(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036514
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】線材処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 54/10 20060101AFI20220301BHJP
B65H 54/02 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B65H54/10
B65H54/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140763
(22)【出願日】2020-08-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】509247973
【氏名又は名称】株式会社新興テクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】望月 豊
【テーマコード(参考)】
3F056
【Fターム(参考)】
3F056AA01
3F056GB01
(57)【要約】
【課題】使用済みの線材を適当な大きさ形状に巻取り、この巻取った線材を装置外部へ容易に除去することができる線材処理装置を提供する。
【解決手段】巻取り機構部3の巻取り軸部5は、駆動機構部2の駆動モータ等によって回転駆動され、剛性を有する複数の鉄芯部材5aを、巻取り軸部5の軸方向に沿うように配置してテーパー形状の部分を形成させている。巻取り軸部5は、回転駆動されているとき、巻取り機構部3に投入された線材がテーパー形状の部分に巻取られるように、上記の線材が引っ掛かる隙間を複数の鉄芯部材5aの各間に設けている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの線材を投入する巻取り機構部と、
前記巻取り機構部を駆動させる駆動機構部と、
を備え、
前記巻取り機構部は、
該巻取り機構部に投入された線材を巻取る巻取り軸部と、
前記巻取り機構部に投入された線材が前記巻取り軸部に接触するように、前記巻取り軸部を覆う巻取り機構部カバーと、
を有し、
前記駆動機構部は、
前記巻取り軸部を回転駆動させる回転駆動機構部を有し、
前記巻取り軸部は、
前記巻取り機構部に投入された線材が引っ掛かる隙間を有するテーパー形状の部分を備え、
前記回転駆動機構部によって回転駆動されているとき、前記巻取り機構部カバーに接触した、前記巻取り機構部に投入された線材が、前記テーパー形状の部分に巻取られるように配置されている、
ことを特徴とする線材処理装置。
【請求項2】
前記巻取り軸部は、
前記巻取り機構部に投入された線材よりも硬い剛性を有する複数の線状部材が、前記巻取り軸部の軸方向に沿うように、外周部分に配置されて、前記巻取り軸部の軸方向の一端側から他端側へ向かって軸径が拡がる前記テーパー形状の部分が形成され、前記複数の線状部材の各間に前記隙間が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の線材処理装置。
【請求項3】
前記巻取り機構部は、
前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分の大径側に、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材を、前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分の小径側へ移動させる押出し部材を有し、
前記駆動機構部は、
前記押出し部材を、前記巻取り軸部の軸方向に沿って移動させる押出し機構部を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線材処理装置。
【請求項4】
前記巻取り機構部は、
前記巻取り機構部に投入された線材を前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分に接触させ、また、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材に接触する接触部材と、
前記接触部材を前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分に向かって移動させる移動機構部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線材処理装置。
【請求項5】
前記巻取り機構部に投入された線材が前記巻取り軸部に巻取られた後、
