IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一三共ヘルスケア株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036050
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ロキソプロフェン配合皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20220225BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P29/00
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/04
A61K9/06
A61K9/12
A61K47/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133734
(22)【出願日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020139022
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史織
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA11
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC05
4C076CC44
4C076DD22Z
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD43Z
4C076DD59
4C076FF02
4C076FF12
4C076FF61
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA03
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】ロキソプロフェン及び皮膚外用剤全量を基準として60質量%以上の低級アルコールを含有する皮膚外用剤において、保存安定性を向上させた皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】ロキソプロフェン又はその塩、皮膚外用剤全量を基準として60質量%以上の低級アルコール、塩酸又はリンゴ酸及びその塩から選ばれる1種以上のpH調節剤を含有する皮膚外用剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[a]~[c]を含有する皮膚外用剤。
[a]ロキソプロフェン又はその塩;
[b]皮膚外用剤全量を基準として60質量%以上の低級アルコール;及び
[c]塩酸またはリンゴ酸及びその塩から選ばれる1種以上のpH調節剤。
【請求項2】
前記低級アルコールの含有量が、前記皮膚外用剤全量を基準として60~80質量%である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記リンゴ酸及びその塩がDL-リンゴ酸またはその塩である、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
さらに油溶性成分を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記油溶性成分が、l-メントール及びトコフェロールまたはその誘導体から選ばれる1種以上である、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
さらに多価アルコールを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
添加物として界面活性剤を含有しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
pHが5.5~7.5である、請求項1~7のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
鎮痛消炎用である、請求項1~8のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
剤形が外用液剤、軟膏剤、スプレー剤、ゲル剤、エアゾール剤、又は外用固形剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた鎮痛消炎作用と使用感を有するロキソプロフェンを含有する皮膚外用剤に関する。より詳しくは、本発明は、ロキソプロフェン及び皮膚外用剤全量を基準として60質量%以上の低級アルコールを含む皮膚外用剤に特定のpH調節剤を含有させることによって、保存安定性を向上させたロキソプロフェン配合皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピオン酸系非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤(NSAIDs)であるロキソプロフェンは、他のNSAIDsと同様にプロスタグランジン生合成の抑制作用に基づく解熱・鎮痛・消炎作用を有する。なお、ロキソプロフェンは経口投与後に胃粘膜刺激作用の弱い未変化体のまま消化管から吸収され、体内で活性体となるプロドラッグであるため、活性体よりも胃粘膜障害は少ないという特徴を有することでも知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
