(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036469
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】キャップ付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 55/12 20060101AFI20220301BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B65D55/12
A45D34/00 510A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140691
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000160223
【氏名又は名称】吉田プラ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄三
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 倫明
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA22
3E084AA24
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC01
3E084CC03
3E084DC01
3E084DC03
3E084FC13
3E084GA08
3E084GB11
3E084GB25
3E084HA01
3E084HD01
3E084KA06
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で部品点数が少ないノックカム機構を備えたキャップを容器本体に対して確実に着脱できるキャップ付き容器を提供する。
【解決手段】内周42に周回する複数の溝(43a,43b)がリブ(44a,44b)を介して形成された筐体4内に、溝内で摺動する突起53を外周52に備えた押し部材5、傾斜突起63を外周62に備えた回転部材6、周壁部92に舌片87を備えた中蓋8、回転部材を上方に付勢する弾性部材7が配置されたキャップ3、首部23の外周に係止部25が形成された容器本体2を備え、回転部材は、押し部材を押下すると溝の位置にある傾斜突起がリブの斜面(45a,45b)に案内されて隣接する溝の位置に至るまで回転して上下の位置間で交互に切り替わり、下位置では舌片が回転部材の内周面67によって内方に押し込まれて舌片先端の爪部81が係止部と係合し、上位置にあるときは当該係合が解除される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の首部を備えた容器本体と、前記首部に着脱自在に装着されるキャップとを備えたキャップ付き容器であって、
前記キャップは、端面が開口する中空円筒状の内周面を有する筐体、当該筐体内に同軸に配置されて夫々が一端に天面を有して他端が開口する有底円筒状の押し部材、回転部材、中蓋、及び前記回転部材と前記中蓋との間に介在する弾性部材を備え、
前記筐体は、円筒軸方向を上下方向として、前記内周面に、上下方向を長さ方向としつつ放射外方向を深さ方向とした複数の溝が、円筒軸周りに形成されてなり、
前記複数の溝は、夫々、上端が閉鎖されて下端が開口し、円筒軸周りに深い溝と浅い溝とがリブを介して周期的に形成され、
円筒軸周りの所定の周回方向を回転方向として、前記リブの下端面は、前記回転方向に向かって下方から上方に傾斜する斜面であるとともに、当該斜面は、前記回転方向に隣接する前記浅い溝の下端に連続し、
前記押し部材は、前記天面が前記筐体の上方の開口から露出し、外周面に、前記複数の溝の夫々の内方で上下方向に摺動する摺動突起が形成され、下端に、下方を頂部とした山型のガイド突起が円筒軸周りに周回して形成され、
前記回転部材は、外周面に、放射外方向に突出しつつ、上面が前記回転方向に向かって下方から上方に向かって傾斜する斜面となる複数の傾斜突起が円筒軸周りに等角度間隔で形成され、
前記中蓋は、前記筐体に固定されているとともに、側面を形成する周壁部に、複数の舌片が前記回転軸周りに等角度間隔で複数形成され、
前記舌片は、先端に放射内方向に突出する爪部が形成されているとともに、放射外方向から内方向に向かう応力によって弾性変形して当該爪部を前記中蓋の内周面に対して突出させ、
前記弾性部材は、前記回転部材を上方に付勢し、
前記容器本体は、前記首部の外周面に、前記爪部と係合する係止部を備え、
前記回転部材は、前記押し部材に対する下方への押下動作に伴って押し下げられると、前記溝の位置にある前記傾斜突起の上端が前記リブの下端位置に達した後、前記リブの前記斜面に案内されて隣接する溝の位置に至るまで前記回転方向に回転し、
前記回転部材は、前記傾斜突起が深い溝の位置にあるときの上位置と、浅い溝の位置にあるときの下位置とで交互に切り替わり、
前記回転部材が前記下位置にあるときに、前記舌片が当該回転部材の内周面によって放射内方向に押し込まれて、前記首部を囲繞する前記中蓋の前記爪部が前記係止部に係合し、前記回転部材が前記上位置にあるときは、当該係合が解除される
ことを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップ付き容器であって、
前記回転部材は、下端に、下方を頂部とした回転補助突起が、前記円筒軸周りに所定のピッチで周回して形成され、
