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特開2022-36016エア加工糸(ATY)及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036016
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】エア加工糸(ATY)及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 1/02 20060101AFI20220225BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20220225BHJP
   D02G 1/16 20060101ALI20220225BHJP
   D01D 5/253 20060101ALI20220225BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
D02G1/02
D02G3/04
D02G1/16
D01D5/253
D01D5/08 G
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127808
(22)【出願日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】63/068,621
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/363,680
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513093852
【氏名又は名称】サンテックス ファイバー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNTEX FIBER CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】パイ フン ユー
【テーマコード(参考)】
4L036
4L045
【Fターム(参考)】
4L036MA20
4L036MA33
4L036MA39
4L036PA41
4L036PA46
4L036RA04
4L036RA05
4L036UA01
4L045AA05
4L045BA03
4L045BA10
4L045BA43
4L045DA40
(57)【要約】
【課題】エア加工糸(ATY)の構成及び製造方法を改善すること。
【解決手段】エア加工糸(ATY)が開示される。当該ATYは、第1の断面を有する第1のフィラメントと、第1のフィラメントに隣接して配置され、第2の断面を有する第2のフィラメントとを含み、第1の断面は、実質的に円形の形状を有し、実質的に1.3以下の修飾度(M比)を有し、第2の断面は、3~6個のローブを含む多角形の形状を有し、第1のフィラメントの長さと第2のフィラメントの長さとの差は実質的に4%以下である。さらに、このATYの製造方法も開示されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア加工糸(ATY)であって、
第1の断面を有する第1のフィラメントと、
前記第1のフィラメントに隣接して配置され、第2の断面を有する第2のフィラメントと
を含み、
前記第1の断面は実質的に円形の形状を有し、実質的に1.3以下の修飾度(M比)を有し、前記第1の断面とは異なる前記第2の断面は、3~6個のローブを含む多角形の形状を有し、前記第1のフィラメントの長さと前記第2のフィラメントの長さとの差は実質的に4%以下であるエア加工糸(ATY)。
【請求項2】
前記第1のフィラメントの長さが、前記第2のフィラメントの長さと実質的に等しい請求項1に記載のATY。
【請求項3】
前記第2の断面が、1.5よりも大きいM比を有する請求項1に記載のATY。
【請求項4】
前記第2の断面の前記M比が約1.6~約3の範囲内にある請求項3に記載のATY。
【請求項5】
前記第2の断面が、5つ又は6つのローブを含む多角形の形状を有する請求項1に記載のATY。
【請求項6】
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントに隣接して配置され、第3の断面を有する第3のフィラメントをさらに含み、前記第3の断面が、前記第1のフィラメントの前記第1の断面及び前記第2のフィラメントの前記第2の断面とは異なる請求項1に記載のATY。
【請求項7】
前記第1のフィラメント又は前記第2のフィラメントによって形成されたループをさらに含み、前記ループの高さが480μm未満である請求項1に記載のATY。
【請求項8】
請求項1に記載のATYを含む布帛。
【請求項9】
エア加工糸(ATY)の製造方法であって、
糸マガジンから第1のフィラメント及び第2のフィラメントを押し出す工程と、
供給ユニットの第1の供給部材によって前記第1のフィラメントを第1の供給速度でノズルユニット内に供給する工程と、
前記供給ユニットの第2の供給部材によって前記第2のフィラメントを第2の供給速度で前記ノズルユニット内に供給する工程と、
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントに前記ノズルユニット内の流れを吹き当てて、前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントを含む前記ATYを形成する工程と、
前記ATYを送出ユニットによって前記ノズルユニットから引き出す工程と、
前記ATYを取込ユニットによって前記送出ユニットから取り込む工程と
を含み、
前記第1の供給速度と前記第2の供給速度との差は実質的に4%以下であり、前記第1のフィラメントの第1の断面及び前記第2のフィラメントの第2の断面は異なる断面形状を有し、前記第1のフィラメントの第1の断面は実質的に円形の形状を有し、実質的に1.3以下の修飾度(M比)を有し、前記第2のフィラメントの前記第2の断面は、5つ又は6つのローブを含む多角形の形状を有し、1.5よりも実質的に大きいM比を有する方法。
【請求項10】
前記第1の供給速度が、前記第2の供給速度と実質的に等しい請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ポリマー材料を紡糸口金内に供給する工程と、
前記ポリマー材料から前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントを形成する工程と、
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントを前記紡糸口金から出力する工程と、
