(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035955
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】植物成長調整剤およびその製造方法、ならびに植物成長調整剤製造システム
(51)【国際特許分類】
A01N 65/34 20090101AFI20220225BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20220225BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20220225BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A01N65/34
A01N37/06
A01P21/00
A01G7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035247
(22)【出願日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2020139446
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595077382
【氏名又は名称】長野精工金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 晃一
(72)【発明者】
【氏名】矢島 哲男
(72)【発明者】
【氏名】奥 久司
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
【Fターム(参考)】
2B022EA01
2B022EA10
2B022EB06
4H011AB03
4H011BB06
4H011BB22
(57)【要約】
【課題】これまで廃棄されていた作物未利用材を生物資源として簡易に且つ安価な方法で利用可能な技術であって、生態系や自然環境に悪影響を与えることのない植物成長調整剤およびその製造方法、ならびに植物成長調整剤製造システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る植物成長調整剤は、作物未利用材が加熱加圧水蒸気下で分解された成分を含有する。本発明に係る植物成長調整剤の製造方法は、作物未利用材を密閉空間内に収容する準備工程と、前記作物未利用材を前記密閉空間内で水蒸気により120℃~149℃の温度下で2時間~5時間加熱加圧して分解する水蒸気分解工程と、前記水蒸気分解工程によって分解した成分を回収する回収工程と、を含む。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物未利用材が加熱加圧水蒸気下で分解された成分を含有すること
を特徴とする植物成長調整剤。
【請求項2】
前記作物未利用材は梅の実であり、
前記梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解された成分中にイタコン酸を含有すること
を特徴とする請求項1記載の植物成長調整剤。
【請求項3】
作物未利用材を密閉空間内に収容する準備工程と、
前記作物未利用材を前記密閉空間内で水蒸気により120℃~149℃の温度下で2時間~5時間加熱加圧して分解する水蒸気分解工程と、
前記水蒸気分解工程によって分解した成分を回収する回収工程と、を含むこと
を特徴とする植物成長調整剤の製造方法。
【請求項4】
前記水蒸気分解工程において、前記密閉空間内の分圧としての水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ前記密閉空間内の水蒸気圧と温度とを上昇させて加熱加圧すること
を特徴とする請求項3記載の植物成長調整剤の製造方法。
【請求項5】
前記回収工程において、前記密閉空間内を、水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ冷却すること
を特徴とする請求項3または請求項4記載の植物成長調整剤の製造方法。
【請求項6】
前記作物未利用材を梅の実として、
前記水蒸気分解工程において、前記梅の実を分解してイタコン酸含有成分を生成すること
を特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の植物成長調整剤の製造方法。
【請求項7】
作物栽培で発生する未利用材から新たな作物栽培に用いる植物成長調整剤を製造するシステムであって、
水供給源と、
前記水供給源から供給される水で次亜塩素酸ナトリウムと塩酸とを希釈混合して次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水生成装置と、
前記水供給源から供給される水を浄水する浄水装置と、
植物を水蒸気によって加熱加圧して分解する水蒸気分解装置と、を備え、
