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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036341
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】慢性皮膚炎の治療のための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220301BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 31/4174 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 31/366 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220301BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20220301BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220301BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/00
A61K31/4174
A61K31/40
A61K31/366
A61P17/06
A61P37/08
A61P43/00 111
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
G01N33/92 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018193755
(22)【出願日】2018-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】久保 亮治
(72)【発明者】
【氏名】久保 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 知子
(72)【発明者】
【氏名】天谷 雅行
(72)【発明者】
【氏名】末松 誠
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045BB20
2G045DA69
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZB13
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086BC05
4C086BC38
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB13
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】十分な治療効果を有する、新たな慢性皮膚炎用の医薬組成物等を実現する。
【解決手段】上述の課題は、下記式(I)~(IV)で表されるコレステロール生合成前駆物質のいずれかの産生を阻害する有効成分を含む、慢性皮膚炎の治療のための医薬組成物により、解決された。
【化1】
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)~(IV)で表されるコレステロール生合成前駆物質のいずれかの産生を阻害する有効成分を含む、慢性皮膚炎の治療のための医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
前記有効成分が、CYP51阻害剤、又は、HMGCR阻害剤である、請求項1に記載の慢性皮膚炎の治療のための医薬組成物。
【請求項3】
前記有効成分が、前記CYP51阻害剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記CYP51阻害剤が、アザランスタット、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロコナゾール、エコナゾール、メトコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール及びテブコナゾール又はそれらの薬学的に許容される塩から選ばれるいずれかを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記有効成分が、前記HMGCR阻害剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記HMGCR阻害剤が、アトルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、又はそれらの薬学的に許容される塩である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
外用医薬組成物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記慢性皮膚炎が、アトピー性皮膚炎、又は、乾癬である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
アモロルフィン、アレンドロネート、アトルバスタチン、アザランスタット、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロコナゾール、エコナゾール、フルアジナム、ロバスタチン、メトコナゾール、オキシコナゾール、リセドロネート、シンバスタチン、スルコナゾール、テブコナゾール、及び、テルコナゾール又はそれらの薬学的に許容される塩の少なくともいずれかの化合物を含む、慢性皮膚炎の治療のための医薬組成物。
【請求項10】
(a)対象化合物について、下記式(I)~(IV)で表されるコレステロール生合成前駆物質のいずれかの産生を阻害する阻害活性を測定する測定工程と、
(b)測定された前記阻害活性の値に基づいて、前記対象化合物が慢性皮膚炎の治療に有効な候補化合物であるか否かを判定する判定工程とを含む、
慢性皮膚炎治療用の候補化合物のスクリーニング方法。
【化2】
【請求項11】
(c)下記式(I)~(IV)で表されるコレステロール生合成前駆物質のいずれかを皮膚のサンプルから検出する検出工程と、
(d)前記サンプルから検出された前記コレステロール生合成前駆物質の検出量と、基準となる基準量とを比較する比較工程とを有する、
慢性皮膚炎の診断のための方法。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性皮膚炎の治療のための医薬組成物、慢性皮膚炎治療用の候補化合物のスクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性皮膚炎として、アトピー性皮膚炎、乾癬等が知られている。アトピー性皮膚炎は、アトピー素因を背景に様々な環境因子による影響を受けて発症する、痒みを伴う湿疹を主病変とする皮膚疾患であり、多くは増悪と寛解を繰り返す。乾癬は、銀白色の鱗屑と浸潤・肥厚を伴う境界明瞭な紅斑を主病変とする皮膚疾患であり、多くは難治性であり慢性に推移する。アトピー性皮膚炎の治療には、ステロイド剤やカルシニューリン阻害剤などの外用に加え、補助的に経口抗ヒスタミン薬が用いられる。また、乾癬の治療はステロイド外用剤やビタミンD3外用剤及びそれらの合剤を含む局所療法と、シクロスポリン、レチノイド、メトトレキサートをはじめとする全身療法、UVAやUVBを用いた光線療法を組み合わせて行われる。最近では、TNF-αやIL-12/23、IL-17に対する生物学的製剤も用いられるようになった。
【0003】
しかしながら、これらはいずれも対症療法により症状を緩和することを目標としており、根治療法は存在しない。これらの疾患に対し、様々な対症療法が行われているが、全ての患者に同じ対症療法が有効とは限らない。そこで、今までの治療方法とは異なる、発症メカニズムに基づいた新たな対症療法が、治療の幅を広げるものとして期待される。
また、これらの慢性炎症性皮膚疾患に対して用いられるステロイド外用剤は、長期使用では、皮膚萎縮、皮膚感染症の誘発などの副作用を生じる。アトピー性皮膚炎の治療にカルシニューリン阻害剤は塗布部の刺激感が問題となっており、経口抗ヒスタミン薬によっても鎮静化されない痒みは患者のQOLを著しく低下させている。また、乾癬に対する局所療法は多くの場合、効果が緩徐であり、全身療法は副作用の発現、光線療法は頻回の受診による時間的な拘束が問題となっている。また、生物学的製剤では高額な医療費が問題となっている。
【0004】
なお、特許文献1には、ラノステロール14-αデメチラーゼ阻害剤を血管新生の阻害剤として用いることが開示されている。非特許文献1には、ステロールの中間代謝物がRORγの内因性リガンドになり得るという研究について開示されている。非特許文献2には、ケトコナゾールによるIMQ誘発乾癬モデルにおける耳介腫脹抑制の研究について開示されている。非特許文献3では、ケトコナゾールの経口投与によるアトピー性皮膚炎の治療の試みについて開示されている。非特許文献4では、コレステロール生合成経路にて中間産物が蓄積することが開示されている。また、非特許文献5では、特定の酵素を欠損した患者において蓄積したコレステロール合成中間体について報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:WO2008/124132
【非特許文献】
【0006】
非特許文献1: Identification of Natural RORg Ligands that Regulate the Development of Lymphoid Cells(Santori et al., 2015, Cell Metabolism 21, 286-297)
非特許文献2: Sterol metabolism controls TH17 differentiation by generating endogenous RORg agonists(Nat Chem Biol. 2015 Feb;11(2):141-7)
非特許文献3: Back O. et al., Arch Dermatol. Res (1995) 287: 448-451
非特許文献4: Biochim Biophys Acta. 1991;1086(1):115-124.
Hashimoto F, Hayashi H.
Identification of intermediates after inhibition of cholesterol synthesis by aminotriazole treatment in vivo.
