(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035948
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/53 20140101AFI20220225BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220225BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20220225BHJP
B23K 26/066 20140101ALI20220225BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/00 M
B23K26/067
B23K26/00 N
B23K26/066
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013442
(22)【出願日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2020140151
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】荻原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】手塚 大貴
(72)【発明者】
【氏名】宮田 裕大
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168AE01
4E168CA03
4E168CA06
4E168CA07
4E168DA43
4E168EA05
4E168EA17
4E168EA19
4E168KA04
5F063AA21
5F063AA41
5F063DD27
5F063DD32
(57)【要約】
【課題】分岐光の出力を所望の値に調整することにより加工品質を向上させること。
【解決手段】レーザ加工装置1は、所定の計算式に基づいて第1分岐パターンを生成し、生成した第1分岐パターンを反射型空間光変調器34に表示させる第1処理と、レーザ光が出射されるように光源ユニット8を制御する第2処理と、第1分岐パターンによる分岐後の各レーザ光の反射光が検出されるように検出部17を制御する第3処理と、分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出し、出力実測値を出力目標値に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータを生成する第4処理と、バランスパラメータによって計算式を補正し、補正された計算式に基づいて、第2分岐パターンを生成し加工プロセス用に反射型空間光変調器34に設定し表示させる第5処理と、を実行するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にレーザ光を照射することにより前記対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記レーザ光を変調する空間光変調器と、
前記対象物における前記レーザ光の反射光を検出する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
所定の計算アルゴリズムに基づいて、前記レーザ光を複数に分岐する分岐パターンであって分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じた第1分岐パターンを生成し、生成した前記第1分岐パターンを前記空間光変調器に設定し表示させる第1処理と、
前記空間光変調器に前記第1分岐パターンが表示された状態において前記レーザ光が出射されるように前記光源を制御する第2処理と、
前記第1分岐パターンによる分岐後の各レーザ光の前記反射光が検出されるように前記検出部を制御する第3処理と、
前記検出部による検出結果に基づき前記分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出し、前記計算アルゴリズムを補正する補正パラメータであって前記出力実測値を前記出力目標値に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係る補正パラメータを生成する第4処理と、
前記補正パラメータによって前記計算アルゴリズムを補正し、補正された前記計算アルゴリズムに基づいて、前記第2分岐パターンを生成し、生成した前記第2分岐パターンを、加工プロセス用に前記空間光変調器に設定し表示させる第5処理と、を実行するように構成されている、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1処理において、前記分岐後の各レーザ光の出力目標値の組み合わせが互いに異なる複数種類の前記第1分岐パターンを生成し、
前記第4処理において、前記複数種類の第1分岐パターンに含まれる少なくとも2つの前記第1分岐パターンに係る共通の前記補正パラメータを生成する、請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第4処理において、前記複数種類の第1分岐パターンについて、分岐パラメータの近似度に応じたグループ分けを行い、各グループ単位で、共通の前記補正パラメータを生成する、請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第4処理において、前記分岐パラメータである前記出力目標値の近似度に応じた前記グループ分けを行う、請求項3記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第5処理において、前記加工プロセスにおける分岐パラメータを示す情報を取得し、該分岐パラメータに対応するグループの前記補正パラメータによって、前記計算アルゴリズムを補正する、請求項3又は4記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1処理において、前記対象物の厚さ方向である鉛直方向における異なる位置に前記レーザ光を分岐する前記第1分岐パターンを生成する、請求項1~5のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
対象物にレーザ光を照射することにより前記対象物に改質領域を形成するレーザ加工方法であって、
所定の計算アルゴリズムに基づいて、レーザ光を複数に分岐する分岐パターンであって分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じた第1分岐パターンを生成し、生成した前記第1分岐パターンを空間光変調器に設定し表示させる第1工程と、
前記第1分岐パターンが表示された前記空間光変調器にレーザ光を出射し、前記第1分岐パターンによって複数に分岐されたレーザ光を前記対象物に照射する第2工程と、
分岐後の各レーザ光の、前記対象物からの反射光を検出する第3工程と、
前記反射光の検出結果に基づき、前記分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出し、前記計算アルゴリズムを補正する補正パラメータであって前記出力実測値を前記出力目標値に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係る補正パラメータを生成する第4工程と、
前記補正パラメータによって前記計算アルゴリズムを補正し、補正された前記計算アルゴリズムに基づいて、前記第2分岐パターンを生成し、生成した前記第2分岐パターンを、加工プロセス用に前記空間光変調器に設定し表示させる第5工程と、を含む、レーザ加工方法。
【請求項8】
所定の計算アルゴリズムに基づいて、レーザ光を複数に分岐する分岐パターンであって分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じた第1分岐パターンを生成し、生成した前記第1分岐パターンを空間光変調器に設定し表示させる第1工程と、
前記第1分岐パターンが表示された前記空間光変調器にレーザ光を出射し、前記第1分岐パターンによって複数に分岐されたレーザ光をパワーメータにより計測することにより、分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出する第2工程と、
前記計算アルゴリズムを補正する補正パラメータであって前記出力実測値を前記出力目標値に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係る補正パラメータを生成し出力する第3工程と、を含む、レーザ加工方法。
【請求項9】
前記第2工程では、
前記分岐後の各レーザ光の一部を遮光板で遮光しながら前記パワーメータによる出力計測を行う遮光時出力計測処理を実施し、該遮光時出力計測処理においては、前記遮光板によって遮光されるレーザ光の範囲を変更しながら前記パワーメータによる出力計測を行う、請求項8記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光源と、空間光変調器と、空間光変調器とは異なる集光補正手段とを備えるレーザ加工装置が記載されている。このようなレーザ加工装置は、レーザ光の照射によって対象物(ウエハ)の内部に改質領域を形成することにより、対象物の分割及び剥離等を行う。特許文献1に記載された技術では、レーザ光の照射によって対象物の内部に改質領域を形成すると共に、集光点からの反射光の一部を撮像し、撮像結果に基づいて集光点の位置ズレ量を検出し、位置ズレが小さくなるように空間光変調器における変調パターンを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザ加工装置では、同時に複数の改質領域が形成されるように、空間光変調器に分岐パターンが設定され、該分岐パターンに応じてレーザ光が分岐される場合がある。分岐パターンは、例えば分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じて設定される。ここで、例えば空間光変調器を用いてレーザ光を分岐する場合においては、空間光変調器自体の光学特性やレンズにおける各分岐光の透過領域が互いに異なる等の光学特性、あるいは、光学素子の個体差等の影響により、分岐後の各レーザ光の出力が上述した出力目標値(設計値)とならない現象が起こる。このような現象は、完全に回避することは困難である。