前記水蒸気分解装置が、前記次亜塩素酸水生成装置により生成された次亜塩素酸水によって洗浄消毒された前記未利用材を、前記浄水装置により浄水された水から生成した水蒸気で加熱加圧して分解し、植物成長調整機能成分を得る仕組みが構築されていること
を特徴とする植物成長調整剤製造システム。
【請求項8】
作物栽培で発生する未利用材から新たな作物栽培に用いる植物成長調整剤を製造する方法であって、
前記未利用材を洗浄消毒する洗浄消毒工程と、
水を浄水する浄水工程と、
前記洗浄消毒した未利用材を、前記浄水した水から生成した水蒸気で加熱加圧して分解する水蒸気分解工程と、を実施して、
前記未利用材から植物成長調整機能成分を得ること
を特徴とする植物成長調整剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物成長調整剤およびその製造方法、ならびに植物成長調整剤製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作物栽培では、栽培の過程で間引きされる株、除去される脇芽や摘果、また、収穫後の残渣や、選別で除去される規格外品等に例示される未利用材(すなわち、農産物として出荷されなかった作物体の一部または全部。以下、「作物未利用材」と表記する)が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-136196号公報
【特許文献2】特開2012-19713号公報
【特許文献3】特開2019-42647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、作物未利用材は生物資源であるにも関わらず、廃棄されてしまうという課題があった。したがって、作物未利用材を生物資源として、簡易に且つ安価な方法で利用可能な技術の開発が望まれていた。
【0005】
ここで、特許文献1、2、3には、植物組織を水蒸気分解して所定の成分を抽出する方法および装置が記載されている。この方法または装置を用いることによって植物組織が分解された成分を液状分(エキス)および固形分(ペースト)のかたちで得られるが、当該成分の有効性や用途は十分に解明されていなかった。そこで、本発明者は、この水蒸気分解法または装置を適用した作物未利用材の新たな利用技術について鋭意研究した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、これまで廃棄されていた作物未利用材を生物資源として簡易に且つ安価な方法で利用可能な技術であって、生態系や自然環境に悪影響を与えることのない植物成長調整剤およびその製造方法、ならびに植物成長調整剤製造システムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明に係る植物成長調整剤は、作物未利用材が加熱加圧水蒸気下で分解された成分を含有することを特徴とする。一例として、前記作物未利用材は梅の実であって、イタコン酸含有植物成長調整剤とすることができる。
【0008】
これによれば、これまで廃棄されていた作物未利用材を新たな作物栽培の成長調整剤として用いることができる。
【0009】
また、本発明に係る植物成長調整剤の製造方法は、作物未利用材を密閉空間内に収容する準備工程と、前記作物未利用材を前記密閉空間内で水蒸気により120℃~149℃の温度下で2時間~5時間加熱加圧して分解する水蒸気分解工程と、前記水蒸気分解工程によって分解した成分を回収する回収工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
これによれば、作物未利用材の組織を簡易に且つ安価な方法で短時間のうちに分解して植物成長調整機能を有する成分(植物成長調整機能成分)を得ることができる。自然物である作物未利用材を原料とすると共に、水蒸気による加水分解法で得られるものであることから、当該成分を含有する植物成長調整剤は、植物や土壌に優しく、自然環境を破壊に悪影響を与えることがない。
【0011】
また、前記水蒸気分解工程において、前記密閉空間内の分圧としての水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ前記密閉空間内の水蒸気圧と温度とを上昇させて加熱加圧することが好ましい。これによれば、水蒸気エネルギーによる加水分解反応を進行させることができる。また、前記回収工程において、前記密閉空間内を、水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ冷却することが好ましい。これによれば、水の沸騰を防止して分解した成分を回収することができる。
【0012】
また、一例として、前記作物未利用材を梅の実として、前記水蒸気分解工程において、前記梅の実を分解してイタコン酸含有成分を生成することができる。
【0013】
