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特開2022-36612放射線検出器モジュール、放射線検出器、及び放射線撮像装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036612
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】放射線検出器モジュール、放射線検出器、及び放射線撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20220301BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
A61B6/00 300S
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140912
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 達彦
(72)【発明者】
【氏名】石津 崇章
(72)【発明者】
【氏名】小野内 雅文
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188CC22
2G188DD13
2G188DD16
2G188DD30
2G188DD35
2G188DD42
2G188DD45
4C093AA22
4C093CA32
4C093EB12
4C093EB16
4C093EB30
(57)【要約】
【課題】体軸方向の長さ抑制しながら、列数の増加を図ることを可能とする放射線検出器、及び放射線撮像装置を提供する。
【解決手段】シンチレータ108とフォトダイオード109およびAD変換チップ200を搭載する検出器基板201と、検出器基板への電源供給および検出器基板のAD変換部(AFE)の制御を行う制御基板202を備え、2つの基板をスタッキングコネクタ203により2段構造となるように接続することで、体軸方向の長さを抑制する放射線検出器を構成する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から入射するX線を光に変換するシンチレータと、変換された前記光をアナログ信号に変換するフォトダイオードと、前記アナログ信号を増幅し、デジタル信号へと変換するAD変換チップを搭載する検出器基板と、
前記検出器基板への電源供給、および前記AD変換チップのAD変換部(AFE)の制御を行う制御基板と、を備え、
2つの基板をスタッキングコネクタにより2段構造となるように接続し、基板間に支持構造物を備える、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の放射線検出器モジュールであって、
前記AD変換チップと前記スタッキングコネクタは体軸方向に分割して配置されている、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項3】
請求項2記載の放射線検出器モジュールであって、
前記検出器基板と、前記制御基板を接続する前記スタッキングコネクタにフローティングコネクタを使用する、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項4】
請求項3記載の放射線検出器モジュールであって、
前記支持構造物に前記検出器基板と前記制御基板を接続するスタッキングコネクタを通す貫通穴を有する、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項5】
請求項4記載の放射線検出器モジュールであって、
前記シンチレータと前記フォトダイオードをX線照射野内に配置し、前記AD変換チップおよび前記スタッキングコネクタは、X線照射野外に配置される、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項6】
請求項5記載の放射線検出器モジュールであって、
前記フォトダイオードと前記AD変換チップの間にX線遮蔽物を配置し、当該X線遮蔽物が散乱線除去用コリメータ板を取付ける役割を備える、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項7】
請求項6記載の放射線検出器モジュールであって、
前記検出器基板と前記支持構造物の取付面積を縮小し、前記検出器基板と前記支持構造物の平坦度の違いによる前記検出器基板の割れを防ぐ、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項8】
請求項7記載の放射線検出器モジュールであって、
前記検出器基板と前記支持構造物の固定位置と前記検出器基板と前記X線遮蔽物の固定位置が体軸方向で同一である、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項9】
請求項8記載の放射線検出器モジュールであって、
前記検出器基板と前記支持構造物の固定ねじとの干渉を避けるための前記X線遮蔽物のザグリ穴に、硬化型のX線遮蔽物を埋め込む、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項10】
請求項9記載の放射線検出器モジュールであって、
前記AD変換チップが熱伝導材を介して前記支持構造物と結合する、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項11】
請求項10記載の放射線検出器モジュールであって、
前記支持構造物に、ヒートシンクが結合される、
ことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項12】