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントを組み合わせて糸を形成する工程と、
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントを含む前記糸を前記糸マガジンに搬送する工程と
をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ポリマー材料を第1の紡糸口金及び第2の紡糸口金内に供給する工程と、
前記ポリマー材料から前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントを形成する工程と、
前記第1のフィラメントを前記第1の紡糸口金から出力し、前記第2のフィラメントを前記第2の紡糸口金から出力する工程と、
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントを組み合わせて糸を形成する工程と、
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントを含む前記糸を前記糸マガジンに搬送する工程と
をさらに含む請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年8月21日出願の米国仮出願第63/068,621号、及び2021年6月30日出願の米国特許出願第17/363,680号の優先権を主張する。これらの出願は、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、エア加工糸(エア仮撚加工糸、エアテクスチャードヤーン、ATY)マルチローブ繊維に関し、特に、小さく、高密度で均一なループを有するATYに関する。さらに、本開示は、そのようなATYから作製された布帛に関する。さらに、本開示は、そのようなATYの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エア加工糸(ATY)は、互いに交錯するポリマーフィラメントを含み、このポリマーフィラメントが、互いにかみ合うクリンプ(捲縮)及びループを形成するとともに、これらのクリンプ及びループがポリマーフィラメントを一緒に固定している。このような交錯及び相互ロックは、エア加工(エアテクスチャリング)プロセスによって引き起こされる。エア加工プロセスは、ポリマーフィラメントに向かって空気又は液体を吹き当てることにより、クリンプ及びループを有するATYを製造する機械的方法である。
【0004】
ポリマーフィラメントのクリンプ及びループの寸法は、ATYの品質や、そのようなATYから作製された布帛の感触に実質的に影響を及ぼす。従来のATYは、長さの差が大きい2本のフィラメントで形成されており、従ってループが大きくクリンプが長く、そのため従来のATYは引っかかりやすい。さらには、従来のATYは、ループの密度が低いため、ふんわり感が少ない。加えて、このような従来のATYから作製された布帛(布地)は、望ましくない透視性効果(透け感)を有する。
【0005】
従って、ATYの構成及び製造方法を改善することが継続的に必要とされている。
【0006】
この「背景技術」の節は、背景情報としてのみ提供される。この「背景技術」の記述は、この節で開示されている主題が本開示の先行技術を構成することを認めるものではなく、この「背景技術」の節のいかなる部分も、この「背景技術」の節を含む本出願のいかなる部分も本開示の先行技術を構成することを認めるものとして使用することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ATYの構成及び製造方法を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの態様は、エア加工糸(ATY)を提供する。当該ATYは、第1の断面を有する第1のフィラメントと、この第1のフィラメントに隣接して配置され、第2の断面を有する第2のフィラメントとを含む。第1の断面は、実質的に円形の形状を有し、実質的に1.3以下の修飾度(M比)を有し、第1の断面とは異なる第2の断面は、3~6個のローブを含む多角形の形状を有し、第1のフィラメントの長さと第2のフィラメントの長さとの差は実質的に4%以下である。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1のフィラメントの長さは、第2のフィラメントの長さと実質的に等しい。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の断面は、1.5よりも大きいM比を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2の断面のM比は約1.6~約3の範囲内にある。
【0012】
いくつかの実施形態では、第2の断面は、5つ又は6つのローブを含む多角形の形状を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、当該ATYは、第1のフィラメント及び第2のフィラメントに隣接して配置され、第3の断面を有する第3のフィラメントをさらに含み、この第3の断面は、第1のフィラメントの第1の断面及び第2のフィラメントの第2の断面とは異なる。
【0014】
いくつかの実施形態において、当該ATYは、第1のフィラメント又は第2のフィラメントによって形成されたループをさらに含み、このループの高さは480μm未満である。
【0015】
本開示の1つの態様は、ATYを含む布帛を提供する。このATYは、第1の断面を有する第1のフィラメントと、この第1のフィラメントに隣接して配置され、第2の断面を有する第2のフィラメントとを含み、第1の断面は、実質的に円形の形状を有し、1.3未満のM比を有し、第1の断面とは異なる第2の断面は、3~6個のローブを含む多角形の形状を有し、第1のフィラメントの長さと第2のフィラメントの長さとの差は実質的に4%以下である。
【0016】
本開示の1つの態様は、ATYの製造方法を提供する。当該方法は、糸マガジン(巻き取り枠)から第1のフィラメント及び第2のフィラメントを押し出す工程と、供給ユニットの第1の供給部材によって第1のフィラメントを第1の供給速度でノズルユニット内に供給する工程と、その供給ユニットの第2の供給部材によって第2のフィラメントを第2の供給速度でノズルユニット内に供給する工程と、第1のフィラメント及び第2のフィラメントにノズルユニット内の流れを吹き当てて、第1のフィラメント及び第2のフィラメントを含むATYを形成する工程と、このATYを送出ユニットによってノズルユニットから引き出す工程と、そのATYを取込ユニットによって送出ユニットから取り込む工程とを含み、第1の供給速度と第2の供給速度との差は4%以下であり、第1のフィラメントの第1の断面及び第2のフィラメントの第2の断面は異なる断面形状を有し、第1のフィラメントの第1の断面は実質的に円形の形状を有し、実質的に1.3以下の修飾度(M比)を有し、第2のフィラメントの第2の断面は、5つ又は6つのローブを含む多角形の形状を有し、1.5よりも実質的に大きいM比を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1の供給速度は、第2の供給速度と実質的に等しい。