非特許文献5: J Clin Invest. 2011 Mar;121(3):976-84. doi: 10.1172/JCI42650.
He M, Kratz LE, Michel JJ, Vallejo AN, Ferris L, Kelley RI, Hoover JJ, Jukic D, Gibson KM, Wolfe LA, Ramachandran D, Zwick ME, Vockley J.
Mutations in the human SC4MOL gene encoding a methyl sterol oxidase cause psoriasiform dermatitis, microcephaly, and developmental delay.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような状況において、新たな慢性皮膚炎用の医薬組成物を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、以下に示す、医薬組成物、慢性皮膚炎治療用の候補化合物のスクリーニング方法、慢性皮膚炎の診断のための方法等に関する。
【0009】
(1)下記式(I)で表されるコレステロール生合成前駆物質(以下、C29Aとも称する)、下記式(II)で表されるコレステロール生合成前駆物質(以下、C29Bとも称する)、下記式(III)で表されるコレステロール生合成前駆物質(以下、C28Aとも称する)、及び、式(IV)で表されるコレステロール生合成前駆物質(以下、C28Bとも称する)のいずれかのコレステロール前駆物質の産生を阻害する有効成分を含む、慢性皮膚炎の治療のための医薬組成物。
【化1】
(2)前記有効成分が、CYP51阻害剤、又は、HMGCR阻害剤である、上記(1)に記載の慢性皮膚炎の治療のための医薬組成物。
(3)前記有効成分が、前記CYP51阻害剤である、上記(2)に記載の医薬組成物。
(4)前記CYP51阻害剤が、アザランスタット、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロコナゾール、エコナゾール、メトコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール及びテブコナゾール又はそれらの薬学的に許容される塩の少なくともいずれかの化合物を含む、上記(3)に記載の医薬組成物。
(5)前記有効成分が、前記HMGCR阻害剤である、上記(2)に記載の医薬組成物。
(6)前記HMGCR阻害剤が、アトルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、又はそれらの薬学的に許容される塩である、上記(5)に記載の医薬組成物。
(7)外用医薬組成物である、上記(1)に記載の医薬組成物。
(8)前記慢性皮膚炎が、アトピー性皮膚炎、又は、乾癬である、上記(1)に記載の医薬組成物。
(9)アモロルフィン、アレンドロネート、アトルバスタチン、アザランスタット、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロコナゾール、エコナゾール、フルアジナム、ロバスタチン、メトコナゾール、オキシコナゾール、リセドロネート、シンバスタチン、スルコナゾール、テブコナゾール、及び、テルコナゾール又はそれらの薬学的に許容される塩の少なくともいずれかの化合物を含む、慢性皮膚炎の治療のための医薬組成物。
(10)(a)対象化合物について、下記式(I)~(IV)で表されるコレステロール生合成前駆物質のいずれかの産生を阻害する阻害活性を測定する測定工程と、
(b)測定された前記阻害活性の値に基づいて、前記対象化合物が慢性皮膚炎の治療に有効な候補化合物であるか否かを判定する判定工程とを含む、
慢性皮膚炎治療用の候補化合物のスクリーニング方法。
【化2】
(11)(c)下記式(I)~(IV)で表されるコレステロール生合成前駆物質のいずれかを皮膚のサンプルから検出する検出工程と、
(d)前記サンプルから検出された前記コレステロール生合成前駆物質の検出量と、基準となる基準量とを比較する比較工程とを有する、
慢性皮膚炎の診断のための方法。
【化3】
【発明の効果】
【0010】
上述の本発明によれば、アトピー性皮膚炎や乾癬などの慢性皮膚炎に対し、効果、安全性、利便性、及び経済性等において良好である、新たな医薬組成物を提供できる。また、本発明は、慢性皮膚炎治療用の候補化合物のスクリーニング方法を提供する。さらに本発明は、慢性皮膚炎の診断のための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】式(I)及び式(II)で分子構造が表される脂質代謝物のマススペクトルデータを示す図である。
図2】式(III)及び式(IV)で分子構造が表される脂質代謝物のマススペクトルデータを示す図である。
図3】CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎患者の病変部の治療前後の状態を示す図である。
図4】CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎患者の病変部と、同一患者の健常部とにおける脂質代謝物の蓄積量を示す図である。
図5】コレステロール生合成阻害剤による、特定の脂質代謝物の産生抑制効果を示す図である。
図6】慢性皮膚炎患者における特定の脂質代謝物の蓄積量の相対値を示す図である。
図7】尋常性乾癬患者の複数の病変部に対する、セクキヌマブ(コセンティクス)による治療の前後における特定脂質代謝物の蓄積量の変化を示す図である。
図8】コレステロール生合成阻害剤による、アトピー性皮膚炎患者における特定の脂質代謝物の蓄積抑制効果を示す図である。
図9】コレステロール生合成阻害剤による、尋常性乾癬患者における特定の脂質代謝物の蓄積抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の医薬組成物は、慢性皮膚炎の治療に有用であり、コレステロール生合成前駆物質の産生を阻害する有効成分を含む。
【0013】
[コレステロール生合成前駆物質]
上記コレステロール生合成前駆物質として、下記式(I)~(IV)で示される脂質代謝物(それぞれ、式(I)の生合成前駆物質(式(I)の化合物)、式(II)の生合成前駆物質(式(II)の化合物)、式(III)の生合成前駆物質(式(III)の化合物)及び、式(IV)の生合成前駆物質(式(IV)の化合物)ともいう)が挙げられる。
【化4】
慢性皮膚炎の病変部において、式(I)~(IV)で示される脂質代謝物が蓄積されることが、新たに確認された。
上述のコレステロール前駆体、すなわち、式(I)で示される生合成前駆物質(C29A)、式(II)で示される生合成前駆物質(C29B)、式(III)で示される生合成前駆物質(C28A)、及び、式(IV)で示される生合成前駆物質(C28B)の脂質代謝物を、以下、特定脂質代謝物ともいう。
