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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036580
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】地域医療連携システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20220301BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20220301BHJP
【FI】
G06Q40/06
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140864
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】717007181
【氏名又は名称】Advanced Medical InfoTec株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】川崎 功
(72)【発明者】
【氏名】相坂 真仁
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 明
【テーマコード(参考)】
5L055
5L099
【Fターム(参考)】
5L055BB55
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】地域医療連携システムへのSIBの投資を促すとともに、SIBの対象となり医療サービスにおける成果を向上させる技術を提供する。
【解決手段】地域医療連携システム1は、投資者DB(SIB関連DB160)と、利用者情報DB(診察情報DB129)と、SIB対象の医療事業を登録するSIB事業登録部152と、患者94かつ個人投資家98zが希望するSIBプログラムを登録する希望事業登録部153と、サービスによる成果を蓄積するSIB実施結果DB162と、所定の成果が得られているか否かを判断する成果判断部155と、償還とは別に利用者に対して提供する報酬を決定する追加報酬決定部156と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医療機関が連携して所定の地域において医療を提供するとともに、ソーシャル・インパクト・ボンドによる資金提供を受ける地域医療連携システムであって、
前記ソーシャル・インパクト・ボンドに関する投資者の情報を記録する投資者DBと、
前記医療機関を利用する利用者の情報を記録する利用者情報DBと、
前記ソーシャル・インパクト・ボンドの対象となる医療事業を登録するSIB事業登録部と、
前記利用者が前記投資者である場合に、前記ソーシャル・インパクト・ボンドの対象となる医療事業の中から、前記投資者がサービスを受けることを希望する医療事業を登録する希望SIB事業登録部と、
前記投資者である前記利用者が、前記希望SIB事業登録部に登録した前記医療事業のサービスを受けた場合に、そのサービスによる成果を蓄積するサービス蓄積部と、
前記サービス蓄積部のデータをもとに、前記利用者に所定の成果が得られているか否かを判断する成果判断部と、
前記成果判断部が前記所定の成果が得られていると判断した場合に、前記ソーシャル・インパクト・ボンドの投資に対する償還とは別に、前記利用者に対して提供する報酬を決定する利用者報酬決定部と、
を有することを特徴とする地域医療連携システム。
【請求項2】
前記利用者報酬決定部は、前記利用者が投資者である期間及び投資額を、前記報酬に反映することを特徴とする請求項1に記載の地域医療連携システム。
【請求項3】
前記報酬は、年金型金融商品またはその取得に掛かる費用として提供されることを特徴とする請求項1または2に記載の地域医療連携システム。
【請求項4】
前記利用者報酬決定部は、前記利用者が登録した前記医療事業の目標の難易度及び前記医療事業の想定便益を前記報酬に反映させることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の地域医療連携システム。
【請求項5】
前記利用者が登録した前記医療事業における自己の目標に対する進捗状況を表示する進捗提示部を備えることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の地域医療連携システム。
【請求項6】
前記希望SIB事業登録部は、前記利用者の健康診断データと診療データの少なくとも一方にもとづいて、前記投資者でもある前記利用者が参加できる医療事業を決定することを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の地域医療連携システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地域医療連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療の分野では、地域医療連携システムの導入が促進されている。地域医療連携システムでは、医療機関(医療施設、薬局、介護施設等)等の間で必要な情報連携を進めることで、地域住民への医療サービスの提供、健康増進管理等を有機的に行うことが期待されている。