【0018】
当該方法はさらに、ポリマー材料を紡糸口金内に供給する工程と、このポリマー材料から第1のフィラメント及び第2のフィラメントを形成する工程と、この第1のフィラメント及び第2のフィラメントを紡糸口金から出力する工程と、この第1のフィラメント及び第2のフィラメントを組み合わせて糸を形成する工程と、上記第1のフィラメント及び第2のフィラメントを含む糸を糸マガジンに搬送する工程とを含む。
【0019】
当該方法はさらに、ポリマー材料を第1の紡糸口金及び第2の紡糸口金内に供給する工程と、このポリマー材料から第1のフィラメント及び第2のフィラメントを形成する工程と、第1のフィラメントを第1の紡糸口金から出力し、第2のフィラメントを第2の紡糸口金から出力する工程と、この第1のフィラメント及び第2のフィラメントを組み合わせて糸を形成する工程と、上記第1のフィラメント及び第2のフィラメントを含む糸を糸マガジンに搬送する工程とを含む。
【0020】
本開示は、小さく、高密度で均一なループを有するATYを提供する。このATYは、実質的に円形の断面及び実質的に1.3以下のM比を有する第1のフィラメントと、第1の断面とは異なる第2の断面を有する第2のフィラメントとを含む。第2の断面は、3~6個のローブを含む多角形の断面を有する。第1のフィラメントと第2のフィラメントとは、同一又はほぼ同一の供給速度でノズルユニット内に供給され、その後、ノズルユニットによって加工される。第1のフィラメント及び第2のフィラメントは、ATYから突出するループを形成するために、ノズルユニットから供給される圧縮空気、ガス、又は液体の流体が吹き当てられる。
【0021】
その結果、第1のフィラメント及び第2のフィラメントを含む糸が、空気、ガス、又は液体の流体によって加工されて、ATYとなる。第1のフィラメント及び第2のフィラメントは、空気力学的効果が異なる異なる断面プロファイルを有し、同一又はほぼ同一の速度でノズルユニット内に供給されるので、所望の寸法、密度及び分布を有するループを製造することができる。
【0022】
小さく、高密度で均一なループを有するATYは、ふわふわとした快適な感触、又は綿のような感触を提供することができる。さらには、ATYから突出するループのサイズが小さいため、引っ掛かりを低減することができる。加えて、このようなATYから作製された布帛、衣服、衣類は、透視性効果が低い。
【0023】
上述の記載は、以下の本開示の詳細な説明がよりよく理解されるために、本開示の特徴及び技術的利点をかなり大まかに概説した。本開示の追加の特徴及び利点は、本明細書中で以降に説明され、本開示の特許請求の範囲の主題を形成する。開示された構想及び特定の実施形態は、本開示の同じ目的を遂行するための他の構造又はプロセスを修正又は設計するための基礎として容易に利用できることが、当業者には理解されるはずである。そのような同等の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱しないことも、当業者には理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示のより完全な理解は、図に関連して考慮される場合に、詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによって得られる可能性がある。図では、同様の参照番号は、図全体を通して同様の要素を指す。
【0025】
図1】本開示の1つの実施形態に係るエア加工機の模式的側面図である。
図2】本開示の1つ以上の実施形態の様々な態様に係る、エア加工糸(ATY)の製造方法を示すフロー図である。
図3】本開示の1つ以上の実施形態の様々な態様に係る、エア加工糸(ATY)の別の製造方法を示すフロー図である。
図4】本開示の1つの実施形態に係るエア加工糸(ATY)の断面図を示す顕微鏡画像である。
図5】本開示の1つの実施形態に係る3ローブ形状を有するフィラメントの模式的断面図である。
図6】本開示の1つの実施形態に係る十字(クリスクロス)形状を有するフィラメントの模式的断面図である。
図7】本開示の1つの実施形態に係る五芒星形状を有するフィラメントの模式的断面図である。
図8】本開示の1つの実施形態に係る六芒星形状を有するフィラメントの模式的断面図である。
図9】実質的に1.3以下の修飾度(M比)を有するフィラメントの模式的断面図である。
図10】実質的に1.3以下の修飾度(M比)を有するフィラメントの模式的断面図である。
図11】実質的に1.3以下の修飾度(M比)を有するフィラメントの模式的断面図である。
図12】本開示の1つの実施形態に係るエア加工糸(ATY)及び比較例の糸の概略側面図を示す。
図13】本開示の1つの実施形態に係るエア加工糸(ATY)から作製された布帛及び比較例の布帛の概略上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の本開示の説明は、本明細書のマルチローブ繊維、紡糸口金アセンブリ、及びマルチローブ繊維の製造方法に組み込まれてそれらを構成し、本開示の実施形態を示す図面に付随するものであるが、本開示はそれらの実施形態に限定されるものではない。加えて、以下の実施形態を適切に統合して、別の実施形態を完成させることができる。
【0027】
「1つの実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」、「別の実施形態」等の言及は、そのように説明された開示の実施形態(複数可)が特定の特徴、構造、又は特性を含んでもよいが、すべての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造、又は特性を含むわけではないことを示す。さらに、「実施形態において」、「実施形態では」というフレーズを繰り返し使用することは、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではないが、同じ実施形態を指している場合もある。
【0028】
