(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036381
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】2-アミノエチルスルホン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 303/02 20060101AFI20220301BHJP
C07C 309/14 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C07C303/02
C07C309/14
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140552
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】302069734
【氏名又は名称】本荘ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 聡
(72)【発明者】
【氏名】金子 周平
(72)【発明者】
【氏名】高木 伸太郎
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC61
4H006AD15
4H006BB31
4H006BC10
4H006BD31
4H006BD33
4H006BD35
4H006BD52
(57)【要約】
【課題】モノエタノールアミン法による2-アミノエチルスルホン酸の製造において、未反応の2-アミノエタノール硫酸エステル及び/又は亜硫酸ナトリウムを再利用して、高純度の2-アミノエチルスルホン酸を高収率にて得ることができる2-アミノエチルスルホン酸の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造を水中、50℃以上の温度にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させた後、得られた反応混合物から硫酸ナトリウムを固液分離して、第1の濾液を得、この濾液から2-アミノエチルスルホン酸を固液分離により取得して、第2の濾液を得た後、第2回目の製造を上記同様に行い、その際、上記第2の濾液に含まれる未反応2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを新規の2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムと共に併せて用いると共に、上記新規の2-アミノエタノール硫酸エステルと併せて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造を
(a)水中、50℃以上の温度にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる工程、
(b)上記工程(a)で得られた反応混合物を100~110℃の範囲の温度に加熱し、濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得る工程、
(c)上記スラリーから上記析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを100~110℃の範囲の温度で固液分離して、第1の濾液を得る工程、
(d)上記第1の濾液を30~40℃の範囲に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を含むスラリーを得る工程、
(e)上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を上記スラリーから固液分離して取得すると共に、第2の濾液を得る工程
を経て行った後、第2回目の製造を上記工程(a)から(e)を繰り返して行う2-アミノエチルスルホン酸の製造方法であって、
上記第1回目の製造の工程(e)にて得られた第2の濾液に含まれる未反応2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを上記第2回目の製造における上記工程(a)において用い、その際、新規に用いる2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを併せて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることを特徴とする2-アミノエチルスルホン酸の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)において、水中、温度100~110℃の沸騰状態において、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる請求項1に記載の2-アミノエチルスルホン酸の製造方法。
【請求項3】
水中、温度100~110℃の沸騰状態にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させながら、反応混合物を同時に濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得、次いで、工程(c)を行う請求項2に記載の2-アミノエチルスルホン酸の製造方法。
【請求項4】
(a)水中、50℃以上の温度にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる工程、
(b)上記工程(a)で得られた反応混合物を100~110℃の範囲の温度に加熱し、濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得る工程、
(c)上記スラリーから上記析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを100~110℃の範囲の温度で固液分離して、第1の濾液を得る工程、
(d)上記第1の濾液を30~40℃の範囲に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を含むスラリーを得る工程、
(e)上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を上記スラリーから固液分離して取得すると共に、第2の濾液を得る工程
を経て行った後、第2回目の製造を上記工程(a)から(e)を繰り返して行う2-アミノエチルスルホン酸の製造方法であって、
