(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036455
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】紙製綴じ具を用いた冊子
(51)【国際特許分類】
B42D 5/04 20060101AFI20220301BHJP
B42B 5/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B42D5/04 G
B42B5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140668
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】593207293
【氏名又は名称】渡辺通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】土岐 浩
(57)【要約】
【課題】接着剤を全く用いずに紙葉束を綴じることができ、十分な剛性を有し、かつ、簡単に組み立てることができる紙製綴じ具を用いた冊子を提供する。
【解決手段】カバー31は、間隔を置いて対向する表側部33と裏側部34の先端部の内側に折込部32が折り込まれた状態で、紙葉束10の綴じ代11を表側及び裏側から挟持するように装着される。綴じ片36は、綴じ代11に形成された貫通孔12に挿通され、中央部37が貫通孔12内に保持され、第一フラップ38が、カバー31の表側部33とその内側に折り込まれた折込部32とによって挟持され、第二フラップ39が、カバー31の裏側部34とその内側に折り込まれた折込部32とによって挟持される。綴じ代11は、表側部33、折込部32、及び、第一フラップ38と、裏側部34、折込部32、及び、第二フラップ39とによって両側から挟持される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉束のいずれかの端部に設定された綴じ代が、紙製綴じ具によって綴じられてなる冊子であって、
紙製綴じ具は、カバー、及び、複数の綴じ片によって構成され、
カバーは、センター部、表側部、裏側部、及び、折込部を有し、断面が略U字型を呈するように形成され、表側部と裏側部が間隔を置いて対向するとともにセンター部によって接続され、かつ、表側部と裏側部の先端部の内側に折込部がそれぞれ折り込まれた状態で、紙葉束の綴じ代を表側及び裏側から挟持するように装着され、
綴じ片は、中央部と、その両側の第一フラップ及び第二フラップとを有し、紙葉束の綴じ代に形成された複数の貫通孔に挿通され、中央部が貫通孔内に保持され、貫通孔を基準として綴じ代の端縁とは反対側の位置において、第一フラップが、カバーの表側部とその内側に折り込まれた折込部とによって挟持され、第二フラップが、カバーの裏側部とその内側に折り込まれた折込部とによって挟持され、
紙葉束の綴じ代が、カバーの表側部、その折込部、及び、綴じ片の第一フラップと、カバーの裏側部、その折込部、及び、綴じ片の第二フラップとによって両側から挟持されていることを特徴とする、紙製綴じ具を用いた冊子。
【請求項2】
断面がU字型又はV字型を呈し、二枚のフラップが対向するように形成されたサイドストッパーを、各フラップが、カバーの表側部とその内側の折込部との間のスペース、及び、裏側部とその内側の折込部との間のスペースにそれぞれ進入するように、カバーの一方側の端部、及び、反対側の端部にそれぞれ装着したことを特徴とする、請求項1に記載の紙製綴じ具を用いた冊子。
【請求項3】
カバーのセンター部の厚さ寸法が、表側部、裏側部、及び、折込部よりも大きく設定されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の紙製綴じ具を用いた冊子。
【請求項4】
紙葉束が、カレンダー用紙の束であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の紙製綴じ具を用いた冊子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の紙葉を綴じてなる冊子(カレンダー等)に関し、特に、紙製綴じ具を用いた冊子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カレンダー等の冊子を綴じる手段として、金属製の綴じ具が用いられていたが、金属製の綴じ具は焼却できないため、廃棄の際に、非常に手間のかかる分別作業が必要になるという問題があった。そこで近年では、金属製の綴じ具の代わりに、紙製の綴じ具が普及してきている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-36865号公報
【特許文献2】特開平6-262878号公報
【特許文献3】特開2007-105884号公報
【特許文献4】実用新案登録第3222484号公報
【特許文献5】実用新案登録第3197615号公報
【特許文献6】実用新案登録第3162782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、紙製の綴じ具は、接着剤(特に、熱可塑性樹脂接着剤)と併用されることが多く、相当量の接着剤が使用された冊子を焼却すると、接着剤に由来する有害ガスが発生する可能性があり、環境保全の観点から問題がある。