また、本発明に係る作物栽培で発生する未利用材から新たな作物栽培に用いる植物成長調整剤を製造するシステムは、水供給源と、前記水供給源から供給される水で次亜塩素酸ナトリウムと塩酸とを希釈混合して次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水生成装置と、前記水供給源から供給される水を浄水する浄水装置と、植物を水蒸気によって加熱加圧して分解する水蒸気分解装置と、を備え、前記水蒸気分解装置が、前記次亜塩素酸水生成装置により生成された次亜塩素酸水によって洗浄消毒された前記未利用材を、前記浄水装置により浄水された水から生成した水蒸気で加熱加圧して分解し、植物成長調整機能成分を得る仕組みが構築されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る作物栽培で発生する未利用材から新たな作物栽培に用いる植物成長調整剤を製造する方法は、前記未利用材を洗浄消毒する洗浄消毒工程と、水を浄水する浄水工程と、前記洗浄消毒した未利用材を、前記浄水した水から生成した水蒸気で加熱加圧して分解する水蒸気分解工程と、を実施して、前記未利用材から植物成長調整機能成分を得ることを特徴とする。
【0015】
このシステムおよび方法によれば、作物栽培で発生する未利用材を新たな作物栽培に利用するために最適な仕組みを構築することができる。未利用材を洗浄消毒すると共に浄水した水から生成した水蒸気により分解して、自然物由来の植物成長調整機能成分に病原菌や害虫が混入することを防止でき、高品質で安全な植物成長調整剤を製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、これまで廃棄されていた作物未利用材を生物資源として簡易に且つ安価な方法で利用することができ、生態系や自然環境に悪影響を与えることのない植物成長調整剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】圧力容器内で進行させる水蒸気分解反応の進行を監視するためのシステムの構成の例を示す説明図である。
【
図3】水蒸気分解処理を実行する手順を示すフロー図である。
【
図4】水蒸気分解処理を実行する手順を示すフロー図である。
【
図5】本実施形態に係る植物成長調整剤製造システムの構成の例を示す説明図である。
【
図6】埼玉県産の梅を用いて得られた梅エキス(実線)と梅アセトン抽出液(破線)のFT-IRスペクトルである。
【
図7】山梨県産の梅を用いて得られた梅エキスのFT-IRスペクトル(実線)とFT-IRライブラリーから検索されるポリイタコン酸のスペクトル(破線)である。
【
図8】山梨県産の梅を用いて得られた梅エキスのFT-IRスペクトル(実線)とFT-IRライブラリーから検索されるリンゴ酸のスペクトル(破線)である。
【
図9】山梨県産の梅を用いて得られた梅エキスのFT-IRスペクトル(実線)とFT-IRライブラリーから検索されるZ001#50;ポッカレモン100のスペクトル(破線)である(「ポッカレモン100」は、登録商標)。
【
図10】未滅菌種子を、植物成長調整剤を添加したまたは無添加の水道水にて栽培したイネの写真である。
【
図11】滅菌種子を、植物成長調整剤を添加したまたは無添加の1/2MS寒天培地で栽培したイネの防御関連遺伝子PBZ1の発現率を示すグラフである。
【
図12】未滅菌種子を、植物成長調整剤を添加したまたは無添加の糸状菌繁殖土壌にて発芽させて8日間栽培したシロイヌナズナの写真である。
【
図13】未滅菌種子を、予め発芽させたうえで植物成長調整剤を添加したまたは無添加の糸状菌繁殖土壌に移植して8日間栽培したシロイヌナズナの生体重を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本実施形態に係る植物成長調整剤は、作物未利用材が加熱加圧水蒸気下で分解された成分を含有する。なお、植物を水蒸気により加熱加圧して分解する処理を水蒸気分解といい、詳細は後述する。
【0019】
植物成長調整剤は、植物の成長(本願でいう「成長」は、生長(伸長、肥大等の量的成長、growth)および発育(発芽、器官の分化等の質的成長、development)を包含する)を促進または抑制したり、収穫部位(果実、葉、根等)の形状や色を調整したり、病原菌や害虫に対する抵抗性を誘導したりして、植物の品質または収量を向上または安定させる作用を有する薬剤をいう。作物未利用材は、前述の通り、農産物として出荷されなかった作物体の一部(残渣等の作物片)または全部(間引きされた株等の個体全体)をいい、作物は限定されない。作物は、一例として、セロリ、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンジン、インゲンマメ、ネギ、ビーツ、コーン、マリーゴールド、ブルーベリー、梅、桃等を含む。以下、作物を梅とし、作物未利用材を梅の実とした例で説明する。
【0020】
