(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036525
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】エレベータの脱レール検出装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
B66B5/02 A
B66B5/02 P
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140783
(22)【出願日】2020-08-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 一成
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304EA01
3F304EA10
3F304EB05
(57)【要約】
【課題】簡易かつ安価な構成で、カウンタウエイトに簡単に取り付け可能であり、また、電力を供給するための設備を必要とせずに、カウンタウエイトの脱レールを検出する。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータの脱レール検出装置は、磁石と、検出機構と、無線通信機と、バッテリとを備える。上記磁石は、カウンタウエイトを支持するガイドレールに向けて、間隔を空けて配置される。上記検出機構は、上記ガイドレールに対する上記磁石の磁力作用を利用して上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことを検出する。上記無線通信機、上記検出機構によって上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことが検出されたときに脱レール検出信号を発信する。上記バッテリは、上記無線通信機に所要の電力を供給する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンタウエイトを支持するガイドレールに向けて、間隔を空けて配置された磁石を備え、上記ガイドレールに対する上記磁石の磁力作用を利用して上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことを検出する検出機構と、
この検出機構によって上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことが検出されたときに脱レール検出信号を発信する無線通信機と、
この無線通信機に所要の電力を供給するバッテリと
を具備したことを特徴とするエレベータの脱レール検出装置。
【請求項2】
上記検出機構は、
上記磁石を支持する支持部材と、
上記ガイドレールが上記間隔以上に上記磁石から離れたときに、上記支持部材を上記磁石と共に上記ガイドレールから離間する方向にスライドさせるバネ部材と、
このバネ部材によって上記支持部材がスライドしたときにON動作するスイッチと
を備えることを特徴とする請求項1記載のエレベータの脱レール検出装置。
【請求項3】
上記磁石の上記ガイドレールのガイド部との対向面は、上記ガイドレールのガイド部と略同じ幅を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータの脱レール検出装置。
【請求項4】
上記磁石は、上記ガイドレールのガイド部を囲む突起部を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータの脱レール検出装置。
【請求項5】
上記突起部は、上記ガイドレールのガイド部の外側に広げられていることを特徴とする請求項4記載のエレベータの脱レール検出装置。
【請求項6】
上記磁石の上記ガイドレールのガイド部との対向面に磁力を有し、上記突起部は非磁性体で形成されていることを特徴とする請求項4記載のエレベータの脱レール検出装置。
【請求項7】
上記無線通信機の送信先は、乗りかごの運転を制御する制御装置を含み、
上記制御装置は、
地震発生時に上記無線通信機から上記脱レール検出信号が出力されている場合に、地震管制運転を禁止し、上記乗りかごの運転を停止しておくことを特徴とする請求項1記載のエレベータの脱レール検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの脱レール検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータは、乗りかごと共に昇降路内を昇降動作するカウンタウエイト(つり合いおもり)を備える。乗りかごとカウンタウエイトは、それぞれに昇降路内に立設されたガイドレールに支持され、巻上機の駆動に伴い、メインロープを介して昇降路内をつるべ式に昇降動作する。