【0005】
従って、接着剤をなるべく使用せずに冊子を綴じることが求められるが、接着剤を全く用いずに、紙製の綴じ具のみによって冊子を綴じるという技術は非常に難しい。特にカレンダーのように、最前面の用紙を下方へ引張って切り離す作業が必要となる冊子においては、切り離し作業時に綴じ具が変形しないように、十分な剛性を確保する必要があるほか、カレンダーは外観デザインも重要となるため、美感を損ねてしまうような構造(例えば、固定用の突片等が表側に露呈しているような構造)は、できるだけ回避することが求められる。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術における課題を解決しようとするものであって、接着剤を全く用いずに複数枚の紙葉を綴じることができ、十分な剛性を有し、かつ、簡単に組み立てることができる紙製綴じ具を用いた冊子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る紙製綴じ具を用いた冊子は、紙葉束のいずれかの端部に設定された綴じ代が、紙製綴じ具によって綴じられてなるものであって、紙製綴じ具が、カバー、及び、複数の綴じ片によって構成され、カバーが、センター部、表側部、裏側部、及び、折込部を有し、断面が略U字型を呈するように形成され、表側部と裏側部が間隔を置いて対向するとともにセンター部によって接続され、かつ、表側部と裏側部の先端部の内側に折込部がそれぞれ折り込まれた状態で、紙葉束の綴じ代を表側及び裏側から挟持するように装着され、綴じ片は、中央部と、その両側の第一フラップ及び第二フラップとを有し、紙葉束の綴じ代に形成された複数の貫通孔に挿通され、中央部が貫通孔内に保持され、貫通孔を基準として綴じ代の端縁とは反対側の位置において、第一フラップが、カバーの表側部とその内側に折り込まれた折込部とによって挟持され、第二フラップが、カバーの裏側部とその内側に折り込まれた折込部とによって挟持され、紙葉束の綴じ代が、カバーの表側部、その折込部、及び、綴じ片の第一フラップと、カバーの裏側部、その折込部、及び、綴じ片の第二フラップとによって両側から挟持されていることを特徴としている。
【0008】
尚、この紙製綴じ具を用いた冊子においては、断面がU字型又はV字型を呈し、二枚のフラップが対向するように形成されたサイドストッパーを、各フラップが、カバーの表側部とその内側の折込部との間のスペース、及び、裏側部とその内側の折込部との間のスペースにそれぞれ進入するように、カバーの一方側の端部、及び、反対側の端部にそれぞれ装着することが好ましく、また、カバーのセンター部の厚さ寸法が、表側部、裏側部、及び、折込部よりも大きく設定されていることが好ましい。また、紙葉束は、特に、カレンダー用紙の束とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る紙製綴じ具を用いた冊子は、接着剤を全く用いずに紙葉束を綴じることができ、そのまま焼却しても有害ガスが発生することはなく、自然環境の保護に貢献することができる。また、紙製でありながら、十分な剛性を確保することができ、更に、煩雑な工程を経ることなく、極めて簡単に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係る「紙製綴じ具を用いた冊子」をカレンダー1として構成した例を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す紙葉束10の綴じ代11、カバー31、及び、綴じ片36の断面図である。
【
図4】
図4は、
図1及び
図2に示す紙葉束10の綴じ代11に対して綴じ片36を装着する方法の説明図である。
【
図5】
図5は、
図1及び
図2に示す綴じ片36を装着した紙葉束10の綴じ代11に対してカバー31を装着する方法の説明図である。
【
図6】
図6は、
図1及び
図2に示すカバー31の端部にサイドストッパー40を装着する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に沿って、本発明に係る「紙製綴じ具を用いた冊子」の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る「紙製綴じ具を用いた冊子」をカレンダー1として構成した例を示す外観斜視図である。図示されているように、このカレンダー1は、複数枚のカレンダー用紙の束(紙葉束10)の一つの端縁部(本実施形態においては上端縁部)に設定された綴じ代11が、紙製綴じ具30によって綴じられてなるものである。尚、紙製綴じ具30は、一つの厚紙製のカバー31と、四つの厚紙製の綴じ片36とによって構成されている。
【0012】
図2は、
図1に示す紙葉束10の綴じ代11、カバー31、及び、綴じ片36の断面図である。図示されているように、紙葉束10の綴じ代11には、貫通孔12が形成されており、この貫通孔12には、綴じ片36が挿通されている。より詳細には、綴じ片36の中央部37(長手方向の中間位置の部分)が貫通孔12に保持されるとともに、中央部37以外の部分(第一フラップ38及び第二フラップ39)が、貫通孔12の下方側の位置(貫通孔12を基準として綴じ代11の端縁とは反対側の位置)において、紙葉束10の表面及び裏面にそれぞれ沿って延在する状態となっている。
【0013】