上記第1回目の製造の前記工程(c)において得られた上記未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを水スラリーとし、この水スラリーに強酸を加え、未反応亜硫酸ナトリウムと反応させて、発生した二酸化硫黄ガスを水酸化ナトリウム水溶液に吸収させ、亜硫酸ナトリウムとして回収し、この亜硫酸ナトリウムを第2回目の製造における工程(a)において用い、その際、新規に用いる亜硫酸ナトリウムを併せて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることを特徴とする2-アミノエチルスルホン酸の製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)において、水中、温度100~110℃の沸騰状態において、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる請求項4に記載の2-アミノエチルスルホン酸の製造方法。
【請求項6】
水中、温度100~110℃の沸騰状態にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させながら、反応混合物を同時に濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得、次いで、工程(c)を行う請求項5に記載の2-アミノエチルスルホン酸の製造方法。
【請求項7】
前記強酸が硫酸である請求項4に記載の2-アミノエチルスルホン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2-アミノエチルスルホン酸の製造方法に関し、詳しくは、2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを反応させてアミノエチルスルホン酸を製造する方法において、未反応の2-アミノエタノール硫酸エステル及び/又は亜硫酸ナトリウムを2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムとの反応に再利用して、高純度の2-アミノエチルスルホン酸を高収率にて得ることができる2-アミノエチルスルホン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-アミノエチルスルホン酸はタウリンとも呼ばれており、よく知られているように、疲労回復、鎮静等の薬理作用を有することから、ドリンク剤や目薬に配合されている。
【0003】
2-アミノエチルスルホン酸の製造方法は、従来、種々のものが知られている(特許文献1参照)。なかでも、モノエタノールアミンを硫酸エステル化して得られる2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸塩と反応させる方法(以下、単に、モノエタノールアミン法という。)は、原料である2-アミノエタノール硫酸エステルが容易に得られると共に、安全で取り扱いやすいことから、容易且つ安全な方法としてよく知られている。
【0004】
即ち、モノエタノールアミン法によれば、2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを水中、好ましくは、沸騰状態で反応させ、2-アミノエチルスルホン酸を含む反応混合物を得、通常、この反応混合物から副生物である硫酸ナトリウムを分離除去した後、反応混合物を濃縮して水分を除き、得られた濃縮液を冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を晶析させ、これを固液分離して、2-アミノエチルスルホン酸を結晶として得る。
【0005】
しかし、上記モノエタノールアミン法によれば、2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムとを反応させて得られた反応混合物から2-アミノエチルスルホン酸を分離した後の濾液には尚、多量の2-アミノエチルスルホン酸が溶解しているのみならず、未反応の2-アミノエタノール硫酸エステルや亜硫酸ナトリウム等が含まれており、従って、単一回の反応によって、目的とする2-アミノエチルスルホン酸を高収率で得ることができない。
【0006】
そこで、単一回の反応によって、目的とする2-アミノエチルスルホン酸を高収率で得るためには、上記濾液を再度、濃縮し、冷却して、上記濾液中の2-アミノエチルスルホン酸を再結晶させ、2次晶として得る必要がある。場合によっては、上記2次晶を得た後の濾液から更に3次晶を得る必要がある。
【0007】
しかし、上述したように、2-アミノエチルスルホン酸を分離した後の上記濾液は、2-アミノエチルスルホン酸以外にも、未反応の2-アミノエタノール硫酸エステルや亜硫酸ナトリウム等を含むことから、高純度の2次晶を得ることは困難であり、高純度の3次晶を得ることは一層、困難である。
【0008】
このように、従来のモノエタノールアミン法によれば、高純度の2-アミノエチルスルホン酸を高収率にて得ることができない。
【0009】
更に、従来のモノエタノールアミン法によれば、副生する硫酸ナトリウムは亜硫酸ナトリウムを多量に含んでおり、純度が低いことから廃棄されているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来のモノエタノールアミン法による2-アミノエチルスルホン酸の製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、未反応の2-アミノエタノール硫酸エステル及び/又は亜硫酸ナトリウムを再利用して、高純度の2-アミノエチルスルホン酸を高収率にて得ることができる2-アミノエチルスルホン酸の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
更に、本発明は、未反応亜硫酸ナトリウムを副生物である硫酸ナトリウムと共に製造工程の途中で回収し、硫酸ナトリウムから分離して、かくして得られた亜硫酸ナトリウムを2-アミノエタノール硫酸エステルとの反応に再利用する2-アミノエチルスルホン酸の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造を
(a)水中、50℃以上の温度にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる工程、
(b)上記工程(a)で得られた反応混合物を100~110℃の範囲の温度に加熱し、濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得る工程、
(c)上記スラリーから上記析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを100~110℃の範囲の温度で固液分離して、第1の濾液を得る工程、
(d)上記第1の濾液を30~40℃の範囲に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を含むスラリーを得る工程、
(e)上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を上記スラリーから固液分離して取得すると共に、第2の濾液を得る工程