近年、ロキソプロフェンは外用消炎鎮痛剤としてもパップ剤、テープ剤及びゲル剤が市販され、臨床に供されている(例えば、非特許文献2参照)。なお、ロキソプロフェンは、皮膚においてもケトン還元酵素によってトランス-OH体(活性体)に変換されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
NSAIDsを含有する液状または半固形状の製剤を製造する際には、低級アルコールや精製水を溶媒として溶解、または分散させて使用することが多い。ロキソプロフェンナトリウムは、エタノールやイソプロパノール、水及びこれらの混合物への溶解度は高いため、これらの成分が溶媒としてよく使用されている。
【0005】
また、NSAIDsの液状または半固形状の製剤には、消炎鎮痛効果を高める、あるいは補助的な作用を期待できる成分を追加的に配合することがある。その中には、メントールやトコフェロール等の水に溶けにくい成分があり、このような場合には、水以外の溶媒を多く配合するか、適切な界面活性剤を添加する必要があった。
【0006】
ロキソプロフェンを含有する外用剤を製造する際には、pHを中性付近に調整するためにpH調節剤が添加されている。pH調節剤としては、塩酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等が知られている。(特許文献2及び特許文献3参照)
【0007】
特許文献2には、(A)ジクロフェナク、フェルビナク、ロキソプロフェン及びこれらの塩から選ばれる1種以上、(B)リンゴ酸及びその塩から選ばれる1種以上、及び(C)水を含有し、pHが6~8である外用組成物が記載されており、さらに(D)エタノール30~80質量%を含有してもよいことが記載されている。しかし、特許文献2には、ロキソプロフェンを含む外用組成物についての実施例は記載されていない。すなわち、ロキソプロフェンを含み、かつ外用組成物全量を基準としてエタノール60質量%以上を含む外用組成物についての実施例は記載されておらず、具体的な開示はされていない。
【0008】
また、特許文献3の外用剤は、含有するエタノールの濃度が外用剤全量を基準として60質量%未満の製剤である。エタノールの濃度が外用剤全量を基準として60質量%以上の外用剤については、ロキソプロフェン及び/又はその塩とトコフェロール酢酸エステルが共存する外用医薬組成物において、乳酸及びN‐メチル‐2‐ピロリドンを含有するものが開示されている。(特許文献4及び特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-074873
【特許文献2】特開2014-172857
【特許文献3】特開2018-188429
【特許文献4】特開2019-206498
【特許文献5】特開2019-206499
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】薬理と治療 Vol.16 No.2 1988 p.611-619
【非特許文献2】JAPIC 医療用医薬品集2013 丸善 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ロキソプロフェン及び皮膚外用剤全量を基準として60質量%以上の低級アルコールを含有する皮膚外用剤において、保存安定性を向上させた皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ロキソプロフェンを含有する皮膚外用剤において、血行促進作用等の付与を目的として、トコフェロール酢酸エステル及びl-メントール等の油溶性成分をさらに含有する皮膚外用剤(配合剤)を開発するため、それらの有効成分を可溶化させるために高濃度の低級アルコールを配合した製剤について検討した。その結果、ロキソプロフェン及び皮膚外用剤全量を基準として60質量%以上の低級アルコールを含有する皮膚外用剤にリン酸及びクエン酸等のpH調節剤を添加すると、製造直後及び低温保管下において、保存安定性が著しく低下した。そこで、リン酸及びクエン酸の代わりに塩酸またはDL-リンゴ酸を配合すると、保存安定性が改善することを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1) 下記[a]~[c]を含有する皮膚外用剤。
[a]ロキソプロフェン又はその塩;
[b]皮膚外用剤全量を基準として60質量%以上の低級アルコール;及び
