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特開2022-36072管腔の側壁や臓器の側部を診断するための軟性内視鏡の挿入方法
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  • 特開-管腔の側壁や臓器の側部を診断するための軟性内視鏡の挿入方法 図1
  • 特開-管腔の側壁や臓器の側部を診断するための軟性内視鏡の挿入方法 図2
  • 特開-管腔の側壁や臓器の側部を診断するための軟性内視鏡の挿入方法 図3
  • 特開-管腔の側壁や臓器の側部を診断するための軟性内視鏡の挿入方法 図4
  • 特開-管腔の側壁や臓器の側部を診断するための軟性内視鏡の挿入方法 図5
  • 特開-管腔の側壁や臓器の側部を診断するための軟性内視鏡の挿入方法 図6
  • 特開-管腔の側壁や臓器の側部を診断するための軟性内視鏡の挿入方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036072
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】管腔の側壁や臓器の側部を診断するための軟性内視鏡の挿入方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20220225BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61B1/005 511
A61B1/005 512
A61B1/018 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021134830
(22)【出願日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】16/998392
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515058271
【氏名又は名称】粟津 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100123489
【弁理士】
【氏名又は名称】大平 和幸
(72)【発明者】
【氏名】粟津 諭
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF26
4C161FF27
4C161FF28
4C161FF29
4C161GG15
4C161JJ11
(57)【要約】
【課題】新規の軟性内視鏡挿入法を提供する。
【解決手段】
軟性内視鏡挿入法は、以下の工程を含む:管腔の側壁を観察するために、半側臥位や側臥位に体位変換することにより、管腔臓器を回転する工程;管腔と反対方向に軟性内視鏡を回転することにより、軟性内視鏡の先端を管腔の側壁に向ける工程;管腔と反対方向に軟性内視鏡を回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排する工程。
他の実施形態では、その方法は以下の工程を含む;臓器の側部を観察するために、適切な体位に変換することにより、体腔を回転する工程;臓器の側部の方向に軟性内視鏡を回転することにより、軟性内視鏡の先端を臓器の側部に向ける工程;臓器の側部の方向に軟性内視鏡を回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排する工程。
内視鏡を用いて人体の内腔を視覚化しアクセスする方法を提供する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ直径と同じ長さを有する旧型の軟性内視鏡と比べて5~25%増加した硬度を有し、
硬質材で作成した外皮、高密度の繊維を有する網状管、多層構造の網状管、硬質材で作成した螺旋管、あるいは三層構造の螺旋管を有し、
硬度調整用リングを有しない、
ことを特徴とする軟性内視鏡、
あるいは、
ダイヤルを、3.5、4、4.5、5に設定することにより、軟性内視鏡の硬度を
5~25%増加できる硬度調整用リングを有することを特徴とする軟性内視鏡であって、
旧型の軟性内視鏡の硬度調整用リングに設置されていなかったダイヤル4とダイヤル5が新規に設置されていること
を特徴とする軟性内視鏡、
あるいは、
旧型の軟性内視鏡と比べて10~400%増加した摩擦係数を有することを特徴とする
軟性内視鏡であって、
表面が防滑材でできていて、摩擦係数が軟性内視鏡の表面で測定され、摩耗した軟性内視鏡の摩擦係数と同じ摩擦係数を有することを特徴とする軟性内視鏡。
【請求項2】
同じ硬度を有する旧型の軟性内視鏡と比べて1~30%大きな直径を有し、広い接触面で臓器を圧排できることを特徴とする請求項1に記載の軟性内視鏡。
【請求項3】
軟性内視鏡を管腔の方向に回転しながら次の管腔に挿入し、軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することによって、軟性内視鏡の先端を次の管腔の側壁に向け、次の管腔の側壁を観察することを特徴とする請求項2に記載の軟性内視鏡。
【請求項4】
軟性内視鏡を管腔と反対方向に360度回転することにより、軟性内視鏡の先端の向きを変え、その管腔の中でより大きな軟性内視鏡のループを作ることを特徴とする請求項3に記載の軟性内視鏡。
【請求項5】
気管支内視鏡の有効長より短く、喉頭内視鏡の有効長より長い350~550mmの有効長を有し、上咽頭、ローゼンミュラー窩、頭蓋咽頭管、耳管、鼓室、乳突洞、鼻腔、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢に、経口的に挿入できることを特徴とする請求項4に記載の軟性内視鏡。
【請求項6】
喉頭内視鏡の有効長より短い200~250mmの有効長を有し、中咽頭、口蓋扁桃窩、口腔、側口蓋部、上顎舌側歯肉部、切歯乳頭部に経口的に挿入できることを特徴とする請求項4に記載の軟性内視鏡。
【請求項7】
下咽頭、喉頭、気管、気管支、胆管、膵管、十二指腸、胃、食道、尿道、膀胱、尿管、腎盂、膣、子宮、卵管に挿入できる請求項4に記載の軟性内視鏡。
【請求項8】
鉗子チャンネルから挿入し使用するデバイスに下記のものを含む、請求項4に記載の軟性内視鏡:
15~20mmの距離から直径15~25mmの範囲に噴霧できるノズルを有するチューブ、
直径7~12mmの鼻栓、
生検鉗子、
高周波電気メス、
レーザーカテーテル、
バルーンカテーテル、
ドリル、
高速回転ドリル,
内視鏡用クリップ、
側頚瘻の治療のために口蓋扁桃部に開口する側頚瘻の内瘻孔から薬剤を注入するチューブ、
頭蓋咽頭管を閉鎖するためのプラグ、
鼻性髄液漏を閉鎖するためのプラグ、
口蓋瘻孔を閉鎖するためのプラグ、
乳突洞炎の治療ために留置するドレナージカテーテル、
副鼻腔炎の治療のために留置するドレナージカテーテル、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入するバルーンカテーテル、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入する高周波プローブ、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入するシリコンステントやメタリックステント、
耳管狭窄症の治療のためのバルーンカテーテルとレーザーカテーテル、
耳管狭窄症の治療のための留置カテーテル、
耳管開放症の治療のために耳管隆起に注射する注射針、そして
耳管開放症の治療のためのカテーテル、
【請求項9】
自然開口部経管腔的内視鏡手術あるいは単孔式軟性内視鏡手術で使用されていた
旧型の軟性内視鏡と比べて、より少ない数の鉗子チャンネルを有することを特徴とする
軟性内視鏡であって、
軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排するので、鉗子チャンネルから把持鉗子を挿入しないことを特徴とする請求項4に記載の軟性内視鏡。
【請求項10】
鉗子チャンネルから挿入し使用するデバイスに下記のものを含む、請求項4に記載の軟性内視鏡:
生検鉗子、
高周波電気メス、
フック型高周波電気メス、
レトラクター、
把持鉗子、
剥離鉗子、
超音波ディセクター、
ウオータージェットディセクター、
ブルドッグ鉗子、
内視鏡用クリップ、
鋏、
縫合鉗子、
レーザーカテーテル、
バルーンカテーテル、
ドリル、
高速回転ドリル、
大腸内視鏡検査に使用するスライディングチューブを数cmに短くし、体壁に設置し、
軟性内視鏡を体腔内に挿入するためのポート、
クライオプローブ、
ラジオ波プローブ。
【請求項11】
人体の管腔の内側を視覚化する方法であって、上記のいずれかの請求項に記載の内視鏡の使用を含む方法。
