(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036195
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】歯科組織を処置するためのパルス化レーザビームをパルス化および指向するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61C 3/02 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
A61C3/02 R
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022002181
(22)【出願日】2022-01-11
(62)【分割の表示】P 2018557852の分割
【原出願日】2017-05-05
(31)【優先権主張番号】62/332,586
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514052601
【氏名又は名称】コンバージェント デンタル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロニ カンター-バラン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ハリス グローブス ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ エイチ. ドレッサー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン ピー. モンティー
(57)【要約】
【課題】歯科組織を処置するためのパルス化レーザビームをパルス化および指向するための好適なシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】特定のパターンに従ってレーザビームパルスを歯科処置面積に送達する、レーザビーム処置システムが、説明される。種々の事例では、パターンの間隔(例えば、パルスが送達される複数の場所とそれらの間の距離)および/またはパターンのタイミング(例えば、第1の場所へのパルスの送達と、第1の場所に当接する、より後の場所へのパルスの送達との間の時間量)は、アブレーション性能に及ぼす実証可能な影響を有し得る。これらの効果は、例えば、改良されたアブレーション効率、改良された表面平滑度、改良された材料除去率、および/または融解、炭化、もしくは他の負の表面特徴のない状態を含み得る。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年5月6日に出願された“System and Methods for Pulsing and Directing a Pulsed Laser Beam to Treat Dental Tissue”と題する同時係属中の米国仮特許出願番号第62/332,586号に基づく優先権を主張しており、この仮特許出願の開示はその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、概して、レーザベースの歯科処置技術に関し、より具体的には、パルス化レーザビームをパターンに従って処置領域を横断して走査することによって歯科組織を処置するための空間的および/または時間的に説明されるパターンに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
レーザは、う蝕の除去、硬質組織の切断、穿孔、または成形、ならびに軟質組織の除去または切断を含む、多数の硬質および軟質組織の歯科手技において有用であることが、公知である。歯は、3つの層を有する。最外層は、最も硬質であり、歯の残りの部分のための保護層を形成する、エナメル質である。歯の中心および大部分は、象牙質から構成され、最内層は、歯髄である。エナメル質および象牙質は、組成が同様であり、概略的に、重量の70%が無機質であり、これは、炭酸ハイドロキシアパタイトである一方、歯髄は、脈管と神経とを含有する。9.3~9.6μmの範囲内の波長のレーザは、歯および骨の重要な構成要素であるハイドロキシアパタイトによって良好に吸収され、そのようなレーザを、硬質組織の除去において効率的にする。概して、9.3μm~10.6μmの範囲に及ぶCO2レーザ波長帯域を用いる、歯科医術におけるCO2レーザ用途の成長が、実質的に増加してきている。9.6μm~10.6μmでは、リン酸塩吸収が、著しく低下し、したがって、硬質組織の除去のために最適化される歯科レーザが、概して、9.3~9.6μmの波長範囲内で動作される。
【0004】
レーザは、同様の手技がドリルを用いて実施されるときに要求される、局所麻酔薬の同一の必要性がなく、歯科材料の除去において有用であると見出されている。さらに、レーザは、歯科ドリルに付随する雑音および振動をもたらさない。少なくともこれらの理由から、レーザが、ドリルに取って代わり、歯科処置からの不快感、不安、および恐怖の多くを除去するか、または少なくとも低減し得ることが、歯科業界における多数の人の希望である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
ビーム誘導システムの使用を通したレーザビーム走査の組み込みは、レーザビームが、処置区域内の異なる面積に、制御された様式で指向されることを可能にする。ビーム誘導システムの例が、米国特許出願公開第2013-0059264A1号(参照することによって本明細書に組み込まれる)において説明されている。レーザビーム走査は、単一の集束点を用いて可能であるよりもより大きな面積が、レーザによって処置されることを可能にする。パターンは、走査と関連付けられるパラメータ、例えば、ジャンプインターバル(レーザパターン内の1つの点と別の点との間の時間)、滞留時間(パターン内の単一点において費やされる時間)、幾何学形状(パターン内の点の全ての場所)、および指向シーケンスを画定するために使用されることができる。ビーム誘導システムを伴うパルス化レーザの使用と関連付けられるパラメータは、米国特許出願公開第2014-0363784A1号(参照することによって本明細書に組み込まれる)において詳細に開示されている。
【0006】
ビーム誘導システムまたは走査能力を有していないパルス化レーザシステムは、2つのパラメータ、すなわち、パルス幅および繰り返し周波数のみの使用を通してレーザをパルス出力し得る。カリフォルニア大学サンフランシスコ校および他所で実施された以前の調査は、9.3ミクロンレーザによって処置されている歯科硬質組織が、約2μsの熱緩和時間を有することを示している。この値は、パルス幅パラメータに対する望ましい限定を画定するために役立つ役割を果たす。しかしながら、歯科硬質組織処置の間のビーム誘導(例えば、レーザビームの走査)と関連付けられるパラメータのための好適な範囲を画定するための研究は、殆ど成されていない。
【0007】
歯科レーザが、麻酔なしで使用されること、およびリキャスト、隆起、著しい融解、または焼焦を形成することなく歯を切断することは、有利であり得る。ビーム誘導と関連付けられるパラメータが、これらの目的を成し遂げることができることが、発見されている。さらに、本デバイスが、歯科医が従来ドリルと同程度に使用が単純である場合、それは、歯科レーザデバイスが幅広く採用されることを可能にし得る。したがって、歯科医からの最小限の介入を伴う高品質の臨床結果を提供するために、ビーム誘導およびレーザパルスと関連付けられるあるパラメータを自動的に制御する、歯科レーザシステムならびに方法の必要性が存在する。
【0008】
概して、ある側面では、本開示の実施形態は、歯科組織の領域を除去するための方法を特徴とする。本方法は、複数の当接クレータを形成するために、レーザビームの複数のレーザパルスバーストを、歯科組織の領域内の個別の組織場所に、パターンで指向するステップを含み得る。このパターンは、少なくとも部分的に、レーザビームの幅、レーザビームのパルスあたりのエネルギー、および組織の特徴に基づいて判定される、クレータサイズの関数であり得る。当接クレータは、部分的に重複するクレータの対、接線クレータの対、および/または規定された最大距離まで分離される、離間クレータの対を含み得る。
【0009】
種々の実施形態では、複数のレーザパルスバーストの少なくとも1つのレーザパルスバーストは、単一のレーザパルスから成る。他の実施形態では、複数のレーザパルスバーストの少なくとも1つのレーザパルスバーストは、複数のレーザパルスを含む。いくつかの場合では、このパターンは、複数の当接クレータの所望される平滑度の関数である。例えば、部分的に重複するクレータ間の重複量および/または規定された最大距離は、複数の当接クレータの所望される平滑度の関数であり得る。
【0010】
いくつかの事例では、複数のレーザパルスバーストを指向するステップは、第1のクレータを形成するために、第1のレーザパルスバーストを、第1の組織場所に指向するステップと、第1のクレータに当接しない第2のクレータを形成するために、次のレーザパルスバーストを、第2の組織場所に指向するステップとを含み得る。そのような事例では、複数のレーザパルスバーストを指向するステップは、付加的な個別のクレータを形成するために、付加的なレーザパルスバーストを、付加的な個別の組織場所に指向することをさらに含み、当接クレータを形成する組織場所に指向される連続するクレータパルスバーストは、2つとしてない。付加的な個別のクレータを形成するために、付加的なレーザパルスバーストが、付加的な個別の組織場所に指向され、、いくつかの場合では、連続する付加的な組織場所の任意の対間の距離は、第1および第2の組織場所間の距離の±25%の範囲内である。当接クレータは、(i)3つの部分的に重複するクレータ、(ii)3つの接線クレータ、および/または(iii)規定された最大距離まで分離される、3つの離間クレータを含み得る。
【0011】
いくつかの場合では、クレータサイズは、所望されるアブレーション効率(例えば、理論上の最大アブレーション効率の少なくとも50%)の関数である。アブレーション効率は、複数の当接クレータの体積の関数であり、かつ複数のレーザパルスバーストの合計エネルギーであり得る。
【0012】
概して、別の側面では、本開示の実施形態は、歯科組織の領域を除去するための歯科レーザシステムを特徴とする。本システムは、レーザビームの複数のレーザパルスバーストを生成するための、レーザ源と、複数の当接クレータを形成するために、複数のレーザパルスバーストを、歯科組織の領域内の個別の組織場所に、パターンで指向するように適合されるビーム誘導システムであって、当接クレータは、(i)部分的に重複するクレータの対、(ii)接線クレータの対、および/または(iii)規定された最大距離まで分離される、離間クレータの対を含む、システムと、このパターンが、少なくとも部分的に、レーザビームの幅、レーザビームのパルスあたりのエネルギー、および組織の特性に基づいて判定されるクレータサイズの関数であるように、レーザ源およびビーム誘導システムを制御するように適合される、コントローラとを含み得る。
【0013】
種々の実施形態では、複数のレーザパルスバーストの少なくとも1つのレーザパルスバーストは、単一のレーザパルスから成る。他の実施形態では、複数のレーザパルスバーストの少なくとも1つのレーザパルスバーストは、複数のレーザパルスを含む。いくつかの場合では、パターンは、複数の当接クレータの所望される平滑度の関数である。例えば、部分的に重複するクレータ間の重複の量および/または規定される最大距離は、複数の当接クレータの所望される平滑度の関数であり得る。
【0014】
いくつかの事例では、ビーム誘導システムはさらに、第1のクレータを形成するために、第1のレーザパルスバーストを、第1の組織場所に指向し、第2のクレータを形成するために、次のレーザパルスバーストを、第2の組織場所に指向し、第1のクレータに当接しないように適合される。そのような事例では、ビーム誘導システムはさらに、付加的な個別のクレータを形成するために、付加的なレーザパルスバーストを、付加的な個別の組織場所に指向するように適合され得、当接クレータを形成する組織場所に指向される連続するレーザパルスバーストは、2つとしてない。ビーム誘導システムが、付加的な個別のクレータを形成するために、付加的なレーザパルスバーストを付加的な個別の組織場所に指向するように適合されるいくつかの場合では、連続する付加的な組織場所の任意の対間の距離は、第1および第2の組織場所間の距離の±25%の範囲内である。当接クレータは、(i)3つの部分的に重複するクレータ、(ii)3つの接線クレータ、および/または(iii)規定された最大距離まで分離される、3つの離間クレータを含み得る。
