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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036389
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】低蓄熱性木質合成建材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/10 20060101AFI20220301BHJP
   B32B 21/08 20060101ALI20220301BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20220301BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20220301BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
E04F15/10 104A
B32B21/08
E04F15/02 J
E04F11/18
E04B1/76 100D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140573
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】504470831
【氏名又は名称】ハンディテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】上手 正行
【テーマコード(参考)】
2E001
2E220
2E301
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DD17
2E001FA18
2E001GA12
2E001HC01
2E001HD11
2E001JC01
2E220AA03
2E220AA33
2E220AA41
2E220AB04
2E220AB12
2E220AC03
2E220BA01
2E220BB04
2E220BB16
2E220EA02
2E220FA03
2E220GA02X
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GA32X
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB43X
2E301HH11
2E301HH18
4F100AK12B
4F100AP00A
4F100AP00B
4F100BA02
4F100CA02B
4F100DD01B
4F100DE01B
4F100DJ02B
4F100EJ30B
4F100GB07
4F100JJ01
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】化学発泡剤の添加量を樹脂原料の1重量%以下に抑えた場合でも、成形工程において木粉の残留水分等が蒸発することにより安定的に発泡状態となる特徴を活かして、10~30重量%の木粉から得られる低発泡(比重0.7~0.9)の低蓄熱性木質合成建材、及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】ポリスチレンの割合が65重量%以上であるプラスチック系材料と、水分を含有する木粉とを用いて成形された表層部2が、基層部3の外側に形成され、表層部2の内部に木粉が分散するとともに、木粉の含有水分に由来する多数の気泡6が表層部2の内部に形成され、表層部2の外側表面に凸部4及び谷部5が形成され、表層部2の比重が、0.7~0.9であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレンの割合が65重量%以上であるプラスチック系材料と、水分を含有する木粉とを用いて成形された表層部が、基層部の外側に形成された低蓄熱性木質合成建材であって、
表層部の内部に木粉が分散するとともに、木粉の含有水分に由来する多数の気泡が表層部の内部に形成され、
表層部の外側表面に凸部及び谷部が形成され、
表層部の比重が、0.7~0.9であることを特徴とする低蓄熱性木質合成建材。
【請求項2】
木粉及び気泡が、表層部の凸部の表面に露出していることを特徴とする、請求項1に記載の低蓄熱性木質合成建材。
【請求項3】