これらの特定脂質代謝物が皮膚炎発症に関連した毒性を有することは、CHILD症候群の病態から説明し得る。CHILD症候群はNSDHLをコードする遺伝子の機能欠失性変異をヘテロに持つ伴性優性遺伝性疾患である。NSDHLはコレステロールの生合成において4位の脱メチル化反応を担う酵素の一つである。NSDHL遺伝子はX染色体上に存在し、女性では二つあるX染色体上の一つの遺伝子のみが活性化するため、変異型NSDHL遺伝子が活性化した細胞ではコレステロールの生合成反応がNSDHLの手前で停止する。特定脂質代謝物は4位に1つあるいは2つのメチル基を有す構造を示すため、NSDHLの変異によって脱メチル化反応が不全となって蓄積したものと考えられる。CHILD症候群では、左右片側性に紅斑、角化、落屑を伴う乾癬様の皮疹を生じるが、特定脂質代謝物の蓄積は、皮疹のある部位においてのみにみられる。HMGCR阻害剤やCYP51阻害剤はNSDHLよりも上流でコレステロール生合成経路を遮断することで特定脂質代謝物の産生を抑制するが、これらの阻害剤を皮疹部に外用塗布すると皮膚炎が改善する。
一方で、NSDHL遺伝子の変異によってコレステロール産生が低下するが、コレステロールを外用塗布しても皮疹が改善しないことが報告されている。
これらを踏まえると、特定脂質代謝物が皮膚炎に関連していることが強く支持される。アトピー性皮膚炎や乾癬といった慢性炎症性皮膚疾患の病変部では、皮膚炎に関連した毒性を有する特定脂質代謝物が蓄積している一方で、急性皮膚炎や中毒疹ではそのような蓄積はみられない。そのため、特定脂質代謝物は皮膚炎の慢性化に寄与すると考えられる。また、乾癬治療において、皮疹の改善に伴い特定脂質代謝物の蓄積が低下することも確認されている。
このように、特定脂質代謝物の蓄積と、慢性皮膚炎の治療効果とが関連しているといえる。このため、特定脂質代謝物の蓄積を抑制することにより、慢性皮膚炎の症状を軽減できるのであり、以下に詳述するように、特定の酵素阻害剤が、慢性皮膚炎の治療に有効であることも確認された。
【0014】
上述の特定脂質代謝物である、式(I)~(IV)のコレステロール生合成前駆物質の分子構造は、以下のように決定した。
すなわち、式(I)及び式(II)の化合物については、合成した4,4-dimethylcholesta-8(9)-en-3beta-ol 、及び14-Demethyllanosterol標品をGC/MS解析した結果、保持時間と確認イオンの一致から構造を決定した。
一方、式(III)及び式(IV)の化合物については、GC/MSの解析結果と文献報告(上述の非特許文献4及び5)を照合することで分子構造を決定した。図1に、式(I)及び式(II)で分子構造が表される化合物のマススペクトルデータを示す。また、図2に、式(III)及び式(IV)で分子構造が表される化合物のマススペクトルデータを示す。
なお、式(I)~(IV)の化合物については、GC/MS解析にてコレステロールの保持時間を1としたときの相対的な保持時間としてそれぞれ1.21,1.27,1.12,及び1.17にピークが出現することが確認されており、これらのピークは、慢性皮膚炎に特異的に出現するものとして確認されている(下記実施例2の表2参照)。
【0015】
さらに、実施例2の表2にて示されるように、上述の相対保持時間で検出されるm/z値に対するレスポンス量を示す各化合物のスペクトルデータにおいて、m/z値が50以上であってレスポンス量が多い順から選択した15のピーク中に、少なくとも下記のm/z値のピークが含まれることが確認された。
式(I)の化合物(C29A) :486.4,381.3,135.1
式(II)の化合物(C29B) :484.4,379.3,135.1
式(III)の化合物(C28A) :472.4,367.3,227.2
式(IV)の化合物(C28B) :472.4,269.2,147.1
【0016】
本発明における、前記コレステロール生合成前駆物質の産生を阻害する有効成分(コレステロール生合成阻害剤ともいう)としては、CYP51阻害剤、HMGCR阻害剤、ビスホスホネート系薬剤、アモロルフィン又はその薬学的に許容される塩並びにフルアジナム又はその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0017】
本発明の医薬組成物は、有効成分として、CYP51阻害剤、及び、HMGCR阻害剤の少なくともいずれかを含有することが好ましい。
【0018】
[CYP51阻害剤]
CYP51阻害剤としては、例えば、アザランスタット、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロコナゾール、エベルコナゾール、エコナゾール、エフィナコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、ホスフルコナゾール、イサブコナゾール、メトコナゾール、ネチコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、テブコナゾール、テルコナゾール及びチオコナゾール又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
好ましいCYP51阻害剤としては、アザランスタット、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロコナゾール、エコナゾール、メトコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール及びテブコナゾール又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0019】
薬学的に許容される塩としては、例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)、マグネシウム、遷移金属(例えば、亜鉛、鉄等)、アンモニア、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン、エチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等)およびアミノ酸との塩、または無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、臭化水素酸、リン酸、ヨウ化水素酸等)、および有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等)との塩が挙げられる。特に塩酸、硫酸、リン酸、酒石酸、メタンスルホン酸との塩等が挙げられる。
【0020】
[HMGCR阻害剤]
HMGCR阻害剤の好ましい具体例としては、アトルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、これらの化合物の薬学的に許容される塩等が挙げられる。
【0021】
ビスホスホネート系薬剤としては、例えば、アレンドロネート、リセドロネート、これらの化合物の薬学的に許容される塩等が挙げられる。
【0022】