を経て行った後、第2回目の製造を上記工程(a)から(e)を繰り返して行う2-アミノエチルスルホン酸の製造方法であって、
上記第1回目の製造の工程(e)にて得られた第2の濾液に含まれる未反応2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを上記第2回目の製造における上記工程(a)において用い、その際、新規に用いる2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを併せて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることを特徴とする2-アミノエチルスルホン酸の製造方法が提供される。以下、上記発明を第1の発明という。
【0014】
本発明によれば、2-アミノエチルスルホン酸の製造において、工程(a)を水中、温度100~110℃の沸騰状態にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることが好ましい。
【0015】
そして、本発明によれば、工程(a)と工程(b)を同時に行うことができる。即ち、水中、温度100~110℃の沸騰状態にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させながら、反応混合物を同時に濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得、次いで、工程(c)を行ってもよい。
【0016】
また、本発明によれば、
(a)水中、50℃以上の温度にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる工程、
(b)上記工程(a)で得られた反応混合物を100~110℃の範囲の温度に加熱し、濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得る工程、
(c)上記スラリーから上記析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを100~110℃の範囲の温度で固液分離して、第1の濾液を得る工程、
(d)上記第1の濾液を30~40℃の範囲に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を含むスラリーを得る工程、
(e)上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を上記スラリーから固液分離して取得すると共に、第2の濾液を得る工程
を経て行った後、第2回目の製造を上記工程(a)から(e)を繰り返して行う2-アミノエチルスルホン酸の製造方法であって、
上記第1回目の製造の前記工程(c)において得られた上記未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを水スラリーとし、この水スラリーに強酸を加え、未反応亜硫酸ナトリウムと反応させて、発生した二酸化硫黄ガスを水酸化ナトリウム水溶液に吸収させ、亜硫酸ナトリウムとして回収し、この亜硫酸ナトリウムを第2回目の製造における工程(a)において用い、その際、新規に用いる亜硫酸ナトリウムを併せて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることを特徴とする2-アミノエチルスルホン酸の製造方法が提供される。以下、上記発明を第2の発明という。
【0017】
本発明によれば、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造において、工程(a)を水中、温度100~110℃の沸騰状態にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることが好ましい。
【0018】
そして、本発明によれば、工程(a)と工程(b)を同時に行うことができる。即ち、水中、温度100~110℃の沸騰状態にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させながら、反応混合物を同時に濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得、次いで、工程(c)を行ってもよい。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造において得られた反応混合物から目的とする2-アミノエチルスルホン酸を回収した後の濾液に含まれる2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを第2回目の製造において新規に用いる2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムと共に2-アミノエチルスルホン酸の合成反応に用いることによって、高純度の2-アミノエチルスルホン酸を高収率にて得ることができる。
【0020】
また、第2の発明によれば、未反応亜硫酸ナトリウムを副生物である硫酸ナトリウムと共に製造工程の途中で回収し、未反応亜硫酸ナトリウムを硫酸ナトリウムから分離して、これを第2回目の製造において、新規の亜硫酸ナトリウムと共に2-アミノエタノール硫酸エステルとの反応に用いることによって、従来、硫酸ナトリウムと共に廃棄されていた亜硫酸ナトリウムを2-アミノエチルスルホン酸の製造に有効利用することができ、更に、亜硫酸ナトリウムが除去された高純度の硫酸ナトリウムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1による2-アミノエチルスルホン酸の製造方法は、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造を
(a)水中、50℃以上の温度にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる工程、
(b)上記工程(a)で得られた反応混合物を100~110℃の範囲の温度に加熱し、濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得る工程、
(c)上記スラリーから上記析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを100~110℃の範囲の温度で固液分離して、第1の濾液を得る工程、
(d)上記第1の濾液を30~40℃の範囲に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を含むスラリーを得る工程、
(e)上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を上記スラリーから固液分離して取得すると共に、第2の濾液を得る工程