分岐後の各レーザ光の出力が想定していた値とならないことによって、改質領域から延びる亀裂量が所望の亀裂量とならず、対象物の未分割・未剥離が生じる(加工品質が悪化する)おそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、分岐光の出力を所望の値に調整することにより加工品質を向上させることができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るレーザ加工装置は、対象物にレーザ光を照射することにより対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光を変調する空間光変調器と、対象物におけるレーザ光の反射光を検出する検出部と、制御部と、を備え、制御部は、所定の計算アルゴリズムに基づいて、レーザ光を複数に分岐する分岐パターンであって分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じた第1分岐パターンを生成し、生成した第1分岐パターンを空間光変調器に設定し表示させる第1処理と、空間光変調器に第1分岐パターンが表示された状態においてレーザ光が出射されるように光源を制御する第2処理と、第1分岐パターンによる分岐後の各レーザ光の反射光が検出されるように検出部を制御する第3処理と、検出部による検出結果に基づき分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出し、計算アルゴリズムを補正する補正パラメータであって出力実測値を出力目標値に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係る補正パラメータを生成する第4処理と、補正パラメータによって計算アルゴリズムを補正し、補正された計算アルゴリズムに基づいて、第2分岐パターンを生成し、生成した第2分岐パターンを、加工プロセス用に空間光変調器に設定し表示させる第5処理と、を実行するように構成されている。
【0007】
本発明の一態様に係るレーザ加工装置では、分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じて生成された第1分岐パターンが空間光変調器に表示された状態においてレーザ光が出射され、対象物からの反射光が検出され、検出結果に基づいて各レーザ光の出力実測値が導出される。そして、本レーザ加工装置では、出力実測値を出力目標値に近づける第2分岐パターンの生成に係る補正パラメータが生成され、該補正パラメータによって補正された計算アルゴリズムによって第2分岐パターンが生成され、該第2分岐パターンが加工プロセス用に空間光変調器に表示される。このような構成によれば、実際に検出された反射光に基づいて高精度に推定される出力実測値を出力目標値に近づける第2分岐パターンの生成のための補正パラメータが生成される。そして、加工プロセス時においては、計算アルゴリズムが当該補正パラメータによって補正されて、第1分岐パラメータよりも分岐光の出力を出力目標値に近づけることができる第2分岐パターンが生成されることにより、分岐光の出力を所望の値に適切に調整することができる。以上のように、本発明の一態様に係るレーザ加工装置によれば、分岐光の出力を所望の値に調整し、加工品質を向上させることができる。
【0008】
制御部は、第1処理において、分岐後の各レーザ光の出力目標値の組み合わせが互いに異なる複数種類の第1分岐パターンを生成し、第4処理において、複数種類の第1分岐パターンに含まれる少なくとも2つの第1分岐パターンに係る共通の補正パラメータを生成してもよい。このように、出力目標値の条件が互いに異なる複数の第1分岐パターンについて共通の補正パラメータが生成されることにより、同じ補正パラメータを用いてそれぞれ特有の第2分岐パターンを生成することが可能となり、第1分岐パターン毎に補正パラメータを生成する場合と比較して、補正パラメータの生成処理及び管理を容易化することができる。
【0009】
制御部は、第4処理において、複数種類の第1分岐パターンについて、分岐パラメータの近似度に応じたグループ分けを行い、各グループ単位で、共通の補正パラメータを生成してもよい。例えば、全ての第1分岐パターンについて共通の1つの補正パラメータが生成される場合には、互いに分岐パラメータが大きく異なる第1分岐パターンが含まれる等の場合に、生成した共通の補正パラメータによって計算アルゴリズムを補正することによっても、全ての第2分岐パターンの精度(分岐光の出力を出力目標値に近づける精度)を十分に向上させることができない。この点、分岐パラメータが近似するグループ単位で共通の補正パラメータが生成される、すなわち、分岐パラメータが近似しないグループ間では別の補正パラメータが生成されることにより、第2分岐パターンの精度(分岐光の出力を出力目標値に近づける精度)を担保することができる。
【0010】
制御部は、第4処理において、分岐パラメータである出力目標値の近似度に応じたグループ分けを行ってもよい。これにより、出力目標値が近似するグループ単位で共通の補正パラメータが生成されることとなるので、第2分岐パターンの精度(分岐光の出力を出力目標値に近づける精度)を担保することができる。
【0011】
制御部は、第5処理において、加工プロセスにおける分岐パラメータを示す情報を取得し、該分岐パラメータに対応するグループの補正パラメータによって、計算アルゴリズムを補正してもよい。これにより、加工プロセスにおける分岐パラメータに適した補正パラメータによって補正された計算アルゴリズムにより生成された第2分岐パターンを表示して加工プロセスを行うことができ、加工品質を向上させることができる。
【0012】
制御部は、第1処理において、対象物の厚さ方向である鉛直方向における異なる位置にレーザ光を分岐する第1分岐パターンを生成してもよい。実際の加工時においては鉛直方向における異なる位置にレーザ光が分岐される(縦分岐される)場合があるところ、当該縦分岐に係る第1分岐パターンが生成されることにより、縦分岐された場合の分岐光の出力を適切に出力目標値に近づけることができる第2分岐パターンの生成に係る補正パラメータを生成することができる。
【0013】
本発明の一態様に係るレーザ加工方法は、対象物にレーザ光を照射することにより対象物に改質領域を形成するレーザ加工方法であって、所定の計算アルゴリズムに基づいて、レーザ光を複数に分岐する分岐パターンであって分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じた第1分岐パターンを生成し、生成した第1分岐パターンを空間光変調器に設定し表示させる第1工程と、第1分岐パターンが表示された空間光変調器にレーザ光を出射し、第1分岐パターンによって複数に分岐されたレーザ光を対象物に照射する第2工程と、分岐後の各レーザ光の、対象物からの反射光を検出する第3工程と、反射光の検出結果に基づき、分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出し、計算アルゴリズムを補正する補正パラメータであって出力実測値を前記出力目標値に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係る補正パラメータを生成する第4工程と、補正パラメータによって計算アルゴリズムを補正し、補正された計算アルゴリズムに基づいて、第2分岐パターンを生成し、生成した第2分岐パターンを、加工プロセス用に空間光変調器に設定し表示させる第5工程と、を含む。
【0014】
本発明の他の態様に係るレーザ加工方法は、所定の計算アルゴリズムに基づいて、レーザ光を複数に分岐する分岐パターンであって分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じた第1分岐パターンを生成し、生成した第1分岐パターンを空間光変調器に設定し表示させる第1工程と、第1分岐パターンが表示された空間光変調器にレーザ光を出射し、第1分岐パターンによって複数に分岐されたレーザ光をパワーメータにより計測することにより、分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出する第2工程と、計算アルゴリズムを補正する補正パラメータであって出力実測値を出力目標値に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係る補正パラメータを生成し出力する第3工程と、を含む。
【0015】
本発明の他の態様に係るレーザ加工方法では、分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じて設定された第1分岐パターンが空間光変調器に設定された状態においてレーザ光が出射され、第1分岐パターンによって複数に分岐されたレーザ光がパワーメータにより計測され、計測結果に基づいて分岐後の各レーザ光の出力実測値が導出される。そして、本レーザ加工方法では、出力実測値を出力目標値に近づける第2分岐パターンの生成に係る補正パラメータが生成されて出力される。このような構成によれば、パワーメータにより実際に計測された出力実測値を出力目標値に近づける第2分岐パターンの生成のための補正パラメータが生成される。このように、実際に計測した出力を目標値に近づけるように補正パラメータが生成されることにより、加工プロセス時において計算アルゴリズムが当該補正パラメータによって補正されて、第1分岐パラメータよりも分岐光の出力を出力目標値に近づけることができる第2分岐パターンが生成されることにより、分岐光の出力を所望の値に適切に調整することができる。以上のように、本発明の一態様に係るレーザ加工方法によれば、分岐光の出力を所望の値に調整し、加工品質を向上させることができる。
【0016】
上記他の態様に係るレーザ加工方法において、第2工程では、分岐後の各レーザ光の一部を遮光板で遮光しながらパワーメータによる出力計測を行う遮光時出力計測処理を実施し、該遮光時出力計測処理においては、遮光板によって遮光されるレーザ光の範囲を変更しながらパワーメータによる出力計測を行ってもよい。このように、遮光板によって遮光されるレーザ光の範囲を変更しながら、それぞれパワーメータによって出力計測が行われることにより、分岐後の各レーザ光の出力を適切に導出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分岐光の出力を所望の値に調整することにより加工品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1に示されるレーザ加工装置の一部分の正面図である。
【
図3】
図1に示されるレーザ加工装置のレーザ加工ヘッドの正面図である。
【
図4】
図3に示されるレーザ加工ヘッドの側面図である。
【
図5】
図3に示されるレーザ加工ヘッドの光学系の構成図である。
【
図6】複数の改質スポットを説明するための平面図である。
【
図8】GUIの設定画面の管理者モードの例を示す図である。
【
図9】2点分岐時の各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。
【
図10】3点分岐時の各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。