前記中蓋は、下端にフランジを備えて、当該フランジの上面に、上方を頂部とした解除補助突起が、前記円筒軸周りに前記所定のピッチで周回して形成され、
前記回転補助突起と前記解除補助突起は、互いに平行で、前記回転方向に対して前記傾斜突起の上面とは昇降方向が逆の斜面を有するとともに、上下方向で位相がずれており、
前記爪部が前記係止部に係合している状態から、前記押し部材を押し込むと、前記回転補助突起が、前記解除補助突起の斜面に案内され、前記回転部材が、前記回転方向に回転する、
ことを特徴とするキャップ付き容器
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャップ付き容器であって、前記回転部材の天面と、前記押圧部材の天面とに、内外を連絡する通気口が形成されていることを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のキャップ付き容器であって、前記傾斜突起を三つ以上備えたことを特徴とするキャップ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、「ジャー容器」あるいは「ボトル容器」と呼ばれるキャップ付き容器は、内容物を収納する容器本体と、容器本体の開口を閉鎖するキャップとを備える。この種のキャップ付き容器は、例えば、円筒状の外観を有し、内容物が収納される寸胴な円筒状の胴部に縮径された首部が接続されてなる容器本体と、その首部に装着された天面を有する扁平な円筒状のキャップとで構成される。
【0003】
そして、キャップ付き容器には、ノック式ボールペンと同様のノックカム機構を利用してキャップの天面を押下するだけの操作で、キャップを容易に着脱できるものがある。このようなキャップ付き容器によれば、例えば、片手しか使えない状況にあっても、キャップの天面を押下するだけで、キャップを容器本体に対して自在に着脱することができる。
【0004】
なお、ノックカム機構を備えたキャップ付き容器としては、例えば、以下の特許文献1に記載された化粧料容器がある。また、以下の非特許文献1や2には、ボールペンにおけるノックカム機構の構造や動作について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】YouTube(登録商標)、”How Does a Clicky Pen Work?”、[online]、[令和 2年7月17日検索]、インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=Zv5Qa2kGL04&feature=emb_title>
【非特許文献2】アイティメディア株式会社、”同じ動作で出たり引っ込んだりするノック式ボールペンの謎”、[online]、[令和2年7月17日検索]、インターネット<URL:https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2003/16/news007.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノックカム機構を備えた従来のキャップ付き容器は、キャップの筐体内に、ノックカム機構と、そのノックカム機構に連動して爪部を容器本体の係止部と係脱自在に係合させるための係止機構とが格納されている。そして、従来のキャップ付き容器では、これらの機構を実現させるために多くの部品を要し、また、構造も複雑なものとなっていた。
【0008】
例えば、上記特許文献1に記載の化粧料容器は、当該文献1の
図2に示されたように、少なくとも7種類の部材(符号40,51,52,60,70,80,90)を用いてノックカム機構と係止機構とを構成している。さらに、係止機構(開閉操作具80)は、容器本体(容器10)を囲繞できる程度の拡径された中空円筒が軸周りに等角度間隔で四分割されてなる四つの部材(開閉羽83)と、プッシュボタンとして押し部材(ノック部材50)を下方に押下しつつ、係止機構に作用して爪部(第2係止段83b)を容器本体の係止部(係止突条14)と係合させる部材(押圧キャップ70)とで構成されている。
【0009】
また、従来のキャップ付き容器では、ボールペンと同様に、ノックカム機構が総じて細い円筒状(軸状)の部材で構成され、この軸状のノックカム機構を寸胴で太い容器のキャップに適用していた。すなわち、従来のキャップ付き容器では、軸状のノックカム機構によって狭小な領域に作用する上下方向の力を、容器本体の太い首部を囲繞する広い領域に配置された複数の爪部を放射方向に出し入れさせる力に変換していた。そのため、従来のキャップ付き容器では、上下方向の力が複数の爪部の夫々に均等に伝わらず、複数の爪が同期して動作しなくなる可能性があった。
【0010】
複数の爪部が同期して動作せず、複数の爪の一部が係合した状態でキャップが装着されていれば、容器本体を密閉することができなくなる。全ての爪部が係合されていない状態でキャップを持ち上げれば、容器本体が転倒して内容物が漏出する可能性がある。
【0011】
そこで本発明は、簡素な構造で部品点数が少ないノックカム機構を備えるとともに、ノックカム機構の動作に伴ってキャップを容器本体に対して確実に着脱できるキャップ付き容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、円筒状の首部を備えた容器本体と、前記首部に着脱自在に装着されるキャップとを備えたキャップ付き容器であって、