を経て行った後、第2回目の製造を上記工程(a)から(e)を繰り返して行う2-アミノエチルスルホン酸の製造方法であって、
上記第1回目の製造の工程(e)にて得られた第2の濾液に含まれる未反応2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを上記第2回目の製造における上記工程(a)において用い、その際、新規に用いる2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを併せて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることを特徴とするものである。
【0022】
上記工程(a)は、反応容器に2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを含む水溶液を反応原料混合物として調製し、2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを反応させる工程である。
【0023】
第1回目の2-アミノエチルスルホン酸の製造においては、反応容器に2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムと水を仕込んで、2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを水に溶解させ、これらを含む水溶液を反応原料混合物として調製する。
【0024】
次いで、2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを含む反応原料混合物を常圧下、50℃以上の温度にて、好ましくは、100~110℃の温度に加熱し、沸騰状態で反応させる工程である。反応時間は、限定されるものではないが、通常、16~24時間である。
【0025】
2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムとの反応による2-アミノエチルスルホン酸の合成は、次式(1)で表される。
【0026】
NH2CH2CH2OSO3H + Na2SO3 → NH2CH2CH2SO3H + Na2SO4…(1)
【0027】
2-アミノエタノール硫酸エステルは、よく知られているように、例えば、モノエタノールアミンの酸性硫酸塩を水と共沸する有機溶剤、例えば、トルエン、キシレン又はクロルベンゼン中、加熱し、脱水することによって、粉体として得ることができる。
【0028】
本発明の方法によれば、工程(a)において、反応原料混合物における亜硫酸ナトリウムと2-アミノエタノール硫酸エステルは、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として反応させる。
【0029】
上記亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比が1.1よりも小さいときは、未反応2-アミノエタノール硫酸エステルの量が多くなって、工程(d)において、2-アミノエチルスルホン酸を結晶として析出させるときに、上記結晶が2-アミノエタノール硫酸エステルを多く含み、その結果、得られる2-アミノエチルスルホン酸は純度が低い。
【0030】
高純度の2-アミノエチルスルホン酸を得る観点からは、反応原料混合物における亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比の上限は特に制限されない。しかし、亜硫酸ナトリウムを大過剰に用いても、そのような亜硫酸ナトリウムは反応に関与せず、未反応分を徒に増やすだけであって、得られた反応混合物に水に不溶分として残存して、工程(c)において硫酸ナトリウムと共に反応混合物から分離、除去されることとなる。従って、反応原料混合物における亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比は、通常、2.0以下とすることが好ましい。
【0031】
工程(b)は、上記工程(a)で得られた反応混合物を100~110℃の温度に加熱し、水を除去して、濃縮し、未反応亜硫酸ナトリウムを副生物である硫酸ナトリウムと共に析出させ、このように未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含む反応混合物をスラリーとして得る工程である。
【0032】
本発明によれば、上記工程(a)と工程(b)を併せて行ってもよい。即ち、水中、温度100~110℃の沸騰状態にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させながら、反応混合物を同時に濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得、次いで、工程(c)を行うのである。
【0033】
工程(c)は、上記スラリーから上記析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを固液分離して、第1の濾液を得る工程である。亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムはいずれも、約35℃の温度にて水への溶解度が極大値をとり、約35℃よりも高い温度では温度と共に水への溶解度が低下するので、上記亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを温度80℃から沸騰状態で、好ましくは、100~110℃の温度にて熱時に固液分離、例えば、熱時濾過することにより亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムをスラリーから分離する。
【0034】
このようにして、反応混合物としてのスラリーから分離された亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの混合物は、通常、硫酸ナトリウム約72~76重量%、亜硫酸ナトリウム約17~21重量%、2-アミノエチルスルホン酸1重量%未満及び水約4~6重量%を含む。
【0035】
上記スラリーから未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを固液分離して得られる第1の濾液は、目的とする2-アミノエチルスルホン酸のほか、未反応の2-アミノエタノール硫酸エステルや、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等を含む。
【0036】
そこで、工程(d)は、上記第1の濾液を30~40℃の範囲、好ましくは、30~35℃の範囲の温度に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、析出した2-アミノエチルスルホン酸を含むスラリーを得る工程である。
【0037】