【0003】
地域医療連携システムの導入推進のために、様々な技術が提案されている。例えば、情報処理システムの調達時及び更新時にかかるコストを大幅に削減できるとともに、時間的な制約を受けずに端末等のメンテナンスを行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、地域の医療機関が連携して共通で利用できる医療システムを導入しやすく、また、導入後においてランニングコストを抑える技術も提案されている(例えば特許文献2参照)。これらの技術では、連携する医療機関において使用される医薬品の在庫管理を最適化でき、かつ調達コストを削減する技術についても提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6384847号
【特許文献2】特許第6558669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地域医療連携システムでは、参画が期待されている当事者が多く、また、初期の設備投資、導入後の運用などについての取りまとめる推進者(いわゆるリーダ)が必要となるが、そのような推進者が不足していることもあって、地域医療連携システムの構築が遅れているのが現状である。特許文献1及び2に開示の技術によれば、地域医療連携システムのより現実的な導入や運営が可能となり、地域医療に大きな貢献が期待できようになった。このような大きな利益を地域にもたらすためには、地域医療連携システムの導入に推進をかける仕組みが求められる。そのような仕組みの一つにソーシャル・インパクト・ボンド(以下、「SIB」とも言う)がある。SIBとは、民間の活力を社会的課題の解決に活用するため、民間資金を呼び込み成果報酬型の委託事業を実施する新たな社会的インパクト投資の取組であり、国を挙げて普及への取り組みがなされている。幾つかの自治体においてSIBが導入され、一定の成果を得た事業も報告されている。一方で、SIBに投資する投資家にとって、リスク評価やベネフィット評価が難しいという課題があり、それら課題を克服してSIBの推進において投資家にとってメリットが得られる仕組みが求められていた。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みなされたもので、その目的は、SIBのような成果報酬型の投資を地域医療連携システムのような医療システムに導入し、その成果達成を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の医療機関が連携して所定の地域において医療を提供するとともに、ソーシャル・インパクト・ボンドによる資金提供を受ける地域医療連携システムであって、
前記ソーシャル・インパクト・ボンドに関する投資者の情報を記録する投資者DBと、
前記医療機関を利用する利用者(例えば、患者)の情報を記録する利用者情報DBと、
前記ソーシャル・インパクト・ボンドの対象となる医療事業を登録するSIB事業登録部と、
前記利用者が前記投資者である場合に、前記ソーシャル・インパクト・ボンドの対象となる医療事業のなかから、前記投資者がサービスを受けることを希望する医療事業を登録する希望SIB事業登録部と、
前記利用者が、前記希望SIB事業登録部に登録した前記医療事業のサービスを受けた場合に、そのサービスによる成果(すなわち、サービスを受けたて現れた結果)を蓄積するサービス蓄積部と、
前記サービス蓄積部のデータをもとに、前記利用者に所定の成果が得られているか否かを判断する成果判断部と、
前記成果判断部が前記所定の成果が得られていると判断した場合に、前記ソーシャル・インパクト・ボンドの投資に対する償還とは別に、前記利用者に対して提供する報酬(すなわち、成果に応じた額等)を決定する報酬決定部と、
を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、SIBのような成果報酬型の投資を地域医療連携システムのような医療システムに導入し、その成果達成を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る、地域医療連携システムの概略構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る、地域医療連携システムの概略構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る、地域共有DBのブロック図である。
図4】本実施形態に係る、患者DBの例を示す図である。
図5】本実施形態に係る、SIB基本DBの例を示す図である。