【0015】
いくつかの場合では、クレータサイズは、所望されるアブレーション効率(例えば、理論上の最大アブレーション効率の少なくとも50%)の関数である。アブレーション効率は、複数の当接クレータの体積の関数であり、かつ複数のレーザパルスバーストの合計エネルギーであり得る。いくつかの場合では、ビーム誘導システムは、検流計を含む。
【0016】
概して、別の側面では、本開示の実施形態は、歯科組織の領域を除去するための別の方法を特徴とする。本方法は、第1のレーザパルスバーストを、歯科組織の領域内の第1の組織場所に、組織場所のパターンで指向するステップと、少なくとも1つの付加的なレーザパルスバーストを、少なくとも1つの付加的な非隣接組織場所に、パターンで指向するステップと、次のレーザパルスバーストを、第1の組織場所に隣接する組織場所に、パターンで指向するステップとを含み得、付加的な非隣接組織場所の数量は、少なくとも部分的に、(i)歯科組織の融解に対応する熱緩和時間と、(ii)レーザパルスの特性とに基づいて判定される。
【0017】
種々の実施形態では、第1のレーザパルスバーストの特性は、レーザパルス期間、レーザパルスのオン持続時間、バースト周波数、および/またはバーストオン持続時間である。付加的な非隣接組織場所の数量は、最大10(またはそれを上回るもの)であり得、例えば、1であり得る。いくつかの場合では、第1のレーザパルスバーストおよび/または次のレーザパルスバーストは、単一のレーザパルスから成る。他の場合では、第1のレーザパルスバーストおよび/または次のレーザパルスバーストは、複数のレーザパルスを含む。少なくとも1つの付加的なレーザパルスバーストの合計時間は、熱緩和時間に略等しくあり得る。
【0018】
概して、別の側面では、本開示の実施形態は、歯科組織の領域を除去する別の歯科レーザシステムを特徴とする。本システムは、レーザビームの複数のレーザパルスバーストを生成するためのレーザ源と、ビーム誘導システムであって、(i)第1のレーザパルスバーストを、歯科組織の領域内の組織場所の第1の組織場所に、パターンで指向し、(ii)少なくとも1つの付加的なレーザパルスバーストを、少なくとも1つの付加的な非隣接組織場所に、パターンで指向し、(iii)次のレーザパルスバーストを、第1の組織場所に隣接する組織場所に、パターンで指向するように適合されるシステムとを含み得、付加的な非隣接組織場所の数量は、少なくとも部分的に、歯科組織の融解に対応する熱緩和時間と、レーザパルスの特性とに基づいて判定される。
【0019】
種々の実施形態では、第1のレーザパルスバーストの特性は、レーザパルス期間、レーザパルスのオン持続時間、バースト周波数、および/またはバーストオン持続時間である。付加的な非隣接組織場所の数量は、最大10(またはそれを上回るもの)であり得、例えば、1であり得る。いくつかの場合では、第1のレーザパルスバーストおよび/または次のレーザパルスバーストは、単一のレーザパルスから成る。他の場合では、第1のレーザパルスバーストおよび/または次のレーザパルスバーストは、複数のレーザパルスを含む。少なくとも1つの付加的なレーザパルスバーストの合計時間は、熱緩和時間に略等しくあり得る。いくつかの場合では、ビーム誘導システムは、検流計を含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
歯科組織の領域を除去するための方法であって、
複数の当接クレータを形成するために、レーザビームの複数のレーザパルスバーストを、前記歯科組織の領域内の個別の組織場所に、パターンで指向するステップを含み、
前記パターンは、少なくとも部分的に、前記レーザビームの幅、前記レーザビームのパルスあたりのエネルギー、および前記組織の特性に基づいて判定される、クレータサイズの関数であり、
前記当接クレータは、(i)部分的に重複するクレータの対と、(ii)接線クレータの対と、(iii)規定された最大距離まで分離される、離間クレータの対のうちの少なくとも1つを含む、方法。
(項目2)
前記複数のレーザパルスバーストの少なくとも1つのレーザパルスバーストは、単一のレーザパルスから成る、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記複数のレーザパルスバーストの少なくとも1つのレーザパルスバーストは、複数のレーザパルスを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記パターンは、前記複数の当接クレータの所望される平滑度の関数である、項目1に記載の方法。
(項目5)
(i)部分的に重複するクレータ間の重複量と、(ii)前記規定された最大距離のうちの少なくとも1つが、前記複数の当接クレータの所望される平滑度の関数である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記複数のレーザパルスバーストを指向するステップは、
第1のクレータを形成するために、第1のレーザパルスバーストを、第1の組織場所に指向することと、
前記第1のクレータに当接しない第2のクレータを形成するために、次のレーザパルスバーストを、第2の組織場所に指向することと、を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記複数のレーザパルスバーストを指向するステップは、付加的な個別のクレータを形成するために、付加的なレーザパルスバーストを、付加的な個別の組織場所に指向することをさらに含み、当接クレータを形成する組織場所に指向される連続するクレータパルスバーストは、2つとしてない、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記複数のレーザパルスバーストを指向するステップは、付加的な個別のクレータを形成するために、付加的なレーザパルスバーストを、付加的な個別の組織場所に指向することをさらに含み、連続する付加的な組織場所の任意の対間の距離は、前記第1および前記第2の組織場所間の距離の+25%の範囲内である、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記当接クレータは、(i)3つの部分的に重複するクレータと、(ii)3つの接線クレータと、(iii)規定された最大距離まで分離される、3つの離間クレータとのうちの少なくとも1つをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記クレータサイズは、所望されるアブレーション効率の関数である、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記アブレーション効率は、前記複数の当接クレータの体積の関数であり、かつ前記複数のレーザパルスバーストの合計エネルギーである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記所望されるアブレーション効率は、理論上の最大アブレーション効率の少なくとも50%である、項目11に記載の方法。
(項目13)
歯科組織の領域を除去するための歯科レーザシステムであって、
レーザビームの複数のレーザパルスバーストを生成するための、レーザ源と、
複数の当接クレータを形成するために、前記複数のレーザパルスバーストを、前記歯科組織の領域内の個別の組織場所に、パターンで指向するように適合されるビーム誘導システムであって、前記当接クレータは、(i)部分的に重複するクレータの対と、(ii)接線クレータの対と、(iii)規定された最大距離まで分離される、離間クレータの対とのうちの少なくとも1つを含む、システムと、
前記パターンが、少なくとも部分的に、前記レーザビームの幅、前記レーザビームのパルスあたりのエネルギー、および前記組織の特性に基づいて判定されるクレータサイズの関数であるように、前記レーザ源および前記ビーム誘導システムを制御するように適合される、コントローラと、を備える、システム。
(項目14)
前記複数のレーザパルスバーストの少なくとも1つのレーザパルスバーストは、単一のレーザパルスから成る、項目13に記載のシステム。
(項目15)
前記複数のレーザパルスバーストの少なくとも1つのレーザパルスバーストは、複数のレーザパルスを含む、項目13に記載のシステム。
(項目16)
前記パターンは、前記複数の当接クレータの所望される平滑度の関数である、項目13に記載のシステム。
(項目17)
(i)部分的に重複するクレータ間の重複の量と、(ii)前記規定された最大距離とのうちの少なくとも1つが、前記複数の当接クレータの所望される平滑度の関数である、項目16に記載のシステム。
(項目18)
前記ビーム誘導システムは、
第1のクレータを形成するために、第1のレーザパルスバーストを、第1の組織場所に指向し、
前記第1のクレータに当接しない第2のクレータを形成するために、次のレーザパルスバーストを、第2の組織場所に指向するように適合される、項目13に記載のシステム。
(項目19)
前記ビーム誘導システムはさらに、付加的な個別のクレータを形成するために、付加的なレーザパルスバーストを、付加的な個別の組織場所に指向するように適合され、当接クレータを形成する組織場所に指向される連続するレーザパルスバーストは、2つとしてない、項目18に記載のシステム。
(項目20)
前記ビーム誘導システムはさらに、付加的な個別のクレータを形成するために、付加的なレーザパルスバーストを、付加的な個別の組織場所に指向するように適合され、連続する付加的な組織場所の任意の対間の距離は、前記第1および第2の組織場所間の距離の±25%の範囲内である、項目18に記載のシステム。
(項目21)
前記当接クレータは、(i)3つの部分的に重複するクレータと、(ii)3つの接線クレータと、(iii)規定された最大距離まで分離される、3つの離間クレータとのうちの少なくとも1つをさらに含む、項目13に記載のシステム。
(項目22)
前記クレータサイズは、所望されるアブレーション効率の関数である、項目13に記載のシステム。
(項目23)
前記アブレーション効率は、前記複数の当接クレータの体積の関数であり、かつ前記複数のレーザパルスバーストの合計エネルギーである、項目22に記載のシステム。
(項目24)
前記所望されるアブレーション効率は、理論上の最大アブレーション効率の少なくとも50%である、項目23に記載のシステム。
(項目25)
前記ビーム誘導システムは、検流計を備える、項目13に記載のシステム。
(項目26)
歯科組織の領域を除去するための方法であって、
第1のレーザパルスバーストを、前記歯科組織領域内の第1の組織場所に、組織場所のパターンで指向するステップと、
少なくとも1つの付加的なレーザパルスバーストを、少なくとも1つの付加的な非隣接組織場所に、前記パターンで指向するステップと、
次のレーザパルスバーストを、前記第1の組織場所に隣接する組織場所に、前記パターンで指向するステップと、を含み、
付加的な非隣接組織場所の数量は、少なくとも部分的に、(i)前記歯科組織の融解に対応する熱緩和時間と、(ii)前記レーザパルスの特性とに基づいて判定される、
方法。
(項目27)
前記第1のレーザパルスバーストの特性は、(i)レーザパルス期間と、(ii)レーザパルスのオン持続時間と、(iii)バースト周波数と、(iv)バーストオン持続時間とから成る、群から選択される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記付加的な非隣接組織場所の数量は、1である、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記付加的な非隣接組織場所の数量は、最大10である、項目26に記載の方法。
(項目30)
前記第1のレーザパルスバーストおよび前記次のレーザパルスバーストのうちの少なくとも1つは、単一のレーザパルスから成る、項目26に記載の方法。
(項目31)
前記第1のレーザパルスバーストおよび前記次のレーザパルスバーストのうちの少なくとも1つは、複数のレーザパルスを含む、項目26に記載の方法。
(項目32)
前記少なくとも1つの付加的なレーザパルスバーストの合計時間は、前記熱緩和時間に略等しい、項目26に記載の方法。
