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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036610
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】蛍光顕微鏡、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20220301BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G02B21/00
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140910
(22)【出願日】2020-08-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.THUNDERBOLT
(71)【出願人】
【識別番号】503249810
【氏名又は名称】株式会社XTIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】村木 洋介
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043EA01
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA07
2G043HA09
2G043KA01
2G043KA02
2G043KA03
2G043KA09
2H052AA07
2H052AA09
2H052AB01
2H052AB24
2H052AC04
2H052AC15
2H052AC27
2H052AC34
2H052AD20
2H052AD34
2H052AF14
2H052AF21
2H052AF25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生きた状態の細胞やたんぱく質等の標本の観察に加えて分析を行う、空間分解能を高めることに加え、これらの標本の三次元的な形状を計測可能な顕微鏡を提供する。
【解決手段】蛍光顕微鏡1は、光源11と、偏光分離素子12と、第1受光素子13と、第2受光素子14と、励起フィルター15と、第1ビームスプリッタ16と、ガルバノミラー17と、コリメータレンズ18と、半波長板19と、1/4波長板1aと、吸収フィルター1bと、対物レンズ1cと、第1レンズ1dと、第2レンズ1eと、計測装置と、情報処理装置3と、表示装置4と、試料台5と、XYステージ6とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光顕微鏡であって、
光源と、偏光分離素子と、第1受光素子と、第2受光素子とを備え、
前記光源は、光源光を出力し、これを試料の表面に対して照射するように構成され、
前記偏光分離素子は、前記試料で励起された蛍光と前記試料の表面で反射した散乱光に分離するように構成され、
前記第1受光素子は、前記蛍光を受光するように構成され、
前記第2受光素子は、前記散乱光を受光するように構成される、
もの。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光顕微鏡において、
励起フィルターをさらに備え、
前記光源は、前記光源光を出力し、これを前記励起フィルターに対して照射するように構成され、
前記励起フィルターは、前記光源光から前記試料の励起に必要な波長を有する成分を抽出し、
前記光源光のうちの前記抽出された成分が前記試料の表面に対して照射される、
もの。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蛍光顕微鏡において、
第1ビームスプリッタと計測装置とをさらに備え、
前記第1ビームスプリッタは、
前記光源光を所定の分割比で2つに分割し、前記2つのうちの一方を反射させ、他方を透過させ、
前記散乱光を、反射された前記光源光と同じ方向に反射させ、
前記計測装置は、反射された前記光源光と前記散乱光に基づいて、前記光源から前記試料の表面における一点までの距離を算出し、前記試料の形状を計測するように構成される、
もの。
【請求項4】
請求項3に記載の蛍光顕微鏡において、
前記光源は、光コム光源であり、
前記計測装置は、
第2ビームスプリッタと、光検出器と、位相計とを備え、
前記第2ビームスプリッタは、入射した光を参照光と反射光に分割するように構成され、ここで、前記参照光は、前記光源光であり、前記反射光は、前記散乱光であり、
前記光検出器は、前記参照光及び前記反射光を電気的に参照信号及び反射信号に変換するように構成され、
前記位相計は、前記参照信号及び前記反射信号から電気的位相差を計測するように構成される、
もの。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一つに記載の蛍光顕微鏡において、
表示装置をさらに備え、
前記第1受光素子は、前記蛍光を受光し、これを電気信号に変換するように構成され、
前記表示装置は、前記電気信号を光信号に変換し、これをユーザーが視認可能に表示するように構成される、
もの。
【請求項6】
請求項2~請求項5の何れか一つに記載の蛍光顕微鏡において、
ガルバノミラーと、ミラー制御部とをさらに備え、
前記ガルバノミラーは、鏡面を回転駆動可能に構成され、前記鏡面を介して前記光源光を反射させ、
前記ミラー制御部は、前記光源光を前記試料の所望箇所に照射するために、前記ガルバノミラーの反射方向を制御するように構成される、
もの。
【請求項7】
請求項2~請求項5の何れか一つに記載の蛍光顕微鏡において、
XYステージと、ステージ制御部とをさらに備え、
前記XYステージは、前記試料を載せた試料台を載置し、二次元的に駆動可能に構成され、
前記ステージ制御部は、前記光源光を前記試料の所望箇所に照射するために、前記XYステージの移動方向を制御するように構成される、
もの。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか一つに記載の蛍光顕微鏡において、
試料特定部をさらに備え、