表層部を形成する主原料中のプラスチック系材料の混合割合が70~90重量%、木粉の混合割合が10~30重量%であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の低蓄熱性木質合成建材。
【請求項4】
プラスチック系材料を含む原料を成形機に供給して基層部を形成するとともに、
ポリスチレンの割合が65重量%以上であるプラスチック系材料と、水分を含有する木粉と、その他の副原料とを前記成形機に供給することにより、表層部を基層部の上に形成し、
前記表層部は、木粉の含有水分に由来する多数の気泡を内部に形成することによって、比重が0.7~0.9に調整されるとともに、外側表面に凸部及び谷部が形成されていることを特徴とする低蓄熱性木質合成建材の製造方法。
【請求項5】
表層部の表面を対象として、切削加工又は研磨加工を施すことにより、表層部の表面に形成されている凸部の表面の樹脂を削り取り、その内側の木粉及び気泡を表面に露出させることを特徴とする、請求項4に記載の低蓄熱性木質合成建材の製造方法。
【請求項6】
表層部を形成する主原料中のプラスチック系材料の混合割合を70~90重量%、木粉の混合割合を10~30重量%とすることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の低蓄熱性木質合成建材の製造方法。
【請求項7】
成形時において、表層部の原料として使用される木粉の絶乾重量の0.1~1.0%に相当する量の木粉中の残留水分を蒸発させることによって表層部の原料を発泡させ、表層部の内部に気泡を形成することを特徴とする、請求項4~6のいずれかに記載の低蓄熱性木質合成建材の製造方法。
【請求項8】
表層部の原料として使用される木粉に対し、成形機への供給前に、含水率の事前調整を行うことにより、成形時において、表層部の原料として使用される木粉の絶乾重量の0.1~1.0%に相当する量の木粉中の残留水分を蒸発させて、表層部の原料を発泡させることを特徴とする、請求項7に記載の低蓄熱性木質合成建材の製造方法。
【請求項9】
表層部の副原料として、プラスチック系材料の1重量%以下の化学発泡剤を原料中に添加することを特徴とする、請求項4~7のいずれかに記載の低蓄熱性木質合成建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物のデッキ、テラス、フェンス、手摺り、柱、ルーバー、ベンチなどに使用される建築資材であって、木粉と熱可塑性樹脂との混合材を主原料として成形される木質合成建材、及び、その製造方法に関し、特に、低蓄熱性及び低熱伝導性を有し、直接触れても熱く感じない木質合成建材、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デッキ等の屋外構造物を構築するためのエクステリア建材(デッキ材等)として、天然木材の他に、木粉と熱可塑性樹脂とを混合して成形した木質合成建材が製造され、市場に供給されているが、従来の木質合成建材は、天然木材と比較して蓄熱性、及び、熱伝導性が高いという問題がある。
【0003】
具体的には、天然木材の場合、夏季の日照時間帯等において長時間にわたって太陽光に晒された場合でも、表面温度が著しく上昇してしまうようなことは殆ど無いが、従来の木質合成建材の場合、長時間にわたって太陽光に晒されると、蓄熱して表面温度が60℃以上に上昇してしまうことがある。人間の皮膚が約60℃の温度の物に直接触れると、非常に熱く、不快に感じられ、それ以上の温度になると、火傷を負ってしまう危険性がある。
【0004】
このため例えば、木質合成建材を用いてデッキを構築した場合、夏季の日照時間帯において、素手で触れたり、素足で歩くことができないことがある。そこで、木質合成建材に低蓄熱性及び低熱伝導性を付与しようとする技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-129511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている技術においては、成形される木質合成建材において低蓄熱性及び低熱伝導性を得るために、熱可塑性樹脂、及び、木粉からなる主原料に、化学発泡剤を配合して、発泡押出成形を行うこととしているが、木粉は通常、形状が不安定であり(一定ではなく)、一定の形状構造を有する化学発泡剤と相性が悪く、このため樹脂原料に一定量以上の木粉と化学発泡剤とを混合して樹脂成形を行うと、木粉と化学発泡剤との接触部位において、樹脂の異常発泡が生じてしまうという問題がある。