(項目33)
歯科組織の領域を除去するための歯科レーザシステムであって、
レーザビームの複数のレーザパルスバーストを生成するためのレーザ源と、
ビーム誘導システムであって、
第1のレーザパルスバーストを、前記歯科組織の領域内の第1の組織場所に、組織場所のパターンで指向し、
少なくとも1つの付加的なレーザパルスバーストを、少なくとも1つの付加的な非隣接組織場所に、前記パターンで指向し、
次のレーザパルスバーストを、前記第1の組織場所に隣接する組織場所に、前記パターンで指向するように適合されるシステムと、を備え、付加的な非隣接組織場所の数量は、少なくとも部分的に、(i)前記歯科組織の融解に対応する熱緩和時間と、(ii)前記レーザパルスの特性とに基づいて判定される、システム。
(項目34)
前記第1のレーザパルスバーストの特性は、(i)レーザパルス期間と、(ii)レーザパルスのオン持続時間と、(iii)バースト周波数と、(iv)バーストオン持続時間とから成る、前記群から選択される、項目33に記載のシステム。
(項目35)
前記付加的な非隣接組織場所の数量は、1である、項目33に記載のシステム。
(項目36)
前記付加的な非隣接組織場所の数量は、最大10である、項目33に記載のシステム。
(項目37)
前記第1のレーザパルスバーストおよび前記次のレーザパルスバーストのうちの少なくとも1つは、単一のレーザパルスから成る、項目33に記載のシステム。
(項目38)
前記第1のレーザパルスバーストおよび前記次のレーザパルスバーストのうちの少なくとも1つは、複数のレーザパルスを含む、項目33に記載のシステム。
(項目39)
前記少なくとも1つの付加的なレーザパルスバーストの合計時間は、前記熱緩和時間に略等しい、項目33に記載のシステム。
(項目40)
前記ビーム誘導システムは、検流計を備える、項目33に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の種々の側面は、添付図面および付随的詳細説明に照らして、より明白になる。図面では、同様の参照記号が、概して、異なる図面を通して同一の部分を指す。また、図面は、必ずしも正確な縮尺率ではなく、代わりに、概して、本発明の原理を図示することが、強調される。以下の説明では、本発明の種々の実施形態が、以下の図面を参照して説明される。
【0021】
【
図1】
図1は、パルス幅の関数として、種々の材料に対するアブレートされたスポットの直径に関する例示的データを示す、グラフである。
【0022】
【
図2A】
図2A-2Eは、種々の実施形態による例示的アブレーションパターンを示す。
【
図2B】
図2A-2Eは、種々の実施形態による例示的アブレーションパターンを示す。
【
図2C】
図2A-2Eは、種々の実施形態による例示的アブレーションパターンを示す。
【
図2D】
図2A-2Eは、種々の実施形態による例示的アブレーションパターンを示す。
【
図2E】
図2A-2Eは、種々の実施形態による例示的アブレーションパターンを示す。
【0023】
【
図3A】
図3Aは、パターン間隔の関数として、種々の材料に対する平均除去体積の例示的データを示す、図表である。
【0024】
【
図3B】
図3Bは、パターン間隔の関数として、種々の材料に対する、軟質材料除去に対する硬質材料除去の比率に関する例示的データを示す、グラフである。
【0025】
【
図3C】
図3Cは、パターン間隔の関数として、種々の材料に対する合計エネルギーあたりの平均除去体積に関する例示的データを示す、チャートである。
【0026】
【
図4A】
図4Aは、う蝕組織を切断するために開発された例示的パターンと、健康な歯科組織を切断するために開発された例示的パターンとに関する体積除去性能に関する例示的データを示す、チャートである。
【0027】
【
図4B】
図4Bは、
図4Aに示されるチャート内に説明されるパターンを送達するために使用されるレーザに関する例示的動作パラメータを示す。
【0028】
【
図5A】
図5A-5Bは、種々の実施形態による、1.25mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【
図5B】
図5A-5Bは、種々の実施形態による、1.25mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【0029】
【
図6A】
図6A-6Bは、種々の実施形態による、1.00mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【
図6B】
図6A-6Bは、種々の実施形態による、1.00mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【0030】
【
図7A】
図7A-7Bは、種々の実施形態による、0.75mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【
図7B】
図7A-7Bは、種々の実施形態による、0.75mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【0031】
【
図8A】
図8A-8Bは、種々の実施形態による、0.50mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【
図8B】
図8A-8Bは、種々の実施形態による、0.50mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【0032】
【
図9A】
図9A-9Bは、種々の実施形態による、0.25mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【
図9B】
図9A-9Bは、種々の実施形態による、0.25mmパターンに関する、例示的幾何学形状と、例示的レーザ動作パラメータとを示す。
【0033】
【
図10】
図10は、パルス幅の関数として、ヒトのエナメル質に対する単位エネルギーあたりの除去体積に関する例示的データを示す、グラフである。
【0034】
【
図11】
図11は、種々の実施形態による、例示的歯科レーザシステムに関する、パルス幅と、パルスあたりのエネルギーとに関する例示的データを示す、チャートである。
【0035】
【
図12】
図12は、種々の実施形態による、種々のパターンを用いて処置された歯科エナメル質の共焦点顕微鏡画像を示す。
【0036】
【
図13】
図13は、種々の実施形態による、単一パルスパターンに関連する、例示的レーザ動作パラメータと、変数とを示す、表である。
【0037】
【
図14A】
図14A-14Bは、種々の実施形態による、種々のパターンを用いて処置された表面に関する例示的面粗度を一覧にする、表である。
【
図14B】
図14A-14Bは、種々の実施形態による、種々のパターンを用いて処置された表面に関する例示的面粗度を一覧にする、表である。
【0038】
【
図15A】
図15A-15Bは、種々の実施形態による、種々のパターンを用いて処置された表面に関する例示的フラクタル尺度面粗度データを示す、プロット図である。
【
図15B】
図15A-15Bは、種々の実施形態による、種々のパターンを用いて処置された表面に関する例示的フラクタル尺度面粗度データを示す、プロット図である。
【0039】
【
図16】
図16は、種々の実施形態による、種々のパターンに関する、エナメル質組織の質量材料除去率に関する例示的データを示す、グラフである。
【0040】
【
図17】
図17は、レーザオフ時間の関数として、種々のレーザオン時間に関する、可視融解がサンプル内に出現するときを示す、例示的データを示す、チャートである。
【0041】
【
図18A】
図18A-18Cは、種々の実施形態による、種々のレーザオフ時間における、種々の数のレーザパルスによって形成されるクレータの共焦点顕微鏡画像である。
【
図18B】
図18A-18Cは、種々の実施形態による、種々のレーザオフ時間における、種々の数のレーザパルスによって形成されるクレータの共焦点顕微鏡画像である。
【
図18C】
図18A-18Cは、種々の実施形態による、種々のレーザオフ時間における、種々の数のレーザパルスによって形成されるクレータの共焦点顕微鏡画像である。
【0042】
【
図19A】
図19A-19Bは、種々の実施形態による、単位エネルギーあたりの除去体積に関する例示的データをレーザオフ時間の関数として示す、グラフである。
【
図19B】
図19A-19Bは、種々の実施形態による、単位エネルギーあたりの除去体積に関する例示的データをレーザオフ時間の関数として示す、グラフである。
【0043】
【
図20】
図20は、種々の実施形態による、冷却インターバルに及ぼす間隔効果を例証するために使用される例示的パターンを描写する。
【0044】
【
図21A】
図21Aは、レーザオン時間の関数として、種々のパターン間隔に関する、リキャスト融解をもたらさない最大繰り返し周波数に関する例示的データを示す、グラフである。
【0045】
【
図21B】
図21Bは、レーザオン時間の関数として、種々のパターン間隔に関する、リキャスト融解をもたらさない最小インターバルに関する例示的データを示す、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
種々の実施形態では、本開示は、レーザパルスを特有かつ有利なパターンで送達する、レーザベースの歯科処置技術に関する。レーザパルスは、例えば、歯科組織のような組織を除去またはアブレートするために使用されてもよい。レーザビームが、アブレートされている材料の中に良好に結合される波長(例えば、エナメル質および象牙質に対して約3.0、9.3、または9.6ミクロン)ならびに十分なパルスフルエンス(例えば、9.3ミクロンビームに対して2J/cm2を上回るもの)を有するとき、レーザビームの単一パルスが、特定の材料を正常にアブレートすることができる。単一のパルスアブレーションは、概して、処置されている材料内にクレータを形成する。典型的には、選択される組織領域を完全にアブレートするためには、いくつかのクレータが、形成されなければならない。
【0047】
図1は、9.3ミクロン波長レーザビームを使用するとき、単一パルスによって引き起こされる、種々の材料に対するアブレーションから結果として生じる、パルス幅(μs)104と、クレータ直径(ミクロン)106との間の例示的関係を描写する、グラフ102である。グラフに示される材料は、ヒトのエナメル質108と、ヒトのエナメル質内の硬質う蝕110と、ヒトの象牙質112と、ウシのエナメル質114と、ウシの象牙質116と、ハイドロキシアパタイトディスク118と、歯科複合物120とを含む。好適な電力レベルにおいて9.3ミクロン波長ビームを生成することが可能である同位体二酸化炭素レーザ源の実施例は、Coherent E-150iレーザ(Coherent Inc.,Santa Clara, CA)である。単一パルスアブレーションの間、噴霧流が、15ml/分の公称体積流量で使用された。この量は、それがSolea(登録商標)歯科レーザシステム(Convergent Dental,Natick,MA)のいくつかの商業的実施形態の約最大噴霧量であるため、選定された。噴霧は、処置領域に到達するレーザエネルギーを減衰させることができ、少なくともいくつかの事例では、噴霧は、単一パルスによって形成されるクレータのサイズに及ぼす影響を有する。クレータサイズは、以下により詳細に定義される。いくつかの場合では、アブレーションクレータ106の直径は、概して、パルス幅104とともに増加し、典型的には、同一のパルス幅に対して、より軟質の材料は、より大きなクレータ直径を生じることが、
図1から理解され得る。本明細書で使用されるように、パルス幅およびパルス持続時間は、単一パルスのパルスオン時間およびパルスオフ時間の両方を含む、パルス期間の逆数である周波数で反復し得る合計パルス期間ではない、パルスのオン時間を示す。
【0048】
用語が本明細書において使用されるように、パターンは、アブレートされるべき組織の領域内のパルス化レーザビームの走査または移動と関連付けられる、特定の空間的ならびに/もしくは時間的パラメータを画定する。
図2Aは、約1.43mmの全体的パターン幅と、約1.38mmの全体的高さまたは長さとを有する、0.231mmパターン間隔を用いた例示的アブレーションパターンを示す。パターン間隔は、概して、クレータが、それらの場所の周囲に形成されるであろうように、レーザビームの標的とされる隣接場所間に間隔を開けることを意味する。以下に議論されるように、結果として生じるクレータ間隔と呼ばれる、隣接クレータ間の間隔は、クレータの直径に依存するであろう。