【請求項12】
内視鏡を体内に挿入し、目的とする管腔の内側にアクセスするために内視鏡を操作することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
内視鏡がさらにカメラを有している、請求項11あるいは12に記載の方法。
【請求項14】
人体の管腔の内側にアクセスする方法であって、請求項1~10のいずれかに記載の
内視鏡の使用を含む方法。
【請求項15】
内視鏡が、さらに1つ以上の器具、例えば外科用の器具を有している、請求項14に
記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性内視鏡を用いた診断と治療に関する。
【背景技術】
【0002】
耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢の悪性腫瘍は、
系統的な診断が行われていなかったので予後は不良であり、診断と治療の体系を確立することが求められていた。
【0003】
まず、耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢の
慢性炎症性疾患による発がんのリスクがある患者では、PET-CTやPET-MRIで検出できる前の病期で、例えば、直径5mmの腫瘍の軟性内視鏡による診断が求められていた。
また、PET-CTやPET-MRIを使用することによって、耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢の、直径10mmの腫瘍が発見できるようになり、陽子線治療装置や炭素線治療装置を使用することによって、直径10mmの腫瘍の放射線治療ができるようになったことから、直径10mmの耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢の腫瘍の軟性内視鏡よる診断が求められていた。
【0004】
経鼻内視鏡による耳管咽頭口、ローゼンミュラー窩、鼻腔天蓋の観察や、経口内視鏡による口蓋扁桃窩、口腔の観察は、死角があるために難しい場合があったので、新しい挿入法が求められていた。
【0005】
耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢の病理診断のための腫瘍摘出術、側頚瘻の治療のための側頚瘻摘出術、頭蓋咽頭管開存症の治療のための経口蓋頭蓋底脳ヘルニア修復術、後部鼻出血の治療のための動脈塞栓術、鼻性髄液漏の外科的治療、口蓋瘻孔の治療のための口蓋閉鎖床の使用、乳突洞炎の治療のための乳様突起削開術、鼻涙管狭窄症の治療のための経涙小管的鼻涙管バルーン拡張術、鼻涙管狭窄症の治療のための経涙小管的レーザーリノストミー、鼻涙管狭窄症の治療のための経涙小管的鼻涙管シリコンチューブ留置術、には侵襲があったので、軟性内視鏡を用いた新しい手技が求められていた。
【0006】
耳管狭窄症の治療のための耳管への経鼻的なバルーンカテーテルの挿入、耳管狭窄症の治療のための耳管への経鼻的なレーザーカテーテルの挿入、耳管開放症の治療のための耳管隆起への経鼻内視鏡下の注射、耳管開放症の治療のための耳管への経鼓膜人工耳管手術、
は実施困難な場合があったので、軟性内視鏡を用いた新しい手技が求められていた。
【0007】
従来の経口軟性胃内視鏡検査では、上咽頭や鼻腔は検査されておらず、経鼻軟性内視鏡が鼻腔閉塞のために挿入できず経口的に挿入された場合、閉塞をきたした疾患は診断されていなかったので、新しい挿入法が求められていた。
【0008】
下咽頭、喉頭、気管、気管支、胆管、膵管、十二指腸、胃、食道、尿道、膀胱、尿管、腎盂、膣、子宮の管腔内の側壁の、軟性内視鏡を用いた診断と治療は困難であったので、新しい挿入法が求められていた。
【0009】
自然開口部経管腔的内視鏡手術や単孔式軟性内視鏡手術を行う際には、より広い術野を確保するために、軟性内視鏡を用いた圧排法が求められていた。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、従来知られている同じ直径の軟性内視鏡と比べて5~25%増加させた硬度を有することを特徴とする軟性内視鏡を提供する。
【0011】
本発明は、軟性内視鏡の硬度を5~25%増加させる硬度調整用リングを有することを特徴とする軟性内視鏡も提供する。
従来使用されていた硬度調整用リングは、軟性内視鏡の硬度を減少させるために使用されていて、軟性内視鏡の硬度を増加させることはできなかった。
【0012】
本発明は、従来使用されていた軟性内視鏡と比べて10~400%増加させた摩擦係数、あるいは摩耗した軟性内視鏡と同じ防滑効果を有することを特徴とする軟性内視鏡も提供する。
【0013】
本発明は、管腔の側壁を観察するために、仰臥位、半横臥位、座位、砕石位、腹臥位から、半側臥位、側臥位に体位変換することにより管腔臓器を45~90度回転し、軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を管腔の側壁に向け、
軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排し視野を確保することを特徴とする軟性内視鏡も提供する。
【0014】
本発明は、臓器の側部を観察するために、任意の体位から適切な体位に体位変換することにより体腔を0~90度回転し、軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を臓器の側部に向け、軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排し視野を確保することを特徴とする軟性内視鏡も提供する。
【0015】
好ましくは、その軟性内視鏡は、従来使用されている同じ硬度の軟性内視鏡と比べて
1~30%大きな直径を有する。これによって、軟性内視鏡は広い接触面で臓器を圧排できる。
【0016】
好ましくは、管腔の方向に回転しながら軟性内視鏡を次の管腔に挿入し、管腔と反対方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を次の管腔の側壁に向け、次の管腔の側壁を検査する。
【0017】
好ましくは、軟性内視鏡を管腔と反対方向に360度回転することにより軟性内視鏡の先端の向きを変える。その際に、管腔内では軟性内視鏡のより大きなループが作られている。
【0018】
好ましくは、その軟性内視鏡は、350~550mmの有効長を有していて、その有効長は、気管支内視鏡の有効長より短く、喉頭内視鏡の有効長より長い。
好ましくは、その軟性内視鏡は、上咽頭、ローゼンミュラー窩、頭蓋咽頭管、
耳管、鼓室、乳突洞、鼻腔、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢に、
経口的に挿入できる。
【0019】
好ましくは、患者を左側臥位にして、軟性内視鏡を右に回転しながら上咽頭に挿入し、鼻腔に挿入する。あるいは、患者を右側臥位にして、軟性内視鏡を左に回転しながら
上咽頭に挿入し、鼻腔に挿入する
あるいは、患者を左側臥位にして、軟性内視鏡を右に回転しながら上咽頭に挿入し、
軟性内視鏡を左に回転することにより、軟性内視鏡の先端を上咽頭右側壁に向け、
右耳管咽頭口を観察する。
中咽頭上咽頭腔で、軟性内視鏡を管腔と反対方向に360度回転することにより、
耳管咽頭口を正面視できる。その際に、中咽頭上咽頭腔で軟性内視鏡のより大きなループが作られている。
あるいは、患者を左側臥位にして、軟性内視鏡を中咽頭に挿入し、軟性内視鏡を左に
90度回転することにより軟性内視鏡の先端を左に向ける。さらに、軟性内視鏡を左に
180度回転することにより軟性内視鏡の先端を左に向ける。そして軟性内視鏡を左に
90度回転しながら上咽頭に挿入すると、軟性内視鏡の先端は上咽頭右側壁を向いている。
そして右耳管咽頭口を観察する。
【0020】
好ましくは、その軟性内視鏡は、200~250mmの有効長を有していて、
その有効長は、喉頭内視鏡の有効長より短く、その軟性内視鏡そのものを用いて舌を内側に圧排することにより、口蓋扁桃窩を正面視できる。
あるいは、患者を左側臥位にして、軟性内視鏡を口から中咽頭に挿入し、軟性内視鏡を舌の外側にポジショニングするために、口蓋垂が12時方向に観察されるように軟性内視鏡を右に回転する。そして、軟性内視鏡自体を用いて舌を内側に圧排するために、軟性内視鏡と右後口蓋弓の間にわずかに距離を保ちながら、軟性内視鏡を徐々に左に回転する。そして、軟性内視鏡をわずかにプッシュすることにより右口蓋扁桃窩に挿入する。
そして右口蓋扁桃窩を観察する。
