(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036532
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】パターン印刷方法および印刷物
(51)【国際特許分類】
B41M 1/12 20060101AFI20220301BHJP
C09D 11/02 20140101ALI20220301BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B41M1/12
C09D11/02
H05K3/12 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140793
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩孝
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
5E343
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA03
2H113BA10
2H113BA27
2H113BB07
2H113BB22
2H113BC01
2H113BC02
2H113BC09
2H113BC12
2H113CA17
2H113EA10
2H113FA48
4J039BA06
4J039BC02
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC13
4J039BC16
4J039BC22
4J039BE01
4J039BE12
4J039EA42
4J039FA02
4J039GA10
5E343AA12
5E343BB25
5E343BB72
5E343BB75
5E343DD02
5E343DD03
5E343ER35
5E343FF13
5E343FF14
5E343GG08
(57)【要約】
【課題】スクリーン印刷およびメタルマスク印刷において、インキの凝集破壊を起こさず印刷でき、厚膜で高さが充分にあり、かつパターンエッジが急峻で断面が矩形の高アスペクト比パターンが形成できる印刷方法を提供すること。
【解決手段】無機フィラーまたは有機フィラーを分散したポリマーと、溶剤および添加剤からなり、かつ前記溶剤および添加剤の主溶剤が、非水溶性であれば水溶性溶剤を添加し、水溶性であれば非水溶性溶剤を添加してなる塗布剤を印刷用インキとして、スクリーン印刷版またはメタルマスク版を用いて基板上にパターンを印刷する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機フィラーまたは有機フィラーを分散したポリマーと、溶剤および添加剤からなり、かつ前記溶剤および添加剤の主溶剤が、非水溶性であれば水溶性溶剤を添加し、水溶性であれば非水溶性溶剤を添加してなる塗布剤を印刷用インキとして、
スクリーン印刷版を用いて基板上にパターンを印刷することを特徴とする、パターン印刷方法。
【請求項2】
無機フィラーまたは有機フィラーを分散したポリマーと、溶剤および添加剤からなり、かつ前記溶剤および添加剤の主溶剤が、非水溶性であれば水溶性溶剤を添加し、水溶性であれば非水溶性溶剤を添加してなる塗布剤を印刷用インキとして、
メタルマスク版を用いて基板上にパターンを印刷することを特徴とする、パターン印刷方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン印刷方法において、
前記印刷を行った後に、さらに焼成を行うことを特徴とする、パターン印刷方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のパターン印刷方法によって印刷されたことを特徴とする印刷物。
【請求項5】
請求項1に記載のパターン印刷方法によって印刷されたパターンの表面形状において、スクリーンメッシュ痕に相当する部分が凹状であることを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン印刷方法に関し、特にはスクリーン印刷及びメタルマスク印刷によるパターン印刷方法および印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプリンタブルエレクトロニクス分野などにおいてパターンを形成するために、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット等の様々な印刷方法を用いて、導電材料や絶縁材料の回路パターンを形成する試みがなされている。
【0003】
このような分野では、理想としては印刷断面形状が矩形でアスペクト比が高い印刷パターンを形成することが望まれている。
【0004】
矩形でアスペクト比が高いパターンが可能であれば、例えば配線パターンの印刷でインキを導電材料とした場合、パターン断面形状を矩形に近づけられれば、単純に底辺寸法×高さ寸法として断面積を求めることができ、配線抵抗値などを簡単に求めることができる。また高アスペクト比のパターンであれば、電子回路において密集した配線を狭い面積に集約することができ、かつ配線回路に流れる電流をより多く流すことが可能となる。