従って原料中に、樹脂原料の1重量%を超える量の化学発泡剤を配合する場合には、木粉を一定量以上(例えば、10重量%以上)配合することは困難である。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題を解決しようとするものであって、化学発泡剤の添加量を樹脂原料の1重量%以下に抑えた場合でも、成形工程において木粉の残留水分(及び接着剤成分)が蒸発することにより安定的に発泡状態となる特徴を活かして、10~30重量%の木粉から得られる低発泡(比重0.7~0.9)の低蓄熱性木質合成建材、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る低蓄熱性木質合成建材は、ポリスチレンの割合が65重量%以上であるプラスチック系材料と、水分を含有する木粉とを用いて成形された表層部が、基層部の外側に形成され、表層部の内部に木粉が分散するとともに、木粉の含有水分に由来する多数の気泡が表層部の内部に形成され、表層部の外側表面に凸部及び谷部が形成され、表層部の比重が、0.7~0.9であることを特徴としている。
【0009】
尚、この低蓄熱性木質合成建材においては、木粉及び気泡が、表層部の凸部の表面に露出していることが好ましく、また、表層部を形成する主原料中のプラスチック系材料の混合割合が70~90重量%、木粉の混合割合が10~30重量%であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る低蓄熱性木質合成建材の製造方法は、プラスチック系材料を含む原料を成形機に供給して基層部を形成するとともに、ポリスチレンの割合が65重量%以上であるプラスチック系材料と、水分を含有する木粉と、その他の副原料とを前記成形機に供給することにより、表層部を基層部の上に形成し、前記表層部は、木粉の含有水分に由来する多数の気泡を内部に形成することによって、比重が0.7~0.9に調整されるとともに、外側表面に凸部及び谷部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
尚、この方法においては、表層部の表面を対象として、切削加工又は研磨加工を施すことにより、表層部の表面に形成されている凸部の表面の樹脂を削り取り、その内側の木粉及び気泡を表面に露出させることが好ましく、また、表層部を形成する主原料中のプラスチック系材料の混合割合を70~90重量%、木粉の混合割合を10~30重量%とすることが好ましい。
【0012】
また、この方法においては、表層部の原料として使用される木粉の絶乾重量の0.1~1.0%に相当する量の木粉中の残留水分を蒸発させることによって表層部の原料を発泡させ、表層部の内部に気泡を形成することが好ましく、更に、必要に応じて、表層部の原料として使用される木粉に対し、成形機への供給前に、含水率の事前調整を行うことが好ましい。また、表層部の副原料として、プラスチック系材料の1重量%以下の化学発泡剤を原料中に添加することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る低蓄熱性木質合成建材は、表層部を形成するプラスチック系材料として、ポリスチレンを主体とする材料(プラスチック系材料中のポリスチレンの混合割合:65重量%以上)が使用され、表層部の内部に木粉が分散するとともに、木粉の含有水分に由来する多数の気泡が表層部の内部に形成されているため、表層部の蓄熱性が低く、蓄熱量も少なく、このため長時間にわたって太陽光に晒された場合において、表面及び内部が60℃以上になることがあったとしても、表層部の表面に手足が触れたときに、熱さが1秒程度感じられた後、すばやく伝導放熱されることになり、手足の接触面を、感覚的に熱いと感じない温度(概ね45℃以下)に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る低蓄熱性木質合成建材(デッキ材1)の表層部2付近の拡大断面図である。
図2図2は、図1に示す凸部4付近の拡大断面図である。
図3図3は、切削が行われる前(成形直後)の凸部4付近の拡大断面図である。