前記巻取り機構部に投入された線材を巻取ったときの逆方向に前記巻取り軸部を回転させ、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材に前記接触部材を接触させて、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材の前記隙間に引っ掛かっている部分を変形させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の線材処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃線材を巻取り処理する線材処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、輸送等のために大量の紙製品をまとめて梱包し、梱包体を形成させるときには、結束番線等の線材を使用して梱包体の結束を行っている。
結束番線等は、十分な強度を得るため針金などが用いられており、結束を解いた後、即ち、一度使用した後は、折れ曲がりなどの癖が残り(形状記憶が起こり)、強度や耐久性などが低下していることがある。そのため、使用後の結束番線等は再利用することが難しく、廃線材として処分されている。
【0003】
例えば、廃棄厚紙などのベールを圧縮し、これにワイヤ(結束番線)を複数巻付けて所定位置に固定し、固定刃および可動刃を当接させてワイヤおよびベールの一部分を切断する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
上記の装置は、切断したワイヤを収集フックに接触させて束にし、この束をワイヤ収集凹部へ落とす。ワイヤ収集凹部の中で回転している回転フォークが、上記の束を集めてコイルを形成させる。この後、回転フォークの近傍に設けられたフィンガーが、回転フォークの回転方向に沿って移動し、回転フォークに巻付いているコイルを除去するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結束番線等の線材は、一度使用すると、結束時の曲げ部分などの癖が残る(形状記憶が起こる)ため、結束を解いた後、何も処理せずに放置する場合には、広い置き場所が必要になる。
また、使用済みの線材を巻取ることによってコイル状に形成した場合、線材が巻付いた部分からコイル状となった線材を除去することが難しくなる。例えば、前述の特許文献1に開示された装置は、線材(ワイヤ)が、除去し易い状態で回転フォークに巻付くように、巻取りを行う前に線材を短く切断し、複数の線材を束ねる(線材同士が複雑に絡みあうことを防ぐ)処理を施している。
即ち、様々な長さの線材を巻取った場合、装置の一部分(巻取り軸等)に複雑に絡みついて除去することが困難になり、繁雑な対処作業等が必要になる。
【0006】
本開示は上記の問題を解決するためになされたもので、使用済みの結束番線等の線材を適当な大きさ形状に巻取り、この巻取った線材を装置外部へ容易に除去することができる線材処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る線材処理装置は、使用済みの線材を投入する巻取り機構部と、前記巻取り機構部を駆動させる駆動機構部と、を備え、前記巻取り機構部は、該巻取り機構部に投入された線材を巻取る巻取り軸部と、前記巻取り機構部に投入された線材が前記巻取り軸部に接触するように、前記巻取り軸部を覆う巻取り機構部カバーと、を有し、前記駆動機構部は、前記巻取り軸部を回転駆動させる回転駆動機構部を有し、前記巻取り軸部は、前記巻取り機構部に投入された線材が引っ掛かる隙間を有するテーパー形状の部分を備え、前記回転駆動機構部によって回転駆動されているとき、前記巻取り機構部カバーに接触した、前記巻取り機構部に投入された線材が、前記テーパー形状の部分に巻取られるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記巻取り軸部は、前記巻取り機構部に投入された線材よりも硬い剛性を有する複数の線状部材が、前記巻取り軸部の軸方向に沿うように、外周部分に配置されて、前記巻取り軸部の軸方向の一端側から他端側へ向かって軸径が拡がる前記テーパー形状の部分が形成され、前記複数の線状部材の各間に前記隙間が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、前記巻取り機構部は、前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分の大径側に、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材を前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分の小径側へ移動させる押出し部材を有し、前記駆動機構部は、前記押出し部材を、前記巻取り軸部の軸方向に沿って移動させる押出し機構部を