【0005】
また、伸縮性の基材に対して伸縮性の銀、カーボン、CNT、グラフェン、銅などの導電材料を印刷インキとして使うことで、ストレッチャブル配線、回路、FPCなどの印刷物を伸ばした際の配線抵抗変化を少なくできる。
【0006】
しかしながら従来の印刷方法では、印刷パターンの断面形状は、例えば
図5の断面SEM観察画像に示すような半円形状(いわゆる蒲鉾状)になってしまい、アスペクト比が低い印刷しかできていない。
【0007】
特許文献1には、ストライプ塗布用のコーターヘッドまたはシリンジによるディスペンサーを用いて塗布剤を吐出する方法で微細な配線パターンを形成する方法が示されている。
しかしこの方法では微細パターンが形成可能となるものの、形成可能なパターンがストライプパターンやラインパターンに限られてしまう。また他の印刷方法と比べ印刷に時間がかかり、高速に印刷することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スクリーン印刷法は、その特徴として他の印刷方法に比べて厚膜での印刷が可能なため、高さがあるパターンが形成でき、印刷時間も劣らない。
図3及び
図4に、従来のスクリーン印刷法によりパターンを印刷した様子を示す。
【0010】
図3は、スクリーンメッシュ1と、マスク開口部11を形成した樹脂膜からなるマスク16とで構成されるスクリーン印刷版10を用いて、基材15上にインキ14を印刷する様子を模式図で示している。このとき、スクリーンメッシュ1と、パターン形状に孔が開
いたマスク開口部11との間には、矢印で示すせん断力13が生じている。
【0011】
このせん断力13は、インキ14が基板15上に押し出されてパターンが印刷される際に、マスク開口部11の側壁面とインキ14の界面で生じる摩擦力であり、せん断力13は矢印の方向に力が働く。
【0012】
そしてこのせん断力13によって、
図4に示すように、印刷時にインキが凝集破壊41を起こしてしまう為、スクリーン印刷版10の方に多くのインキが残ってしまう。このため基材15上に印刷されるパターンは、その高さが低く、パターンエッジが崩れた蒲鉾状の印刷パターン42になり、矩形のパターンは得られない。
従ってこの印刷方法では、厚膜で、高アスペクト比のパターン印刷ができないという問題があった。
【0013】
また、スクリーンメッシュの代わりにメタルマスクを用いたメタルマスク印刷においても、インキの凝集破壊を起こしてしまうため、同様の問題があった。
【0014】
そこで本発明は、スクリーン印刷およびメタルマスク印刷において、インキの凝集破壊を起こさず印刷でき、厚膜で高さが充分にあり、かつパターンエッジが急峻で断面が矩形の高アスペクト比パターンが形成できる印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決する手段として、
非水溶性材料を主剤とするインキ材料に、非相溶の水溶性溶媒を混錬した塗布剤を使用して前記スクリーン印刷版もしくはメタルマスク版による印刷を行うことで、上記課題を解決した。
【0016】
すなわち本発明に係るパターン印刷方法は、
無機フィラーまたは有機フィラーを分散したポリマーと、溶剤および添加剤からなり、かつ前記溶剤および添加剤の主溶剤が、非水溶性であれば水溶性溶剤を添加し、水溶性であれば非水溶性溶剤を添加してなる塗布剤を印刷用インキとして、
スクリーン印刷版を用いて基板上にパターンを印刷することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るパターン印刷方法は、
無機フィラーまたは有機フィラーを分散したポリマーと、溶剤および添加剤からなり、かつ前記溶剤および添加剤の主溶剤が、非水溶性であれば水溶性溶剤を添加し、水溶性であれば非水溶性溶剤を添加してなる塗布剤を印刷用インキとして、
メタルマスク版を用いて基板上にパターンを印刷するものであってもよい。
【0018】
また、本発明に係るパターン印刷方法は、
前記記載のパターン印刷方法において、
前記印刷を行った後に、さらに焼成を行うものであってもよい。
【0019】
また、本発明に係る印刷物は、
前記記載のパターン印刷方法によって印刷されたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る印刷物は、
前記記載のスクリーン印刷版を用いたパターン印刷方法によって印刷されたパターンの表面形状において、スクリーンメッシュ痕に相当する部分が凹状であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のパターン印刷方法によれば、インキが凝集破壊を起こさないように印刷できるため、基材に対し垂直に切立ったパターンが形成されるので、寸法幅に対し高さが大きい高アスペクト比のパターンが得られる。
またこれにより、電子回路用の配線パターンを印刷した際には、配線間隙を極限まで詰めた配線パターンを作ることができる。さらに、断面形状が矩形であれば、単純に底辺寸法×高さ寸法のみで断面積を求めることができるため、導電材料を用いた場合、配線抵抗値などを簡単かつ正確に求めることができる。