梅の実には、クエン酸をはじめとして、リンゴ酸、シュウ酸、酒石酸等の各種の有機酸が含まれている。特に、クエン酸の含量が多く、クエン酸は疲労回復の効果があるとして知られている。なお、クエン酸を含む有機栄養液を野菜に潅水または塗布することで、野菜に含まれる硝酸態窒素を低減できることが知られている(特開2011-182658号公報)。
【0021】
ところで、本実施形態では、梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解された成分(エキス)中に、生の梅の実に含まれるクエン酸から分離したと考えられるイタコン酸が含まれることを見出した。イタコン酸(CAS登録番号 97-65-4)は、「対象外物質評価書 イタコン酸 2015年4月 食品安全委員会」にも示されるように、植物成長調整剤として知られている。例えば、同文献に示されているように、イタコン酸はりんご用摘花剤として開発され、頂芽中心花の受粉完了後に散布することで、花粉管伸長阻害または有機酸による柱頭の焼けにより受精阻害を引き起こし、摘花効果を示すとされている。
【0022】
本実施形態に係る梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解されたエキスを5000倍~10000倍に希釈して、ミニトマトに噴霧したところ、通常5段の花芽を付ける段階で、7段の花芽を付けることが判明した。梅の実を水蒸気分解することで得られるエキス中には、イタコン酸の他、クエン酸、リンゴ酸等の各種の有機酸、ポリフェノール類等が混在するが、梅の実をエタノール中に浸漬してエタノール抽出した液にはミニトマトの成長促進効果が殆ど見られないことから、梅の実を水蒸気分解することで得られたエキス中のイタコン酸の働きにより、ミニトマトの成長が促進されたと考えられる。
【0023】
また、本実施形態に係る植物成長調整剤は、自然物である梅(梅の実)を原料とするものであることから、用いられる植物や土壌に優しく、自然環境を破壊しないという効果も有する。
【0024】
本実施形態に係る植物成長調整剤は、作物未利用材である梅の実を水蒸気分解することで得られ、より詳しくは、作物未利用材(梅の実)を密閉空間内に収容する準備工程と、前記作物未利用材(梅の実)を前記密閉空間内で水蒸気により120℃~149℃の温度下で2時間~5時間加熱加圧して分解する水蒸気分解工程と、前記水蒸気分解工程によって分解した成分を回収する回収工程と、を含む。
【0025】
上記の水蒸気分解処理は、特許文献1、2、3および特開2018-130112号公報に示される公知の水蒸気分解法を採用し得るが、以下、簡単に説明する。また、水蒸気分解装置は、特許文献1、2、3に記載の装置をそのまま用いることができる。
【0026】
図1Aは、水蒸気分解装置28の縦断面図、
図1Bはその平面図である。水蒸気分解装置28は、ハッチを開閉する蓋体1を備えた円筒状の圧力容器2(「密閉空間」に該当)をなす。圧力容器2の下底および外周面にはヒータ3が装着され、圧力容器2内の温度は温度センサ4によって検知される。なお、圧力容器2の底部の温度および周面の温度は別個に制御される。圧力容器2内の温度検知信号は制御装置5に伝送される。
【0027】
蓋体1には圧力容器2内の圧力を検出する圧力センサ6と、圧力コントロール用の電磁弁7が取り付けられている。電磁弁7は、制御装置5からの指示によって開弁し、圧力容器2内に発生させた水蒸気を外部に排出して圧力容器2内の圧力をコントロールするものである。
【0028】
被処理物Bである梅の実は、かご8内に収容して圧力容器2内のほぼ中央領域に差し入れられる。また、圧力容器2の底には、梅の実を水蒸気分解することで得られる液状分であるエキス(梅の実から搾り出された抽出液および圧力容器2の壁面を伝わって落ちる可溶性成分の凝縮液)を受け入れるトレー11を格納しておく。なお、水蒸気分解処理後、かご8には固形分であるペーストが得られ、上記の液状分(エキス)および固形分(ペースト)が、梅の実を水蒸気分解することで得られる成分(すなわち、梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解された成分)に該当する。
【0029】
梅の実は、種を取り除くことなく、そのままかご8内に収容すればよい。また、作物未利用材としての梅の実は、梅干し用、梅の漬物用等として出荷できない傷付いた梅等の廃棄用梅を有効利用できる。廃棄用梅は、通常2~3割程も生じるので、このような廃棄用梅を有効利用できることはコスト的に極めて有利である。
【0030】
図2に、圧力容器2内で進行させる水蒸気分解反応の進行を監視するためのシステムの構成の例を示す。制御装置5は、監視室9内に設置されたコンピュータであり、ヒータ3の電源投入(ON、OFF)、処理時間の設定、電磁弁7の開閉制御等の制御を行う。さらに、制御装置5は、成分抽出処理Cに必要な一切の制御並びに設定情報の管理を行う機能、水蒸気分解反応の進行状況の監視機能を実行し、梅の実の組織を分解して抽出される物質の抽出進行状態をモニタ10によって監視する他、これらのデータをオートサンプラ12に収集してサンプリングを行う機能を有している。なお、符号13は、シーケンサを示す。