【
図11】4点分岐時の各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。
【
図13】縦分岐無しで取得したバランスパラメータを縦分岐有り(VD16)の加工に適用する場合の、各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。
【
図14】縦分岐有り(VD16)で取得したバランスパラメータを縦分岐有り(VD16)の加工に適用する場合の、各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。
【
図15】縦分岐量と最大誤差との関係を示す表である。
【
図16】領域毎にバランスパラメータを適用する場合の、各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。
【
図17】分岐パラメータに応じたバランスパラメータの運用を説明する図である。
【
図18】分岐パラメータに応じたバランスパラメータの運用を説明する図である。
【
図19】バランスパラメータを適用した分岐パターンの生成処理を説明するフローチャートである。
【
図20】バランスパラメータを適用した分岐パターンの生成処理を説明するフローチャートである。
【
図21】変形例に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
【
図22】パワーメータを利用した分岐後の各レーザ光の出力導出を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
まず、レーザ加工装置の基本的な構成について説明する。
【0021】
[レーザ加工装置の基本構成]
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、複数の移動機構5,6と、支持部7と、一対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと、光源ユニット8と、制御部9と、を備えている。なお、以下ではレーザ加工ヘッドが一対である例を説明するが、レーザ加工ヘッドは1つのみであってもよい。以下、第1方向をX方向、第1方向に垂直な第2方向をY方向、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向をZ方向という。本実施形態では、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0022】
移動機構5は、固定部51と、移動部53と、取付部55と、を有している。固定部51は、装置フレーム1aに取り付けられている。移動部53は、固定部51に設けられたレールに取り付けられており、Y方向に沿って移動することができる。取付部55は、移動部53に設けられたレールに取り付けられており、X方向に沿って移動することができる。
【0023】
移動機構6は、固定部61と、一対の移動部63,64と、一対の取付部65,66と、を有している。固定部61は、装置フレーム1aに取り付けられている。一対の移動部63,64のそれぞれは、固定部61に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。取付部65は、移動部63に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。取付部66は、移動部64に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。つまり、装置フレーム1aに対しては、一対の取付部65,66のそれぞれが、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動することができる。
【0024】
支持部7は、移動機構5の取付部55に設けられた回転軸に取り付けられており、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。つまり、支持部7は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動することができ、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。支持部7は、対象物100を支持する。対象物100は、例えば、ウエハである。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、移動機構6の取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光L1を照射する。レーザ加工ヘッド10Bは、移動機構6の取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光L2を照射する。
【0026】
光源ユニット8は、一対の光源81,82を有している。光源81は、レーザ光L1を出力する。レーザ光L1は、光源81の出射部81aから出射され、光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Aに導光される。光源82は、レーザ光L2を出力する。レーザ光L2は、光源82の出射部82aから出射され、別の光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Bに導光される。
【0027】
制御部9は、レーザ加工装置1の各部(支持部7、複数の移動機構5,6、一対のレーザ加工ヘッド10A,10B、及び光源ユニット8等)を制御する。制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部9は、各種機能を実現する。
【0028】
以上のように構成されたレーザ加工装置1による加工の一例について説明する。当該加工の一例は、ウエハである対象物100を複数のチップに切断するために、格子状に設定された複数のラインに沿って対象物100の内部に改質領域を形成する例である。なお、レーザ加工装置1は、対象物100の一部分を剥離する剥離加工を行うものであってもよい。
【0029】
まず、対象物100を支持している支持部7がZ方向において一対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと対向するように、移動機構5が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って支持部7を移動させる。続いて、対象物100において一方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0030】
続いて、一方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点(集光領域の一部)が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、一方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0031】
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、一方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し且つ一方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0032】
続いて、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0033】
続いて、他方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、他方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0034】
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、他方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し且つ他方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0035】
なお、上述した加工の一例では、光源81は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L1を出力し、光源82は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L2を出力する。そのようなレーザ光が対象物100の内部に集光されると、レーザ光の集光点に対応する部分においてレーザ光が特に吸収され、対象物100の内部に改質領域が形成される。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
【0036】
パルス発振方式によって出力されたレーザ光が対象物100に照射され、対象物100に設定されたラインに沿ってレーザ光の集光点が相対的に移動させられると、複数の改質スポットがラインに沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光の照射によって形成される。1列の改質領域は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物100に対するレーザ光の集光点の相対的な移動速度及びレーザ光の繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。設定されるラインの形状は、格子状に限定されず、環状、直線状、曲線状及びこれらの少なくとも何れかを組合せた形状であってもよい。
【0037】
[レーザ加工ヘッドの構成]
図3及び
図4に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、を備えている。
【0038】
筐体11は、第1壁部21及び第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24、並びに、第5壁部25及び第6壁部26を有している。第1壁部21及び第2壁部22は、X方向において互いに対向している。第3壁部23及び第4壁部24は、Y方向において互いに対向している。第5壁部25及び第6壁部26は、Z方向において互いに対向している。
【0039】
レーザ加工ヘッド10Aでは、第1壁部21は、移動機構6の固定部61とは反対側に位置しており、第2壁部22は、固定部61側に位置している。第3壁部23は、移動機構6の取付部65側に位置しており、第4壁部24は、取付部65とは反対側であってレーザ加工ヘッド10B側に位置している(
