了時に、血小板凝集評価と引き続くAZD3366及びチカグレロルの血漿濃度分析のために、腹部大動脈から血液サンプルを採取した。
【0126】
出血モデル
投与の20分後に、尾部先端の5mmを切断することによって出血を開始した。尾部を水洗し、ヘモグロビン感受性装置に入れた。血液と水の混合物を通した光透過率を記録し、PharmLabソフトウェア(V6.0、AstraZeneca R&D,Gothenburg,Sweden)を使用して、吸光度に変換した。95%より低い透過率を出血と定義した。全出血量(出血曲線下面積、t=20分~t=80分:累積出血量対時間、吸光度*s、abs*s)、及び出血時間(BT)を尾部切断の開始から60分間にわたって測定した。
【0127】
血液及び血漿分析
腹部大動脈からの血液サンプルは、Terumo(登録商標)Neolus 27G、0.4×20mm針(Terumo Europe N.V.,Leuven Belgium)を装着したOmnifix(登録商標)-F1mLシリンジ(Braun Medical AG,Emmenbrucke,Germany)内に採取した。7μmol/Lの最終的血中濃度を与えるレピルジン(Refludan(登録商標)Bayer HealthCare Pharmaceuticals Inc)10μL、最大1mLの血液中で5mg/mLを抗凝固剤として使用した。Multiplate(登録商標)インピーダンス血小板凝集計を用いた血小板凝集では、全血を使用した。10000*gで5分間の遠心分離によって、残りの血液から血漿を調製した(Ole Dich,Hvidovre,Denmark)。血漿を新しい試験管に移し、後日のチカグレロル及びAZD3366の全血漿濃度分析のために、-20℃で保存した。
【0128】
採血直後に、175μLの全血をMultiplate(登録商標)(Roche Diagnostics GmbH,Mannheim,Germany)ミニテストセルに添加し、37℃に予熱した175μLの生理食塩水(9mg/mL、Fresenius Kabi AG,Bad Homburg,Germany)と混合した。3分後、12μLのアデノシン二リン酸(ADP、Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)を6.5μmol/Lの最終アッセイ濃度になるように添加した。応答を6分間測定し、データは、経時的に記録した凝集単位(AU)の平均曲線下面積(AUC)として表される(AU*分)。
【0129】
チカグレロルの血漿濃度は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)法を用いて測定した。
【0130】
血漿中のAZD3366濃度は、96ウェルプレートに被覆されたモノクローナルマウス抗AZD3366抗体(mAb2567、Covance,Princeton,NJ,USA)によるAZD3366の捕捉と、TMBを基質として使用した西洋ワサビペルオキシダーゼ共役ポリクローナルウサギ抗AZD3366抗体(pAb3939-HRP、Covance)による結合AZD3366の検出とを伴う、ELISA法によって測定した。
【0131】
結果
出血量及びBTの結果は、下の表に提示され、
図2に図示される。
【0132】
【0133】
チカグレロルを投与した動物では、ビヒクルを投与した動物と比較して、それぞれ、7.2倍(p<0.001)及び5.2倍(p<0.001)の出血量及びBTの増加が認められた。対照的に、1又は3mg/kgのAZD3366による治療は、ビヒクルと比較して、出血量又はBTの統計学的に有意な増加とは関連していなかった。さらに、チカグレロルとAZD3366を併用した群では、チカグレロルのみを投与した群と比較して、出血量及びBTに差はなかった。
【0134】
血小板凝集(PA)結果は、以下の表に記載される。
【0135】
【0136】
したがって、チカグレロル(T)とは対照的に、AZD3366(1及び3mg/kg)による完全な血小板凝集(PA)阻害は、出血の増加とは関連していなかった(
図2)。さらに、AZD3366とチカグレロルの併用投与は、チカグレロル単独で見られたよりも出血を増加させなかった。
【0137】
この実験の結果は、チカグレロルとAZD3366の併用が、チカグレロル単独の場合に見られた以上に出血を増加させないことを実証する。
【0138】
参考文献
本発明及び本発明が関係する最新技術をより完全に説明し開示するために、いくつかの刊行物が上記で引用されている。これらの参考文献の完全な引用は、以下に提供される。これらの参考文献のそれぞれの全体が、本明細書に援用される。
Asaria,P.,Elliott,P.,Douglass,M.,Obermeyer,Z.,Soljak,M.,Majeed,A.,& Ezzati,M.(2017).Acute myocardial infarction hospital admissions and deaths in England: a national follow-back and follow-forward record-linkage study.The Lancet.Public health,2(4),e191-e201.https://doi.org/10.1016/S2468-2667(17)30032-4
Ibanez,B.,James,S.,Agewall,S.,Antunes,M.J.,Bucciarelli-Ducci,C.,Bueno,H.,Caforio,A.,Crea,F.,Goudevenos,J.A.,Halvorsen,S.,Hindricks,G.,Kastrati,A.,Lenzen,M.J.,Prescott,E.,Roffi,M.,Valgimigli,M.,Varenhorst,C.,Vranckx,P.,Widimsky,P.,& ESC Scientific Document Group(2018).2017 ESC Guidelines for the management of acute myocardial infarction in patients presenting with ST-segment elevation:The Task Force for the management of acute myocardial infarction in patients presenting with ST-segment elevation of the European Society of Cardiology(ESC).European heart journal,39(2),119-177.https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehx393
Roth G.A.et al,(2018)Global,regional,and national age-sex-specific mortality for 282 causes of death in 195 countries and territories,1980-2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study(2017)The Lancet,392,1736-1788,https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)32203-7.