工程(e)は、上記スラリーから上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を30~40℃の範囲の温度、好ましくは、30~35℃の範囲の温度で固液分離して取得すると共に第2の濾液を得る工程である。この第2の濾液は、通常、目的物である2-アミノエチルスルホン酸を尚、約8~10重量%含み、更に、副生物である硫酸ナトリウム約14~20重量%に加えて、未反応の2-アミノエタノール硫酸エステル約4~9重量%と亜硫酸ナトリウム約10~19重量%を含んでいる。
【0038】
工程(e)で得られた2-アミノエチルスルホン酸は、必要に応じて、再結晶等によって、精製してもよい。
【0039】
上述した工程(a)から工程(e)による2-アミノエチルスルホン酸の製造が本発明による2-アミノエチルスルホン酸の製造方法における2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造である。
【0040】
本発明の2-アミノエチルスルホン酸の製造方法によれば、再度、上記工程(a)から工程(e)を繰り返す2-アミノエチルスルホン酸の第2回目の製造を行い、この第2回目の製造においては、上記未反応の2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを含む第2の濾液を、通常、そのまま、上記工程(a)において新規に用いる2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムと水と共に混合して、反応原料混合物を水溶液として得る。
【0041】
この際、本発明においては、第2の濾液中の未反応の2-アミノエタノール硫酸エステルの量を、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて測定し、また、亜硫酸ナトリウム水溶液中の亜硫酸ナトリウム量は、従来、知られている方法によって定量する。必要に応じて、第2の濾液中の2-アミノエチルスルホン酸の量も、例えば、HPLCにて定量する。
【0042】
このように、2-アミノエチルスルホン酸の第2回目の製造においては、工程(a)において、上述したようにして反応原料混合物を得、この反応原料混合物における亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる。
【0043】
本発明によれば、このように、2-アミノエチルスルホン酸の第2回目の製造においても、工程(a)において、反応原料混合物における亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることによって、新規に用いる2-アミノエタノール硫酸エステルに基づいて、2-アミノエチルスルホン酸を高収率にて且つ高純度にて得ることができる。
【0044】
前述したように、工程(a)において、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させるに際し、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比の上限は特に制限されるものではないが、通常、2.0以下とすることが好ましい。
本発明によれば、必要に応じて、上記工程(a)から工程(e)を更に繰り返す2-アミノエチルスルホン酸の第3回目の製造を行い、その際に、第2回目の製造の工程(e)で得られた第2の濾液を、通常、そのまま、上記工程(a)において、新規に用いる2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムと水と共に混合して、反応原料混合物を水溶液として得る。
【0045】
本発明によれば、必要に応じて、同様にして、第4回目、第5回目、第6回目というように、何回でも、2-アミノエチルスルホン酸の製造を繰り返すことができる。
【0046】
2-アミノエチルスルホン酸の何回目の製造においても、反応原料混合物における亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比は1.1以上の範囲として、工程(a)において、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる。
【0047】
第2の発明による2-アミノエチルスルホン酸の製造方法は、
(a)水中、50℃以上の温度にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる工程、
(b)上記工程(a)で得られた反応混合物を100~110℃の範囲の温度に加熱し、濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得る工程、
(c)上記スラリーから上記析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを100~110℃の範囲の温度で固液分離して、第1の濾液を得る工程、
(d)上記第1の濾液を30~40℃の範囲に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を含むスラリーを得る工程、
(e)上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を上記スラリーから固液分離して取得すると共に、第2の濾液を得る工程
を経て行った後、第2回目の製造を上記工程(a)から(e)を繰り返して行う2-アミノエチルスルホン酸の製造方法であって、
上記第1回目の製造の前記工程(c)において得られた上記未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを水スラリーとし、この水スラリーに強酸を加え、未反応亜硫酸ナトリウムと反応させて、発生した二酸化硫黄ガスを水酸化ナトリウム水溶液に吸収させ、亜硫酸ナトリウムとして回収し、この亜硫酸ナトリウムを第2回目の製造における工程(a)において用い、その際、新規に用いる亜硫酸ナトリウムを併せて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることを特徴とするものである。
【0048】
上記強酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が用いられるが、好ましくは、硫酸が用いられる。
【0049】
上記工程(a)から工程(e)は、第1の発明である2-アミノエチルスルホン酸の製造方法において既に説明したとおりである。
【0050】
第2の発明においても、上記工程(a)と工程(b)を併せて行ってもよい。即ち、水中、温度100~110℃の沸騰状態にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させながら、反応混合物を同時に濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得、次いで、工程(c)を行うのである。