また、厚膜の場合にも高いアスペクト比の配線印刷が可能であり、伸縮性の高いストレッチャブルな配線パターンをも印刷でき、伸縮後の配線抵抗値の変動を緩くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図8】本発明の実施例1の印刷パターンの拡大表面観察図。
【
図10】本発明の実施例2の印刷パターンの観察図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の印刷方法について詳細に説明する。
【0024】
本発明においては、印刷方式としてスクリーン印刷およびメタルマスク印刷を用い、かつ印刷インキとして以下に詳述する構成の塗布剤を用いる。
【0025】
なお前記印刷方式は、ウレタンゴム板を使用する一般的なスキージ方式やスキージ掃引によるインキ充填で適用されるが、さらに、印刷ヘッド部に備えたアクチュエーターにより直接ペーストを充填圧力で、印刷版の孔へ挿入する密閉式加圧印刷方式にも適用できる。
密着式加圧印刷方式は、高アスペクト印刷ができる新しい印刷方式(参考機種:パナソニック社製SP60P)で、主に半田ペーストの印刷に使用されている。
【0026】
(スクリーン印刷)
一般的に使われているスクリーン印刷法は、メッシュと呼ばれる網状のステンレスやポリエステル、ナイロンといった線径数10μmの線材を編み込んだシートを四角い金属枠に高張力で貼って固定し、このメッシュの片面に、印刷したい絵柄や配線パターン、回路などを穴として開口した膜(樹脂膜もしくは金属膜からなる)を貼ったものをスクリーン印刷版としている。
【0027】
スクリーン印刷の工程を簡単に述べると、このスクリーン印刷版を印刷基材に対して膜面が重なる様に載せた後、ウレタンなどでできた板状のプレート(スキージ)を、印刷面に対し60度から80度程度の角度をつけて、メッシュ面を一定の速度で版の端から端まで擦っていく。
【0028】
このとき、前記角度をなした板状のプレートとメッシュとの交点から、進行方向側に印
刷したいインキを載せて板状のプレートを擦らせながら移動させると、角度がついていることでインキが下方向へ押し込まれる状態となり、膜面に開口した絵柄、配線パターン、回路などの穴から、下に重なっている印刷基材面にインキが落ちて、印刷基材に転移する。
【0029】
転移した後、版を一定の速度で上方に上げることで、印刷基材面と膜面が剥離し、印刷パターンが印刷面に形成されるのである。印刷面と膜面を、数ミリの隙間を予め空けておくと、よりきれいな印刷ができる。
【0030】
しかしながら、前述の
図3で示したように、一般的に使われているスクリーン印刷用インキ(ペースト)は、スクリーン印刷版の、メッシュと呼ばれる網状のステンレスやポリエステル、ナイロンといった線径が数10μmの線材を編み込んだシートと、印刷したい絵柄、配線パターン、回路などを穴として開口した樹脂膜もしくは金属膜を経由し、下に重なっている印刷基材に一定のせん断を受けながら押し出される。
【0031】
このとき、前述の
図4に示したように、このメッシュや膜の開口部壁面と押し出されるペーストの間で凝集破壊が発生してペーストが分裂し、いわゆる泣き別れ状態でメッシュや膜の開口部壁面にもペーストが残り、印刷基材側にもすべてのペーストが転移できない状態が発生してしまうため、パターンの断面形状は矩形にはならず蒲鉾状(半円形)になり、アスペクト比の高いパターンができない。
【0032】
(メタルマスク印刷)
一般的なメタルマスク印刷とは、メタルマスクと呼ばれる厚さ0.2mm以下の非常に薄いステンレス板に微細な開口パターンを設けたものを印刷版として、インキペーストを刷り込むことにより、基板上にパターンを印刷する方法である。印刷する際には、上記スクリーン印刷と同様にスキージを用いる。
【0033】
メタルマスクを用いて印刷する場合も、メタルマスクの開口部壁面と押し出されるペーストとの間でせん断力が働き、凝集破壊が発生する現象は同様である。そのため、やはり印刷したパターンの断面形状は矩形にはならず蒲鉾状になり、アスペクト比の高いパターンができない。
【0034】
そこで、本発明に係るパターン印刷方法では、塗布剤を次のような構成としたことで、印刷時の凝集破壊による問題を解決した。
【0035】
(塗布剤の構成)
すなわち、本発明に係る塗布剤の構成として、無機フィラーまたは有機フィラー(顔料)を分散したポリマー(バインダー)と溶剤(有機溶剤)および添加剤の主溶剤が、非水溶性であれば水溶性溶剤を、水溶性であれば非水溶性溶剤を混合したものとする。
【0036】
具体的には、充填剤、印刷用途などに開発された銀ペースト、銅ペースト、導電インキ等のフィラー量が50~99.9%の塗布材料を構成するポリマー(バインダー)に分散する際に、分散する溶剤および添加剤の主溶剤が非水溶性か水溶性かを調べておき、その塗布剤の物性を破壊しない極性の違う溶剤の組み合わせ、および添加量を調整し、前記フィラーを分散させた塗布剤を使用する。
【0037】
本発明の塗布剤の構成定義であるが、塗布剤の構成成分はポリマー(バインダー)、顔料(着色、防錆、体質、その他機能性など)、溶剤(有機溶剤、水など)および添加剤などである。
