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  • 特開-化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036508
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/24 20060101AFI20220301BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A61K8/24
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140753
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【弁理士】
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 悠子
(72)【発明者】
【氏名】虫賀 澄人
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA162
4C083AB212
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB272
4C083AB291
4C083AB292
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC422
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC552
4C083AC842
4C083AC912
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD492
4C083BB26
4C083CC19
4C083DD16
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE05
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】ハイドロキシアパタイトを配合した化粧料であって、皮膚に塗布した際のザラツキ及びきしみ感が低減された化粧料を提供すること。
【解決手段】球状のハイドロキシアパタイト焼結体粒子を含み、該ハイドロキシアパタイト焼結体粒子の平均一次粒子径が1.0μm~10.0μmである化粧料。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状のハイドロキシアパタイト焼結体粒子を含み、
該ハイドロキシアパタイト焼結体粒子の平均一次粒子径が1.0μm~10.0μmである化粧料。
【請求項2】
前記ハイドロキシアパタイト焼結体粒子の含有割合が、0.1重量%~90重量%である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロキシアパタイトを含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))は、骨や歯の主成分であり、安全性及び生体親和性に優れることから、従来、人工関節、人工骨、デンタルインプラント等に利用されている。また、板状結晶からなるハイドロキシアパタイト又は低結晶性ハイドロキシアパタイトを顔料、吸着材等として化粧料に配合することも提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-240819号公報
【特許文献2】特開2003-126687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハイドロキシアパタイトを配合した化粧料は、皮膚に塗布した際に、ザラツキやきしみ感を感じさせる場合がある。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ハイドロキシアパタイトを配合した化粧料であって、皮膚に塗布した際のザラツキ及びきしみ感が低減された化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの局面によれば、球状のハイドロキシアパタイト焼結体粒子を含み、該ハイドロキシアパタイト焼結体粒子の平均一次粒子径が1.0μm~10.0μmである化粧料が提供される。
1つの実施形態において、上記化粧料における上記ハイドロキシアパタイト焼結体粒子の含有割合が、0.1重量%~90重量%である。
1つの実施形態において、上記化粧料は、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤をさらに含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハイドロキシアパタイトとして、平均一次粒子径が1.0μm~10.0μmであるハイドロキシアパタイト焼結体粒子を用いることにより、皮膚に塗布した際のザラツキ及びきしみ感が低減され、結果として、使用感に優れた化粧料を提供することができる。また、本発明の実施形態による化粧料は、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子を含むことにより、皮膚への塗布後に経時的に発生するテカリ及び色調の変化を抑制し得、また、シミ等の隠ぺい力が向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】プロコラーゲンI産生促進能の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、特段の記載がない限り、各実施形態は適宜組み合わせることができる。