前記試料特定部は、前記試料の中で、計測範囲内にある前記試料の位置情報を特定するように構成され、ここで前記計測範囲は、予めユーザーによって指定された前記試料の形状を計測する範囲である、
もの。
【請求項9】
請求項6~請求項8の何れか一つに記載の蛍光顕微鏡において、
保存部をさらに備え、
前記保存部は、前記光源光が照射された前記試料のXY座標値と、前記XY座標値における前記試料のZ軸方向の高さとを記憶手段に記憶させて保存する、
もの。
【請求項10】
請求項3~請求項9の何れか一つに記載の蛍光顕微鏡において、
追跡部をさらに備え、
前記追跡部は、離散的な時間間隔で、追跡範囲内にある前記試料を三次元計測するように構成され、ここで前記追跡範囲は、予め前記ユーザーによって指定された前記試料を追跡する範囲である、
もの。
【請求項11】
プログラムであって、
コンピュータを請求項1~請求項10の何れか1つに記載の蛍光顕微鏡の各部として機能させる、
もの。
【請求項12】
蛍光顕微鏡を用いて試料の三次元計測をする方法であって、
配置ステップと、特定ステップと、照射ステップと、光検出ステップと、計測ステップとを備え、
前記配置ステップでは、計測対象の前記試料を試料台に配置し、
前記特定ステップでは、前記試料の中で、形状を計測する計測範囲を特定し、
前記照射ステップでは、光源から光源光を前記計測範囲の所望箇所に照射し、
前記光検出ステップでは、前記所望箇所における散乱光を検出し、
前記計測ステップでは、前記光源光と前記散乱光に基づいて、前記光源と前記計測範囲の表面における一点との距離を計測する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光顕微鏡、プログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生きた状態の細胞やたんぱく質等の標本を観察するために、蛍光顕微鏡が用いられている。
【0003】
特許文献1には、複数種類の蛍光色素で多重染色された標本を、空間分解能の高いレーザー励起蛍光顕微鏡で観察する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-179248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、生きた状態の細胞やたんぱく質等の標本の観察に加えて分析を行うには、空間分解能を高めることに加え、これらの標本の三次元的な形状を計測することが求められる。特許文献1に開示されている技術では、標本の三次元的な形状を計測することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、蛍光顕微鏡が提供される。この蛍光顕微鏡は、光源と、偏光分離素子と、第1受光素子と、第2受光素子とを備える。光源は、光源光を出力し、これを試料の表面に対して照射するように構成される。偏光分離素子は、試料で励起された蛍光と試料の表面で反射した散乱光に分離するように構成される。第1受光素子は、蛍光を受光するように構成される。第2受光素子は、散乱光を受光するように構成される。
【0007】
このような計測装置によれば、複雑の形状を有する被計測物の三次元的な形状を精度良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る蛍光顕微鏡1の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る計測装置2の構成を示すブロック図である。
図3】情報処理装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】情報処理装置3における制御手段33が担う機能を示す機能ブロック図である。
図5】試料Sの中で、特定された計測範囲A及び計測ブロックBの一例である。
図6】試料Sの中で、特定された追跡範囲C及び追跡ブロックDの一例である。
図7】実施形態に係る試料SのZ軸方向の高さを計測する一例である。
図8】実施形態に係る計測対象の試料Sの三次元形状の計測方法のアクティビティ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、電圧・電流といった信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.全体構成
第1節では、本実施形態に係るハードウェア構成について説明する。図1は、実施形態に係る蛍光顕微鏡1の構成を示すブロック図である。以下各ハードウェアについて説明する。
【0014】
1.1 蛍光顕微鏡1
図1に示すように、蛍光顕微鏡1は、光源11と、偏光分離素子12と、第1受光素子13と、第2受光素子14と、励起フィルター15と、第1ビームスプリッタ16と、ガルバノミラー17と、コリメータレンズ18と、半波長板19と、1/4波長板1aと、吸収フィルター1bと、対物レンズ1cと、第1レンズ1dと、第2レンズ1eと、計測装置2と、情報処理装置3と、表示装置4と、試料台5と、XYステージ6とを含む。蛍光顕微鏡1には、試料S(例えば、生きた状態の細胞やたんぱく質)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、ガルバノミラー17、計測装置2、情報処理装置3、表示装置4、試料台5及びXYステージ6は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0015】
1.2 光源11
光源11は、光源光を出力し、これを試料Sの表面に対して照射するように構成される。ここで、試料Sは、蛍光物質を含んでもよい。また、試料Sは、自家蛍光物質、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein:GFP)等のように光を吸収して蛍光を発する物質であってよい。試料Sの物質は限定されない。光源11は、試料Sに含まれる蛍光物質と励起波長と同じ波長のレーザー光を出力する。レーザー光の波長は、340nm~1200nmの幅を有する。ここで、レーザー光の強度は限定されない。レーザー光源の種類も限定されない。光源11から出力される光源光は、試料Sの表面を観察するのみならず、試料Sの三次元計測をするために使用される。光源11は、光コム光源であってもよい。