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記巻取り機構部は、前記巻取り機構部に投入された線材を前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分に接触させ、また、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材に接触する接触部材と、前記接触部材を前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分に向かって移動させる移動機構部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記巻取り機構部に投入された線材が前記巻取り軸部に巻取られた後、前記巻取り機構部に投入された線材を巻取ったときの逆方向に前記巻取り軸部を回転させ、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材に前記接触部材を接触させて、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材の前記隙間に引っ掛かっている部分を変形させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、廃棄する結束番線等の線材を小さくまとめる処理によって置き場所等の広さを抑えることができ、また、処理を施した線材を容易に装置外部へ除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施の形態による線材処理装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】
図1の線材処理装置を側方から見た場合の概略構成を示す説明図である。
【
図3】
図1の線材処理装置を側方から見た場合の概略構成を示す説明図である。
【
図4】
図1の線材処理装置を前カバー側から見たときの概略構成を示す説明図である。
【
図5】
図1の線材処理装置を駆動機構部の後端側から見たときの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
図1は、本開示の実施の形態による線材処理装置1の概略構成を示す説明図である。この図は、線材処理装置1を上方から見た(内部を透視した)もので、この装置内部に配置された各部の構成を示している。
線材処理装置1は、結束番線等の線材を巻取る巻取り機構部3、および、巻取り機構部3の各部を動作させる駆動機構部2を備えている。
巻取り機構部3は、例えば、金属製の巻取り軸部カバー4、巻取り軸部カバー4によって両側方、後方、および、下方が覆われている巻取り軸部5、巻取り軸部5の先端側を覆う前カバー6などによって構成されている。
駆動機構部2は、巻取り機構部3、もしくは、巻取り軸部5の後方側に配置されている。
【0015】
図2および
図3は、
図1の線材処理装置1を側方から見た場合の概略構成を示す説明図である。これらの図は、
図1のA-A’矢印が示す方向に線材処理装置1を見た(矢視した)場合の各部の配置構成を示している。
図2および
図3は、線材処理装置1を部分的に透視した図である。詳しくは、
図2は、フレーム部材21、押出し部材8、押出しリンク部9(押出し機構部)、押出し駆動部11(押出し機構部)の配置を示した図である。また、
図3は、フレーム部材21、押出し部材8、押出しリンク部9および押出し駆動部11の図示を省略した場合の、各部の配置を示した図である。
【0016】
線材処理装置1は、基台20に巻取り機構部3および駆動機構部2が搭載(固定)されている。
巻取り機構部3は、巻取り軸部カバー4の前方開口部分を開閉するように前カバー6を備えており、また、巻取り軸部カバー4の上側開口部分を開閉するように上側カバー40を備えている。なお、上側カバー40は、後述するように、例えば、巻取り軸部カバー4の上側部分において、開閉可能に取り付けられている。
巻取り機構部3は、内部に配置された巻取り軸部5の全方向を覆うように構成されており、巻取り軸部カバー4、前カバー6、上側カバー40、および、後述するガイド部材16によって、巻取り軸部5を覆う巻取り機構部カバーが構成されている。
また、前カバー6は、例えば、側方の片側部分にヒンジ等を設けて、巻取り軸部カバー4の片側の側壁部分に固定され、
図1に示した矢印Xの示す方向に移動して、巻取り機構部3(巻取り軸部カバー4)の前方開口部分を開閉するように設置されている。
【0017】
巻取り軸部5は、軸の外周面に相当する部分を、巻取り機構部3の前側(前カバー6側)から後側へ向かって拡がるように延設されたテーパー形状に形成させたもので、回転軸部13が挿通されている。