前記支持構造物が、複数の請求項11記載の放射線検出器モジュールを取り付ける為の放射線検出器筐体部に熱結合した、
ことを特徴とする放射線検出器。
【請求項13】
請求項12記載の放射線検出器であって、
前記AD変換チップが熱伝導材を介して前記放射線検出器筐体部に結合される、
ことを特徴とする放射線検出器。
【請求項14】
内部に請求項13記載の放射線検出器を備えるスキャナと、
前記放射線検出器の出力信号を処理する信号処理部と、
前記信号処理部で処理された前記出力信号から画像信号を生成する画像生成部と、
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項15】
請求項14記載の放射線撮像装置であって、
前記信号処理部は、前記スキャナの制御を行う、
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出技術に係り、放射線検出器モジュール、放射線検出器、放射線検出器システムまたはその放射線検出器を備えた放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、短時間で広範囲の撮影が可能であるマルチスライス型の放射線検出器が主流となっている。このマルチライス型の放射線検出器において、列数の増加が要求されているが、一方で、列数が増えるにつれてフォトダイオードからのアナログ信号の取り出しが困難となる問題があるため、特許文献1には、シンチレータ、フォトダイオードおよびAD変換チップを同一基板上に搭載し、フォトダイオードからAD変換部であるAFE(Analog Front End)へのアナログ信号線の接続を容易にすることで、列数の増加を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-66149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病院施設おいて、放射線撮像装置であるX線CT(Computed Tomography)装置のサイズが大きくなると、CT室への設置が問題となる場合がある。放射線検出器モジュールにおいて、シンチレータ、フォトダイオードおよびAFEを同一基板上に搭載し、さらにAFEへの電源供給とAFE制御機能も同一基板内に追加すると、基板が大型化し、結果として、放射線検出器の体軸方向の長さが問題となる。短時間で広範囲の撮影が可能であるマルチスライス型放射線検出器のさらなる列数増加が求められる一方で、放射線検出器の体軸方向の長さ抑制が課題となっている。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、体軸方向の長さ抑制しながら、列数の増加を図ることを可能とする放射線検出器モジュール、放射線検出器、及び放射線撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明においては、表面側から入射するX線を光に変換するシンチレータと、変換された光をアナログ信号に変換するフォトダイオードと、アナログ信号を増幅し、デジタル信号へと変換するAD変換チップを搭載する検出器基板と、検出器基板への電源供給、およびAD変換チップのAD変換部(AFE)の制御を行う制御基板と、を備え、
2つの基板をスタッキングコネクタにより2段構造となるように接続し、基板間に支持構造物を備える放射線検出器モジュール、放射線検出器、及び放射線撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、放射線検出器の列数を増やしつつ、体軸方向の長さを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】放射線撮影装置のガントリを示す図である。
図2A】実施例1にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図2B】実施例1にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図2C】実施例1にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図2D】実施例1にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図2E】実施例1にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図3A】実施例1の別な変形例にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図3B】実施例1の別な変形例にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図4A】実施例1の別な変形例にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図4B】実施例1の別な変形例にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図4C】実施例1の別な変形例にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図5A】実施例1の別な変形例にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図5B】実施例1の別な変形例にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図5C】実施例1の別な変形例にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図5D】実施例1の別な変形例にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図である。
