(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036642
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】かつら
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
A41G3/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140954
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】520322554
【氏名又は名称】レオンカワールド シーオー エルティディ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【弁理士】
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】上田 昌彦
(57)【要約】
【課題】マスク着用による耳の痛みが起こらないかつらを提供する。
【解決手段】かつらベース1には、表側からマスクMの耳掛け部M2を引っ掛けられるようにマスク掛け部3を配置する。かつらベース1には、マスク掛け部3に覆い被さるように毛2を植設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつらベース(1)と、前記かつらベース(1)に植設された毛(2)とを備えるかつらにおいて、
前記かつらベース(1)は、表側からマスク(M)の耳掛け部(M2)を引っ掛けられるように配置されたマスク掛け部(3)を有し、
前記毛(2)は、前記マスク掛け部(3)に覆い被さるように配置されていることを特徴とするかつら。
【請求項2】
前記マスク掛け部(3)は、前記かつらベース(1)に取り付けられた基板(6)と、前記基板(6)から表側に突き出た柱(7)と、前記柱(7)から後側に延びるカンチレバー(8)とを有し、前記カンチレバー(8)は、後方に向かって前記かつらベース(1)に接近するように延びている請求項1に記載のかつら。
【請求項3】
前記マスク掛け部(3)の基板(6)は、前記柱(7)から前側に延びる部分を有し、かつ当該前側に延びる部分で当該柱(7)よりも上下両側に広がった形状である請求項2に記載のかつら。
【請求項4】
前記かつらベース(1)は、頭部に接触させる裏側ベース部(4)と、前記裏側ベース部(4)に対して表側に配置された表側ベース部(5)とを有し、
前記毛(2)は、前記表側ベース部(5)に植設されており、
前記マスク掛け部(3)の基板(6)は、前記裏側ベース部(4)と前記表側ベース部(5)との間に配置されている請求項2又は3に記載のかつら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体の頭部に装着されるかつらに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かつらベースに毛を植設したかつらが利用されている。かつらベースには、頭部にかつらベースを装着するための補助具、例えば、頭部にかつらベースの周縁部を締め付けるための調整ベルト、頭部に残る毛を挟むためのクリップ等が設けられている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-17102号公報
【特許文献2】特開2004-353126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新型コロナウィルス(covid-19)の流行に伴い、日常生活は一変し、外出時のマスク装着が強く要請される社会になっている。長時間、マスクの耳掛け部で耳が引っ張られると、耳の痛みに悩むことがある。この悩みは、かつら装着者にも起こり得る。
【0005】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、マスク着用による耳の痛みが起こらないかつらを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、この発明は、かつらベースと、前記かつらベースに植設された毛とを備えるかつらにおいて、前記かつらベースは、表側からマスクの耳掛け部を引っ掛けられるように配置されたマスク掛け部を有し、前記毛は、前記マスク掛け部に覆い被さるように配置されている構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、上記構成の採用により、かつらベースのマスク掛け部にマスクの耳掛け部を引っ掛け、かつらベースに植設された毛をマスク掛け部に覆い被せてマスク掛け部をかつら装着時の外観上、目立ちにくくすることが可能なため、マスク着用による耳の痛みが起こらないかつらを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施形態に係るかつらの装着者がマスクを着用した様子を示す左側面図