【0049】
本例示的図では、各円の中心が、レーザパルス(すなわち、レーザパルスのバースト)が指向され、中心(十字線によって表わされる)の周りにアブレーションクレータを作成する場所を表す。円自体は、アブレートされたクレータの完全な横断面積を表し、クレータの直径は、パターン間隔(0.231mm)にほぼ等しい(例えば、
+1%、
+5%、
+10%、
+20%等の公差内)。示されるように、アブレーションパターンは、充塞または緊密にネスト化された形態に配列された丸を含む。
図2Bは、
図2Aと同一の実施例パターンを示し、26個のクレータが走査される順序を標識し、これは、(いくつかの場合では、オフセット位置を伴って)反復されることができる。パターン内の連続的に標的とされる場所間の間隔を変動させることによって、異なる材料が、多かれ少なかれ効率的にアブレートされ得ることが、発見された。
【0050】
種々の実施形態では、レーザビームは、少なくとも1つの検流計を特徴とし得るビーム誘導システムによって所定のパターンで走査される。レーザパルス出力およびビーム誘導システムの制御は、レーザマーキングコントローラ等のコントローラを通して達成され得る。好適な走査コントローラの実施例は、LEC‐1 Ethernet(登録商標)ベース内臓スキャンコントローラ(Lanmark Controls Inc.,Acton,MA)である。
【0051】
図2C-2Eは、
図2Aからの例示的アブレーションパターンを図示し、各
図2C-2Eは、異なるサイズのクレータを有する、例示的な結果として生じるクレータパターンを図示する。
図2A-2Eの文脈内で使用されるように、同一のパターン間隔は、同一の間隔が、レーザビームが標的とされ、それらの場所の周囲にクレータを作成する場所間で選定されることを意味するが、しかしながら、クレータサイズは、異なり得、したがって、結果として生じるクレータ間隔もまた、異なり得る。結果として生じるクレータ間隔は、全てのクレータが、選択されたパターンに従って形成された後の2つの最も近接するクレータ間の最小距離として説明され得る。
図2Aでは、形成されるクレータは、接しており、したがって、結果として生じるクレータ間隔は、約0mm(例えば、±1%、±2%、±5%、±20%等の公差を伴う)である。
図2Aが示すように、結果として生じるクレータ間隔は、約0mmであるが、処置領域の全体の中に、間隙、すなわち、間隙200等の処置されない領域が、存在する。
【0052】
図2Cは、パルスバーストが、0.3mmの直径を有するクレータと、約1.5mmの全体的幅と、約1.45mmの長さとを伴うパターンとをもたらす、例示的パターンを示す。概して、パルスバーストは、いくつか(例えば、10個、20個、50個、200個等)のパルスを含むが、パルスバーストは、単一パルスのみを含むこともできる。
図2Dは、パルスバーストが、0.4mmの直径を有するクレータと、約1.6mmの全体的幅と、約1.55mmの長さとを伴うパターンとをもたらす、例示的パターンを示す。
図2Eは、パルスバーストが、0.5mmの直径を有するクレータと、約1.7mmの全体的幅と、約1.65mmの長さとを伴うパターンとをもたらす、例示的パターンを示す。図内の寸法内に示されるように、より大きなクレータは、パターン間隔に応じて、結果として生じるクレータ間隔を増加させ重複させるために有効なパターンのサイズ、すなわち、アブレートされる領域の合計サイズをもたらす。
図2C-2Eに示されるクレータは、重複する。したがって、これらの実施例内の結果として生じるクレータ間隔は、負である。しかしながら、全てのクレータが、選択されるパターンに従って形成された後の2つの最も近接するクレータ間の最小距離、すなわち、結果として生じるクレータ間隔は、ゼロを上回る数であり得る。この場合では、2つの最も近接したクレータは、重複も接しもしない。
【0053】
本明細書で使用されるように、クレータサイズは、クレータの深さまたは体積ではなく、処置表面のクレータの表面面積または横断面幅(例えば、直径)を指すが、いくつかの場合では、サイズ(すなわち、表面面積および/または直径)と体積とは、関連する。例えば、0.5mmの直径を有する
図2E内のクレータは、0.3mmの直径を有する
図2C内のクレータより大きいサイズを有する、0.4mmの直径を有する
図2D内のクレータより大きいサイズを有する(表面面積が、直径の関数であることに留意されたい)。概して、クレータは、真円ではない。したがって、クレータ直径は、円の横断面積が、組織表面におけるクレータ横断面積の±0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、20%等である、クレータに近似する円の直径であり得る。そのような事例では、クレータサイズは、依然として、処置表面におけるクレータの表面面積の測定値である。クレータサイズは、典型的には、いくつかの要素(例えば、パルス幅、パルス期間、単一スポットに指向されるバースト内のパルス数、パルスあたりのエネルギー、バースト周波数、パルス外形、スポットサイズ等の1つまたはそれを上回るレーザパラメータおよび/または処置されるべき材料の1つまたはそれを上回る特性)に依存する。本明細書に説明される歯科処置システムの種々の実施形態では、パターン間隔および連続的に標的とされる点/場所の間隔(以下に議論される)は、例えば、ガルボコントローラミラーステップを調節することによって、事前選択および/または制御されることができる。クレータ直径は、例えば、ビーム幅等の1つまたはそれを上回るレーザパラメータを調節することによって、制御されることができる。結果として生じるクレータ間隔のパラメータは、好適なパターン間隔と、(クレータ直径を制御するであろう)レーザパラメータとを選択することによって制御されることができる。以下に議論されるように、処置表面の平滑度は、概して、結果として生じるクレータ間隔に依存し得る。
【0054】
異なるアブレーションパターンの体積材料除去率を定量化するために、アブレーション率ゲージおよび手技が、使用された。率ゲージは、オペレータが、固定具の中に材料(例えば、ヒトの臼歯、ウシのエナメル質、複合物ブロック等)を設置し、歯科レーザシステムを取り付け、次いで、設定された時間および電力量で材料をアブレートすることを可能にする間、種々の他のレーザパラメータ(例えば、バースト内のパルス幅、パルス期間、パルス数等)を一定に保持する。パルス歯科レーザを用いる歯科硬質組織のアブレーションは、典型的には、冷却噴霧の使用を要求する。アブレーション率ゲージはまた、オペレータが、実験のために設定される冷却剤流量で噴霧を使用することを可能にする。
【0055】
種々の実験では、(例えば、
図2A-2Eに示される)アブレーションパターンによって除去される体積量は、処置の全ての他の変数およびパラメータ(レーザ電力、パルス幅等を含む)が、一定に保持されるとき、クレータの中心間の間隔に依存すると観察された。本明細書で使用されるように、クレータ中心間の間隔は、1つまたはそれを上回るレーザパルスがそれぞれ、指向され、それらのスポットの周りに個別のクレータを形成する、2つの隣接する点間の距離である。この距離は、時として、本明細書では、クレータ間隔またはパターン間隔と称される。
【0056】
図3Aは、パターン間隔の関数として、種々の材料に対する平均除去体積の例示的データを提供する。ウシの象牙質および複合材料に関して、クレータ間隔が0.231mmであるとき、体積除去率は、最大になり、間隔が(例えば、0.173mmに)減少または(例えば、0.346mmに)増加されるとき、率は、減少することが、
図3Aから観察されることができる。ヒトの臼歯に関して、クレータ間隔が0.173mmであるとき、体積除去率は最大であり、間隔が増加されるにつれて、率は、単調に減少する。
【0057】
概して、歯科組織の処置の間、最も外側の硬質エナメル質層は、感染および/またはう蝕され得る内部の比較的により軟質の象牙質層が除去され得る前にアブレートされる必要があり得る。う蝕されたより軟質の象牙質が位置する深度および/または除去される必要があるそのような象牙の体積に応じて、アブレーションプロセスは、不可避的に、取り囲む健康な硬質エナメル質の一部を除去し得る。クレータサイズ(例えば、直径)が、小さい場合、健康な硬質エナメル質のアブレーションを最小限にさせることが、可能であり得るが、う蝕されたより軟質の組織の除去の体積率は、低く、より長い処置時間を要求し得る。これに反して、大きいクレータを形成することは、う蝕された組織の迅速な除去をもたらすことができるが、取り囲む健康な硬質組織の除去体積もまた、増加する。
【0058】
種々の実施形態では、アブレートされ除去される、軟質であるか、またはう蝕された組織の体積を最大限にしながら、アブレートされ除去される健康な硬質組織の体積をもまた最小限にさせることが、望ましい。したがって、より軟質の材料の相対的除去を最大限にし、かつより軟質の材料に関する体積材料除去率と、より硬質の材料に関する体積材料除去率との最大差異を提供する、最適化されたクレータ間隔を識別するための実験が、実施された。
図3Bは、クレータ間隔の関数として、2つのより軟質の材料、すなわち、ウシの象牙質と、複合材料とに関する、除去されたより軟質の材料(例えば、複合物またはウシの象牙質)の体積に対する、除去されたより硬質の材料(例えば、エナメル質)の体積の比率に関する、例示的データをプロットする。
【0059】
材料毎のデータは、クレータ間隔が約0.28mmであるとき、比率が最小限にされることを示す。この間隔において、本実験では、より軟質のう蝕組織(例えば、複合物)に関する体積除去率は、より硬質の組織(例えば、健康なエナメル質)に関する体積除去率の3倍も大きい。この実験は、パルスあたりのエネルギー、パルス幅、パルス期間、スポットに指向されるバーススト内のパルス数、スポットに指向されるバーストの数等の種々のレーザビームパラメータが選択されるとき、罹患組織が健康な組織よりも大幅により迅速に除去されるように、パターン間隔が、低侵襲歯科調製のために調節されることができることを示す。
【0060】
種々の実施形態では、クレータサイズおよび/または間隔は、(上記に説明されるような)種々の材料内の差異のアブレーション率と対照的に、所望されるアブレーション効率に基づくことができる。この能力を実証するために、実験が、行われた。
図3Cを参照すると、クレータ間隔の関数として、種々の材料に対する、バーストあたりの送達された合計エネルギーあたりの平均除去体積に関する例示的データが、提供される。複合物およびウシの象牙質材料に関する、最大のアブレーション効率および曲線301と303とがそれぞれ、示される。最大アブレーション効率は、観察されたデータに適合する、最良適合多項方程式の極大値と一致する。
図3Cに示される間隔範囲内には、ヒトの臼歯材料に関する極大値が、存在しないことに留意されたい。これは、ヒトの臼歯に対する最大アブレーション効率が、(
図3Cに示される、最狭間隔である)0.173mmの中心間距離よりも狭い間隔において生じるためである。
【0061】
いくつかの実施形態では、体積除去率を最大限にするために、クレータ間隔の調節に加え、またはその代替として、レーザビームの1つもしくはそれを上回るパラメータが、調整される。例えば、
図4Aは、垂直軸(μl)404に沿って材料除去体積を示す、グラフ402である。グラフ402は、一定の11.2W平均レーザ電力において233秒にわたって動作する、2つの異なるアブレーションパターンによって修正された後の、複合物406と、ヒトの臼歯408とに関する除去体積を示す。第1のアブレーションパターン410(う蝕-006と標識される)は、
図2A-2B内で説明される幾何学形状と、場所シーケンスとを有する。第1のアブレーションパターン410は、う蝕および複合物等のより軟質の材料を、健康なエナメル質等の硬質材料より急速な周波数で切断するために開発される。第2のアブレーションパターン412(SP125と標識される)からの除去体積404は、第1のアブレーションパターン410に対する除去体積404と比較されて示されている。第2のアブレーションパターン(SP125)412は、健康な歯科硬質組織を切断するために開発され、
図5Aを参照して以下に説明される幾何学形状と、場所シーケンスとを有する。