なお、巻取り軸部5は、後述するように、複数の鉄芯部材5a(剛性を有する線状部材)によって上記のテーパー形状の部分が形成されており、回転軸部13とともに回転するように、当該回転軸部13に固定されている。
巻取り軸部5は、テーパー形状に拡がった後端部分(テーパー形状の大径側)を、巻取り軸部カバー4の後壁部分側に配置し、テーパー形状の先端部分(テーパー形状の小径側)を、前カバー6側に配置するように、巻取り機構部3に備えられている。
また、巻取り軸部5は、巻取り機構部3の内部に投入された線材、即ち、上記の巻取り機構部カバーの底面部分(巻取り軸部カバー4の底面部分)に載置された線材に、当接することができる高さ(巻取り機構部カバー内部における位置)に配置されている。
【0018】
巻取り軸部5のテーパー形状の先端部分は、前カバー6に備えられた先端支持部7に当接支持されている。
換言すると、先端支持部7は、前カバー6を閉じた状態にしたとき、巻取り軸部5の先端部分に当接する位置に設けられている。
詳しくは、例えば、先端支持部7は、複数のボールベアリング等を備え、巻取り軸部5の先端部分、または、巻取り軸部5に挿通された回転軸部13の先端部分と当接し、回転軸部13ならびに巻取り軸部5が回転自在となるように支持している。
【0019】
巻取り機構部3は、巻取り軸部5の下方に接触部材15を備えている。接触部材15は、下端部分が接触部材昇降部15a(移動機構部)によって支持され、巻取り軸部カバー4の底面部分に設けられた孔部(図示省略)から上方に突出するように設置されている。
詳しくは、接触部材15は、接触部材昇降部15aによって上方へ(テーパー形状の部分へ向かって)上昇させた状態において、上記のように巻取り軸部カバー4の底面部分から突出し、接触部材昇降部15aによって下降させた状態において、テーパー形状の部分から離れる(巻取り軸部カバー4の底面部分に引き込まれる)ように設置されている。
【0020】
接触部材15の上端部分等は、巻取り軸部5の軸方向に延設された長手形状をしており、巻取り機構部3に投入された線材が、巻取り軸部5に巻取られるとき、テーパー形状のいずれかの箇所に偏って巻き取られることを防ぎ(巻き取られた線材が所定の径よりも大きくなることを抑え)、順次、巻取り軸部5の軸方向に沿って巻取られるように構成されている。
また、接触部材15は、巻取り機構部3に投入された線材が巻取り軸部5に巻取られるとき、線材間に大きな隙間が生じないように、巻取られた略コイル状の線材の外周部分に適度な圧力を加えることができる形状に形成されている。
【0021】
接触部材昇降部15aは、巻取り軸部カバー4の底面部分の下方に設置され、例えば、動作範囲(稼働方向)を制限するガイド部材および空気圧シリンダなどを備え、また、図示を省略した操作手段に行われた操作に応じて、接触部材15を上昇ならびに下降させるように構成されている。
接触部材昇降部15aは、基台20に固定されており、例えば、巻取り軸部5に巻付いた略コイル状の線材の外周部分に当接する位置まで、接触部材15を移動させることができるように設置されている。
ここで例示した接触部材昇降部15aは、前述の操作手段に行われた任意の操作に応じて、接触部材15の前側(前カバー6側)の部分が最も降下するように構成されている。
詳しくは、
図3に破線で示したように、巻取り軸部カバー4の後壁部分側から前カバー6側へ向かって下方へ傾き、巻取り軸部5に巻付いた略コイル状の線材を、巻取り機構部3の外部へ排除し易い状態となるように構成されている。
【0022】
回転軸部13は、巻取り軸部カバー4の後壁部分を貫通して、駆動機構部2に備えられた回転軸支持部14によって支持されている。
詳しくは、駆動機構部2は、2つの回転軸支持部14を備え、回転軸部13の中央部分および基端部分を、それぞれ回転軸支持部14によって回転自在に支持するように構成されている。
2つの回転軸支持部14は、例えば、フレーム部材21の上面に載置固定されている。
回転軸部13の基端部分(駆動機構部2の後端側)には、回転軸側スプロケット32が固定されている。この回転軸側スプロケット32は、モータ側スプロケット31の上方に配置されている。
【0023】
駆動機構部2は、基台20に固定された駆動モータ30を備えている。なお、ここで説明に用いる各図においては、駆動モータ30、押出し駆動部11、接触部材昇降部15aなどの動作を制御(操作)する操作手段、ならびに、駆動モータ30に電力を供給する電源、押出し駆動部11ならびに接触部材昇降部15aへ圧縮空気等を供給するコンプレッサなどの図示を省略している。
フレーム部材21は、例えば、基端部分が基台20に固定され、上側部分には、回転軸部13、2つの回転軸支持部14、回転軸側スプロケット32などが固定され、これら各部が駆動モータ30の上側に配置されるように構成されている。
駆動モータ30の回転駆動軸には、モータ側スプロケット31が固定されている。なお、モータ側スプロケット31の取付け部分、もしくは、駆動モータ30の回転駆動軸などには、図示を省略した回転減速機構等が備えられている。