図2参照)。第5壁部25は、支持部7とは反対側に位置しており、第6壁部26は、支持部7側に位置している。
【0040】
筐体11は、第3壁部23が移動機構6の取付部65側に配置された状態で筐体11が取付部65に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部65は、ベースプレート65aと、取付プレート65bと、を有している。ベースプレート65aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている(
図2参照)。取付プレート65bは、ベースプレート65aにおけるレーザ加工ヘッド10B側の端部に立設されている(
図2参照)。筐体11は、第3壁部23が取付プレート65bに接触した状態で、台座27を介してボルト28が取付プレート65bに螺合されることで、取付部65に取り付けられている。台座27は、第1壁部21及び第2壁部22のそれぞれに設けられている。筐体11は、取付部65に対して着脱可能である。
【0041】
入射部12は、第5壁部25に取り付けられている。入射部12は、筐体11内にレーザ光L1を入射させる。入射部12は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。
【0042】
入射部12は、光ファイバ2の接続端部2aが接続可能となるように構成されている。光ファイバ2の接続端部2aには、ファイバの出射端から出射されたレーザ光L1をコリメートするコリメータレンズが設けられており、戻り光を抑制するアイソレータが設けられていない。当該アイソレータは、接続端部2aよりも光源81側であるファイバの途中に設けられている。これにより、接続端部2aの小型化、延いては、入射部12の小型化が図られている。なお、光ファイバ2の接続端部2aにアイソレータが設けられていてもよい。
【0043】
調整部13は、筐体11内に配置されている。調整部13は、入射部12から入射したレーザ光L1を調整する。調整部13が有する各構成は、筐体11内に設けられた光学ベース29に取り付けられている。光学ベース29は、筐体11内の領域を第3壁部23側の領域と第4壁部24側の領域とに仕切るように、筐体11に取り付けられている。光学ベース29は、筐体11と一体となっている。調整部13が有する各構成は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。調整部13が有する各構成の詳細については後述する。
【0044】
集光部14は、第6壁部26に配置されている。具体的には、集光部14は、第6壁部26に形成された孔26aに挿通された状態で(
図5参照)、第6壁部26に配置されている。集光部14は、調整部13によって調整されたレーザ光L1を集光しつつ筐体11外に出射させる。集光部14は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。
【0045】
図5に示されるように、調整部13は、アッテネータ31と、ビームエキスパンダ32と、ミラー33と、を有している。入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33は、Z方向に沿って延在する直線(第1直線)A1上に配置されている。アッテネータ31及びビームエキスパンダ32は、直線A1上において、入射部12とミラー33との間に配置されている。アッテネータ31は、入射部12から入射したレーザ光L1の出力を調整する。ビームエキスパンダ32は、アッテネータ31で出力が調整されたレーザ光L1の径を拡大する。ミラー33は、ビームエキスパンダ32で径が拡大されたレーザ光L1を反射する。
【0046】
調整部13は、反射型空間光変調器34と、結像光学系35と、を更に有している。調整部13の反射型空間光変調器34及び結像光学系35、並びに、集光部14は、Z方向に沿って延在する直線(第2直線)A2上に配置されている。反射型空間光変調器34は、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。反射型空間光変調器34は、ミラー33で反射されたレーザ光L1を変調する。反射型空間光変調器34は、表示された変調パターンに応じて、レーザ光L1を変調する。反射型空間光変調器34には、少なくともレーザ光L1を複数に分岐するための分岐パターンが設定・表示される。これにより、反射型空間光変調器34に入射したレーザ光L1は、反射型空間光変調器34において複数のレーザ光に分岐される(
図6参照。詳細は後述)。結像光学系35は、反射型空間光変調器34の反射面34aと集光部14の入射瞳面14aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。結像光学系35は、3つ以上のレンズによって構成されている。
【0047】
直線A1及び直線A2は、Y方向に垂直な平面上に位置している。直線A1は、直線A2に対して第2壁部22側(一方の壁部側)に位置している。レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1は、入射部12から筐体11内に入射して直線A1上を進行し、ミラー33及び反射型空間光変調器34で順次に反射された後、直線A2上を進行して集光部14から筐体11外に出射する。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。また、アッテネータ31は、ミラー33と反射型空間光変調器34との間に配置されていてもよい。また、調整部13は、他の光学部品(例えば、ビームエキスパンダ32の前に配置されるステアリングミラー等)を有していてもよい。
【0048】
レーザ加工ヘッド10Aは、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、検出部17と、駆動部18と、回路部19と、を更に備えている。
【0049】
ダイクロイックミラー15は、直線A2上において、結像光学系35と集光部14との間に配置されている。つまり、ダイクロイックミラー15は、筐体11内において、調整部13と集光部14との間に配置されている。ダイクロイックミラー15は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。ダイクロイックミラー15は、レーザ光L1を透過させる。ダイクロイックミラー15は、非点収差を抑制する観点では、例えば、キューブ型、又は、ねじれの関係を有するように配置された2枚のプレート型が好ましい。
【0050】
測定部16は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。測定部16は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。測定部16は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)と集光部14との距離を測定するための測定光L10を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された測定光L10を検出する。つまり、測定部16から出力された測定光L10は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14を介して測定部16で検出される。
【0051】
より具体的には、測定部16から出力された測定光L10は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられたビームスプリッタ20及びダイクロイックミラー15で順次に反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15及びビームスプリッタ20で順次に反射され、測定部16に入射し、測定部16で検出される。
【0052】
検出部17は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。検出部17は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。検出部17は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)を観察するための観察光L20を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された観察光L20を検出する。つまり、検出部17から出力された観察光L20は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14を介して検出部17で検出される。検出部17は、例えば、反射された観察光L20を検出(撮像)するカメラである。
【0053】
より具体的には、検出部17から出力された観察光L20は、ビームスプリッタ20を透過してダイクロイックミラー15で反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15で反射され、ビームスプリッタ20を透過して検出部17に入射し、検出部17で検出される。なお、レーザ光L1、測定光L10及び観察光L20のそれぞれの波長は、互いに異なっている(少なくともそれぞれの中心波長が互いにずれている)。
【0054】
また、検出部17は、対象物100の表面で反射されたレーザ光L1の一部を検出する(詳細は後述)。対象物100の表面で反射されたレーザ光L1の一部とは、対象物100の表面で反射されたレーザ光L1のうち、ダイクロイックミラー15において検出部17方向に少量だけ反射されたレーザ光L1である。
【0055】
駆動部18は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。駆動部18は、例えば圧電素子の駆動力によって、第6壁部26に配置された集光部14をZ方向に沿って移動させる。
【0056】
回路部19は、筐体11内において、光学ベース29に対して第3壁部23側に配置されている。つまり、回路部19は、筐体11内において、調整部13、測定部16及び検出部17に対して第3壁部23側に配置されている。回路部19は、例えば、複数の回路基板である。回路部19は、測定部16から出力された信号、及び反射型空間光変調器34に入力する信号を処理する。回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。一例として、回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて、対象物100の表面と集光部14との距離が一定に維持されるように(すなわち、対象物100の表面とレーザ光L1の集光点との距離が一定に維持されるように)、駆動部18を制御する。なお、筐体11には、回路部19を制御部9(
