(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036284
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】統合制御装置を備える植込み可能な血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/165 20210101AFI20220225BHJP
A61M 60/232 20210101ALI20220225BHJP
A61M 60/804 20210101ALI20220225BHJP
A61M 60/816 20210101ALI20220225BHJP
A61M 60/88 20210101ALI20220225BHJP
A61M 60/411 20210101ALI20220225BHJP
A61M 60/422 20210101ALI20220225BHJP
【FI】
A61M60/165
A61M60/232
A61M60/804
A61M60/816
A61M60/88
A61M60/411
A61M60/422
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004373
(22)【出願日】2022-01-14
(62)【分割の表示】P 2020000324の分割
【原出願日】2015-05-14
(31)【優先権主張番号】14/308,177
(32)【優先日】2014-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516379412
【氏名又は名称】シーエイチ バイオメディカル(ユーエスエイ)、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ケミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チェン
(72)【発明者】
【氏名】リン、フランク
(57)【要約】
【課題】植込み可能なポンプ装置を提供する。
【解決手段】植込み可能なポンプ装置は、ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、ポンプ・モータを動作させるためのモータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、及びポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、植込み可能なポンプ装置に電力を提供し、電力及び制御装置モジュールと体外モニタとの間で情報及び/又は制御信号をやりとりするように適合された2本の共用リード線を含む経皮ケーブルとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込み可能なポンプ装置であって、
ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、
前記ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、前記ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、及び前記ポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、
前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供し、前記電力及び制御装置モジュールと体外モニタとの間で情報及び/又は制御信号をやりとりするように適合された2本の共用リード線を含む経皮ケーブルと
を備える、植込み可能なポンプ装置。
【請求項2】
前記経皮ケーブルが、前記2本の共用リード線以外に追加的なリード線を含まない、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記体外モニタが、高周波数搬送波信号を前記2本の共用リード線上で電力信号上に重ね合わせるように適合され、前記高周波数搬送波信号が、前記情報及び/又は制御信号を含むように変調される、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記ポンプ・モータは、三相電気モータを備える、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記ポンプ本体の中に磁気ベアリングを更に含み、
前記電力及び制御装置モジュールが、前記磁気ベアリングに電力を供給するように適合された第2の電力電子機器回路構成、及び前記磁気ベアリングを制御するように適合された第2の制御回路構成を含む、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記経皮ケーブルが、前記ポンプ・モータ及び/又は前記磁気ベアリングを駆動するために前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供するための前記2本の共用リード線のみを備える、請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記経皮ケーブルが、前記2本の共用リード線以外に追加的なリード線を含まない、請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記体外モニタが、高周波数搬送波信号を前記2本の共用リード線上で電力信号上に重ね合わせるように適合され、前記高周波数搬送波信号が、前記情報及び/又は制御信号を含むように変調される、請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項9】