前記キャップは、端面が開口する中空円筒状の内周面を有する筐体、当該筐体内に同軸に配置されて夫々が一端に天面を有して他端が開口する有底円筒状の押し部材、回転部材、中蓋、及び前記回転部材と前記中蓋との間に介在する弾性部材を備え、
前記筐体は、円筒軸方向を上下方向として、前記内周面に、上下方向を長さ方向としつつ放射外方向を深さ方向とした複数の溝が、円筒軸周りに形成されてなり、
前記複数の溝は、夫々、上端が閉鎖されて下端が開口し、円筒軸周りに深い溝と浅い溝とがリブを介して周期的に形成され、
円筒軸周りの所定の周回方向を回転方向として、前記リブの下端面は、前記回転方向に向かって下方から上方に傾斜する斜面であるとともに、当該斜面は、前記回転方向に隣接する前記浅い溝の下端に連続し、
前記押し部材は、前記天面が前記筐体の上方の開口から露出し、外周面に、前記複数の溝の夫々の内方で上下方向に摺動する摺動突起が形成され、下端に、下方を頂部とした山型のガイド突起が円筒軸周りに周回して形成され、
前記回転部材は、外周面に、放射外方向に突出しつつ、上面が前記回転方向に向かって下方から上方に向かって傾斜する斜面となる複数の傾斜突起が円筒軸周りに等角度間隔で形成され、
前記中蓋は、前記筐体に固定されているとともに、側面を形成する周壁部に、複数の舌片が前記回転軸周りに等角度間隔で複数形成され、
前記舌片は、先端に放射内方向に突出する爪部が形成されているとともに、放射外方向から内方向に向かう応力によって弾性変形して当該爪部を前記中蓋の内周面に対して突出させ、
前記弾性部材は、前記回転部材を上方に付勢し、
前記容器本体は、前記首部の外周面に、前記爪部と係合する係止部を備え、
前記回転部材は、前記押し部材に対する下方への押下動作に伴って押し下げられると、前記溝の位置にある前記傾斜突起の上端が前記リブの下端位置に達した後、前記リブの前記斜面に案内されて隣接する溝の位置に至るまで前記回転方向に回転し、
前記回転部材は、前記傾斜突起が深い溝の位置にあるときの上位置と、浅い溝の位置にあるときの下位置とで交互に切り替わり、
前記回転部材が前記下位置にあるときに、前記舌片が当該回転部材の内周面によって放射内方向に押し込まれて、前記首部を囲繞する前記中蓋の前記爪部が前記係止部に係合し、前記回転部材が前記上位置にあるときは、当該係合が解除される
ことを特徴とする。
【0013】
前記回転部材は、下端に、下方を頂部とした回転補助突起が、円筒軸周りに所定のピッチで周回して形成され、
前記中蓋は、下端にフランジを備えて、当該フランジの上面に、上方を頂部とした解除補助突起が、円筒軸周りに前記所定のピッチで周回して形成され、
前記回転補助突起と前記解除補助突起は、互いに平行で、前記回転方向に対して前記傾斜突起の上面とは昇降方向が逆の斜面を有するとともに、上下方向で位相がずれており、
前記爪部が前記係止部に係合している状態から、前記押し部材を押し込むと、前記回転補助突起が、前記解除補助突起の斜面に案内され、前記回転部材が、前記回転方向に回転するキャップ付き容器とすることもできる。
【0014】
前記回転部材の天面と、前記押圧部材の天面とに、内外を連絡する通気口が形成されていてもよい。前記傾斜突起を三つ以上備えたキャップ付き容器とすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡素な構造で部品点数が少ないノックカム機構を備えるとともに、ノックカム機構の動作に伴ってキャップを容器本体に対して確実に着脱できるキャップ付き容器が提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例に係るキャップ付き容器の外観を示す図である。
【
図3】上記キャップ付き容器の構成を示す図である。
【
図4】上記キャップ付き容器において、容器本体に対するキャップの装着動作を示す図である。
【
図5】上記キャップ付き容器におけるキャップの装着状態を示す断面図である。
【
図6】上記キャップ付き容器において、キャップの装着状態を解除する動作を示す図である。
【
図7】上記キャップ付き容器におけるキャップの解除状態を示す断面図である。
【
図8】上記キャップ付き容器における解除補助機能の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一又は類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。ある図面において符号を付した部分について、不要であれば他の図面ではその部分に符号を付さない場合もある。
【0018】
===実施例===
図1は、実施例に係るキャップ付き容器(以下、容器1と言うことがある)の外観図である。容器1は、円筒状の容器本体2と、当該容器本体2と同軸に装着される円筒状のキャップ3とを備えている。
図1(A)は、容器本体2からキャップが取り外された状態にある容器1を示している。
図1(B)は、キャップ3が容器本体2に装着されている状態を示している。
【0019】
ここで、容器本体2、及びキャップ3の円筒軸(以下、軸100と言うことがある)方向を上下方向とし、容器本体2の底部21を下方として上下方向を規定すると、
図1(A)に示したように、容器本体2は、内容物が収納される寸胴な円筒状の胴部22の上方に、胴部22に対して縮径された円筒状の首部23が形成されてなる。首部23の上端は開口部24であり、開口部24と胴部22の内方とは首部23を介して連絡している。首部23の開口部24の周囲にはフランジ25が形成されている。
【0020】