【0016】
光コム光源は、超短光パルス列である光コムを出力する。光コムの発生には、光周波数コム発生器が使用されてもよい。また、モード同期レーザーが使用されてもよい。光コム光源から出力されるレーザーは、同軸上に導かれるため、入射光と反射光が同軸となる。計測装置2が複雑な形状を有する試料Sの三次元計測を行うには適している。
【0017】
光源11は、光源光を出力し、これを励起フィルター15に対して照射するように構成される。光源光は、試料Sの表面に対して直接照射してもよいが、後述する励起フィルター15を介して照射してもよい。励起フィルター15を介することで、不要な波長の光が取り除かれる。
【0018】
1.3 偏光分離素子12
偏光分離素子12は、励起フィルター15とガルバノミラー17及び吸収フィルター1bの間に配置される。偏光分離素子12は、試料Sで励起された蛍光と試料の表面で反射した散乱光に分離するように構成される。偏光分離素子12は、特定の波長の光のみを反射し、それ以外の波長の光を透過させる機能を有する。そのため、偏光分離素子12は、蛍光物質から放射された蛍光を反射し、それ以外の散乱光を透過させる。図1に記載されているように、偏光分離素子12は、蛍光及び散乱光に対して略45°で配置されているため、蛍光は、偏光分離素子12によって略90°に反射され、後述する吸収フィルター1b、第1レンズ1d及び第1受光素子13の方向へ導かれる。
【0019】
一方、散乱光は、偏光分離素子12によって透過され、後述する励起フィルター15、1/4波長板1a、第1ビームスプリッタ16、第2レンズ1e及び第2受光素子14の方向へ導かれる。散乱光は、第1レンズ1d及び第2受光素子14を経由せず、計測装置2へと直接導かれてもよい。
【0020】
1.4 第1受光素子13
第1受光素子13は、蛍光を受光するように構成される。第1受光素子13は、光を受光し、受光した光を電気信号に変換する。したがって、第1受光素子13は、光検出器、受光器と同様の機能を有する。ここでは、蛍光の強度を検出し、これを電気信号に変換する。第1受光素子13として、光電効果を利用した光電子増倍管(フォトマル)や光照射による電気抵抗変化を利用したCdS、PbSなどの光電導素子が使用されてもよい。また、第1受光素子13として、半導体のpn接合を利用した光起電力型のフォトダイオード(PD:Photo Diode)が使用されてもよい。第1受光素子13のデバイスは限定されない。
【0021】
1.5 第2受光素子14
第2受光素子14は、散乱光を受光するように構成される。第2受光素子14は、第1受光素子13と同じ機能を有する。第2受光素子14のデバイスは、第1受光素子13同様、限定されない。
【0022】
1.6 励起フィルター15
励起フィルター15は、1/4波長板1aと偏光分離素子12の間に配置される。励起フィルター15は、光源光から試料Sの励起に必要な波長を有する成分を抽出し、この成分が試料Sの表面に対して照射される。試料Sの含む蛍光物質は、特定の波長の光で励起されるため、励起フィルター15は、蛍光物質の励起に必要な波長の光を光源11から抽出するための光学素子である。励起フィルター15には、特定の波長の光のみを透過し、それ以外の光を通さないようなバンドパスフィルタが用いられるが、これに限定されない。
【0023】
1.7 第1ビームスプリッタ16
第1ビームスプリッタ16は、半波長板19と1/4波長板1aの間に配置される。第1ビームスプリッタ16は、光源光を所定の分割比で2つに分割し、2つのうちの一方を反射させ、他方を透過させる。図1に記載の第1ビームスプリッタ16は、キューブ型ビームスプリッタであるが、プレート型ビームスプリッタであってもよい。また、第1ビームスプリッタ16は、非偏光ビームスプリッタが使用されてもよいが、偏光ビームスプリッタが使用されてもよい。
【0024】
第1ビームスプリッタ16は、散乱光を、反射された光源光と同じ方向に反射させる。このため、第1ビームスプリッタ16によって、光源光と散乱光は、重ね合わせられる。重ね合わされた光源光と散乱光は、後述する第2レンズ1eを透過し、第2受光素子14の方向へ導かれる。
【0025】
1.8 ガルバノミラー17
ガルバノミラー17は、励起フィルター15と吸収フィルター1bの間に配置される。ガルバノミラー17は、鏡面を回転駆動可能に構成され、鏡面を介して光源光を反射させる。ここでは、光源光を反射させることができるミラーであればよいため、ガルバノミラー17に限定されない。例えば、ガルバノミラー17は、ポリゴンミラー、デフォーマブルミラー等のミラーであってもよい。またミラーの材質、大きさ等の仕様は、限定されない。ガルバノミラー17は、X軸を中心に回転するガルバノミラー17aとY軸を中心に回転するガルバノミラー17bから構成される。ガルバノミラー17aは、X軸回転用のモータ(不図示)によって回転駆動可能に構成され、ガルバノミラー17bは、Y軸回転用のモータ(不図示)によって回転駆動可能に構成される。ガルバノミラー17a及びガルバノミラー17bの反射方向は、後述するミラー制御部331によって制御される。
【0026】
1.9 コリメータレンズ18
コリメータレンズ18は、光源11と半波長板19の間に配置される。コリメータレンズ18は、光源11から出力された光源光をコリメータレンズ18から無限遠に平行光が得られるように収差補正されたレンズである。コリメータレンズ18の焦点距離、適合波長、外形サイズ等の仕様は、限定されない。
【0027】
1.10 半波長板19
半波長板19は、コリメータレンズ18と第1ビームスプリッタ16の間に配置される。半波長板19は、複屈折材料などを利用して直交する2つの偏光成分に半波長の位相差(光路差)をつけて、光源光の偏光の状態を変える素子である。半波長板19として使用される結晶は水晶であるが、これに限定されない。また、半波長板19の板厚、構造等の仕様は、限定されない。
【0028】
1.11 1/4波長板1a
1/4波長板1aは、第1ビームスプリッタ16と励起フィルター15の間に配置される。1/4波長板1aは、複屈折材料などを利用して直交する2つの偏光成分にλ/4の位相差(光路差)をつけて、光源光の偏光の状態を変える素子である。換言すると、1/4波長板1aは、位相差をλ/4(90°)与え光源光及び散乱光の直線偏光を円偏光に変えることができる。1/4波長板1aの材料、大きさ等の仕様は、限定されない。