植込み可能なポンプ装置であって、
ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、
前記ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、前記ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、前記ポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成、及び体外モニタの中の第2の無線通信回路構成との無線通信用に適合された前記植込み可能なポンプ本体の中の第1の無線通信回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、
前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供するように適合された2本の電力リード線を含む経皮ケーブルと
を備える、植込み可能なポンプ装置。
【請求項10】
前記経皮ケーブルが、前記2本の電力リード線以外の追加的なリード線を含まない、請求項9に記載のポンプ装置。
【請求項11】
前記ポンプ本体の中に磁気ベアリングを更に含み、
前記電力及び制御装置モジュールが、前記ポンプ本体の中に取り囲まれ、前記磁気ベアリングに電力を供給するように適合された第2の電力電子機器回路構成、及び前記磁気ベアリングを制御するように適合された第2の制御回路構成を含む、請求項9に記載のポンプ装置。
【請求項12】
前記経皮ケーブルが、前記2本の電力リード線以外の追加的なリード線を含まない、請求項11に記載のポンプ装置。
【請求項13】
植込み可能なポンプ装置であって、
ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、
前記ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、前記ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、及び前記ポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、
前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供するように適合された2本の電力リード線、及び前記電力及び制御装置モジュールと体外モニタとの間で情報及び/又は制御信号をやりとりするように適合された信号リード線を含む経皮ケーブルと
を備える、植込み可能なポンプ装置。
【請求項14】
前記経皮ケーブルが、前記2本の電力リード線及び前記信号リード線のみを含み、他のいかなるリード線も含まない、請求項13に記載のポンプ装置。
【請求項15】
前記ポンプ本体の中に磁気ベアリングを更に含み、
前記電力及び制御装置モジュールが、前記ポンプ本体の中に取り囲まれ、前記磁気ベアリングに電力を供給するように適合された第2の電力電子機器回路構成、及び前記磁気ベアリングを制御するように適合された第2の制御回路構成を含む、請求項13に記載のポンプ装置。
【請求項16】
前記経皮ケーブルが、前記2本の電力リード線及び前記信号リード線のみを含み、他のいかなるリード線も含まない、請求項15に記載のポンプ装置。
【請求項17】
ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、モータ巻線、及び磁気ベアリングを取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、
前記ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、前記ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、前記磁気ベアリングに電力を供給するように適合された第2の電力電子機器回路構成、並びに前記ポンプ・モータ及び前記磁気ベアリングを制御するようにそれぞれ適合された第1及び第2の制御回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、
前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、前記植込み可能なポンプ本体の外側と内側との間で情報及び/又は制御信号をやりとりするように適合された信号リード線を含む経皮ケーブルと
を備える、植込み可能なポンプ装置。
【請求項18】
ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、
前記ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、前記ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、
前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルと、
前記経皮ケーブルに連結された体外モニタと、
前記体外モニタに連結された電源と
を備える、植込み可能なポンプ装置。
【請求項19】
前記体外モニタが、電力管理モジュールと、通信モジュールとを備える、請求項18に記載のポンプ装置。
【請求項20】