【0010】
A.化粧料
本発明の実施形態による化粧料は、平均一次粒子径が1.0μm~10.0μmである球状のハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子を含む。HAp焼結体が、球状の粒子であり、その平均一次粒子径が1.0μm~10.0μmであることにより、化粧料を皮膚に塗布した際のザラツキやきしみ感が低減され得る。また、HApが焼結体であることにより、化粧料が水を含む場合に、水への溶解に起因するpHの上昇(アルカリ化)が防止され得る。さらに、HAp焼結体粒子は、プロコラーゲンI産生促進効果を有することから、化粧料に配合することで皮膚のシワ発生抑制や弾力性向上が期待できる。
【0011】
本発明の実施形態による化粧料は、目的に応じて、上記HAp焼結体粒子以外に、一般的に化粧料に用いられ得る他の成分を含み得る。このような他の成分については、A-2項で詳述する。
【0012】
A-1.HAp焼結体粒子
上記HAp焼結体粒子の平均一次粒子径は、代表的には1.0μm~10.0μmであり、好ましくは1.0μmを超え10.0μm以下、より好ましくは1.0μmを超え8.0μm以下、さらに好ましくは1.5μm~6.0μmである。HAp焼結体粒子の平均一次粒子径が当該範囲内であれば、化粧料を皮膚に塗布した際のザラツキやきしみ感の低減効果が好適に得られ得るとともに、皮脂を良好に吸着してテカリを防止することができる。ここで、平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて9点の画像を取得し、画像1点中、12個の粒子の粒径を計測、合計108個の粒子の粒径を平均することにより求められる値である。
【0013】
HAp焼結体粒子は、球状の形状を有する。ここで、「球状」とは、完全な球状(真球状)のみならず、表面に若干の凹凸(多孔質構造に起因する孔を含む)を有する球状や断面が楕円状である粒子形状をも含む意味である。
【0014】
本発明の実施形態において使用されるHAp焼結体粒子のアスペクト比は、好適には1.45以下、さらに好適には1.35以下、さらにより好適には1.25以下、特に好適には1.2以下である。ハイドロキシアパタイト粒子のアスペクト比の計測方法は下記測定方法(1)に従うものとする。
(測定方法1)
ハイドロキシアパタイト粒子を撮影したSEM画像において、略直上から撮影されている粒子を選択する。次いで、当該粒子上にその両端が粒子の外周上に位置する2本の線分を引く。このとき、一方の線分は、その長さが最大となるものとする。更に、当該線分の中点で、互いに直交するようにもう一方の線分を引く。このようにして引かれた2本の線分のうち、短い方の線分の長さを短径、長い方の線分の長さを長径とし、長径/短径の比を求める。更に、長径が大きなものから順に選んだ150個の粒子における当該長径/短径の平均値を求め、アスペクト比とした。但し、輪郭がぼやけて見える粒子、別の粒子に接近し過ぎていて境界が曖昧な粒子、粒子の一部がその他の粒子の影に隠れている粒子等を測定対象から除外した。当該アスペクト比が1に近い程、粒子の投影画像が円や正方形に近いものであり、粒子の立体形状は塊状(例えば球状)に近いものとなると考えられる。
【0015】
HAp焼結体粒子は、高い結晶性を有することが好ましい。結晶性が高いことにより、粒子の物理的、化学的安定性が向上し、結晶面が定まることにより吸着力が向上するという効果が得られ得る。1つの実施形態において、X線回折法によるd=2.814での半値幅が、例えば0.8以下、好ましくは0.5以下である。
【0016】
HAp焼結体粒子は、アモルファスなHAp粒子を焼結させることによって得られ得る。HAp焼結体粒子の製造方法としては、例えば、造粒工程と焼結工程とを含む焼結法が挙げられる。造粒焼結法によって得られるHAp焼結体粒子の粒子径には、造粒工程で得られた粒子の粒子径がそのまま反映され得る。よって、造粒焼結法によれば、HAp焼結体粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)を所望の範囲に容易に制御することができる。
【0017】
上記造粒焼結法は、上述した工程以外に、アモルファスHAp粒子生成工程及び/又は除去工程を含んでいてもよい。これらの工程は、例えば、アモルファスHAp粒子生成工程、造粒工程、焼結工程、除去工程の順で行われ得る。以下に、各工程について説明する。
【0018】
<アモルファスHAp粒子生成工程>
アモルファスHAp粒子生成工程は、アモルファスなHApの粒子を生成することができる工程であれば特に限定されるものではない。例えば、常温下において水酸化カルシウム懸濁液にリン酸(例えば、KHPO等)を滴下すれば、リン酸カルシウム(具体的には、ハイドロキシアパタイト)の粒子を沈殿させることができる。
【0019】
特定の範囲内の粒子径を有し、かつ、粒子径が均一な(粒度分布が狭い)アモルファスHAp粒子を生成する方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法が例示できる。すなわち、界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液及びリン酸溶液を混合させ、界面活性剤の曇点以上の温度で反応させることで、アモルファスHAp粒子を生成する方法において、反応温度、界面活性剤の官能基、界面活性剤の親水性/疎水性比等を変化させることにより、所望の範囲の平均粒子径を有するアモルファスHAp粒子が得られ得る。
【0020】