【
図2】(a)は実施形態に係るマスク掛け部の正面図、(b)は前記(a)に示すマスク掛け部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の一例としての実施形態に係るかつらを添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1に示すかつらは、かつらベース1と、かつらベース1に植設された毛2とを備える全かつらとして構成されている。かつら装着者は、口当て部M1と、左右一対に配置された環状のマスク掛け部M2とを有するマスクMを着用している。
【0011】
かつらベース1は、頭部に被るキャップ状になっている。かつらベース1の下端側の周縁部は、かつらベース1の周縁部に配置された調整ベルト(図示省略)を用いて頭部に締め付けることができるようになっている。
【0012】
かつらベース1には、
図2に示すようなマスク掛け部3が配置されている。マスク掛け部3は、かつらベース1を頭部に装着したとき、頭部の耳の上方ないし後方に位置する。マスク掛け部3には、かつらベース1に対して表側からマスクMの耳掛け部M2を引っ掛けられる。
図1では、左側に位置するマスク掛け部3だけが描かれているが、かつらベース1には、左右対称に一対のマスク掛け部3が配置されている。
【0013】
図3に示すように、かつらベース1は、頭部に接触させる裏側ベース部4と、裏側ベース部4に対して表側に配置された表側ベース部5とを有する。
【0014】
表側ベース部5は、キャップ状のネットに縁取り等の補強材を適宜に貼り付けた構造になっている。ネットは、網目を成すように交絡する繊維材5a,5bによって形成されている。
【0015】
毛2は、表側ベース部5に植設されている。毛2は、表側ベース部5の網目を成す繊維材5a,5bに括り付けられている。毛2は、天然毛であるか、人工毛であるかを問わない。
【0016】
図1、
図3に示すように、毛2は、マスク掛け部3に覆い被さるように配置されている。
【0017】
図2、
図3に示すように、マスク掛け部3は、かつらベース1に取り付けられた基板6と、基板6から表側に突き出た柱7と、柱7から後側に延びるカンチレバー8とを有する。マスク掛け部3の全体は、合成樹脂によって一体に形成されている。
【0018】
図3に示すように、基板6は、裏側ベース部4と表側ベース部5との間に配置されている。基板6は、
図2、
図3に示すように、前後に長く、上下に短い略矩形板状になっている。基板6は、柱7から前側に延びる部分を有し、この部分が基板6の全長の大部分を占めている。基板6のうち、柱7から前側に延びる部分は、柱7よりも上下両側に広がっている。
【0019】
基板6には、基板6をかつらベース1に縫着するための複数の貫通口6aが行列状に形成されている。これら貫通口6aは、かつらベース1に対する基板6の取り付けに使用したり、基板6の通気性を良くしたりするためのものである。基板6は、貫通口6aに通された繊維材9によって表側ベース部5に縫着されている。基板6とかつらベース1は、縫着以外、又は縫着に加えて他の結合手段を採用してもよく、例えば、鳩目を用いて基板をかつらベースに固定してよい。
【0020】
裏側ベース部4は、表側ベース部5に縫着された基板6を覆うネットからなる。裏側ベース部4の周囲部は、基板6の周囲を取り囲むように表側ベース部5に結合されている。この結合は、裏側ベース部4、表側ベース部5の材料や所要の結合強度に応じて、縫着、接着、融着等の適宜の手段で行えばよい。なお、裏側ベース部4及び表側ベース部5の材料は、ネットに限定されず、頭部Hの形状に倣わせることが可能な柔軟性を有するものであればよく、例えば、人工皮革を採用してもよい。
【0021】
柱7は、基板6の後側から基板6の厚さ方向に真っすぐ立っている。柱7は、表側ベース部5の網目に通されている。
【0022】
カンチレバー8は、かつらベース1の表側との間にマスクMの耳掛け部M2を配置するための空間を形成するように柱7から自由端部8a(後方)に向かって延びている。また、カンチレバー8の自由端側は、後方に向かってかつらベース1に接近するように延びている。カンチレバー8の自由端部8aは、丸くなっている。自由端部8aは、球状を例示したが、かつらベース1や頭皮を突き破る懸念の無い、角のない形状にすればよい。
【0023】
カンチレバー8の自由端部8aがかつらベース1から遠ざかる方向にカンチレバー8が反るようにカンチレバー8を弾性変形させると(
図3中に一点鎖線で描いたカンチレバー8参照。)、自由端部8aとかつらベース1の表側との間にマスクMの耳掛け部M2を通して、耳掛け部M2を柱7に引っ掛けることができる。その耳掛け部M2を通した後、カンチレバー8を弾性復元させると、自由端部8aがかつらベース1の表側に接近する状態に戻るので、耳掛け部M2がマスク掛け部3から容易に外れることがなく、また、カンチレバー8に毛2を覆い被せることが容易になる。