【0031】
制御装置5は、作物未利用材(梅の実を含む梅原料)Aを洗浄し、必要により適当な大きさに裁断あるいは不要部分を除去した被処理物(梅の実)Bを圧力容器2内に収容し(「準備工程」に該当)、成分抽出処理Cを施して(「水蒸気分解工程」および「回収工程」に該当)、成分抽出処理Cによって得られた成分(トレー11から得られたエキスおよびかご8から得られたペースト)Dを圧力容器2から取り出し、これに必要に応じて精製処理Eを施すことによって、高純度の成分を得るまでの処理を管理する。
【0032】
成分抽出処理Cに先立って、圧力容器2のハッチを開き、圧力容器2内に少量の水を注入する。次に成分抽出処理Cを施すべき梅の実Bをかご8の中に入れ、これを圧力容器2内に格納してハッチを閉じ、圧力容器2内で梅の実Bの成分抽出処理Cを開始する。こうして、被処理物(梅の実)Bを圧力容器2内に収容する準備工程から、次工程である水蒸気分解工程の段階に入る。成分抽出処理C(「水蒸気分解工程」およびこれに続く「回収工程」)の手順を
図3~
図4にしたがって説明する。
【0033】
図3、
図4は、水蒸気分解処理を実行する手順を示すフロー図である。
図3に示すように、先ず、圧力容器2内外をつなぐ管路に設けられた電磁弁7を開いて圧力容器2を大気に開放すると共に、ヒータ3の電源を投入(ON)する(ステップS1、ステップS2)。ヒータ3による圧力容器2の加温中、適宜時間間隔をおいて、圧力容器2内の温度(t)、圧力(P)を温度センサ4、圧力センサ6によってそれぞれ検出する(ステップS3)。
【0034】
検出温度データおよび検出圧力データはその都度制御装置5に伝送され、制御装置5では、検出された温度(t)が設定温度範囲(例えば、70℃≦t≦80℃)内であるか否か判定する。この設定温度範囲は、圧力容器2内の水が沸騰に至らない温度とし、安全のため、70℃~80℃の温度範囲とするのがよい(70℃~90℃程度でもよい)。
【0035】
本実施形態では、上記のように電磁弁7を開いて、圧力容器2内を大気に開放した状態でヒータ3にて加温する。これにより、水蒸気圧が増すにしたがって、圧力容器2内の空気は排除される。したがって、圧力容器2内の温度が、80℃程度であれば、圧力容器2内の空気は殆ど排除され、検出圧力(P)(実測圧力値)は、殆ど飽和水蒸気圧に近いものとなる。
【0036】
検出温度(t)が、設定温度範囲に至っていない場合にはステップS3および上記判定を繰り返す。温度計測は、できるだけ狭い温度上昇幅(例えば、5℃程度)ごとになるように行うのが、沸騰回避上、安全でよい。検出温度(t)が上記設定温度に至った場合、電磁弁7を閉じる(ステップS4)。ヒータ3による加温は継続する。
【0037】
電磁弁7を閉じて後、適宜な段階でタイマー(図示せず)により、水蒸気分解処理時間を2時間~5時間(例えば、3時間)にセットする(ステップS5)。また、適宜な時間間隔(あるいは適宜な温度上昇幅ごと)で圧力容器2内の温度(t)と圧力(P)を検出する(ステップS6)。検出温度データ、検出圧力データはその都度制御装置5に伝送され、制御装置5では、予め入力されている飽和水蒸気圧曲線の近似式に、温度センサ4で検出された温度数値を代入して、当該近似式に基づく飽和水蒸気圧(演算圧力値)を演算する(ステップS7)。近似式としては、Tetensの式等を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
また制御装置5では、この演算圧力値と圧力センサ6による検出圧力値(P)(実測圧力値)とを比較し、実測圧力値(P)の演算圧力値に対するずれが所要設定範囲内であるか否か判定する(ステップS8)。実測圧力値(P)が演算圧力値に対して設定範囲以上にずれている場合には、ヒータ3の出力を調整し(ステップS9)、実測圧力値(P)が演算圧力値にできるだけ近接するように制御する。なお、ステップS4に至る段階でも、ステップS6~ステップS9と同様の制御をし、実測圧力値(P)が演算圧力値に近接するようにヒータ3のON、OFF制御をするようにしてもよい。このようにして、圧力容器2内の分圧としての水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ圧力容器2内の水蒸気圧と温度とを上昇させて加熱加圧する。
【0039】
ステップS6~ステップS9の制御を行いつつ、
図4に示すように、ステップS6における検出温度(t)が、120℃~149℃内の設定温度まで上昇したら、ヒータ3の出力を調整(あるいはOFF)して(ステップS10)、タイマーでセットした時間だけ上記設定温度に維持し、必要な水蒸気分解処理を行う。
【0040】