HAp粒子を製造する原理を簡単に説明すれば、以下の通りである。界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液及びリン酸溶液を混合し、リン酸とカルシウムとを反応させてリン酸カルシウムの微粒子を合成する方法においては、界面活性剤のミセルの中でリン酸カルシウム(例えば、ハイドロキシアパタイト)の核が成長する。
【0021】
このとき、反応温度を変化させること(界面活性剤が非イオン系の界面活性剤である場合には、界面活性剤の曇点以上の温度にすること)により、ミセルの熱力学的安定性を制御することができる。例えば、反応温度を上げれば、界面活性剤のミセルを形成する力を下げることができる。この場合、ミセルという枠の中で制限を受けていたリン酸カルシウムの粒子成長の駆動力が、ミセルの枠を維持しようとする駆動力よりも大きくなると考えられる。そして、当該メカニズムを利用して粒子の形を制御することができる。
【0022】
また、界面活性剤が有する官能基(親水性の官能基)及び界面活性剤の親水性/疎水性比の違いによって、界面活性剤の曇点、及び、ミセルの安定性が変化する。したがって、界面活性剤の種類を適宜変更して、界面活性剤の官能基及び/又は親水性/疎水性比を変えることによって、得られるアモルファスHAp粒子の大きさを制御することができる。
【0023】
上記方法に用いられる界面活性剤の種類は、特に限定されず、例えば、特開平5-17111号公報に開示されている公知の陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤から適宜選択して用いることができる。なかでも、非イオン性界面活性剤は、明確な曇点を有するので、上述したメカニズムを利用した粒子の形状制御が容易になるという利点を有する。
【0024】
なお、アモルファスHAp粒子生成工程には、生成したアモルファスHAp粒子を水等で洗浄する工程及び/又は遠心分離若しくはろ過等でアモルファスHAp粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
【0025】
<造粒工程>
1つの実施形態において、造粒工程は、アモルファスHAp粒子を凝集させ、任意の粒子径に制御する工程である。アモルファスHAp粒子生成工程によって得られたアモルファスHAp粒子群を媒体中に懸濁させ、均一な懸濁液とし、凝集操作を経ることで粒子径制御を施した凝集粒子を得ることができる。なお、アモルファスHAp粒子懸濁液を「スラリー」と呼ぶ場合がある。
【0026】
アモルファスHAp粒子を懸濁させる媒体としては、アモルファスHAp粒子を懸濁させることができるものであれば特に限定されないが、造粒工程において取り除かれやすい揮発性もしくは他の様々な媒体へ易溶性の液体であることが望ましい。媒体の具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、グリセリン等のアルコール類、アセトン、2-ブタノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類等を挙げることができる。
【0027】
上記媒体には、アモルファスHAp粒子の凝集を促進させる目的で媒体に易溶性の高分子化合物をバインダーとして混合してアモルファスHAp粒子懸濁液としてもよい。
【0028】
上記構成のスラリー中では、高分子化合物がアモルファスHAp粒子の表面に吸着することでアモルファスHAp粒子同士の接触を促進させることができる。
【0029】
上記高分子化合物は、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、又は、これらの塩のいずれかを有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。高分子化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
高分子化合物の分子量は、好ましくは10,000g/mol~1,000,000g/molであり、より好ましくは20,000g/mol~800,000g/molであり、さらに好ましくは50,000g/mol~700,000g/molである。分子量が上記範囲未満であると、高分子化合物がアモルファスHAp粒子同士をつなぎ止める効果が減少する。一方、分子量が上記範囲を超えると、高分子化合物の溶解度が低くなる、高分子化合物を含む溶液の粘度が高くなる等のために、操作性が悪くなる。
【0031】
アモルファスHAp粒子を凝集させるための操作は、特に限定されないが粒子の粒子径制御が容易であることが望ましく、かつ、アモルファスHAp粒子に過剰なせん断応力がかからない方法がより望ましい。凝集操作の具体例としては、転動造粒、流動層造粒、撹拌造粒、噴射造粒等が挙げられ、いずれかの方法によりスラリー中の媒体を除去しつつアモルファスHAp粒子を凝集させることで、目標とする粒子径の凝集物が得られる。
【0032】
上記凝集物には、バインダーが残留している場合があるが、後述する焼結工程において熱分解を受け、系外へ除かれる。なお、バインダーに高分子化合物の塩を選択した場合は、塩を構成する陽イオン由来の酸化物が生じる。
【0033】
例えば、バインダーにポリアクリル酸ナトリウムを選択する場合には、焼結工程によって、当該ポリアクリル酸ナトリウムから酸化ナトリウムが生じる。当該金属酸化物(アルカリ金属酸化物)は水溶性であるため、後述する除去工程によって簡単に除去することが可能である。
【0034】
<焼結工程>
焼結工程は、造粒工程で得られた凝集粒子を焼結温度に曝して、当該凝集粒子を高結晶性HAp粒子(HAp焼結体粒子)にする工程である。アモルファスHAp粒子が接触した状態が維持されているので、焼結工程における高温条件に曝された場合は、アモルファスHAp粒子同士の融着を促進することができる。