あるいは、口腔内で、軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、側口蓋部、上顎舌側歯肉部、切歯乳頭部を正面視できる。その際に、口腔内で軟性内視鏡のループが作られている。
【0021】
好ましくは、その軟性内視鏡を、下咽頭、喉頭、気管、気管支、胆管、膵管、十二指腸、胃、食道、尿道、膀胱、尿管、腎盂、膣、子宮、卵管に挿入する。
【0022】
好ましくは、軟性内視鏡に設置するか、軟性内視鏡と共に使用するデバイスには下記のものがある:
15~20mmの距離から直径15~25mmの範囲に噴霧できるノズルを有するチューブ、
直径7~12mmの鼻栓、
生検鉗子、
高周波電気メス、
レーザーカテーテル、
バルーンカテーテル、
ドリル、
高速回転ドリル、
内視鏡用クリップ、
側頚瘻の治療のために口蓋扁桃部に開口する内瘻孔から薬剤を注入するチューブ、
頭蓋咽頭管を閉鎖するためのプラグ、
鼻性髄液漏を閉鎖するためのプラグ、
口蓋瘻孔を閉鎖するためのプラグ、
乳突洞炎の治療のために留置するドレナージカテーテル、
副鼻腔炎の治療のために留置するドレナージカテーテル、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入するバルーンカテーテル、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入する高周波プローブ、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入するシリコンステントやメタリックステント、
耳管狭窄症の治療のためのバルーンカテーテルとレーザーカテーテル、
耳管狭窄症の治療のための留置カテーテル、
耳管開放症の治療のために耳管隆起に注射する注射針、
耳管開放症の治療のためのカテーテル。
【0023】
好ましくは、軟性内視鏡は、自然開口部経管腔的内視鏡手術や単孔式軟性内視鏡手術において、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排することにより臓器の側部を正面視するために使用される。
【0024】
好ましくは、軟性内視鏡は、自然開口部経管腔的内視鏡手術や単孔式軟性内視鏡手術において、従来使用されていた軟性内視鏡と比べてより少数の鉗子チャンネルを有している。
その際には、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排しており、把持鉗子を鉗子チャンネルに挿入しない。
【0025】
好ましくは、軟性内視鏡に設置するか、軟性内視鏡と共に使用するデバイスには以下のものがある:
生検鉗子、
高周波電気メス、
フック型高周波電気メス、
レトラクター、
把持鉗子、
剥離鉗子、
超音波ディセクター、
ウオータージェットディセクター、
ブルドッグ鉗子、
内視鏡用クリップ、
鋏、
縫合鉗子、
レーザーカテーテル、
バルーンカテーテル、
ドリル、
高速回転ドリル、
大腸内視鏡検査に使用するスライディングチューブを数cmに短くし、体壁に設置し、軟性内視鏡を体腔内に挿入するためのポート、
クライオプローブ、
ラジオ波プローブ。
【0026】
本発明では、体位変換を行うこと、管腔と反対方向に軟性内視鏡を回転すること、
軟性内視鏡自体を用いて臓器の圧排を行うことにより、管腔の側壁の診断と治療ができる。
また、体位変換を行うこと、臓器の側部の方向に軟性内視鏡を回転すること、軟性内視鏡自体を用いて臓器の圧排を行うことにより、臓器の側部の診断と治療ができる。
【0027】
本発明は、人体の管腔の内側を可視化する方法も提供する。その方法は、本発明の実施形態や本発明の方法に記載の内視鏡の使用、例えば内視鏡の挿入と操作を含む。これらの方法は、内視鏡に関連するカメラや他の可視化装置の使用に適している。
本発明は、人体の管腔の内側にアクセスする方法も提供する。その方法は、本発明の実施形態や本発明の方法に記載の内視鏡の使用、例えば内視鏡の挿入と操作を含む。
これらの方法は、1つ以上の器具と共に内視鏡を使用することに適しており、
患者の外科的治療を実施可能とする。
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
内視鏡を使用することによる診断と治療のための新規の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の一つの態様によれば、軟性内視鏡挿入法は以下の工程を含む。
(a)管腔の側壁を観察するために、仰臥位、半横臥位、座位、砕石位、腹臥位から、
半側臥位、側臥位に体位変換することにより、管腔臓器を45~90度回転する工程;
(b)軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を管腔の側壁に向ける工程;そして
(c)軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排し視野を確保する工程。
【0030】
一部の実施形態では、(b)は、軟性内視鏡を管腔の方向に回転しながら軟性内視鏡を次の管腔に挿入する工程、軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより軟性内視鏡の先端を次の管腔の側壁に向ける工程、そして、次の管腔の側壁を観察する工程を含む。
一部の実施形態では、その軟性内視鏡挿入法は、患者を左側臥位にする工程、軟性内視鏡を右に回転しながら上咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を左に回転することにより軟性内視鏡の先端を上咽頭の右側壁に向ける工程、そして右耳管咽頭口を観察する工程を含む。
【0031】
一部の実施形態では、(b)は、軟性内視鏡を管腔と反対方向に360度回転することにより軟性内視鏡の先端の向きを変える工程を含む。その際には、管腔の中で軟性内視鏡のより大きなループが作られている。
一部の実施形態では、中咽頭上咽頭腔で、軟性内視鏡を管腔と反対方向に360度回転することにより耳管咽頭口を正面視できる工程を含む。その際には、中咽頭上咽頭腔で、軟性内視鏡のより大きなループが作られている。
一部の実施形態では、その軟性内視鏡挿入法は、患者を左側臥位にする工程、
軟性内視鏡を中咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を左に90度回転することにより
軟性内視鏡の先端を左に向ける工程、軟性内視鏡をさらに左に180度回転することにより軟性内視鏡の先端をさらに左に向ける工程、軟性内視鏡を90度左に回転しながら上咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡の先端を上咽頭の右側壁に向ける工程、そして、右耳管咽頭口を観察する工程を含む。
【0032】
一部の実施形態では、軟性内視鏡は、上咽頭、ローゼンミュラー窩、頭蓋咽頭管、耳管、鼓室、乳突洞、鼻腔、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢に、経口的に挿入される。
一部の実施形態では、その軟性内視鏡挿入法は、患者を左側臥位にする工程、軟性内視鏡を右に回転しながら上咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を鼻腔に挿入する工程を含む。
一部の実施形態では、その軟性内視鏡挿入法は、患者を右側臥位にする工程、軟性内視鏡を左に回転しながら上咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を鼻腔に挿入する工程を含む。
【0033】
一部の実施形態では、軟性内視鏡自体を用いて舌を内側に圧排することにより
口蓋扁桃窩を正面視できる。
一部の実施形態では、その軟性内視鏡挿入法は、患者を左側臥位にする工程、軟性内視鏡を口から中咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を舌の外側にポジショニングするために、
口蓋垂が12時方向に観察されるように軟性内視鏡を右に回転する工程、軟性内視鏡自体を用いて舌を内側に圧排するために、軟性内視鏡と右後口蓋弓の間にわずかな距離を保ちながら、軟性内視鏡を徐々に左に回転する工程、軟性内視鏡をわずかに押すことにより右口蓋扁桃窩に挿入する工程、右口蓋扁桃窩を観察する工程を含む。
【0034】
一部の実施形態では、口腔内で、軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、側口蓋部、上顎舌側歯肉部、切歯乳頭部を正面視できる。その際に、口腔内で軟性内視鏡のループが作られている。
【0035】
一部の実施形態では、軟性内視鏡は、下咽頭、喉頭、気管、気管支、胆管、膵管、十二指腸、胃、食道、尿道、膀胱、尿管、腎盂、膣、子宮、卵管に挿入できる。