本明細書で使用する場合、「およそ」、「実質的に」、「実質的な」、及び「約」という用語は、小さな変動を記載し、考慮に入れるために使用される。例えば、数値と一緒に使用される場合、これらの用語は、その数値の±4%以下の変動範囲、例えば、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下を指すことができる。例えば、2つの数値の差がそれらの数値の平均値の±4%以下、例えば±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下であれば、それら2つの数値は「およそ」、「実質的に」、「ほぼ」同じであるとみなすことができる。
【0029】
本開示を完全に理解できるようにするために、詳細な工程と構造を以下の説明で提供する。当然のことながら、本開示の実施は、当業者に公知の特別な詳細を制限するものではない。加えて、本開示を不必要に制限しないように、公知の構造及び工程は詳細には説明しない。本開示の好ましい実施形態は、以下で詳細に説明される。しかしながら、その詳細な説明に加えて、本開示は、他の実施形態においても広く実施されてもよい。本開示の範囲は、その詳細な説明に限定されず、特許請求の範囲によって定められる。
【0030】
図1は、本開示の1つの実施形態に係るエア加工機100の模式的側面図である。いくつかの実施形態において、エア加工機100は、エア加工糸(ATY)105を製造するように構成される。いくつかの実施形態では、エア加工機100は、エア加工プロセス又はATY105の製造方法を実施するように構成される。いくつかの実施形態では、エア加工機100は、糸マガジン101と、供給ユニット102と、ノズルユニット103と、送出ユニット104と、取込ユニット106とを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、糸マガジン101は、フィラメントを引き出すように構成されている。いくつかの実施形態では、このフィラメントは、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、ポリプロピレン等のポリマー材料から形成される。いくつかの実施形態では、糸マガジン101は、第1の押出部材101aと第2の押出部材101bとを含む。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aは第1の押出部材101aから押し出され、第2のフィラメント105bは第2の押出部材101bから押し出される。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、同じ又は異なる構成を有することができる。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、異なる断面形状を有する。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aは、実質的に円形の断面を有する。いくつかの実施形態では、第2のフィラメント105bは、3~6個のローブを含む多角形の断面を有する。
【0033】
図1に示す実施形態では2つのフィラメント105a及び105bのみが関与しているが、フィラメントの数は所望に応じて調整可能であることが理解できる。言い換えれば、2つ以上のフィラメントを糸マガジン101から押し出すことができ、2つ以上のフィラメントを糸マガジン101から引き出してノズルユニット103内に供給することができ、最終的に2つ以上のフィラメントを含むATY105を形成することができるようになっている。
【0034】
さらに、ATY105は2つ以上のフィラメントを含むことができ、それらのフィラメントの少なくとも1つは他のフィラメントとは異なる断面を有することが理解できる。いくつかの実施形態では、ATY105は、互いに異なる断面を有する3つのフィラメントを含む。例えば、3つのフィラメントは、実質的に円形の断面を有するフィラメント、3つ又は4つのローブを含む多角形の断面を有するフィラメント、及び5つ又は6つのローブを含む多角形の断面を有するフィラメントを含むことができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、供給ユニット102は、糸マガジン101に隣接して配置される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、供給ユニット102に搬送される。いくつかの実施形態では、供給ユニット102は、第1のフィラメント105aをノズルユニット103内に供給するための第1の供給部材102aと、第2のフィラメント105bをノズルユニット103内に供給するための第2の供給部材102bとを含む。いくつかの実施形態では、第1の供給部材102a及び第2の供給部材102bは、供給ローラである。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aは、第1の供給速度でノズルユニット103内に供給され、第2のフィラメント105bは、第2の供給速度でノズルユニット103内に供給される。いくつかの実施形態では、第1の供給速度と第2の供給速度との差は実質的に4%以下である。いくつかの実施形態では、第1の供給速度と第2の供給速度は同一又はほぼ同一である。言い換えれば、第1の供給速度は第2の供給速度と実質的に等しい。このように、第1の供給速度と第2の供給速度が実質的に等しいことで、第1のフィラメント105aの長さと第2のフィラメント105bの長さとが実質的に等しくなる。第1のフィラメント105aと第2のフィラメント105bとの間の長さの差は、ATY105におけるループの長さを制限するので、実質的に等しい長さのためにATY105が容易に引っかかることはない。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aの長さと第2のフィラメント105bの長さとの差は実質的に4%以下である。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aの長さは、第2のフィラメント105bの長さと実質的に等しい。第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、実質的に同じ長さを有するが、空気力学的効果が異なる異なる断面プロファイルを有し、従って、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bによって形成されたATY105は、小さく、高密度で均一なループを有し、これにより、ふんわり感や非透視性効果(透け感なし)等の所望の特性が生成される。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、供給ユニット102によってノズルユニット103内に供給される。いくつかの実施形態では、ノズルユニット103は、ノズルユニット103を通過するフィラメント105a及び105bを加工するように構成される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bには、ノズルユニット103から供給される空気、ガス、又は液体の流体等の流れが吹き当てられ、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bが混合されて加工され、ATY105となるようになっている。いくつかの実施形態では、ノズルユニット103から供給された空気、ガス、又は液体の流体は、所定の方向に向かって流れる。