塗布剤を構成する際に一般的に使われている溶解性パラメーター(Solubilit
y Parameter:SP、またはSP値 以下SP値と略す)の考え方は、溶媒と溶質間に作用する力を分子間力と仮定した分子間力を凝集力の尺度として、SP値の差が小さい2つの成分は混ざりやすく(溶解度が大きい)、SP値の差が大きい2つの成分は混ざり難い(溶解度が小さい)ことが通説である。従来はこの考え方により、一般的な印刷用途で使用する塗布剤はSP値の差が小さいポリマー(バインダー)と溶剤(有機溶剤、水など)および添加剤を混合し、商品化、使用されているが、本発明は全く異なる考え方を定義する。つまり、溶解性パラメーターを検討するのではなく、使用する塗布剤の主溶媒、主溶剤が非水溶性溶剤を使用しているのか、水溶性溶剤を使用しているのかを重視した考えである。
【0038】
本発明に係る塗布剤の構成は、塗布したい塗布剤の主溶剤である有機溶剤が、非水溶性か水溶性かを確認し、主溶剤が非水溶性ならば水溶性の有機溶剤を添加して使用する。
考え方の例えとして、ゴム(ポリマー)と油(溶剤)の混合を例にとると、ゴム(ポリマー)と油(溶剤)を混合した場合、ゴムは膨潤する。これは、ゴムの分子間に油が入り込む現象で、油がゴムと混ざりやすければ膨潤し、混ざり難ければ膨潤し難いという事になる。つまり、塗布剤の主溶剤が非水溶性の場合、水溶性の溶剤を添加することで、極性の異なる物質(ここでは非水溶性溶剤と水溶性溶剤)はお互いに混ざり難いという事から、主溶剤が非水溶性溶剤の塗布剤表面に水溶性溶剤が浮き上がった状態が形成されることになる。
【0039】
(スクリーン印刷およびメタルマスク印刷への適用)
以上のような構成の塗布剤をインキペーストとして用い、スクリーン印刷およびメタルマスク印刷に適用することで、次の効果を奏する。
【0040】
例えばスクリーン印刷を行う際、本発明に係る塗布剤からなるインキペーストが、スクリーン印刷版のメッシュと呼ばれる網状のステンレスやポリエステル、ナイロンといった線径数10μmの線材を編み込んだシートと、印刷したい絵柄、配線パターン、回路などを穴として開口した樹脂膜もしくは金属膜を経由して、下に重なっている印刷基材に一定のせん断を受けながら押し出される。
このとき、メッシュや樹脂膜の開口部壁面と、押し出されるインキペーストとの間で、前記の水溶性溶剤が塗布剤表面に浮き上がった状態になって油膜が形成される。この油膜がせん断力を小さくする効果を生じるため、凝集破壊が解消もしくは軽減されるのである。
【0041】
また、メタルマスク版を用いて印刷する場合も上記スクリーン印刷版と同様であって、メタルマスクの開口部壁面と押し出されるインキペーストとの間で油膜が形成され、せん断力を小さくすることで、凝集破壊が起きなくなる。
【0042】
(溶剤の種類)
一般的に充填剤、印刷法などで使用される塗布剤の溶剤組成物は、溶剤と下記式(1)で表される化合物(但し、モノヒドロキシステアリン酸を除く)を含む溶剤組成物である。
R1-CH2-R2 (1)
(式中、R1はモノヒドロキシアルキル基を示し、R2はカルボキシル基(C(=O)OH)又はアミド基(C(=O)NH2)を示す。)
【0043】
前記溶剤としては、n-ヘプタン(SP値:7.3)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:8.8)、n-プロパノール(SP値:11.8)、1,2,5,6-テトラヒドロベンジルアルコール(SP値:11.3)、ジエチレングリコールエチルエーテル(SP値:10.9)、3-メトキシブタノール(SP値:10.9)、トリアセチン(SP値:10.2)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.2)、シクロペンタノン(SP値:10.0)、γ-ブチロラクトン(SP値:9.9)、シクロヘキサノン(SP値:9.9)、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル(SP値:9.8)、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.7)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(SP値:9.7)、1,4-ブタンジオールジアセテート(SP値:9.6)、3-メトキシブチルアセテート(SP値:8.7)、プロピレングリコールジアセテート(SP値:9.6)、乳酸エチルアセテート(SP値:9.6)、ε-カプロラクトン(SP値:9.6)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(SP値:9.5)、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(SP値:9.5)、1,6-ヘキサンジオールジアセテート(SP値:9.5)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.4)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(