図1参照)等に電気的に接続するための配線が接続されるコネクタ(図示省略)が設けられている。
【0057】
レーザ加工ヘッド10Bは、レーザ加工ヘッド10Aと同様に、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、検出部17と、駆動部18と、回路部19と、を備えている。ただし、レーザ加工ヘッド10Bの各構成は、
図2に示されるように、一対の取付部65,66間の中点を通り且つY方向に垂直な仮想平面に関して、レーザ加工ヘッド10Aの各構成と面対称の関係を有するように、配置されている。
【0058】
例えば、レーザ加工ヘッド10Aの筐体(第1筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10B側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。これに対し、レーザ加工ヘッド10Bの筐体(第2筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10A側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。
【0059】
レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付部66側に配置された状態で筐体11が取付部66に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部66は、ベースプレート66aと、取付プレート66bと、を有している。ベースプレート66aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている。取付プレート66bは、ベースプレート66aにおけるレーザ加工ヘッド10A側の端部に立設されている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付プレート66bに接触した状態で、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、取付部66に対して着脱可能である。
【0060】
[レーザ光の分岐]
以下では、
図6~
図8を参照して、対象物100の切断及び剥離等を目的として行うレーザ光の分岐について説明する。上述したように、レーザ光L1は、反射型空間光変調器34に設定・表示される分岐パターンに応じて分岐される。
【0061】
図6は、レーザ光L1を4つに分岐する場合の複数の改質スポットSAを説明する図である。
図6に示される例では、加工進行方向C1と直交する直交方向に対して傾斜する傾斜方向C2に沿って一列に並ぶ複数(4つ)の改質スポットSAが対象物100に形成されるように、レーザ光L1が分岐されている。レーザ光L1の分岐は、反射型空間光変調器34(
図5参照)に設定・表示される分岐パターン(変調パターン)により実現される。
【0062】
図示される例では、レーザ光L1が4分岐され、4つの改質スポットSAが形成される。分岐された4つの改質スポットSAのうち隣接する一対の改質スポットSAについて、加工進行方向C1における間隔が分岐ピッチBPxであり、加工進行方向C1の直交方向における間隔が分岐ピッチBPyである。連続する2パルスのレーザ光L1の照射で形成される一対の改質スポットSAについて、加工進行方向C1における間隔がパルスピッチPPである。加工進行方向C1と傾斜方向C2と間の角度が分岐角度αである。
【0063】
図7は、
図6に示されるようなレーザ光L1の分岐を実現するためのGUI111の設定画面である。GUI111は、ユーザからの入力を受け付ける入力部として機能する。
図7に示されるGUI111の設定画面は、加工条件を選択する加工条件選択ボタン211と、レーザ光L1の分岐数を入力又は選択する分岐数欄212と、1本の加工用ラインに沿ったレーザ加工の後に次の加工用ラインまでの移動する距離であるインデックスを入力するインデックス欄213と、分岐数及びインデックスの入力又は表示を行うイメージ
図214と、Z方向における改質スポットSAの位置を入力する加工Zハイト欄215と、加工速度を入力する加工速度欄216と、加工条件の切替方法を選択する条件切替方法ボタン217と、を含む。
【0064】
加工条件選択ボタン211では、具体的な加工条件を複数の選択肢の中から選択できる。インデックス欄213によれば、分岐数が1の場合には、その入力値分だけ自動でインデックス方向にレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。分岐数を1よりも大きくした場合には、以下の計算式に基づくインデックスだけ、インデックス方向にレーザ加工ヘッド10Aを自動で移動させる。
インデックス=(分岐数)×インデックス入力値
【0065】
イメージ
図214は、インデックス入力値の表示部214aと、各改質スポットSAの出力を入力する出力入力欄214bと、を含む。
【0066】
図8は、GUI111の設定画面の管理者モードの例を示す図である。
図8に示される設定画面は、レーザ光L1の分岐方向を選択する分岐方向選択ボタン221と、レーザ光L1の分岐数を入力又は選択する分岐数欄222と、分岐ピッチBPxを入力する分岐ピッチ入力欄223と、分岐ピッチBPxの列数を入力する分岐ピッチ列数入力欄224と、分岐ピッチBPyを入力する分岐ピッチ入力欄225と、インデックスを入力するインデックス欄226と、分岐数に基づく光軸イメージ
図227と、レーザ光L1のスキャン方向が一方向(往路)か他方向(復路)かを選択する往路復路選択ボタン228と、各種の数値のバランスを自動で調整するバランス調整開始ボタン229と、を含む。
【0067】
[分岐パターン補正処理]
本実施形態に係るレーザ加工装置1では、対象物100に改質領域を形成する加工処理(加工プロセス)を行う前段階において、所定の計算式(計算アルゴリズム)に基づいて、分岐後の各レーザ光の出力比(出力目標値)に応じた第1分岐パターンが生成され、該第1分岐パターンが反射型空間光変調器34に表示された状態において対象物100にレーザ光が出射され、第1分岐パターンによる分岐後の各レーザ光の反射光が検出され、検出結果に基づき分岐後の各レーザ光の出力実測値が導出されて、当該出力実測値を所望の出力比(出力目標値)に近づける第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータ(補正パラメータ)が生成される。そして、加工処理時においては、本レーザ加工装置1では、上記バランスパラメータにより計算式が補正され、補正された計算式に基づいて第2分岐パターンが生成され、該第2分岐パターンが加工処理用に反射型空間光変調器34に設定され表示される。
【0068】
このように、本実施形態に係るレーザ加工装置1では、所定の計算式に基づいて生成される第1分岐パターンがそのまま加工処理時に用いられるのではなく、加工処理前に、第1分岐パターンを用いた場合の分岐後の各レーザ光の出力実測値が導出されて、想定していた出力比と出力実測値との誤差を小さくする第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータが生成され、加工処理時には、当該バランスパラメータによって計算式が補正されて、補正後の計算式から生成される第2分岐パターンが用いられる。これにより、分岐光の出力を所望の値(出力比)に適切に調整し、加工品質を向上させることができる。
【0069】
補正前における上述した誤差(想定していた出力比と出力実測値との誤差)は、例えば、空間光変調器自体の光学特性やレンズにおける各分岐光の透過領域が互いに異なる等の光学特性、あるいは、光学素子の個体差等の影響により生じるものである。
【0070】
図9は、2点分岐時の各出力比率における設計値(理想的な出力比)からの実測値の誤差を示す表である。
図9の左図には、バランスパラメータによる補正が実施されずに上述した第1分岐パターンが用いられた場合の、誤差が示されている。
図9の左図に示されるように、バランスパラメータによる補正が実施されなかった場合には、例えば、2点分岐における出力比の設計値が20:80である場合に実測値が9:91(誤差11%)、設計値が30:70である場合に実測値が21:79(誤差9%)、設計値が40:60である場合に実測値が35:65(誤差5%)、設計値が50:50である場合に実測値が51:49(誤差1%)、設計値が60:40である場合に実測値が65:35(誤差5%)と、特に分岐された2点の出力の差異が大きい場合に、誤差が大きくなっている。
【0071】
レーザ加工装置1は、
図9の左図に示されるような誤差の情報に基づいて、出力実測値を設計値(理想的な出力比)に近づけるバランスパラメータを生成する。当該バランスパラメータは、分岐パターンを生成する計算式を補正するものであり、補正後の計算式による第2分岐パターン(出力実測値を設計値に近づける分岐パターン)の生成を可能にするものである。
図9の右図には、バランスパラメータによる補正が実施されて生成された第2分岐パターンが用いられた場合の、誤差が示されている。
図9の右図に示される例では、バランスパラメータが適用される、すなわちバランスパラメータにより計算式が補正されることにより生成された第2分岐パラメータが用いられることによって、各出力比率における誤差が小さくなっており、最大誤差が3%にまで小さくなっている。なお、
図9は、第1分岐パターンが縦分岐無しの条件とされると共に、第2分岐パターンを適用した加工処理においても縦分岐無しの条件とされた場合の誤差を示している。
【0072】
バランスパラメータを生成し適用した場合の効果は、2点分岐に限られず、その他の分岐数でも同様である。
図10は、3点分岐時の各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。
図11は、4点分岐時の各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。
図10の左図に示されるように、バランスパラメータによる補正が実施されなかった場合には、3点分岐時における各出力比の最大誤差が8%となっているが、
図10の右図に示されるように、バランスパラメータが適用されることにより、3点分岐時における各出力比の最大誤差が3%にまで小さくなっている。また、
図11の左図に示されるように、バランスパラメータによる補正が実施されなかった場合には、4点分岐時における各出力比の最大誤差が9%となっているが、
図11の右図に示されるように、バランスパラメータが適用されることにより、4点分岐時における各出力比の最大誤差が3%にまで小さくなっている。
【0073】
レーザ加工装置1は、対象物100の厚さ方向であるZ方向(鉛直方向)における異なる位置にレーザ光を分岐する縦分岐を行う第1分岐パターンを生成してもよい。