【0029】
1/4波長板1aの主な目的は、光源11が光コム光源である場合、散乱光のノイズを除去することである。ノイズを除去することで、計測装置2が光源11から試料Sの表面における一点までの距離を精度よく算出し、試料Sの形状をより精確に計測することができる。
【0030】
1.12 吸収フィルター1b
吸収フィルター1bは、偏光分離素子12と第1レンズ1dの間に配置される。吸収フィルター1bは、試料Sで励起された蛍光とその他の不要な散乱光の成分等を分離する光学素子である。換言すると、吸収フィルター1bは、偏光分離素子12を反射した長波長の蛍光を透過させ、その他の励起の漏れ光(試料Sや光学系からの散乱光成分)などは透過させない。吸収フィルター1bの材質、大きさ等の仕様は、限定されない。
【0031】
1.13 対物レンズ1c
対物レンズ1cは、ガルバノミラー17と試料Sの間に配置される。具体的には、対物レンズ1cは、観察される試料Sに最も近い位置に配置され、光源光をその焦点位置にある試料Sの表面に集光させる。その後、試料Sで励起された蛍光及び試料Sから発せられた散乱光は、対物レンズ1cを通過して平行光としてガルバノミラー17に導かれる。
【0032】
1.14 第1レンズ1d
第1レンズ1dは、吸収フィルター1bと第1受光素子13の間に配置される。第1レンズ1dの機能は対物レンズ1cと同じである。具体的には、第1レンズ1dは、試料Sから発せられた蛍光をその焦点位置にある第1受光素子13の表面に集光させる。
【0033】
1.15 第2レンズ1e
第2レンズ1eは、第1ビームスプリッタ16と第2受光素子14の間に配置される。第2レンズ1eの機能は対物レンズ1cと同じである。具体的には、第2レンズ1eは、試料Sから発せられた散乱光をその焦点位置にある第2受光素子14の表面に集光させる。
【0034】
1.16 計測装置2
計測装置2は、反射された光源光と散乱光に基づいて、光源11から試料Sの表面における一点までの距離を算出し、試料Sの形状を計測するように構成される。そのため第2レンズ1e及び第2受光素子14の代わりに、計測装置2が配置される。図2は、実施形態に係る計測装置2の構成を示すブロック図である。ブロック図は、光源11が光コム光源の場合の実施形態である。よって、光源11の種類又は計測方法が異なる場合、計測装置2の構成も異なる。図2に示すように、計測装置2は、第2ビームスプリッタ21と、光検出器22と、バンドパスフィルタ23と、ダブルバランスドミキサ24と、位相計25と、集光レンズ26とを含む。計測装置2は、蛍光顕微鏡1に適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0035】
(第2ビームスプリッタ21)
第2ビームスプリッタ21は、第1ビームスプリッタ16と集光レンズ26の間に配置される。第2ビームスプリッタ21は、入射した光を参照光と反射光に分割するように構成される。ここで、入射した光は、第1ビームスプリッタ16で、重ね合わされた光源光と散乱光である。参照光は、光源光であり、反射光は、散乱光である。第2ビームスプリッタ21は、第1ビームスプリッタ16と同様の機能を有する。第2ビームスプリッタ21は、キューブ型ビームスプリッタであるが、プレート型ビームスプリッタであってもよい。また、第2ビームスプリッタ21は、非偏光ビームスプリッタが使用されてもよいが、偏光ビームスプリッタが使用されてもよい。
【0036】
(光検出器22)
光検出器22は、第1検出器221及び第2検出器222を含む。光検出器22は、集光レンズ26とバンドパスフィルタ23の間に配置される。具体的には、第1検出器221は、第1集光レンズ261と第1バンドパスフィルタ231及び第2バンドパスフィルタ232の間に配置され、第2検出器222は、第2集光レンズ262と第3バンドパスフィルタ233の間に配置される。光検出器22は、参照光及び反射光を電気的に参照信号及び反射信号に変換するように構成される。即ち、第1検出器221は、参照光を電気的に参照信号に変換し、第2検出器222は、反射光を電気的に反射信号に変換する。
【0037】
(バンドパスフィルタ23)
バンドパスフィルタ23は、第1バンドパスフィルタ231、第2バンドパスフィルタ232及び第3バンドパスフィルタ233を含む。バンドパスフィルタ23は、光検出器22とダブルバランスドミキサ24又は位相計25の間に配置される。具体的には、第1バンドパスフィルタ231は、第1検出器221と位相計25の間に配置され、第2バンドパスフィルタ232は、第1検出器221とダブルバランスドミキサ24の間に配置され、第3バンドパスフィルタ233は、第2検出器222とダブルバランスドミキサ24の間に配置される。
【0038】
第1バンドパスフィルタ231は、第1検出器221で光電変換された参照信号のビート(うねり)成分から繰り返し周波数frepの参照信号を取り出す。第2バンドパスフィルタ232は、第1検出器221で光電変換された参照信号のビート(うねり)成分から、高周波f成分から繰り返し周波数frep成分を除いたf-frep参照信号を取り出す。第3バンドパスフィルタ233は、第2検出器222で光電変換された反射信号から高周波信号fの反射信号を取り出す。
【0039】
(ダブルバランスドミキサ24)
ダブルバランスドミキサ24は、アナログ乗算器であり、第2バンドパスフィルタ232から取り出されたf-frep参照信号の周波数成分と、第3バンドパスフィルタ233から取り出されたf反射信号の周波数成分の電気信号に対して乗算の演算を行う回路である。ここで演算は電気信号の電圧成分で行う。その演算結果として、ヘテロダインの原理を用いて、その和と差の周波数成分のプローブ信号が出力される。
【0040】
(位相計25)
位相計25は、参照信号及び反射信号から電気的位相差を計測するように構成される。具体的には、位相計25は、参照信号と、ダブルバランスドミキサ24で参照信号及び反射信号に基づいて出力されたプローブ信号の位相差を表す電圧信号を生成する。
【0041】
(距離計測)