【0036】
一部の実施形態では、本法で使用されるデバイスには以下のものがある:
15~20mmの距離から直径15~25mmの範囲に噴霧できるノズルを有するチューブ、
15~20mmの距離から直径15~25mmの範囲に噴霧できるノズルを有する軟性内視鏡、
直径7~12mmの鼻栓、
軟性内視鏡、
生検鉗子、
高周波電気メス、
レーザーカテーテル、
バルーンカテーテル、
ドリル、
高速回転ドリル、
内視鏡用クリップ、
側頚瘻の治療のために口蓋扁桃部に開口する側頚瘻の内瘻孔から薬剤を注入するチューブ、
頭蓋咽頭管を閉鎖するためのプラグ、
鼻性髄液漏を閉鎖するためのプラグ、
口蓋瘻孔を閉鎖するためのプラグ、
乳突洞炎の治療のために留置するドレナージカテーテル、
副鼻腔炎の治療のために留置するドレナージカテーテル、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入するバルーンカテーテル、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入する高周波プローブ、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入するシリコンステントやメタリックステント、
耳管狭窄症の治療のためのバルーンカテーテルとレーザーカテーテル、
耳管狭窄症の治療のための留置カテーテル、
耳管開放症の治療のために耳管隆起に注射する注射針、
耳管開放症の治療のためのカテーテル、
臓器を圧排するための防滑材でできた軟性内視鏡。
【0037】
本発明のもうひとつの態様によれば、軟性内視鏡挿入法は以下の工程を含む。
(a)臓器の側部を観察するために、任意の体位から適切な体位に体位変換することにより体腔を0~90度回転する工程;
(b)軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を臓器の側部に向ける工程;そして
(c)軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排し視野を確保する工程。
【0038】
一部の実施形態では、(b)と(c)は、軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排し視野を確保しながら、軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を臓器の側部に向ける工程を含む。
一部の実施形態では、自然開口部経管腔的内視鏡手術や単孔式軟性内視鏡手術において
軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排することにより、臓器の側部を正面視できる。
【0039】
一部の実施形態では、本発明の方法で使用されるデバイスには以下のものを含む。
軟性内視鏡、
生検鉗子、
高周波電気メス、
フック型高周波電気メス、
レトラクター、
把持鉗子、
剥離鉗子、
超音波ディセクター、
ウオータージェットディセクター、
ブルドッグ鉗子、
内視鏡用クリップ、
鋏、
縫合鉗子、
レーザーカテーテル、
バルーンカテーテル、
ドリル、
高速回転ドリル、
臓器を圧排するための防滑材でできた軟性内視鏡、
大腸内視鏡検査に使用するスライディングチューブを数cmに短くし、体壁に設置し、軟性内視鏡を体腔内に挿入するためのポート、
クライオプローブ、
ラジオ波プローブ。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、先進的な軟性内視鏡の診断と治療を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、上咽頭の右耳管咽頭口の正面図である。
図2図2は、鼻腔天蓋の正面図である。
図3図3は、右口蓋扁桃窩の正面図である。
図4図4(a)、4(b)、4(c)は、軟性内視鏡を挿入する経路を示す系統図である。
図5図5(a)は、経鼓膜的な人工耳管の挿入を示す画像図である。また、 図5(b)は、内視鏡的経口経咽頭耳管チューブ挿入術を示す画像図である。
図6図6(a)は、涙小管を経由したシリコンステントの挿入を示す画像図である。 また、図6(b)は、鼻涙管開口部を経由したシリコンステントの挿入を示す 画像図である。
図7図7は、十二指腸、横行結腸、大網を圧排し、総胆管の右外側部を伸展して いる状態を示す画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明では、軟性胃内視鏡、軟性気管支内視鏡、軟性喉頭内視鏡、軟性鼻咽腔内視鏡、軟性小腸内視鏡、軟性胆管内視鏡、軟性膵管内視鏡、軟性膀胱内視鏡、軟性腎盂尿管鏡、軟性子宮鏡、自然開口部経管腔的内視鏡手術のための軟性内視鏡が用いられるが、これらに限られない。
【0043】
本発明は、視野を妨げる臓器を圧排する操作を含む。圧排する臓器には、舌、軟口蓋、耳管隆起、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、胆管、膵臓、脾臓、副腎、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、精管、精嚢、前立腺、子宮、膣、卵巣、卵管、肺、気管、気管支、胸腺、心房、心室、横隔膜、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、大網、腸間膜、動脈、静脈、神経、リンパ節、脂肪があるが、これらに限られない。
【0044】
本発明において、中咽頭、上咽頭、鼻腔、耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢に挿入する軟性内視鏡の好ましい太さは、直径の最小値が、0.5mm以上、より好ましくは2.5mm以上、さらに好ましくは3mm以上、好ましい直径の最大値が、15mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。
また、ローゼンミュラー窩や鼻甲介のように、軟骨で囲まれた臓器を圧排するためには、
直径5mm程度の弾力のある軟性内視鏡を使用する事が好ましい。また、骨や靭帯で囲まれた狭い部位を観察するためには、直径3mm程度の細い軟性内視鏡を使用する事が好ましい。
【0045】
本発明においては、軟性内視鏡は、麻酔薬を噴霧するノズルを装備するのが好ましい。
噴霧距離の最小値は、好ましくは15mm以上、より好ましくは16mm以上、さらに好ましくは17mm以上であり、噴霧距離の最大値は、好ましくは20mm以下、より好ましくは19mm以下、さらに好ましくは18mm以下である。
麻酔薬を噴霧する範囲の最小径は、好ましくは15mm以上、より好ましくは17mm以上、さらに好ましくは19mm以上であり、最大径は、好ましくは25mm以下、より好ましくは23mm以下、さらに好ましくは21mm以下である。
15~20mmの距離で、直径15~25mmの範囲に噴霧できる噴霧角度が最も好ましい。そのための最小噴霧角度は、好ましくは40度以上、より好ましくは50度以上、さらに好ましくは55度以上であり、最大噴霧角度は、好ましくは75度以下、より好ましくは70度以下、さらに好ましくは65度以下である。
【0046】
本発明では、耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢の悪性腫瘍の系統的な診断と治療ができる。
【0047】
まず、耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢
の慢性炎症性疾患による発がんのリスクを有する患者では、PET-CTあるいはPET-MRIで検出できるようになる前の病期で、例えば直径5mmの大きさで早期診断ができる。
【0048】
また、PET-CTあるいはPET-MRIを用いて検出された、耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、
前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢の直径10mmの大きさの腫瘍は、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて診断し、陽子線治療装置や炭素線治療装置を用いて治療できる。
【0049】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて、耳管咽頭口(図1)、ローゼンミュラー窩、鼻腔天蓋(図2)、口蓋扁桃窩(図3)、口腔のような、従来検査していなかった領域の内視鏡的な観察ができる。
また、例えば、右鼻腔が画面の左に、鼻腔天蓋が正面に観察されるというように(図2)、映像が上下左右に反転するが問題はない。