図12は、縦分岐の態様を説明する図である。
図12(a)は、縦分岐無しの3点分岐時の各レーザ光を示しており、
図12(b)は、縦分岐有りの3点分岐時の各レーザ光を示している。
図12(a)及び
図12(b)において、横軸は加工進行方向であり、縦軸はZ方向(鉛直方向)である。
図12(a)に示されるように、縦分岐無しの状態においては、Z方向における同じ高さに、分岐後の各レーザ光が照射されている。一方で、
図12(b)に示されるように、縦分岐有りの状態においては、Z方向において互いに異なる高さに、分岐後の各レーザ光が照射されている。なお、
図12(a)における「縦分岐 VD0」とは縦分岐無しであることを意味しており、
図12(b)における「縦分岐 VD16」とは、縦分岐有りであってZ方向における分岐ピッチが16μであることを意味している。
【0074】
図13は、縦分岐無しで取得したバランスパラメータを縦分岐有り(VD16)の加工に適用する場合の、3点分岐時の各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。
図13の左図には、縦分岐無しの第1分岐パターンが用いられた場合の誤差が示されている。
図13の右図には、
図13の左図に示されるような縦分岐無しの場合の誤差の情報に基づいて生成されたバランスパラメータによる補正が実施されて生成された第2分岐パラメータが用いられて、縦分岐有り(VD16)の加工が実施された場合の誤差が示されている。上述したように、第1分岐パターンを用いた処理、及び、第2分岐パターンを適用した加工処理のいずれも、縦分岐無しとされた場合には、3点分岐時において、
図10の右図に示されるように、最大誤差を3%にまで低減することができた。一方で、縦分岐無しの第1分岐パターンによってバランスパラメータが生成されて、該バランスパラメータによる補正が実施されて生成された第2分岐パターンが用いられて縦分岐有り(VD16)の加工が実施された場合には、
図13の右図に示されるように、最大誤差が4%となった。このように、バランスパラメータ生成及び加工の縦分岐の条件が互いに異なると、バランスパラメータを適用しても設計値からの実測値の誤差を十分に小さくできないことが考えられる。
【0075】
図14は、縦分岐有り(VD16)で取得したバランスパラメータを縦分岐有り(VD16)の加工に適用する場合の、3点分岐時の各出力比率における設計値からの実測値の誤差を示す表である。第1分岐パターンを用いた処理、及び、第2分岐パターンを適用した加工処理のいずれも、縦分岐有り(VD16)とされることにより、
図14の右図に示されるように、最大誤差を3%にまで低減することができた。このように、バランスパラメータ生成及び加工の縦分岐の条件を共通化することにより、設計値からの実測値の誤差を十分に小さくすることができる。
【0076】
図15は、縦分岐量と最大誤差との関係を示す表である。
図15における「縦分岐量」とは、加工処理における縦分岐量を示している。
図15における「最大誤差」とは、VD16の第1分岐パターンに基づき生成されたバランスパラメータが適用されて、「縦分岐量」に示された縦分岐の加工が実施された場合の、ある出力比における最大誤差を示している。
図16に示されるように、VD16の第1分岐パターンに基づき生成されたバランスパラメータが適用される場合には、VD16の分岐加工が実施された場合に、最大誤差が最小(0.8%)となっている。また、
図16に示されるように、VD16の第1分岐パターンに基づき生成されたバランスパラメータが適用されてVD2の分岐加工が実施された場合にも、最大誤差が1.4%と比較的小さくなっている。このように、バランスパラメータ生成及び加工の縦分岐の条件が一致していなくても、縦分岐有りの加工が実施される場合には、縦分岐有りの条件で生成されたバランスパラメータが用いられることにより、誤差を小さくすることができる。
【0077】
レーザ加工装置1は、分岐後の各レーザ光の出力比(出力目標値)の組み合わせが互いに異なる複数種類の第1分岐パターンを生成し、当該複数種類の第1分岐パターンに係る共通のバランスパラメータを生成してもよい。ここで、例えば、
図16の左図に示される領域A(実線の四角で囲われた領域)内の設計値からの実測値の誤差が小さくなるように(例えば最小化するように)、各出力比に関する共通のバランスパラメータが生成されたとすると、
図16の左図に示されるように、領域Aにおける誤差は1%以下と小さくなるものの、領域Aとは異なる領域B(一点鎖線の四角で囲われた領域)及び領域C(破線の四角で囲われた領域)における誤差は3%~6%と大きくなってしまう。このように、ある領域の誤差を小さくなるように生成されたバランスパラメータでは、当該領域から離れた領域の誤差を十分に小さくすることができない。
【0078】
このため、レーザ加工装置1は、分岐パラメータである出力比(出力目標値)の近似度に応じたグループ分けを行い、グループ単位で、共通のバランスパラメータを生成してもよい。すなわち、レーザ加工装置1は、出力比が近似するグループ(領域)単位に共通のバランスパラメータを生成してもよい。
図16の右図には、各領域A,B,C毎に、1つずつ共通のバランスパラメータを生成した場合の、3点分岐における誤差が示されている。
図16の右図に示されるように、領域A,B,C毎に共通のバランスパラメータが生成されると、全ての出力比において、設計値と実測値との誤差を1%程度と小さくすることができる。このようにして、加工時に使用する出力比によってバランスパラメータが切り替えられることにより、設計値からの実測値の誤差を小さくすることができる。
【0079】
以下では、上述した分岐パターン補正処理を実現する制御部9の機能について詳細に説明する。
【0080】
制御部9は、所定の計算式(計算アルゴリズム)に基づいて、レーザ光を複数に分岐する分岐パターンであって分岐後の各レーザ光の出力比(出力目標値)に応じた第1分岐パターンを生成し、生成した第1分岐パターンを反射型空間光変調器34に設定し表示させる第1処理と、反射型空間光変調器34に第1分岐パターンが表示された状態においてレーザ光が出射されるように光源ユニット8を制御する第2処理と、第1分岐パターンによる分岐後の各レーザ光の反射光が検出されるように検出部17を制御する第3処理と、検出部17による検出結果に基づき分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出し、計算式を補正する補正パラメータであって出力実測値を所望の出力比(出力目標値)に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータ(補正パラメータ)を生成する第4処理と、バランスパラメータによって計算式を補正し、補正された計算式に基づいて、第2分岐パターンを生成し、生成した第2分岐パターンを、加工プロセス用に反射型空間光変調器34に設定し表示させる第5処理と、を実行するように構成されている。
【0081】
第1処理では、制御部9は、GUI111の設定画面(
図7及び
図8参照)において受付けられた情報に基づき出力比を決定し、決定した出力比に応じた第1分岐パターンを反射型空間光変調器34に設定する。制御部9は、予め記憶されている計算式(計算アルゴリズム)に基づいて、出力比に応じた第1分岐パターンを生成する。制御部9は、分岐後の各レーザ光の出力比の組み合わせが互いに異なる複数種類の第1分岐パターンを生成してもよい。また、制御部9は、対象物100の厚さ方向であるZ方向(鉛直方向)における異なる位置にレーザ光を分岐する縦分岐を行う第1分岐パターンを生成してもよい。
【0082】
第2処理では、制御部9は、反射型空間光変調器34に第1分岐パターンが表示された状態において、例えば、対象物100に改質領域が形成されない出力(改質閾値以下)でレーザ光が照射されるように光源ユニット8を制御する。なお、分岐パターン補正処理後にレーザ加工を行う対象物100とは別の対象物(補正処理用の対象物)に分岐後のレーザ光が照射されてもよい。
【0083】
第3処理では、制御部9は、少なくとも、分岐後の各レーザ光が対象物100に照射されている期間において、分岐後の各レーザ光の対象物100における反射光の検出(撮像)が可能となるように、検出部17を制御する。制御部9は、検出部17によって撮像された画像を検出部17から取得する。
【0084】
第4処理では、制御部9は、例えば、検出部17によって取得された撮像データにおける、分岐後の各レーザ光に応じた各点の輝度に基づいて、各レーザ光の出力実測値を推定(導出)する。制御部9は、計算式を補正する補正パラメータとして、出力実測値を所望の出力比に近づける第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータを生成する。制御部9は、複数種類の第1分岐パターンが生成されている場合には、当該複数種類の第1分岐パターンに含まれる少なくとも2つの第1分岐パターンに係る共通の補正パラメータを生成する。制御部9は、全ての第1分岐パターンに係る共通の補正パラメータを生成してもよいし、複数種類の第1分岐パターンについて分岐パラメータの近似度に応じたグループ分けを行い、各グループ単位で共通のバランスパラメータを生成してもよい。分岐パラメータとは、例えば、分岐数、出力比(出力目標値)、縦分岐量、個別収差補正量等である。
図16に示される例では、制御部9は、分岐パラメータである出力比の近似度に応じたグループ分けを行い、領域A、領域B、領域Cのそれぞれのグループ単位でバランスパラメータを生成している。
【0085】
第5処理では、制御部9は、バランスパラメータで計算式を補正し補正後の計算式に基づき第2分岐パターンを生成する処理と、加工プロセス時に第2分岐パターンを反射型空間光変調器34に設定し表示する処理と、を実行する。制御部9は、加工プロセスにおける分岐パラメータを示す情報を取得し、当該分岐パラメータに対応するグループのバランスパラメータによって、計算式を補正してもよい。
図17及び
図18は、分岐パラメータに応じたバランスパラメータの運用を説明する図である。制御部9は、例えば、GUI111の設定画面(
図7及び
図8参照)において受付けられた情報に基づき、加工プロセスにおける分岐パラメータを示す情報として分岐数を示す情報を取得し、
図17に示されるように、分岐数に応じたバランスパラメータを特定して、特定したバランスパラメータにより計算式を補正してもよい。
図17には、分岐数が2である場合には2点分岐用バランスパラメータを計算式に反映させ、分岐数が3である場合には3点分岐用バランスパラメータを計算式に反映させ、分岐数が4である場合には4点分岐用バランスパラメータを計算式に反映させることが示されている。
【0086】
制御部9は、例えば、GUI111の設定画面(
図7及び
図8参照)において受付けられた情報に基づき、加工プロセスにおける分岐パラメータを示す情報として出力比を示す情報を取得し、出力比に応じたバランスパラメータを特定して、特定したバランスパラメータにより計算式を補正してもよい。例えば、