図6】本実施形態に係る、登録されるSIBプログラムの例を示す図である。
図7】本実施形態に係る、SIBと地域医療連携システムの関係を示す図である。
図8】本実施形態に係る、SIBプラットフォームサービスの概略を示す図である。
図9】本実施形態に係る、SIBプラットフォームサービスのの展開例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態の概要>
図1及び図2は本実施形態において実現する地域医療連携システム1の概略構成を示す。これらの図を用いて地域医療連携システム1へのSIBの導入例を説明する。なお、地域医療連携システム1のシステム構成やその機能等については、上述した特許文献1及び2に詳細な技術が開示されており、それらの技術を適用することができる。以下では、本実施形態において特徴的な技術について詳細に説明するが、一般的な公知技術については適宜簡略化して説明する。
【0011】
地域医療連携システム1では、複数の医療施設92、複数の薬局96、複数の介護施設97が医療機関として参加し、地域住民である患者94に医療サービスを提供する。地域医療連携システム1では、ある範囲の地域において複数の医療機関(ここでは医療施設92、薬局96、介護施設97)は、医療情報共有サーバ10を用いて、患者94等の利用者に対して、医療・福祉の商品・サービスを提供する。
【0012】
なお、医療・福祉の商品・サービスを提供する者として、これらに限る趣旨ではなく、ここでは特に説明していないが、例えば、製薬会社や歯科材料、衛生用品などの医療機器を提供する事業者についても適用できる。また、フィットネス施設や商店などの事業者、さらには金融機関、保険会社が、健康増進サービスや健康保険、医療保険等の医療・福祉のサービス・商品に関連するサービス・商品を提供する者として含まれてもよい。また、医療施設92は、病院や診療所、歯科医院や眼科院等を含む広い概念である。なお、医療施設92では、法令・ガイドライン等で定められているものについては、当然にそれらに則った処理を行うものであり、例えば、電子カルテや電子処方せん(処方せんデータ)において、医師等の電子署名、タイムスタンプが必須のデータについては、必要とされるタイミングにおいて電子署名等が付与、参照されるものである。
【0013】
地域医療連携システム1には、SIBと呼ばれる投資が導入されている。ここでSIBと地域医療連携システム1との関係について図7を参照して簡単に説明する。
【0014】
まず、主に行政機関(自治体98a)と中間支援組織(SIB運営事業体98b)が中心となってSIBを組成し、契約を締結する<ステップS00>。
つぎに、中間支援組織(SIB運営事業体98b)は、資金提供者(投資家98x)から資金の提供を受け<ステップS01>、医療サービス提供者(地域医療連携システム1)に対して資金の調達と全体管理を行う<ステップS02>。
つづいて、医療サービス提供者(地域医療連携システム1)は、評価アドバイザ等の進捗・成果管理を受けながら、サービス対象者(患者94)に、SIBの対象となっている医療サービス(医療プログラム)を提供する<ステップS03>。
ついで、第三者評価機関は、サービス提供(地域医療連携システム1)の成果を評価し<ステップS04>、その内容を行政(自治体98a)に報告する<ステップS05>。契約に基づき、行政(自治体98a)から支払われた成果報酬<ステップS06>に応じて、中間支援組織(SIB運営事業体98b)が資金提供者(投資家98x)に償還を行う<ステップS07>。
以上が、SIBと地域医療連携システム1の関係である。
【0015】
つぎに、図1を参照して、本実施形態において特徴的な点を説明する。本実施形態では、サービス対象者である患者94にも投資家98x(個人投資家98z)になってもらう。投資の対象は、患者94が実際に受けている具体的な医療サービスである。すなわち、患者94が受けている医療サービスがSIBの医療プログラムに含まれる場合、患者94は、そのSIBの医療プログラムに対する投資家98x(個人投資家98z)として一定範囲の金額を投資することができる。そして、患者94は、投資したSIBの医療プログラムにおいて、所定の成果が得られた場合、一般には自身の健康状態に一定の改善が見られた場合に、SIBとしての投資の償還とは別に報酬(以下、便宜的に「利用者報酬」という)を得る。
【0016】
利用者報酬は、地域で金銭として利用可能なポイント、商品などがあるが、本実施形態では、SIBの投資家でもある金融機関98yが販売する金融商品、特に年金型金融商品を想定する。近年、老後(リタイヤ後)に必要とされる資金について、公的年金で不足する部分を個人で用意するように啓蒙されている。そこで、個人への啓蒙、自治体98aの将来の負担軽減等の観点から、上記のような年金型金融商品を利用者報酬として提供する。なお、金融商品の提供でなく、金融商品の加入時の初期手数料や、毎月の「口座管理手数料など」を無償または割引にするという形での利用者報酬提供でもよい。
【0017】