【0051】
上記第2の発明に係る2-アミノエチルスルホン酸の製造方法においては、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造において、上記工程(c)で析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーからこれらを100~110℃の範囲の温度での固液分離、通常、熱時濾過によって得、上記亜硫酸ナトリウムを前述したように硫酸ナトリウムから分離し、通常、水溶液として回収し、この水溶液を第2回目の製造の工程(a)において反応原料混合物の調製に用い、その際、回収した亜硫酸ナトリウムと新規に用いる亜硫酸ナトリウムと併せて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上の範囲として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる。
【0052】
上記工程(c)でスラリーから固液分離した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの混合物は、通常、硫酸ナトリウム約72~76重量%、亜硫酸ナトリウム約17~21重量%、有機物約1重量%未満及び水約4~7重量%を含んでおり、この亜硫酸ナトリウムが副生物である硫酸ナトリウムの純度を低くしている主たる原因である。従って、上記亜硫酸ナトリウムを除去した後の硫酸ナトリウムは高純度であって、種々の工業分野において高純度硫酸ナトリウムとして用いることができる。
【実施例0053】
以下に本発明による2-アミノエチルスルホン酸の製造方法の実施例を説明するが、本発明はそれら実施例によって限定されるものではない。
【0054】
以下において、得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率は、2-アミノエチルスルホン酸の製造ごとに用いた2-アミノエタノール硫酸エステルに基づいて求めた。また、得られた2-アミノエチルスルホン酸の純度は、HPLCによって測定した。同様に、第2の濾液中の2-アミノエタノール硫酸エステルもHPLCによって測定した。
【0055】
亜硫酸ナトリウム水溶液中の亜硫酸ナトリウム量は、濃度既知のヨウ素溶液を亜硫酸ナトリウム水溶液に過剰量加え、亜硫酸ナトリウムをヨウ素と反応させた後、余剰のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定して求めた。
【0056】
実施例1
(第1回目の2-アミノエチルスルホン酸の製造において、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.2とした2-アミノエチルスルホン酸の製造)
(2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造)
(工程(a))
2L容量の反応容器に水900gと亜硫酸ナトリウム161gと2-アミノエタノール硫酸エステル150g(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比=1.2)を仕込み、混合し、亜硫酸ナトリウムと2-アミノエタノール硫酸エステルを水に溶解させて、反応原料混合物を含む水溶液を調製した。上記水溶液を常圧下に内温100~105℃まで昇温し、沸騰状態で上記2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを16時間反応させた。
【0057】
(工程(b))
次いで、得られた反応混合物を常圧下、内温100~110℃に加熱し、濃縮し、水分を除去し、析出した亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得た。
【0058】
(工程(c))
上記スラリーを100~110℃の範囲の温度で熱時濾過して、上記析出した亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを上記スラリーから分離した。
【0059】
(工程(d))
一方、得られた第1の濾液は、これを約35℃に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、白色のスラリーを得た。
【0060】
(工程(e))
上記スラリーを濾過して、2-アミノエチルスルホン酸54gを結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率は41%であり、また、純度は99.1%であった。一方、上述したようにしてスラリーから2-アミノエチルスルホン酸を濾取した後の第2の濾液は444gであって、この第2の濾液は2-アミノエチルスルホン酸41gと2-アミノエタノール硫酸エステル42g及び亜硫酸ナトリウム46gを含んでいた。
【0061】
(2-アミノエチルスルホン酸の第2回目の製造)
次いで、上記2-アミノエチルスルホン酸41gと2-アミノエタノール硫酸エステル42g及び亜硫酸ナトリウム46gを含む濾液444gと水450gと亜硫酸ナトリウム161gと2-アミノエタノール硫酸エステル108gを2L容量の反応容器に仕込み、混合し、溶解させて、反応原料混合物(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比=1.5)を含む水溶液を得た。
【0062】
以下、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造と同様にして、工程(d)において2-アミノエチルスルホン酸が析出したスラリーを得、これを工程(e)において濾過して、2-アミノエチルスルホン酸87gを結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率は91%、純度は99.4%であった。
【0063】
(2-アミノエチルスルホン酸の第3回目の製造)
上記第2回目の製造において得られた2-アミノエチルスルホン酸を濾取した後の第2の濾液と水と亜硫酸ナトリウムと2-アミノエタノール硫酸エステルのそれぞれの表1に示す量を2L容量の反応容器に仕込み、混合し、溶解させて、反応原料混合物(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比=1.8)を含む水溶液を得た。
【0064】
以下、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造と同様にして、工程(d)において2-アミノエチルスルホン酸が析出したスラリーを得、工程(e)においてこれを濾過して、2-アミノエチルスルホン酸を結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率と純度を表1に示す。