キャップ3は、容器本体2の胴部22と同程度の外径を有し、外装となる筐体4に、ノックカム機構と、ノックカム機構に連動して図示しない爪部を放射方向に出し入れして当該爪部を前記フランジ25と係合させる係止機構とが内蔵されている。すなわち、実施例に係る容器1では、容器本体2のフランジ25が、爪部と係合する係止部となっている。
【0021】
筐体4の天面41にはノックカム機構を構成する押し部材5の天面51が露出し、爪部とフランジ25との係合状態が解除された解除状態では、この押し部材5が筐体4の天面41に対して突出した状態となる。一方、
図1(B)に示したように、キャップ3に内蔵されている爪部がフランジ25と係合した装着状態にあるときは、押し部材5が筐体4に対して下方に押し込まれた状態となっている。
【0022】
<キャップ付き容器の構成>
図2、
図3は、容器1の構成を示す斜視図であり、
図2は、容器1を上方から見たときの斜視図であり、
図3は、容器1を下方から見たときの斜視図である。そして、
図2、
図3では、キャップ3を分解斜視図によって示すとともに、図中に点線の円で囲った領域(101~108)の拡大図も示した。
【0023】
図2、
図3に示したように、キャップ3は、筐体4、押し部材5、回転部材6、スプリング7、中蓋8、及びパッキン9で構成されている。この構成の内、筐体4、押し部材5、回転部材6、及びスプリング7によってノックカム機構が構成されている。また中蓋8は、
図2における領域104の拡大図にて示したように、ノックカム機構に連動して放射方向に出し入れされる爪部81を備えている。
【0024】
筐体4は、例えば、ポリケトン(POK)、ポリアセタール(POM)、ABSなどの硬質の樹脂からなる成形品である。筐体4は、ノックカム機構の外カムを兼ね、内周面42には、
図2における領域101や
図3における領域106の拡大図に示したように、軸100方向を長さ方向とし、放射外方向を深さ方向とした溝(43a,43b)が、軸100周りに周回するように等角度間隔で形成されている。本実施例では、軸100周りに等角度間隔で合計64個の溝(43a,43b)が形成されている。また、溝(43a,43b)は、深さが異なる二つの種類があり、浅い溝43aと深い溝43bとがリブ(44a,44b)を介して隣接しながら周回方向に交互に形成されている。
【0025】
各溝(43a,43b)は、下端が開口し、上端が閉塞されている。またリブ(44a、44b)の下端面は、所定の角度で傾斜する斜面(45a,45b)であり、当該斜面(45a、45b)が周回方向に鋸歯波状となるように周期的に繰り返されて形成されている。各リブ(44a,44b)における斜面(45a,45b)は、上方から見て時計回りに、下方から上方に向かって傾斜している。ここで、図中太線の矢印で示したように、上方から見て時計回り方向(図中、太線矢印方向)を回転方向110と称することとすると、回転方向110側に浅い溝43aが隣接しているリブ44aについては、そのリブ44aの斜面45aが浅い溝43aの下端側の傾斜に連続している。したがって、当該斜面45aは、浅い溝43aの形成領域では、放射方向の幅が狭くなっている。そして、溝(43a,43b)と、リブ(44a,44b)や浅い溝43aの下端の斜面とによってノックカム機構における外カムが形成されている。なお、筐体4の側面46の肉厚は、上端側がリブ(44a,44b)に連続する厚肉の領域となっており、下端側が深い溝43bに連続する薄肉の領域となっている。
【0026】
押し部材5は、例えば、POK、POM、ABSなどからなる成形品で、天面51を有して下方に開口する上下に扁平な円筒状である。押し部材5は、筐体4の内方に摺動可能に組み込まれる。具体的には、押し部材5の下端側の外周面52に、筐体4の溝(43a,43b)の夫々に対応して、各溝(43a,43b)内で上下方向に摺動する突起(以下、摺動突起53ということがある)が形成されている。摺動突起53は、
図2における領域102の拡大図や
図3における領域107の拡大図にて示したように、上面54が上に凸となる半円状に形成され、溝(43a,43b)内を上下方向に滑らかに摺動する。また、押し部材5の外周面52は、筐体4の内周面42において上述した肉厚の領域と接触し、当該肉厚の領域に対して摺動する。そして、押し部材5の下端は、三角波状となるように、下方を頂部とする山型の突起(以下、ガイド突起55と言うことがある)が軸100周りに周回して形成されている。ガイド突起55は、摺動突起53と同じピッチで頂部の位置が摺動突起55の回転方向の幅を二等分する位置となるように形成されている。
【0027】
回転部材6は、押し部材5と同様に天面61を有して下方に開口する扁平な円筒状で、例えば、POK、POM、ABSなどからなる成形品である。回転部材6の外周面62には、放射外方向にブロック状に突出する突起63が軸100周りに等角度間隔で形成されている。本実施例では、16個の突起63が形成されている。そして、回転部材6は、外周面62が押し部材5の内周面57に接した状態で軸100周りに回転するように構成されている。
【0028】
図2における領域103の拡大図や
図3における領域108の拡大図に示したように、回転部材6の外周面62に形成され突起63の上面64は、回転方向110に向かって下方から上方に向かって傾斜し、その傾斜は、筐体4に形成された上記のリブ(44a,44b)や浅い溝43aの下端の斜面(45a,45b)の傾斜と平行である。そして、押し部材5と回転部材6とが筐体4に組み込まれると、回転部材6の外周面62に形成された突起(以下、傾斜突起63と言うことがある)の上面64が、押し部材5の下端に形成されたガイド突起55の下面56、及び筐体4において外カムを構成する上記の斜面(45a,45b)に当接する。そして、傾斜突起63は、深い溝43bの形成領域では筐体4の内周面42に対して摺動する。また、実施例に係る容器1では、回転部材6の下端に、下方を頂部とした鋸歯状の突起65が周回し、当該下端が鋸歯波状に形成されている。