なお、本実施形態における水蒸気分解処理は、圧力容器2内温度が120℃~149℃の範囲で行う。温度150℃以上に上昇すると、梅の実Bが炭化してしまう。タイマーがOFFとなったら(ステップS11)、ヒータ3をOFFにする(ステップS12)。上記のようにすることで、ステップS12に至るまで、圧力容器2内の温度、圧力をほぼ飽和水蒸気圧曲線に沿って上昇するように制御することができる。飽和水蒸気圧より少しでも温度が高いと炭化し、低いと不完全分解による不純物の液化混入の危険が生ずる。
【0041】
ヒータ3をOFFにすることで、水蒸気分解工程によって分解した成分を回収する回収工程の段階に入る。本実施形態では、ヒータ3をOFFしたまま、圧力容器2を自然冷却する(ステップS13)。この自然冷却することによって、圧力容器2内は、温度、圧力がほぼ飽和水蒸気圧曲線に沿ったまま降下することになる。このようにして、圧力容器2内を、水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御しつつ冷却する。この間、適宜時間間隔ごとに温度センサ4により圧力容器2内の温度(t)を検出する(ステップS14)。検出温度(t)が、例えば、90℃程度の、水の沸騰を回避できる程度の温度にまで降下したら、電磁弁7を開き(ステップS15)、このまま圧力容器2内を自然冷却して(ステップS16)処理を終了する。
【0042】
このようにして、ステップS12以降も、圧力容器2内の温度、圧力をほぼ飽和水蒸気圧曲線に沿って下降するように制御することができる。ステップS15に示すように、圧力容器2内の温度(t)が90℃以下に低下した際に電磁弁7を開くようにしているので、圧力容器2内の水の沸騰を確実に防止できる。
【0043】
なお、圧力容器2が大型で、ステップS13における自然冷却するのに長時間を要する場合には、ステップS12でヒータ3をOFFした後、電磁弁7を所定時間間隔ごとに短時間開いて水蒸気を逃がすことにより、圧力容器2内の冷却速度を大きくして冷却するようにしてもよい。
【0044】
この場合、圧力容器2内の温度(t)と圧力(P)をそれぞれ温度センサ4、圧力センサ6で検出し、上記と同様にして、飽和水蒸気圧曲線の近似式により、検出温度(t)における演算圧力を算出し、実測圧力(P)が演算圧力に近接するように、電磁弁7の開放間隔、開放時間を制御するようにするとよい。これにより、冷却時においても、圧力容器2内の水を沸騰させることなく、圧力容器2内の温度、圧力を飽和水蒸気圧曲線に沿って降下させるように制御できる。
【0045】
このようにして、梅の実を水蒸気分解処理してイタコン酸含有成分を生成することができる。イタコン酸を得るための従来法としては、クエン酸の濃厚水溶液を200℃以上で真空蒸留してイタコン酸とシトラコン酸またはそれらの無水物の混合物を得て、この混合物からイタコン酸を分離する方法があるが、コストが高くなるという課題があった。また、別の従来法として、イタコン酸をイタコン酸発酵によって得る方法があるが、長時間を要するという課題があった。これに対して、本実施形態に係る水蒸気分解処理によれば、これまで廃棄されていた作物未利用材から簡易に且つ安価な方法で短時間のうちにイタコン酸を得ることができる。このイタコン酸含有成分は、そのまま植物成長調整剤とすることができるが、前述の通り、
図2に示すように、必要に応じて精製処理Eを施してもよく、また、他の物質を添加してもよい。
【0046】
また、水蒸気分解処理によって得られる成分中には植物成長調整機能を有する成分(植物成長調整機能成分)が複数種類混在していることがあり、一例として、原料作物(原料にされる作物)が梅である場合、梅の実等が水蒸気分解された成分中に含まれるイタコン酸は主として植物の成長促進、伸長促進、花芽分化促進機能を有し、4-ヒドロキシ2-ペンタノンやジメチル-2-メトキシスクシナートは主として植物の徒長抑制、伸長抑制機能を有する。希釈倍率や散布時期等を調整することで植物の成長を目的に応じて調整できると考えられる。
【0047】
本実施形態に植物成長調整剤は、これまで廃棄されていた作物未利用材を生物資源として利用する技術であり、新たに栽培する作物の成長調整剤として使用できる。対象作物(使用される作物)は限定されないが、原料作物と同じ作物に使用できることから、例えば、圃場で発生した未利用材を水蒸気分解装置28で処理して同じ圃場で利用することで、作物栽培において、農産物と共に次の作物栽培のための資源を生み出せる低コストの農業を実現できる。
【0048】
続いて、
図5を参照にして、作物栽培で発生する未利用材から新たな作物栽培に用いる植物成長調整剤を製造するシステム20について説明する。本実施形態に係る植物成長調整剤製造システム20は、水供給源22と、水供給源22から供給される水で次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸ナトリウム水溶液を含む)と塩酸(希塩酸を含む)とを希釈混合して次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水生成装置24と、水供給源22から供給される水を浄水する浄水装置26と、植物を水蒸気によって加熱加圧して分解する水蒸気分解装置28と、を備えている。