[c]塩酸またはリンゴ酸及びその塩から選ばれる1種以上のpH調節剤。
(2) 低級アルコールの含有量が、皮膚外用剤全量を基準として60~80質量%である、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3) リンゴ酸及びその塩がDL-リンゴ酸またはその塩である、(1)または(2)に記載の皮膚外用剤。
(4) さらに油溶性成分を含有する、(1)~(3)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
(5) 油溶性成分が、l-メントール及びトコフェロールまたはその誘導体から選ばれる1種以上である、(4)に記載の皮膚外用剤。
(6) さらに多価アルコールを含有する、(1)~(5)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
(7) 添加物として界面活性剤を含有しない、(1)~(6)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
(8) pHが5.5~7.5である、(1)~(7)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
(9) 鎮痛消炎用である、(1)~(8)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
(10) 剤形が外用液剤、軟膏剤、スプレー剤、ゲル剤、エアゾール剤、又は外用固形剤である、(1)~(9)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明の、ロキソプロフェン又はその塩、皮膚外用剤全量を基準として60質量%以上の低級アルコール、塩酸又はリンゴ酸及びその塩から選ばれる1種以上のpH調節剤を含有する皮膚外用剤は、使用感に優れ、保存安定性を向上させることができ、臨床上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における皮膚外用剤は下記[a]~[c]を含有する。
[a]ロキソプロフェン又はその塩;
[b]皮膚外用剤全量を基準として60質量%以上の低級アルコール;及び
[c]塩酸またはリンゴ酸及びその塩から選ばれる1種以上のpH調節剤。
【0016】
本発明において、「ロキソプロフェン又はその塩」としては、ロキソプロフェン又はその塩、あるいはそれらの水和物を使用することができる。ロキソプロフェンの塩としては、薬理学的に許容できる塩が好ましく、より好ましくは、ロキソプロフェンナトリウム又はロキソプロフェンナトリウム・2水和物であり、さらに好ましくは、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物である。
【0017】
本発明におけるロキソプロフェンナトリウム・2水和物は、ロキソプロフェンナトリウム水和物として第17改正日本薬局方に収載されている。
【0018】
本発明における低級アルコールは、可溶化剤、基剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤に用いられる炭素数1~4個の脂肪族アルコール類であり、例えば、メタノール、エタノール(エチルアルコールともいう)、プロパノール、イソプロパノール(イソプロピルアルコールともいう)、及びブチルアルコール等からなる群より選ばれる1種または2種以上であり、好ましくはエタノール及びイソプロパノールからなる群より選ばれる1種又は2種である。エタノール含量が99.5体積%以上のものは無水エタノールとも呼ばれる。
【0019】
本発明における塩酸は、安定化剤、可溶化剤、矯味剤、溶解剤、溶剤、溶解補助剤、pH調節剤の用途で外用剤に用いられる、塩酸、希塩酸等を挙げることができる。本発明における塩酸は第17改正日本薬局方や医薬品添加物事典2016(薬事日報社、2016)に収載されている。
【0020】
本発明におけるリンゴ酸は、D-リンゴ酸、L-リンゴ酸、又はDL-リンゴ酸を挙げることができ、好ましくはDL-リンゴ酸である。DL-リンゴ酸は安定化剤、緩衝剤、矯味剤、賦形剤、pH調節剤の用途で外用剤に用いられる医薬品添加剤であり、医薬品添加物事典2016に収載されている。リンゴ酸塩としてはリンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム等を挙げることができる。
【0021】
本発明にかかる皮膚外用剤においては、塩酸またはリンゴ酸及びその塩から選ばれる1種以上のpH調節剤を用いる。本発明にかかる皮膚外用剤においては、例えば、塩酸と、リンゴ酸及びその塩と、をpH調節剤として用いてもよい。本発明にかかる皮膚外用剤においては、例えば、リンゴ酸及びその塩(例えば、DL-リンゴ酸)をpH調節剤として用いてもよい。また、本発明にかかる皮膚外用剤においては、例えば、水及びエタノールへの溶解がより容易であるといった観点から塩酸をpH調節剤として用いることが好ましい。