光源11が光コム光源でない場合は、例えば、光変調法の原理を用いて計測装置2は、光源11から試料Sの表面における一点までの距離を算出し、試料Sの形状を計測する。具体的には、光源11が出力する光源光に変調をかけて、第1検出器221が、参照光を検出した時間と、第2検出器222が反射光を検出した時間の時間的位相差を検出、比較して距離が算出される。光源11が光コム光源の場合は、計測装置2は、上述したように、参照光と反射光の電気信号から電気的位相差を検出し、これに基づいて光源11から試料Sの表面における一点までの距離を算出し、試料Sの形状を計測する。これらの距離の測定方法は一例であって、限定されない。
【0042】
1.17 情報処理装置3
図3は、情報処理装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置3は、通信手段31と、記憶手段32と、制御手段33と、表示装置4と、入力手段34とを有し、これらの構成要素が情報処理装置3の内部において通信バス30を介して電気的に接続されている。以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0043】
(通信手段31)
通信手段31は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。即ち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。特に、光源11と、第1受光素子13と、第2受光素子14と、ガルバノミラー17と、XYステージ6とは、所定の通信規格において通信可能に構成されることが好ましい。
【0044】
通信手段31は、第1受光素子13、第2受光素子14及び光検出器22が検出した電気信号を受信するように構成される。また、通信手段31は光源11に光源光を出力させるためのデータを送信するように構成される。このような構成により、蛍光顕微鏡1が、試料Sを観察した画像を表示装置4に表示させ、計測装置2が光源11から試料Sの表面における一点までの距離を算出し、試料Sの形状を計測するように構成される。
【0045】
(記憶手段32)
記憶手段32は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。特に、記憶手段32は、ガルバノミラー17が照射した試料Sの位置座標、XYステージ6の位置座標、及び計測装置2が検出した試料SのZ軸方向の高さデータを記憶する。また、記憶手段32は、ミラー制御プログラム、ステージ制御プログラム、表示制御プログラム、試料特定プログラム、追跡プログラム、保存プログラムを記憶する。記憶手段32は、これ以外にも制御手段33によって実行される情報処理装置3に係る種々のプログラム等を記憶している。
【0046】
(制御手段33)
制御手段33は、情報処理装置3に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御手段33は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御手段33は、記憶手段32に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、情報処理装置3に係る種々の機能を実現する。具体的にはミラー制御機能、ステージ制御機能、表示制御機能、試料特定機能、追跡機能、保存機能が該当する。即ち、ソフトウェア(記憶手段32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御手段33)によって具体的に実現されることで、ミラー制御部331、ステージ制御部332、表示制御部333、試料特定部334、追跡部335、及び保存部336として実行されうる。なお、図4においては、単一の制御手段33として表記されているが、実際はこれに限るものではなく、機能ごとに複数の制御手段33を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。以下、ミラー制御部331、ステージ制御部332、表示制御部333、試料特定部334、追跡部335、及び保存部336については第2節においてさらに詳述する。
【0047】
(入力手段34)
入力手段34は、オペレータからの各種指示や情報入力を受け付ける。入力手段34は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、キーボード等の入力デバイスである。また、入力手段34は、グラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)を用いることにしてもよい。ユーザーは、観察対象の試料Sの計測範囲Aを入力手段34に入力することができる。また、ユーザーは、観察対象の試料Sの追跡範囲Cを入力手段34に入力することができる。
【0048】
1.18 表示装置4
第1受光素子13が蛍光を受光し、これを電気信号に変換し、さらに表示装置4は、この電気信号を光信号に変換し、これをユーザーが視認可能に表示するように構成される。その結果、ユーザーは、観察対象の試料Sの表面を、表示装置4を通じて観察することができる。表示装置4は、例えば、蛍光顕微鏡1の筐体に含まれてもよいし、外付けされてもよい。表示装置4は、ユーザーが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。これは例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示デバイスを、蛍光顕微鏡1の種類に応じて使い分けて実施することが好ましい。当該表示デバイスは、制御手段33における表示制御部の制御信号に応答して、表示画面を選択的に表示しうる。例えば、試料Sの三次元形状をユーザーが視認可能に表示することができる。
【0049】
1.19 試料台5
試料台5は、試料Sを載置し、対物レンズ1cの直下に配置される。試料台5は、固定されても良く、XYステージ6に載置されて、二次元的に移動可能にされてもよい。蛍光顕微鏡1を利用する目的に応じて、ユーザーは、試料台5を固定しても、移動可能にしてよい。
【0050】
1.20 XYステージ6