図4図4は、本発明の第二実施形態に係る低蓄熱性木質合成建材(デッキ材)の製造方法において用いられる二層押出成形機10の主要部の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、「低蓄熱性木質合成建材」として実施することができるほか、「低蓄熱性木質合成建材の製造方法」として実施することができる。ここでは、本発明に係る低蓄熱性木質合成建材を「デッキ材」として構成した例を本発明の第一実施形態として説明し、その製造方法を、本発明の第二実施形態として説明する。
【0016】
・第一実施形態(デッキ材)
図1は、本発明の第一実施形態に係るデッキ材1の表層部2付近の拡大断面図である。この図においては、デッキ材1の長手方向と直交する断面が示されている。このデッキ材1においては、1mm以上の厚さ寸法(本実施形態においては2mm)を有する表層部2が、基層部3の外側(上部)に形成されている。
【0017】
表層部2の外側表面(上面)には、多数の凹凸(凸部4及び谷部5)が、デッキ材1の長手方向に沿って連続するように形成されている。凸部4の高さ寸法(谷部5との段差寸法)は、必ずしも均一ではなく、0.25~0.5mmの範囲内の寸法に設定されている。
【0018】
このデッキ材1は、表層部2を形成するための原料としてプラスチック(熱可塑性樹脂)系材料と木粉とが用いられており、これらの原料を成形機に投入して成形した木質合成建材である。そして表層部2は、バインダーとして機能するプラスチック系材料の内部にフィラーとなる木粉(図示せず)が分散し、また、表層部2の内部には、多数の微細な気泡6が形成されている。尚、気泡6は、原料として使用される木粉の含有水分が、成形時に成形機内において蒸発することによって形成されている。
【0019】
更に、凸部4の頂部4a(図2に示す一点鎖線よりも上方の部分)、及び、その両側の部分(側部4b)(図2に示す一点鎖線と二点鎖線の間の部分)は、ワイヤブラシロール等を用いた切削加工が実施されることにより、表面の樹脂層が削り取られ、木粉(図示せず)が露出するとともに、気泡6aが表面に露出している。
【0020】
より具体的には、このデッキ材1の成形直後(金型から押し出され、或いは、取り出された直後)においては、金型と接していた表面は、主に樹脂のみによって形成された光沢のある平滑面となるが、例えば図3に示すようなワイヤブラシロール7(回転軸7aの外周面に、多数のワイヤブラシ7bが放射状に取り付けられている)を、回転軸7aを中心として高速回転させた状態で、上方側から凸部4に押し付けて(例えば、図3において二点鎖線で示す位置まで降下させて)切削を行うことにより、頂部4a及び側部4b(図3に示す二点鎖線よりも上方の部分)における表面の樹脂を削り取り、その内側の木粉(図示せず)及び気泡6aを表面に露出させている(図2参照)。
【0021】
尚、ワイヤブラシロール7等による切削が行われない谷部5の表面は、平滑な光沢面として残存することになるが、切削が行われた凸部4の頂部4a及び側部4bの表面は、微細な傷が形成されるとともに、木粉と気泡6aが露出することにより粗面となる。また、頂部4aと側部4bとでは、ワイヤブラシ7bの当たり具合の差(強弱)により、木粉や気泡6aの露出度にも差が生じることになる。具体的には、ワイヤブラシ7bがより強く当たる頂部4aにおいては、側部4bよりも切削が進行して、より多くの木粉や気泡6aが露出することになる。
【0022】
このため、凸部4の頂部4aは、微細な傷が形成されるとともに、多くの木粉や気泡6aが表面に露出した、殆ど光沢の無い粗面(非光沢面)となり、側部4bは、木粉や気泡6aの露出度が比較的低い半光沢面となり、谷部5は、樹脂の色を反射する平滑な光沢面となる。このように、本実施形態のデッキ材1は、表面の形状及び構造が部位によって異なっているため、光の反射具合に差が生じることになり、その結果、ナチュラルな木質調のテクスチャを有している。
【0023】
本実施形態においては、表層部2を形成するプラスチック系材料として、ポリスチレンを主体とする材料(プラスチック系材料中のポリスチレンの混合割合:65重量%以上)が使用されている。また、木粉としては、廃材(例えば、製材所或いは木工製品の製造工場等において天然木材、集成木材、MDF、パーティクルボード、又は、合板等の加工に伴って生じるものや、廃棄された木材、その端材、又は、木製家具、木製建材等を粉砕したものなど)を利用することができる。尚、木粉は、表層部2の成形時において、内部に適正な量の気泡6が形成されるように、適量の水分を含有した状態で使用する。
【0024】