【0062】
図4Aに描写される結果は、各材料上で3×3グリッドにおいて各アブレーションパターンを9回動作させることによって得られた。切断時間および平均電力が、アブレーションパターン毎に一定であったため、各アブレーションパターンによって送達されるエネルギーの合計量は、一定に保持された。切断時間は、233秒であり、平均電力は、11.2Wであった。一定の切断時間および平均電力を達成するために、異なるレーザおよびビーム誘導パラメータが、う蝕-006とSP125とに対して使用された。これらのパラメータが、
図4Bに要約される。
図4Bを参照すると、う蝕-006は、60μsのレーザパルス持続期間、1mSのビーム誘導ジャンプ速度遅延、および589回の通過を要求した。SP125は、32.5μsのレーザパルス持続期間、0.5mSのビーム誘導ジャンプ遅延、および652回の通過を要求した。
【0063】
種々の実施形態では、クレータサイズおよび/または間隔は、アブレート領域の所望される平滑度に基づくことができる。本明細書で使用されるように、アブレート領域は、組織がレーザによってアブレートされた後の組織表面の残部分を指す。別の方法で定義すると、アブレート領域は、レーザパルスの送達の間に形成されたクレータの全てによって作成された空所である。1つの実施例として、アブレート領域は、歯のう蝕部分が除去されたとき(例えば、その中に充填材料が挿入されてもよい)に作成される空所であり得る。
図2Bと2Cとの比較は、クレータサイズとパターン間隔との間の関係が、どのようにアブレーション領域の平滑度に影響を及ぼし得るかを例証する。具体的には、パターン間隔、すなわち、クレータを形成するために標的とされる場所間の間隔は、同一である(
図2A-2Eに示されるように)が、レーザパラメータは、クレータサイズが異なるように選択されることができる。したがって、その形成後のクレータ間の間隔、すなわち、結果として生じるクレータ間隔は、異なり得る。
図2Aでは、結果として生じるクレータ間隔は、小さい間隙が、アブレーションクレータ間に残されるようにもたらされる(例示的ギャップ200が、
図2A内で標識される)。これらの間隙は、少なくともいくつかの場合では、除去されない材料を表す。逆に、
図2Cでは、結果として生じるクレータ間隔は、間隙が、概して、存在しないように、異なる。したがって、他の全てが等しい場合、同一のアブレーションパターンは、
図2Aに示される1つの結果として生じるクレータ間隔、および
図2Cに示される別の結果として生じるクレータ間隔を生成する。
図2Aに示される結果として生じるクレータ間隔は、
図2Cに示される結果として生じるクレータ間隔よりもより多くの材料を残し、したがって、
図2Aに示されるように形成されたアブレーションクレータは、
図2Cに示されるアブレーションクレータよりも均一でなく、平坦でなく、かつ平滑でない。
【0064】
概して、クレータが重複かつ接していない場合、または相互に最も近接されたときに個別のクレータ境界が離間される場合、すでに1回アブレートされた領域内に、反復アブレーションが、殆どまたは全くない。これは、処置速度を最小限にさせ得る。しかしながら、結果として生じるクレータ間隔が、大きいほど、そのような重複しないクレータ間の間隙の面積が、より大きくなる。これは、処置されるべき全体領域内に処置されないいくつかの面積を残し、より粗表面を有する処置された領域をもたらし得る。そのような面粗度は、(例えば、接するクレータを維持するように)クレータサイズを減少および/またはパターン間隔を低減させることによって低減されることができ、処置されるべき領域内のクレータ数、したがって、合計処置時間を増加させ得る。隣接するクレータが、連続的に処置される場合、次の隣接するスポットをアブレートする間に組織内に誘発される熱の交換は、以前にアブレートされたスポット内のエナメル質の不要な焼焦および/または融解をもたらし得る。
【0065】
処置されるべき全体の領域が、実際にアブレートされることを確実にする1つの方法は、重複クレータを形成することである。ここで再び、組織のいくつかの部分は、いくつかの、例えば、3またはそれを上回る回数分処置され得る一方、いくつかの組織部分は、1回または2回のみ処置されればよい。したがって、重複クレータはまた、処置後に粗い組織表面をももたらし得る。加えて、重複クレータが、レーザパルスを隣接するスポットに連続的に指向することによって形成される場合、1つのスポットをアブレートする間に組織内に誘発される熱の隣接するスポットへの交換は、エナメル質の不要な焼焦および/または融解をもたらし得る。概して、1つまたはそれを上回る処置特性は、好適なパターン間隔、クレータサイズ、クレータ間隔、および/または選択されるスポットがアブレートされそれらのスポットの周囲にクレータを形成するシーケンスを選択することによって最適化されることができる。処置特性とは、処置表面の平滑度、エナメル質の焼焦または融解、全体的な処置時間、患者の感覚、処置領域に送達される合計エネルギーの関数としての体積除去率に関する処置効率等を含み得る。
【0066】
特定の性能目的を遂行するために選択される対応するパターン間隔を有する種々の他のパターンもまた、考えられる。例えば、
図5A-5Bは、歯科硬質組織を切断するために開発された、本明細書ではSP125パターンと称される、1つのパターンを定義する。
図5Aは、レーザがビーム誘導システムによって走査されるにつれて、53個のクレータが作成されるシーケンスを描写する。種々のパルスパラメータは、形成されるクレータの公称サイズ500(クレータ直径の観点から説明される)が、0.25mm±20%の公差内であるように選択される。SP125パターンに関して、隣接する標的点502間の公称パターン間隔は、0.13mm±20%の公差内である。SP125パターンに関して、連続的に標的とされる点間の公称間隔(すなわち、2つの連続して選択された標的場所間の距離)503は、0.25mm±20%の公差内である。
図5Aが示すように、隣接する標的点/場所は、必ずしも連続的に標的とされない。例証するために、クレータ27は、クレータ1と重複する(かつそれに最も近接する)。しかしながら、その周囲にクレータ1が形成された場所の後、レーザビームが指向されるすぐ隣の場所は、クレータ27の中心ではなく、代わりに、それは、クレータ2の中心である。クレータ27は、後に、すなわち、種々の他のクレータを他の場所に形成した後に形成される。この実施例では、パターンによって被覆される処置領域の公称直径504は、1.25mm±20%の公差内である。
図5Bは、SP125パターンに関するレーザ動作パラメータを提供する、表1-3を含む。
【0067】
図6A-6Bは、歯科硬質組織を切断するために開発された、本明細書ではSP100パターンと称される、別のパターンを定義する。
図6Aは、レーザがビーム誘導システムによって走査されるにつれて、24個のクレータが作成されるシーケンスを描写する。ここで再び、種々のパルスパラメータは、形成されるクレータの公称サイズ600(クレータ直径の観点から説明される)が、0.25mm±20%の公差内であるように選択される。SP100パターンに関して、隣接する標的点602間の公称パターン間隔は、0.13mm±20%の公差内である。いくつかの連続的に標的とされる点603に関して、公称間隔は、0.25mm±20%の公差内である。パターンによって被覆される処置領域の公称直径604は、1.00mmである。
図6Bは、SP100パターンに関するレーザ動作パラメータを提供する、表1-3を含む。
【0068】
図7A-7Bは、歯科硬質組織を切断するために開発された、本明細書ではSP075パターンと称される、別のパターンを定義する。
図7Aは、レーザがビーム誘導システムによって走査されるにつれて、25個のクレータが作成されるシーケンスを描写する。種々のパルスパラメータは、形成されるクレータの公称サイズ700(クレータ直径の観点から説明される)が、0.25mm±20%の公差内であるように選択される。SP075パターンに関して、隣接する標的点702間の公称パターン間隔は、0.10mm±20%の公差内である。SP075パターンに関して、連続的に標的とされる点間の公称間隔703は、0.19mm±20%の公差内である。また、パターンによって被覆される処置領域の公称直径704は、0.75mm±20%の公差内である。
図7Aに示されるように、SP075パターンは、2つまたはそれを上回るクレータの交差によって画定される、交差面積を含む。1つの例示的交差面積706が、
図7A内で標識される。
図7Bは、SP075パターンに関するレーザ動作パラメータを提供する、表1-3を含む。
【0069】
図8A-8Bは、歯科硬質組織を切断するために開発された、本明細書ではSP050パターンと称される、別のパターンを定義する。
図8Aは、レーザがビーム誘導システムによって走査されるにつれて、10個のクレータが作成されるシーケンスを描写する。種々のパルスパラメータは、形成されるクレータの公称サイズ800(クレータ直径の観点から説明される)が、0.25mm±20%の公差内であるように選択される。SP050パターンに関して、隣接する標的点802間の公称パターン間隔は、0.08mm±20%の公差内である。SP050パターンに関して、連続的に標的とされる点間の公称間隔803は、0.15mm±20%の公差内である。また、パターンによって被覆される処置領域の公称直径804は、0.50mm±20%の公差内である。
図8Aに示されるように、SP050パターンは、2つのパルス場所によって画定される、交差面積を含む。1つの例示的交差面積806が、
図8A内で標識される。SP050パターンに関する隣接する標的点間の典型的間隔は、SP075パターンに関するものよりも短いが、両方のパターン内の公称のクレータサイズは、略同一であり(0.25mm)、SP050パターン内により大きな交差面積をもたらす。
図8Bは、SP050パターンに関するレーザ動作パラメータを提供する、表1-3を含む。
【0070】
図9A-9Bは、歯科硬質組織を切断するために開発された、本明細書ではSP025パターンと称される、別のパターンを定義する。
図9Aは、レーザがビーム誘導システムによって走査されるにつれて、クレータが作成されるシーケンスを描写する。種々のパルスパラメータは、形成されるクレータの公称サイズ900(クレータ直径の観点から説明される)が、0.25mm±20%の公差内であるように選択される。SP025に関して、隣接する標的点間の公称パターン間隔は、0mm±20%の公差内、すなわち、事実上、パターン内に1つの点場所があるのみである。パターンの公称直径は、0.25mm±20%の公差内である。SP025パターン内に1つのパルス場所のみがあるため、パルス場所の全体面積が、交差面積900として考慮される。
図9Bは、SP025パターンに関するレーザ動作パラメータを提供する、表1-3を含む。
【0071】
図5A、6A、7A、8A、および9Aが、個別のパターンによって被覆される略円形の処置領域を描写するが、これは、例証にすぎず、概して、パターンによって被覆される処置領域は、任意の規則的形状(例えば、正方形、長方形、楕円形、六角形等)を有することができる、または直線区画ならびに/もしくは曲線によって境界される、ユーザ定義の不規則的形状を有してもよいことを理解されたい。
【0072】
図1に戻ると、いくつかの場合では、クレータサイズは、パルス幅の関数であるように示される。
図5A、6A、7A、8A、および9Aは、円形および直径0.25mm±20%の公差内であるクレータを示す。上記に示されるように、これは、実証のみのために使用される公称クレータサイズ(直径)である。実践では、クレータのサイズ(直径)は、いくつかのレーザパラメータ、例えば、パルス幅、パルスあたりのエネルギー、場所に指向されるバースト内のパルス数、噴霧流の数量、およびアブレートされている材料に従って変動されることができる。さらに、概して、少なくとも部分的に、選択されるパターン間隔によって画定される所与のパターンに関して、交差面積は、増加されるクレータサイズとともに増加し得る。概して、特定のアブレーションパターン幾何学形状およびクレータ間隔を前提として、より長いパルス幅、より軟質の材料、および/またはより大きなパルスエネルギーは、より大きな交差面積サイズに寄与する。
【0073】