【0038】
いくつかの実施形態では、ATY105は、第1のフィラメント105aと第2のフィラメント105bとの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ATY105は、複数の第1のフィラメント105aと複数の第2のフィラメント105bとを含む。
【0039】
その結果、ATY105から突出するループが形成される。第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、同一の速度又はほぼ同一の速度でノズルユニット103内に供給されるので、小さく、高密度で均一なループを有するATY105を製造することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、ATY105は、送出ユニット104によってノズルユニット103から引き出される。いくつかの実施形態では、送出ユニット104は出力ローラである。いくつかの実施形態では、ATY105は、送出ユニット104によってノズルユニット103から出力速度で出力される。いくつかの実施形態では、この出力速度は、第1の供給速度又は第2の供給速度よりも小さい。いくつかの実施形態では、第1の供給速度と出力速度との差は約6%~約16%の範囲である。いくつかの実施形態では、第1の供給速度と出力速度との差は約7%~約14%の範囲である。いくつかの実施形態では、第1の供給速度と出力速度との差は約8%~約13%の範囲である。いくつかの実施形態では、第2の供給速度と出力速度との差は約6%~約16%の範囲である。いくつかの実施形態では、第2の供給速度と出力速度との差は約7%~約15%の範囲である。いくつかの実施形態では、第2の供給速度と出力速度との差は約8%~約14%の範囲である。いくつかの実施形態では、供給ユニット102の入力速度は、第1の供給速度又は第2の供給速度と実質的に同じである。
【0041】
いくつかの実施形態では、ATY105は、取込ユニット106によって巻き取られる。いくつかの実施形態では、取込ユニット106は、ATY105を巻き取るための取込ローラである。ATY105は、最終的に、取込ユニット106の周りに巻き取られる。
【0042】
本開示では、ATY105の製造方法が開示される。いくつかの実施形態では、ATY105は、方法S100を実施することによって製造される。図2は、上述の又は図1に示されているエア加工機100によって実施される方法S100の一実施形態である。方法S100は、多数の操作を含み、その説明及び図示は、操作の順序としての限定とはみなされない。方法S100は、多数の操作(S101、S102、S103、S104、S105及びS106)を含んでいてもよいが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、方法S100は、自動化で実施される。
【0043】
工程S101では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bが、糸マガジン101から押し出される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aは第1の押出部材101aから押し出され、第2のフィラメント105bは第2の押出部材101bから押し出される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bが糸マガジン101から押し出された後、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、供給ユニット102に搬送される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、それぞれ第1の供給部材102a及び第2の供給部材102bに搬送される。
【0044】
工程S102では、第1のフィラメント105aは、供給ユニット102の第1の供給部材102aによって、第1の供給速度でノズルユニット103内に供給される。工程S103では、第2のフィラメント105bは、供給ユニット102の第2の供給部材102bによって、第2の供給速度でノズルユニット103内に供給される。いくつかの実施形態では、工程S102及び工程S103は、別々に又は同時に実施される。いくつかの実施形態では、第1の供給速度と第2の供給速度は、同一又はほぼ同一である。いくつかの実施形態では、第1の供給速度と第2の供給速度との差は実質的に4%以下である。第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bが同一又はほぼ同一の速度でノズルユニット103内に供給されるので、所望の寸法、密度及び分布を有するループを有するATY105を製造することができる。
【0045】
工程S104では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bに、ノズルユニット103内の流れが吹き当てられ、ATY105が形成される。いくつかの実施形態では、ノズルユニット103は、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bがノズルユニット103を通過する際に、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bに吹き当てるために、空気、ガス又は液体を供給する。いくつかの実施形態では、この吹き当ては、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bを混合し、加工することを含む。
【0046】