【0029】
中蓋8は、例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)などで構成された樹脂の一体成形品で、天面82を有して下方に開口する扁平な円筒状である。天面82の周囲には上方に立ち上がる縁83が形成されている。また中蓋8は、下端にフランジ84を有し、フランジ84の外周面は、組み立てられた状態でのキャップ3において、筐体4の内周面42の下端に当接する。中蓋8は、この当接した領域が接着されるなどして筐体4に対して固定される。
【0030】
円筒状の中蓋8の側面を形成する周壁部92には、内外を連絡する開口86が軸100に対して等角度間隔で形成されている。本実施例では、6箇所に開口86が形成されている。そして、
図2における領域104の拡大図に示したように、開口86内には、開口86の上縁辺から下方に垂下する舌片87が形成されている。舌片87は、開口86の上縁辺から下方に向かう途上で中蓋8の外周面85に対して一旦放射外方向に屈曲した後、放射内方向に向かって再度屈曲し、先端が放射内方向に向いている。そして、この舌片87の先端が容器本体2のフランジ25と係脱自在に係合する爪部81になっている。
【0031】
舌片87において放射外方向に突出するように屈曲した部位(以下、屈曲部89と言うことがある)は、装着状態において、舌片87に放射内方向の力を加えるためのものである。屈曲部89に放射内方向の力が加わると、舌片87が弾性により放射内方向に撓み、爪部81が中蓋8の内周面88側に突出する。それによって爪部81が容器本体2のフランジ25の下側に潜り込み、爪部81とフランジとが係合し、キャップ3が装着状態となる。屈曲部89に対する応力がなくなれば、舌片87が当初の状態に復帰し、爪部81が放射外方向に後退して爪部81とフランジ25との係合が解除される。
【0032】
なお、実施例に係る容器1では、
図2における領域105の拡大図にて示したように、中蓋8のフランジ84の上面に、上方を頂部とした鋸歯状の突起90が周回し、当該フランジ84の上面が鋸歯波状に形成されている。この突起(以下、解除補助突起90と言うことがある)は、回転部材6の下端に形成された突起(以下、回転補助突起65ということがある)に歯合する形状に形成されている。すなわち、解除補助突起90は、回転補助突起65と同じピッチで形成されているとともに、回転補助突起65の斜面66と平行となる斜面91を有している。また、回転補助突起65及び解除補助突起90は、軸100周りのピッチが、筐体4の溝(43a,43b)、押し部材5における摺動突起53とガイド突起55と同じになっている。さらに、回転補助突起65と解除補助突起90とは、装着状態において位相がずれるように形成されている。
【0033】
中蓋8の天面82の外側(
図2、符号82o)と回転部材6の天面61の内側(
図3、符号61i)との間には、スプリング7が収納される。また、中蓋8の天面82の内側(
図3、符号82i)には、円板状のパッキン9が嵌め込まれている。そして、中蓋8において、フランジ84よりも上方の領域は、回転部材6の内方に収納され、回転部材6は、中蓋8に対して相対的に上下動する。なお、本実施例では、上述したように、中蓋8の天面82の周囲に縁83が形成されており、スプリング7は、この縁83の内方に配置されて、他の部材(5,6,8)に対して確実に同軸に配置されるようになっている。
【0034】
<キャップの動作>
次に、上述した構成を備えたキャップ3を容器本体2に装着する動作について説明する。
図4は、キャップ3の装着動作を示す図であり、動作の状態が理解し易いように、押し部材5と回転部材6の一部を軸100周りの展開図として示している。また、
図4では、筐体4の内周面42に形成されている溝(43a,43b)が点線で示されている。
【0035】
図4(A)~(D)に、解除状態にあるキャップ3が容器本体2に装着されるまでの動作の遷移を示した。押し部材5の各摺動突起53は、夫々、対応する溝(43a,43b)内で摺動可能に収納されている。回転部材6は、スプリング7によって常時上方に付勢されており、傾斜突起63の上面64が押し部材5のガイド突起55の下面56に当接して押し部材5を上方に付勢している。
【0036】
図4(A)に示したように、キャップ3が解除状態にあるときは、傾斜突起63が深い溝43bに挿入され、摺動突起53の上面54は、溝(43a,43b)の上端に当接している。また、傾斜突起63の上面64とガイド突起55の下面56とは、夫々の傾斜に一致する状態で接している。なお、この装着状態おける回転部材6の上下位置を上位置とする。
【0037】
次に、図中、網点矢印で示したように、スプリング7による上方への付勢力に抗して押し部材5を下方に押下して回転部材6を押し下げていき、
図4(B)に示したように、傾斜突起63の上端の位置63Tがリブ(44a,44b)の下端の位置44Lになると、傾斜突起63における傾斜した上面64が、リブ44aの下端位置63Tから浅い溝43aの下端に連続する斜面45aに案内されて、回転部材6が回転方向110に回転する。すなわち、図中白抜き矢印で示したように、スプリング7による回転部材6への上方への付勢力が、筐体4の内面に形成された外カムと傾斜突起63とによって構成されるカムにより、回転方向110ヘの回転力に変換される。