別の態様として、本発明の医薬組成物は、有効成分として、アモロルフィン、アレンドロネート、アトルバスタチン、アザランスタット、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロコナゾール、エコナゾール、フルアジナム、ロバスタチン、メトコナゾール、オキシコナゾール、リセドロネート、シンバスタチン、スルコナゾール、テブコナゾール、及び、テルコナゾール又はそれらの薬学的に許容される塩の少なくともいずれかを含有することが好ましい。
【0023】
[慢性皮膚炎]
本発明の医薬組成物は、慢性皮膚炎の治療剤として有用である。医薬組成物による治療が有効である慢性皮膚炎としては、アトピー性皮膚炎、乾癬、膿疱性乾癬、掌蹠膿疱症、魚鱗癬群、慢性蕁麻疹、乾皮症、手湿疹、CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎、その他、慢性的な皮膚炎症状を呈する皮膚疾患が挙げられる。医薬組成物は、上記皮膚炎の中でも特に、アトピー性皮膚炎、及び、乾癬に対する治療効果に優れている。
【0024】
[医薬組成物の剤形]
本発明の医薬組成物は、皮膚炎部位への直接投与を目的とした外用剤として使用することができ、その剤形としては、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、リニメント剤、パップ剤、プラスター剤、パッチ剤、硬膏剤、ゲル剤、液剤等が挙げられる。
【0025】
[医薬組成物における添加剤など]
医薬組成物においては、有効成分としての上記化合物以外に、吸収促進剤、pH調整剤、保存剤、着香料、分散剤、湿潤剤、安定剤、防腐剤、懸濁剤、界面活性剤等の医薬製剤用添加剤を単独もしくは2種以上を混合して配合することができる。
【0026】
吸収促進剤としては、例えば、炭素数20以下の1価アルコール(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ステアリルアルコール等)、ピロリドン誘導体(2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン等)、尿素類(尿素、チオ尿素等)、シクロデキストリン(α-シクロデキストリン等)、メントール、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、チオグリコール酸カルシウム、リモネン等が挙げられる。該吸収促進剤の含有量は、剤形や基剤成分等によって異なるが、通常、吸収促進作用を効果的に発現させる観点からは、0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上とすることが望ましく、副作用発現抑制の観点からは、10重量%以下、好ましくは5重量%以下とすることが望ましい。
【0027】
pH調整剤の具体例としては、例えば、塩酸、硫酸又はリン酸等の無機酸、酢酸、コハク酸、フマル酸又はリンゴ酸等の有機酸或いはこれら酸の金属塩等が挙げられる。該pH調整剤の配合量は、剤形や基剤成分等により異なるが、通常、製剤のpHが4~8となるような範囲で配合することが好ましい。
【0028】
保存剤又は防腐剤の具体例としては、例えば、パラオキシ安息香酸、メチルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、パラオキシ安息香酸メチル等が挙げられる。
【0029】
着香料の具体例としては、例えば、メントール、ローズ油、ユーカリ油、d-カンフル等が挙げられ、また分散剤の具体例としては、例えば、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0030】
湿潤剤の具体例としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、乳酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられ、また安定剤の具体例としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、トコフェロール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸等が挙げられる。
【0031】
懸濁剤の具体例としては、例えば、トラガント末、アラビアゴム末、ベントナイト、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられ、また、界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル等が挙げられる。
【0032】
医薬組成物が、軟膏剤又はクリーム剤である場合には、基剤として、油脂性基剤又は乳剤性基剤を用いることができる。
【0033】
油脂性基剤としては、例えば、炭化水素類(炭素数12~32の炭化水素、流動パラフィン、白色ワセリン、スクワレン、スクワラン又はプラスチベース等)、高級アルコール(ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール又はオレイルアルコールの如き炭素数12~30の脂肪族1価アルコール等)、高級脂肪酸(パルミチン酸又はステアリン酸の如き炭素数6~32の飽和又は不飽和脂肪酸)、高級脂肪酸エステル(パルミチン酸ミリスチル又はステアリン酸ステアリルの如き脂肪酸エステル;ラノリン又はカルナウバロウの如き炭素数10~32の脂肪酸と炭素数14~32の脂肪族1価アルコールとのエステル;グリセリルモノラウリレートの如き炭素数10~22の飽和もしくは不飽和脂肪酸とグリセリンとのエステル又はそれらの水素添加物等)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、植物油、動物油等が挙げられる。
【0034】
乳剤性基剤としては、例えば、水中油型基剤、油中水型基剤、懸濁型基剤等が挙げられる。水中油型基剤としては、界面活性剤の存在下又は非存在下で、前記ラノリン、プロピレングリコール、ステアリルアルコール、ワセリン、シリコン油、流動パラフィン、グリセリルモノステアレート、ポリエチレングリコール等の成分を水相中に乳化、分散せしめた基剤等が挙げられる。油中水型基剤としては、ワセリン、高級脂肪族アルコール、流動パラフィン等の成分に、非イオン性界面活性剤の存在下で、水を加え、乳化、分散せしめた基剤等が挙げられる。また、懸濁型基剤としては、水にデンプン、グリセリン、高粘度カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマーなどの懸濁化剤を加えてゲル状にした水性基剤等が挙げられる。
【0035】
[医薬組成物の製造方法]
本発明の医薬組成物は、慣用の外用剤調製方法によって製造することができる。例えば、軟膏剤又はクリーム剤は、それぞれの剤形に応じて基剤の原料を混練、乳化又は懸濁せしめて基剤を調製した後、有効成分及び各種添加剤を加え、スクリューミキサー等の混合機中で混合することにより製造することができる。
【0036】