また、第一フラップ38及び第二フラップ39は、紙葉束10の綴じ代11に被せられたカバー31によって、両側から挟持された状態でそれぞれ保持され、紙葉束10を綴じた状態が維持されるようになっている。
【0014】
図3は、
図1及び
図2に示すカバー31を形成する方法の説明図である。まず、
図3(1)に示すように、矩形状の厚紙31aを用意し、プレス加工等によって複数本の平行な(左右の側縁31b,31cとそれぞれ平行な)折り線31d~31gを形成する。次に、外側の折り線31d,31gを利用して、左右両端の二つの折込部32(左右の側縁31b,31cにそれぞれ沿った所定幅の部分)をそれぞれ下方側へ折り曲げ、更に、
図3(2)に示すように、断面がU字型(又はV字型)となるように折り返して、折込部32を、表側部33(外側の折り線31dと中央側の折り線31eとの間の部分)と裏側部34(外側の折り線31gと中央側の折り線31fとの間の部分)の下側の位置にそれぞれ配置させる。そして、中央側の折り線31e,31fを利用して、表側部33と裏側部34をそれぞれ下方側へ折り曲げる。
【0015】
そうすると、
図3(3)に示すように、断面が略U字型を呈し、矩形状の表側部33と裏側部34とが、間隔を置いて対向するとともに、センター部35(中央側の折り線31e,31fの間の所定幅を有する部分)によって接続され、かつ、表側部33と裏側部34の先端部(センター部35とは反対側の部分)(
図3(3)においては下端部)の内側に、折込部32がそれぞれ折り込まれた状態とする。尚、センター部35は、
図3に示すように、他の部分よりも厚さ寸法が大きく設定されていることが好ましく、この場合、カバー31全体の剛性を向上させることができる。
【0016】
図4は、
図1及び
図2に示す紙葉束10の綴じ代11に対して綴じ片36を装着する方法の説明図である。図示されているように、紙葉束10の綴じ代11には、溝状の貫通孔12が複数(本実施形態においては四つ)形成されており、これらの貫通孔12に綴じ片36をそれぞれ挿通し、綴じ片36の中央部37(長手方向の中間位置の部分)が貫通孔12に保持されるとともに、貫通孔12から第一フラップ38及び第二フラップ39が下方(貫通孔12を基準として綴じ代11の端縁とは反対側の方向)へ向かって延在する状態とする。尚、綴じ片36は、第一フラップ38及び第二フラップ39を中央部37に対して下方側へ折り曲げた状態で貫通孔12に挿通してもよいし、平坦な状態で綴じ片36を貫通孔12に挿通し、その後、第一フラップ38及び第二フラップ39を下方側へ折り曲げるようにしてもよい。
【0017】
図5は、綴じ片36を装着した紙葉束10の綴じ代11に対してカバー31を装着する方法の説明図である。図示されているように、カバー31を紙葉束10の側方から長手方向に沿ってスライドさせて、紙葉束10の綴じ代11が、表側及び裏側から挟持されるように装着する。このとき、紙葉束10の表側において下向きに延在する綴じ片36の第一フラップ38が、カバー31の表側部33と、その内側に折り込まれた折込部32との間のスペースに進入するように、また、紙葉束10の裏側において下向きに延在する綴じ片36の第二フラップ39(
図2、
図4参照)が、カバー31の裏側部34(
図3参照)と、その内側に折り込まれた折込部32(
図3参照)との間のスペースに進入するように、カバー31をスライドさせる。
【0018】
このようにして、紙葉束10の綴じ代11に対してカバー31を装着すると、
図2に示すような状態を実現することができる。より具体的には、綴じ片36を紙葉束10の貫通孔12に挿通することによって紙葉束10を確実に綴じることができ、かつ、その綴じ片36の第一フラップ38が、カバー31の表側部33とその内側に折り込まれた折込部32とによって挟持されるとともに、第二フラップ39が、カバー31の裏側部34とその内側に折り込まれた折込部32とによって挟持され、更に、紙葉束10の綴じ代11が、カバー31の表側部33、折込部32、及び、綴じ片36の第一フラップ38と、カバー31の裏側部34、折込部32、及び、綴じ片36の第二フラップ39とによって、両側から挟持された状態でそれぞれ保持され、紙葉束10を綴じた状態を安定的に維持することができる。
【0019】
尚、
図6に示すようなサイドストッパー40を、カバー31の両端部に装着してもよい。より詳細には、矩形状の厚紙を、断面がU字型(又はV字型)となるように折り曲げて、二枚のフラップ41,42が対向するように形成したサイドストッパー40を、フラップ41,42が、カバー31の表側部33とその内側の折込部32との間のスペース、及び、裏側部34とその内側の折込部32との間のスペースにそれぞれ進入するように、カバー31の一方側の端部に装着する。更に、カバー31の反対側の端部にも、同様にサイドストッパー40を装着する。
【0020】
この場合、カバー31の表側部33及び裏側部34が開いてしまう(紙葉束10から離れてしまう)ことを好適に回避することができ、紙葉束10が綴じられた状態を、より安定的に維持することができる。
【符号の説明】
【0021】
1:カレンダー、
10:紙葉束、
11:綴じ代、
12:貫通孔、
30:紙製綴じ具、
31:カバー、
31a:厚紙、
31b,31c:側縁、
31d~31g:折り線、
32:折込部、
33:表側部、
34:裏側部、
35:センター部、
36:綴じ片、
37:中央部、
38:第一フラップ、
39:第二フラップ、
40:サイドストッパー、
41,42:フラップ、