【0038】
次に
図4(C)に示したように、傾斜突起63は、回転部材6の回転途上では、上端位置63Tにて押圧部材5のガイド突起55との接触を維持し、押し部材5は、回転部材6の回転に伴って上方に押し上げられる。
【0039】
傾斜突起63が、リブ44aの下端から連続する斜面45aに案内されて浅い溝43aの形成領域まで移動すると、
図4(D)に示したように、傾斜突起63の回転方向110側の側面63Sが、浅い溝43aの回転方向110側にあるリブ44bの側面43Sに当接して回転部材6の回転が規制される。また、深い溝43bの領域にて筐体4の内周面42に対して摺動する傾斜突起63は、押し部材5の摺動突起53のように浅い溝43a内に入り込むことができず、上方への移動が規制される。それによって、回転部材6は、押し部材5とともに、解除状態に対して距離Dだけ下方の位置で押し込まれた状態を維持する。なお、以下では、傾斜突起63が浅い溝43aの領域に配置されているときの回転部材6の上下位置を下位置とする。
【0040】
このように、実施例に係る容器1によれば、筐体4の内周面42に形成された溝(43a,43b)及びリブ(44a,44b)の下端に形成された斜面(45a,45b)をカム本体となる外カムとし、回転部材6の傾斜突起63をカムフォロワとしたカムが形成されている。ノックカム機構は、回転部材6を介して常時上方に付勢されている押し部材5が、傾斜突起63を介して回転部材6を押下するたびにカムを動作させて回転部材6の上下位置を上位置と下位置とに切り替える。そして、回転部材6が下位置にあるときにキャップ3が容器本体2に対して脱落不能に装着された状態となる。
【0041】
図5に、キャップ3が装着された状態の容器1の断面図を示した。
図5に示したように、回転部材6の内周面67の下端側が、中蓋8に形成された舌片87の屈曲部89を覆い、舌片87が放射内方向に撓み、爪部81が中蓋8の内周面88に対して放射内方向に突出している。そして、その爪部81が容器本体2のフランジ25を下支えした状態でフランジ25に係合している。それによって、キャップ3の上方への移動が制止され、キャップ3が容器本体から脱落しないようになる。
【0042】
次にキャップ3が装着状態から解除状態に移行する動作について説明する。
図6にキャップ3の解除動作を示した。
図6(A)~(D)に、キャップ3が装着状態から解除状態に移行するまでの動作の遷移を示した。
図6(A)に示したように、キャップ3が装着状態にあるときは、回転部材6が下位置にあって、傾斜突起63が浅い溝43aの形成領域に留まっている。図中網点矢印で示したように、装着状態から、押し部材5を下方に押下し、
図6(B)に示したように、傾斜突起63の上端63Tがリブ44aの下端の位置44Lになるまで移動すると、回転部材6は、スプリング7による上方への付勢力により、傾斜突起63の傾斜した上面64が浅い溝43aに対して回転方向110側にあるリブ44bの斜面45bに案内されつつ、回転方向110に回転する。
【0043】
当該回転の途上では、
図6(C)に示したように、ガイド突起55と傾斜突起63との上面64との接触が維持され、押し部材5は、図中白抜き矢印で示したように、回転部材6が回転するのに伴って上方に押し上げられる。そして、
図6(D)に示したように、傾斜突起63が深い溝43bの位置まで案内されると、傾斜突起63が深い溝43bに入り込む。それによって、回転部材6が、スプリング7の付勢力により押し部材5とともに上位置まで押し上げられ、キャップ3が解除状態となる。
【0044】
図7に、解除状態にある容器1の断面図を示した。
図7に示したように、回転部材6が上方に移動することで、中蓋8の舌片87は、屈曲部89に加わっていた放射内方向への力から開放される。それによって、屈曲部89が中蓋8の外周面85より放射外方向に突出し、舌片87が当初の形状に復帰する。そして、舌片87の形状が復帰するのに伴い、容器本体2のフランジ25と係合していた爪部81が放射外方向に移動し、フランジ25と爪部81との係合状態が解除される。それによって、キャップ3が容器本体2から取り外し可能な状態となる。
【0045】
上述した実施例に係る容器1では、筐体4が外カムを兼ねており、極めて少ない部材でノックカム機構が構成されている。筐体4は、内周面42に軸100周りに等角度間隔で形成された多数の溝(43a,44b)を有し、押し部材5は、多数の溝(43a,43b)の夫々に対応する摺動突起53を有し、各摺動突起53が対応する溝(43a,43b)内で上下方向に摺動する。
【0046】
また、回転部材6は、外周面62が押し部材5の内周面57に接触し、傾斜突起63が筐体4の内周面42に対して摺動する。したがって、押し部材5及び回転部材6は、筐体4の内周面42の全周から等方的に支持され、軸100に対して傾くことなく上下動する。
【0047】
さらに、容器本体2の首部23を囲繞する中蓋8の外周面85が、回転部材6の内周面67に対して摺動し、中蓋8の周壁部92に等角度間隔で形成された舌片87の夫々が、回転部材6の内周面67によって放射外方向から放射内方向に向かって均等に押圧される。それによって、舌片87の先端に形成されている爪部81が中蓋8の内周面88から均等に突出し、押し部材5に対する押下動作に伴って、爪部81と容器本体2のフランジ25とが確実に係合する。キャップ3を取り外す際も、同様に爪部81が均等に放射外方向に後退し、爪部81と容器本体2のフランジ25との係合状態を確実に解除することができる。また、実施例に係る容器1の係止機構は、先端に爪部81が形成された舌片87を放射内方向に弾性変形させるだけの簡素な構造で、キャップ3を装着できるようになっている。