地域医療連携システム1において、「患者94」とは、医療施設92や薬局96を利用する者や、介護施設97を利用する高齢者を想定するが、それらに限る趣旨ではなく、事業者の商品・サービスを利用する全ての者を含むものであるが、以下では便宜的に「患者94」として説明する。投資家98xは、金融機関98yや個人投資家98z、機関投資家、財団等がある。
【0018】
本実施形態では、SIBの対象とするサービス、すなわち医療事業(SIBプログラム)は、複数設定される。例えば、医療事業(SIBプログラム)として、(1)「高血圧改善」事業、(2)「糖尿病重症化防止」事業、(3)「ガン検診受診推進」事業、(4)「かかりつけ登録推進」事業などである。これらの医療事業のそれぞれについて、プログラム内容、規模(予算)、評価基準等が設定される。患者94は、自分の健康状態、すなわち治療状態から、医師が適当と判断したSIBプログラムを選択する。当然に、希望しない場合は、選択不要である。患者94によるSIBへの投資金額とSIBプログラムとが関連づけられると、プログラムがスタートする。SIBプログラムや投資金額の登録等についての詳細は後述する。
【0019】
図2は、地域医療連携システム1の概略構成を示すブロック図である。地域医療連携システム1は、医療情報共有サーバ10と、医療施設端末20と、薬局端末60と、介護施設端末70と、SIB事業体端末80と、患者端末40とを備える。ここでは、便宜的に各端末一台で示しているが、複数であってもよい。
【0020】
医療情報共有サーバ10は、統括装置11と、地域共有DB12と、医療情報共有サイト100と、を備える。統括装置11は、医療情報共有サーバ10の構成要素を統括的に制御する。医療情報共有サイト100は、ポータルサイトと、患者94と事業者のそれぞれのアクセス先となる事業者サイト(医療機関用サイト、薬局用サイト、介護施設用サイト)と患者94のアクセス先でとなる患者用サイトが設けられている。
【0021】
患者94は、自身のPC(パーソナルコンピュータ)やタブレット端末、スマートフォン等の患者端末40を用いて医療情報共有サーバ10にアクセスする。患者端末40に専用のアプリケーションが導入され用いられてもよい。患者94は、医療施設92において診察を受ける場合に、患者端末40で医療施設92のWEBページにアクセスして診察を予約することができる。また、患者端末40には、例えば「お薬手帳」アプリが導入され、医療情報共有サーバ10と同期されて処方履歴を参照することができる。また、SIBプログラムに参加している患者94は、所定のWEBページ上またはアプリ上で、そのプログラムにおいて進捗状況を把握できる。より具体的には、所定の目標に対して自分の状態はどの程度であるかを、グラフや数値で把握することができる。また、患者端末40に患者94が日々の生活で記録する血圧などのデータを入力し医療共有サーバー10に記録する機能を有してもよい。
【0022】
医療施設92は、医療機関端末20を備え、ネットワーク2を介して医療情報共有サーバ10に接続する。医療機関端末20は、医療情報共有サイト100の医療機関用サイトにアクセスして、医療施設92用に用意された機能を利用する。
【0023】
医療施設92用に用意された機能とは、例えば、電子カルテシステム、臨床検査システム、医療会計システム、レセプト支援システム等の医療系システムがある。以下では、主に電子カルテシステムに着目して説明する。電子カルテシステムやその他の機能は、医療情報共有サーバ10で実現している。医療施設92は、自己の診療において作成した電子カルテ30を地域共有DB12に記録し、各医療施設92は地域共有DB12に記録されている電子カルテ30を相互に参照して利用可能になっている。また、電子カルテシステムは、医療情報共有サーバ10がASP(アプリケーションサービスプロバイダー)として提供する電子処方せんシステムと連係しており、処方せんを出力する際に、電子処方せんとして出力することができる。さらに、他の事業者が医療情報共有サーバ10の地域共有DB12に記録したデータを一定条件下(すなわち参照する権限を有数する場合)で参照することができる。
【0024】
薬局96は、薬局端末60を備え、ネットワーク2を介して医療情報共有サーバ10に接続する。薬局端末60は、ポータルサイトから薬局用サイト160にアクセスして、薬局96用に用意された機能を利用する。薬局96用に用意された機能とは、例えば、電子処方せんシステムがある。電子処方せんシステムは、医療情報共有サーバ10がASPサーバとして機能し、医療施設92が電子処方せんを登録し、薬局96が電子処方せんを取得する。
【0025】
介護施設98は介護施設端末80を備え、ポータルサイト101から介護施設用サイト180にアクセスして介護施設98用に用意された機能を利用する。介護施設98用に用意された機能とは、例えば、ケアマネジメントシステム(アセスメント・計画書・月間計画を一体入力;介護支援経過記録の取込み機能)、訪問介護・看護支援システム、通所介護・看護支援システム、介護老人ホーム支援システムなどがある。