第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは異なる断面形状を有するので、第1のフィラメント105aに対する空気力学的効果は、第2のフィラメント105bに対する空気力学的効果とは異なる。いくつかの実施形態では、実質的に円形の断面及び実質的に1.3以下のM比を有する第1のフィラメント105aは、3~6個のローブを含む多角形の断面を有する第2のフィラメント105bよりも小さい有効接触面を有し、それゆえ、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは異なる程度の乱流を発生させる。さらに、ATY105から突出するループが形成される。第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bが同一の速度又はほぼ同一の速度でノズルユニット103内に供給されるので、小さく、高密度で均一なクリンプを有するATY105を製造することができる。
【0047】
工程S105では、ATY105が送出ユニット104によってノズルユニット103から引き出される。いくつかの実施形態では、ATY105は、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bとの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ATY105は、出力速度でノズルユニット103から引き出される。いくつかの実施形態では、この出力速度と第1の供給速度との差は実質的に16%以下である。いくつかの実施形態では、出力速度と第2の供給速度との差は実質的に16%以下である。
【0048】
工程S106では、ATY105は、取込ユニット106によって送出ユニット104から取り込まれる。いくつかの実施形態では、ATY105は最終的に取込ユニット106の周りに巻き取られる。
【0049】
図1及び図2では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bがノズルユニット103内に供給される前に組み合わされることが記載されているが、エア加工機100に入る前に第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bを組み合わせることができ、あるいは、エア加工機100に入る前にいくつかの(例えば、4つ以上の)フィラメントを組み合わせることさえできるということが理解できる。例えば、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、エア加工機100によって実施されるエア加工プロセスの前に、溶融紡糸プロセスによって組み合わせることができる。
【0050】
本開示では、ATY105の別の製造方法が開示されている。いくつかの実施形態では、ATY105は、別の方法S200を実施することによって製造される。図3は、溶融紡糸機による溶融紡糸プロセス、及び上述の又は図1に示されているエア加工機100によるエア加工プロセスを実施する方法S200の一実施形態である。方法S200は、多数の操作を含み、その説明及び図示は、操作の順序を限定するものとはみなされない。方法S200は、多数の操作(S201、S202、S203、S204、S205、S206、S207、S208、S209及びS210)を含んでいてもよいが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、方法S200は、自動化で実施される。
【0051】
工程S201では、ポリマー材料が紡糸口金内に供給される。いくつかの実施形態では、このポリマー材料は、ポリマー溶融物、ポリマー溶液等である。いくつかの実施形態では、このポリマー材料は、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、ポリプロピレン等を含む。いくつかの実施形態では、紡糸口金は、上記ポリマー材料を押し出して繊維又はフィラメントにするように構成されている。いくつかの実施形態では、紡糸口金は、当該技術分野で一般的に公知の構成である。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、互いに分離された複数の紡糸口金内に供給される。
【0052】
工程S202では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bが、上記ポリマー材料から形成される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、1つ以上の紡糸口金によって形成される。いくつかの実施形態では、第1の断面を有する第1のフィラメント105a及びこの第1の断面とは実質的に異なる第2の断面を有する第2のフィラメント105bは、1つ以上の紡糸口金によって形成される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aの第1の断面は、円形の形状を有し、第2のフィラメント105bの第2の断面は、五芒星又は六芒星である。いくつかの実施形態では、第2のフィラメント105bの第2の断面は、1.5よりも実質的に大きいM比を有する。
【0053】
工程S203では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bが1つ以上の紡糸口金から出力される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、それぞれ紡糸口金から出力される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、同じ紡糸口金から出力される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、別々のそれぞれの紡糸口金から出力される。
【0054】
工程S204では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bが組み合わされて、糸が形成される。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bを含む糸になるように組み合わされる。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bを含む糸は、当該技術分野で一般に公知の溶融紡糸プロセスに基づいて延伸及び熱セットされ、その後、糸はコーンに巻き取られる。引き続いて、このコーンは、上述の又は図1に示されているエア加工プロセスのために、エア加工機100の糸マガジン101に搬送される。
【0055】
工程S205では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bを含む糸は、糸マガジン101に搬送される。工程206では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bを含む糸が、糸マガジン101から押し出される。いくつかの実施形態では、糸が糸マガジン101から押し出された後、糸は供給ユニット102に搬送される。