図6A】実施例2にかかる放射線検出器モジュールの構成を示す図、検出器基板上のスタッキングコネクタの位置公差を示す図である。
図6B】実施例2にかかる制御基板上のスタッキングコネクタの位置公差を示す図である。
図6C】実施例2にかかる支持構造物の高さ交差を示す図である。
図7】実施例3にかかるX線照射野外にAD変換チップとスタッキングコネクタを配置する例を示す図である。
図8A】実施例3にかかるX線遮蔽物がコリメータ板を支持する例を示す図である。
図8B】実施例3にかかるX線遮蔽物にコリメータ板を支持するための溝がある例を示す図である。
図9】検出器基板と制御基板の間にX線遮蔽物を配置する例を示す図である。
図10A】実施例4にかかる検出器基板と支持構造物を固定する例を示す図である。
図10B】実施例4にかかる検出器基板と支持構造物を固定する例を示す図である。
図11A】実施例4にかかる検出器基板とX線遮蔽物を固定する例を示す図である。
図11B】実施例4にかかる検出器基板とX線遮蔽物を固定する例を示す図である。
図11C】実施例4にかかる検出器基板とX線遮蔽物を固定する例を示す図である。
図11D】実施例4にかかる検出器基板とX線遮蔽物を固定する例を示す図である。
図11E】実施例4にかかる検出器基板とX線遮蔽物を固定する例を示す図である。
図12】実施例4にかかるX線遮蔽物のザグリ穴に硬化型のX線遮蔽物を埋め込む例を示す図である。
図13】実施例5にかかる支持構造物とAD変換チップを熱伝導材を介して結合する例を示す図である。
図14】実施例5にかかるヒートシンクが支持構造物に結合される例を示す図である。
図15A】実施例5にかかる射放線検出器モジュールと検出器筐体部と冷却用ファンの構成例を示す図である。
図15B】実施例5にかかる検出器筐体部と支持構造物が固定されている例を示す図である。
図15C】実施例5にかかる検出器筐体部と支持構造物が固定されている例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して順次説明する。
本発明に関わる放射線撮像装置は、図1に示すように、X線を照射するX線源100と照射されたX線を検出する放射線検出器101と、放射線検出器101で検出された出力信号に対して補正等の処理を行うととともに、スキャナなどの装置の制御を行う信号処理部102と、補正後の信号を用いて被写体106の画像を生成する画像生成部103とを備える。X線源100と放射線検出器101は互いに対向するように回転盤104に固定され、寝台105上の被写体106の周りを回転するように構成される。また、X線源100、放射線検出器101および回転盤104を含めスキャナ111ともいう。
【0010】
放射線検出器101は複数の放射線検出器モジュール107を搭載し、それぞれの放射線検出器モジュール107は、それぞれが焦点方向(Y方向)を向くように取り付けられている。放射線検出器モジュール107はX線を光に変換するシンチレータ108、光をアナログ電気信号に変換するフォトダイオード109およびアナログ電気信号を増幅し、デジタル信号に変換するAD変換部であるAFE110で構成される。
【実施例0011】
次に、実施例1に係る放射線検出器について、図2A図2Eを用いて説明する。
本実施例の放射線検出器によると、X線を光に変換するシンチレータ108、光をアナログ電気信号に変換するフォトダイオード109およびアナログ電気信号を増幅し、デジタル信号に変換する役割を担うAD変換チップ200が複数搭載される検出器基板201とAFEへの電源供給および制御を行う制御基板202と2つの基板を接続するスタッキングコネクタ203および検出器基板201と制御基板202の基板間に両基板を固定する為の支持構造物204によって放射線検出器モジュール107は構成される。
【0012】
放射線検出器モジュール107を検出器基板201と制御基板202に分割し、その2つの基板をY軸方向の2段構造にすることで、体軸方向(Z方向)の長さを抑制することが可能となる。また、両基板を固定する支持構造物204には、例えばアルムニウムなどの弾性係数の大きい金属が使用されることで、検出器基板201と制御基板202の剛性を高めることが出来る。更に、支持構造物204は、検出器基板から発生する熱を吸収し、外部へ放出する。
【0013】
ここで、フォトダイオード109から出力されたアナログ信号は、AD変換チップ200にてデジタル信号へ変換され、そのデジタル信号はスタッキングコネクタ203を通して制御基板202へ転送されるため、検出器基板201上では、フォトダイオード109とスタッキングコネクタ203の間にAD変換チップ200が配置され、検出器基板の固定ねじ205は、フォトダイオードの外側であれば良い。
【0014】
例えば,図2A図2Bで示すように,Z軸方向へ固定ねじ205-AD変換チップ200-フォトダイオード109-AD変換チップ200-固定ねじ205の順で配置しても良いし,AD変換チップ200-固定ねじ205-フォトダイオード109-固定ねじ205-AD変換チップ200と配置しても良い。前者の配置では,ネジ穴によってアナログ配線領域が阻害されない効果がある。後者の配置では,検出器のZ軸寸法を短くできる効果がある。また、制御基板202は、ねじ206によって支持構造物204に固定される。
【0015】
さらに、図2Bに示すように、フォトダイオード109からのアナログ信号207を体軸方向(Z方向)の両側から取り出す場合、検出器基板201上のAD変換チップ200および検出器基板201と制御基板202を接続するスタッキングコネクタ203は体軸方向(Z方向)に分割して配置される。