前記体外モニタの中の第2の無線通信回路構成との無線通信用に適合されている、前記植込み可能なポンプ本体の中に配置された第1の無線通信回路構成を更に備える、請求項19に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植込み可能な補助人工心臓(Ventricular Assist Device:VAD)に関し、より詳細には、VADの中の統合された制御及び電力回路構成に関する。
【背景技術】
【0002】
補助人工心臓(VAD)は、血液ポンプを含み、血液ポンプは、血行不足及び心臓病を患う患者を助けるのに使用される。VADは、患者の体に植え込まれて、心臓を補助して、血行の改善を提供することができる。植え込まれたVADは、患者の体外に位置付けられた電源によって電力を供給され得る。電力は、経皮的ケーブルを介して電源から植え込まれたVADに伝送される。
【0003】
植え込まれたVADは、電子構成要素によって給電され、制御される。温度変化が、大幅に減らされ得るように、このような電子構成要素を人体の内部に設置することが更に望ましい。更に、人体内部にこのような電子構成要素を設置することは、ケーブル内部のリード線の数の減少を容易にする。これにより、ケーブルの大きさは縮小され、ケーブルが、摩耗、疲労、及び患者によるケーブルの誤った取扱いによる他の損傷を受けるときにシステムの信頼性を改善するのに役立つ。ケーブルは、環境からの電磁障害に曝されるけれども、人体内部の電子機器は、電磁障害に曝されないので、ケーブルのリード線の数を減らす更なる利点は、電磁適合性を向上させることである。
【0004】
VADの中の従来型の血液ポンプは、ブラシレス直流(Direct Current:DC)三相モータ、又は交流(Alternating Current:AC)型三相モータなどの1つ又は複数の三相電気モータによって駆動される。モータの巻線は、電力電子機器から電流を受け取る。従来型の慣例では、電力電子機器は、血液ポンプの外部に構成され、したがって、ポンプ・モータの三相に対応する少なくとも3本のリード線(ワイヤ)が、ポンプ外部の電力電子機器とポンプ内部のモータ巻線とを接続するのに経皮的ケーブルの中で使用される。
【0005】
幾つかの従来型VADは、ロータ用磁気浮上方式(すなわち磁気ベアリング)を用いるポンプ・ロータ構成を含む。磁気浮上システムは、ロータの1つ又は複数の自由度を安定化させるために使用される。自由度ごとに、フィードバック・ループは、ロータの位置を検出するセンサと、センサから信号を受け取り、次いで高度な信号処理を経て制御信号を発生させる制御装置と、制御信号のコマンドに従って電流を発生させる電力電子機器装置とを組み込んでいる。次いで、電流が、磁気ベアリングの巻線の中に流れ込んで、ロータ上に磁気力を作り出す。
【0006】
従来方式では、制御装置及び電力電子機器は共に、血液ポンプの外部に設置される。経皮的ケーブルの中の追加的なリード線を使用して、位置センサ信号をポンプ内部からポンプ外部の制御装置へ送る。経皮的ケーブルの中の追加的なリード線を使用して、ポンプ外部の電力電子機器をポンプ内部の磁気ベアリング巻線に接続する。ということは、ロータの1つの自由度を、磁気ベアリングによって安定化させる場合には、少なくとも4本のリード線が必要とされることを意味する。2つ以上の自由度を、磁気ベアリングによって能動的に制御する場合には、更に多くのリード線が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
VADの使用は、経皮ケーブルが皮膚を貫通する部位での感染のリスクなど、ある種のリスクに患者を曝すことを伴う。感染のリスクを減らすためには、できるだけ、小型で可撓性を有する経皮ケーブルを有することが望ましい。したがって、経皮ケーブル内部のリード線の数を減らすことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
保護されるように求められている主題の理解を促進するために、その実施例が、添付図面に例示されており、後続の説明と関連付けて考慮するときに、実施例を精査することで、保護するように求められている主題、その構造及び動作、及びその利点の多くが容易に理解されて認識されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の1つの態様による、経皮ケーブルを備える植込み可能な血液ポンプの説明図である。
【
図2】本開示の1つの態様による、経皮ケーブルと、統合された電力電子機器及び制御装置構成要素とを備える植込み可能なポンプの説明図である。
【
図3】本開示の1つの態様による、経皮ケーブル内部の4本のリード線だけで実装された、統合された電力電子機器及び制御装置を備える植込み可能な、磁気的に浮上させられる血液ポンプの図式的ブロック図である。
【
図4】本開示の1つの態様による、経皮ケーブル内部の2本のリード線だけで実装された、統合された電力電子機器及び制御装置を備える植込み可能な、磁気的に浮上させられる血液ポンプの図式的ブロック図である。
【
図5】本開示の1つの態様による、外部モニタと統合制御装置との間の無線通信と組み合わせて、経皮ケーブル内部の2本のリード線で実装された、統合された電力電子機器及び制御装置を備える植込み可能な、磁気的に浮上させられる血液ポンプの図式的ブロック図である。
【
図6】本開示の1つの態様による、経皮ケーブル内部の4本のリード線だけで実装された、モータ用の統合された電力電子機器及び制御装置を備える植込み可能な血液ポンプの図式的ブロック図である。
【