表層部2を形成する主原料の混合割合は、例えば、プラスチック系材料を70~90重量%、木粉を10~30重量%とすることができる。また、その他の副原料(顔料等)を主原料の5~10重量%程度添加することができる。尚、化学発泡剤を所定量以上添加すると、樹脂の異常発泡が生じてしまうリスクがあるため、副原料として化学発泡剤を使用する場合には、プラスチック系材料の1重量%以下とする。
【0025】
このデッキ材1の表層部2は、比重が0.7~0.9に調整されている。比重が0.7~0.9の表層部2を形成するためには、ポリスチレンを主体とするプラスチック系材料と木粉とを上記のような割合で配合するとともに、成形時において木粉中の残留水分を蒸発させることにより、表層部2の内部に適量の気泡6を形成することが必要である。そして、適量の気泡6を形成するためには、成形機内で原料を加熱することにより、使用する木粉の絶乾重量の0.1~1.0%に相当する量の木粉中の残留水分を原料中で蒸発させることによって、原料を発泡させることが有効である。
【0026】
また、このデッキ材1においては、多数の気泡6が、表層部2の外側表面付近、表層部2の内部、及び、基層部3との境界付近に分布している。このため、表層部2は、従来の木質合成建材と比較して、熱伝導性及び蓄熱性が低く、従って、このデッキ材1が長時間にわたって太陽光に晒された場合において、表面及び内部が60℃以上になることがあったとしても、デッキ材1自体の蓄熱量が少ないため、手足が触れたときに、熱さが1秒程度感じられた後、すばやく伝導放熱されることになり、手足の接触面を、感覚的に熱いと感じない温度(概ね45℃以下)に抑えることができる。
【0027】
更に、表層部2の外側表面には、多数の凹凸(凸部4及び谷部5)が形成されるとともに、凸部4の頂部4aにおいて多数の木粉や気泡6aが露出しているため、使用者がデッキ材1の上を素足で歩行する場合(或いは、素手で接触する場合)において、使用者の皮膚が直接的に接触する樹脂の面積が小さくなっており、表層部2の熱が使用者に伝わりにくく、その結果、直接触れても熱く感じないという効果を期待することができる。
【0028】
・第二実施形態(デッキ材の製造方法)
本発明の第一実施形態として説明したデッキ材1(低蓄熱性木質合成建材)は、次のような方法によって製造することができる。
【0029】
基層部3を形成するための原料と、表層部2を形成するための原料とを押出成形機にそれぞれ供給して二層成形を行う。押出成形機としては、図4に示すように、基層部3を形成するための原料を160~200℃の温度条件下で加熱して、第一金型11へ向かって押し出す第一押出機12(図3においては、先端部のみが表示されている。)と、表層部2を形成するための原料を160~200℃の温度条件下で加熱して、第二金型13へ向かって押し出す第二押出機14(図3においては、先端部のみが表示されている。)とを有する二層押出成形機10を用いる。
【0030】
尚、表層部2の外側輪郭形状を画定する第二金型13としては、図1に示すような多数の凹凸(凸部4及び谷部5)が表層部2の外側表面に形成できるものを用いる。
【0031】
本実施形態においては、表層部2を形成するための主原料として、プラスチック系材料(70~90重量%)、及び、木粉(10~30重量%)を使用する。また、必要に応じて副原料(主原料の5~10重量%程度)を添加することができる(化学発泡剤を副原料として添加する場合には、プラスチック系材料の1重量%以下とする)。
【0032】
尚、表層部2を形成するプラスチック系材料としては、ポリスチレンを主体とする材料を使用する。具体的には、ポリスチレンを単独で用いても良いし、ポリスチレンと、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等)とを混合して用いても良い。但し、ポリスチレンと他の熱可塑性樹脂とを混合して用いる場合、ポリスチレンの混合割合を65重量%以上とする。表層部2の原料として混合される木粉としては、廃材(例えば、製材所或いは木工製品の製造工場等において天然木材、集成木材、MDF、パーティクルボード、又は、合板等の加工に伴って生じるものや、廃棄された木材、その端材、又は、木製家具、木製建材等を粉砕したものなど)を利用することができる。尚、木粉は、適量の水分を含有していることが必要である。
【0033】