【0026】
なお、上記の他に例えば、製薬会社の製薬機関端末が医療情報共有サーバ10に接続され、製薬会社用の機能を利用する形態でもよい。製薬会社用の機能とは、医薬品の在庫管理・受発注機能、処方せん蓄積情報、薬事情報の登録機能、医療関係者への通知機能などである。
【0027】
上述の事業者の情報処理端末、すなわち、医療機関端末20、薬局端末60、製薬機関端末70、介護施設端末80がシンクライアント端末として、医療情報共有サーバ10がその管理サーバとして、シンクライアント環境が構成される。
【0028】
そのシンクライアント環境は、例えば、管理サーバの医療情報共有サーバ10上に仮想デスクトップ環境を生成し事業者の情報処理端末から仮想デスクトップ環境を操作する仮想化技術(以下、「VDI方式」)により構築されていることがより好ましい。適用される具体的な仮想化技術として、上述のように本出願人による特許文献1(特許第6384847号)に開示の技術を用いる。なお、全てがシンクライアント環境として実現される必要はない。なお、地域医療連携システム1の一部又は全てがクラウド環境にて構築されても一定の効果を実現できる。
【0029】
図3の地域共有DB12の機能ブロック図を参照して、地域共有DB12について説明する。地域共有DB12は、管理支援装置13と、DB部14と、SIB管理装置15とを備える。
【0030】
管理支援装置13は、シンクライアント環境のシンクライアントサーバ(管理サーバ)として機能する。また、管理支援装置13は、シンクライアント環境における各事業者のシンクライアントの情報処理端末(例えば医療機関端末20)に用いられる各種ソフトウェア(アプリケーション)を保持する。すなわち、管理支援装置13がシンクライアントサーバとして仮想デスクトップを稼働させる場合に、その仮想デスクトップ上で稼働させるアプリケーションを保持する。
【0031】
また、管理支援装置13は、登録管理機能及び認証機能を備える。登録管理機能は、地域医療連携システム1を利用する患者94や、医療施設92や薬局96等の事業者や、それら事業者に所属する医師、薬剤師等を登録する。登録される認証情報として、認証手段の種類およびそれによる登録情報がある。認証機能は、事業者(医療施設92、薬局96、介護施設98等)や患者94が地域医療連携システム1にアクセスする際に、登録された認証情報にもとづき、認証処理を行う。
【0032】
DB部14は、地域医療連携システム1を使用する者、すなわち利用者である患者94および事業者に所属する者の各種情報を記録し保持する。具体的には、DB部14は、人物に関するデータベースとして、患者DB121と、医療関係者DB122と、薬剤師DB123と、介護士DB124と、を備える。また、DB部14は、事業者に関するデータベースとして、病院DB131と、薬局DB132と、介護施設DB133と、SIB事業者DB134とを有する。
【0033】
また、DB部14は、患者の医療情報を蓄積するDBとして、診察情報DB129を有する。診察情報DB129は、電子カルテDBと、処方せんDB126と、健康診断DB127と、を有する。
【0034】
図4に患者DB121の例を示す。ここでは、患者ID「C0001」名前「ABCD」のデータ121aであるについて説明する。データ121aは患者ごとに記録されている。
【0035】
このデータ121aは、基本登録情報1211と、登録情報1(医療)1212と、登録情報2(電子決済)1213と、登録情報3(SIB投資情報)1214と、を有する。
【0036】
基本登録情報1211には、患者94の属性等の基本情報が記録されている。すなわち、名前、住所、認証手段、所属企業、健康診断との連携などである。
【0037】
登録情報1(医療)1212には、患者94の医療に関する基本情報が記録されている。かかりつけ病院・薬局や延命治療意思、注意薬情報/副作用情報などである。
【0038】
登録情報2(電子決済)1213には、地域医療連携システム1の関連するサービスの決済において使用する電子決済手段(この例ではIC決済手段やQR決済手段)について記録されている。
【0039】
登録情報3(SIB投資情報)1214には、患者94がSIB投資家(個人投資家98z)である場合に、それに関する各種情報が記録される。
ここでは、SIBステータス、SIB投資1、SIB投資2が記録されている。
SIBステータスとして、個人投資家98zとしてのステータスであるかいなか、SIB事業の対象となる医療(すなわちSIBプログラム)を受けている患者であるか否が記録される。
【0040】
SIB投資1、SIB投資2には、個人投資家98zである場合に、「投資額」「投資期間」「参加SIB医療事業」「口座ID」が記録されている。
図示の患者(患者ID「C0001」、名前「ABCD」)は、「高血圧改善事業」及び「糖尿病重症化防止事業」の二つのSIBプログラムに、個人投資家98zかつ患者として参加している。投資額、投資期間は、治療開始タイミング等によって異なってもよい。
【0041】