【0022】
本発明にかかる皮膚外用剤においては、油溶性成分を含有していてもよい。
本発明における油溶性成分とは、水に溶けにくく、油に溶解しやすい成分であって、皮膚外用剤に配合可能な成分であり、例えば、l-メントール、トコフェロール又はその誘導体、ノニル酸ワニリルアミド等を挙げることができる。
本発明にかかる皮膚外用剤においては、油溶性成分が、l-メントール及びトコフェロールまたはその誘導体から選ばれる1種以上であってもよい。
本発明におけるl-メントールは、第17改正日本薬局方や医薬品添加物事典2016(薬事日報社、2016)に収載されている。
【0023】
本発明におけるトコフェロール又はその誘導体としては、トコフェロール、d-δ-トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル等を挙げることができ、好ましくは、トコフェロール酢酸エステルである。トコフェロール、d-δ-トコフェロール、トコフェロール酢酸エステルは第17改正日本薬局方や医薬品添加物事典2016に収載されている。
【0024】
本発明の皮膚外用剤は、多価アルコールを含んでいてもよい。本発明における多価アルコールとは、可溶化剤、基剤、湿潤剤、粘稠剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤に用いられる、分子内に水酸基が2個以上あるアルコールであり、例えば、プロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコール、マクロゴール(ポリエチレングリコールともいう)、グリセリン、D-ソルビトールであり、医薬品添加物事典2016に収載されている。
【0025】
本発明における、ロキソプロフェンの含有量は、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物として、皮膚外用剤全量を基準として、好ましくは、0.1~10質量%であり、より好ましくは、0.5~5質量%である。
【0026】
本発明における低級アルコールの含有量(2種以上のアルコールを含む場合はアルコールの添加量の総計)は、皮膚外用剤全量を基準として、60質量%以上であり、好ましくは60~80質量%であり、より好ましくは60~73質量%であり、さらに好ましくは、60~71質量%である。なお、低級アルコールの含有量は、皮膚外用剤全量を基準として、61質量%以上、62質量%以上、63質量%以上、64質量%以上、又は65質量%以上でもよい。低級アルコールの含有量は、皮膚外用剤全量を基準として、70質量%以下、69質量%以下、68質量%以下、67質量%以下、又は66質量%以下でもよい。低級アルコールの濃度が、皮膚外用剤全量を基準として、60質量%未満であると、例えば、難溶性の油溶性成分を配合する際に界面活性剤の添加が必要になる。また、低級アルコールの濃度が高い場合には、成分を含むバルクや製品の保管や輸送において火気や温度などにより一層の注意が必要となる観点から、低級アルコールの含有量は、皮膚外用剤全量を基準として、80質量%以下であることが好ましい。
【0027】
本発明における塩酸又はリンゴ酸及びその塩から選ばれる1種以上のpH調節剤の含有量は、皮膚外用剤全量を基準として、好ましくは0.01~5質量%であり、より好ましくは、0.05~3質量%である。
【0028】
本発明の皮膚外用剤がl-メントールを含有する場合、l-メントールの含有量は、皮膚外用剤全量を基準として、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは、0.5~7.5質量%である。
【0029】
本発明の皮膚外用剤がトコフェロール又はその誘導体を含有する場合、トコフェロール又はその誘導体の含有量は、皮膚外用剤全量を基準として、通常は0.001~5質量%であり、好ましくは0.05~3質量%であり、より好ましくは、0.1~1質量%である。
【0030】
本発明の皮膚外用剤が多価アルコールを含有する場合、多価アルコールの含有量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量を基準として、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは、1.0~15質量%である。
【0031】
本発明の皮膚外用剤のpHの範囲は、皮膚への刺激の軽減の観点から、好ましくは5.0~8.0であり、より好ましくは5.5~7.5であり、さらに好ましくは、6.0~7.0である。
【0032】
本発明の皮膚外用剤において、上記成分以外の鎮痛消炎用の皮膚外用剤に通常使用される、薬物や医薬品添加物を添加することができる。
薬物としては、例えば、グリチルレチン酸等の抗炎症剤、クロルフェニラミンマレイン酸塩等の抗ヒスタミン剤、ニコチン酸ベンジルエステル等の血行改善成分、トウガラシエキス、カプサイシン等の局所刺激成分、アルニカチンキ等の生薬成分等を挙げることができ、これらの薬物は、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0033】