表層部2の成形に際しては、比重が0.7~0.9となるように調整する。ポリスチレンを主体とするプラスチック系材料、及び、木粉等を上記のような割合で配合して成形を行うことによって、比重が0.7~0.9の表層部2を形成するためには、成形時において原料中の残留水分を蒸発させることによって、表層部2の内部に適量の気泡6を形成することが必要である。そして、適量の気泡6を形成するためには、成形機内で原料を加熱することにより、使用する木粉の絶乾重量の0.1~1.0%に相当する量の木粉中の残留水分を原料中で蒸発させて、原料を発泡させることが有効である。
【0034】
このため、成形時において木粉の絶乾重量の0.1~1.0%に相当する量の木粉中の残留水分(有効残留水分量)が原料中で蒸発して発泡が生じるように、成形機に投入する木粉に対し、必要に応じて、事前に含水率(含有水分量)の調整(乾燥処理、或いは、水分の添加等)を行う。尚、木粉の含水率の事前調整に際しては、含有水分が蒸発することによって原料中に気泡が形成される前に、発泡を伴わずに蒸発して原料中から放出される水分の量(発泡前の減少分)を考慮する。
【0035】
この点について詳しく説明すると、まず、原料として使用される木粉中の水分は、成形機内で原料が加熱されることによって次第に昇温することになる。そして、特定の温度(約100~120℃)まで到達すると、原料中において水分が瞬間的に蒸発することによって発泡が生じる。但し、木粉の当初の含有水分(成形機への投入前の木粉中に存在する水分)のうち、ある程度の量が、成形機への投入後、発泡が生じるまでの間に徐々に(発泡を伴わずに)蒸発していき、原料中から放出されることになる(発泡前の減少分)。つまり、発泡が生じる温度に到達した時点において原料中に残留している水分のみが、原料の発泡に関与することになる。
【0036】
従って、木粉の含水率の事前調整に際しては、上述したような「発泡前の減少分」を考慮して、即ち、成形機への投入前の木粉の含有水分量が、「発泡前の減少分」と、「有効残留水分量(木粉の絶乾重量の0.1~1.0%)」との合計値となるように調整する。尚、上述の「発泡前の減少分」は、成形条件(成形機の加熱溶融温度、押出圧力、及び、成形機内における原料の滞留時間)、及び、その他の条件によって変動するため、実施に際しては、予め成形条件等を変化させて各種の試験を行い、取得したデータを分析することによって、事前に把握することが有効である。また、木粉の当初の含有水分量から、「発泡前の減少分」を差し引いた値が、木粉の絶乾重量の0.1~1.0%となる場合には、木粉の含水率の事前調整は不要である。
【0037】
尚、表層部2を形成するための原料(プラスチック系材料、木粉、及び、副原料)は、それぞれ粉末の状態で成形機に供給することができるが、原料を特定の配合で混合してペレット化したものを、成形機に供給してもよい。また、原料をペレット化する場合には、ペレット化の際の加熱条件(温度、時間等)を適宜コントロールすることによって、含水率(木粉又はペレットの含水率)の事前調整を行うことができる。
【0038】
基層部3を形成するための原料としては、プラスチック系材料、木粉、及び、その他の副原料を使用することができる。尚、基層部3を形成するプラスチック系材料としては、任意の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等)を用いることができるが、成形後の剥離(基層部3からの表層部2の剥離)等の問題を回避できるように、表層部2の原料として使用されるプラスチック系材料と同系のもの(ポリスチレンを主体とするプラスチック系材料(プラスチック系材料中のポリスチレンの混合割合:50重量%以上))を用いることが好ましい。また、基層部3の原料として混合される木粉としては、表層部2の原料として混合される木粉と同様に、適量の水分を含有していることが好ましく、また、廃材等を利用することができる。尚、木粉を原料として使用せずに基層部3を形成してもよい。
【0039】
成形温度を160~200℃に設定した二層押出成形機10(図3参照)に、基層部3を形成するための原料、及び、表層部2を形成するための原料を供給して成形工程を実施すると、基層部3の原料が第一押出機12内で加熱されて溶融し、第一押出機12から第一金型11内に流入して、基層部3の中間成型物(未硬化)が成形される。基層部3の中間成型物は、第一金型11の冷却部15を通過する際に冷却されて僅かに硬化しはじめ、第一金型11の前方に配置された第二金型13内に進入する。
【0040】