【0048】
このように実施例に係る容器1によれば、押し部材5を押下するだけの操作でキャップ3を容器本体2に対して確実に着脱することができる。そして、容器1は、キャップ3の着脱に要する機構が少数の部材と簡素な構造とによって構成されており、より安価に提供できるものとなっている。また、少数の部材と簡素な構造とによって構成されたキャップ3を備えた容器1は、故障し難く、高い信頼性を備えたものとなる。
【0049】
<解除補助機構>
ところで、装着状態にあるキャップ3では、スプリング7が圧縮された状態にあり、解除状態に移行させるためには、その圧縮されたスプリング7をさらに圧縮させることになる。しかし、圧縮されたスプリング7による上方への強い応力によって、押し部材5のガイド突起55と回転部材6の傾斜突起63との摩擦が大きくなり、回転部材6が円滑に回転できなくなる可能性もある。また、パッキン9の厚さが厚い場合では、押し部材5を押下した際に、スプリング7が圧縮されずにパッキン9が圧縮され、筐体4に対して押し部材5や回転部材6が相対的に下方に移動し難くなる可能性がある。
【0050】
また、解除に際し、浅い溝43aの位置にある傾斜突起63をリブ(44a,44b)の下端の位置44Lまで移動させた直後では、傾斜突起63の頂部と、リブ(44a,44b)の斜面の頂部とが線接触した状態になる。そのため、浅い溝43aに対して回転方向110側にあるリブ44bの斜面45bと、傾斜突起63との摩擦力が極めて大きくなり、この摩擦力によって回転部材6の回転運動が阻害される可能性もある。そこで実施例に係る容器1では、装着状態にあるキャップ3をより確実に解除状態へ移行させるための解除補助機構を備えている。
【0051】
図8に解除補助機構の動作を示した。
図8(A)~(D)に、解除補助機構の動作の遷移を示した。解除補助機構は、回転部材6の回転補助突起65と中蓋8の解除補助突起90とにより構成される。まず、
図8(A)に示したように、キャップ3が装着状態にあるときは、傾斜突起63が浅い溝43aに挿入された状態となっている。また、回転補助突起65と解除補助突起90とは互いに上下方向で離隔した状態となっている。
【0052】
上述したように、回転補助突起65と解除補助突起90とは、ピッチと傾斜方向が同じであるものの、位相がずれている。すなわち、回転補助突起65と解除補助突起90とは、夫々の頂点の位置(65T,90T)が回転方向110に対してずれており、互いの斜面(66,91)が上下方向で重複するように設計されている。また、回転補助突起65と解除補助突起90とにおける斜面(66,91)の傾斜方向は、筐体4の内周面42に形成されたリブ(44a,44b)の斜面(45a,45b)に対して上下対称となっている。すなわち、回転方向110に向かって上方から下方に向けて傾斜している。
【0053】
図8(B)に示したように、装着状態から押し部材5を下方に押下すると、回転部材6が下方に押し込まれ、回転補助突起65と解除補助突起90とが接触する。
図8(C)に示したように、押し部材5をさらに下方に押下して、回転部材6をさらに押し下げると、回転補助突起65が解除補助突起90の斜面91に案内され、回転部材6が、回転方向110に回転する。この状態で押し部材5への押圧力を弱めて回転部材6を上方に移動させれば、傾斜突起63の上面64がリブ44bの斜面45bに対して十分に面接触し、回転部材6に対する上方への付勢力が、回転力に円滑に変換される。そして、
図8(D)に示したように、傾斜突起63が深い溝43bに入り込み解除状態となる。
【0054】
===その他の実施例===
キャップ3の装着状態と解除状態とにおける押し部材5の天面の位置は、適宜に変更できる。例えば、押し部材の天面が、装着状態において筐体の天面と面一になるようにしてもよい。解除状態で面一にすることもできる。
【0055】
上記実施例に係る容器1は、回転部材6が上方からみて時計回りに回転していたが、もちろん反時計回りに回転するように構成されていてもよい。
【0056】
上記実施例に係る容器1は、回転補助機構を備えていたが、押し部材5の下方へのストロークが確保できているなど、回転部材6を筐体に対して十分に下方に押下できるのであれば回転補助機構はなくてもよい。
【0057】
スプリング7が収納される、回転部材6の天面61と中蓋8の天面82との間に形成される空間では、回転部材6の上下動に伴って当該空間の空気が圧縮したり膨張したりする。そのため、上記空間が陽圧状態になって回転部材6が下位置へ移動し難くなったり、上記空間が負圧になって回転部材6が上位置に復帰し難くなったりする可能性がある。そこで、回転部材6の天面61と、押し部材5の天面51とに内外を連絡する通気口を形成してもよい。それによって、押し部材5の上下動に伴って外気が上記空間に対して出し入れされ、押し部材5と回転部材6とが円滑に上下動することができる。
【0058】
実施例に係る容器1では、容器本体2のフランジ25が、中蓋8の爪部81と係合する係止部として形成さえていたが、係止部は、アンダーカットなど、爪部81と係合してキャップ3の上方への移動を規制する形状であれば、どのようなものであってもよい。
【0059】