【0050】
本発明では、耳管、乳突洞口、上顎洞開口部、前頭洞開口部、蝶形骨洞開口部、篩骨洞開口部、鼻涙管開口部を正面視できるので、挿入経路を確保するために(挿入経路は、図4(a)、4(b)、4(c)で示されている)バルーンカテーテル、高速回転ドリル、レーザーカテーテルを用いて耳管、乳突洞口、上顎洞開口部、前頭洞開口部、蝶形骨洞開口部、篩骨洞開口部、鼻涙管開口部を拡張できる。一方で、従来の内視鏡挿入法ではこれらの部位の拡張が行われていなかった。
【0051】
本発明では、耳管、鼓室、乳突洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢の軟性内視鏡による診断ができる。従ってこれらの部位の病理診断のための腫瘍摘出術を回避できる。
【0052】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で、側頚瘻の内瘻孔を正面視できるので、側頚瘻の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて、チューブを内瘻孔に挿入できる(内視鏡的経口側頚瘻化学焼却術)。一方で、従来の治療では、側頚瘻摘出術が行われていた。
【0053】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で、頭蓋咽頭管の上咽頭開口部を正面視できるので、頭蓋咽頭管開存症の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて、
頭蓋咽頭管にプラグを設置できる(内視鏡的経口経咽頭頭蓋咽頭管閉鎖術)。一方で、従来の治療では、経口蓋頭蓋底脳ヘルニア修復術が行われていた。
【0054】
本発明では、広い術野を確保できるので、経鼻的に挿入した軟性内視鏡によって治療できない後部鼻出血を、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて後方から止血できる
(内視鏡的経口経咽頭鼻出血止血術)。一方で、従来の治療では、動脈塞栓術が行われていた。
【0055】
本発明では、鼻性髄液漏の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて、
鼻性髄液漏を閉鎖するためのプラグを設置できる(内視鏡的経口経咽頭髄液漏閉鎖術)。
一方で、従来の治療では外科手術が行われていた。
【0056】
本発明では、経口経咽頭的に挿入した軟性内視鏡で、口蓋瘻孔の開口部を正面視できるので、口蓋裂手術の合併症である口蓋瘻孔の治療を行う場合に、経口的経咽頭的に挿入した軟性内視鏡を用いて、口蓋瘻孔を閉鎖するためのプラグを設置できる(内視鏡的経口経咽頭口蓋瘻孔閉鎖術)。一方で、従来より使用されている口蓋閉鎖床は、齲歯、歯肉炎あるいは誤嚥の原因となることがあった。
【0057】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で耳管咽頭口を正面視できるので、乳突洞炎の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて、バルーンカテーテル、レーザーカテーテルおよびドレナージカテーテルを、耳管経由で乳突洞に挿入できる(内視鏡的経口経咽頭乳突洞ドレナージ術)。一方で、従来の治療では乳様突起削開術が行われていた。
【0058】
本発明では、副鼻腔炎の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いることによりコストを削減できる(内視鏡的経口経咽頭副鼻腔開口部バルーン拡張術)。一方で、従来のballoon sinuplastyでは、専用のデバイス(バルーンカテーテル)を使用することによる高いコストがかかっていた。
【0059】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で鼻涙管開口部を正面視できるので、鼻涙管狭窄症の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて、バルーンカテーテルを鼻涙管開口部より挿入できる(内視鏡的経口経咽頭鼻涙管バルーン拡張術)。一方で、従来の経涙小管的鼻涙管バルーン拡張術では、涙点損傷のリスク、小さい涙点へのカテーテルの挿入困難があった。
【0060】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で、鼻涙管開口部を正面視できるので、鼻涙管狭窄症の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて、高周波プローブを鼻涙管開口部より挿入できる(高周波プローブを用いた内視鏡的経口経咽頭鼻涙管拡張術)。一方で、従来の経涙小管的レーザーリノストミーでは、涙点損傷のリスク、小さい涙点へのカテーテルの挿入困難があった。
【0061】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で、鼻涙管開口部を正面視できるので、鼻涙管狭窄症の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いてシリコンステントを鼻涙管開口部より挿入できる(内視鏡的経口経咽頭鼻涙管シリコンステント留置術)(図6(b))。一方で、従来の経涙小管的鼻涙管シリコンチューブ留置術では、涙点損傷のリスク、小さい涙点へのステントの挿入困難、異物感の発生があった(図6(a))。
【0062】
本発明では、鼻涙管狭窄症の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて、
メタリックステントを鼻涙管開口部より挿入できる(内視鏡的経口経咽頭鼻涙管メタリックステント留置術)。
【0063】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で耳管咽頭口を正面視できるので、耳管狭窄症の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いてバルーンカテーテルを耳管に挿入できる(内視鏡的経口経咽頭バルーン耳管形成術)。一方で、従来の治療では、経鼻的にバルーンカテーテルの挿入が行われていた。
【0064】
また、本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で耳管咽頭口を正面視できるので、
耳管狭窄症の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いてレーザーカテーテルを耳管に挿入できる(内視鏡的経口経咽頭レーザー耳管形成術)。一方で、従来の治療では、経鼻的にレーザーカテーテルの挿入が行われていた。
【0065】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で耳管隆起を正面視できるので、耳管開放症の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて耳管隆起への注射ができる(内視鏡的経口耳管隆起注射法)。一方で、従来の治療では、経鼻内視鏡を用いて耳管隆起への注射が行われていた。
【0066】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡で耳管咽頭口を正面視できるので、耳管開放症の治療を行う場合に、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いて、カテーテルを耳管に挿入できる(内視鏡的経口経咽頭耳管チューブ留置術)(図5(b))。一方で、従来の治療では、
鼓膜を切開し人工耳管の挿入が行われていた(図5(a))。
【0067】
本発明では、経口軟性胃内視鏡検査の際に、上咽頭、鼻腔のルーチンチェックを行うことができる。一方で、従来の経口軟性胃内視鏡検査では、上咽頭、鼻腔の観察は行われていなかった。
【0068】
本発明では、経口的に挿入した軟性内視鏡を用いることにより、経鼻軟性内視鏡の挿入を妨げる閉塞性疾患の診断ができる。一方で、従来の経鼻軟性内視鏡検査では、経鼻軟性内視鏡を挿入できなかった場合に、上咽頭、鼻腔を閉塞している疾患の診断を行っていなかった。
【0069】
本発明では、半側臥位あるいは側臥位に体位変換することにより管腔臓器を相対的に回転するので、管腔臓器(下咽頭、喉頭、気管、気管支、胆管、膵管、十二指腸、胃、食道、尿道、膀胱、尿管、腎盂、膣、子宮)の側壁を正面視できる。一方で、座位、半横臥位、仰臥位、砕石位、腹臥位で行われていた従来の軟性内視鏡検査では、管腔臓器の側壁を正面視できなかった。
【0070】
本発明では、半側臥位や側臥位への体位変換により管腔臓器が相対的に回転するので、