なお、患者94は、登録時に、名前等の所定の必須開示項目以外について開示範囲を設定可能にしてもよく、どの項目をどの種の事業者(医療施設92、薬局96、介護施設98)、さらに事業者のどのような属性の人(医者、看護師、薬剤師、事務担当者など)に開示するかを決めることができる。また、登録される情報によって、登録できる機関が限定されてもよい。例えば、基本登録情報1211は、医療施設92の医療施設端末20と、患者端末40のみで登録可能であり、登録情報3(SIB投資情報)は、SIB事業体端末80のみで登録可能である、といった制限を加えることができる。
【0042】
図3に戻り、診察情報DB129において、電子カルテDB125は、医療施設92で作成された電子カルテのデータが、その患者94と関連づけられて記録される。処方せんDB126は、医療施設92で作成された処方せんのデータが患者94及び管理番号と関連づけられて記録される。処方せんDB126は、薬局96が薬を患者94に出すときに薬局端末60で参照され、実際に出した際の具体的な情報(日時、薬名、メーカ、量等)が追記される。健康診断DB127は、患者94の健康診断のデータが記録される。
【0043】
患者94がSIBプログラムに参加する個人投資家98zである場合、診察情報DB129の各データが、SIBプログラムにおける評価において参照される。
【0044】
つづいて、SIB管理装置15を説明する。SIB管理装置15は、投資者登録部151と、SIB事業登録部152と、希望事業登録部153と、実施データ記録部154と、追加報酬決定部156と、SIB進捗提示部157と、報酬登録部158と、SIB関連DB160とを有する。
【0045】
投資者登録部151は、SIB事業の投資をする投資家98x(金融機関98y、個人投資家98zなど)の情報をSIB関連DB160(SIB基本DB161)に登録する。
図6に投資家の情報の例を示す。ここでは「資金提供者(投資家名)」「属性」「ID」「投資額」「投資期間」「金融商品の有無」の項目が記録されている。
属性が「投資家(団体)」の場合、その投資家(団体)が金融商品を提供しているか否かが記録される。登録されている金融商品(商品そのもの又は手数料等)は、追加報酬として提供される。
属性が「住民」の場合、IDは患者IDと同一のものが記録される。すなわち、地域医療連携システム1で受ける医療サービス等の記録とリンクすることを意味する。
【0046】
SIB事業登録部152は、実施されるSIBプログラムをSIB関連DB160(SIB基本DB161)に登録する。これは、例えばSIB事業主のSIB事業体端末80にて行われる。
図6に登録されるSIBプログラムの例を表として示す。ここでは4つのプログラムを例示している。登録項目として「事業ID」「事業名称/期間」「事業内容」「評価基準」「難易度」「事業規模」がある。
【0047】
例えば、事業ID「P01」では、事業名称/期間「高血圧改善/2019.04.01~2024.03.31」で、事業内容「日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインの分類で1ランク以上改善する」、評価基準「改善ランク数および終了時のランクに応じる」、難易度「A~D」、事業規模「100,000,000円」となっている。なお、ここで評価基準は、概要のみを表記しているが、より具体的な基準(判断基準、難易度を反映した算出方法等)が登録される。
【0048】
希望事業登録部153は、個人投資家98zから投資対象として希望するSIBプログラムをSIB関連DB160(SIB基本DB161)登録する。具体的には、希望事業登録部153は、例えばWEB上または専用端末(SIB事業体端末80)で、所定の認証によりアクセスした利用者(患者94かつ個人投資家98z)に対して、SIBの対象となる医療事業(SIBプログラム)を提示し、希望する医療事業(SIBプログラム)の指定を受け付ける。このとき、希望事業登録部153がその機能の一部として、成果目標の設定を行ってもよい。例えば、SIBの対象医療事業として「メタボ解消事業(メタボ解消サービス)」がある場合、メタボ認定されている患者のみ、メタボ解消サービスを受けられる。また、メタボ解消後も事業終了まで解消を維持できれば利用者報酬を得られるといった制限を加えてもよい。
【0049】
実施データ記録部154は、患者94かつ個人投資家98zとして参加している利用者のSIBプログラムの進捗状況を、上述の診察情報DB129を参照して、集約・記録する。
【0050】
成果判断部155は、所定のタイミング(すなわち、評価タイミング)において、SIBプログラムに参加している利用者(患者94かつ個人投資家98z)の成果を、所定の基準をもとに判断する。
【0051】