SP値:9.4)、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.3)、シクロヘキサノールアセテート(SP値:9.2)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:9.0)、エチレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:9.0)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、メチルアセテート(SP値:8.8)、エチルアセテート(SP値:8.7)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、n-プロピルアセテート(SP値:8.7)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、3-メトキシブタノールアセテート(SP値:8.7)、ブチルアセテート(SP値:8.7)、イソプロピルアセテート(SP値:8.5)、テトラヒドロフラン(SP値:8.3)、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(SP値:8.0)、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(SP値:8.0)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(SP値:7.9)、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(SP値:7.8)、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(SP値:7.8)等を挙げることができる。
【0044】
なお、ここで上げた溶剤の25℃における溶解パラメーター(SP値:Fedors計算値)が7.3~11.8程度であるが、本発明ではSP値は選択する溶剤の参考とした位置づけでしかなく、重要なのは、これらの溶剤が非水溶性か水溶性かを判断し、主溶剤の真逆の溶剤を添加する組み合わせである。
【0045】
溶剤に関する非水溶性と水溶性の定義であるが、第4類危険物の水溶性液体についての定義を示す。第4類危険物は、引火性液体である。さらに(1)水に溶けるもの(水溶性)、(2)水に溶けないもの(非水溶性)に分けられる。政令上、次のように定義されている。
【0046】
水溶性液体は、1気圧20℃で同容量の純水との混合液が均一な外観を維持するもので、非水溶性液体は水溶性液体以外のものとし、非水溶性の液体は、水と混合したときふたつの層に分かれる。液体の比重が水より小さければ、水の層の上に、比重が水より大きければ、水の層より下に非水溶性の層ができる。水溶性液体の場合、混合すると層が分かれることなく均一になる。特殊引火物のジエチルエーテルや第1石油類の酢酸エチルなどのように水にわずかに溶けるものもあるが、定義上、非水溶性に分類される。
【0047】
従って、上記非水溶性および水溶性の定義をもとに分類すると、下記のようになる。
水溶性溶剤は、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:8.8)、n-プロパノール(SP値:11.8)、1,2,5,6-テトラヒドロベンジルアルコール(SP値:11.3)、ジエチレングリコールエチルエーテル(SP値:10.9)、3-メトキシブタノール(SP値:10.9)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.2)、γ-ブチロラクトン(SP値:9.9)、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル(SP値:9.8)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(SP値:9.7)、乳酸エチルアセテート(SP値:9.6)、ε-カプロラクトン(SP値:9.6)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(SP値:9.4)、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.3)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:9.0)、エチレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:9.0)、酢酸ジエチルエーテル(SP値:9.0)テトラヒドロフラン(SP値:8.3)、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(SP値:8.0)、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(SP値:8.0)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(SP値:7.9)、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(SP値:7.8)が挙げられる。