【0003】
ここで、カウンタウエイトは、乗りかごと異なり、トラベリングケーブルがないため、異常があっても、それを検出して運転制御することは困難であった。地震等の大きな揺れでカウンタウエイトがガイドレールから外れる「脱レール」した状態で、エレベータの運転を継続していると、カウンタウエイトが乗りかごに衝突するなどの事故に繋がる。このため、カウンタウエイトに脱レール検出装置を設けておき、カウンタウエイトが脱レールしたときに運転を停止することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-301650号公報
【特許文献2】特開平11-35245号公報
【特許文献3】特開平11-79588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に知られている脱レール検出装置は、例えばレーザ光や超音波などを利用したセンサ類を必要とし、装置構成が大かがりである。また、脱レール検出装置に所要の電力を供給するための設備も必要となる。昇降路内は狭いため、できるだけ、簡易な構成でカウンタウエイトの脱レールを検出することが望まれる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、簡易かつ安価な構成で、カウンタウエイトに簡単に取り付け可能であり、また、電力を供給するための設備を必要とせずに、カウンタウエイトの脱レールを検出できるエレベータの脱レール検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータの脱レール検出装置は、磁石と、検出機構と、無線通信機と、バッテリとを備える。上記磁石は、カウンタウエイトを支持するガイドレールに向けて、間隔を空けて配置される。上記検出機構は、上記ガイドレールに対する上記磁石の磁力作用を利用して上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことを検出する。上記無線通信機、上記検出機構によって上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことが検出されたときに脱レール検出信号を発信する。上記バッテリは、上記無線通信機に所要の電力を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は一実施形態に係るエレベータの構成を示す図である。
【
図2】
図2は同実施形態におけるガイドレールと脱レール検出装置、ガイドシューとの位置関係を示す図である。
【
図3】
図3は上記脱レール検出装置に備えられた検出機構の全体構成を示す図である。
【
図4】
図4は上記検出機構のスライド用シリンダの構成を示す図である。
【
図5】
図5は上記検出機構の中空パイプの構成を示す図である。
【
図6】
図6は上記脱レール検出装置の動作を説明するための概略図であり、カウンタウエイトがガイドレールから外れていない状態を示す図である。
【
図7】
図7は上記脱レール検出装置の動作を説明するための概略図であり、カウンタウエイトがガイドレールから外れた状態を示す図である。
【
図8】
図8は上記検出機構に用いられる磁石の別の形状を説明するための図である。
【
図9】
図9は上記検出機構に用いられる磁石の別の形状を説明するための図である。
【
図10】
図10は上記検出機構に用いられる磁石の別の形状を説明するための図である。
【
図11】
図11は同実施形態における地震発生時の運転制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は一実施形態に係るエレベータの構成を示す図である。なお、
図1では、1:1ローピング形式のエレベータの構成を例にしているが、特にこの構成に限定されるものではない。
【0011】
エレベータの昇降路10内に乗りかご11及びカウンタウエイト12が設けられている。カウンタウエイト12は、ガイドシュー13a~13dを介して、昇降路10に立設された一対のガイドレール14a,14bに昇降自在に支持されている。なお、乗りかご11についても、カウンタウエイト12と同様に、図示せぬガイドシューを介してガイドレールに昇降自在に支持されている。
【0012】
また、建物の最上部に機械室20が設けられており、その機械室20内に巻上機21、メインシーブ22、そらせシーブ23、エレベータ制御装置24、地震検知器25などが配設されている。
【0013】