図7】本開示の1つの態様による、経皮ケーブル内部の2本のリード線で実装された、モータ用の統合された電力電子機器及び制御装置を備える植込み可能な血液ポンプの図式的ブロック図である。
【
図8】本開示の1つの態様による、外部モニタと統合制御装置との間の無線通信と組み合わせて、経皮ケーブル内部の2本のリード線だけで実装された、モータ用の統合された電力電子機器及び制御装置を備える植込み可能な血液ポンプの図式的ブロック図である。
【
図9】本開示の1つの態様による、経皮ケーブル内部の2本のリード線で実装された、モータ用の統合電力電子機器を備える植込み可能な血液ポンプの図式的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
当業者が本開示の範囲に含まれる提案を変更することが可能なように、注記に含まれるコメント、並びにそこで検討される材料、寸法、及び公差は、単なる提案であることを理解されたい。
【0011】
本開示の態様は、多くのさまざまな形状をした実施例を含むが、本出願は、開示の原理の例証とみなされるべきであり、開示の幅広い態様を例示した実施例に限定することを意図していないという理解の下で、開示の好適な実施例を図で示しており、本明細書で詳細に説明してゆく。
【0012】
以下の詳細な説明は、開示の例示的実施例を実行するのに、現下で最善の想定されるモードのものである。説明は、限定的にとられるべきではなく、開示の範囲が、添付の特許請求の範囲によって最善に定義されるので、開示の一般的原理を例示するためのものにすぎない。
【0013】
これより、それぞれ互いに独立して、又は他の特徴と組み合わせて使用することができるさまざまな発明の特徴を説明する。しかしながら、いずれか1つの発明の特徴が、上記課題のあらゆるものに対処しなくてもよい、又は上記課題の1つに対処するにすぎなくてもよい。更に、上記課題の1つ又は複数は、後述する特徴のあらゆるものによって十分に対処されなくてもよい。
【0014】
本開示の態様によれば、補助人工心臓(VAD)用小型ポンプは、統合された電力電子機器及び制御装置回路構成を含む。統合された電力電子機器及び制御装置回路構成を備える開示されたVADポンプは、患者の心臓に直接的に隣接した心膜空間に完全に植え込むことができる。
【0015】
図1を参照すると、本開示の1つの態様によるVADは、ポンプ用電力電子機器及び制御回路構成が、共通のポンプ本体102の中に組み込まれた植込み可能なポンプ装置100を含む。ポンプ本体102は、ポンプのインペラと、モータ及び磁気ベアリングを駆動、制御するための電力電子機器及び制御回路構成と共にモータのロータ及び磁気ベアリングを含むモータとを取り囲んでいる。
【0016】
植込み可能なポンプ装置100は、入口110から出口112へ血液を運ぶ。経皮ケーブル104の近位端部は、貫通接続部106でポンプ本体102の中に延びており、ポンプが動作するための電力信号及び制御信号を送給する。経皮ケーブル104の遠位端部は、体外モニタに接続するための(
図3を参照)、体外モニタ・コネクタ108を含む。貫通接続部106は、ポンプの中へ液体又は空気が漏れるのを防止しながら、電流がポンプ装置100の中に流れることを可能にする。
【0017】
本開示の1つの態様による
図2を参照すると、ポンプ装置100は、ポンプ・ハウジング114の中に構成されるロータ及びインペラ組立体118を含む。ポンプ・ハウジング114は、ポンプ・モータが設置されており、ポンプ本体102の中間部を形成する。ポンプ入口110を含むポンプ本体102の最上部分は、ポンプ・ハウジングに連結される。ポンプ本体102の底部分は、ケーシング116を含み、ケーシング116は、ポンプ入口110に向かい合うポンプ・ハウジング114に連結される。ロータ及びインペラ組立体118は、インペラに連結されたロータを含む。ロータは、ポンプ・ハウジング114内部の電気モータ固定子(図示せず)によって駆動される。ロータは、機械式ベアリング、流体ベアリング、又は磁気ベアリングを用いて浮上させられ得る。磁気ベアリングを含む実施では、磁気的に作動する構成要素(図示せず)が、ポンプ・ハウジング114の内部に取り付けられる。そのような作動構成要素は、それらが磁性材料でできた磁極上に巻き付けられた電気巻線を備えているという点で、電気モータ固定子に類似している。これらの巻線の電流は、磁場を作り出し、結果的にロータ上に及ぼされる磁力を引き起こす。電流の方向及び大きさを能動的に制御することによって、ロータが、磁場で安定化するように、ロータ上の磁気力が、連続的に調節される。能動的制御は、電力電子機器及び制御回路を含むフィードバック制御システムによって提供される。従来型の配置では、モータ及び磁気ベアリングの両方のための電力電子機器及び制御装置は、嵩高であり、ポンプの外側に設置されなければならず、通常、体外モニタの中に取り付けられる(
図3参照)。本開示の態様によれば、小型化されたICチップの先端技術を利用することによって、電力電子機器及び制御装置は、植込み可能な血液ポンプの内部に取り付けられるように十分小さく作られる。
【0018】
本開示の1つの態様によれば、例えばプリント回路基板などの電子機器モジュール120は、ポンプ・ハウジング114とケーシング116との間のポンプ本体102の底部分の中に取り囲まれる。電子機器モジュールは、ポンプ・モータ及び磁気ベアリングを動作させるように構成された電力回路構成及び制御回路構成を含み、経皮ケーブル104に連結される。
【0019】
本開示の1つの態様によるVADを、