このとき、表層部2の原料が第二押出機14内で加熱されて溶融し、第二押出機14から第二金型13内に流入して、表層部2の中間成型物(未硬化)が成形される。そして、この表層部2の中間成型物は、第二金型13内を通過する基層部3の中間成型物の上に積層され、基層部3と表層部2からなる二層の成型物が第二金型13から押し出される。この二層の成型物においては、第二金型13の出口前で硬化が始まり(150℃以下)、第二金型13から押し出された二層の成型物は、次工程において冷却サイザー(図示せず)内に圧入され、輪郭形状が整えられるとともに素早く冷却されて、設計通りの(表層部2の外側表面に多数の凹凸が形成された)断面形状を有する最終成型物が製造される。
【0041】
更に、最終成型物の表面(表層部2の表面)を対象として、切削加工(又は研磨加工)を施すことにより、表層部2の表面に形成されている凸部4の頂部4a及び側部4b(図3に示す二点鎖線よりも上方の部分)における表面の樹脂を削り取り、その内側の木粉(図示せず)及び気泡6aを表面に露出させる(図2参照)。
【0042】
尚、基層部3の原料として、適量の水分を含有する木粉が使用される場合、基層部3の原料が第一押出機12内で160~200℃に加熱される際に、木粉の残留水分が蒸発し、原料が発泡して、原料中に気泡が形成される。また、MDF、パーティクルボード、合板、又は、集成材等の木粉には接着剤成分が含まれているため、そのような木粉が原料として使用される場合には、水分に由来する気泡とともに、接着剤成分に由来するガスの気泡が、原料中において形成される。
【0043】
木粉の含有水分に由来する気泡(及び、接着剤成分に由来する気泡)は、基層部3の原料が第一押出機12及び第一金型11の内部において前方へ向かって進行する間に、原料中において次第に上昇していくことになる。例えば、原料の下層部で発生した気泡は中層部に向かって上昇し、中層部で発生した気泡は上層部へ向かって上昇する。そして、原料の上層部で発生した気泡は、原料の上部表面まで上昇することになり、その結果、基層部3の中間成型物の上部表面には、気泡の出現によって多数の微細な凹凸が形成される。
【0044】
一方、表層部2の原料においても、第二押出機14内で160~200℃に加熱される際に、上述したように木粉中の残留水分が蒸発し、原料中において気泡が形成される。また、MDF、パーティクルボード、合板、又は、集成材等の木粉が使用される場合には、残留水分に由来する気泡とともに、接着剤成分に由来する気泡が、原料中において形成される。更に、副原料として化学発泡剤(プラスチック系材料の1重量%以下)を添加した場合には、この発泡剤に由来する気泡も形成される。そして、表層部2の原料は、気泡を内包した状態で、表面粗さを有する基層部3の上部表面の上に供給され、第二金型13内において一定の圧力で押し付けられて成形され、基層部3と良好に一体化される。
【0045】
本実施形態に係る方法によって製造したデッキ材1(低蓄熱性木質合成建材)は、上述したように、表層部2の内部に多数の微細な気泡6(図1参照)が形成されるとともに、表層部2の比重が0.7~0.9となるように調整されている。その結果、所望の低蓄熱性、及び、低熱伝導性を得ることができ、夏季の日照時間帯において、長時間にわたって太陽光に晒された場合において、表面及び内部が60℃以上になることがあったとしても、デッキ材1自体の蓄熱量が少ないため、手足が触れたときに、熱さが1秒程度感じられた後、すばやく伝導放熱されることになり、手足の接触面を、感覚的に熱いと感じない温度(概ね45℃以下)に抑えることができる。
【0046】
また、表層部2の外側表面には、図1示すような多数の凹凸(凸部4及び谷部5)が形成されるとともに、表層部2の外側表面に対して切削加工(又は研磨加工)を施すことにより、図2に示すように、凸部4において多数の木粉及び気泡6aが露出した頂部4aが形成されているため、使用者がデッキ材1の上を素足で歩行する場合(或いは、素手で接触する場合)において、使用者の皮膚が直接的に接触する樹脂の面積が小さくなっており、表層部2の熱が使用者に伝わりにくく、その結果、直接触れても熱く感じないという効果を期待することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:デッキ材(低蓄熱性合成建材)、
2:表層部、
3:基層部、
4:凸部、
4a:頂部、
4b:側部、
5:谷部、
6,6a:気泡、
7:ワイヤブラシロール、
7a:回転軸、
7b:ワイヤブラシ、
10:二層押出成形機、
11:第一金型、
12:第一押出機、
13:第二金型、
14:第二押出機、
15:冷却部、
図1
図2
図3
図4