巻上機21は、エレベータ制御装置24から出力される駆動信号により回転駆動し、メインシーブ22に巻き掛けられたメインロープ26を繰り出す。メインロープ26の一端部には乗りかご11が連結され、メインロープ26の他端部にはそらせシーブ23を介してカウンタウエイト12が連結されている。巻上機21が回転駆動すると、メインロープ26を介して乗りかご11とカウンタウエイト12がつるべ式に昇降路10内を昇降動作する。
【0014】
エレベータ制御装置24は、乗りかご11の運転制御を含む、エレベータ全体の制御を行う。エレベータ制御装置24と乗りかご11との間には、各種信号を伝送するためのテールコード27が接続されている。このテールコード27には電力ラインも含まれており、図示せぬ電源装置からテールコード27を介して乗りかご11に所要の電力が供給される。
【0015】
地震検知器25は、地震が発生したときに、そのときの揺れの大きさを示す地震検知信号をエレベータ制御装置24に出力する。エレベータ制御装置24は、地震検知器25から地震検知信号を受信すると、通常運転モードから地震管制運転モードに切り替え、乗りかご11を最寄階まで移動させ、そこで乗客を降ろした後に運転停止する。
【0016】
ここで、地震あるいは強風などによって、建物と共にカウンタウエイト12が揺れると、ガイドレール14a,14bの一方あるいは両方から外れることがある。本実施形態では、このような脱レールを検出するために、カウンタウエイト12の上下左右に脱レール検出装置30a~30dが設けられている。脱レール検出装置30a,30bは、カウンタウエイト12がガイドレール14aから外れたことを検出する。脱レール検出装置30c,30dは、カウンタウエイト12がガイドレール14bから外れたことを検出する。なお、脱レール検出装置の設置個数は任意であり、ガイドレール14a,14bに対して、少なくとも1つずつ設置されていれば良い。
【0017】
以下では、ガイドレール14a,14bをガイドレール14、脱レール検出装置30a~30dを脱レール検出装置30と称して説明する。ガイドレール14はガイドレール14a,14bのいずれかのことを示し、脱レール検出装置30は脱レール検出装置30a~30dのいずかのことを示す。同様に、ガイドシュー13a~13dのこともガイドシュー13と称して説明する。ガイドシュー13は、ガイドシュー13a~13dのいずれかを示す。
【0018】
図2はガイドレール14と脱レール検出装置30、ガイドシュー13との位置関係を示す図であり、ガイドレール14を上から見た状態を模式的に表している。図中の「C/W」とは、カウンタウエイト12のことである。
【0019】
ガイドレール14は、上から見た場合の水平面の形状がT字形状をなす鉄製のレールであり、水平方向に所定の幅wを有するガイド部14-1をカウンタウエイト12に向けて昇降路10内に立設されている。ガイドシュー13は、上から見た場合の水平面の形状がコの字形状をなし、カウンタウエイト12の側部に固定設置され、先端部をガイドレール14のガイド部14-1に昇降自在に取り付けられる。脱レール検出装置30は、ガイドシュー13の上部または下部に配置され、カウンタウエイト12の側部に固定設置される。
【0020】
脱レール検出装置30は、検出機構31と、無線通信機32と、バッテリ33とを備える。検出機構31は、ガイドレール14のガイド部14-1に対して所定の間隔Lを空けて配置される磁石35を備え、この磁石35の磁力作用を利用してカウンタウエイト12の脱レールを検出する。なお、この検出機構31の構成については、後に
図3乃至
図5を用いて詳しく説明する。
【0021】
無線通信機32は、所定周波数帯の無線信号を発信する小型の無線機器である。無線通信機32は、検出機構31によってカウンタウエイト12の脱レールが検出されたときに、その旨を示す脱レール検出信号をエレベータ制御装置24に発信する。バッテリ33は、二次電池などからなり、無線通信機32に対して所要の電力を供給する。
【0022】
図3乃至
図5に脱レール検出装置30の検出機構31の構成を示す。
図3は検出機構31の全体構成を示す図である。
図4は検出機構31のスライド用シリンダ36(以下、シリンダ36と称す)の構成を示す図、
図5は検出機構31の中空パイプ39の構成を示す図である。
【0023】
検出機構31は、磁石35と、シリンダ36と、バネ部材37と、リミットスイッチ38と、中空パイプ39とを備える。磁石35として、例えば円形状の永久磁石が用いられる。磁石35は、ガイドレール14のガイド部14-1に対して、所定の間隔Lを空けて配置される(
図2参照)。間隔Lは、カウンタウエイト12が脱レールしていない正常な状態で、磁石35がガイドレール14に吸着しない範囲内に決められている。
【0024】
また、磁石35の幅、つまり、ガイドレール14のガイド部14-1との対向面の直径dは、ガイドレール14のガイド部14-1の幅w(