図3を参照しながら説明する。開示のこの態様によれば、ロータ及びインペラ組立体118は、磁気的に浮上させられ、ロータ及びモータ巻線132を含む電気モータによって回転駆動される。モータは、例えば三相ブラシレス直流モータ又は三相交流モータでもよい。モータ用の電力電子機器及び制御回路構成140は、電子機器モジュール120上に構築される。図示した実施例では、ポンプ内部のモータ制御回路構成140は、マイクロコントローラ又はデジタル信号処理装置を含むことができる。モータ制御回路構成140は、センサレス制御スキームを用いて、ロータ/インペラ組立体118を回転させるパルス幅変調(Pulse Width Modulated:PWM)信号でモータ巻線132を駆動する。
【0020】
磁気ベアリングは、能動的制御を通じてロータの1つ又は複数の自由度を安定化させる。制御下の自由度ごとに、渦電流変位センサなどの、1つ又は複数のセンサ136は、ロータの位置を検出する。磁気浮上方式(磁気浮上)制御回路構成142は、センサ信号を受け取って処理し、磁気浮上電力電子機器に適用されるコマンド信号を生成する。この信号は、電流を磁気ベアリングの巻線134に向けるように、電力電子機器を制御する。磁気ベアリング用の電力電子機器及び制御装置が、電子モジュール120上に更に構築される。図示した実施例では、磁気浮上制御回路構成142は、磁気ベアリング(磁気浮上)センサ136からアナログ位置信号を受け取って、それらをデジタル信号に変換するアナログ・デジタル(Analog to Digital:A/D)変換器を含む。次いで、デジタル信号を使用して、能動的磁気ベアリング制御を提供してロータを浮上させる磁気浮上巻線134を駆動するためにPWM信号を作り出す。更に、一般に当業者によって使用される磁気ベアリングをフィードバック制御するための他の制御策が、適用されてもよい。
【0021】
電力電子機器及び制御装置モジュール120は、体外モニタ122から電力及びある種の制御コマンドを受け取る。体外モニタ122は、電力管理回路構成124を含み、電力管理回路構成124は、電源128から電力を受け取る。電源128は、充電式電池、交流又は他の種類の電源を含むことができる。電力管理回路構成124は、ポンプ本体内部の電力電子機器及び制御装置モジュール120に電力を供給する。モータ及び磁気ベアリング制御の全機能は、電力電子機器及び制御装置モジュール120で実行されるので、電力管理回路構成124は、電子モジュール120に電力を供給すること以外に何らかの追加機能を果たす必要はない。したがって、この実施では、電力線の役割を果たすのに、経皮ケーブル104内の1対のリード線だけが使用される。
【0022】
体外モニタ122は、ポンプ内部の電子モジュール120においてモータ制御装置及び/又は磁気ベアリング制御装置と情報をやりとりする通信回路構成126を更に含む。通信回路構成126は、ポンプ速度を設定及び変更するなど、モータ及び/又は磁気ベアリングの動作状態を設定するためのトップ・レベル・コマンドを提供する。更に、通信回路構成126は、例えばモータ及び磁気ベアリングのポンプ速度及び電流などの、受け取った動作状態に基づき診断機能を果たす。更に、通信回路構成126は、プログラムコードを電子モジュール120の中のモータ制御装置及び/又は磁気ベアリング制御装置にロードするのに使用され得る。通信回路構成126の全てのそのような機能は、マイクロプロセッサをある種の周辺電子回路と組み合わせて使用することで実現することができる。したがって、通信回路構成126と電子機器モジュール120とを接続するためのシリアル通信を実施することが適切であり、これに必要なのは、経皮ケーブル104の中の2本のリード線だけである。したがって、開示の1つの態様によれば、この実施は、経皮ケーブル内部の4本のリード線125だけ、一方の対は電力線、他方の対はシリアル通信、を使用して行われる。
【0023】
図4は、
図3の実施例の変形例を示し、体外モニタ122の中の通信回路構成126とポンプ内部の電力電子機器/制御装置モジュール120との間の通信信号は、高周波数搬送波信号によって変調され、経皮ケーブル104の中の電力リード線125の上に重ね合わされる。変調及び復調回路は、体外モニタ122とポンプ内部の電力電子機器/制御装置モジュール120との間に接続されて、必要とされる通信を提供することができる。開示の1つの態様によれば、この実施は、電力信号及び通信信号の両方を搬送するのに経皮ケーブル内部の2本のリード線だけを使用して行われる。
【0024】
図5は、体外モニタ122の通信回路構成126が、無線接続127を介してポンプ内部の電力電子機器/制御装置モジュール120と通信するように構成されていることを除いて、
図4に示した実施例に類似した、本開示の1つの実施例を示す。開示の1つの態様によれば、この実施は、電力供給を提供するために、経皮ケーブル内部の2本のリード線125だけを使用して行われる。
【0025】
本開示の別の態様では、
図6は、
図3~
図5に示したポンプとは異なる植込み可能な血液ポンプを示す。
図6に示す実施では、ポンプ・ロータは、磁気ベアリングとは別の手段で浮上させられており、したがって、磁気ベアリング電子機器は、含まれていない。ポンプは、電気モータによって同様に回転駆動される。したがって、電力電子機器/制御装置モジュール120は、モータ用の電力電子機器及び制御回路構成140だけを含有する。開示の1つの態様によれば、この実施は、2本のリード線が、通信信号を提供し、2本のリード線が、電力線の機能を果たす経皮ケーブル内部の4本のリード線125だけを使用して行われる。
【0026】
本開示の1つの態様によれば、