管腔臓器(気管、膵管、胆管)の側壁に開口する分枝への内視鏡の挿入、卵管への内視鏡の挿入、尿管へのアクセスシースの挿入ができる。一方で、従来の軟性内視鏡検査では、
座位、半横臥位、仰臥位、砕石位、腹臥位での、管腔臓器の側壁に開口する分枝への内視鏡の挿入、卵管への内視鏡の挿入、尿管へのアクセスシースの挿入が実施できない場合があった。
【0071】
本発明では、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排するので、自然開口部経管腔的内視鏡手術を行う場合に、レトラクタや把持鉗子が使用できない狭いスペースで臓器の圧排ができる(自然開口部経管腔的内視鏡手術における軟性内視鏡的臓器圧排法)。
【0072】
本発明では、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排するので、単孔式軟性内視鏡手術を行う場合に、レトラクタや把持鉗子が使用できない狭いスペースで臓器の圧排ができる(単孔式軟性内視鏡手術における軟性内視鏡的臓器圧排法)。
【0073】
本発明では、口蓋扁桃窩でより広い術野を確保するために、軟性内視鏡的舌圧排法を考案した。この内視鏡的舌圧排法は、開腹手術中の左手を用いた圧排操作を再現したものである。この内視鏡的舌圧排法を軟性内視鏡手術に応用すれば、より広い術野を確保できる。
【0074】
出願人が考案した軟性大腸内視鏡挿入法は、アメリカ消化器内視鏡学会誌に掲載された論文やプレプリントサーバに提示している2つの未投稿論文で参照できる。
【0075】
その軟性大腸内視鏡挿入法の要点は、以下のとおりである。
1)入口部が最も高く、出口部が最も低くなるような体位をとること
(S状結腸では左半腹臥位である)
2)軟性大腸内視鏡を180度以上回転することにより軟性大腸内視鏡のたわみをとるこ と(S状結腸では、左半腹臥位で、軟性大腸内視鏡を180度以上左に回転すること により、軟性大腸内視鏡のたわみをとることができる)
3)軟性大腸内視鏡にトルクをかけ、固定された臓器に押し付けることにより、軟性大腸 内視鏡がたわまないようにすること(S状結腸では、左半腹臥位で、左にトルクをか け後腹膜に押し付けることにより、軟性大腸内視鏡のたわみを防止できる)
【0076】
出願人は上記の軟性大腸内視鏡挿入法に基づいて本発明を考案した。本発明では、次のような点が加味されている。
1)半側臥位や側臥位に体位変換することにより、管腔臓器を相対的に回転し、管腔の 側壁の観察ができるようにした。
2)軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を 圧排し、視野を確保できるようにした
(耳管隆起を外側に圧排する事や舌を内側に圧排する事)。
3)軟性内視鏡を管腔と反対方向に360度回転することにより、より大きな軟性内視鏡 のループを作成し、軟性内視鏡の先端を耳管咽頭口に向けるようにした。
【0077】
他でも述べているように、本発明は以下のような実施形態も提供する。
1. 以下の工程を含む軟性内視鏡挿入法
(a)管腔の側壁を観察するために、仰臥位、半横臥位、座位、砕石位、腹臥位から、
半側臥位あるいは側臥位に体位変換することにより、管腔臓器を45~90度回転すること
(b)軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を管腔の側壁に向けること;そして
(c)軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、視野を確保するために軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排すること。
【0078】
2.実施形態1に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
(b)は軟性内視鏡を管腔の方向に回転しながら軟性内視鏡を次の管腔に挿入する工程、
軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を次の管腔の側壁に向ける工程、そして、次の管腔の側壁を観察する工程を含む。
【0079】
3.実施形態2に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その軟性内視鏡挿入法は、患者を左側臥位にする工程、軟性内視鏡を右に回転しなが
ら上咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を左に回転することにより軟性内視鏡の先端を上咽頭の右側壁に向ける工程、そして、右耳管咽頭口を観察する工程を含む。
【0080】
4.実施形態1に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
(b)は、軟性内視鏡を管腔と反対方向に360度回転することにより、軟性内視鏡の先端の向きを変える工程を含む。その際には、管腔の中で軟性内視鏡のより大きなループが形成されている。
【0081】
5. 実施形態4に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
中咽頭上咽頭腔で、軟性内視鏡を管腔と反対方向に360度回転することにより、耳管咽頭口を正面視できる。その際には、中咽頭上咽頭腔で軟性内視鏡のより大きなループが形成されている。
【0082】
6. 実施形態5に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その軟性内視鏡挿入法は、患者を左側臥位にする工程、軟性内視鏡を中咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を90度左に回転することにより軟性内視鏡の先端を左に向ける工程、
軟性内視鏡を180度左に回転することにより軟性内視鏡の先端をさらに左に向ける工程、
軟性内視鏡を90度左に回転しながら上咽頭に挿入する工程、そして、軟性内視鏡の先端を上咽頭の右側壁に向ける工程、右耳管咽頭口を観察する工程を含む。
【0083】
7. 実施形態1に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その軟性内視鏡は、上咽頭、ローゼンミュラー窩、頭蓋咽頭管、耳管、鼓室、乳突洞、鼻腔、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、鼻涙管、涙嚢に、経口的に挿入される。
【0084】
8. 実施形態7に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その軟性内視鏡挿入法は、患者を左側臥位にする工程、軟性内視鏡を右に回転しながら上咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を鼻腔に挿入する工程を含む。
【0085】
9. 実施形態7に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その軟性内視鏡挿入法は、患者を右側臥位にする工程、軟性内視鏡を左に回転しながら上咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を鼻腔に挿入する工程を含む。
【0086】
10. 実施形態1に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その軟性内視鏡自体を用いて舌を内側に圧排することにより口蓋扁桃窩を正面視できる。
【0087】
11. 実施形態10に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その軟性内視鏡挿入法は、患者を左側臥位にする工程、軟性内視鏡を口から中咽頭に挿入する工程、軟性内視鏡を舌の外側にポジショニングするために、口蓋垂が12時方向に観察されるように軟性内視鏡を右に回転する工程、軟性内視鏡自体を用いて舌を内側に圧排するために、軟性内視鏡と右後口蓋弓の間にわずかな距離を保ちながら、軟性内視鏡を徐々に左に回転する工程、軟性内視鏡をわずかに押すことにより右口蓋扁桃窩に挿入する工程、右口蓋扁桃窩を観察する工程を含む。
【0088】
12. 実施形態1に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
口腔内で、軟性内視鏡を管腔と反対方向に回転することにより、側口蓋部、上顎舌側歯肉部、切歯乳頭部を正面視できる。その際に、口腔内で軟性内視鏡のループが形成されている。
【0089】
