(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036458
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】スカムトラップ機能を有するメタンガス分離部および該メタンガス分離部を利用するメタン発酵浄化システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20220301BHJP
B09B 3/65 20220101ALI20220301BHJP
B09B 3/60 20220101ALI20220301BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
B09B3/00 C
B09B3/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140673
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】520322118
【氏名又は名称】バイオ畜産研究合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉元 弘
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA03
4D004AC04
4D004BA03
4D004CA12
4D004CA18
4D004CB04
4D004CB44
4D059AA01
4D059AA07
4D059BA18
4D059BA48
(57)【要約】
【課題】メタン発酵に伴って生じるスカムや残渣を簡単に除去することができるメタンガス分離部および該メタンガス分離部を利用するメタン発酵浄化システムの提供。
【解決手段】メタン発酵浄化システムにおいてメタンガスと処理物を分離するためのメタンガス分離部であって、処理物を貯留可能に形成された本体の開口部内には、処理物の液面の下方に位置するように網部が着脱自在に設けられていることを特徴とするメタンガス分離部。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン発酵浄化システムにおいてメタンガスと処理物を分離するためのメタンガス分離部であって、処理物を貯留可能に形成された本体の開口部内には、処理物の液面の下方に位置するように網部が着脱自在に設けられていることを特徴とするメタンガス分離部。
【請求項2】
前記網部は、前記本体の開口を封止する蓋部の下部開口部に張設されていることを特徴とする請求項1記載のメタンガス分離部。
【請求項3】
請求項1または2に記載のメタンガス分離部を備えたメタン発酵浄化システム。
【請求項4】
メタンガス分離部からメタン発酵槽へ至る戻し管の途中に残渣トラップを設けたことを特徴とする請求項3に記載のメタン発酵浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタン発酵浄化システムにおいて、メタン発酵に伴って生じるスカムを簡便に除去することができるスカムトラップ機能を有するメタンガス分離部と、該メタンガス分離部を利用するメタン発酵浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
メタン発酵は、糞尿や生ゴミ等の有機性廃棄物等を嫌気条件下で発酵させ、発生するメタンガスを燃料として利用することが一般的であるが、下水処理場の汚泥や、泡盛の製造過程で生じる泡盛酒粕等をそのまま原料として投入しても発酵処理が可能である。
【0003】
しかしながら、畜産糞尿や食品残渣をそのまま投入すると、動物の毛や、セルロース、爪楊枝やプラスチック等についてはメタン細菌が分解できなくなり、発酵槽内の上部に蓄積してしまう。また、砂状の黒い残渣は発酵槽内の底部に蓄積し、発酵容積が減少してしまうことが問題となっていた。
【0004】
そこで、養豚糞尿の場合は、固液分離したり、搾汁して液だけをメタン発酵処理することが行われている。そのため、糞尿処理施設が複雑となり、建設コストや処理コストが高くなっていた。
【0005】
そこで、本発明者は先に、一般の畜産農家が負担可能な安価で維持管理の簡単な糞尿処理設備として嫌気式メタン発酵浄化槽をいくつか提案している(特許文献1)。このものは、メタン発酵槽中に蓄積したメタンの間欠的な噴出力を用いて生成するスカム層を破壊、除去使用とするものであり、しかも、外部動力を要さないという特徴をも有するものであった。しかしながら、このものは低コストで運用できるものの、処理液の円滑な循環などの点で未だ十分でない点もあり、更なる改善が求められていた。
【0006】
また本発明者は、別に、メタン発酵により発生したメタンガスの力を利用し、動力手段を要することなくメタン発酵槽内で処理物の円滑な循環を図った発酵浄化装置や(特許文献2)、分離されたメタンガスを送気装置により発酵槽に戻してメタン発酵槽内の処理物をより円滑に循環させることができるメタン発酵浄化装置を提案した(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、特許文献2の装置では、メタン発酵槽2で発生したメタンガスは、そのままの状態でメタンガス分離部からメタンガス配管へ供給されるため、圧力が低く、発生ガス中には0.2%程含まれる硫化水素ガスを除去しにくいという問題があった。また、前記のように、含メタン処理物は、導出管を通って上方に移動し、戻し管上部に設けられたメタンガス分離部まで運ばれるが、発生するメタンガスの量が少なすぎると導出管中での上方へ向かっての流れが弱く、循環がスムーズに行かなくなるおそれがあるので、ある程度の大きさのメタン発酵槽とする必要があり、小型化がしにくいという課題もあった。