【0048】
非水溶性溶剤は、トリアセチン(SP値:10.2)、シクロペンタノン(SP値:10.0)、シクロヘキサノン(SP値:9.9)、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.7)、1,4-ブタンジオールジアセテート(SP値:9.6)、3-メトキシブチルアセテート(SP値:8.7)、プロピレングリコールジアセテート(SP値:9.6)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(SP値:9.5)、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(SP値:9.5)、1,6-ヘキサンジオールジアセテート(SP値:9.5)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.4)、シクロヘキサノールアセテート(SP値:9.2)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、メチルアセテート(SP値:8.8)、エチルアセテート(SP値:8.7)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、n-プロピルアセテート(SP値:8.7)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、3-メトキシブタノールアセテート(SP値:8.7)、ブチルアセテート(SP値:8.7)、イソプロピルアセテート(SP値:8.5)、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(SP値:7.8)、となる。
【0049】
対象とする塗布剤の主溶剤が水溶性溶剤の場合は、非水溶性溶剤を添加剤として、0.1wt%添加から50wt%添加の範囲で調整を行う。また、主溶剤が非水溶性溶剤の場合は、その逆となる。
【0050】
(印刷物の焼成)
上述の方法によりスクリーン印刷あるいはメタルマスク印刷で印刷した印刷物は、焼成することによって前記インキペーストの溶剤成分を揮発させ、硬化させることができる。焼成条件は、インキペースト材料の構成成分や基板材料などにより、適宜求めてよい。
このようにすると、印刷パターンは高さ方向及び幅方向に収縮するので、高精細なパターンが得られる。
これは特に電子部品や表示素子、電池電極、センサー等の構造体の配線パターンを形成するための技術として有用である。また、これらにおいて伸縮性基材や伸縮性ペーストを用いる場合にも適用できる。
【実施例0051】
以下に本発明に係る実施例を示す。
【0052】
[実施例1]
本発明に係る塗布剤構成の有用性について確かめるため、シリコーンをベースとしたシリコーンエラストマーフィルム膜厚200μmの基材と、シリコーンをベースとした藤倉化成社製のストレッチャブル銀ペースト「ドータイト XA-9476」の導電性塗布剤を用意した。
実施例1に用いる塗布剤として、銀ペースト「ドータイト XA-9476」を主剤として主剤であるシリコーンは非水溶性である為、相反する水溶性溶剤であるエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名:酢酸2エチル)を添加溶剤として選択し、主剤に対して0.1wt%~50wt%の分量で添加剤を混合した塗布剤1を用意した。
【0053】
そして、ニッケル膜厚100μmの膜をステンレスのメッシュに貼り合わせて、印刷パターンの孔を開口したスクリーン印刷版を用意した。
次に、上記シリコーンエラストマーフィルム膜厚200μmの基材を印刷ステージにセットし、その上にニッケル膜厚100μmのスクリーン印刷版をニッケル膜面とシリコーンエラストマーフィルムが密着する様に重ね、ウレタンスキージをスクリーン版上面であるステンレスメッシュ側から一定の接触角度、一定の掃引速度及び加重にて、前記塗布剤1を掃引し、印刷パターンの穴を開口したスクリーン印刷版から、シリコーンエラストマーフィルム上へ転写して、実施例1の印刷物を作製した。
図6及び
図8に、この結果を示す。
【0054】
[比較例1]
次に、比較例1の塗布剤として銀ペースト「ドータイト XA-9476」のみを使用した塗布剤2を用意した。
ニッケル膜厚100μmの膜をステンレスのメッシュに貼り合わせて、印刷パターンの孔を開口したスクリーン印刷版を用意した。
次に上記シリコーンエラストマーフィルム膜厚200μmの基材を印刷ステージにセットし、その上にニッケル膜厚100μmのスクリーン印刷版をニッケル膜面とシリコーンエラストマーフィルムが密着する様に重ね、ウレタンスキージをスクリーン版上面であるステンレスメッシュ側から一定の接触角度、一定の掃引速度及び加重にて、前記塗布剤2を掃引し、印刷パターンの穴を開口したスクリーン版より、シリコーンエラストマーフィルムへ転写して、比較例1の印刷物を作製した。
図7および
図9に、この結果を示す。
【0055】