【0035】
焼結工程における焼結温度は、所望の硬度等に応じて適切に設定され得る。焼結温度は、例えば、100℃~2000℃であることが好ましく、より好ましくは200℃~2000℃、さらに好ましくは300℃~2000℃、さらにより好ましくは400℃~2000℃、さらにより好ましくは500℃~2000℃、さらにより好ましくは500℃~1800℃、さらにより好ましくは500℃~1500℃、さらにより好ましくは500℃~1250℃、さらにより好ましくは500℃~1200℃である。焼結温度が低すぎると、焼結が十分でない場合がある。また、焼結温度が高すぎると、HApが分解する場合がある。
【0036】
焼結時間は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適切に設定され得る。なお、焼結によって、HAp焼結体粒子同士が融着してしまう場合もあるが、このような場合には、焼結後の粒子を粉砕して使用することが可能である。
【0037】
<除去工程>
除去工程は、焼結工程で得られたHAp焼結体粒子に存在するバインダー由来の金属酸化物を取り除く工程である。
【0038】
除去工程の具体的な構成は、造粒工程において採用したバインダーに応じて適宜選択することができる。例えば、焼結工程において残存する金属酸化物が溶媒に対して溶解性を有する場合は、HAp焼結体粒子を溶解しない一方で、金属酸化物を溶解する溶媒を用いて、金属酸化物のみを溶媒に溶解して除去することができる。一方、焼結工程において残存物が生じないバインダーを選択する場合には本工程を実施する必要はない。
【0039】
上記溶媒は、水系溶媒であってもよく、有機溶媒であってもよい。水系溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられる。有機溶媒としては、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0040】
除去工程には、HAp焼結体粒子の粒子径を略均一にするための分級工程がさらに含まれていてもよい。
【0041】
HAp焼結体粒子としては、市販品を用いることもできる。市販のHAp焼結体粒子としては、ソフセラ社製、製品名「micro-SHAp」が好ましく例示される。
【0042】
化粧料中におけるHAp焼結体粒子の含有割合は、用途等に応じて適切に設定され得る。当該含有割合は、例えば0.1重量%~90重量%、好ましくは0.1重量%~30重量%、より好ましくは0.1重量%~20重量%、より好ましくは0.1重量%~15重量%であり得る。
【0043】
A-2.他の成分
HAp焼結体粒子以外の他の成分は、化粧料の用途、剤形等に応じて適切に選択され得る。化粧料において一般に用いられる他の成分としては、例えば、水、油剤成分、水混和性有機溶剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、酸化防止剤、防腐・抗菌剤、香料、界面活性剤、増粘剤、無機粒子(HApを除く)、樹脂粒子、酸、アルカリ、糖、顔料等が挙げられる。
【0044】
油剤成分としては、例えば、オイル・ワックス、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステルを挙げることができる。
【0045】
オイル・ワックスとしては、例えば、アーモンド油、オリーブ油、硬化油、ツバキ油、ヒマシ油、ヤシ油、シリコーン油、ミツロウ、ラノリン、カルナウバロウ等が挙げられる。
【0046】
シリコーン油としては、例えば、シクロメチコン、シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、カプリリルメチコン、ジメチコン(ジメチルポリシロキサンとも称する)、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシケイ酸等が挙げられる。
【0047】
炭化水素としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭化水素油が挙げられる。このような炭化水素油としては、例えば、イソドデカン、スクワラン、セレシン、パラフィン、流動パラフィン(ミネラルオイル)、ワセリン等が挙げられる。
【0048】
高級脂肪酸としては、例えば、炭素数12~30の脂肪酸が挙げられる。このような炭素数12~30の脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0049】
高級アルコールとしては、例えば、炭素数8~30のアルコールが挙げられる。このような炭素数8~30のアルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2-デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)、ポリヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0050】
エステルとしては、例えば、炭素数3~100のエステル油が挙げられる。このような炭素数3~100のエステル油としては、例えば、ステアリン酸ブチル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、モノステアリン酸グリセリン、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、イソノナン酸イソノニル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、セバシン酸ジイソプロピル等が挙げられる。