XYステージ6は、試料Sを載せた試料台5を載置し、二次元的に駆動可能に構成される。XYステージ6は、X軸(左右)方向とY軸(縦)方向の指示した位置に動く。このためXYステージ6は、XY平面上において試料台5に載置された試料Sを位置決めするための装置である。XYステージ6は、試料SをX方向に移動させるためのモーター(不図示)及び送りネジ(不図示)と、試料SをY方向に移動させるためのモーター(不図示)及び送りネジ(不図示)とが付設されている。モーターの回転運動は、送りネジを介して直線運動に変換される。そのためモーター(不図示)を制御することで、XYステージ6のXY方向の直線運動が制御される。ユーザーは、リニアモーターを用いて、XYステージ6を非接触で駆動及び制御させてもよい。後述する制御手段33のステージ制御部332は、XYステージ6の移動方向を制御するように構成される。
【0051】
XYステージ6をZ方向に移動させるためのモーター(不図示)及び送りネジ(不図示)を付設させてもよい。計測装置2が試料SのZ軸方向の高さを計測しているときに、試料Sの高さに応じてワーキングディスタンスに入るように、XYステージ6のZ方向の直線運動も併せて制御されてもよい。
【0052】
2.機能構成
第2節では、本実施形態の機能構成について説明する。図4は、情報処理装置3における制御手段33が担う機能を示す機能ブロック図である。前述の制御手段33に関して、情報処理装置3は、ミラー制御部331と、ステージ制御部332と、表示制御部333と、試料特定部334と、追跡部335と、保存部336とを備える。以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0053】
2.1 ミラー制御部331
ミラー制御部331は、光源光を試料Sの所望箇所に照射するために、ガルバノミラー17反射方向を制御するように構成される。具体的には、試料Sの各位置でのZ軸方向の高さを計測するために、ミラー制御部331は、光源光を指定された試料Sの表面に照射するために、ガルバノミラー17aが搭載されているX軸を中心に回転するモーター(不図示)の回転角度と、ガルバノミラー17bが搭載されているY軸を中心に回転するモーター(不図示)の回転角度とを制御する。ガルバノミラー17aとガルバノミラー17bの反射角度を連動して制御することで、光源光が指定された試料Sの表面に照射される。
【0054】
光源光が走査される範囲、速度、及び走査される試料台5の位置等のパラメータは、予め記憶手段32に記憶されている。ミラー制御部331が、これらのパラメータを読み込み、ガルバノミラー17aとガルバノミラー17bの反射角度を連動して制御する。
【0055】
2.2 ステージ制御部332
ステージ制御部は、光源光を試料Sの所望箇所に照射するために、XYステージ6の移動方向を制御するように構成される。光源光を試料Sの所望箇所に照射するために、ガルバノミラー17を使用する代わりに、XYステージ6が使用されてもよい。具体的には、試料Sの各位置でのZ軸方向の高さを計測するために、ステージ制御部332は、光源光が指定された試料Sの表面に照射されるように、試料台5を搭載しているX方向に移動させるための送りネジ(不図示)とY方向に移動させるための送りネジ(不図示)を駆動させる。各送りネジは各モーター(不図示)によって駆動されるため、ステージ制御部332は、各モーター(不図示)の回転角度を制御する。このように、XYステージ6に付設されているX方向に移動させるための送りネジ(不図示)とX方向に移動させるための送りネジ(不図示)を連動して制御することで、光源光が指定された試料Sの表面に照射される。
【0056】
光源光が走査される範囲、走査される試料台5のXYステージ6上の位置座標、XYステージ6の移動速度、移動量等のパラメータは、予め記憶手段32に記憶されている。ステージ制御部332が、これらのパラメータを読み込み、XYステージ6に付設されているX方向に移動させるための送りネジ(不図示)とX方向に移動させるための送りネジ(不図示)を連動して制御する
【0057】
2.3 表示制御部333
表示制御部333は、ソフトウェア(記憶手段32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御手段33)によって具体的に実現されているものである。表示制御部333は、試料Sを観察中に、試料Sから発せられた蛍光を最終的に光信号に変換し、これをユーザーが視認可能に表示するように構成される。これに加え、表示制御部333は、計測装置2が計測した試料Sの各座標点でのZ軸方向の高さデータ及びその座標点に基づいて生成された試料Sの三次元データをユーザーが視認可能に表示するよう構成される。
【0058】
2.4 試料特定部334
試料特定部334は、試料Sの中で、計測範囲A内にある試料Sの位置情報を特定するように構成される。図5は、試料Sの中で、特定された計測範囲A及び計測ブロックBの一例である。計測ブロックBは、計測のために光源光が走査される最小範囲である。計測範囲Aは、予めユーザーによって指定された試料Sの形状を計測する範囲である。換言すると、計測装置2が、光源11から試料Sの表面における一点までの距離を計測する範囲である。試料特定部334が、指定された計測範囲に限定して試料Sの三次元形状を計測することで、ユーザーは迅速に試料Sの立体的な形状を把握することができるため、本機能は、試料Sの分析、解析に有用である。
【0059】
図5に示されたように、ユーザーは、計測範囲Aを、計測範囲A1及び計測範囲A2と複数指定してもよい。複数指定した場合は、それぞれの範囲内の計測ブロックB1及び計測ブロックB2の範囲で、計測のために第2光が走査される。また、ユーザーは、計測範囲Aの範囲と計測ブロックBの範囲を一致させてもよい。少なくとも計測範囲Aは、計測ブロックBよりも広い範囲であることが好ましい。
【0060】