【0024】
引っ掛けられた耳掛け部M2は柱7を前側へ引っ張る。その柱7からのモーメント荷重に基板6が抵抗する。耳掛け部M2から柱7が引っ張られることによって基板6が傾こうとしても、基板6が裏側ベース部4を介して頭部Hで支えられ、また、表側ベース部5の張りでも基板6が支えられるので、マスク掛け部3の姿勢は、柱7から耳掛け部M2が外れないように安定させられる。このとき、基板6は、柱7から上下両側に拡幅して前側に延びる部分において、柱7からのモーメント荷重を頭部H側へ分散して伝えることになる。このため、基板6からの圧力による頭部Hの痛みが防止される。また、基板6と頭部Hとの間には裏側ベース部4が介在するため、基板6の板縁が頭部Hを強く刺激することも避けられる。
【0025】
例えば、かつらの外観上、マスク掛け部3を目立ちにくくするため、カンチレバー8の自由端部8aから基板6の前端までのマスク掛け部3の全長を30mm以下にすることができる。例えば、外観上、柱7、カンチレバー8を目立ちにくくしつつ、耳掛け部M2からの引っ張りに耐える柱7、カンチレバー8にするため、柱7やカンチレバー8の太さを2mm以上3mm以下にすることができる。例えば、外観上、基板6を目立ちにくくしつつ、基板6から頭部Hへの荷重を分散させるため、基板6の全長を16mm以上、基板6の幅を15mm以下、基板6の厚さを2mm以下にすることができる。
【0026】
なお、マスク掛け部3として基板6と柱7とカンチレバー8とを一体に形成したものを例示したが、柱やカンチレバーを着脱式に変更することも可能である。例えば、基板と柱を一体に形成してカンチレバーを柱に着脱可能に設けたり、柱とカンチレバーを一体に形成して柱を基板に着脱可能に設けたりすることができる。その着脱構造としては、例えば、カンチレバーの固定端部又は柱の裏側端部に雄ねじ部を設け、これに対応の雌ねじ部を柱又は基板に設けることが挙げられる。
【0027】
図示のかつらは、上述のようにかつらベース1が表側からマスクMの耳掛け部M2を引っ掛けられるように配置されたマスク掛け部3を有するので、マスクMの着用の際、マスクMの耳掛け部M2をかつらベース1のマスク掛け部3に引っ掛けることができ、これにより、マスクMの着用による耳の痛みが起こらないようにすることができる。また、図示のかつらは、そのかつらベース1に植設された毛2がマスク掛け部3に覆い被さるように配置されているので、毛2をマスク掛け部3に覆い被せてマスク掛け部3をかつら装着時の外観上、目立ちにくくすることができ、かつらで重視される外観上の違和感の無さを損なわない。したがって、図示のかつらは、マスク着用による耳の痛みが起こらないかつらとして提供することができる。
【0028】
また、図示のかつらは、マスク掛け部3がかつらベース1に取り付けられた基板6と、基板6から表側に突き出た柱7と、柱7から後側に延びるカンチレバー8とを有し、カンチレバー8が後方に向かってかつらベース1に接近するように延びているので、マスクMの耳掛け部M2を柱7に掛けてカンチレバー8で柱7から容易に外れないように保持しつつ、毛2をカンチレバー8に覆い被せてカンチレバー8を外観上、目立ちにくくすることができる。
【0029】
また、図示のかつらは、マスク掛け部3の基板6が柱7から前側に延びる部分を有し、かつ当該前側に延びる部分で当該柱7よりも上下両側に広がった形状であるので、耳掛け部M2によって前側へ押される柱7からのモーメント荷重を基板6から頭部H側へ分散して伝えて、基板6からの圧力による頭部Hの痛みを防止することができる。
【0030】
また、図示のかつらは、かつらベース1が頭部Hに接触させる裏側ベース部4と、裏側ベース部4に対して表側に配置された表側ベース部5とを有し、毛2が表側ベース部5に植設されており、マスク掛け部3の基板6が裏側ベース部4と表側ベース部5との間に配置されているので、耳掛け部M2から柱7が引っ張られることによって基板6が傾こうとしても、頭部Hや表側ベース部5の張りで基板6を支えて基板6を安定させることができ、基板6と頭部Hとの間に介在する裏側ベース部4により、基板6の板縁が頭部Hを強く刺激することを避けることもできる。
【0031】
なお、かつらベース1に植設された毛2によって構成される髪型は、マスク掛け部3に覆い被さる髪型であればよく、特に限定されない。また、かつらは全かつらに限定されず、左右の耳の上方近傍にマスク掛け部3を配置することが可能なかつらベースを有する部分かつらにしてもよい。今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
1 かつらベース
2 毛
3 マスク掛け部
4 裏側ベース部
5 表側ベース部
6 基板
7 柱
8 カンチレバー