図7は、磁気ベアリングを有していない植込み可能な血液ポンプを示す。この実施では、体外モニタ122の中の通信回路構成126とポンプ内部の電力電子機器/制御装置モジュール120との間の通信信号は、高周波数搬送波信号によって変調され、経皮ケーブル104の中の電力リード線125の上に重ね合わされる。変調及び復調回路は、体外モニタ122とポンプ内部の電力電子機器/制御装置モジュール120との間に接続されて、必要とされる通信を提供することができる。開示の1つの態様によれば、この実施は、電力信号及び通信信号の両方を搬送するのに経皮ケーブル内部の2本のリード線だけを使用して行われる。
【0027】
本開示の1つの態様によれば、
図8は、磁気ベアリングを有していない植込み可能な血液ポンプを示す。この実施例は、無線接続127が、外部モニタ122とポンプ内部の電力電子機器及び制御モジュール120との間の通信で使用される、
図5に示した実施例に類似している。経皮ケーブルは、体外モニタからポンプ内部の統合モータ制御装置へ電力を提供する2本のリード線だけを有している。開示の1つの態様によれば、この実施は、電力供給を提供するために、経皮ケーブル内部の2本のリード線だけを使用して行われる。
【0028】
図9は、ポンプ・モータがポンプの外部との通信を必要としない本開示の1つの態様による別の実施例を示す。モータ電力電子機器及び制御回路構成140は、経皮ケーブルの中の電力線125を介して体外モニタ122の電力管理モジュール124から電力を受け取る。モータ電力電子機器及び制御回路構成140は、電力を使用して、モータ巻線132の中に整流された三相電流を生じさせ、ロータ及びインペラ組立体118を駆動する。外部からのコマンド又は他の情報は、モータがそのような方法で作動するのに必要でない。したがって、本実施例では、体外モニタ122の中に通信回路構成は必要ではない。開示の1つの態様によれば、この実施は、電力信号を提供するために、経皮ケーブル内部の2本のリード線125だけを使用して行われる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「連結される」又は「伝達可能に連結される」という用語は、直接的又は間接的な、2つの関係部分の間での何らかの物理的、電気的、磁気的、又は他の接続を意味することができる。「連結される」という用語は、2つの存在物の間の決まった直接的な連結に限定されない。前述の説明及び添付の図面に記載した事項は、単なる例証として、限定するものとしてではなく提供されている。特定の実施例が図と共に説明されてきたが、出願人の貢献のより幅広い態様から逸脱しない範囲で、変形及び変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。求められる保護の実際の範囲は、従来技術に基づくそれらの適切な観点で見る場合に、以下の特許請求の範囲において定義されるように意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込み可能なポンプ装置であって、
ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、
前記ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、前記ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、及び前記ポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、
前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、前記経皮ケーブルは、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供し、前記電力及び制御装置モジュールと体外モニタとの間で情報及び/又は制御信号をやりとりするように適合されたリード線を含み、前記リード線は、二対のリード線を含み、前記二対のリード線のうちの少なくとも一対は、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供するように適合された2本のリード線のみを含む、経皮ケーブルと
を備える、植込み可能なポンプ装置。
【請求項2】
前記体外モニタが、高周波数搬送波信号を前記2本のリード線上で電力信号上に重ね合わせるように適合され、前記高周波数搬送波信号が、前記情報及び/又は制御信号を含むように変調される、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記ポンプ・モータは、三相電気モータを備える、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記ポンプ本体の中に磁気ベアリングを更に含み、
前記電力及び制御装置モジュールが、前記磁気ベアリングに電力を供給するように構成された第2の電力電子機器回路構成、及び前記磁気ベアリングを制御するように適合された第2の制御回路構成を含む、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記ポンプ・モータは、三相電気モータを含む、請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記体外モニタが、高周波数搬送波信号を前記2本のリード線上で電力信号上に重ね合わせるように適合され、前記高周波数搬送波信号が、前記情報及び/又は制御信号を含むように変調される、請求項4に記載のポンプ装置。