即ち、駆動機構部2は、駆動モータ30が回転軸部13等の下方に配置され、回転軸側スプロケット32の下方にモータ側スプロケット31が配置されるように構成されている。
【0024】
図4は、
図1の線材処理装置1を前カバー6側から見たときの概略構成を示す説明図である。
また、
図5は、
図1の線材処理装置1を駆動機構部2の後端側(背後側)から見たときの概略構成を示す説明図である。
巻取り機構部3は、例えば、巻取り軸部カバー4の内側部分に固定されたガイド部材16を備えている。
ガイド部材16は、巻取り軸部5の上側部分の近傍および下側部分の近傍に、それぞれ複数配置され、板金加工された金属板等によって形成されている。
ガイド部材16は、上側カバー40を開いて巻取り軸部カバー4の上側開口部から、使用済みの線材を投入したとき、この線材が巻取り軸部5の周辺(近傍)に落下するように、即ち、投入された線材を巻取り軸部5の近傍へ誘導する形状(巻取り軸部5が回転しているときには、回転によって移動する線材を巻取り軸部5のテーパー形状の部分へ誘導する形状)に形成されている。
なお、ガイド部材16は、例えば、巻取り軸部5の軸方向に沿って長手形状(図示省略)を有するように形成され、巻取り軸部5のテーパー形状の部分の周囲を囲むように配置固定されている。
【0025】
巻取り機構部3は、巻取り軸部5の基端側に押出し部材8を備えている。押出し部材8は、例えば、後述するように移動したとき、ガイド部材16等に接触しないように、(
図4に示したように)横長の六角形状に形成されたプレート状の部材である。押出し部材8は、プレート面の中央部位に、回転軸部13ならびに巻取り軸部5が挿通可能な孔部が設けられている。
押出し部材8は、駆動機構部2に配置された、例えば、略U字状に形成された押出しリンク部9の一の先端部分が接続固定されている。
押出しリンク部9の、略U字状の他の先端部分は、押出し駆動部11のシリンダ軸部材等に接続固定されている。
【0026】
即ち、線材処理装置1は、押出し駆動部11の稼働により、押出しリンク部9を介して、押出し部材8が巻取り軸部5の軸方向に沿って移動する(摺動する)ように構成されている。
押出しリンク部9は、例えば、略U字状の一の先端部分側を、
図1に示したリンク支持部10によって摺動可能に支持されている。リンク支持部10は、フレーム部材21の上面に固定されている。
ここで例示した線材処理装置1は、押出し駆動部11、押出しリンク部9等を、回転軸部13ならびに巻取り軸部5の両側方に、それぞれ備えて構成されている。
また、線材処理装置1は、各押出し駆動部11の一部分、押出し駆動部11と押出しリンク部9との接続部分、リンク支持部10、回転軸支持部14など、フレーム部材21の上側部分に固定された各部を覆う(駆動機構部2を覆う)駆動機構部カバー12を備えている。
【0027】
駆動機構部2は、
図5に示したように、モータ側スプロケット31および回転軸側スプロケット32に駆動チェーン33が掛けられ、駆動モータ30の回転駆動力が回転軸部13へ伝達されるように構成されている。
【0028】
ここで例示した線材処理装置1は、
図4および
図5に示したように開閉する上側カバー40を備えている。
この上側カバー40は、例えば、前カバー6が取付けられている、巻取り軸部カバー4の前方開口部分の幅方向の中央に、ヒンジ等を用いて2つ取付けられ、一方の上側カバー40が矢印Y1の示す方向に開閉し、他方の上側カバー40が矢印Y2の示す方向に開閉するように構成されている。
【0029】
巻取り軸部5は、軸方向に直交する断面が、
図4に示したように構成されている。
巻取り軸部5は、巻取り機構部3に投入される線材よりも十分に硬く(後述するように上記の線材等に衝突または接触しても変形等が生じない程度の)、高い剛性を有する複数の線状部材を、例えば、回転軸部13を挿通(嵌合)させることができる管状部材に固定したものである。
具体的には、巻取り軸部5は、例えば、上記の線状部材として直線状の鉄芯部材5aを用い、上記の管状部材の外周表面側に、複数の鉄芯部材5aを概ね巻取り軸部5の軸方向に沿って取付け固定することによって構成されている。
詳しくは、巻取り軸部5は、巻取り軸部5の先端部分側から見たとき、軸方向に直交する断面において、上記の管状部材の管孔を中心にして(巻取り軸部5の軸方向に直交する断面において)放射状に拡がるように、複数の鉄芯部材5aを設置してテーパー形状の部分を形成させ、このテーパー形状の部分に複数の溝(軸方向に延設された隙間)を生じさせている。
換言すると、巻取り軸部5は、当該巻取り軸部5の軸方向の一端側から他端側へ向かって、巻取り軸部5の軸径が広がるように、上記の一端側と他端側との間に複数の鉄芯部材5aを配置し、上記のテーパー形状の部分を形成させている。
【0030】