この結果、本発明に係る塗布剤を使用した実施例1の印刷結果と、既製品であるドータイトXA-9476のみを使用した比較例1の印刷結果に、明らかな差が生じた。
【0056】
図6は実施例1の印刷パターンであり、
図7は比較例1の印刷パターンである。
これらの印刷物で得られた印刷パターンである100μm幅のコイルパターンは、実施例1の印刷結果60の印刷パターンの幅が84.6μm、高さが63.76μm、アスペクト比0.74であるのに対し、既製品であるドータイトXA-9476のみの比較例1の印刷結果70の印刷パターンの幅が87.5μm、高さは20・92μm、アスペクト比0.24であった。
【0057】
さらに
図8に実施例1の印刷パターンの表面拡大図を示し、
図9に比較例1の印刷パターンの表面拡大図を示す。
図8に示す実施例1の印刷パターン表面81は、スクリーンメッシュおよびパターン形状に孔が開いたマスク開口部との界面におけるせん断力が、塗布剤の効果によって小さく済み、凝集破壊がほとんど発生せずに基材に転写された結果、転写されたインキ上面のスクリーンメッシュにあたる箇所の断面形状が、凹状のスクリーンメッシュ痕82になっており、マスク開口部のディテールもはっきりしている。スクリーンメッシュ痕82が凹状であるということは、メッシュ以外にあたる箇所がインキの凝集破壊による分裂を起こさずに、厚く印刷されたことを示す。つまり、印刷パターンの立ち上がりが急峻に印刷されていることがわかる。
【0058】
しかし一方、既製品であるドータイトXA-9476のみの場合、
図9の比較例1の印
刷パターン表面91で示すように、転写されたインキ上面のスクリーンメッシュにあたる箇所の断面形状が凸状のスクリーンメッシュ痕92になっており、マスク開口部のディテールは粗く、つまり印刷パターンの立ち上がりが丸味を帯びている。
これはつまり、凝集破壊を発生したためにインキが分裂し、その部分が薄くなって印刷されていると考えられる。
なおスクリーンメッシュ痕とは、スクリーン印刷においてメッシュにあたる箇所が、メッシュ以外の箇所に対して印刷パターン表面に凹凸を生じる現象のことである。
【0059】
実施例1の印刷結果は、ニッケル膜に形成された孔側面とステンレスメッシュの両方に塗布剤が接着せずに印刷基材側へ100%転写された為、パターンエッジの鋭いディテールと凹型のメッシュ痕が得られている。
これに対し比較例1の印刷結果は、ニッケル膜に形成された孔側面とステンレスメッシュの両方に接着した状態で印刷基材側へ凝集破壊を伴って転写された為、パターンエッジの鈍いディテールと凸型のメッシュ痕になった。
従って、本発明に係る塗布剤を用いたことにより、スクリーン印刷版を使って、高アスペクトな印刷パターンが形成できた。
【0060】
[実施例2]
次に実施例2として、実施例1と同様の塗布剤を用いて、以下の手順によりメタルマスク印刷の印刷物を作製した。
図10にこの結果を示す。
【0061】
まず、膜厚100μmで印刷パターンの孔を開口したメタルマスク版を用意した。
次に、上記シリコーンエラストマーフィルム膜厚200μmの基材を印刷ステージにセットし、その上に上記メタルマスク版をマスク面とシリコーンエラストマーフィルムが密着する様に重ね、ウレタンスキージをメタル版上面側から一定の接触角度で、一定の掃引速度および加重にて、本発明の塗布剤を掃引し、印刷パターンの穴を開口したメタル版より、シリコーンエラストマーフィルムへ転写し、実施例2の印刷物を作製した。
【0062】
[比較例2]
次に、比較例1の塗布剤として銀ペースト「ドータイト XA-9476」のみを使用した塗布剤2を用意し、これを用いて同様にメタル印刷版で印刷し、比較例2の印刷物を作製した。
図11にこの結果を示す。
【0063】
本発明に係る塗布剤を使用した実施例2の印刷結果と、既製品であるドータイトXA-9476のみを使用した比較例2の印刷結果に、明らかな差が生じた。
比較した印刷パターンは直径100μm幅のピラーパターンで、
図10に示す実施例2の印刷パターン表面101では急峻なピラーパターンとなっているのに対し、
図11に示す比較例2の印刷パターン表面111は、凝集破壊が起きたピラーパターンである様子が観察された。
【0064】
以上の結果から、本発明に係る塗布剤は、メタルマスク版を使った印刷でも凝集破壊が起きず、パターンエッジの鋭いディテールが印刷できたことに対し、従来の構成の塗布剤では、凝集破壊を起こしたため、鈍いディテールになった。従って、本発明に係る塗布剤は、メタルマスクを使った印刷にも適用できる。
本発明によれば、スクリーン印刷またはメタルマスク印刷を用いて基材に対し垂直に切立ったパターンを形成できる為、配線間隙を極限まで詰めた配線パターンを作ることができる。
また高いアスペクト比の配線印刷が可能な為、配線の縦方向の表面積が稼げる。例えば、ストライプ状に電極で反応面積の広いことが要求されるような電極に向いている。
また高アスペクト比でストレッチャブルな配線パターンを印刷できる為、伸縮性基板を用いる場合に、これまで配線抵抗値の変動が大きく、動作不良になったり、配線パターン内の金属フィラーの接触で導通をとっている場合の伸縮による不導通リスクを少なくすることができ、安定した電流を流すことができる。