【0008】
その点、特許文献3の装置は、かかる課題を解決し、嫌気状態で処理液を円滑に発酵槽内で循環させることができ、しかも硫化水素含有量の少ない高濃度のメタンを得ることができるが、一方で送気装置等の設備が必要となっており、また、スカムの発生が完全に防げるわけではないため、処理物から簡単にスカムを取り除くことが求められていた。
【0009】
さらに、メタン発酵には残渣の発生が避けられず、メタン発酵浄化システムから簡単にかかる残渣を取り除くことも求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-197696
【特許文献2】特開2011-62636
【特許文献3】特開2012-71277
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、メタン発酵に伴って生じるスカムや残渣を簡単に除去することができるメタンガス分離部およびそのメタンガス分離部を利用するメタン発酵浄化システムの提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであり、メタン発酵浄化システムにおいてメタンガスと処理物を分離するためのメタンガス分離部であって、処理物を貯留可能に形成された本体の開口部内には、処理物の液面の下方に位置するように網部が着脱自在に設けられていることを特徴とするメタンガス分離部である。
【0013】
また本発明は、前記網部は、前記本体の開口を封止する蓋部の下部開口部に張設されていることを特徴とするメタンガス分離部である。
【0014】
また本発明は、前記メタンガス分離部を備えたメタン発酵浄化システムである。
【0015】
更に本発明は、メタンガス分離部からメタン発酵槽へ至る戻し管の途中に残渣トラップを設けたことを特徴とするメタン発酵浄化システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のメタンガス分離部は、処理物から簡単にスカムを除去することができ、特に、蓋部の下部開口部に網部が張設されているものは、蓋部を取り外すだけでスカムを除去することができる。
【0017】
また、本発明のメタン発酵浄化システムで、メタンガス分離部からメタン発酵槽へ至る戻し管の途中に残渣トラップを設けたものは、処理物から簡単に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のメタン発酵浄化装置の一実施態様を模式的に示した図面である。
【
図2】本発明のメタン発酵浄化システムで使用するメタン発酵槽の一実施態様を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のメタンガス分離部およびそのメタンガス分離部を利用するメタン発酵浄化システムの実施態様を示す図と共に本発明を説明する。
【0020】
図1は、本発明のメタンガス分離部を利用したメタン発酵浄化装置の基本的構成を模式的に示した図面である。図中、1はメタン発酵浄化装置、2はメタン発酵槽、3はメタンガス分離部、4は加温部、5は残渣トラップ、6は原料投入口、7は導出管、8は戻し管、9はメタン配管をそれぞれ示す。
【0021】
本発明のメタン発酵浄化装置1は、
図1に示すように、メタン発酵槽2と、メタンガス分離部3、加温部4、残渣トラップ5を備える。メタン発酵槽2には、メタン発酵槽2から加温部4を経てメタンガス分離部3に連接される導出管7がその端部22に連通している。さらに、導出管7が設けられた側とは反対側の端部23には、メタンガス分離部3から残渣トラップ5を経て連接された戻し管8が連通している。
【0022】
本実施多様のメタン発酵槽2は、略円柱状に形成されたタンクを横に寝かした状態に形成されているが、メタン発酵槽2の形状はこれに限定されるものではない。メタン発酵槽2は、図に示すように、導出管7が連接された側の端部22の方が高くなるように、その両端部において高低差を有するように設置することが好ましい。このように、メタン発酵槽2の両端部が高低差を有するように設置することで、その天面部21が傾斜面となる。
【0023】
導出管7は、メタン発酵槽2の両端部のうち、より高い側の端部22に連接されており、さらに端部22において高い位置となるように天面部21寄りにおいてに連接されている。一方、導出管7が連接された側の端部22とは反対側の端部23には、戻し管8が連接され、詳しくはより低い位置となるようにメタン発酵槽2の底面寄りの端部23に連接されている。また、メタン発酵槽2の下部には、発酵での残留汚泥を取り出すための汚泥排出管24を設けることが好ましい。
【0024】
導出管7には、その途中において加温部4が設けられている。かかる加温部4により、導出管7内を通過する気液混合物を適切な温度にまで加温することができる。具体的には、例えば中温発酵を行う場合は、加温部4により中温発酵に適切な温度である37℃まで加温することができる。加温部4は、気液混合物を適切な温度に加温できる機能を有していれば特に限定されないが、例えば、ガスバーナーなどを好適に利用することができる。なお、本実施態様では、加温部4とメタンガス分離部3は別途設けられているが、ガスバーナーをメタンガス分離部3の下部に設置することにより、加温部4とメタンガス分離部3を一体に設けてもよい。
【0025】