図2参照)と略同じである。これは、ガイドレール14のガイド部14-1の幅wに対して、磁石35の幅(直径d)が大きすぎると、カウンタウエイト12が揺れたときなどにガイドレール14に吸着してしまうからである。逆に、磁石35の幅(直径d)が小さすぎると、ガイドレール14に磁力が有効に作用せずに、上記間隔Lを維持できない可能性がある。
【0025】
シリンダ36は、磁石35を支持するための支持部材として用いられ、中空パイプ39の中にスライド自在に挿入される。シリンダ36は、円柱形状の本体41と、この本体41から延出された細長の軸42と、この軸42の先端部に取り付けられた円形の支持台43とで構成される。磁石35は、支持台43に固定されており、カウンタウエイト12がガイドレール14から外れていない状態では、磁力の作用で中空パイプ39から露出して上記間隔Lを維持している。
【0026】
バネ部材37は、本体41と支持台43との間に介在される。バネ部材37は、ガイドレール14が上記間隔L以上に離れて、磁石35の磁力がガイドレール14に作用しなくなったときに、シリンダ36を磁石35とともにガイドレール14から離間する方向にスライドさせる。リミットスイッチ38は、シリンダ36の後端部に配置され、シリンダ36がガイドレール14から離間する方向にスライドしたときにON動作する。リミットスイッチ38がONすると、無線通信機32から脱レール検出信号がエレベータ制御装置24に送信される。この様子を
図6および
図7に示す。
【0027】
図6および
図7は脱レール検出装置30の動作を説明するための概略図である。
図6はカウンタウエイト12がガイドレール14から外れていない状態、
図7はカウンタウエイト12がガイドレール14から外れた状態を示している。なお、
図7の例では、便宜的にガイドレール14を傾けているが、実際にはガイドレール14は昇降路10内に固定設置されているので、カウンタウエイト12が脱レール検出装置30とともに傾いた状態になる。
【0028】
脱レール検出装置30は、カウンタウエイト12の側部に取り付けられる。このとき、ガイドレール14のガイド部14-1に磁石35が所定の間隔Lを有して対向している。
図6に示すように、カウンタウエイト12がガイドレール14から外れていない状態では、磁石35の磁力がガイドレール14のガイド部14-1に作用し、磁石35が矢印A方向に引きつけられる。このとき、磁石35を支持しているシリンダ36はガイドレール14側に位置しているので、リミットスイッチ38はOFFしている。
【0029】
一方、
図7に示すように、カウンタウエイト12がガイドレール14から外れ、磁石35とガイドレール14のガイド部14-1との間隔がL以上になると、磁石35の磁力がガイドレール14のガイド部14-1に有効に作用しなくなる。このとき、シリンダ36に設けられたバネ部材37に矢印Bの不勢力が働き、シリンダ36が磁石35と共にガイドレール14から離間する方向にスライドする。これにより、シリンダ36の後端に設置されたリミットスイッチ38がONする。
【0030】
リミットスイッチ38がONすると、バッテリ33から無線通信機32に所要の電力が供給され、所定周波数帯の無線信号が脱レール検出信号としてエレベータ制御装置24に送信される。エレベータ制御装置24は、この脱レール検出信号を受信すると、乗りかご11の運転を停止する。
【0031】
ここで、一般的に知られている脱レール検出装置は、例えばレーザ光や超音波などを利用したセンサ類を必要とし、装置が大かがりである。このため、カウンタウエイトへの取り付け作業も大変であり、頻繁なメンテナンスも必要となる。これに対して、本実施形態の脱レール検出装置は、一般的な磁石を利用して簡易かつ安価な構成で実現でき、カウンタウエイトへの取り付け作業も簡単である。また、センサ類を必要しないので、頻繁なメンテナンスも不要である。さらに、本実施形態の脱レール検出装置は、駆動源として、無線通信機を起動する程度の小容量のバッテリで動作可能であり、カウンタウエイト側の信号配線の問題も解決できるといった利点がある。
【0032】
(変形例)
磁石35の形状は、
図3に示したような円形に限らず、他の形状であっても良い。例えば、
図8に示すように、ガイドシュー13のように、磁石35をコの字形状にして、ガイドレール14のガイド部14-1を両側から間隔を開けて囲むようにしても良い。このような形状にすれば、磁石35の突起部35-1からの磁力がガイドレール14のガイド部14-1に加わるので、例えばカウンタウエイト12が大きく揺れた場合でも、磁石35とガイドレール14のガイド部14-1との間隔Lを維持することができる。つまり、簡単には磁石35が離れなくなり、脱レールの誤検出を防ぐことができる。なお、乗りかご11とカウンタウエイト12の上下には図示せぬガイド装置とストッパープレートが設けられており、ガイドレール14とガイドレール14は容易に外れない構造になっている。