本発明の医薬組成物は、懸濁型、乳剤型もしくは溶液型ローション剤のいずれの剤形でも使用することができる。懸濁型ローションの基剤としては、アラビアゴム、トラガントゴム等のゴム類、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース類、ベントナイト等の粘土類の懸濁剤と水の混合物等が挙げられる。乳剤型ローションの基剤としては、水とステアリン酸又はオレイン酸等の脂肪酸、ステアリルアルコール又はセチルアルコールの如き高級アルコール等の油性物質を乳化させた基剤等が挙げられる。溶液型ローションの基剤としては、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール等のアルコール等が挙げられる。該ローション剤は、例えば、精製水に種々の基剤成分を添加して混合、攪拌した後、有効成分及び添加剤を加えて混合し、所望に応じて濾過を行なうことにより、製造することができる。
リニメント剤のための基剤としては、例えば、オリーブ油等の植物油類、エタノールもしくはイソプロパノール等のアルコール類、或いはそれらと水との混合物等が挙げられる。該リニメント剤は、例えば、基剤に有効成分を溶解し、所望により、これに製剤用添加物を加えて混合することにより、製造することができる。
【0037】
パップ剤のための基剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物等が挙げられる。該パップ剤は、例えば、有効成分、基剤及び所望の製剤用添加物を混合し、加熱後冷却することにより、製造することができる。
【0038】
プラスター剤、パッチ剤又は硬膏剤のための基剤としては、例えば、不織布等の支持体、天然ゴム又はイソプレンゴム等の弾性体、亜鉛華、酸化チタン等の充填剤、テルペン樹脂等の粘着付与剤、酢酸ビニル等の剥離処理剤、流動パラフィン等の軟化剤、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の老化防止剤等を適宜組合せて使用することができる。該プラスター剤、パッチ剤、硬膏剤等は、溶液法や熱圧法などの常法により製造することができる。
【0039】
液剤調製のための溶媒としては、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG400等)、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート又はこれらの混合物等があげられる。また、該液剤は、ガーゼ、創面被覆材等に含浸させて使用することもできる。
【0040】
上記医薬組成物(製剤)中への有効成分、すなわち、CYP51阻害剤、HMGCR阻害剤等の配合量は、剤形によっても異なるが、例えば、軟膏剤もしくはクリーム剤の場合には、医薬組成物の全体重量を基準として、0.0025~5重量%、より好ましくは0.5~5重量%、とりわけ好ましくは1~2重量%とすることができる。また、医薬組成物を含む医薬が液剤である場合には、医薬組成物の全体量を基準として、0.1~200mg/mL、より好ましくは5~50mg/mL、とりわけ10~20mg/mLとすることが好ましい。
【0041】
[医薬組成物の適用]
なお、本発明の医薬組成物の投与量は、痒みの種類、疾患部位、痒みの程度等に応じて、上記製剤の適量を1日当り1回~数回、局所投与(患部への塗布等による局所投与)すればよい。
【0042】
[慢性皮膚炎治療用の候補化合物のスクリーニング方法]
本発明における、慢性皮膚炎治療用の候補化合物のスクリーニング方法は、対象となる化合物が有する、特定脂質代謝物(コレステロール生合成前駆物質)の少なくとも1種の産生を阻害する阻害活性を測定する測定工程と、測定された阻害活性の値に基づいて、対象化合物が慢性皮膚炎の治療に有効か否かを判定する判定工程とを含む。
【0043】
測定工程においては、例えば、以下の方法で阻害活性を測定可能である。
例えば、コレステロール除去血清を添加したDMEM(ダルベッコ改変イーグル)培地に懸濁した1x10個(1mL)のHaCaT細胞を12ウェルのマルチウェルプレートに播種し、そこに最終濃度30μMの17-ヒドロキシプロゲステロン、さらにジメチルスルホキシドに溶解した1mMの対象化合物を最終濃度1μMになるように添加し、48時間培養する。
上記細胞をPBSで2回洗浄したのち、200μLのTrypLE Expressを添加し37℃で13分間インキュベートする。0.5mLのPBSを添加して細胞をチューブに回収した後、4℃、500gで5分遠心し、細胞を沈殿させ、上清を除去した後に0.4mLのPBSで再懸濁する。1 mLのヘキサンで洗浄したガラスチューブにケイソウ土カラム(ISOLUTE SLE+400、Biotage)をセットし、細胞懸濁液を全量添加する。シリンジを用いて細胞懸濁液をカラムに充填させたのち、750μLのジクロロメタンをカラム上部に添加し、流出液を回収する。同じ作業を3回繰り返し、サンプル溶液を得る。
回収したサンプル溶液に0.1μg/μLのD7-コレステロールのエタノール溶液を10μL添加し、よく混合した後に40℃で30分間窒素置換を行い乾燥させる。乾燥したサンプルに、50μLのBSTFA+TMCS,99:1(Supelco社)および10μLのピリジンを加え、ガラスバイアルにすぐにキャップをして40℃で30分間静置する。2μLのサンプルをガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)で分析する。GC/MS分析条件は、以下に示す通りである。
<GC/MS分析条件>
キャピラリーカラム:Rtx-5MS (長さ30m, 内径0.25mm, 膜厚0.25μm)
オーブン温度:150 ℃, 保持1分-20℃/分→250℃, 5℃/分→280℃, 保持10分- 20℃/分→330℃, 保持3分。すなわち、150 ℃で1分間保持し、20℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、 5℃/分の昇温速度で280℃まで昇温し、280℃で10分間、保持し、20℃/分の昇温速度で330℃まで昇温し、3分間、保持する。
キャリアガス:He, 線速度39.0 cm/秒
イオン源温度: 200℃
インターフェース温度:280℃
気化室温度: 250℃
そして特定脂質代謝物(コレステロール生合成前駆物質)の少なくとも1種のピークエリアを測定し、対象化合物の阻害活性を算出する。その際、化合物を添加しない場合の特定脂質代謝物のピークエリアを0%阻害とする。
また、判定工程においては、例えば、所定の閾値以上の活性を有する化合物を製剤化すべく、測定された阻害活性の値に基づいて、以下の方法で当該化合物が慢性皮膚炎の治療に有効か否かを判定する。すなわち、上述の測定工程における阻害活性の測定方法であって、後述の実施例8においても採用されている測定方法で測定したときに、少なくともいずれかの特定脂質代謝物について、例えば、10μMで50%以上の蓄積阻害活性を示す化合物、より好ましくは、少なくともいずれかの特定脂質代謝物について、1μMで50%以上の蓄積阻害活性を示す化合物を、慢性皮膚炎の治療に有効と判定する。
このように、上記測定工程と判定工程とを有する本願発明の方法は、慢性皮膚炎の治療に有効と予想される候補医薬のスクリーニング方法として有用である。
【0044】