巻取り軸部5は、軸方向に直交する断面が、先端側(テーパー形状小径側)で小さく、基端側(テーパー形状大径側)で大きく構成されており、各鉄芯部材5aの間隔は、先端側で狭く、基端側で広くなる。
即ち、各鉄芯部材5aの間に生じる隙間は、先端側で幅が狭く、基端側で幅が広く形成される。このように隙間の幅が様々な大きさとなることから、この隙間に様々な太さの線材を引っ掛けることが可能になる。
なお、各鉄芯部材5aは、各鉄芯部材5a間に生じる隙間が、巻取り機構部3に投入される線材の径よりも大きくなるように配置することが好ましい。
【0031】
次に動作について説明する。
例えば、使用済みの線材の巻取り処理を行う前に、前カバー6を閉じて巻取り軸部5の先端部分を先端支持部7に支持させる。また、必要に応じて押出し駆動部11を駆動させ、押出し部材8を巻取り軸部5の基端側(巻取り軸部カバー4の後壁部分側)、即ち、テーパー形状の部分の大径側に配置させておく。
上側カバー40が開かれ、処理を行う(使用済みの)線材が、巻取り機構部3の内部へ投入された後、上側カバー40が閉じられると、操作手段に行われた操作に応じて駆動モータ30が回転し、上記の線材が投入された巻取り機構部3の内部で、巻取り軸部5が回転する。なお、巻取り機構部3の内部へ投入された線材は、ガイド部材16に接触して、巻取り軸部5の周辺近傍に配置される。
【0032】
このとき、接触部材昇降部15aによって、接触部材15を巻き取り軸部5のテーパー面に接近させた状態にしておく。
回転する巻取り軸部5に、巻取り機構部3に投入された線材が当接すると、巻取り軸部5の回転力によって上記の線材が移動し、巻取り軸部カバー4、前カバー6、上側カバー40の各内側部分、接触部材15、ガイド部材16などに接触、もしくは衝突する。
上記の接触や衝突を繰り返すうちに、接触部材15、ガイド部材16等に接触した線材は、例えば、接触部材15の側面部分、ガイド部材16の表面等に誘導されて、巻取り軸部5のテーパー形状の部分に向かって移動する。
上記の誘導は、巻取り軸部5が回転している期間中において継続され、順次、接触部材15、ガイド部材16によって誘導された線材がテーパー形状の部分に押し当てられる。
このようにテーパー形状の部分に押し当てられた線材の端部(線材の部分)は、各鉄芯部材5aの間に生じている隙間に入り込み、巻取り機構部3に投入された線材がテーパー形状の部分に引っ掛かった状態となって、回転する巻取り軸部5に巻取られる。
【0033】
テーパー形状の部分に巻取られた略コイル状の線材は、外周部分が接触部材15の先端部分に当接する。そのため、巻取られた略コイル状の線材が所定の径(大きさ)になると、接触部材15から略コイル状の線材に向かって、適度な圧力(テーパー形状の部分に向かって押し付ける圧力)、回転方向に対する抵抗力(回転方向の逆方向にずれようとする力)が作用する。
接触部材15から、これらの力が加わることにより、巻取り軸部5に巻取られる線材は、所定の径よりも大きくならず、また、テーパー形状の部分において巻取り位置を移動させながら巻取られる。
また、上記のように巻取り軸部5に巻取られた略コイル状の線材の外周に、適度な圧力が加えられることから、上記の線材は、巻取り厚み方向において大きな隙間が生じることなく巻取り軸部5に巻取られる。
【0034】
例えば、巻取り機構部3に投入された線材が、全て巻取り軸部5に巻取られた後、操作手段に所定の操作が行われると、駆動モータ30は、巻取り機構部3に投入された線材を巻取る方向の回転を停止し、適度な回転速度(回転トルク)で、巻取り機構部3に投入された線材の巻取り方向とは逆方向に回転を開始し、当該逆方向に巻取り軸部5を回転させる。
巻取り方向とは逆方向に巻取り軸部5を回転させるとき、当該巻取り軸部5に巻取られている略コイル状の線材の外周部分に、接触部材15を当接させておく。
上記の外周部分に接触部材15が当接し、略コイル状の線材に圧力が加わった状態で、巻取り軸部5が、上記の逆方向に回転すると、略コイル状の線材の、各鉄芯部材5aの隙間に入り込んでいる(引っ掛かっている)部分が、巻取り時とは逆方向に変形し、上記の隙間から外れ易い形状になる。
【0035】
駆動モータ等は、例えば、操作手段に行われた操作に応じて、または、操作手段に備える制御手段などの制御に応じて、巻取り軸部5を適度に逆回転させた後、この逆回転を停止させる。
この後、例えば、操作手段に所定の操作が行われ、この操作に応じて接触部材昇降部15aを動作させて接触部材15を降下させ、巻取り軸部5に巻取られた略コイル状の線材から接触部材15を離間させる。
また、巻取り機構部3が、前カバー6を開けた状態となっているとき、例えば、操作手段に所定の操作が行われると、この操作、または、操作手段に備える制御手段などの制御に応じて押出し駆動部11が稼働し、巻取り軸部5に巻取られている略コイル状の線材に押出し部材8が当接する。