【0016】
但し、図2D図2Eに示すように、フォトダイオードからのアナログ信号207を体軸方向(Z方向)の片側から取り出す場合、検出器基板上のAD変換チップ200および検出器基板201と制御基板202を接続するスタッキングコネクタ203は体軸方向(Z方向)に分割されず、片側に配置される。
【0017】
図3Aに、AD変換チップ200が検出器基板201の裏面に搭載される例を示す。なお、本図の構成にあっては、検出器基板201の表面はフォトダイオード109が搭載される面となる。この場合、フォトダイオード109から出力されたアナログ電気信号は、検出器基板201の裏面に引き出され、AD変換チップ200へ接続される。
【0018】
また、図3Bに示すように、AD変換チップ200を検出器基板201の表面と裏面の両側に配置しても良い。検出器基板201の表面および裏面にAD変換チップ200を搭載することで、列数の増加等によるフォトダイオード109のチャンネル数の増大に対応することが可能となる。この場合も同様に、Z軸方向の配置順は固定ねじ205-AD変換チップ200-フォトダイオード109-AD変換チップ200-固定ねじ205であっても良いし,AD変換チップ200-固定ねじ205-フォトダイオード109-固定ねじ205-AD変換チップ200であっても良い。
【0019】
また、スタッキングコネクタ203の向きを変更しても良い。図4A図4B図4Cに、スタッキングコネクタ203の向きを変更した例を示す。スタッキングコネクタ203の向きを変更に伴い、支持構造物204の形状も変更される。この場合も同様に、Z軸方向の配置順は固定ねじ205-AD変換チップ200-フォトダイオード109-AD変換チップ200-固定ねじ205であっても良いし,AD変換チップ200-固定ねじ205-フォトダイオード109-固定ねじ205-AD変換チップ200であっても良い。
【0020】
また、図5A図5Dに示すように、支持構造物204がスタッキングコネクタ203を通すための貫通穴500を保持することも可能である。スタッキングコネクタ203を貫通穴500に通すことで、検出器基板201および制御基板203と支持構造物204の接触面積が増え、両基板の剛性をさらに高めることが可能となる。この場合も同様に、Z軸方向の配置順は固定ねじ205-AD変換チップ200-フォトダイオード109-AD変換チップ200-固定ねじ205であっても良いし,AD変換チップ200-固定ねじ205-フォトダイオード109-固定ねじ205-AD変換チップ200であっても良い。
【実施例0021】
実施例2の放射線検出器では、実施例1における検出器基板201と制御基板202を接続するスタッキングコネクタ203にフローティングコネクタを使用する。制御基板202には樹脂基板が用いられるが、検出器基板201は、列数の増加に伴う配線の高密度化とフォトダイオード搭載面の平坦度が求められる為、セラミック製の基板が用いられるが、セラミック製の基板は公差が大きく、その吸収が課題となる。
【0022】
図6A図6Cを用いて、本実施例の放射線検出器について説明する。検出器基板201は、列数の増加に伴い、配線が高密度となる為、セラミックス製の基板が用いられるが、セラミックス製の基板は交差が大きく、その吸収が課題となる。
【0023】
図6Aおよび図6Bに示すように、検出器基板201に実装されるコネクタの位置公差(ΔX1、ΔZ1)および(ΔX2、ΔZ2)、及び制御基板202に実装されるコネクタの位置公差(ΔX3、ΔZ3)および(ΔX4、ΔZ4)が発生する。
【0024】
また図6Cに示すように、支持構造物204の高さ公差(ΔY)が発生し、累積公差は(ΔX1+ΔX3,ΔY,ΔZ1+ΔZ3)および(ΔX2+ΔX4,ΔY,ΔZ2+ΔZ4)となり、この値が大きくなると、コネクタの接触不良を起こす可能性がある。ここで、本実施例では、検出器基板と制御基板を接続するスタッキングコネクタにフローティングコネクタを使用することにより、この累積公差を吸収し、コネクタ嵌合時のストレスを軽減させることが可能となる。
【実施例0025】
実施例3は、放射線検出器モジュールのX線遮蔽のための構造の実施例である。放射線検出器モジュールにおいて、X線センサ部はX線照射野内に配置する必要ある一方で、各電気部品はX線照射による部品故障を防ぐ必要である。そこで、図7に示すように、本実施例においては、X線センサ部である検出器基板201上のシンチレータ108およびフォトダイオード109をX線照射野700の内側に配置し、スタッキングコネクタ203およびAD変換チップ200をX線照射野の外側に配置することで電気部品の直接X線による故障を防ぐことが出来る。
【0026】
また、被写体によって各電気部品へ散乱されるX線も遮蔽する必要がある。フォトダイオード109とAD変換チップ200の間にX線遮蔽物800を配置し、散乱X線からAD変換チップ200を防ぐ例を図8Aに示す。図8Bは、X線遮蔽物にコリメータ板を支持するための溝がある例を示す。ここでX線遮蔽物800は、散乱線によるクロストークを低減させるため、チャンネル方向(X方向)に沿ってシンチレータ108上に配置されるコリメータ板801を支持するための複数の溝802を持つ。その為、X線遮蔽物800には、X線透過率が低く且つ、機械加工が容易な真鍮等の金属が使用される。
【0027】
さらに、検出器基板201上のシンチレータ108で吸収されず、透過したX線が制御基板204に照射されることを防ぐ必要がある。そこで、図9に検出器基板201と制御基板204の間にある支持構造物204にX線遮蔽物900を配置する例を示す。これにより、透過X線による制御基板202の故障を防ぐことが可能となる。
【実施例0028】