【0065】
(第4回目から第6回目の製造)
第3回目の2-アミノエチルスルホン酸の製造と同様にして、2-アミノエチルスルホン酸の第4回目から第6回目の製造をいずれも反応原料混合物における亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.8として行って、2-アミノエチルスルホン酸を結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率と純度を表1に示す。
【0066】
第2回目以降の2-アミノエチルスルホン酸の製造において、いずれも2-アミノエチルスルホン酸を高純度、高収率で得ることができる。
【0067】
実施例2
(第1回目の2-アミノエチルスルホン酸の製造において、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.4とした2-アミノエチルスルホン酸の製造)
(2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造)
(工程(a))
2L容量の反応容器に水900gと亜硫酸ナトリウム188gと2-アミノエタノール硫酸エステル150g(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比=1.4)を仕込み、混合し、亜硫酸ナトリウムと2-アミノエタノール硫酸エステルを水に溶解させて、反応原料混合物を含む水溶液を調製した。上記水溶液を常圧下に内温100~105℃まで昇温し、沸騰状態で上記2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを17時間反応させた。
【0068】
(工程(b))
次いで、得られた反応混合物を常圧下に内温100~110℃に加熱し、濃縮し、水分を除去し、析出した亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得た。
【0069】
(工程(c))
上記スラリーを100~110℃の範囲の温度で熱時濾過して、上記析出した亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを上記スラリーから分離した。
【0070】
(工程(d))
一方、得られた第1の濾液は、これを約35℃に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、白色のスラリーを得た。
【0071】
(工程(e))
上記スラリーを濾過して、2-アミノエチルスルホン酸60gを結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率は45%であり、純度は99.8%であった。一方、2-アミノエチルスルホン酸を濾取した後の第2の濾液は400gであって、この第2の濾液中には2-アミノエチルスルホン酸34gと2-アミノエタノール硫酸エステル16g及び亜硫酸ナトリウム76gが含まれていた。
【0072】
(2-アミノエチルスルホン酸の第2回目の製造)
次いで、上記2-アミノエチルスルホン酸34gと2-アミノエタノール硫酸エステル16g及び亜硫酸ナトリウム76gを含む濾液400gと水450gと亜硫酸ナトリウム188gと2-アミノエタノール硫酸エステル134gを2L容量の反応容器に仕込み、混合し、溶解させて、反応原料混合物(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比=2.0)を含む水溶液を得た。
【0073】
以下、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造と同様にして、2-アミノエチルスルホン酸を析出させてスラリーを得、これを濾過して、2-アミノエチルスルホン酸94gを結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率は79%、純度は99.5%であった。
【0074】
実施例3
(第1回目の2-アミノエチルスルホン酸の製造において、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1とした2-アミノエチルスルホン酸の製造)
(2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造)
(工程(a))
2L容量の反応容器に水900gと亜硫酸ナトリウム147gと2-アミノエタノール硫酸エステル150g(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比=1.1)を仕込み、混合し、亜硫酸ナトリウムと2-アミノエタノール硫酸エステルを水に溶解させて、反応原料混合物を含む水溶液を調製した。上記水溶液を常圧下に内温100~105℃まで昇温し、沸騰状態で上記2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを16時間反応させた。
【0075】
(工程(b))
次いで、得られた反応混合物を常圧下に内温100~110℃で加熱し、濃縮し、水分を除去し、析出した亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得た。
【0076】
(工程(c))
上記スラリーを100~110℃の範囲の温度で熱時濾過して、上記析出した亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを上記スラリーから分離した。
【0077】
(工程(d))
一方、得られた第1の濾液は、これを約35℃に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、白色のスラリーを得た。
【0078】
(工程(e))
上記スラリーを濾過して、2-アミノエチルスルホン酸55gを結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率は41%であり、純度は99.1%であった。一方、2-アミノエチルスルホン酸を濾取した後の第2の濾液は388gであって、この第2の濾液中には2-アミノエチルスルホン酸32gと2-アミノエタノール硫酸エステル23g及び亜硫酸ナトリウム32gが含まれていた。
【0079】
(2-アミノエチルスルホン酸の第2回目の製造)
次いで、上記2-アミノエチルスルホン酸32gと2-アミノエタノール硫酸エステル23g及び亜硫酸ナトリウム32gを含む濾液388gと水450gと亜硫酸ナトリウム147gと2-アミノエタノール硫酸エステル127gを2L容量の反応容器に仕込み、混合し、溶解させて、反応原料混合物(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比=1.3)を含む水溶液を得た。
【0080】