【0056】
工程S207では、糸は、供給ユニット102によって、入力速度でノズルユニット103内に供給される。工程S208では、糸は、ノズルユニットによって空気、ガス、又は液体の流体等の流れが吹き当てられ、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bを含むATY105が形成される。いくつかの実施形態では、工程S208は、上述の工程S104と同様である。
【0057】
工程S209では、ATY105は、送出ユニット104によってノズルユニット103から出力速度で引き出される。いくつかの実施形態では、上記入力速度とこの出力速度との差は約6%~16%の範囲である。いくつかの実施形態では、工程S209は、上述の工程S105と同様である。工程S210では、次に、ATY105は、上述の工程S106と同様に、取込ユニット106によって送出ユニット104から取り込まれる。
【0058】
本開示では、エア加工糸(ATY)が開示されている。いくつかの実施形態では、ATY105は、上述の又は図1に示されているエア加工機100によって製造される。いくつかの実施形態では、ATY105は、上述の若しくは図2に示されている方法S100又は上述の若しくは図3に示されている方法S200によって製造される。図4は、本開示の1つの実施形態に係るATY105の断面図を示す顕微鏡画像である。
【0059】
いくつかの実施形態では、ATY105は、異なる断面形状を有する少なくとも2つのフィラメントを含む。いくつかの実施形態では、ATY105は、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bを含む。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bは、ATY105内に一様に分布している。言い換えれば、第1のフィラメント105aと第2のフィラメント105bとは、互いに均一に混合されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aは第1の断面を有し、第2のフィラメント105bは第2の断面を有する。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aの第1の断面は、第2のフィラメント105bの第2の断面とは異なる。いくつかの実施形態では、第1の断面は、実質的に円形の形状を有し、実質的に1.3以下のM比を有する。いくつかの実施形態では、第2の断面は、3~6個のローブを含む多角形の形状を有する。いくつかの実施形態では、第2の断面は、5つ又は6つのローブを含む多角形の形状を有する。いくつかの実施形態では、第2の断面は、3ローブ形状、4ローブ形状、星形、五芒星、六芒星、七芒星、八芒星等である。
【0061】
図4に示すようないくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aの第1の断面は、実質的に円形の形状を有し、第2のフィラメント105bの第2の断面は、5つのローブを含む多角形の形状である。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aの第1の断面は、ローブ及び凹部を有さない。いくつかの実施形態では、第2の断面は、第2のフィラメント105bの中央部分から突出する複数のローブと、ローブの間の複数の凹部とを含む。いくつかの実施形態では、この凹部の各々は、2つの隣接するローブの間に配置されている。いくつかの実施形態では、ATY105は、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bによって囲まれた空隙105gを含む。
【0062】
図4に示すようないくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aの少なくとも一部は、第2のフィラメント105bの2つの隣接するローブの間に配置されている。いくつかの実施形態では、2つの隣接する第2のフィラメント105bは互いにかみ合っている。いくつかの実施形態では、第2のフィラメント105bのローブの1つは、別の第2のフィラメント105bの2つの隣接するローブの間に配置されている。
【0063】
図5図8は、本開示の実施形態に係る第2のフィラメント105bの様々な模式的断面図を示す。図5に示すようないくつかの実施形態では、第2の断面は、3つのローブを含む多角形の形状を有する。図6に示すようないくつかの実施形態では、第2の断面は、4つのローブを含む多角形の形状を有する。図7に示すようないくつかの実施形態では、第2の断面は、5つのローブを含む多角形の形状を有する。図8に示すようないくつかの実施形態では、第2の断面は、6つのローブを含む多角形の形状を有する。
【0064】
図5図8に示すようないくつかの実施形態では、第2の断面は、第2のフィラメント105bの中央部分から突出する複数のローブ105eと、ローブ105eの間の複数の凹部105fとを含む。いくつかの実施形態では、凹部105fの各々は、2つの隣接するローブ105eの間に配置される。
【0065】
いくつかの実施形態では、第2のフィラメント105bの第2の断面は、第1の長さDを有する長径と、第2の長さdを有する短径とを有する。いくつかの実施形態では、第1の長さDは第2の断面の最大の直径であり、第2の長さdは第2の断面の最小の直径である。いくつかの実施形態では、第2のフィラメント105bの中央部分は、第2の長さdを有する。いくつかの実施形態では、第2のフィラメント105bの第2の断面は、顕微鏡を使用する際に所定の倍率で測定することができ、その後、第1の長さDと第2の長さdとの比を計算することができる。いくつかの実施形態では、比D:dは、修飾の度合い(修飾度)として定義され、これはM比とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、第2のフィラメント105bは、実質的に1.5よりも大きいM比(D:d)を有する。いくつかの実施形態では、第2のフィラメント105bのM比は実質的に2より大きい。いくつかの実施形態では、第2のフィラメント105bのM比は、約1.6~約3の範囲内にある。いくつかの実施形態では、図5図8に示すように、第2のフィラメント105bは、実質的に1.5より大きいM比(D:d)を有する。
【0066】
図9図11は、本開示の実施形態に係る第1のフィラメント105aの様々な模式的断面図を示す。いくつかの実施形態では、第1の断面は、実質的に円形の形状を有し、実質的に1.5以下のM比(D’:d’)を有する。図9図11に示すように、第1のフィラメント105aの第1の断面のM比は、それぞれ1.3、1.2、1.1である。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aの第1の断面は円形の形状である。いくつかの実施形態では、第1のフィラメント105aの第1の断面のM比は、実質的に1に等しい。