種々の実施形態では、アブレーションクレータの作成タイミングもまた、クレータ間の間隔から独立して、またはそれに加えてのいずれかで、アブレーション性能に寄与し得る。具体的には、いくつかの事例では、パターンは、2つの場所で形成されるクレータが当接している場合、少なくとも部分的に、1つの場所での1つのパルスバースト(1つまたはそれを上回るパルスを含み得る)の終了と、隣接する場所での別のパルスバーストの開始との間で経過すべき最小量の時間によって、画定され得る。本明細書で使用されるように、当接する場所とは、形成されたクレータが相互に重複し、相互に接している場所、またはクレータ境界が規定された最大距離によって離間されている、最も近接した点を指す。概して、レーザエネルギーを場所に指向することは、特に、2つの隣接した場所で形成されたクレータが当接クレータである場合、隣接する場所に及ぼす熱効果を有する。具体的には、1つの場所において組織内に誘発される熱は、流動し、隣接する場所における組織に影響を及ぼし得る。
【0074】
エナメル質をアブレートするとき、(1つまたはそれを上回るレーザパルスを有する)1つのレーザパルスバーストの終了と、同一または隣接する場所に指向される別のレーザパルスバーストの開始との間の時間量が、閾値最小時間量未満である場合、他のレーザパルスバーストは、リキャスト(処置領域を中心としたアブレートされた材料の再形成)、すなわち、中程度から重度のアブレートされない組織の融解および/または隆起をもたらし得る。象牙質をアブレートするとき、そのような負の効果は、象牙質の焼焦または炭化を含み得る。これらの負の効果は、いくつかの事例では、アブレートされない組織内の意図されない熱蓄積の結果である。
【0075】
ビーム誘導システムを組み込む歯科レーザシステムに関する臨床的に実行可能なパラメータを達成するための以前の試みが、米国特許出願公開第2014-0363784A1号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明される。これらの以前の試みは、長い遅延(例えば、1msを上回る)および同一または第2の隣接する場所における複数のパルスの第2のバーストが後に続く、単一の場所における複数のレーザパルスのバーストの使用を説明する。典型的には、これらのバーストは、例えば、1kHzを上回る、いくつかの場合では、5kHzを上回る高い周波数で実行される。このバーストモードは、例えば、約40μsのパルス幅を用いて約10mJ等のより低いパルスあたりのエネルギーを可能にし、臨床的に実行可能な周波数を達成した。
【0076】
図10は、パルス幅の関数として、ヒトのエナメル質の材料除去効率関する例示的データを示す、グラフ1000である。
図10に示されるデータは、9.3ミクロンの波長と約400Wの間のピーク電力とを有するレーザシステムの平均電力、アブレーション時間、および噴霧流を一定に保持することによって収集された。グラフ1000は、エネルギーあたりの除去体積(μl/Joule)を表す垂直軸1002と、パルス幅(μs)を表す水平軸1004とを有する。
図10は、材料が、より長いパルス幅に対して、より効率的に除去される(すなわち、レーザエネルギーあたり、より多くの質量が除去される)ことを示す。パルスエネルギーは、典型的には、近直線関係にあるパルス幅に関連し、そのため、
図10から、より大きなパルスエネルギーは、概して、より高い材料除去効率を生成することが、理解され得る。
図11は、
図10において使用されるものに匹敵するレーザシステムに関するパルス幅とパルスエネルギーとの間の関係を示す、例示的データである。概して、周辺加熱は、パルス幅が標的材料の熱緩和時間よりも著しく長い、例えば、10または20倍長い場合、より長いパルス幅において生じる。エナメル質での9.3μmレーザパルスに対する熱緩和時間は、約2μsである。したがって、より長いパルス幅(例えば、約100μs)はまた、材料除去においてより効率的である一方、パルス幅が、アブレートされるべき材料の熱緩和時間の最高10倍、最高20倍、最高50倍等である場合、より短いパルス幅(例えば、5~50μs)よりもアブレートされない組織をもより加熱し得る。
【0077】
種々の実施形態では、レーザエネルギーは、パルス幅が、効率的な切断をもたらし得る、単一のレーザパルスを用いて組織をアブレートするために十分に長くあるように送達される。しかしながら、融解または他の負の効果を回避するために、特定の場所または隣接する場所における連続的なパルス間の時間量は、米国特許出願公開第2014-0363784A1号に説明されるバーストパルス技術内で使用されるものを超えて増加されてもよい。例えば、SP1.25パターンは、単一のレーザパルスを用いて組織をアブレートするために十分に長いパルス幅を有するパターンである(「SP」は、単一のパルスの簡略表記法であり、本明細書において言及される全てのSPパターンは、この特性を有する)。SP1.25パターンに関する任意の所与の交差面積に対するアブレーション間の最小時間量は、約0.8mSである。SP1.25パターンに関する点毎に単一パルスを用いる、層毎のアブレーションにおける連続アブレーション層内の同一場所の連続アブレーション間の最小時間量は、パターンを反復するためにかかる時間量と等しく、これは、SP1.25に関して、約52msである。これらの時間は、例証にすぎず、これらの時間は、概して、選択されるパターン間隔、クレータ直径、結果として生じるクレータ間隔、連続的に標的とされる点/場所間の間隔、および1つまたはそれを上回るレーザパルスパラメータのうちの1つもしくはそれを上回るものに依存し得ることを理解されたい。これらの時間は、レーザバーストパターン内で使用されるバーストの個々のパルス間の時間量より大幅に長い。種々のSPパターンに関連する例示的タイミング変数を示す表が、
図13に示される。
【0078】
図12は、4つの異なるレーザパターンを用いたアブレーション後のエナメル質サンプルの調製壁から撮影された、共焦点顕微鏡画像を示す。これらのパターンは、本明細書では以下の標識、すなわち、1.25XC、1202、1.25M、1204、象牙質1.00、1206、およびSP1.00、1208を伴って称される。これらのレーザパターンのうちの3つ(1.25XC、1202、1.25M、1204、および象牙質1.00、1206)は、バーストパルス方法を用いて作成され、単一交差面積または単一パルス場所において複数のレーザパルスを用いて迅速に連続的に(例えば、0.4ms未満、典型的には、0.2mS未満)衝打される。4番目のパターン、すなわち、SP1.00、1208は、場所あたり単一パルス方法を用いて作成される。SP1.00、1208の調製壁は、他の3つ、すなわち、1202、1204、および1206よりも、より一様、均一、および平坦である。直線状の調製壁は、それが、修復物と歯科組織との間により良好なシールを可能にするため、従来から修復物のために望ましい。
【0079】
上記の通り、クレータ間隔は、アブレーション領域の平滑度に及ぼす影響を有する。具体的には、小さいサイズ(直径)を有する重複クレータまたは当接クレータは、処置表面の平滑度を増加させ得る。しかしながら、当接クレータ(すなわち、重複する、接する、または接近して離間されたクレータ)を連続して形成することは、エナメル質の融解または象牙質の焼焦等の不要な副作用をもたらし得る。これは、下記に説明されるように、当接クレータが、概して、連続して形成されないクレータパターンを形成するためのシーケンスを選択することによって回避することができる。
【0080】
図14A-14Bは、異なるパターンを用いて切断されたアブレーション領域の平滑度を、3つの単一のパルスパターン(SP0.75、SP1.00、およびSP1.25)ならびに3つのバーストパルスパターン(XC0.75、XC1.00、およびXC1.25)を用いて切断されたアブレーション領域内の表面粗度に関する例示的データを提供することによって定量化する。特に、
図14A-Bは、これらのパターンのそれぞれによって切断されたアブレーション領域内の表面特徴の寸法のデータ測定値を示す表である。示されるように、単一のパルスパターンのそれぞれに関する高さパラメータは、対応するバーストパルスパターンに関する高さパラメータよりも小さく、これは、単一のパルスパターンは、バーストパルスパターンよりもより平滑なアブレーション領域を提供することを示す。
図14Aは、ウシのエナメル質上の測定された表面特徴を示し、
図14Bは、ウシの象牙質上の測定された表面特徴を示す。
図14A-14Bからのサンプルのフラクタル尺度分析プロット図が、それぞれ、
図15Aおよび
図15B内に提供される。フラクタル尺度分析が、米国特許第5,307,292号(参照することによって本明細書に組み込まれる)において説明される。要約すると、フラクタル尺度表面分析では、測定される表面は、共通面積の三角形を伴うモザイク式であり、測定される面積の突出された面積によって分割される全ての三角形の面積の総計の比率が、見出される。比率は、多数の三角形サイズまたは規模に対して計算される。
図15Aを参照すると、ウシのエナメル質内の面粗度を図示するグラフ1500は、比率(単位なし)を表す垂直軸1502と、規模(平方ミクロン)を表す水平軸1504とを有する。概して、比率が高いほど、測定表面は、より粗くなる。グラフ1500は、いくつかの異なるパターンを使用する調製から結果として生じるウシのエナメル質表面の分析を示す。異なるパターンが、
図14Aに記載されるものと同一であり、そして場所パターンあたりの単一のパルス、すなわち、SP0.75、1506、SP1.00、1508、およびSP1.25、1510、ならびに場所あたりの複数のパルスを有するパターン、すなわち、XC0.75、1512、XC1.00、1514、およびXC1.25、1516を含む。場所パターンあたりの複数のパルスと比較されるとき、単一のパルスパターンは、全ての規模において、ウシのエナメル質内により低い比率を生成することを理解されたい。
【0081】
ここで
図15Bを参照すると、ウシの象牙質内の面粗度を図示するグラフ1520は、比率(単位なし)を表す垂直軸1522と、規模(平方ミクロン)を表す水平軸1524とを有する。グラフ1520は、いくつかの異なるパターンを使用する調製から結果として生じるウシの象牙質表面の分析を示す。異なるパターンが、
図14Bに記載されるものと同一であり、場所パターンあたりの単一のパルス、すなわち、SP0.75、1526A、酸エッチングを伴うSP0.75、1526B、SP1.00、1528A、酸エッチングを伴うSP1.00、1528B、SP1.25、1530A、および酸エッチングを伴うSP1.25、1530B、ならびに場所あたりの複数のパルスを有するパターン、すなわち、象牙質0.75、1532A、酸エッチングを伴う象牙質0.75、1532B、象牙質1.00、1534A、および酸エッチングを伴う象牙質1.00、1534Bを含む。場所パターンあたりの複数のパルスと比較されるとき、単一のパルスパターンは、全ての規模において、ウシの象牙質内により低い比率を生成することを理解されたい。
【0082】
加えて、種々の実施形態では、単一のパルスパターンは、バーストパルスパターンよりもより迅速な材料除去率を達成する。例えば、
図16は、種々のパターンに対する質量除去率に関する例示的データを示し、場所あたりの単一のパルスを有するパターン1602と、場所あたりの複数のパルス(単一のバースト)を有するパターン1604とを含む、グラフ1600である。グラフ1600は、質量除去率(mg/秒)を表す垂直軸1606を有する。このデータは、各パターンが、約2×2×4mmの寸法を有するエナメル質の歯のサンプルを切断する間、時間と重量との測定値を収集することによって生成された。
図16では、1.00M(平滑)、1.25M(平滑)、1.00XC、および1.25XCの標識は、異なるパターン間隔/幾何学形状を指す。1.25M(平滑)パターン/幾何学形状は、1つの事例では、各バーストが、場所あたり12個のパルスを印加したパルスのバーストを使用して、また別の事例では、場所あたり単一のパルスを使用して処置されるべき領域を切断するために使用された。同様に、1.00M(平滑)パターン/幾何学形状は、1つの事例では、各バーストが、場所あたり6個のパルスを印加したパルスのバーストを使用して、また別の事例では、場所あたり単一のパルスを使用して処置されるべき領域を切断するために使用された。