【0049】
水供給源22には、水道等を用いればよい。次亜塩素酸水生成装置24には、テクノマックス株式会社製の次亜塩素酸水生成装置を好適に用いることができる。浄水装置26には、RO水浄水器等を用いればよい。水蒸気分解装置28には、前述の特許文献1、2、3に記載の装置を用いればよく、テクノマックス株式会社製の色差分解装置を好適に用いることができる。
【0050】
本実施形態に係る植物成長調整剤製造システム20は、水蒸気分解装置28が、次亜塩素酸水生成装置24により生成された次亜塩素酸水によって洗浄消毒された未利用材を、浄水装置26により浄水された水から生成した水蒸気で加熱加圧して分解し、植物成長調整機能成分を得る仕組みであって、作物栽培で発生する未利用材を新たな作物栽培に利用するために最適な仕組みが構築されている。これにより、未利用材を、先ず次亜塩素酸水で洗浄消毒し(洗浄消毒工程)、次いで浄水工程を経て浄水した水から生成した水蒸気で水蒸気分解して(水蒸気分解工程)、植物成長調整機能成分を得ることができる。したがって、自然物由来の成分に病原菌や害虫が混入することを防止でき、高品質で安全な植物成長調整剤を製造することが可能になる。
【実施例0051】
図1、
図2に示す水蒸気分解装置28を用いて、
図3、
図4に示す処理手順により、梅の実の水蒸気分解処理を行った。ステップS2、S3では、圧力容器2内の温度が約80℃に上昇するまで電磁弁7を開いた状態(大気に開放)で圧力容器2の加温を行った。その後、電磁弁7を閉じ、加温を継続し(ステップS4)、圧力容器2内の温度が132℃(圧力約3.0気圧)まで上昇させ、この温度で約4時間保持した。
【0052】
次いでヒータ3をOFFして圧力容器2を自然冷却した。圧力容器2内の温度が約90℃まで低下した時点で、電磁弁7を徐々に開き、圧力容器2内に大気を導入し、圧力容器2内をさらに自然冷却させた。圧力容器2内で液体の沸騰は起らなかった。圧力容器2内を冷却した後、圧力容器2内の液状分(エキス)および固形分(ペースト)を回収した。本実施例では、液状分(エキス)を植物成長調整剤として用いた。
【0053】
図6~
図9は、梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解されて得られた上記エキス(以下、「梅エキス」という)と、梅の実をスライスして1日以上アセトン中に浸漬して得られたアセトン抽出液(以下、「梅アセトン抽出液」という)のFT-IRスペクトル(縦軸は吸光度)を示す。分析は公益財団法人南信州・飯田産業センター工業技術試験研究所にて行い、使用機器は、顕微フーリエ変換赤外分光光度計IRT-5000(日本分光株式会社製)を用いた。
【0054】
図6は、埼玉県産の梅を用いて得られた梅エキス(実線)と梅アセトン抽出液(破線)のスペクトルである。FT-IR分析の結果、波数2600~3600cm
-1付近にカルボン酸水酸基、3300cm
-1付近に-NH基、1720cm
-1、1410cm
-1付近にカルボン酸およびカルボン酸水酸基、1650cm
-1付近にアミド基、1000~1100cm
-1に水酸基およびエーテルによると推測される吸収が見られた。これらスペクトルから、水酸基およびエーテル基を有する物質およびカルボン酸、さらにアミド基を有する物質から成ると推測される。
【0055】
梅は酸成分としてクエン酸を顕著に含むことが知られているが、
図6における梅エキスと梅アセトン抽出液とでは、波数3400cm
-1、1700cm
-1、および1100cm
-1付近での吸光度が高低逆転しており、これは、梅エキス、すなわち梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解されて得られたエキスは、酸成分が高度に分解され、特にクエン酸の一部がイタコン酸にまで分解されていることからくるスペクトル変化と推測される。
【0056】
図7は、山梨県産の梅を用いて得られた梅エキスのFT-IRスペクトル(実線)とFT-IRライブラリーから検索されるポリイタコン酸(HU#559;POLY(ITACONIC ACID))のスペクトル(破線)である。
図7から明らかなように、これら両スペクトルはその傾向において殆ど一致し、梅エキスがポリイタコン酸を含有すると推測される。なお、
図6および
図7の実線から分かるように、埼玉県産の梅から得られた梅エキスと山梨県産の梅から得られた梅エキスのFT-IRスペクトルはほぼ一致していることから、産地の異なる梅であっても、その成分は殆ど同じであると推測される。
【0057】
図8は、山梨県産の梅を用いて得られた梅エキスのFT-IRスペクトル(実線)とFT-IRライブラリーから検索されるリンゴ酸(HP#2907;S(-)-hydroxysuccinic acid)のスペクトル(破線)である。
図8から明らかなように、これら両スペクトルはその傾向において殆ど一致し、梅エキスがリンゴ酸を含有すると推測される。