【0051】
水混和性有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0052】
紫外線吸収剤としては、320~400nm波長(A領域)の紫外線を吸収するUV-A吸収剤及び290~320nm波長(B領域)の紫外線を吸収するUV-B吸収剤が挙げられる。
【0053】
UV-A吸収剤としては、2-(2´-ヒドロキシ-5´-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、ビス(レスルシニル)トリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2,4―ビス―[{4―(2―エチルヘキシルオキシ)―2―ヒドロキシ}―フェニル]―6―(4―メトキシフェニル)―1,3,5―トリアジン等が挙げられる。
【0054】
UV-B吸収剤としては、具体的には、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、ジメチコジエチルベンザルマロネート、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2´-エチルヘキシル-1´-オキシ)-1,3,5-トリアジン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、ホモサレート、オクトクリレン、2,4,6―トリス[4―(2―エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]―1,3,5―トリアジン2,2’―メチレンビス(6―(2H―ベンゾトリアゾール―2―イル)―4―(1,1,3,3―テトラメチルブチル)フェノール)等が挙げられる。
【0055】
紫外線散乱剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子が挙げられる。金属酸化物微粒子の電子顕微鏡観察による平均一次粒子径は、例えば5nm~100nmであり、好ましくは10nm~80nmである。
【0056】
紫外線散乱剤は、その表面がシリカ、アルミナ等の無機化合物、またはポリアクリル酸ナトリウム、脂肪酸金属石鹸、シリコーン等の有機化合物によって被覆されていてもよい。また、紫外線散乱剤は、ポリアクリル酸ナトリウム等の親水性化合物によってその表面が被覆されることにより、水分散性であってもよい。
【0057】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(表示名称:BHT));ブチルヒドロキシアニソール(表示名称:BHA)、dl-α-トコフェロール等のビタミンE、及びその誘導体;チオタウリン;メマツヨイグサ抽出液;βカロチン;カテキン化合物;フラボノイド化合物;ポリフェノール化合物;等が挙げられる。なお、カテキン化合物は、緑茶エキス等として用いることができる。
【0058】
防腐・抗菌剤としては、例えば、イソプロピルパラべンやベンジルパラベン等のパラべン類、安息香酸、安息香酸塩、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、感光素、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル(別名トリクロサン)、パラオキシ安息香酸エステル及びそのナトリウム塩、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、亜鉛・アンモニア・銀複合置換型ゼオライト、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、銀-銅ゼオライト、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール、クロラミンT、クロルキシレノール、クロルフェネシン、クロルヘキシジン、1,3-ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、臭化アルキルイソキノリニウム、チアントール、チモール、銀、硝酸銀、酸化銀等が挙げられる。
【0059】
香料としては、例えば、シトラール、メントール、ショウノウ、サルビノリンA、カンナビノイド、ヒノキチオール、リモネン、ファルネソール、ビタミンA等のテルペン・テルペノイド;フェノキシエタノール等の芳香族アルコール、オイゲノール、ショウガオール等のフェノール類;酪酸エステル、プロピオン酸エステル等のエステル類;γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン等のラクトン類;炭素数6~20のアルデヒド類;等が挙げられる。
【0060】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤等)、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0061】
増粘剤としては、例えば、グアガム、デンプン、カルボキシメチルセルロース、アセチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、粘土鉱物、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)等が挙げられる。
【0062】
無機粒子の形成材料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カオリン、雲母、ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、アルミナ、シリカ及びシリル化シリカ等が挙げられる。