【0033】
ただし、磁石35をコの字形状にすると、カウンタウエイト12がガイドレール14から外れて傾いたときに、ガイドレール14のガイド部14-1が磁石35の突起部35-1に接触して、磁石35が吸着してしまう可能性がある。このような問題を解決するため、例えば
図9に示すように、磁石35の突起部35-1をガイドレール14のガイド部14-1の外側に広げておくことでも良い。これにより、カウンタウエイト12がガイドレール14から外れたときに、ガイドレール14のガイド部14-1が磁石35の突起部35-1に接触することを回避できる。
【0034】
また、別の方法として、例えば
図10に示すように、磁石35の突起部35-1を非磁性体で形成することでも良い。通常は、ガイドレール14のガイド部14-1との対向面である中央部の磁力によって磁石35とガイドレール14のガイド部14-1との間隔Lが維持されている。カウンタウエイト12がガイドレール14から外れたときに、磁石35がシリンダ36と共にガイドレール14から離間する方向にスライドする。その際、ガイドレール14のガイド部14-1が磁石35の突起部35-1に接触しても、磁石35に吸着することはないので、磁石35はガイドレール14から離間する方向にスライドできる。
【0035】
(地震発生時の運転制御)
一般的に、エレベータには、地震発生時に乗りかご11の運転を最寄階で停止する地震管制運転機能が備えられている。ここで、カウンタウエイト12がガイドレール14から外れた状態で地震管制運転を行うと乗りかご11に衝突する危険性がある。したがって、カウンタウエイト12の脱レールの有無を確認してから地震管制運転を行うことが好ましい。
【0036】
図11はエレベータの地震発生時の運転制御を示すフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、コンピュータであるエレベータ制御装置24が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0037】
いま、通常運転モードにおいて、乗りかご11が呼び(乗場呼び/かご呼び)に応答して各階を移動しているものとする(ステップS11)。このとき、地震検知器25によって地震が検知されると(ステップS12のYes)、その地震の揺れを示す地震検知信号がエレベータ制御装置24に出力される。エレベータ制御装置24は、この地震検知信号を受信すると、乗りかご11の運転を一時停止した状態で安全確認を行う(ステップS13)。
【0038】
その際、エレベータ制御装置24は、脱レール検出装置30によってカウンタウエイト12の脱レールが検出されているか否かを確認する(ステップS14)。詳しくは、
図1に示したように、カウンタウエイト12の上下左右の4箇所に脱レール検出装置30a~30dに設置されており、エレベータ制御装置24は、脱レール検出装置30a~30dのいずれか少なくとも1つから脱レール検出信号が無線送信されているか否かを確認する。
【0039】
カウンタウエイト12の脱レールが検出されていない場合、つまり、脱レール検出装置30a~30dのいずれからも脱レール検出信号が無線送信されていない場合には(ステップS14のNo)、エレベータ制御装置24は、所定の地震管制運転を実行する(ステップS15)。すなわち、エレベータ制御装置24は、乗りかご11を低速で最寄階まで移動させ、そこで乗客を降ろしてから運転を休止する。以後は、例えばエレベータの保守員が来て、点検を行った上で手動操作により運転を再開する。あるいは、メンテナンス契約の遠隔保守機能を利用して自動診断運転を行い、所定時間後に仮復旧運転を行う。この機能は保守員が到着するまでの仮復旧が目的であるため、通常運転には保守員の点検が必要となる。
【0040】
一方、カウンタウエイト12の脱レールが検出されていた場合、つまり、脱レール検出装置30a~30dのいずれか少なくとも1つから脱レール検出信号が無線送信されていた場合には(ステップS14のYes)、エレベータ制御装置24は、地震管制運転を禁止して、そのまま運転停止状態を維持する(ステップS16)。これは、カウンタウエイト12が脱レールしている状態では、たとえ地震管制運転であっても、乗りかご11を動かすことは危険だからである。また、エレベータ制御装置24は、ビルの監視室あるいは監視センターに脱レールが発生したことを発報する(ステップS17)。この発報を受けて、エレベータの保守員が現場に出向き、カウンタウエイト12を点検するなどして対処する。