上記成分以外の医薬品添加物は、例えば、経時的な含量安定性や使用感の更なる向上等を目的として必要に応じて添加するものであり、例えば、湿潤剤、抗酸化剤や清涼化剤等を挙げることができる。
湿潤剤としては、例えばdl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム等を添加することができる。
【0034】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸水和物、無水クエン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル等を用いることができる。
清涼化剤としては、例えば、カンフル、dl-カンフル、ハッカ油、ユーカリ油等を挙げることができる。
【0035】
本発明の皮膚外用剤は、界面活性剤を含んでいてもよいし、界面活性剤を含まなくてもよいが、皮膚への刺激の軽減の観点からは、界面活性剤を含まない方が好ましい。
【0036】
本発明の皮膚外用剤の具体的な剤形としては、例えば、外用液剤、軟膏剤、クリーム剤、スプレー剤(ポンプスプレー剤など)、ゲル剤、エアゾール剤(外用エアゾール剤など)、貼付剤(テープ剤、パップ剤)、又は外用固形剤等を挙げることができる。上記の剤形は、各剤形に適した添加剤や基剤を適宜使用し、第17改正日本薬局方などに記載される通常の方法に従い、製造することができる。本発明の皮膚外用剤の剤形としては、外用液剤、軟膏剤、スプレー剤、ゲル剤、エアゾール剤、又は外用固形剤が好ましく、外用液剤が特に好ましい。
また、本発明の皮膚外用剤の製剤は、アルミニウム等の金属製の容器・包装、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂製の容器・包装に収容し、密封することができる。
【0037】
本発明の皮膚外用剤は、鎮痛消炎用として、痛みや炎症を有する患者、例えば、腰痛、打撲、捻挫、肩こりに伴う肩の痛み、腱鞘炎、肘の痛み、関節痛等の患者に使用することができる。本発明の皮膚外用剤は、前記患者に対し、これを1日1~数回、適量を患部に塗布又は貼付する。
以下に、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例0038】
<試験例1>ロキソプロフェン含有皮膚外用剤の性状確認試験1
(1)試験材料及び検体の調製
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物はKOLON LIFE SCIENCE(株)製のものを、l-メントールは鈴木薄荷(株)製のものを、トコフェロール酢酸エステルは理研ビタミン(株)製のものを、無水エタノールは今津薬品工業(株)製のものを、塩酸、リン酸及び1,3-ブチレングリコールは関東化学(株)製のものを、DL-リンゴ酸及びクエン酸は東京化成工業(株)製のものを、それぞれ使用した。
以下の表1に記載した成分を混合して溶解後、表に示す外用液剤を得た。なお、各pH調節剤は適量添加し、製剤のpHが6.5となるように調製した。
【0039】
(2)評価方法
得られた各検体の性状について、目視確認を行った。性状は不溶物の析出や沈殿の有無について以下の基準で評価し、○のみを許容範囲とした。
○:無色澄明な液剤で、析出物や沈殿が認められない
×:白濁した液剤あるいは、析出物や沈殿が認められる
また、製造直後 、室温24時間後、5℃24時間後の性状がいずれも〇であった場合に合格とした。
【0040】
(3)試験結果
結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1の実施例1、2及び5と比較例1、2及び5との比較により、ロキソプロフェンナトリウム水和物、外用剤全量を基準として70質量%の無水エタノール及び1,3-ブチレングリコールを含有する外用剤において、pH調節剤としてクエン酸又はリン酸を配合した場合に比べ、塩酸及びDL-リンゴ酸を配合したほうが製造直後及び室温24時間後の性状が著しく向上した。
【0043】
ロキソプロフェンナトリウム水和物の配合量は、ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する。
【0044】
表1の実施例3及び4と比較例3及び4との比較により、ロキソプロフェンナトリウム水和物、外用剤全量を基準として70質量%の無水エタノール及びl-メントールを含有する外用剤において、pH調節剤としてクエン酸又はリン酸を配合した場合に比べ塩酸及びDL-リンゴ酸を配合したほうが製造直後及び室温24時間後の性状が著しく向上した。
【0045】
ロキソプロフェンナトリウム水和物の配合量は、ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する。
【0046】