図2は本発明のメタンガス分離部3の内部構造を示す断面図である。本発明のメタンガス分離部3は、処理物を貯留可能に形成され、上部が開口する有底筒状の本体31と、該開口を封止する蓋部32を備える。本体部31にはその一の側面下部から導出管7が内部へと挿通され、また、本体部31の他の側面下部には戻し管8が連通されている。導出管7は、メタンガス分離部3内で上方へと屈曲し、後述する網部33を通過してその先端が液面L付近に位置するように形成されている。
【0026】
メタンガス分離部3の本体31の開口部内には、処理物の液面の下方に略水平に位置するように網部33が着脱自在に設けられている。具体的には、該蓋部32の下部開口部に網部33が張設されている。該網部33は、蓋部32の取付時に本体31内の液面Lよりも下方に位置するように設けられており、蓋部32を本体31から取り外すことにより、液面付近に浮遊するスカムSをかかる網部33により掬いあげて除去することができる。なお、本実施態様では、網部33は蓋部32の下部開口部に張設されているが、処理物の液面の下方に位置するように着脱自在に設けられていれば、蓋部32とは独立して設けてもよい。
【0027】
メタンガス分離部3内において分離されたメタンガスは、メタンガス配管9を介してシステムの系外に取り出すことができ、利用可能となる。
【0028】
戻し管8の上部には、処理物投入口6が設けられており、ここから糞尿、生ゴミ等を投入することで戻し管8を通じてメタン発酵槽2中に供給することができる。この処理物投入口6は、そこから処理物が流出しない位置であればどこであっても良い。例えば、
図1に示すように、処理物投入口9とメタンガス分離部3とを同じ位置に設けることもできるが、その場合は、例えば、U字管等を用いて、これらを分離し、メタンガスが漏出しないようにすることが望ましい。
【0029】
戻し管8の下部には、残渣トラップ5が設けられている。かかる残渣トラップ5により、メタンガスが分離された処理物がメタン発酵槽2へと戻る前に処理物内に残存する残渣を適切に分離除去することができる。なお、残渣トラップ5による残渣の排出作業は、まずバルブ51を閉じ、次にバルブ52を開くだけでよい。
【0030】
本発明のシステムにおいて、低動力でありながら十分なメタン発酵が行われ、ある程度の濃度のメタンガスを供給し得る原理は、
図1のシステムにより説明すれば次の通りである。すなわち、メタン発酵槽2中で生じたメタンガスの気泡は、処理物との混合物(以下、「含メタン処理物」という)の状態で、その浮力により、上部へと浮上を開始する。
【0031】
そして、本発明システムで用いるメタン発酵槽2は、前記のように両端部で高低差を有しており、導出管7は、メタン発酵槽2の両端部のうち、より高い側の端部22に連接されており、さらに高い位置となるように天面部21寄りの端部22においてに連接されているため、比重の軽い含メタン処理物はすべて導出管7方向へ集まることになる。
【0032】
メタン発酵槽2から排出された含メタン処理物は、導出管7を通って強い力で上方に移動し、加温部4を経て上部に設けられたメタンガス分離部3に至り、メタンガス分離部3においてメタンガスと処理物に分離される。
【0033】
このようにしてメタンガス分離部3において分離されたメタンガスは、メタンガス配管9を介して系外に排出される。
【0034】
一方、メタンガスが分離された処理物は、メタンガス気泡が無くなったことによる比重の増加と、また、継続的に導出管7を通って上方に移動して来る含メタン処理物の圧力によって、戻し管8を下に向かって流下し、メタン発酵槽2に戻る。
【0035】
このようなメカニズムが働くため、本発明メタン発酵浄化装置では少ない外部動力により処理物を循環、撹拌させることが可能となる。更に、処理物投入口6から、糞尿等を投入する場合には、それらが戻り管8を流れ落ちるため、この力によっても循環、撹拌が図れる。
【0036】
そして、メタン発酵に伴い発生し、含メタン処理物とともにメタンガス分離部3内に移動したスカムは、メタンガス分離部3の蓋部32の下部に設けられた網部33により、簡単に除去することができる。また、処理物中の残渣は、残渣トラップ5により簡単に除去することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 … … メタン発酵浄化装置
2 … … メタン発酵槽
3 … … メタンガス分離部
4… … 加温部
5 … … 残渣トラップ
6 … … 処理物投入口
7 … … 導出管
8 … … 戻し管
9 … … メタンガス配管
24 … … 汚泥排出管
31 … … 本体
32 … … 蓋部
33 … … 網部
51 … … バルブ
52 … … バルブ
L … … 液面
S … … スカム
【手続補正書】
【提出日】2021-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン発酵浄化システムにおいてメタンガスと処理物を分離するためのメタンガス分離部であって、処理物を貯留可能に形成された本体の開口部内には、処理物の液面の下方に位置するように網部が着脱自在に設けられ、該本体部の下部にはメタン発酵槽に連接された導出管が内部へと挿通され、該導出管は、前記網部を通過してその先端が液面付近に位置するように形成されていることを特徴とするメタンガス分離部。
【請求項2】
前記網部は、前記本体の開口を封止する蓋部の下部開口部に張設されていることを特徴とする請求項1記載のメタンガス分離部。
【請求項3】
請求項1または2に記載のメタンガス分離部を備えたメタン発酵浄化システム。
【請求項4】
メタンガス分離部からメタン発酵槽へ至る戻し管の途中に残渣トラップを設けたことを特徴とする請求項3に記載のメタン発酵浄化システム。