【0063】
樹脂粒子の形成材料としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0064】
酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸、リン酸等が挙げられる。
【0065】
アルカリとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム及びカリウム等)又はアルカリ土類金属(カルシウム等)の水酸化物、アンモニア水、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。
【0066】
糖としては、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、グルコース、ショ糖、果糖、乳糖、マルトース、キシロース及びトレハロース等が挙げられる。
【0067】
顔料としては、酸化チタン、水酸化アルミニウム、黄酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄等が挙げられる。
【0068】
本発明の実施形態による化粧料は、上記以外に、通常の化粧料に使用される成分、例えば、最新化粧品科学(薬事日報社発行)に記載の各種成分を含んでいてもよい。
【0069】
化粧料中における上記他の成分の含有割合は、用途等に応じて適切に設定され得る。当該含有割合は、例えば10重量%~99.9重量%、好ましくは70重量%~99.5重量%、より好ましくは85重量%~99.0重量%、より好ましくは90重量%~98.0重量%であり得る。
【0070】
A-3.化粧料の剤形
本発明の実施形態による化粧料は、配合や目的に応じて任意の適切な剤形であってよい。本発明の実施形態による化粧料は、例えば、分散液(ローション)、乳液(O/W型又はW/O型エマルション)、クリーム、ゲル又はパウダーであり得る。
【0071】
A-4.化粧料の用途
本発明の実施形態による化粧料は、例えば、日焼け止め化粧料(O/W型エマルション、W/O型エマルション、液状、エアゾールスプレー、スティック状等);BBクリーム、CCクリーム、ファンデーション等のメイクアップ化粧料(O/W型エマルション、W/O型エマルション、練り状、スティック状等);化粧水、乳液、美容液等のスキンケア化粧料(O/W型エマルション、W/O型エマルション、液状等);ヘアケア化粧料(O/W型エマルション、W/O型エマルション、液状、エアゾールスプレー、練り状等);ボディーケア化粧料(O/W型エマルション、W/O型エマルション、液状、エアゾールスプレー、等)等として用いられ得る。
【0072】
A-4-1.日焼け止め化粧料
1つの実施形態において、上記化粧料は、日焼け止め化粧料である。日焼け止め化粧料は、A-2項に記載のHAp焼結体粒子と紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤とを含む。上記HAp焼結体粒子を含む日焼け止め化粧料によれば、当該HAp焼結体粒子を含まない日焼け止め化粧料に比べて、日焼け止め効果がより好適に得られ得る。
【0073】
紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤としては、A-2項に例示したものを好ましく用いることができる。
【0074】
日焼け止め化粧料におけるHAp焼結体粒子の含有割合は、好ましくは0.1重量%~15重量%、より好ましくは0.5重量%~10重量%、さらに好ましくは1重量%~8重量%である。HAp焼結体粒子の含有割合が上記範囲内であれば、使用感及び保存安定性に優れるとともに、日焼け止め効果が好適に得られ得る。
【0075】
日焼け止め化粧料におけるUV-A吸収剤の含有割合は、好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.5重量%~5重量%である。また、UV-B吸収剤の含有割合は、好ましくは0.1重量%~25重量%、より好ましくは0.5重量%~20重量%である。好ましくは日焼け止め化粧料は、UV-A吸収剤とUV-B吸収剤とのいずれか一方のみを含むものであってもよいが、両方を含むことがより好ましい。UV-A吸収剤とUV-B吸収剤との両方を含む場合における紫外線吸収剤の含有割合(UV-A吸収剤とUV-B吸収剤との合計含有割合)は、好ましくは0.2重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~25重量%である。
【0076】
日焼け止め化粧料における紫外線散乱剤の含有割合は、好ましくは0.1重量%~30重量%、より好ましくは0.5重量%~25重量%、さらに好ましくは1重量%~20重量%である。
【0077】
従来の日焼け止め化粧料においては、紫外線防御効果を向上させる観点から、樹脂粒子が配合される場合があるが、このような樹脂粒子の使用は環境汚染の観点から問題視されている。これに対し、HApは、環境安全性に優れているため、樹脂粒子の代替として好適に用いられ得る。よって、1つの実施形態において、上記日焼け止め化粧料は、HAp焼結体粒子を含む一方で、樹脂粒子を実質的に含まないものであり得る。ここで、「樹脂粒子を実質的に含まない」とは、日焼け止め化粧料における樹脂粒子の配合割合が0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であることを意味する。なお、言うまでもないが、上記日焼け止め化粧料は、樹脂粒子とHAp焼結体粒子との両方を含むものであってもよい。