外カムを構成する溝(43a,43b)の数(摺動突起55の数)や、傾斜突起63の数は、押し部材5と回転部材6とが軸100から傾かないように上下動するのであれば、適宜に設定することができる。傾斜突起63の数が二つの場合で、傾斜突起63の回転方向110の幅が狭い場合は、円筒状の回転部材6の直径の両端に傾斜突起63が形成されることになり、この直径を軸にして回転部材6が揺動する可能性がある。したがって、少なくとも、傾斜突起63の数が三つ以上であれば、すなわち、外カムを構成する溝(43a,43b)の総数、及び溝(43a,43b)内で摺動する摺動突起55の数が六個以上であれば、回転部材6の軸100に対する傾きが確実に抑止されると考えられる。
【0060】
なお、傾斜突起63や溝(43a,43b)の数が少ないと、一回の上下動に対する回転部材6の回転角度が大きくなり、筐体4の上下高が一定であれば、リブ(44a,44b)の斜面(45a,45b)の傾斜が緩やかになる。そのため、上方への付勢力を回転運動に変化する効率が低下する可能性もある。いずれにしても、傾斜突起63や溝(43a,43b)の数は、筐体4の径や上下高、キャップ3の着脱動作の安定性など鑑みて適宜に決定すればよい。
【0061】
中蓋8に形成されている舌片87を回転部材6の内周面67によって放射内方向に押圧する構造は屈曲部89に限らない。例えば、舌片87に放射外方向に突出する突起を形成しておけば、その突起が回転部材6の内周面67によって放射内方向に押圧されて舌片87が弾性変形し、爪部81が中蓋8の内周面88から内方に突出する。いずれにしても、舌片87に、回転部材6の内周面67に当接して放射内方向に押圧される部位が形成されていればよい。
【0062】
上記実施例において、舌片87は、中蓋8の周壁部92において、上方から下方に向けて垂設されていたが、下方から上方に向けて立設するように形成されていてもよい。あるいは、中蓋8の周壁部92を周回する方向に沿って形成されていてもよい。
【0063】
スプリング7は、コイルスプリングに限らず、板バネなど他の形態のスプリングであってもよい。また、スプリングの素材は、金属に限らず樹脂などで構成されていてもよい。また、スプリング7に代えて、例えば、弾力性を有する樹脂などを中蓋8と回転部材6との間に介在させてもよい。いずれにしても、中蓋8と回転部材6との間に、回転部材6を上方に付勢する弾性部材が介在していればよい。
【0064】
上記実施例に係る容器1は、キャップ3が容器本体2に装着されると、容器本体2とキャップ3とが軸100と同軸に配置されるように構成されていたが、首部23は、円筒状であれば、容器本体2に対して斜めの方向など、適宜な方向に突出して形成されていてもよい。そして、首部23に装着されるキャップ3の軸100方向を上下方向とすればよい。
【0065】
また、容器本体2の胴部22の形状は、角筒状など、円筒状に限らない。キャップ3の筐体4の外観形状も円筒状に限らない。筐体4は、上下両端が開口する中空円筒状の内周面42が形成されていればよい。
【0066】
上記実施例に係る容器1では、容器本体2、筐体4、押し部材5、回転部材6、中蓋8が樹脂の成形品であったが、これらの部材(2,4,5,6,8)のいずれか、あるいは全ては、樹脂に限らず、金属などの素材でできていてもよい。
【0067】
ノックカム機構や解除補助機構を構成する、ガイド突起55、回転補助突起65、解除補助突起90の各突起(55,90、)や溝(43a,43b)は、軸100周りに周回するように連続的に形成されていたが、傾斜突起63のように間欠的に形成されていてもよい。例えば、ガイド突起55と傾斜突起63との関係のように、互いに作用し合う部位の一方を間欠的に形成することで、摩擦が軽減され作動性が向上することがある。
また、上記実施例では浅い溝43aと深い溝43bとは同じピッチで、周方向で同じ間隔で形成されていたが、浅い溝43aと深い溝43bのそれぞれが同じピッチで形成されていれば、2種類のリブ(44a,44b)の周方向の幅は、異なっていてもよい。そして、これらの溝(43a,43b)に対応して摺動突起55が形成され、傾斜突起63が、装着状態と解除状態とで、浅い溝43aと深い溝43bの形成位置となるような位置に等角度間隔で形成されていればよい。それによって、回転部材6は、装着状態と解除状態とにおいて軸100に対して傾斜せずに上下動する。そして、その回転部材6の内周面67に対して摺動する中蓋8の周壁部92には、先端に爪部81が形成された舌片87が軸100周りに等角度間隔で形成されている。そのため、爪部81が放射方向に均等に出し入れされる。いずれにしても、ノックカム機構や解除補助機構を構成する各種突起(53,55,63,65,90)や溝(43a,43b)の数や形成状態は、各機構の作動性や形成のし易さ、製造コストなどを考慮して形成すればよい。
【符号の説明】
【0068】
1 キャップ付き容器、2 容器本体、3 キャップ、4 筐体、5 押し部材、
6 回転部材、7 スプリング(弾性体)、8 中蓋、9 パッキン、22 胴部、
23 首部、25 首部のフランジ、41 筐体の天面、42 筐体の内周面、
43a,43b 溝、44a,44b リブ、45a,45b,リブの斜面、
51 押し部材の天面、52 押し部材の外周面、53 摺動突起、
55 ガイド突起、56 ガイド突起の下面、57 押し部材の内周面、
61 回転部材の天面、62 回転部材の外周面、63 傾斜突起、
64 傾斜突起の上面、65 回転補助突起、66 回転補助突起の斜面、
81 爪部、82 中蓋の天面、83 中蓋天面の縁、84 中蓋のフランジ、
85 中蓋の外周面、87 舌片、88 中蓋の内周面、89 屈曲部、
90 解除補助突起、91 解除補助突起の斜面、92 中蓋の側面(周壁部)、
100 円筒軸(軸)、110 回転方向