13. 実施形態1に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その軟性内視鏡は、下咽頭、喉頭、気管、気管支、胆管、膵管、十二指腸、胃、食道、尿道、膀胱、尿管、腎盂、膣、子宮、卵管に挿入される。
【0090】
14. 実施形態1に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その方法で使用されるデバイスには以下のものがある:
15~20mmの距離から直径15~25mmの範囲に噴霧できるノズルを有するチューブ、
15~20mmの距離から直径15~25mmの範囲に噴霧できるノズルを有する内視鏡、
直径7~12mmの鼻栓、
軟性内視鏡、
生検鉗子、
高周波電気メス、
レーザーカテーテル、
バルーンカテーテル、
ドリル、
高速回転ドリル、
内視鏡用クリップ、
側頚瘻の治療のために口蓋扁桃部に開口する側頚瘻の内瘻孔から薬剤を注入するチューブ、
頭蓋咽頭管を閉鎖するためのプラグ、
鼻性髄液漏を閉鎖するためのプラグ、
口蓋瘻孔を閉鎖するためのプラグ、
乳突洞炎の治療のために留置するドレナージカテーテル、
副鼻腔炎の治療のために留置するドレナージカテーテル、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入するバルーンカテーテル、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入する高周波プローブ、
鼻涙管狭窄症の治療のために鼻涙管開口部から挿入するシリコンステントやメタリックステント、
耳管狭窄症の治療のためのバルーンカテーテルとレーザーカテーテル、
耳管狭窄症の治療のための留置カテーテル、
耳管開放症の治療のために耳管隆起に注射する注射針、
耳管開放症の治療のためのカテーテル、
臓器を圧排するための防滑材でできた軟性内視鏡。
【0091】
15.以下の工程を含む軟性内視鏡挿入法
(a)臓器の側部を観察するために、任意の体位から適切な体位に体位変換することにより、体腔を0~90度回転する工程;
(b)軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を臓器の側部に向ける工程;そして
(c)軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排し視野を確保する工程。
【0092】
16. 実施形態15に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
(b)と(c)は、視野を確保するために、軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排しながら、軟性内視鏡を臓器の側部の方向に回転することにより、軟性内視鏡の先端を臓器の側部に向ける工程を含む。
【0093】
17. 実施形態16に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
自然開口部経管腔的内視鏡手術や単孔式軟性内視鏡手術において、軟性内視鏡自体を用いて臓器を圧排することにより臓器の側部を正面視できる。
【0094】
18. 実施形態15に記載の軟性内視鏡挿入法であって、
その方法で使用されるデバイスには、以下のものを含む。
軟性内視鏡、
生検鉗子、
高周波電気メス、
フック型高周波電気メス、
レトラクター、
把持鉗子、
剥離鉗子、
超音波ディセクター、
ウオータージェットディセクター、
ブルドッグ鉗子、
内視鏡用クリップ、
鋏、
縫合鉗子、
レーザーカテーテル、
バルーンカテーテル、
ドリル、
高速回転ドリル、
臓器を圧排するための防滑材でできた軟性内視鏡、
大腸内視鏡検査に使用するスライディングチューブを数cmに短くし、体壁に設置し、
軟性内視鏡を体腔内に挿入するためのポート、
クライオプローブ、
ラジオ波プローブ。
【0095】
19. 人体の管腔の内側を視覚化する方法であって、本発明に記載の内視鏡の使用、
実施形態1~18のいずれかに記載の軟性内視鏡挿入法を含む方法。
【0096】
20. 内視鏡を体内に挿入し、目的とする管腔の内側にアクセスするために内視鏡を操作することを含む、実施形態19に記載の方法。
【0097】
21. その内視鏡がさらにカメラを有している、実施形態19あるいは20に記載の方法。
【0098】
22.人体の管腔の内側にアクセスする方法であって、本発明に記載の内視鏡の使用
を含み、実施形態1~18のいずれかに記載の軟性内視鏡挿入法を含む方法。
【0099】
23.内視鏡が、さらに1つ以上の器具、例えば外科に使用する器具を有している、実施形態22に記載の方法。
【0100】
次の段落では、具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されず、当業者が通常行う置換や改良は本発明に含まれる。
【実施例0101】
(実施例1)
上咽頭と鼻腔への軟性内視鏡挿入法:リドカインビスカス2%を1分おきに1mLづつ、数回に分けて嚥下させ、鎮静剤の静注を行う。患者を左側臥位にする。胃内視鏡を口から挿入し、食道、胃、十二指腸、下咽頭の観察を行う。そして、胃内視鏡の先端が中咽頭に到達したら、胃内視鏡と咽頭後壁との間にわずかに距離を保ちながら、胃内視鏡を徐々に右に回転すると同時に徐々にアップアングルをかけわずかにプッシュすることにより、胃内視鏡を上咽頭に挿入し、上咽頭の観察を行う。
【0102】
また、初心者がこの手技を実施する場合、口蓋垂が3時方向に観察できるように胃内視鏡を右に回転し、胃内視鏡にアップアングルをかけながらさらに右に回転し、わずかにプッシュすることにより胃内視鏡を上咽頭に挿入してもよい。
鎮静剤が効いていない場合には、上咽頭の筋肉が収縮しているので、上咽頭の観察が行いにくい。
【0103】
ここで、胃内視鏡先端より出したチューブを用いて、15~20mmの距離で直径15~25mmの範囲に麻酔薬を噴霧する。
胃内視鏡をプッシュすることにより胃内視鏡を上咽頭鼻腔境界部に挿入し、上咽頭鼻腔境界部の観察を行う。
上咽頭鼻腔境界部は硬いので、胃内視鏡を上咽頭鼻腔境界部に挿入しにくい場合がある。この時に、胃内視鏡を回転しないでプッシュし続けたら、胃内視鏡が急に進み、上咽頭鼻腔境界部を刺激するので、胃内視鏡を左右のいずれかに回転しながら進めなければならない。
また、もし胃内視鏡を上咽頭鼻腔境界部で突き当たる所まで進めてしまうと、胃内視鏡を回転できなくなり視野が狭くなる。この時に、胃内視鏡を無理に回転すれば、胃内視鏡が上咽頭鼻腔境界部を刺激するので、胃内視鏡を突き当たる所まで進めてはならない。
【0104】
ここで、胃内視鏡先端より出したチューブを用いて、15~20mmの距離で直径15~25mmの範囲に麻酔薬を噴霧する。
胃内視鏡をプッシュすることにより胃内視鏡を鼻腔に挿入し、鼻腔の観察を行う。
【0105】
(実施例2)
右耳管咽頭口への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。胃内視鏡を口から中咽頭に挿入する。胃内視鏡と咽頭後壁との間にわずかに距離を保ちながら、胃内視鏡を徐々に右に回転すると同時に徐々にアップアングルをかけ胃内視鏡をわずかにプッシュすることにより、胃内視鏡を上咽頭に挿入する。そして、胃内視鏡を左に回転することにより、
胃内視鏡の先端を右耳管咽頭口に向け、右耳管咽頭口を観察する。
【0106】
(実施例3)
より大きな内視鏡のループを形成することによる右耳管咽頭口への軟性内視鏡挿入法:
患者を左側臥位にする。胃内視鏡を口から中咽頭に挿入し、胃内視鏡を左に90度回転することにより、胃内視鏡の先端を左に向ける。そして、胃内視鏡を左に180度回転することにより、胃内視鏡の先端をさらに左に向ける。そして、胃内視鏡を左に90度回転しながら上咽頭に挿入すると、胃内視鏡の先端が上咽頭の右側壁の方に向いている。そして、右耳管咽頭口を観察する。
【0107】
また、初心者がこの手技を実施する場合、口蓋垂が6時方向に観察されるように胃内視鏡を中咽頭で左に回転し、胃内視鏡にダウンアングルをかけ、胃内視鏡をさらに左に回転しながら上咽頭に挿入してもよい。
【0108】
(実施例4)
右ローゼンミュラー窩への軟性内視鏡挿入法:患者を左半側臥位にする。胃内視鏡を口から中咽頭に挿入する。胃内視鏡と咽頭後壁の間にわずかな距離を保ちながら、胃内視鏡を徐々に右に回転すると同時に徐々にアップアングルをかけ、わずかにプッシュすることにより胃内視鏡を上咽頭に挿入する。上咽頭で、胃内視鏡を左に回転することにより、胃内視鏡の先端を右耳管咽頭口の内側の右ローゼンミュラー窩開口部に向ける。そして、胃内視鏡自体を用いて耳管隆起を外側に圧排しながら、胃内視鏡を右ローゼンミュラー窩に挿入する。そして、右ローゼンミュラー窩を観察する。
【0109】