実施例4では、検出器基板201と支持構造物204およびX線遮蔽物800の取付構造および手順について説明する。まず、検出器基板201と支持構造物204を取り付ける。検出器基板201は、列数の増加に伴う配線の高密度化とフォトダイオード搭載面の平坦度が求められる為、セラミック製の基板が用いられるが、セラミック製の基板は堅く、割れやすい性質がある。ここで図10Aに示すように検出器基板201に反りがあり、取付面における検出器基板201と支持構造物204の平坦度が異なる場合、固定ねじ205により固定すると、セラミック製の検出器基板201が割れる可能性がある。そこで図10Bに示すように、検出器基板201と支持構造物204の接触面積を縮小することで、検出器基板201に反りがある場合であっても、検出器基板201の割れを防ぐことが可能である。
【0029】
次に、検出器基板201にX線遮蔽物800を取り付ける。図11Aに、検出器基板201の体軸方向の長さを抑制しつつ、検出器基板201、支持構造物204およびX線遮蔽物800を組み立てる例を示す。支持構造物204はX線遮蔽物800を固定する為の貫通穴1100を持ち、支持構造物204の背面側から固定ねじ1101を用いてX線遮蔽物800を検出器基板201に固定する。支持構造物204の背面側からX線遮蔽物800を固定する為、制御基板を取り付ける前に組み立てる必要がある。ここで体軸方向(Z方向)の長さを抑制するために、固定ねじ205による検出器基板201と支持構造物204の固定位置と固定ねじ1101による検出器基板201とX線遮蔽物800の固定位置が体軸方向(Z方向)に同一となる。これにより、図11Bに示すように、X線遮蔽物800は、固定ねじ205との干渉を避けるためのザグリ穴1102を持つ。前述と同様に、検出器基板201の割れを防ぐため、図11Cに示すように、検出器基板201とX線遮蔽物800の接触面積を可能な限り縮小してもよい。それに伴い、X線遮蔽物800の形状が変更される。また、図11D図11Eに示すように、固定ねじ205による検出器基板201と支持構造物204の固定位置と固定ねじ1101による検出器基板201とX線遮蔽物800の固定位置がX方向で逆になっても良い。さらに、体軸方向(Z方向)で対称に配置される2つの検出器基板201固定位置とX線遮蔽物800の固定位置について、図11B図11Eが混在しても良い。また、図12に示すように、固定ねじ205との干渉を避けるためのX線遮蔽物800のザグリ穴1102に硬化型のX線遮蔽物1200を埋め込むことで、AD変換チップへの散乱X線を遮蔽することが出来る。ここで、硬化型のX線遮蔽物には、タングステン等の粉末を接着剤に混在させたものが使用される。
【実施例0030】
実施例5について、AD変換チップ200の放熱の観点から放射線検出器モジュール107の構造および放射線検出器101の構造について説明する。図13に示すように、検出器基板201の背面に取り付けられたAD変換チップ200と支持構造物204を熱伝導材1300を介して熱接触させることで、AD変換チップ200の熱を支持構造物204が吸収し、外部へ放熱することが可能である。ここで、支持構造物204は、剛性が大きいという機械的性質だけでなく、熱伝導率が大きいアルミニウム等の金属が使用される。
【0031】
更に図14に示すように、支持構造物204にヒートシンク1400を結合することも可能である。熱容量を大きくするだけでなく、表面積の大きいヒートシンク1400を結合することで、支持構造物204が吸熱した熱をより外部へ放熱することが可能になる。
【0032】
また、図15A図15Cに示すように、放射線検出器101は複数の放射線検出器モジュール107が検出器筐体部1500に取り付けられている。ここで検出器モジュール107の取付面は、支持構造物204である。検出器基板201上のAD変換チップ200から発生した熱を吸収した支持構造物204が、温度制御された検出器筐体部1500に固定されることで、さらにAD変換チップ200の放熱効果を大きくすることが可能となる。さらに、検出器基板表面上のAD変換チップ200を熱伝導材1502を介して直接検出器筐体部1500に結合させることで、AD変換チップ200を冷却することも可能である。また、検出器筐体部1500に複数のファン1501を取り付け、検出器筐体部1500および支持構造物204およびヒートシンク1400を冷却することで、検出器基板上のAD変換チップ200の冷却を行うことが可能となる。ここで冷却方法は、空冷でなく水冷としても良い。
【0033】
本発明は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、さらに、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例、変形例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例に含まれる構成を追加・削除・置換することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 X線源
101 放射線検出器
102 信号処理部
103 画像生成部
104 回転盤
105 寝台
106 被写体
107 放射線検出器
108 シンチレータ
109 フォトダイオード
110 AFE
111 スキャナ
200 AD変換チップ
201 検出器基板
202 制御基板
203 スタッキングコネクタ
204 支持構造物
205、1101 固定ねじ
206 ねじ
207 アナログ信号
500、1100 貫通穴
800、900 X線遮蔽物
801 コリメータ板
802 溝
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C