Kyu H.H.et al,(2018)Global,regional,and national disability-adjusted life-years(DALYs)for 359 diseases and injuries and healthy life expectancy(HALE)for 195 countries and territories,1990-2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017.The Lancet,392,1859-2922 https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)32335-3.
Powers W.J.et al.(2018)Guidelines for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke:2019 Update to the 2018 Guidelines for the Early Management of Acute Ischemic Stroke:A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association.Stroke,50,e344-e418.https://doi.org/10.1161/STR.0000000000000211
Wang Y.,Liu M.,Pu C.(2017)2014 Chinese guidelines for secondary prevention of ischemic stroke and transient ischemic attack:Compiled by the Chinese Society of Neurology,Cerebrovascular Disease Group.International Journal of Stroke,12(3),302-320.https://doi.org/10.1177/1747493017694391.
Johnston S.C.et al(2020)Ticagrelor and Aspirin or Aspirin Alone in Acute Ischemic Stroke or TIA.New England Journal of Medicine 383,207-17.https://doi.org/10.1056/NEJMoa1916870.
Jernberg,T.,Hasvold,P.,Henriksson,M.,Hjelm,H.,Thuresson,M.,& Janzon,M.(2015).Cardiovascular risk in post-myocardial infarction patients:nationwide real world data demonstrate the importance of a long-term perspective.European heart journal,36(19),1163-1170.https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehu505
Wang Y.et al(2013)Clopidogrel with aspirin in acute minor stroke or transient ischemic attack.New England Journal of Medicine,369(1),11-9.https://doi.org/10.1056/NEJMoa1215340
Johnston S.C.et al.(2018);Clopidogrel and Aspirin in Acute Ischemic Stroke and High-Risk TIA.New England Journal of Medicine,379,215-225.https://doi.org/10.1056/NEJMoa1800410.
Robson,S.C.,Wu,Y.,Sun,X.,Knosalla,C.,Dwyer,K.,& Enjyoji,K.(2005).Ectonucleotidases of CD39 family modulate vascular inflammation and thrombosis in transplantation.Seminars in thrombosis and hemostasis,31(2),217-233.https://doi.org/10.1055/s-2005-869527
Sun,Guanghua & Zhao,Xiurong & Grotta,James & Savitz,Sean & Chen,Ridong & Aronowski,Jaroslaw.(2011).Apyrase,APT102,Improves the Beneficial Effect of rt-PA In Experimental Thromboembolic Stroke.E302-E302.
Tan,Z.,Li,X.,Turner,R.C.,Logsdon,A.F.,Lucke-Wold,B.,DiPasquale,K.,Jeong,S.S.,Chen,R.,Huber,J.D.,& Rosen,C.L.(2014).Combination treatment of r-tPA and an optimized human apyrase reduces mortality rate and hemorrhagic transformation 6h after ischemic stroke in aged female rats.European journal of pharmacology,738,368-373.https://doi.org/10.1016/j.ejphar.2014.05.052
Thygesen,K.,Alpert,J.S.,Jaffe,A.S.,Chaitman,B.R.,Bax,J.J.,Morrow,D.A.,White,H.D.,& Executive Group on behalf of the Joint European Society of Cardiology(ESC)/American College of Cardiology(ACC)/American Heart Association(AHA)/World Heart Federation(WHF)Task Force for the Universal Definition of Myocardial Infarction(2018).Fourth Universal Definition of Myocardial Infarction(2018).Circulation,138(20),e618-e651.https://doi.org/10.1161/CIR.0000000000000617
Vilahur G,Gutierrez M,Casani L,Varela L,Capdevila A,Pons-Llado G,Carreras F,Carlsson L,Hidalgo A,Badimon L.Protective effects of ticagrelor on myocardial injury after infarction.Circulation 2016;134:1708-1719.
Wallentin,L.,Becker,R.C.,Budaj,A.,Cannon,C.P.,Emanuelsson,H.,Held,C.,Horrow,J.,Husted,S.,James,S.,Katus,H.,Mahaffey,K.W.,Scirica,B.M.,Skene,A.,Steg,P.G.,Storey,R.F.,Harrington,R.A.,PLATO Investigators,Freij,A.,& Thorsen,M.(2009).Ticagrelor versus clopidogrel in patients with acute coronary syndromes.The New England journal of medicine,361(11),1045-1057.https://doi.org/10.1056/NEJMoa0904327
標準的な分子生物学的手法については、Sambrook,J.,Russel,D.W.Molecular Cloning,A Laboratory Manual.3 ed.2001,Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
【0139】
配列
【0140】