試料特定部334は、ユーザーが入力した計測範囲Aを、ガルバノミラー17及びXYステージ6が制御可能なデータに変換する。変換されたデータに基づいて、ミラー制御部331及びステージ制御部332は、光源11が出力した光源光を、試料Sの計測範囲A全域にわたって走査させてもよいが、計測範囲A内の特定の部位のみを走査させてもよい。特定の部位は、例えば、ユーザーが特定した色を有している試料Sの部位である。どのように計測範囲Aを指定しても、計測ブロックB単位で、光源11が出力した第1光は走査させられる。試料特定部334は、画像処理を行い、特定の部位のピクセル座標を特定し、ガルバノミラー17又はXYステージ6を移動させる方向及び移動量を算出する。これらの移動に関するデータは、ミラー制御部331及びステージ制御部332の動作に使用される。
【0061】
2.5 追跡部335
追跡部335は、離散的な時間間隔で、追跡範囲C内にある試料Sを三次元計測するように構成される。図6は、試料Sの中で、特定された追跡範囲C及び追跡ブロックDの一例である。追跡ブロックDは、計測ブロックBと同様に計測のために光源光が走査される最小範囲である。追跡範囲Cは、予めユーザーによって指定された試料Sを追跡する範囲である。換言すると、規則的又は不規則的な時間間隔で、追跡範囲C内にある試料Sを三次元的に計測することで、ユーザーは、試料Sを三次元動画として捉えることができる。
【0062】
ユーザーは、追跡範囲Cを複数指定してもよい。また、ユーザーは、追跡範囲Cの範囲と追跡ブロックDの範囲を一致させてもよい。少なくとも追跡範囲Cは、追跡ブロックDよりも広い範囲であることが好ましい。
【0063】
追跡部335は、ユーザーが入力した追席範囲を、ガルバノミラー17及びXYステージ6が制御可能なデータに変換する。変換されたデータに基づいて、ミラー制御部331及びステージ制御部332は、光源11が出力した光源光を、試料Sの追席範囲全域にわたって離散的な時間間隔で走査させてもよいが、追跡範囲C内の特定の部位のみを離散的な時間間隔で走査させてもよい。特定の部位は、例えば、ユーザーが特定した色を有している試料Sの部位である。どのように追跡範囲Cを定義しても、追跡ブロックD単位で、光源11が出力した第1光は走査させられる。追跡部335は、離散的な時間間隔で画像処理を行い、特定の部位のピクセル座標を特定し、ガルバノミラー17又はXYステージ6を移動させる方向及び移動量を算出する。これらの移動に関するデータは、ミラー制御部331及びステージ制御部332の動作に使用される。
【0064】
2.6 保存部336
保存部336は、光源光が照射された試料SのXY座標値と、計測装置が計測したXY座標値における試料SのZ軸方向の高さとを記憶手段32に記憶させて保存する。保存部336は、計測装置2が計測した試料SのZ軸方向の高さと、そのXY座標値とを記憶手段32に保存する。保存にあたり、保存部336は、計測した時間も併せて保存してもよい。ユーザーは、試料Sの動的な動きを把握することができる。他にも、保存部336は、試料Sの三次元計測をしている間の温度、湿度等の環境データも保存してもよい。具体的には、ユーザーは、より適切に生きた細胞の状態を分析することができる。
【0065】
3.Z軸方向の高さを計測するためのXYステージ6の制御方法
第3節では、第1節で説明した蛍光顕微鏡1を用いた試料SのZ軸方向の高さを計測するためのXYステージ6の制御方法について説明する。図7は、実施形態に係る試料SのZ軸方向の高さを計測する一例である。図7に示したように、計測装置2は、試料SのZ軸方向の高さを大まかに計測し、次に細かく計測する。これは、試料Sが細胞の場合、生きた細胞と死んだ細胞では、細胞のZ軸方向の高さが異なるため、ユーザーの計測したい細胞は、最初にスクリーニングされる。具体的には、生きた細胞は死んだ細胞よりもZ軸方向の高さが高いため、生きた細胞の三次元形状を計測する場合、大まかに細胞の高さを計測し、所定の高さの細胞のみ細かく高さを計測する。このようにして、無駄なく高速に、蛍光顕微鏡1は、計測対象の生きた細胞を三次元計測することができる。
【0066】
ステージ制御部332は、XYステージ6をX方向、Y方向に所定の移動量で移動させて、計測装置2は、試料SのZ軸方向の高さを計測する。ここでは、計測装置2は、最初に大まかな計測をする。次に必要があれば、ステージ制御部332は、XYステージ6の移動開始点を所定の移動量以下で移動させて、さらにZ軸方向の高さを計測する。同様に、ステージ制御部332は、XYステージ6の移動開始点を所定の移動量以下で移動させて、Z軸方向の高さを計測する。これを繰り返すことで、計測装置2は、試料Sを精度良く三次元計測することができる。
【0067】
上述した方法に加えて、ステージ制御部332は、XYステージ6の移動開始点を固定して、移動量を順次小さくして、試料SのZ軸方向の高さを細かく計測をしてもよい。このようにして、計測装置2は、試料Sを精度良く三次元計測することができる。
【0068】
4.三次元形状の計測方法
第4節では、第1節で説明した計測装置2を用いた三次元形状の計測方法について説明する。三次元計測方法は、配置ステップと、特定ステップと、照射ステップと、光検出ステップと、計測ステップとを備える。配置ステップでは、計測対象の試料Sを試料台5に配置する。特定ステップでは、試料Sの中で、形状を計測する計測範囲Aを特定する。照射ステップでは、光源11から光源光を計測範囲Aの所望箇所に照射する。光検出ステップでは、所望箇所における散乱光を検出する。計測ステップでは、光源11と散乱光に基づいて、光源11と計測範囲Aの表面における一点との距離を計測する。具体的に、この計測方法について説明する。
【0069】
図8は、実施形態に係る計測対象の試料Sの三次元形状の計測方法のアクティビティ図である。以下、本図に沿って説明する。
【0070】
(アクティビティA01)
ユーザーは、計測対象の試料Sを試料台5に配置する。
(アクティビティA02)
試料特定部334は、ユーザーが指定した計測範囲Aを特定する。
(アクティビティA03)
光源11は、光源光を出力し、これを計測範囲Aの所望箇所に照射する。
(アクティビティA04)
計測装置2に備わる光検出器22は、光源光と光源光に重ね合わされた所望箇所における散乱光を検出する。
(アクティビティA05)
計測装置2は、光源光と散乱光に基づいて、光源11と計測範囲Aの表面における一点との距離を計測する。
【0071】
5.その他
下記のような態様によって前述の実施形態を実施してもよい。
【0072】