追加報酬決定部156は、成果判断部155の評価にもとづき、利用者(患者94かつ個人投資家98z)に対する報酬(追加報酬)を決定する。これは、SIBの投資に対する償還とは別に、利用者に対して提供する報酬、すなわち成果に応じた額及び提供方法等を決定するものである。上述のように、金融機関等の投資家が金融商品を登録している場合、その金融商品が報酬(追加報酬)となる。なお、報酬(追加報酬)の種類は、他に、地域医療連携システム1で利用可能なポイント(電子マネーやクーポン),金利優遇や各種手数料優遇などのサービスの提供等であってもよい。
【0052】
SIB進捗提示部157は、評価タイミングでない期間において、目標(所定の基準)に対してどの程度進捗しているか、すなわち病状等が改善しているかを、患者端末40や医療施設端末20(患者94の電子カルテ)等に表示させる。
【0053】
報酬登録部158は、追加報酬決定部156が決定した報酬を登録する。金融商品の場合は、それを販売・管理している金融機関等に通知する。システムが連携している場合は、登録処理により、金融商品の額等が反映される。地域医療連携システム1で利用可能なポイント(電子マネーやクーポン),サービスの提供等であれば、それを管理するシステムに登録する。
【0054】
SIB基本DB161は、上述した、SIBプログラムや投資家情報(属性や投資額等)を記録する。
【0055】
SIB実施結果DB162は、利用者が登録したSIBプログラムを受けた場合に、そのサービスによる成果(すなわち、サービスを受けたて現れた結果)を蓄積する。
SIBの対象となる医療事業とは、例えば糖尿病重症化防止事業、メタボ改善事業(血圧、体重、・・・)、要介護/支援度改善事業、等)をなどで、一つでもよいし複数でもよい。
SIB実施結果DB162に記録されたSIBの進捗状況や成果は、投資家や第三者評価機関,行政などが参照できる。参照は、SIBプラットフォームサービスを介して行ってもよい。SIBプラットフォームサービスは、新にSIBを行いたい地域等にも開放され、既存のSIBプログラムの実施内容を参照できる。プラットフォームサービスの概略図を図8に、プラットフォームサービスの展開例を図9に示す。
【0056】
以上、発明を実施形態をもとに説明した。実施形態の機能・効果を簡単に纏めると次の通りである。
【0057】
(1)本実施形態は、複数の医療機関が連携して所定の地域において医療を提供するとともに、ソーシャル・インパクト・ボンドによる資金提供を受ける地域医療連携システム1であって、
ソーシャル・インパクト・ボンドに関する投資者の情報を記録する投資者DB(SIB関連DB160(SIB基本DB161))と、
医療機関を利用する利用者(例えば、患者94)の情報を記録する利用者情報DB(診察情報DB129)と、
ソーシャル・インパクト・ボンドの対象となる医療事業を登録するSIB事業登録部152と、
利用者が投資者(個人投資家98z)である場合に、SIBの対象となる医療事業のなかから、投資者がサービスを受けることを希望する医療事業(SIBプログラム)を登録する希望SIB事業登録部(希望事業登録部153)と、
利用者が、希望SIB事業登録部(希望事業登録部153)に登録した医療事業のサービス(SIBプログラム)を受けた場合に、そのサービスによる成果(すなわち、サービスを受けたて現れた結果)を蓄積するサービス蓄積部(SIB実施結果DB162)と、
サービス蓄積部(SIB実施結果DB162)のデータをもとに、利用者に所定の成果が得られているか否かを判断する成果判断部(成果判断部155)と、
成果判断部(成果判断部155)が所定の成果が得られていると判断した場合に、SIBの投資に対する償還とは別に、利用者(個人投資家98z)に対して提供する報酬(すなわち、成果に応じた額等)を決定する報酬決定部(追加報酬決定部156)と、
を有する。
SIBの対象となる医療事業とは、例えば糖尿病重症化防止事業、メタボ改善事業(高血圧対策、肥満対策、・・・)、かかりつけ登録事業、要介護/支援度改善事業等をなどで、一つでもよいし複数でもよい。このような医療事業は、地域連携が重要とされており、SIB及び地域医療連携システム1を組み合わせることで、地域医療連携システム1の導入が大きく促進されると期待できる。すなわち、地域医療連携システム1の導入に鍵となるリーダシップをSIB事業体や自治体が担うことになり、導入時の公平性を担保できることからSIB事業の促進が図られる。
地域住民である患者にも投資家(すなわちSIBの当事者)となってもらうことで、SIBによる成果達成をより高めることができる。また、投資家でもある患者がSIBの対象医療事業のサービスを受けて、成果が得られた場合、SIBの償還とは別に報酬を与える。これによって、投資家となる患者のインセンティブと事業成果促進を図る。また、一般の投資家にとっても、投資先の地域医療連携システムの患者が投資家となり当事者として関与することから、一定の投資リスクを取り除き、投資しやすい環境となる。すなわち投資促進に繋がる。なお、患者が投資者となる場合、SIB募集時に投資した場合に限らず、大口投資家が小口に分割(小口証券化)したものを購入する場合であってもよい。
【0058】
(2)地域医療連携システム1では、利用者報酬決定部(追加報酬決定部156)は、利用者が投資者である期間及び投資額を、前記報酬に反映してもよい。