図16に示されるような、出力比に応じた3つの領域(領域A、領域B、領域C)毎のバランスパラメータが生成されているとする。この場合、
図18に示されるように、制御部9は、例えば、領域Aに含まれる出力比とする場合には、領域Aのバランスパラメータ(
図18に示されるバランスパラメータリストA)を計算式に反映させ、領域Bに含まれる出力比とする場合には、領域Bのバランスパラメータ(
図18に示されるバランスパラメータリストB)を計算式に反映させる。
【0087】
次に、バランスパラメータを適用した分岐パターンの生成処理について、
図19及び
図20を参照して説明する。
図19及び
図20は、バランスパラメータを適用した分岐パターンの生成処理を説明するフローチャートである。
図19では、1つのバランスパラメータを運用する例が示されており、
図20では、複数のバランスパラメータを切り替えて運用する例が示されている。
【0088】
図19に示されるように、最初に、GUI111の設定画面において受付けられた情報(設計値)に基づき、第1分岐パターンが導出され、該第1分岐パターンが反射型空間光変調器34に設定・表示される(ステップS1:第1工程)。
【0089】
つづいて、第1分岐パターンが表示された反射型空間光変調器34にレーザ光L1が出射され、第1分岐パターンによって複数に分岐されたレーザ光が対象物100に照射されてレーザ照射が開始される(ステップS2:第2工程)。
【0090】
つづいて、対象物100からの分岐光の反射光が検出部17によって検出(撮像)される(ステップS3:第3工程)。
【0091】
つづいて、撮像データ(反射光の検出結果)に基づいて、分岐後の各レーザ光の出力実測値が導出され、出力実測値と所望の出力比(出力目標値,設計値)との誤差から、バランスパラメータが生成される(ステップS4:第4工程)。
【0092】
最後に、バランスパラメータによって計算式が補正され、補正された計算式に基づいて第2分岐パターンが生成され、生成された第2分岐パターンが、加工プロセス用に反射型空間光変調器34に設定・表示される(ステップS5:第5工程)。
【0093】
次に、
図20を参照して、複数のバランスパラメータを切り替えて運用する例について説明する。
図20に示されるように、ステップS11~S14の処理は、
図19のステップS1~ステップS4の処理と同様である。ただし、ステップS14においては、複数種類の第1分岐パターンについて分岐パラメータの近似度に応じたグループ分けが行われ、各グループ単位でそれぞれ、バランスパラメータが生成されている。
【0094】
そして、加工プロセスにおける分岐パラメータを示す情報(加工条件)が取得され、加工条件(例えば出力比)に基づき、バランスパラメータが切り替えられる(ステップS15)。すなわち、複数のバランスパラメータの中から加工条件に合ったバランスパラメータが選択される。
【0095】
最後に、選択されたバランスパラメータによって計算式が補正され、補正された計算式に基づいて第2分岐パターンが生成され、生成された第2分岐パターンが、加工プロセス用に反射型空間光変調器34に設定・表示される。
【0096】
次に、本実施形態に係るレーザ加工装置1の作用効果について説明する。
【0097】
本実施形態に係るレーザ加工装置1は、対象物100にレーザ光を照射することにより対象物100に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、レーザ光を出射する光源ユニット8と、光源ユニット8から出射されたレーザ光を変調する反射型空間光変調器34と、対象物100におけるレーザ光の反射光を検出する検出部17と、制御部9と、を備え、制御部9は、所定の計算式に基づいて、レーザ光を複数に分岐する分岐パターンであって分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じた第1分岐パターンを生成し、生成した第1分岐パターンを反射型空間光変調器34に設定し表示させる第1処理と、反射型空間光変調器34に第1分岐パターンが表示された状態においてレーザ光が出射されるように光源ユニット8を制御する第2処理と、第1分岐パターンによる分岐後の各レーザ光の反射光が検出されるように検出部17を制御する第3処理と、検出部17による検出結果に基づき分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出し、計算式を補正する補正パラメータであって出力実測値を出力目標値に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータを生成する第4処理と、バランスパラメータによって計算式を補正し、補正された計算式に基づいて、第2分岐パターンを生成し、生成した第2分岐パターンを、加工プロセス用に反射型空間光変調器34に設定し表示させる第5処理と、を実行するように構成されている。
【0098】
本実施形態に係るレーザ加工装置1では、分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じて生成された第1分岐パターンが反射型空間光変調器34に表示された状態においてレーザ光が出射され、対象物100からの反射光が検出され、検出結果に基づいて各レーザ光の出力実測値が導出される。そして、本レーザ加工装置1では、出力実測値を出力目標値に近づける第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータが生成され、該バランスパラメータによって補正された計算式によって第2分岐パターンが生成され、該第2分岐パターンが加工プロセス用に反射型空間光変調器34に表示される。このような構成によれば、実際に検出された反射光に基づいて高精度に推定される出力実測値を出力目標値に近づける第2分岐パターンの生成のためのバランスパラメータが生成される。そして、加工プロセス時においては、計算式が当該バランスパラメータによって補正されて、第1分岐パラメータよりも分岐光の出力を出力目標値に近づけることができる第2分岐パターンが生成されることにより、分岐光の出力を所望の値に適切に調整することができる。以上のように、本実施形態に係るレーザ加工装置1によれば、分岐光の出力を所望の値に調整し、加工品質を向上させることができる。
【0099】
制御部9は、第1処理において、分岐後の各レーザ光の出力目標値の組み合わせが互いに異なる複数種類の第1分岐パターンを生成し、第4処理において、複数種類の第1分岐パターンに含まれる少なくとも2つの第1分岐パターンに係る共通のバランスパラメータを生成してもよい。このように、出力目標値の条件が互いに異なる複数の第1分岐パターンについて共通のバランスパラメータが生成されることにより、同じバランスパラメータを用いてそれぞれ特有の第2分岐パターンを生成することが可能となり、第1分岐パターン毎にバランスパラメータを生成する場合と比較して、バランスパラメータの生成処理及び管理を容易化することができる。
【0100】
制御部9は、第4処理において、複数種類の第1分岐パターンについて、バランスパラメータの近似度に応じたグループ分けを行い、各グループ単位で、共通のバランスパラメータを生成してもよい。例えば、全ての第1分岐パターンについて共通の1つのバランスパラメータが生成される場合には、互いに分岐パラメータが大きく異なる第1分岐パターンが含まれる等の場合に、生成した共通のバランスパラメータによって計算式を補正することによっても、全ての第2分岐パターンの精度(分岐光の出力を出力目標値に近づける精度)を十分に向上させることができない。この点、分岐パラメータが近似するグループ単位で共通のバランスパラメータが生成される、すなわち、分岐パラメータが近似しないグループ間では別のバランスパラメータが生成されることにより、第2分岐パターンの精度(分岐光の出力を出力目標値に近づける精度)を担保することができる。
【0101】
制御部9は、第4処理において、分岐パラメータである出力目標値の近似度に応じたグループ分けを行ってもよい。これにより、出力目標値が近似するグループ単位で共通のバランスパラメータが生成されることとなるので、第2分岐パターンの精度(分岐光の出力を出力目標値に近づける精度)を担保することができる。
【0102】
制御部9は、第5処理において、加工プロセスにおける分岐パラメータを示す情報を取得し、該分岐パラメータに対応するグループのバランスパラメータによって、計算式を補正してもよい。これにより、加工プロセスにおける分岐パラメータに適したバランスパラメータによって補正された計算式により生成された第2分岐パターンを表示して加工プロセスを行うことができ、加工品質を向上させることができる。
【0103】
制御部9は、第1処理において、対象物100の厚さ方向である鉛直方向における異なる位置にレーザ光を分岐する第1分岐パターンを生成してもよい。実際の加工時においては鉛直方向における異なる位置にレーザ光が分岐される(縦分岐される)場合があるところ、当該縦分岐に係る第1分岐パターンが生成されることにより、縦分岐された場合の分岐光の出力を適切に出力目標値に近づけることができる第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータを生成することができる。
【0104】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、バランスパラメータ(補正パラメータ)の生成に関して分岐後の各レーザ光の出力を計測する方法として、対象物からの反射光を検出部によって検出する方法を説明したがこれに限定されない。具体的には、バランスパラメータの生成に関する分岐後の各レーザ光の出力は、パワーメータによって計測されてもよい。以下、パワーメータを利用した態様について、
図21及び
図22を参照して説明する。
【0105】
図21は、変形例に係るレーザ加工装置500の概略構成図である。
図21に示されるように、レーザ加工装置500は、レーザ光源402、反射型空間光変調器403、4f光学系441、遮光板420及び集光光学系404を筐体431内に備えている。レーザ加工装置500は、対象物にレーザ光Lを集光することにより対象物に改質領域を形成する装置である。ここでは、例えば、レーザ加工装置500の製造時又は調整時においてバランスパラメータが生成される場面を想定しており、加工対象である対象物がステージ(不図示)にセットされていない。そして、レーザ強度を計測するためのパワーメータ700が集光光学系404の下方に設置(例えばステージ(不図示)上に載置)されており、パワーメータ700によるレーザ光の出力計測結果に基づいてバランスパラメータが生成される(詳細は後述)。
【0106】