鎮静剤が効いていない場合、上咽頭の筋肉が収縮しているので、ローゼンミュラー窩が空洞状となるか、ローゼンミュラー窩入口部およびローゼンミュラー窩が細隙状となり、
ローゼンミュラー窩の観察が困難となる。
【0110】
(実施例5)
右口蓋扁桃窩への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。胃内視鏡を口から中咽頭に挿入する。胃内視鏡を舌の外側にポジショニングするために、口蓋垂が12時方向に捉えられるように胃内視鏡を右に回転する。そして、胃内視鏡自体を用いて舌を内側に圧排するために、胃内視鏡と右後口蓋弓の間にわずかな距離を保ちながら胃内視鏡を徐々に左に回転する。そして、胃内視鏡をわずかにプッシュすることにより右口蓋扁桃窩に挿入し、
右口蓋扁桃窩を観察する。
【0111】
もし、舌を内側に圧排できない場合には、舌と口蓋扁桃の間にひだができるまで、胃内視鏡を右あるいは左に繰り返し回転することにより舌を内側に圧排できる。
【0112】
さらに、胃内視鏡をわずかにプッシュすることにより、右前口蓋弓の裏側に挿入する。
そして、右前口蓋弓の裏側を観察する。
【0113】
鎮静剤を使用することにより、舌の筋肉が弛緩していれば舌の圧排を行いやすい。
【0114】
(実施例6)
左側口蓋部、左上顎舌側歯肉部、切歯乳頭部への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。胃内視鏡を口から口腔内に挿入する。正中口蓋縫合が6時方向に観察されるように
胃内視鏡を左に回転し、胃内視鏡を更に左に回転することにより、胃内視鏡の先端を左側口蓋部、左上顎舌側歯肉部に向ける。そして、胃内視鏡をわずかにプッシュすることにより左側口蓋部、左上顎舌側歯肉部に挿入し、左側口蓋部、左上顎舌側歯肉部を観察する。
【0115】
そして、胃内視鏡をさらに左に回転することにより、胃内視鏡の先端を切歯乳頭部に向ける。そして、胃内視鏡をわずかにプッシュすることにより切歯乳頭部に挿入し、切歯乳頭部を観察する。
【0116】
(実施例7)
右鼓室、右乳突洞への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。軟性内視鏡を口から中咽頭に挿入する。そして、軟性内視鏡と咽頭後壁の間にわずかな距離を保ちながら、軟性内視鏡を徐々に右に回転すると同時に徐々にアップアングルをかけ、わずかにプッシュすることにより、軟性内視鏡を上咽頭に挿入する。上咽頭で、軟性内視鏡を左に回転することにより、軟性内視鏡の先端を右耳管咽頭口に向ける。そして、バルーンカテーテル、ドリル、レーザーカテーテルを用いて右耳管を拡張し、軟性内視鏡をプッシュすることにより右耳管、右鼓室に挿入し、右耳管、右鼓室を観察する。さらに、バルーンカテーテル、ドリル、レーザーカテーテルを用いて右乳突洞口を拡張し、軟性内視鏡をプッシュすることにより右乳突洞に挿入し、右乳突洞を観察する。
【0117】
(実施例8)
頭蓋咽頭管への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。軟性内視鏡を口から上咽頭に挿入する。そして、頭蓋咽頭管開口部の上咽頭壁を切開し、頭蓋咽頭管開口部を露出する。そして、軟性内視鏡をプッシュすることにより頭蓋咽頭管に挿入し、頭蓋咽頭管を観察する。
【0118】
(実施例9)
右上顎洞への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。軟性内視鏡を口から中咽頭、上咽頭、右鼻腔に挿入し、右鼻腔を観察する。そして、右上顎洞開口部を正面視し、バルーンカテーテル、ドリル、レーザーカテーテルを用いて右上顎洞開口部を拡張する。そして、軟性内視鏡をプッシュすることにより右上顎洞に挿入し、右上顎洞を観察する。
【0119】
(実施例10)
右前篩骨洞への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。軟性内視鏡を口から中咽頭、上咽頭、右鼻腔に挿入し、右鼻腔を観察する。そして、右前篩骨洞開口部を正面視し、バルーンカテーテル、ドリル、レーザーカテーテルを用いて右前篩骨洞開口部を拡張する。そして、軟性内視鏡をプッシュすることにより右前篩骨洞に挿入し、右前篩骨洞を観察する。
【0120】
(実施例11)
右前頭洞への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。軟性内視鏡を口から中咽頭、上咽頭、右鼻腔に挿入し、右鼻腔を観察する。そして、右前頭洞開口部を正面視し、バルーンカテーテル、ドリル、レーザーカテーテルを用いて右前頭洞開口部を拡張する。そして、軟性内視鏡をプッシュすることにより右前頭洞に挿入し、右前頭洞を観察する。
【0121】
(実施例12)
右鼻涙管、右涙嚢への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。軟性内視鏡を口から中咽頭、上咽頭、右鼻腔に挿入し、右鼻腔を観察する。そして、バルーンカテーテル、ドリル、レーザーカテーテルを用いて右鼻涙管開口部を拡張する。そして、軟性内視鏡をプッシュすることにより右鼻涙管、右涙嚢に挿入し、右鼻涙管、右涙嚢を観察する。
【0122】
(実施例13)
右蝶形骨洞への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。軟性内視鏡を口から中咽頭、上咽頭、右鼻腔に挿入し、右鼻腔を観察する。そして、鼻栓を装着し、軟性内視鏡をプッシュすることにより軟性内視鏡のループを作成する。そして、右蝶形骨洞開口部を正面視し、バルーンカテーテル、ドリル、レーザーカテーテルを用いて右蝶形骨洞開口部を拡張する。そして、軟性内視鏡をプッシュすることにより右蝶形骨洞に挿入し、右蝶形骨洞を観察する。
【0123】
(実施例14)
右後篩骨洞への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。軟性内視鏡を口から中咽頭、上咽頭、右鼻腔に挿入し、右鼻腔を観察する。そして、鼻栓を装着し、軟性内視鏡をプッシュすることにより軟性内視鏡のループを作成するか、あるいは軟性内視鏡のループを作成しないで、右後篩骨洞開口部を正面視し、バルーンカテーテル、ドリル、レーザーカテーテルを用いて右後篩骨洞開口部を拡張する。そして、軟性内視鏡をプッシュすることにより右後篩骨洞に挿入し、右後篩骨洞を観察する。
【0124】
(実施例15)
上咽頭前壁への軟性内視鏡挿入法:患者を左側臥位にする。軟性内視鏡を口から中咽頭、上咽頭、右鼻腔に挿入し、右鼻腔を観察する。そして、鼻栓を装着し、軟性内視鏡をプッシュすることにより軟性内視鏡のループを作成する。そして、軟性内視鏡をプッシュすることにより上咽頭に再挿入し、上咽頭前壁を正面視し、上咽頭前壁を観察する。
【0125】
(実施例16)
自然開口部経管腔的胆嚢摘出術:軟性内視鏡を肛門から大腸に挿入する。軟性内視鏡からデバイスを出して大腸壁を切開する。軟性内視鏡を腹腔内に挿入する。そして、軟性内視鏡を総胆管部に挿入し、軟性内視鏡を左に回転することにより、軟性内視鏡の先端を総胆管の右外側部に向けると同時に、より広い術野を確保するために、軟性内視鏡を左に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて、十二指腸、横行結腸、大網を内下方に圧排する(軟性内視鏡的十二指腸結腸大網圧排法)(図7)。そして、伸展した総胆管の右外側で胆嚢管と胆嚢動脈を露出し、胆嚢管と胆嚢動脈を結紮切離し胆嚢を摘出する。
【0126】
(実施例17)
単孔式軟性内視鏡下胆嚢摘出術:腹壁を切開し、腹壁にポートを設置する。軟性内視鏡をポートから腹腔に挿入する。そして、軟性内視鏡を総胆管部に挿入し、軟性内視鏡を左に回転することにより、軟性内視鏡の先端を総胆管の右外側部に向けると同時に、より広い術野を確保するために、軟性内視鏡を左に回転することにより、軟性内視鏡自体を用いて、十二指腸、横行結腸、大網を内下方に圧排する(軟性内視鏡的十二指腸結腸大網圧排法)(図7)。そして、伸展した総胆管の右外側で胆嚢管と胆嚢動脈を露出し、胆嚢管と胆嚢動脈を結紮切離し胆嚢を摘出する。
【符号の説明】
【0127】
1 鼻腔
2 上咽頭上壁
3 右耳管隆起
4 右耳管咽頭口
5 右鼻腔天蓋
6 右鼻腔
7 鼻中隔
8 左鼻腔天蓋
9 左鼻腔
10 右口蓋扁桃窩
11 口蓋垂
12 舌
13 右後口蓋弓
14 右前口蓋弓
15 右前頭洞
16 右前篩骨洞開口部
17 右上顎洞開口部
18 右後篩骨洞開口部
19 右鼻涙管開口部
20 右蝶形骨洞
21 鼻栓
22 右鼓膜
23 左鼻涙管開口部
24 胆嚢
25 肝臓
26 総胆管
27 十二指腸



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】