図16に示されるように、結果は、パターン毎に、単一のパルスアブレーションが、複数のパルスバーストモードアブレーションを使用する同一のパターンを使用して達成される率の2倍を上回る材料除去を達成したことを示す。エナメル質アブレーションの間、プラズマとアブレート材料とを含むレーザプルームが、多くの場合、クレータ上方に形成される。いくつかの実施形態では、単一のパルスパターンは、同一の場所に指向されない連続パルスを用いてレーザプルームを正常に回避する。バーストパターンは、プルームを回避し損ね、レーザビームをプルームによって減衰させ、材料除去効率を低下させ得る。
【0083】
前述で議論されるように、単一のパルスアブレーションモードは、概して、典型的には、90μsより短い(例えば、40~90μs、20~40μs、2~20μs)、バーストモードアブレーション内で使用されるパルス幅より長いパルス幅(例えば、100μsを上回る)を使用する。単一のパルスは、組織の一部をアブレートし除去することができるが、単一のパルスは、多くの場合、所望される深度および/または横断面積に到達するために十分な材料を除去しない。単一のパルスは、所望される深度より小さい深度まで材料を除去し得る。例えば、いくつかの実施形態によると、単一のパルス材料除去深度は、1~100ミクロンである。所望される深度(例えば、0.2mm、0.5mm、1mm、またはそれを上回るもの)を達成するためには、いくつかの場合では、1つまたはそれを上回る付加的なパルスを同一のスポットに送達することが必要である。単一のパルスを使用して形成され得るよりもより幅広いおよび/またはより深いクレータを形成するためには、いくつかの場合では、1つまたはそれを上回る付加的なパルスを隣接するスポットに送達することが必要である。単一のパルスの同一のスポットまたは隣接するスポットへの送達を反復することは、バーストモードでは各個々のパルスが、アブレーションをもたらすように設計されず、代わりに、いくつかのパルスが、集合的にアブレーションをもたらすように設計されるため、パルスのバーストモード送達と異なる。しかしながら、単一のパルスモードでは、パルスが、反復されるかどうかにかかわらず、各パルスが、少なくともいくつかの組織材料をアブレートするように設計される。
【0084】
種々の事例では、患者は、バーストモードが、40μsを上回るパルス幅と併用されるとき、負の感覚をより感知する可能性が高くなり得る。比較すると、バーストモードを使用する処置の間に不快感を感知した同一の患者は、90μsまたはより長いパルス幅を有する単一のパルスモードを使用する手技全体を、概して、不快感および麻酔がない状態で行わせることができた。
【0085】
上記の通り、種々の実施形態では、同一のまたは隣接するスポットに指向されるレーザパルスもしくはバースト間の時間インターバルは、性能に影響を及ぼし得る。これらの効果は、1つの場所のみを有するレーザパターンを検査することによってさらに説明され得る。
図17は、ヒトのエナメル質表面上での1,000回分の連続衝打を含有する単一の場所レーザパターンの性能を図示する。レーザオン時間が、水平軸に沿って示される。本明細書において使用されるように、レーザオン時間は、レーザが、発火するようにコマンドされるある量の時間を指す。一般に、レーザは、レーザオン時間が、対応する光学パルスのオン時間の持続期間と厳密に等しくならないように防止する遅延を有する。例えば、1KHzまたはそれを下回る繰り返し周波数に対して、E-150iレーザは、約7.4μsの遅延を有する。したがって、100μsレーザオン時間は、概して、92.6μsの光学パルスオン持続期間に対応する。
【0086】
図17では、レーザオフ時間が、レーザオン時間に依存する遷移範囲未満であるとき、エナメル質をアブレーションし著しい融解表面をもたらす、100、80、60、および40μsのレーザオン時間が、示される。遷移範囲とは、40倍の倍率下での長時間処置(例えば、5秒を上回るもの)の間、可視融解を殆どから全くもたらさず、かつ存在するいかなる融解も表在的であるレーザオフ時間の範囲として、定義される。遷移範囲を上回るレーザオフ時間を有する処置は、40倍倍率において、概して、融解がない状態を示す。
図17から、いくつかの事例では、融解を防止するために要求されるレーザオフ時間は、少なくとも部分的に、(パルス幅および/またはパルスエネルギーの測定値であり得る)レーザオン時間に依存することが理解され得る。例えば、より短いレーザオン時間に関して、融解を防止するために必要とされる要求されるレーザオフ時間は、より短い。
【0087】
いくつかの組織材料をアブレートすることができる個々のパルスは、周囲組織の一部を加熱し得るが、そのような周囲組織は、アブレートされていない。周囲組織材料が、実質的に冷却される前に、別のパルスが、同一のまたは隣接するスポットに送達される場合(例えば、切断を深化および/または拡張させるために)、他のパルスは、周囲組織をさらに加熱し、その融解または焼焦をもたらし得る。この有害作用は、同一のまたは隣接するスポットに送達される連続パルス間に十分な時間の遅延がある場合、回避または最小限にされることができる。組織材料の熱緩和時間の倍数(例えば、2、5、10、20倍等)である時間遅延は、十分な時間遅延であり得る。十分な時間遅延の別の実施例は、単一の場所においてパルス出力するときに融解を防止するために要求されるレーザオフ時間である。いくつかの実施形態では、同一のまたは隣接するスポットに送達される連続バースト間に、十分な時間遅延が、導入される。
【0088】
連続する個々のパルス間または連続するバースト間に十分な時間遅延を導入することは、不要な組織融解または焼焦を回避するか、または最小限にするという観点から有益であるが、全体的な処置時間を増加させ得る。これはまた、レーザパルスが、放射されていないが、レーザ源が、充電されるか、または電源がオンにされることを必要とし得るため、システムの効率をも減少させ得る。いくつかの実施形態では、両方の種類の負の効果、すなわち、不要な融解/焼焦および増加される処置時間/減少されるシステム効率は、(
図2Bに示されるもののような)特定のシーケンスに従って、選択されるパターン(
図2C-2E、5A、6A、7A、8A、および9Aに示されるパターン等)に対応する標的スポットを横断することによって、回避されるか、または少なくとも最小限にされる。
【0089】
選択されるシーケンスでは、連続する個々のパルスまたはバーストは、当接(すなわち、重複する、接する、または離間される)クレータが形成される隣接するスポットに指向されない。例えば、
図2Bを参照すると、パルス/バースト「1」と示される個々のパルスまたはバーストが、クレータ202を形成するためのスポットに指向され、次の7個の個々のパルスまたはバーストが、クレータ204、206、208が形成される、同一または隣接するスポット以外のスポットに指向される。それらの付加的な7個のパルス/バーストに続く個々のパルスまたはバーストは、パルス/バースト「9」と示され、クレータ208が形成される隣接するスポットに指向される。同様に、パルス/バースト「2」が、クレータ210が形成されるスポットに指向される後、次のパルス/バースト「3」が、同一のまたは隣接するスポットに指向されず、代わりに、クレータ212が形成される非隣接スポットに指向される。その後は、パルス/バースト「3」に続くパルス/バースト「4」が、クレータ214が形成される、クレータ210に隣接するスポットに指向される。
【0090】
したがって、2つのパルス/バーストの対が、同一のまたは隣接するスポットに指向される場合、2つのパルス/バーストに介在する少なくとも1つのパルス/バーストが、非隣接スポットに指向される。種々の実施形態では、パルス/バースト期間は、アブレートされる材料の熱緩和時間の選択倍数を上回る。いくつかの実施形態では、少なくともk個のパルス/バースト(kは、1を上回るものである)が、非隣接スポットに指向される。例えば、kは、2、5、7、10等であり得る。これらの実施形態では、k×パルス/バースト期間は、アブレートされる材料の熱緩和時間の選択倍数を上回る。したがって、標的スポットを横断するこれらのシーケンスは、クレータを取り囲む組織の十分な冷却を可能にし、組織の不要な焼焦および融解を最小限にするか、または回避することができる。1つまたはそれを上回る、介在パルス/バーストは、処置されるべき領域内の別の場所に指向され、それらの他の場所においてクレータを形成し、選択パターンに従う。したがって、全体的な処置時間は、連続するパルス/バーストを同一のおよび/または隣接するスポットに指向することと比較すると、実質的に(例えば、1%、2%、5%、10%、20%等を上回って)、増加しないかも知れない。これはまた、処置効率における減少をも最小限にするか、または回避することができる。
【0091】
種々の実施形態では、個々のレーザパルス/バーストは、特定のシーケンスで送達され、同一の場所または隣接する場所に送達される個々のパルス/バーストの対間の最小インターバルを維持し、例えば、システムの体積除去率を最大限にする等、システム効率を増加させる一方、不要な焼焦/融解を回避する/最小限にさせることができる。
図2Bを再度参照すると、1つの実施形態では、レーザオン時間は、約40μs(すなわち、1%、2%、5%、10%、20%等の公差を伴う40μs)である。故に、融解を防止する、または最小限にさせるための、同一のまたは隣接するスポットに指向される個々のパルス/バースト間の最小閾値は、1%、3%、8%、10%、20%等の公差を伴う3.0msである。したがって、各パルス/バーストが、相互に非隣接のスポットに指向される、3.0ms時間期間内の8個の個々のパルス/バーストを有するシーケンスは、歯科エナメル質の融解を防止するか、または最小限にさせる一方、約2.7kHzの、すなわち、1%、2%、5%、10%、20%等の公差を伴う2.7kHzの全体的なパルス反復またはバースト率を達成することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、レーザは、40μsあたり平均12mJのオン時間パルスを生成し、したがって、約2.7kHzで動作するレーザの最大平均電力は、約32Wである。概して、概算体積除去率は、ジュールあたりの除去エナメル質体積(μL×10
-6/J)によって乗算される平均レーザ電力(W)に略等しい。レーザオフ時間の関数としての、レーザエネルギーあたりの除去体積に関する例示的データは、
図19A内に提供される。
【0093】
上記の実施例の収率に関するデータを用いた等式を使用すると、
【化1】
である。交差パルス間の閾値インターバルは、3.0msであるため、本例示的パターンは、エナメル質の著しい融解を生成しない。本明細書で使用されるように、著しい融解とは、レーザビームが指向されるスポットの規定される距離内のエナメル質体積の0.5%、1%、5%、10%、12%、20%等より多いものの融解を意味する。規定される距離は、クレータの約半径、例えば、0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.23mm、0.25mm、0.3mm等であり得る。概して、種々の実施形態では、任意の数の介在パルス/バースト場所(例えば、1~10個の範囲内、10~20個の範囲内、20~50個の範囲内、50~100個の範囲内等)が、使用される。いくつかの実施形態では、介在パルス/バースト場所の数は、パターン内のいくつかのパルス場所に関連する。例えば、約50個のパルス場所を有するパターンは、典型的には、パターン内の各隣接するパルス場所間に8~12個のみの介在パルスを有する。約25個のパルス場所を有するパターンは、典型的には、パターンの各隣接するパルス場所間に4~6個のみの介在パルスを有する。約12個のパルス場所を有するパターンは、典型的には、パターン内の各隣接するパルス場所間に2~3個のみの介在パルスを有する。いくつかの実施形態では、非隣接標的場所の数は、2つの隣接する場所の全ての対間の時間が、最大限にされるように選択される。いくつかの場合では、2つの隣接する場所の全ての対間の平均時間が、最大限にされる。
【0094】
図18Aは、それぞれが10個のレーザパルスを単一の場所に指向することによって形成された、9個のクレータを示す、共焦点顕微鏡によって撮影されたヒトの臼歯の画像を描写する。
図18Bは、それぞれが20個のレーザパルスを単一の場所に指向することによって形成された、9個のクレータを示し、
図18Cは、それぞれが30個のレーザパルスを単一の場所に指向することによって形成された、9個のクレータを示す。27個の症例のそれぞれにおいて、各レーザパルスのオン持続期間は、40μsである。
図18A内のクレータ毎に、