[慢性皮膚炎の診断のための方法]
本発明における、慢性皮膚炎の診断のための方法は、特定脂質代謝物の少なくとも1種を皮膚のサンプルから検出する検出工程と、サンプルから検出されたコレステロール生合成前駆物質の検出量と、基準となる基準量とを比較する比較工程とを有する。
【0045】
検出工程においては、例えば、以下の方法で特定脂質代謝物を検出する。
病変部の角質を約1mg採取し、3mLのヘキサンで脂質を抽出する。抽出物に対し、内標準物質(Internal standard)として、0.1μg/μLのD7-コレステロールのエタノール溶液を10μL添加する。これをシリカゲルカラム(Waters Sep-Pak Silica)に全量ロードし、1mLの酢酸エチルで溶出する画分を2mLのガラスバイアルに回収する。内容物を窒素気流下40℃に加温して乾固させた後、トリメチルシリル誘導体化を行う。具体的には、乾固後のバイアルに50μLのBSTFA-TMCS(99:1)液と10μLのpyridineを加え、混和したのち密栓して40℃で40分間保温する。ここでのGC/MS分析条件は、上述の慢性皮膚炎治療用の候補化合物のスクリーニング方法におけるGC/MS分析条件と同一である。
【0046】
さらに、あらかじめ濃度が明らかである標準試料を同じ条件で分析しておき、内部標準とのピーク面積比により標準化し、各物質の単位量あたりのエリア面積を求めておくことで定量も可能である。
標準試料が入手できないピークに関しては、コレステロールのピークとの面積の比較を行って相対量として評価する。具体的にはコレステロールのピーク100000に対する、分析対象物質のピークの面積を算出し、病変部から得られた検体と、正常に角化した検体から得られた相対面積の比較を行う。
【0047】
以下に、上述の方法により得られた実際の測定データを示す。下記値は、すべて上述の方法により測定をおこない、コレステロールのピーク面積100000当たりの各物質のピーク面積を指数として表したものである。正常角化検体等におけるそれぞれのコレステロール生合成前駆物質のピーク面積は以下の通りであった。以下に示すように、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬ではすべての特定脂質代謝物(コレステロール生合成前駆物質)で、平均して正常角化角質の5倍以上の蓄積を認めた。
【表1】
【0048】
上述のように、慢性皮膚炎の病変部においては、特定脂質代謝物が蓄積されることが、新たに確認されたため、サンプルから検出されたコレステロール生合成前駆物質の検出量が、所定の基準量よりも多い場合、当該サンプルの提供者は、慢性皮膚炎に罹患している可能性が高いと考えられる。
このように、上記検出工程と比較工程とを有する本願発明の方法は、慢性皮膚炎の診断のための方法、あるいは、慢性皮膚炎の診断を補助する方法(重症度の評価、治療効果の判定)として、有用である。
ここで基準量とは、所定の分析条件でGC-MS分析を行った際に検出される特定脂質代謝物の、コレステロールに対するピーク面積の比率で評価される値であり、正常に角化した角質ではコレステロールのピーク面積100000に対し、C28Aが150以下、C28Bが100以下、C29Aが200以下、C29Bが100以下である。よってコレステロールのピーク面積100000に対して、ピーク面積150がC28Aの基準量、ピーク面積100がC28Bの基準量、ピーク面積200がC29Aの基準量、ピーク面積100がC29Bの基準量となり得る。
【0049】
上述のように、慢性皮膚炎の病変部においては、特定脂質代謝物が蓄積されることが、新たに確認されたため、サンプルから検出されたコレステロール生合成前駆物質の検出量が、所定の基準量よりも多い場合、当該サンプルの提供者は、慢性皮膚炎に罹患している可能性が高いと考えられる。
このように、上記検出工程と比較工程とを有する本願発明の方法は、慢性皮膚炎の診断のための方法、あるいは、慢性皮膚炎の診断を補助する方法として、有用である。
【実施例0050】
実施例1
[CHILD症候群の治療]
CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎の患者の左脇の病変部に対して、HMGCR阻害剤としてアトルバスタチンを用い、1%アトルバスタチン・2%コレステロール水溶液の外用を1日2回行った。外用開始後1ヶ月で皮疹の改善が認められ、外用開始後7ヶ月で完全に皮疹は消失した。アトルバスタチンによる治療開始前の左脇の病変部を図3(A1)に、治療開始後の左脇部位を図3(A2)に示す。
また、CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎の患者の首の後側の病変部に対して、CYP51阻害剤として1%オキシコナゾールクリーム(販売名:オキナゾールクリーム)を用い、外用を1日1回行った。外用開始後4ヶ月で完全に皮疹は消滅した。オキシコナゾールによる治療開始前の首の後側の病変部を図3(B1)に、治療開始後の首の後側部位を図3(B2)に示す。
以上より、CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎に対して、HMGCR阻害剤、及び、CYP51阻害剤が共に有効であることが確認された。
【0051】
実施例2
[CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎]
CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎患者の病変部角質と、同一患者の健常部角質皮膚とを比較したところ、図4に示されるように、病変部においてのみ特定の脂質代謝物が蓄積していることが確認された。
(実験方法)
病変部の角質を約1mg採取し、3mLのヘキサンで脂質を抽出した。抽出物に対し、内標準物質として、0.1μg/μLのD7-コレステロールのエタノール溶液10μLを添加した。シリカゲルカラム(Waters Sep-Pak Silica)に全量ロードし、1mLの酢酸エチルで溶出する画分を2mLのガラスバイアルに回収した。内容物を窒素気流下40℃に加温して乾固させたあと、トリメチルシリル誘導体化を行った。具体的には、乾固後のバイアルに50μLのBSTFA-TMCS (99:1)液と10μLのpyridineを加え、混和したのち密栓して40℃で40分間保温した。GC/MS分析条件は、以下に示す通りであり、GC/MS分析の結果は表2に示す通りである。
<GC/MS分析条件>
キャピラリーカラム:Rtx-5MS (長さ30m, 内径0.25mm, 膜厚0.25μm)
オーブン温度:150 ℃, 保持1分-20℃/分→250℃, 5℃/分→280℃, 保持10分- 20℃/分→330℃, 保持3分。
キャリアガス:He, 線速度39.0 cm/秒
イオン源温度: 200℃
インターフェース温度:280℃
気化室温度: 250℃
【0052】
【表2】
上記式(I)~(IV)の化合物は、いずれもステロール骨格を有し、3位にOH基を含むものである。なお、式(I)及び式(II)の化合物(炭素数は29)はいずれも4位に2つのメチル基を有し、式(III)及び式(IV)の化合物(炭素数は28)はいずれも4位に1つのメチル基を有する。