(1)追跡部335は、計測対象の試料Sの表面の一点の高さが変化したとき、又は、試料Sの表面積が変化したときに、試料Sの三次元形状の計測をしてもよい。離散的な時間の代わりに、変化点を検出して試料Sの三次元形状の計測することで、試料Sの三次元形状の変化の連続性が担保される。
(2)試料Sが細胞である場合、追跡部335が計測対象の試料Sの表面の一点の高さを、微小時間で計測することで、追跡部335は、細胞の振動モードを計測することができる。
(3)保存部336は、試料SのXY座標値と、計測装置2が計測したXY座標値における試料のZ軸方向の高さに加えて、温度、湿度などの環境データを併せて記憶手段32に記憶させて保存してもよい。ユーザーは、試料Sの分析にあたり、より精度のより分析をすることができる。
(4)コンピュータを蛍光顕微鏡の各部として機能させるプログラムが提供されてもよい。
【0073】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記蛍光顕微鏡において、励起フィルターをさらに備え、前記光源は、前記光源光を出力し、これを前記励起フィルターに対して照射するように構成され、前記励起フィルターは、前記光源光から前記試料の励起に必要な波長を有する成分を抽出し、前記光源光のうちの前記抽出された成分が前記試料の表面に対して照射される、もの。
前記蛍光顕微鏡において、第1ビームスプリッタと計測装置とをさらに備え、前記第1ビームスプリッタは、前記光源光を所定の分割比で2つに分割し、前記2つのうちの一方を反射させ、他方を透過させ、前記散乱光を、反射された前記光源光と同じ方向に反射させ、前記計測装置は、反射された前記光源光と前記散乱光に基づいて、前記光源から前記試料の表面における一点までの距離を算出し、前記試料の形状を計測するように構成される、もの。
前記蛍光顕微鏡において、前記光源は、光コム光源であり、前記計測装置は、第2ビームスプリッタと、光検出器と、位相計とを備え、前記第2ビームスプリッタは、入射した光を参照光と反射光に分割するように構成され、ここで、前記参照光は、前記光源光であり、前記反射光は、前記散乱光であり、前記光検出器は、前記参照光及び前記反射光を電気的に参照信号及び反射信号に変換するように構成され、前記位相計は、前記参照信号及び前記反射信号から電気的位相差を計測するように構成される、もの。
前記蛍光顕微鏡において、表示装置をさらに備え、前記第1受光素子は、前記蛍光を受光し、これを電気信号に変換するように構成され、前記表示装置は、前記電気信号を光信号に変換し、これをユーザーが視認可能に表示するように構成される、もの。
前記蛍光顕微鏡において、ガルバノミラーと、ミラー制御部とをさらに備え、前記ガルバノミラーは、鏡面を回転駆動可能に構成され、前記鏡面を介して前記光源光を反射させ、前記ミラー制御部は、前記光源光を前記試料の所望箇所に照射するために、前記ガルバノミラーの反射方向を制御するように構成される、もの。
前記蛍光顕微鏡において、XYステージと、ステージ制御部とをさらに備え、前記XYステージは、前記試料を載せた試料台を載置し、二次元的に駆動可能に構成され、前記ステージ制御部は、前記光源光を前記試料の所望箇所に照射するために、前記XYステージの移動方向を制御するように構成される、もの。
前記蛍光顕微鏡において、試料特定部をさらに備え、前記試料特定部は、前記試料の中で、計測範囲内にある前記試料の位置情報を特定するように構成され、ここで前記計測範囲は、予めユーザーによって指定された前記試料の形状を計測する範囲である、もの。
前記蛍光顕微鏡において、保存部をさらに備え、前記保存部は、前記光源光が照射された前記試料のXY座標値と、前記XY座標値における前記試料のZ軸方向の高さとを記憶手段に記憶させて保存する、もの。
前記蛍光顕微鏡において、追跡部をさらに備え、前記追跡部は、離散的な時間間隔で、追跡範囲内にある前記試料を三次元計測するように構成され、ここで前記追跡範囲は、予め前記ユーザーによって指定された前記試料を追跡する範囲である、もの。
プログラムであって、コンピュータを前記蛍光顕微鏡の各部として機能させる、もの。
蛍光顕微鏡を用いて試料の三次元計測をする方法であって、配置ステップと、特定ステップと、照射ステップと、光検出ステップと、計測ステップとを備え、前記配置ステップでは、計測対象の前記試料を試料台に配置し、前記特定ステップでは、前記試料の中で、形状を計測する計測範囲を特定し、前記照射ステップでは、光源から光源光を前記計測範囲の所望箇所に照射し、前記光検出ステップでは、前記所望箇所における散乱光を検出し、前記計測ステップでは、前記光源光と前記散乱光に基づいて、前記光源と前記計測範囲の表面における一点との距離を計測する、方法。
もちろん、この限りではない。
【0074】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1 :蛍光顕微鏡
11 :光源
12 :偏光分離素子
13 :第1受光素子
14 :第2受光素子
15 :励起フィルター
16 :第1ビームスプリッタ
17 :ガルバノミラー
17a :ガルバノミラー
17b :ガルバノミラー
18 :コリメータレンズ
19 :半波長板
1a :1/4波長板
1b :吸収フィルター
1c :対物レンズ
1d :第1レンズ
1e :第2レンズ
2 :計測装置
21 :第2ビームスプリッタ
22 :光検出器
221 :第1検出器
222 :第2検出器
23 :バンドパスフィルタ
231 :第1バンドパスフィルタ
232 :第2バンドパスフィルタ
233 :第3バンドパスフィルタ
24 :ダブルバランスドミキサ
25 :位相計
26 :集光レンズ
261 :第1集光レンズ
262 :第2集光レンズ
3 :情報処理装置
30 :通信バス
31 :通信手段
32 :記憶手段
33 :制御手段
331 :ミラー制御部
332 :ステージ制御部
333 :表示制御部
334 :試料特定部
335 :追跡部
336 :保存部
34 :入力手段
4 :表示装置
5 :試料台
6 :XYステージ
A :計測範囲
A1 :計測範囲
A2 :計測範囲
B :計測ブロック
B1 :計測ブロック
B2 :計測ブロック
C :追跡範囲
D :追跡ブロック
S :試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8