以下、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造と同様にして、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、スラリーを得、これを濾過して、2-アミノエチルスルホン酸89gを結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率は79%、純度は99.4%であった。
【0081】
比較例1
(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.0とした2-アミノエチルスルホン酸の製造)
(2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造)
2L容量の反応容器に水900gと亜硫酸ナトリウム130gと2-アミノエタノール硫酸エステル150g(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比=1.0)を仕込み、混合し、亜硫酸ナトリウムと2-アミノエタノール硫酸エステルを水に溶解させて、反応原料混合物を含む水溶液を調製した。
【0082】
以下、実施例1と同様にして、2-アミノエチルスルホン酸49gを結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率は37%であり、また、純度は97.4%であった。
【0083】
一方、2-アミノエチルスルホン酸を得た後の第2の濾液は357gであって、この第2の濾液は2-アミノエチルスルホン酸30gと2-アミノエタノール硫酸エステル29g及び亜硫酸ナトリウム15gを含んでいた。
【0084】
(2-アミノエチルスルホン酸の第2回目の製造)
次いで、上記2-アミノエチルスルホン酸30gと2-アミノエタノール硫酸エステル29g及び亜硫酸ナトリウム15gを含む濾液357gと水450gと亜硫酸ナトリウム124gと2-アミノエタノール硫酸エステル121gを2L容量の反応容器に仕込み、混合し、溶解させて、反応原料混合物(亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比=1.0)を含む水溶液を得た。
【0085】
以下、2-アミノエチルスルホン酸の第1回目の製造と同様にして、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、スラリーを得、これを濾過して、2-アミノエチルスルホン酸70gを結晶として得た。得られた2-アミノエチルスルホン酸の収率は65%、純度は92.0%であった。
【0086】
実施例4
(亜硫酸ナトリウムの回収を含む2-アミノエチルスルホン酸の製造)
実施例1の第1回目の2-アミノエチルスルホン酸の製造と同様に、2L容量の反応容器に水1200gと亜硫酸ナトリウム214gと2-アミノエタノール硫酸エステル200gを仕込み、混合して、亜硫酸ナトリウムと2-アミノエタノール硫酸エステルを水に溶解させて、反応原料混合物を水溶液として得た。
【0087】
上記水溶液を常圧下に内温100~105℃まで昇温し、沸騰状態で2-アミノエタノール硫酸エステルと亜硫酸ナトリウムを16時間反応させた。その後、常圧下に内温100~110℃で濃縮し、水分を除去し、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得た。
【0088】
次いで、上記析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを濾液から濾取して未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの混合物130gを得た。上記混合物130gに水130gを加えてスラリーとし、これに濃硫酸20gを滴下した。発生した二酸化硫黄ガスを水酸化ナトリウム水溶液に吸収させ、亜硫酸ナトリウムを回収した。
【0089】
二酸化硫黄ガスの発生の終了後のスラリーに36重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液16gを加え、そのpHを約7とした後、約80℃まで昇温し、濾過して、硫酸ナトリウム110gを得た。この硫酸ナトリウムの純度は99.8%であった。
【0090】
一方、上記水酸化ナトリウム水溶液中の亜硫酸ナトリウムは13.1gであった。この亜硫酸ナトリウム水溶液を用いて、実施例1と同様に反応を行ったところ、2-アミノエチルスルホン酸58gを結晶として得た。収率44%、純度99.7%であった。
【0091】
【0092】
実施例1によれば、第2回目以降の2-アミノエチルスルホン酸の製造において、また、実施例2及び3によれば、第2回目の2-アミノエチルスルホン酸の製造において、それぞれ比較例1に比べて、高純度の2-アミノエチルスルホン酸を高収率で得ることができた。
【0093】
実施例4によれば、回収した亜硫酸ナトリウムを原料亜硫酸ナトリウムの一部として用いて、高純度の2-アミノエチルスルホン酸を高収率で得ることができた。
(a)水中、50℃以上の温度にて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させる工程、
(b)上記工程(a)で得られた反応混合物を100~110℃の範囲の温度に加熱し、濃縮して、析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを含むスラリーを得る工程、
(c)上記スラリーから上記析出した未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを100~110℃の範囲の温度で固液分離して、第1の濾液を得る工程、
(d)上記第1の濾液を30~40℃の範囲に冷却して、2-アミノエチルスルホン酸を析出させて、上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を含むスラリーを得る工程、
(e)上記析出した2-アミノエチルスルホン酸を上記スラリーから固液分離して取得すると共に、第2の濾液を得る工程
を経て行った後、第2回目の製造を上記工程(a)から(e)を繰り返して行う2-アミノエチルスルホン酸の製造方法であって、
上記第1回目の製造の前記工程(c)において得られた上記未反応亜硫酸ナトリウムと硫酸ナトリウムを水スラリーとし、この水スラリーに強酸を加え、未反応亜硫酸ナトリウムと反応させて、発生した二酸化硫黄ガスを水酸化ナトリウム水溶液に吸収させ、亜硫酸ナトリウムとして回収し、この亜硫酸ナトリウムを第2回目の製造における工程(a)において用い、その際、新規に用いる亜硫酸ナトリウムを併せて、亜硫酸ナトリウム/2-アミノエタノール硫酸エステルモル比を1.1以上として、2-アミノエタノール硫酸エステルを亜硫酸ナトリウムと反応させることを特徴とする2-アミノエチルスルホン酸の製造方法。