なお、表2に示すコレステロール生合成前駆物質のGC/MSのスペクトルデータのm/z値はいずれも理論値であり、例えば、式(II)の化合物(C29B)における484.4のピークは、コレステロール生合成前駆物質Aの分子の水酸基がトリメチルシリル化(TMS化)されて生じる-OSi(C)体に由来する値であり、379.3は、上記TMS体からCHとOSi(C)が脱離した断片に由来する値であり、135.1は、C1015の断片に由来する値である。
そして上記化合物のm/zの理論値は、図1、及び、図2において示される実測値と対応しているものの測定誤差も認められる。例えば、図1のC29Bの測定データにおいては、若干の測定誤差により、式(II)の化合物(C29B)についての理論値である484.4に対応する484.35のピーク、及び、理論値である135.1に対応する135.15のピークが、それぞれ検出されている。このように、GC/MSのスペクトルデータのm/z値においては、概ね、±0.1程度までの誤差が認められ得る。
また、内部標準物質であるコレステロールに対する上記相対保持時間の値についても、概ね±0.01程度までの測定誤差が認められ、例えば、式(II)の化合物(C29B)においては、上記1.27の測定値が1.26~1.28の範囲で変化する可能性もある。
【0053】
図4は、CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎患者の病変部と、同一患者の健常部とにおける脂質代謝物の測定された蓄積量を示す図である。このように、CHILD症候群患者の病変部の角質では、正常部分ではほとんど検出されない特定脂質代謝物が検出された。
そして検出された化合物の分子構造は、上述のように、式(I)~(IV)で表されることが確認された。
【0054】
実施例3
[脂質代謝物の蓄積抑制効果]
実施例2で特定された脂質代謝物を人為的に蓄積させる試験系を構築し、各種のコレステロール生合成阻害剤による、産生抑制効果を調べた。
(実験方法)
ヒトケラチノサイト培養細胞株HaCaTをコレステロールフリーの血清10%を含む培地で培養すると、HaCaT細胞は培地中の成分を用いて、多量のコレステロールを合成するようになる。この時、培地に17-ヒドロキシプロゲステロンを30μMの濃度で加えることで、4位のメチル基を酸化的に脱メチル化する酵素(NSDHL)の活性が阻害され、CHILD症候群の皮膚と同様に、特定脂質代謝物が細胞に蓄積する。
このCHILD症候群を模したHaCaT細胞の培養系に、様々なコレステロール生合成阻害剤を加えることで、特定の脂質代謝物の蓄積が抑えられるかどうかを検討するための試験を行った。
添加した薬剤が特定の脂質蓄積を抑制するかどうかの評価は、培養後、それぞれの細胞から脂質を抽出し、コレステロールのピーク(m/z 458.4)に対する特定の脂質の相対的なピーク面積を計測し、17-ヒドロキシプロゲステロンのみ加えた(-)場合の相対ピーク面積と比較することで、投与した薬剤の効果を検討した。
特定の脂質の相対量の評価に用いた、物質に特異的なイオンのm/z値はそれぞれ、

C29A(式(I)の化合物): m/z 486.4,
C29B(式(II)の化合物): m/z 484.4
C28A(式(III)の化合物): m/z 227.2,及び、
C28B(式(IV)の化合物): m/z 472.4であった。
グラフに示した濃度の各薬物を添加することで特定の脂質代謝物の蓄積は抑制された。また、濃度を10倍ずつ変化させた試験の結果においても、すべての薬物に関して、用量依存的に阻害効果が認められた。
その結果、特に、オキシコナゾールによって特定の脂質代謝物の蓄積量が抑制されることが見出された([図5]参照)。従って、特定の脂質代謝物の蓄積阻害剤が治療薬になり得ることが示唆された。
【0055】
実施例4
[慢性皮膚疾患における脂質代謝物の蓄積]
実施例1で特定された脂質代謝物の蓄積が、慢性皮膚炎の患者においても確認されるか実験した。
(実験方法)
実施方法は、上記実施例2と同じである。
すなわち、健常人の角質、CHILD症候群患者の角質(病変部及び健常部)、尋常性乾癬患者の角質(病変部及び健常部)、遺伝性角化症患者の角質(病変部)、急性皮膚炎患者の角質(病変部)、中毒疹患者の角質(病変部)、及び、アトピー性皮膚炎患者の角質(病変部)をそれぞれ約1mg採取し、実施例2と同様の方法で脂質を抽出し、分析を行った。組織重量あたりの各特定脂質代謝物のピーク面積を、健常人の角質のそれと比較して評価した。CHILD症候群患者の病変部、尋常性乾癬患者の皮疹部、アトピー性皮膚炎患者の病変部では、健常人の角質に比べて組織重量あたり100倍以上の特定脂質代謝物の蓄積が認められた。一方、CHILD症候群患者の健常部、尋常性乾癬患者の非皮疹部の角質では、健常人の角質と差がなかった。また、遺伝性角化症患者、接触性皮膚炎(急性皮膚炎)患者、中毒疹患者、及び、胼胝患者の病変部では、特定脂質代謝物の蓄積量は健常人の角質と変わらないことがわかった。実施例4の結果を図6に示す。なお、図6では、それぞれの脂質の単位重量あたりのピーク面積を算出し、健常人の単位重量あたりの各脂質のピーク面積を基準値である1として、病変部における特定脂質代謝物の蓄積量が基準値の何倍になったかを示す相対値を表示した。
【0056】
実施例5
[治療に伴う脂質代謝物の変化]
尋常性乾癬の患者の病変部に対して、セクキヌマブ(販売名:コセンティクス(ヒト型抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体製剤)を1回300mg、皮下注射した。
具体的には、0,1,2,3,4,5週目に1回300mg、皮下注射し、以後は4週間ごとに1回300mg、皮下注射を行った。
【0057】
上記の患者に対し、尋常性乾癬のセクキヌマブ投与前、及び、投与後に病変部の同じ箇所から角質を採取し、実施例1と同じ方法で脂質の抽出と分析を行った。鱗屑を伴う皮疹は治療によって軽快し、皮疹が治癒した場合は鱗屑の採取ができなくなった。採取ができた2例で治療前後を比較すると、2例とも特定脂質代謝物の蓄積は低減した。この結果を図7に示す。図7の縦軸は、特定脂質代謝物の蓄積量の相対値を表していて、より具体的には、同一条件でコレステロールを分析したときのピーク面積100000あたりの各物質のピーク面積を表している。
以上より、乾癬の治療前後で病変部の角質中の特定脂質代謝物を測定した結果、治療前に蓄積していた特定脂質代謝物が、いずれもセクキヌマブによる治療で低減したことが確認された(図7(A)と(B)参照)。
このように、乾癬、及び詳細を後述するアトピー性皮膚炎といった慢性症状を伴う皮膚病変では、皮膚炎に関連した毒性を有する特定脂質代謝物が蓄積している(図7(A)と(B)のBefore欄参照)一方で、慢性炎症を伴わない皮膚病変(急性皮膚炎や中毒疹など)ではそのような蓄積はみられなかった。このため、特定脂質代謝物は皮膚炎の慢性化に寄与すると考えられる。