【0058】
図9は、山梨県産の梅を用いて得られた梅エキスのFT-IRスペクトル(実線)とFT-IRライブラリーから検索されるZ001#50;ポッカレモン100のスペクトル(破線)である。「ポッカレモン100」は登録商標であって、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社が製造する濃縮還元レモン果汁100%からなる。日本食品標準成分表2020年度版(八訂)によれば、レモン果汁100g当たり水分が90.5g、有機酸が6.7g含まれ、有機酸のうち、6.5gがクエン酸、0.2gがリンゴ酸である。
図9から明らかなように、両スペクトルはその傾向において殆ど一致し、梅エキスがクエン酸を含有すると推測される。
【0059】
また、埼玉県産の梅から得られた梅エキスおよび梅アセトン抽出液、ならびに山梨県産の梅から得られた梅エキスをガスクロマトグラフにより成分分析を行った。分析は公益財団法人南信州・飯田産業センター工業技術試験研究所にて行った。なお、メチルエステル誘導化剤としてPTAH(Phenyltrimethyl Ammonium Hydroxide)を用いた。
【0060】
分析条件は次の通り。
<GC>
注入量:10μl
Method:40℃3min-10℃/min-240℃5min(Run Time:28min)
Injection:240℃ Split Flow:3ml
DB-WAX 30m,0.25mm,0.25μm
<MS>
Scan time:2~28min、m/z30~550EI+
【0061】
この結果、梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解されて得られた両梅エキスからは4-メチルイタコネイトが検出されたが、梅アセトン抽出液からは4-メチルイタコネイトは検出されなかった(グラフは特に図示せず)。以上より、梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解されて得られた梅エキス中に、梅の実中に含まれるクエン酸の一部が分解されたイタコン酸が含まれることが分かった。
【0062】
そして、前述したように、この梅エキスを5000~10000倍に希釈して、ミニトマトに噴霧したところ、通常5段の花芽を付ける段階で、7段の花芽を付けることが判明した。梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解されて得られたエキス中には、イタコン酸の他、クエン酸、リンゴ酸などの各種の有機酸、ポリフェノール類等が混在するが、梅の実をエタノール中に浸漬してエタノール抽出した液には、ミニトマトの成長促進効果が殆ど見られないことから、梅の実を水蒸気分解することで得られた梅エキス中のイタコン酸の働きにより、ミニトマトの成長が促進されたと考えられる。
【0063】
なお、上記ガスクロマトグラフによる成分分析において、梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解されて得られた梅エキスから、4-メチルイタコネイトの他に、4-ヒドロキシ2-ペンタノン、ジメチル-2-メトキシスクシナート等が検出された。これら4-ヒドロキシ2-ペンタノン、ジメチル-2-メトキシスクシナートは、植物の矮化機能を有するとして知られている。事実、梅雨時の長雨時には、ミニトマトが花芽を付けず、徒に茎が長く細く生長してしまう(徒長してしまう)が、梅雨時の長雨時に上記梅エキスを希釈してミニトマトに噴霧したところ、茎の徒長が抑制され、茎の太さが増すことが確認された。なお、この時期においては、イタコン酸も植物の徒長抑制機能を有するとも考えられる。上記事実から、梅の実が加熱加圧水蒸気下で分解されて得られた梅エキスは、各種成分が混在し、植物の成長の過程において、ある時期には成長を促進し、また、ある時期には成長を抑制するという、植物成長調整機能を有している。梅の実エキスの希釈倍率や散布時期等を調整することで植物の成長を目的に応じて調整できると考えられる。
【0064】
なお、梅の実を水蒸気分解することにより液状分(エキス)と固形分(ペースト)が得られるが、固形分には、市販されている梅肉エキス、すなわち梅の果肉を煮詰めたペースト状のものと同等の生理活性物質(ヒドロキシメチルフルフラール)が含まれており、生活習慣病の予防剤としての運用が期待される。
先ず、イネの滅菌種子を滅菌水にて10日間栽培した。当該滅菌水には1000倍または10000倍希釈のビーツエキス、コーンエキス、セロリエキス、マリーゴールドエキスを添加した。これによれば、いずれのエキスを添加したイネも無添加のイネと比較して同等またはそれよりも優れた成長(草丈、固体重、根重量)を示した。無菌状態の環境下で、すなわち他の外的要因を排した環境下で、イネの成長に悪影響が見られなかったことから、水蒸気分解によって作物の成長に悪影響を及ぼす成分が生成されることはないと推測される。