レーザ光源402は、水平方向にレーザ光Lを出射するように、筐体431の天板436にねじ等で固定されている。反射型空間光変調器403は、レーザ光源402から出射されたレーザ光Lを変調するものであり、水平方向から入射するレーザ光Lを変調すると共に、水平方向に対し斜め上方に反射する。
【0107】
4f光学系441は、反射型空間光変調器403によって変調されたレーザ光Lの波面形状を調整するものであり、第1レンズ441a及び第2レンズ441bを有している。第1レンズ441a及び第2レンズ441bは、反射型空間光変調器403と第1レンズ441aとの間の光路の距離が第1レンズ441aの第1焦点距離となり、集光光学系404と第2レンズ441bとの間の光路の距離が第2レンズ441bの第2焦点距離となり、第1レンズ441aと第2レンズ441bとの間の光路の距離が第1焦点距離と第2焦点距離との和となり、第1レンズ441a及び第2レンズ441bが両側テレセントリック光学系となるように、反射型空間光変調器403と集光光学系404との間の光路上に配置されている。この4f光学系441によれば、反射型空間光変調器403で変調されたレーザ光Lが空間伝播によって波面形状が変化し収差が増大するのを抑制することができる。
【0108】
遮光板420は、後述する第1加工光及び第2加工光を通過させる開口420aを有するアパーチャ部材である。遮光板420は、第1レンズ441aと第2レンズ441bとの間のフーリエ面(すなわち、共焦点Oを含む面)上に設けられている。後述するように、遮光板420によって遮光されるレーザ光Lの範囲が変更されながら、パワーメータ700によって分岐光の出力計測が実施される。なお、遮光板420がレーザ光Lをカットする位置は、必ずしも集光点が最も絞られている位置でなくてもよく、フーリエ面の近傍であればよい。
【0109】
集光光学系404は、レーザ光源402により出射されて反射型空間光変調器403により変調されたレーザ光Lをパワーメータ700に集光するものである。この集光光学系404は、複数のレンズを含んで構成されており、圧電素子等を含んで構成された駆動ユニット432を介して筐体431の底板433に設置されている。
【0110】
以上のように構成されたレーザ加工装置500では、レーザ光源402から出射されたレーザ光Lは、筐体431内にて水平方向に進行した後、ミラー405aによって下方に反射され、アッテネータ407によって光強度が調整される。そして、ミラー405bによって水平方向に反射され、ビームホモジナイザ460によってレーザ光Lの強度分布が均一化されて反射型空間光変調器403に入射する。
【0111】
反射型空間光変調器403に入射したレーザ光Lは、液晶層に表示された変調パターンである分岐パターンを透過することにより、当該変調パターンに応じて変調(分岐)される。このような変調パターン(分岐パターン)は、分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じて制御部450が生成したものである。分岐後の各レーザ光は、その後、ミラー406aによって上方に反射され、λ/2波長板428によって偏光方向が変更され、ミラー406bによって水平方向に反射されて4f光学系441に入射する。
【0112】
4f光学系441に入射したレーザ光Lは、平行光で集光光学系404に入射するよう波面形状が調整される。具体的には、分岐後の各レーザ光Lは、第1レンズ441aを透過し収束され、ミラー419によって下方へ反射され、共焦点Oを経て発散すると共に、第2レンズ441bを透過し、平行光となるように再び収束される。そして、レーザ光Lは、ダイクロイックミラー410,438を順次透過して集光光学系404に入射し、パワーメータ700に集光光学系404によって集光される。
【0113】
なお、レーザ加工装置500は、対象物に対するレーザ光入射面を観察するための表面観察ユニット411と、集光光学系404と対象物との距離を微調整するためのAF(AutoFocus)ユニット412と、を筐体431内に備えていてもよい。表面観察ユニット411は、観察用光源411aと、検出器411bと、を有している。
【0114】
更に、レーザ加工装置500は、当該レーザ加工装置500を制御するためのものとして、CPU、ROM、RAM等からなる制御部450を備えている。この制御部450は、レーザ光源402を制御し、レーザ光源402から出射されるレーザ光Lの出力やパルス幅等を調節する。また、制御部450は、筐体431、ステージ(不図示)の位置、及び駆動ユニット432の駆動を制御する。
【0115】
また、制御部450は、反射型空間光変調器403における各画素電極に所定電圧を印加し、液晶層に所定の変調パターン(分岐パターン)を表示させ、これにより、レーザ光Lを反射型空間光変調器403で所望に変調(分岐)させる。ここで、液晶層に表示される変調パターンは、予め生成され制御部450に記憶されている。この変調パターンは、レーザ加工装置500に生じる個体差(例えば、反射型空間光変調器403の液晶層に生じる歪)を補正するための個体差補正パターン、球面収差を補正するための球面収差補正パターン等を含んでいる。
【0116】
以上のように構成されたレーザ加工装置500において実施されるレーザ加工方法は、所定の計算アルゴリズムに基づいて、レーザ光を複数に分岐する分岐パターンであって分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じた第1分岐パターンを生成し、生成した第1分岐パターンを反射型空間光変調器403に設定し表示させる第1工程と、第1分岐パターンが表示された反射型空間光変調器403にレーザ光を出射し、第1分岐パターンによって複数に分岐されたレーザ光をパワーメータ700により計測することにより、分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出する第2工程と、計算アルゴリズムを補正する補正パラメータであって出力実測値を出力目標値に近づける分岐パターンである第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータを生成し出力する第3工程と、を含む。第2工程では、分岐後の各レーザ光の一部を遮光板420で遮光しながらパワーメータ700による出力計測を行う遮光時出力計測処理を実施し、該遮光時出力計測処理においては、遮光板420によって遮光されるレーザ光の範囲を変更しながらパワーメータ700による出力計測を行う。
【0117】
図22は、パワーメータ700を利用した分岐後の各レーザ光の出力導出を説明する図である。
図22(a)は、反射型空間光変調器403からパワーメータ700に至る分岐光を示している。
図22(b)は、フーリエ面(すなわち、共焦点Oを含む面)に設けられる遮光板420の位置を示している。
【0118】
図22(a)に示されるように、反射型空間光変調器403の液晶層に表示された第1分岐パターンを透過したレーザ光は、第1分岐パターンによって複数(ここでは3つ)に分岐される。分岐後の各レーザ光は、第1レンズ441aを経てフーリエ面(共焦点Oを含む面)に到達する。フーリエ面には遮光板420が設けられている。そして、共焦点Oを経て発散したレーザ光は、第2レンズ441bを透過し、集光光学系404によってパワーメータ700に集光され、パワーメータ700によって出力計測(遮光時出力計測処理)が行われる。
【0119】
ここで、遮光時出力計測処理においては、フーリエ面に設けられる遮光板420の位置が連続的に変化させられる。例えば、
図22(b)に示されるように、遮光時出力計測処理の最初のステップ(STEP1)では、分岐後の各レーザ光(-1次、0次、1次)のいずれについても遮光しない位置に遮光板420が配置される。この場合、パワーメータ700においては、全てのレーザ光(-1次、0次、1次)の出力をふくんだ出力データP1が計測される。次のステップ(STEP2)では、分岐後の各レーザ光(-1次、0次、1次)のうち1次のレーザ光のみが遮光される位置に遮光板420が配置される。この場合、パワーメータ700においては、2つのレーザ光(-1次、0次)の出力を含んだ出力データP2が計測される。最後のステップ(STEP3)では、分岐後の各レーザ光(-1次、0次、1次)のうち0次及び1次のレーザ光が遮光される位置に遮光板420が配置される。この場合、パワーメータ700においては、1つのレーザ光(-1次)の出力を含んだ出力データP3が計測される。
【0120】
このように、レーザ光の一部を遮光板420で遮光しながらパワーメータ700による計測を行うことにより、全てのレーザ光(-1次、0次、1次)のうち-1次のレーザ光の出力比率がP3/P1であり、0次のレーザ光の出力比率が(P2-P3)/P1であり、+1次のレーザ光の出力比率が(P1-P2)/P1であることから、分岐後の各レーザ光の出力実測値を導出することができる。なお、遮光板420の配置変更は、手動で行われてもよいし、制御部450の制御によって自動で行われてもよい。
【0121】
このようなレーザ加工方法によれば、分岐後の各レーザ光の出力目標値に応じて設定された第1分岐パターンが反射型空間光変調器403に設定された状態においてレーザ光が出射され、第1分岐パターンによって複数に分岐されたレーザ光がパワーメータ700により計測され、計測結果に基づいて分岐後の各レーザ光の出力実測値が導出される。そして、本レーザ加工方法では、出力実測値を出力目標値に近づける第2分岐パターンの生成に係るバランスパラメータが生成されて出力される。このような構成によれば、パワーメータ700により実際に計測された出力実測値を出力目標値に近づける第2分岐パターンの生成のためのバランスパラメータが生成される。このように、実際に計測した出力を目標値に近づけるようにバランスパラメータが生成されることにより、加工プロセス時において計算アルゴリズムが当該バランスパラメータによって補正されて、第1分岐パラメータよりも分岐光の出力を出力目標値に近づけることができる第2分岐パターンが生成されることにより、分岐光の出力を所望の値に適切に調整することができる。以上のように、本レーザ加工方法によれば、分岐光の出力を所望の値に調整し、加工品質を向上させることができる。
【0122】
また、第2工程では、分岐後の各レーザ光の一部を遮光板420で遮光しながらパワーメータ700による出力計測を行う遮光時出力計測処理を実施し、該遮光時出力計測処理においては、遮光板420によって遮光されるレーザ光の範囲を変更しながらパワーメータ700による出力計測を行う。このように、遮光板420によって遮光されるレーザ光の範囲を変更しながら、それぞれパワーメータ700によって出力計測が行われることにより、分岐後の各レーザ光の出力を適切に導出することができる。
【符号の説明】
【0123】
1…レーザ加工装置、8…光源ユニット、9,450…制御部、17…検出部、34,403…反射型空間光変調器、100…対象物、420…遮光板、700…パワーメータ。