そして上述のように、乾癬治療による皮膚症状の改善に伴い特定脂質代謝物の蓄積が低下することも確認されているため、特定脂質代謝物の蓄積と、慢性皮膚炎の治療効果とは互いに関連しているといえる。従って、特定の脂質代謝物の蓄積阻害剤が、これらの慢性皮膚疾患の治療薬になり得ることが示唆された。
【0058】
実施例6
[アトピー性皮膚炎の治療]
アトピー性皮膚炎の患者の病変部に対するステロイドの外用を中止し、アトルバスタチン(アトルバスタチン原末を1%濃度になるように水に溶解させた1重量%アトルバスタチン液)、及び、オキナゾール(1%オキシコナゾールクリーム、販売名:オキナゾールクリーム)を1日2回、350mg(原末3.5mg相当)ずつ塗布し、健常部、アトルバスタチンとオキナゾールによる治療開始直前の病変部、治療から1週間経過後の病変部、及び、治療から3週間経過後の病変部から角質を採取し、実施例2と同じ方法で脂質の抽出と分析を行った。この結果、アトピー性皮膚炎では、アトルバスタチン、及び、オキナゾールの塗布により、患部の当該脂質の蓄積が抑制されることが確認された(図8参照)。図8においては、縦軸が、コレステロールのピーク面積100000あたりの各物質のピーク面積を表している。
なお、アトピー性皮膚炎に対してステロイド塗布を中止すると、通常、皮膚炎は悪化する傾向にある。これに対し、本実施例のように、ステロイド塗布の中止後にアトルバスタチン、及び、オキナゾールを塗布したところ、通常は悪化することの多い患部が、ステロイドの塗付の中止時とほぼ同じ状態に保持された。
【0059】
実施例7
[尋常性乾癬の治療]
尋常性乾癬の患者の病変部に対してオキナゾール(1%オキシコナゾールクリーム、販売名:オキナゾールクリーム)を1日2回、2週間に渡り塗布した。そして、健常部、オキナゾールによる治療開始直前の病変部、及び、治療から4週間経過後の病変部から角質を採取し、実施例2と同じ方法で脂質の抽出と分析を行った。この結果、尋常性乾癬においても、オキナゾールの塗布により、患部の当該脂質の蓄積が抑制されることが確認された(図9参照)。図9においても図8と同様に、縦軸が、コレステロールのピーク面積100000あたりの各物質のピーク面積を表している。
そして、治療から4週間経過後には皮膚鱗屑の減少が認められたため、オキナゾールには、皮膚症状の抑制効果があると認められる。
【0060】
以上より、CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎、尋常性乾癬、及び、アトピー性皮膚炎の病変部においては特定脂質代謝物が蓄積されること(実施例2及び4)、少なくともCHILD症候群においては特定脂質代謝物の産生を阻害する阻害剤により、特定脂質代謝物の蓄積量を減少させられること(実施例3)、及び、乾癬において、治療による皮疹の改善に伴い特定脂質代謝物の蓄積量が減少すること(実施例5)が確認された。
さらに、少なくとも、CHILD症候群に伴う慢性皮膚炎、尋常性乾癬、及び、アトピー性皮膚炎については、特定脂質代謝物の産生を阻害する阻害剤による、皮膚症状の改善、又は、特定脂質代謝物の蓄積の防止が確認された(実施例1、6、及び、7)。
以上のことから、上記特定脂質代謝物は皮膚炎の慢性化に寄与すると考えられるのであり、特定脂質代謝物の蓄積が確認された慢性皮膚炎が([図6]参照)、上記特定の脂質代謝物の産生を阻害する化合物による治療ターゲットとなり得ることが見出された。従って、特定の脂質代謝物の蓄積阻害剤が、これらの慢性皮膚疾患の治療薬になり得ることが示唆された。
【0061】
実施例8
[化合物のC29A蓄積阻害活性の評価]
評価化合物のC29A蓄積阻害活性については、上述の方法、すなわち、特定脂質代謝物の産生を阻害する阻害活性を測定する測定工程について採用した方法と同じ方法で測定した。その結果、アレンドロネート及びリセドロネートは、10μMで50%以上の良好なC29A蓄積阻害活性を示した。また、アモロルフィン塩酸塩、アトルバスタチン、アザランスタット、ビフォナゾール、ブトコナゾール硝酸塩、クロコナゾール塩酸塩、エコナゾール、フルアジナム、ロバスタチン、メトコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩、シンバスタチン、スルコナゾール硝酸塩、テブコナゾールおよびテルコナゾールは、1μMで50%以上の良好なC29A蓄積阻害活性を示した。
【0062】
実施例9
[化合物のヒトCYP51A1阻害活性の評価]
上記式(I)の化合物の阻害活性について、以下のように実験した。
(実験方法)
ヒトCYP51A1の阻害活性について、以下の方法で測定した。評価化合物は2.5mMとなるようにDMSOで溶解した。溶解した評価化合物は公比3でDMSOに希釈し、希釈系列を用意した。DMSOで希釈した評価化合物1μLを100mMのリン酸カリウム、3.3mMの塩化マグネシウム、0.38mg/mLのトリトンX100の混合溶液(12.5μL)で希釈した。
ヒトCYP51A1タンパクを発現させたカイコのミクロソーム分画をシスメックス社から入手した。CYP51A1の酵素活性を、基質となるラノステロールを代謝した際に使用するNADPH量から算出した。NADPHの測定にはAbcam社のNADP/NADPH assay kit(ab65349)を用いた。すなわち、それぞれ最終濃度が、100mMのリン酸カリウム、3.3 mMの塩化マグネシウム、0.38mg/mLのトリトンX100、0.564 U/mLのNADPH-P450レダクターゼ、40μMのラノステロール、260 μg/mLのヒトCYP51A1ミクロソームを含む水溶液(21μL)を用意し、希釈した評価化合物2μLを添加し、5分間静置した。そこに、100mMのリン酸カリウム、3.3 mMの塩化マグネシウム、0.38mg/mLのトリトンX100の混合水溶液で希釈した0.5mM NADPH溶液を2μL添加し、室温で20分間静置した。以降の操作はAbcam社のNADP/NADPH assay kitのプロトコールに準じて行った。
評価化合物を添加せずに上記試験を行った際のNADPH消費量を100%活性とし、各濃度の評価化合物存在下でのNADPH消費量からヒトCYP51A1の阻害活性(IC50)を算出した。
その結果、アザランスタット、ビフォナゾール、ブトコナゾール硝酸塩、クロコナゾール塩酸塩、メトコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩、スルコナゾール硝酸塩及びテブコナゾールは、1μM以下の良好なIC50を示した。
【0063】
このように、本発明の有効成分である化合物、すなわち、少なくともCYP51阻害剤、及び、HMGCR阻害剤が、慢性皮膚疾患の抑制に効果を奏することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、新規な特定のコレステロール生合成前駆物質の産生を阻害するとともに、慢性皮膚炎に対する治療効果の優れた医薬組成物、及び、特定のコレステロール生合成前駆物質の検出量に着目した、慢性皮膚炎の候補医薬のスクリーニング方法等を提供することができる。
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