地域の住民である利用者を継続的に地域医療連携へ関与させることができ、また、住民の地域行政への認識・参加を向上させることにも繋がる。
【0059】
(3)地域医療連携システム1では、前記報酬は、年金型金融商品(例えばiDeco ,NISA等)またはその取得に掛かる費用として提供されてもよい。
例えば、SIBの投資家が金融機関98y(保険会社、銀行など)の場合、それら投資家が販売する金融商品99のうち特に年金型の投資信託商品(金融商品)として利用者への報酬を提供する。SIBの当事者でもある自治体98aは、地域医療連携システム1の導入促進とともに、地域住民の老後備え(例えば個人年金)の促進を図り、将来への不安を払拭できる。一方、金融機関98y等の投資家は、自身の金融商品99への誘導(口座開設への誘導)が図られ、投資リスクを一層下げることができ、投資しやすい環境を得られる。このとき、利用者が投資家としての属性を有する期間に購入手数料を無料(又は低廉)に設定するといった便益を提供することで、さらなる誘導が可能となる。また、口座開設後は、患者の目標の進捗状況の表示とともに、金融商品の動きもあわせて表示させることで、従来、あまり金融商品に関心が薄く老後資金運用を考えていなかった層にアピールすることができる。
【0060】
(4)地域医療連携システム1では、利用者報酬決定部(追加報酬決定部156)は、利用者が登録した医療事業(SIBプログラム)の目標の難易度及び前記医療事業の想定便益を前記利用者報酬に反映させてもよい。
例えば、難易度が高く重要度が高い事業(具体的には糖尿病重症化予防事業)は報酬を多くし、難易度・重要度の点でハードルが低いと考えられる事業(具体的には、例えばメタボ改善事業)は報酬を少なく設定する。また、例えば、介護認定の要介護度・要支援度の改善事業であれば、改善レベル等に応じて報償を調整するといった処理とする。当事者となった利用者のインセンティブと利用者報酬のバランスをとることができる。
【0061】
(5)地域医療連携システム1では、利用者が投資者98zである場合に、利用者が登録した医療事業の目標に対する進捗状況を表示する進捗提示部(SIB進捗提示部157)を備えてもよい。利用者は自身の目標に対する進捗を把握でき、成果達成へのインセンティブになる。
【0062】
(6)地域医療連携システム1では、希望SIB事業登録部(希望事業登録部153)は、利用者の健康診断データと診療データの少なくとも一方にもとづいて、前記投資者でもある利用者が参加できる医療事業(SIBプログラム)を決定してもよい。すなわち、健康診断データや診療データから成果達成が可能と判断できる医療事業にのみ参加することができる。
なお、SIBとしての実績に、糖尿病重症化予防事業がある。この事業においては、糖尿病性腎症で通院中の患者のうち、特に人工透析への移行リスクの高い第3期~4期の患者を対象者とし、食事療法等の保健指導を行い、通常約10%と言われる第4期から人工透析(第5期)への移行率を抑えることで、人工透析への移行を予防している。
このSIBでは、一定の成果が得られているが、一層の成果を得るには、患者自身のインセンティブが必要である。そこで、本実施形態にあるように、患者94がSIBの投資家(個人投資家98z)となった場合にSIB事業全体でのリターンを享受可能とするとともに患者自身の成果目標クリアで一定の報酬を得ることができるようにすることで、患者に改善へのインセンティブを強く作用させることができる。
【0063】
本実施形態では、医療情報共有サーバ内の各種DBに情報を保存するとしている。保存先は、例示であり、行動履歴や購買履歴といったものを含んだり又はひも付いたデータを個人から預託され、他の事業者とのマッチングや匿名化したうえでの情報提供を行う機関(情報銀行)内のDBなどでもよい。
【0064】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0065】
1 地域医療連携システム
10 医療情報共有サーバ
11 統括装置
12 地域共有DB
13 管理支援装置
14 DB部
15 SIB管理装置
20 医療施設端末
40 患者端末
60 薬局端末
70 介護施設端末
80 SIB事業体端末
81 自治体端末
82 SIB事業施設端末
100 医療情報共有サイト
121 患者DB
122 医療関係者DB
123 薬剤師DB
124 介護士DB
125 電子カルテDB
126 処方せんDB
127 健康診断DB
129 診察情報DB
131 病院DB
132 薬局DB
133 介護施設DB
134 SIB事業者DB
151 投資者登録部
152 SIB事業登録部
153 希望事業登録部
154 実施データ記録部
155 成果判断部
156 追加報酬決定部
157 SIB進捗提示部
158 報酬登録部
160 SIB関連DB
161 SIB基本DB
162 SIB実施結果DB


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9