【実施例0078】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0079】
<平均一次粒子径の測定方法>
走査型電子顕微鏡(SEM)にて9点の画像を取得し、画像1点中、12個の粒子の粒径を計測して、合計108個の粒子の粒径を平均することにより、平均一次粒子径を求めた。
<粘度の測定方法>
B形粘度計(機種:BMII、東機産業社製)を用いて、下記の条件で測定した。
ローター:No.2
回転数:60rpm
測定時間:60秒
温度:25℃
<SPF値の測定方法>
Sun Protection Factor(SPF)は、SPFアナライザー UV-2000S(Labsphere社製)を用いて測定した。
[SPF値の測定とin vivo予測SPF値の算出方法]
1)市販のPMMA板Helioplate HD6に各サンプルを1.3mg/cm量りとり、指で均一に塗布し、暗所で30分間乾燥させた後、SPFアナライザーを用いてSPF値(in vitroのSPF値)を測定した。
2)in vivoのSPF値が既知であるSPF日焼け止め標準試料P7およびP3についても同様にSPF値(in vitroのSPF値)を測定して検量線を作成し、当該検量線を用いて各サンプルのin vivo予測SPF値を算出した。
3)SPF値については、下限値が2(2015年1月20日付粧工連自主基準文章より)であることから、この基準をもとにサンプルの紫外線防御効果の有無を判定した。
[UVAPF値の測定とin vivo予測UVAPF値の算出およびPAの判定方法]
1)紫外線防御効果ありと判定された(in vivo予測SPF値が2以上)サンプルについて、SPF測定後のPMMA板を用いて、in vivo予測SPF値をもとに設定した量の光をサンテストCPS+にて照射した。
2)光照射後のPMMA板を、SPFアナライザーを用いてUVAPF値(in vitroのUVAPF値)を測定した。
3)in vivoのUVAPF値が既知であるUVAPF日焼け止め標準試料S2についても同様にUVAPF値(in vitroのUVAPF値)を測定し、当該測定値を用いた補正値として各サンプルのin vivo予測UVAPF値を算出した。
なお、PA判定については、in vivo予測UVAPF値をもとに、下記の基準を用いて判定した。
UVAPF 2~4 :PA+
UVAPF 4~8 :PA++
UVAPF 8~16 :PA+++
UVAPF 16以上 :PA++++
【0080】
[試験例A:リキッドファンデーション処方]
[実施例A-1]
下記の手順でW/O型リキッドファンデーションを調製した。
(1)表1に記載の成分1~5を均一に溶解した。
(2)表1に記載の成分6~17を均一に混合した。
(3)(2)で得られた混合物に表1に記載の成分18を添加して均一に混合した。
(4)(3)で得られた混合物に(1)で得られた溶液を徐々に添加して乳化した(条件:ディスパー=2500rpm、5分間、室温)。
【0081】
[比較例A-1]
手順(3)を行わなかったこと(結果として、HApを添加しなかったこと)以外は実施例A-1と同様にして、リキッドファンデーションを調製した。
【0082】
[比較例A-2]
手順(3)において成分18の代わりに成分19を添加したこと以外は実施例A-1と同様にして、リキッドファンデーションを調製した。
【0083】
<安定性評価>
実施例A-1及び比較例A-1~A-2で得られたリキッドファンデーションに関して、調製直後の状態および加速試験後の状態を目視で確認し、以下の基準で安定性を評価した。結果を表1に示す。なお、加速試験は、室温、5℃又は50℃のインキュベーター内で一カ月間保管することによって行った。
良好:凝集物が視認されない
不良:凝集物が視認される
【0084】
<使用感の官能評価>
専門パネラー5名が実施例A-1及び比較例A-1~A-2で得られたリキッドファンデーションを手の甲に塗布し、比較例A-1のリキッドファンデーションの使用感を基準として、使用感が比較例A-1の使用感より優れる場合を「良好」、同じ場合を「同等」、劣る場合を「不良」と評価した。5名のパネラーの評価に基づいて以下の基準で使用感を評価した。結果を表1に示す。
○:「良好」が3名以上、「同等」が2名以下および「不良」が0名
△:「良好」が2名以下、「不良」が0名
×:「不良」が1名以上
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示されるとおり、比較例A-2のリキッドファンデーションは、HApを含まない比較例A-1のリキッドファンデーションよりもきしみ感を感じさせるものであったのに対し、実施例A-1のリキッドファンデーションは、きしみ感を感じさせず、HApを含まない比較例A-1のリキッドファンデーションよりもべたつきが抑制されるとともに、さらさらとした良好な使用感であった。
【0087】
<機能性評価1>
パネラー(1名)の右半顔および左半顔にそれぞれ、比較例A-1および実施例A-1のリキッドファンデーション0.5gを塗布し、皮膚計測システム(「VISIA evolution」、Can&#64257;eld Scientific社製)を用いて塗布直後および6時間後の色調を測定し、下記式に基づいて色調の変化量を調べた。その結果、右半顔(比較例A-1)の色調の変化量が5.85であったのに対し、左半顔(実施例A-1)の色調の変化量は4.08であり、実施例A-1のリキッドファンデーションの方が経時での色調の変化量が少なかった。また、実施例A-1のリキッドファンデーションによれば、塗布後6時間において、比較例A-1のリキッドファンデーションよりも経時的なテカリの発生が抑制されており、また、シミの隠ぺい力の持続性に優れていた。