<試験例2>ロキソプロフェン含有皮膚外用剤の性状確認試験2
(1)試験材料及び検体の調製
試験例1と同様に行った。なお、ロキソプロフェンナトリウム水和物を含有しない検体については、同処方でロキソプロフェンナトリウム水和物を含有する検体と同量のpH調節剤を添加した。
(2)評価方法
試験例1と同様に行った。
【0047】
(3)試験結果
結果を表2に示す。
【表2】
【0048】
表2の参考例1~5より、ロキソプロフェンナトリウム水和物を含有しない外用剤においては、添加するpH調節剤の種類によらず性状は安定であった。
【0049】
<試験例3>ロキソプロフェン含有皮膚外用剤の性状確認試験3
(1)試験材料及び検体の調製
表3に記載の成分をもとに、試験例1と同様に調製した。
(2)評価方法
試験例1と同様に行った。
【0050】
(3)試験結果
結果を表3に示す。
【表3】
【0051】
表3より、無水エタノールの濃度が外用剤全量を基準として60質量%である実施例6及び比較例6を比較すると、リン酸を添加した場合では5℃にて24時間保管した場合に性状が悪化するのに対し、塩酸を添加した場合には性状を安定に保つことができた。なお、無水エタノールの濃度が外用剤全量を基準として61質量%で、リン酸を添加した比較例7では、製造直後においても、室温または5℃にて24時間保管した場合においても性状が悪化した。無水エタノールの濃度が外用剤全量を基準として70質量%である実施例7及び比較例8を比較すると、リン酸を添加した場合では、製造直後においても、室温にて24時間保管した場合においても性状が悪化するのに対し、塩酸を添加した場合にはいずれの場合にも性状を安定に保つことができた。以上の結果から、無水エタノールを外用剤全量を基準として60質量%以上含有する場合、pH調節剤をリン酸にすると、ロキソプロフェンナトリウム水和物を含有する外用剤の性状安定性の低下が生じることがわかった。さらに、pH調節剤をリン酸から塩酸に代えることにより、性状が安定することも明らかとなった。
【0052】
<試験例4>ロキソプロフェン含有皮膚外用剤の性状確認試験4
(1)試験材料及び検体の調製
試験例1の無水エタノールをイソプロパノール(小堺製薬社製)に代えて、表4の成分をもとに試験例1と同様に各検体を調製した。
(2)評価方法
試験例1と同様に行った。
【0053】
(3)試験結果
結果を表4に示す。
【表4】
【0054】
表4の実施例8と比較例9の比較により、低級アルコールとして、無水エタノールに代わりイソプロピルアルコールを配合した場合においても、pH調節剤としてリン酸を配合した場合に比べ、塩酸を配合したほうが製造直後及び室温24時間後の性状が著しく向上することがわかった。
【0055】
(製剤例)
以下の表5及び表6に記載した成分を攪拌・混合して溶解後、製剤例1~18の皮膚外用剤を得ることができる。
製造方法としては、上記成分及び分量を取り、日本薬局方製剤総則「外用液剤」、「ゲル剤」の項に準じて製造することができる。
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
表5、表6、表7ともにロキソプロフェンナトリウム水和物の配合量は、ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する。
【0060】
<試験例>ロキソプロフェン含有皮膚外用剤の性状確認試験5
(1)試験材料及び検体の調製
表8に記載の成分をもとに、試験例1と同様に調製した。
(2)評価方法
試験例1と同様に行った。
【0061】
(3)試験結果
結果を表8に示す。
【表8】
【0062】
表8の実施例9~11と比較例10~11の比較により、無水エタノールの濃度が外用剤全量を基準として60質量%、80質量%のいずれの場合においても、pH調節剤としてリン酸を配合した場合は、製造直後において、あるいは室温または5℃にて24時間保管した場合において性状が悪化したのに対し、塩酸またはDL-リンゴ酸を配合した場合は製造直後及び室温及び5℃での24時間後の性状が著しく向上した。
【0063】
<試験例>ロキソプロフェン含有皮膚外用剤の性状確認試験6
(1)試験材料及び検体の調製
表8に記載の成分をもとに、試験例1と同様に調製した。
(2)評価方法
試験例1と同様に行った。
【0064】
(3)試験結果
結果を表9に示す。
【表9】
【0065】
表9の実施例12~15と比較例12~15の比較により、pHが5.5または7.5のいずれの場合でも、pH調節剤としてリン酸またはクエン酸を配合した場合は、製造直後においても、室温または5℃にて24時間保管した場合においても性状が悪化したのに対し、塩酸またはDL-リンゴ酸を配合した場合は製造直後及び室温及び5℃での24時間後の性状が著しく向上した。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の、ロキソプロフェンを含有する皮膚外用剤は、使用感に優れ、かつ外観で見る保存安定性に優れているため、極めて有用である。