また、上記の押出し駆動部11の稼働によって、さらに押出し部材8が移動し、巻取り軸部15に巻取られている略コイル状の線材が、巻取り軸部5の先端部分(テーパー形状の小径側)から外れ、前カバー6が開放された部分(巻取り軸部カバー4の前方開口部分)から、巻取り機構部3もしくは線材処理装置1の外部へ押し出される。
【0036】
以上のように、線材処理装置1によれば、複数の鉄芯部材5aによってテーパー形状の部分を形成させて巻取り軸部5を構成したので、様々な態様になっている線材を、複数の鉄芯部材5a間に生じている隙間に引っ掛けて、上記のテーパー形状の部分に巻取ることができる。
また、複数の鉄芯部材5aによってテーパー形状の部分を形成させているので、各鉄芯部材5aの間に生じている隙間の大きさが、巻取り軸部5の軸方向に沿って変化しており、様々な径の線材を上記の隙間に引っ掛けることが可能になる。
また、巻取り軸部5をテーパー形状に形成したので、テーパー形状の大径側から小径側へ押出し部材8を移動させることにより、巻取られた(コイル状の)線材を容易に、巻取り軸部5から外すことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 線材処理装置
2 駆動機構部
3 巻取り機構部
4 巻取り軸部カバー
5 巻取り軸部
5a 鉄芯部材
6 前カバー
7 先端支持部
8 押出し部材
9 押出しリンク部
10 リンク支持部
11 押出し駆動部
12 駆動機構部カバー
13 回転軸部
14 回転軸支持部
15 接触部材
15a 接触部材昇降部
16 ガイド部材
20 基台
21 フレーム部材
30 駆動モータ
31 モータ側スプロケット
32 回転軸側スプロケット
33 駆動チェーン
40 上側カバー
【手続補正書】
【提出日】2021-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの線材を投入する巻取り機構部と、
前記巻取り機構部を駆動させる駆動機構部と、
を備え、
前記巻取り機構部は、
該巻取り機構部に投入された線材を巻取る巻取り軸部と、
前記巻取り機構部に投入された線材が前記巻取り軸部に接触するように、前記巻取り軸部を覆う巻取り機構部カバーと、
を有し、
前記駆動機構部は、
前記巻取り軸部を回転駆動させる回転駆動機構部を有し、
前記巻取り軸部は、
前記巻取り機構部に投入された線材よりも硬い剛性を有する複数の線状部材が、前記巻取り軸部の軸方向に沿うように外周部分に配置されて、前記巻取り軸部の軸方向の一端側から他端側へ向かって軸径が拡がるテーパー形状の部分を形成し、前記複数の線状部材の各間に、前記巻取り機構部に投入された線材が引っ掛かる隙間が設けられており、
前記回転駆動機構部によって回転駆動されているとき、前記巻取り機構部カバーに接触した、前記巻取り機構部に投入された線材が、前記テーパー形状の部分に巻取られるように配置されている、
ことを特徴とする線材処理装置。
【請求項2】
前記巻取り機構部は、
前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分の大径側に、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材を、前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分の小径側へ移動させる押出し部材を有し、
前記駆動機構部は、
前記押出し部材を、前記巻取り軸部の軸方向に沿って移動させる押出し機構部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の線材処理装置。
【請求項3】
前記巻取り機構部は、
前記巻取り機構部に投入された線材を前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分に接触させ、また、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材に接触する接触部材と、
前記接触部材を前記巻取り軸部の前記テーパー形状の部分に向かって移動させる移動機構部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線材処理装置。
【請求項4】
前記巻取り機構部に投入された線材が前記巻取り軸部に巻取られた後、
前記巻取り機構部に投入された線材を巻取ったときの逆方向に前記巻取り軸部を回転させ、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材に前記接触部材を接触させて、前記巻取り軸部に巻取られた略コイル状の線材の前記隙間に引っ掛かっている部分を変形させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の線材処理装置。