色調の変化量={(Δa+(Δb+(ΔL0.5
Δa=(塗布直後のa)-(塗布6時間後のa
Δb=(塗布直後のb)-(塗布6時間後のb
ΔL=(塗布直後のL)-(塗布6時間後のL
【0088】
<機能性評価2>
パネラー(1名)の右半顔および左半顔にそれぞれ、比較例A-2および実施例A-1のリキッドファンデーションを塗布したこと以外は機能性評価1と同様にして、色調の変化量を調べた。その結果、右半顔(比較例A-2)の色調の変化量が2.65であったのに対し、左半顔(実施例A-1)の色調の変化量は1.90であり、実施例A-1のリキッドファンデーションの方が経時での色調の変化量が少なかった。また、塗布後6時間におけるテカリの状態及びシミの隠ぺい力に関しては、実施例A-1のリキッドファンデーションと比較例A-2のリキッドファンデーションとは、同程度であった。
【0089】
[試験例B:日焼け止め化粧料処方]
[実施例B-1]
下記の手順でW/O型日焼け止め化粧料を調製した。
(1)表2に記載の成分1~9を均一に混合した。
(2)(1)で得られた混合物に表2に記載の成分10を添加して均一に混合した。
(3)表2に記載の成分16~21を均一に溶解した。
(4)(2)で得られた混合物に(3)で得られた溶液を徐々に添加して乳化した(条件:ディスパー=2500rpm、5分間、室温)。
【0090】
[比較例B-1]
手順(2)を行わなかったこと(結果として、HApを添加しなかったこと)以外は実施例B-1と同様にして、日焼け止め化粧料を調製した。
【0091】
[比較例B-2~B-6]
手順(2)において成分10の代わりに成分11、12、13、14又は15を添加したこと以外は実施例B-1と同様にして、日焼け止め化粧料を調製した。
【0092】
<安定性評価>
実施例B-1及び比較例B-1~B-6で得られた日焼け止め化粧料に関して、調製直後の状態および加速試験後の状態を目視で確認し、以下の基準で安定性を評価した。結果を表2に示す。なお、加速試験は、室温、5℃又は50℃のインキュベーター内で一カ月間保管することによって行った。
良好:凝集物が視認されない
不良:凝集物が視認される
【0093】
<使用感の官能評価>
専門パネラー5名が実施例B-1及び比較例B-1~B-6で得られた日焼け止め化粧料を手の甲に塗布し、比較例B-1の日焼け止め化粧料の使用感を基準として、使用感が比較例B-1の使用感より顕著に優れる場合を「◎」、優れる場合を「○」、同じ場合を「△」、劣る場合を「×」と全体評価した。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
表2中、SPF値はUVB防御効果を示している。また、UVAPFはUVA防御効果を示しており、得られた数値によってPA+、++、+++、++++の4段階で表記される。通常、PMMA板を用いたin vitro測定と人肌を用いたin vivo測定とでは、得られた値が一致しないことが多いことから、今回の評価では、in vitroの紫外線防御効果の評価に加えて、in vivoの紫外線防御効果が既知である標準試料を用いてin vivoの紫外線防御効果を予測して評価した。その結果、表2に示される通り、実施例B-1の日焼け止め化粧料は、in vitro測定およびin vivo予想の両方において、HApを含まない日焼け止め化粧料(比較例B-1、B-3~B-6)よりも優れた日焼け止め効果を有することが示された。一方、HAp非焼結粒子を含む比較例B-2の日焼け止め化粧料は優れた日焼け止め効果を発揮し得るが、使用感が劣っていた。
【0096】
[参考例:I型プロコラーゲン産生促進能評価]
正常ヒト新生児包皮線維芽細胞(倉敷紡績社)を96wellプレート(Thermo SCIENTICIC社)に2.0×10cells/wellで播種し、0.5%FBS添加DMEM培地にて37℃、5体積%CO条件下で48時間培養した(24時間後に培地交換)。48時間培養後、100μg/mLの濃度でHAp焼結体粒子(「micro-SHAp」、ソフセラ社)を含む0.5%FBS添加DMEM培地又はHAp非含有0.5%FBS添加DMEM培地に交換し、24時間培養を続けた。培養終了後、培養上清中のプロコラーゲン量を、Procollagen type I C-peptide(PIP) ELA Kit(Precoated)(タカラバイオ社)を用いて、メーカー開示のプロトコルに準じて測定した。培養上清回収後、各wellをPBS(-)で1回洗浄し、Cell Lysis Buffer M溶液(和光純薬工業株式会社)を30μL添加した。ピペッティングを行い、10分間プレートシェーカーで振盪させた細胞融解液のタンパク質量を、Bradford Protein Assay Kit(タカラバイオ社)を用いて、メーカー開示のプロトコルに準じて測定した。各試験区のプロコラーゲン量をタンパク質量で除し、単位タンパク質量当たりのプロコラーゲン量を算出した。結果を図1に示す。
【0097】
図1に示されるとおり、HAp焼結体粒子を含む培地で培養することにより、単位タンパク質量当たりのプロコラーゲン産生量が増大していた。このことから、HAp焼結体粒子がプロコラーゲン産生促進能を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の化粧料は、日焼け止め化粧料、メイクアップ化粧料、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料、ボディーケア化粧料等の種々の化粧料として適用され得る。

図1