【0067】
図4に戻ると、ATY105は、互いに異なる断面プロファイルを有する第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bを含む。異なる断面プロファイルは、エア加工プロセス中に異なる空気力学的効果を生み出すので、所望の寸法、密度及び分布を有するループを有するATY105を製造することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、ATY105は、互いに異なる断面プロファイルを有する第1のフィラメント105a、第2のフィラメント105b及び第3のフィラメント(図示せず)を含む。いくつかの実施形態では、第3のフィラメントは、第1のフィラメント105a及び第2のフィラメント105bに隣接して配置され、第3の断面を有する。いくつかの実施形態では、この第3の断面は、第2の断面とは異なり、3~6個のローブを含む多角形の形状を有する。いくつかの実施形態では、第3のフィラメントの第3の断面の構成は、図5から図8に示されている。いくつかの実施形態では、空隙105gは、第1のフィラメント105a、第2のフィラメント105b及び第3のフィラメントのうちの少なくとも1つによって囲まれている。いくつかの実施形態では、空隙105gは、第3のフィラメントに隣接している。いくつかの実施形態では、ループは、第3のフィラメントによって形成される。
【0069】
図12は、上述の若しくは図1に示されているエア加工機100、上述の若しくは図2に示されている製造方法S100、又は上述の若しくは図3に示されている製造方法S200によって製造されたATY105の側面図の顕微鏡画像を示す。いくつかの実施形態では、図12に示すように、ATY105は、小さく、高密度で均一なループを有し、それゆえ、ATY105のループは、望ましいふわふわとした快適な感触、又は綿のような感触を提供することができ、容易に引っかかることはない。
【0070】
いくつかの実施形態では、ATY105から突出するループは、480μm未満の高さHを有する。いくつかの実施形態では、ループの高さHは約150μm~約480μmの範囲内にある。いくつかの実施形態では、ループの高さHは、約100μm~約280μmの範囲内にある。
【0071】
対照的に、他の加工機又は他の加工方法によって製造された比較例の糸205のループは、ATY105のループと比較して、より大きく、密度がより低く、均一性がより低い。この比較例の糸205は、より大きくてより長いループを有し、従って引っかかりやすい。
【0072】
本開示では、ATY105から作製された布帛、衣服又は衣類が開示されている。図13は、本開示の1つの実施形態に係る、上述の又は図4に示されているATY105から作製された布帛300と、他の糸から作製された比較例の布帛301とを示す。いくつかの実施形態では、布帛300は、透視性効果(透け感)が低い。図13に示すように、布帛(布地)300は、比較例の布帛301よりも透視性効果が低い。言い換えれば、布帛300の背後にある物体ははっきりと見えないが、比較例の布帛301の背後にある物体ははっきりと見ることができる。
【0073】
結論として、本開示のATYは、実質的に4%以下の長さの差を有する第1のフィラメントと第2のフィラメントとを含む。さらに、この第1のフィラメント及び第2のフィラメントは、同一又はほぼ同一の供給速度でノズルユニット内に供給され、その後、ノズルユニットによって加工され、第1のフィラメント及び第2のフィラメントが実質的に等しい長さを有することができるようになっている。第1のフィラメントと第2のフィラメントの長さが実質的に等しいことで、ATYが容易にひっかかることを防ぐことができる。第1のフィラメントと第2のフィラメントは、異なるM比を有する。例えば、第1のフィラメントは実質的に円形の断面を有し、実質的に1.3以下のM比を有し、第2のフィラメントは多角形の断面を有する。第2のフィラメントのM比は1.5より大きくてもよい。第2のフィラメントの断面は、第1の断面とは異なり、3~6個のローブを含む多角形の形状を有する。第1のフィラメントと第2のフィラメントは、空気力学的効果が異なる異なる断面プロファイルを有するため、この第1のフィラメント及び第2のフィラメントによって形成されるATYは、小さく、高密度で均一なループを有し、ふんわり感及び非透視性効果等の所望の特性を実現する。
【0074】
本開示及びその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定められる本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示において様々な変更、置換及び改変を行うことができることを理解すべきである。例えば、上述したプロセスの多くは、異なる方法論で実施し、他のプロセスに置き換えることができ、又はそれらの組み合わせが可能である。
【0075】
さらに、本願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法及び工程の特定の実施形態に限定されることを意図していない。当業者であれば、本開示から容易に理解できるように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、若しくは実質的に同じ結果を達成する、現在存在する、若しくは後に開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、又は工程が、本開示に従って利用されてもよい。従って、添付の特許請求の範囲は、その範囲内にそのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法及び工程を含むことを意図している。
【符号の説明】
【0076】
100 エア加工機
101 糸マガジン
101a 第1の押出部材
101b 第2の押出部材
102 供給ユニット
102a 第1の供給部材
102b 第2の供給部材
103 ノズルユニット
104 送出ユニット
105 エア加工糸(ATY)
105a 第1のフィラメント
105b 第2のフィラメント
105e ローブ
105f 凹部
105g 空隙
106 取込ユニット
205 糸
300、301 布帛
D、D’ 第1の長さ
d、d’ 第2の長さ
H 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13