【0041】
このように、地震発生時に脱レール検出装置30からの検出信号を確認することで、カウンタウエイト12が脱レールしている状態で乗りかご11を運転する危険を回避することができる。
【0042】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、簡易かつ安価な構成で、カウンタウエイトに簡単に取り付け可能であり、また、電力を供給するための設備を必要とせずに、カウンタウエイトの脱レールを検出できるエレベータの脱レール検出装置を提供することができる。
【0043】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10…昇降路、11…乗りかご、12…カウンタウエイト、13(13a~13d)…ガイドシュー、14(14a,14b)…ガイドレール、20…機械室、21…巻上機、22…メインシーブ、23…そらせシーブ、24…エレベータ制御装置、25…地震検知器、26…メインロープ、27…テールコード、30(30a~30d)…脱レール検出装置、31…検出機構、32…無線通信機、33…バッテリ、35…磁石、36…シリンダ、37…バネ部材、38…リミットスイッチ、39…中空パイプ、41…本体、42…軸、43…支持台。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンタウエイトを支持するガイドレールに向けて、間隔を空けて配置された磁石を備え、上記ガイドレールに対する上記磁石の磁力作用を利用して上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことを検出する検出機構と、
この検出機構によって上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことが検出されたときに脱レール検出信号を発信する無線通信機と、
この無線通信機に所要の電力を供給するバッテリとを具備し、
上記検出機構は、
上記磁石を支持する支持部材と、
上記ガイドレールが上記間隔以上に上記磁石から離れたときに、上記支持部材を上記磁石と共に上記ガイドレールから離間する方向にスライドさせるバネ部材と、
このバネ部材によって上記支持部材がスライドしたときにON動作するスイッチとを備えることを特徴とするエレベータの脱レール検出装置。
【請求項2】
上記磁石の上記ガイドレールのガイド部との対向面は、上記ガイドレールのガイド部と略同じ幅を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータの脱レール検出装置。
【請求項3】
上記磁石は、上記ガイドレールのガイド部を囲む突起部を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータの脱レール検出装置。
【請求項4】
上記突起部は、上記ガイドレールのガイド部の外側に広げられていることを特徴とする請求項3記載のエレベータの脱レール検出装置。
【請求項5】
上記磁石の上記ガイドレールのガイド部との対向面に磁力を有し、上記突起部は非磁性体で形成されていることを特徴とする請求項3記載のエレベータの脱レール検出装置。
【請求項6】
上記無線通信機の送信先は、乗りかごの運転を制御する制御装置を含み、
上記制御装置は、
地震発生時に上記無線通信機から上記脱レール検出信号が出力されている場合に、地震管制運転を禁止し、上記乗りかごの運転を停止しておくことを特徴とする請求項1記載のエレベータの脱レール検出装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
一実施形態に係るエレベータの脱レール検出装置は、磁石と、検出機構と、無線通信機と、バッテリとを備える。上記磁石は、カウンタウエイトを支持するガイドレールに向けて、間隔を空けて配置される。上記検出機構は、上記ガイドレールに対する上記磁石の磁力作用を利用して上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことを検出する。上記無線通信機、上記検出機構によって上記カウンタウエイトが上記ガイドレールから外れたことが検出されたときに脱レール検出信号を発信する。上記バッテリは、上記無線通信機に所要の電力を供給する。
上記エレベータの脱レール検出装置において、上記検出機構は、上記磁石を支持する支持部材と、上記ガイドレールが上記間隔以上に上記磁石から離れたときに、上記支持部材を上記磁石と共に上記ガイドレールから離間する方向にスライドさせるバネ部材と、このバネ部材によって上記支持部材がスライドしたときにON動作するスイッチとを備えることを特徴とする。