図18A内の表が、個別のレーザオフ時間を示す。
図18Bおよび18Cはそれぞれ、個別の図内に表示される異なるクレータに関するレーザオフ時間を示す表を含む。18A-Cに示されるヒトの臼歯は、平坦かつ画像平面と平行であるように研磨された。
図18A内の10個のパルスクレータのいかなるもの内にも、非常に少ない融解が、存在するか、または全く存在しない。融解が、
図18B-C内の20個および30個のパルスクレータ内で、500、1,500、および2,000μsのレーザオフ時間において視認可能である。上記に説明され、かつ
図17に描写されるように、融解は、長時間照射(例えば、1,000回またはそれを上回る連続する40μsパルス)の間の2,500μsのレーザオフ時間において、僅かに視認可能であった。
【0095】
図18Cに示される30個のパルスクレータの体積測定値が、各クレータの共焦点顕微鏡画像から導出された。レーザオフ時間の関数として、除去されたエナメル質の体積を示すグラフが、
図19A-Bに示される。ジュールあたりの除去体積は、アブレーション効率の測定値を提供し得、パルスあたりの所与のエネルギーおよび所与のパルスオン持続期間に対する、単位量の時間内に処置されるべき材料に送達される合計レーザエネルギーは、レーザオフ時間を変動させることによって変動されることができる。
【0096】
いくつかの場合では、アブレートされるべき組織内の残留熱の一部は、実際は、次のパルスが、材料が完全に冷却する前に送達される場合、そのアブレーションを促進し得る。これが正しい場合、より長いオフ時間と比較すると、ある量の材料をアブレートするために、より短いオフ時間が、より少ないパルス、すなわち、より少ないエネルギーを要求し得る。その場合、体積/エネルギー比率は、オフ時間が減少するにつれて、増加するであろう。これは、周囲組織内の残留熱が融解をもたらし始めるときを変更し始めるであろう。例えば、
図19Aを参照すると、融解が、オフ時間1.5msにおいて存在し、融解が、2.0msにおいて存在しない。但し、オフ時間2.0msにおいて、μmLの材料をアブレートするために、オフ時間が2.5ms、3ms等であるときに同一の量をアブレートするために要求されるパルス数(およびエネルギー)よりも少ないパルス(故に、少ないエネルギー)が、要求されるであろう。
【0097】
図19Aを参照すると、より短いレーザオフ時間が、概して、単位エネルギーあたりより多くの除去体積をもたらす。いくつかの場合では、単位エネルギー比率あたり最も多い除去体積はまた、アブレートされたクレータを取り囲む組織の最も多い量の融解に対応する。したがって、レーザオフ時間は、アブレーション効率を最大限にする一方、材料の一部の不要な融解を最小限にさせるか、または回避するように選択されてもよい。実施例として、
図19Bは、単一の場所への長時間レーザ照射(例えば、2.5msを上回るもの)の間に著しい融解を生成しないことが予期されるレーザオフ時間が、同一のレーザオン時間に対する単位エネルギーあたりの最大の体積除去の約60%に対応することを示す。
【0098】
オフ時間は、個々のパルスまたはバーストが、1つのスポットのみに送達されるとき、便宜的な測定値であることを理解されたい。したがって、このオフ時間は、本明細書では、単一場所オフ時間と称される。いくつかの実施形態では、1つのパルス/バーストを選択されるスポットに送達した後、別のパルス/バーストを選択されるスポットに送達する前に、1つまたはそれを上回る介在パルスもしくはバーストが、選択されるスポットに隣接していない1つまたはそれを上回るスポットに送達される。これらの実施形態では、パルスまたはバーストのオフ時間は、単一場所オフ時間未満であり得る。代わりに、これらの実施形態では、1つまたはそれを上回る介在パルス/バーストの持続期間は、少なくとも単一場所オフ時間と等しくあるべきである。
【0099】
上記の通り、レーザパルスが送達された後、アブレートされるクレータの中およびその周辺の組織が、加熱される。リキャスト融解および他の不要な表面効果を防止するために、同一の場所を再度アブレートする前に、ある時間インターバルにわたって待機することが、重要である。クレータを取り囲む面積がまた、加熱され、表面修正を防止するために、隣接する場所のアブレーションに先行して冷却インターバルを要求するであろう。
図20に示される例示的パターンは、冷却インターバルに及ぼす間隔の効果を図示するために使用される。
図20は、六角形状の円充塞配列に配列される7個の点のパターンを示す。隣接する点間の間隔は、0.1mmであるように示されるが、このパラメータは、(以下に説明されるように)変動されることができる。
図20の点線は、レーザがこれらの7つの場所を横断するにつれてビーム誘導システムがとる経路を図示する。この例示的例証的パターン内の点のシーケンスは、各レーザパルスが、すぐ前の場所に隣接する場所に指向されるように成されている。
【0100】
図20に示されるパターンは、抜歯されたヒトの臼歯をアブレートするために使用された。隣接するパルス場所間の間隔は、0.1mm~0.3mmで変動され、レーザオン時間もまた、40μs~120μsで変動された。パターンは、アブレーションの間、約1,000回反復された。間隔とレーザオン時間との各組み合わせにおいて、隣接するパルス間の時間は、アブレーションが、視認可能に存在する融解なく発生するまで修正された。結果が、21A-21Bに示される。
【0101】
図21Aを参照すると、融解を防止するために判定された隣接する場所へのレーザパルス/バーストの指向間のインターバルが、場所間の間隔およびレーザオン時間の両方の関数であるように示される。概して、相互により近接する隣接する場所が、連続するパルス/バースト間のより多くの時間を要求するのに対して、さらに離間されるパルス標的場所は、連続するパルス/バースト間のより少ない時間を要求する。より大きい間隔は、レーザが、融解をもたらすことなくより高い繰り返し周波数で発火することを可能にすることが、理解され得る。
図21Bは、
図21Aと同一の結果を図示するが、最大のレーザパルス繰り返し周波数を示す代わりとして、データは、視認可能に存在する融解なく達成し得るパルス間の最小のインターバルを示す。
図21Aおよび
図21Bは両方とも、より長いレーザオン時間が、融解を防止するために当接する場所に作用する、パルス間のより大きいインターバルを要求することを示す。融解閾値に影響を及ぼすことに加え、本開示に従ってパターン幾何学形状およびシーケンスを修正することは、処置の間、患者に感知される感覚に良好な影響を及ぼした。
【0102】
上記で言及されるように、レーザ歯科処置の利点は、多数の手技に対して局所麻酔が要求されないことである。連続かつ隣接するパルス場所間の時間および距離を増加させることはまた、患者の感覚を低減させることを促進することが見出された。歯科レーザ処置感覚に関して、0~10の不快感尺度が、用いられ、0は、感覚なし、1~3は、冷たいまたは送風感覚、3~5は、僅かに不快、6~8は、不快、および8~10は、苦痛である。平均2.17の基準線値が、
図5A、6A、7A、8A、および9Aに説明されるものと同様のシーケンスを有するパターンを用いて見出された。
図2Bに説明されるもののようなシーケンスを有するパターンが採用されたとき、平均感覚値が、0.92に低下した。したがって、シーケンスは、近傍のパルス場所間の時間量を増加させるように修正されるとき、患者感覚に良好な影響を及ぼすことが見出された。したがって、本開示に従ったレーザパラメータの選択は、長年にわたって歯科訪問の自然の不随物であった苦痛および恐怖感を扱うことに役立つであろう。
【0103】
オフ時間は、個々のパルスまたはバーストが、1つのスポットのみに送達されるとき、便宜的な測定値であることを理解されたい。したがって、このオフ時間は、本明細書では、単一場所オフ時間と称される。いくつかの実施形態では、1つのパルス/バーストを選択されるスポットに送達した後、別のパルス/バーストを選択されるスポットに送達する前に、1つまたはそれを上回る介在パルスもしくはバーストが、選択されるスポットに隣接していない1つもしくはそれを上回るスポットに送達される。これらの実施形態では、パルスまたはバーストのオフ時間は、単一場所オフ時間未満であり得る。代わりに、これらの実施形態では、1つまたはそれを上回る介在パルス/バーストの持続期間は、少なくとも単一場所オフ時間と等しくあるべきである。
【0104】
従来のパターンと比較される単一のパルスパターンの利点は、1つのパラメータ、すなわち、バーストパルス周波数が、排除されることである。単一のパルスパターンでは、レーザバースト内のパルス繰り返し周波数は、もはやオペレータ(例えば、歯科医)によって設定または制御される必要がない。さらに、いったん交差パルス間の最小閾値時間が定義されると、このパラメータは、オペレータが使用の間このパラメータを設定または修正する必要がないため、ハードコードもしくはアクセス不可能にされることができる。したがって、単一のパルス化レーザパターンは、オペレータによって、1つのパラメータ(例えば、パルス幅)を変調させることによってのみ制御され得る。いくつかの実施形態では、パルス幅の変調は、直観的かつ実効的なユーザ経験を提供する可変型の入力デバイス(例えば、フットペダル)を通して実施されてもよい。
【0105】
種々の実施形態では、本明細書に説明されるパターンを送達するレーザビームは、少なくとも部分的に、そのフルエンスによって定義され得る。フルエンスは、エネルギー密度の有用な測定値であり、焦点におけるレーザビームの横断面面積によって除算される、パルスあたりのエネルギー量として定義されることができる。多重パルスの状況では、平均パルスエネルギーが、多くの場合、使用される。平均パルスエネルギーは、レーザエネルギー計によって直接的に測定され得る。加えて、それは、レーザ電力および平均レーザ繰り返し周波数から平均パルスエネルギーを導出するいくつかの状況において有利である。パルスあたりの平均エネルギーは、平均繰り返し周波数によって除算される平均レーザ電力に等しい。焦点におけるレーザビームの面積は、焦点(すなわち、ウエスト)におけるレーザビームのビーム幅に依存する。レーザビームは、レーザビームの横断面を横断するエネルギー量を説明する、エネルギープロファイルを有する。トップハット型プロファイル等のいくつかのエネルギープロファイルは、レーザビームの縁においてエネルギー内の非常に急勾配の低下を有し、ビーム幅測定に関して明確な境界を提供する。しかしながら、大部分のレーザビームは、Gaussianまたは近Gaussian形状を伴うエネルギープロファイルを有する。非トップハット型ビーム内のビーム幅を測定するために、種々の技術または規格が、一貫性を保つために使用される。これらの技術は、半値全幅(FWHM)、1/e2幅、D4σまたは二次モーメント幅、90/10等のナイフエッジ幅、およびD86幅を含み、これらの全ては、当業者によって公知の技術である。
【0106】
いくつかの事例では、本明細書に説明される実験およびパターンは、単一の集束点サイズを使用した。実験およびパターンのいくつかに関して、集束スポットのサイズは、90/10ナイフエッジ方法を使用して、約0.25mmであると測定された。集束スポットサイズが、Gaussian型であったと仮定して、これらのスポットは、約0.39mmの1/e2幅を有すると言うことができる。
【0107】
本明細書で採用される用語および表現は、限定ではなく、説明のための用語および表現として使用され、そのような用語ならびに表現の使用において、図示および説明される特徴またはその一部のいかなる均等物をも除外することを意図するものではない。加えて、本発明のある実施形態が説明されたが、本明細書に開示される概念を組み込む他の実施形態が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく使用され得ることが、当業者に明白である。種々の実施形態の構造的特徴および動作機能は、種々の組み合わせおよび並び替えで配列され得るが、全てのものが、本開示発明の範囲内にあると考慮される。故に、説明される実施形態は、全ての点で、例証にすぎず、制限的なものではないと考慮されるべきである。さらに、本明細書に説明される構成、材料、および寸法は、例証であり、いかようにも限定的であると意図されない。同様に、物理的な説明が、説明の目的のために提供されているが、いかなる特定の理論または機構にも拘束される、もしくは本明細書による請求項を限定することをも意図するものではない。
【外国語明細書】