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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036659
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】タイヤバルブ
(51)【国際特許分類】
   B60C 29/02 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
B60C29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140973
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】砂山 裕貴
(57)【要約】
【課題】外観の向上が求められている。
【解決手段】本開示のタイヤバルブ10では、バルブステム11のうち筒形弾性部材30とバルブキャップ25との間に、筒状の樹脂製スリーブ40が装着されている。樹脂製スリーブ40は、筒形弾性部材30とバルブキャップ25との両方に隣接していて、バルブステム11のうち筒形弾性部材30とバルブキャップ25との間の略全体を覆っている。樹脂製スリーブ40の先端寄り位置には、工具100を係合可能な溝状の係合部42が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に流路を有する金属製筒体の一端部にバルブキャップを備える一方、他端部又は中間部にタイヤホイールのバルブ取付孔の開口縁に係止する弾性部材を備え、
前記バルブ取付孔に前記バルブキャップ側から挿入され、工具により引っ張られて装着されるタイヤバルブにおいて、
前記金属製筒体の外面には、前記バルブキャップと前記弾性部材との間に、前記工具が凹凸係合可能な係合部が形成された樹脂製スリーブが取り付けられているタイヤバルブ。
【請求項2】
前記樹脂製スリーブは、前記弾性部材と前記バルブキャップとに隣接している請求項1に記載のタイヤバルブ。
【請求項3】
前記金属製筒体と前記樹脂製スリーブとは係合している請求項1又は2に記載のタイヤバルブ。
【請求項4】
前記金属製筒体における前記樹脂製スリーブと係合するためのスリーブ係合部は、前記バルブキャップよりも前記弾性部材に近い位置に配されている請求項3に記載のタイヤバルブ。
【請求項5】
前記金属製筒体の外面には、前記バルブキャップをネジ止めするためのキャップ用雄螺子部と、前記樹脂製スリーブをネジ止めするための前記スリーブ係合部としてのスリーブ用雄螺子部と、が形成され、
前記スリーブ用雄螺子部の方が前記キャップ用雄螺子部よりも外径が大きい請求項3又は4に記載のタイヤバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤホイールのバルブ取付孔に装着されるタイヤバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のタイヤバルブとして、内側に流路を有する金属製筒体の一端部にバルブキャップを備える一方、他端部又にタイヤホイールのバルブ取付孔の開口縁に係止する弾性部材を備え、バルブ取付孔にバルブキャップ側から挿入され、工具により引っ張られて装着されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-241137号公報(段落[0012],[0015]、図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のタイヤバルブに対し、タイヤホイールに取り付けられた状態で、金属製筒体に形成された工具を係合させるための係合部が露出していることにより外観が損なわれているという意見があり、外観の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、内側に流路を有する金属製筒体の一端部にバルブキャップを備える一方、他端部又は中間部にタイヤホイールのバルブ取付孔の開口縁に係止する弾性部材を備え、前記バルブ取付孔に前記バルブキャップ側から挿入され、工具により引っ張られて装着されるタイヤバルブにおいて、前記金属製筒体の外面には、前記バルブキャップと前記弾性部材との間に、前記工具が凹凸係合可能な係合部が形成された樹脂製スリーブが取り付けられているタイヤバルブである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示のタイヤバルブの断面図
図2】バルブコア周辺の拡大断面図
図3】タイヤバルブの正面図
図4】タイヤバルブの斜視図
図5】タイヤバルブの断面図
図6】タイヤバルブの取り付けを説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図1から図6に基づいて本開示のタイヤバルブ10について説明する。図1に示すように、タイヤバルブ10は、金属製(例えば、真鍮製)のバルブステム11(特許請求の範囲中の「金属製筒体」に相当する)の内側にバルブコア20を備え、バルブステム11の外側の一部をエラストマー製の筒形弾性部材30(特許請求の範囲中の「弾性部材」に相当する)で覆った構造になっている。以下、特記しない限り、図1の上方を先端側、図1の下方を基端側とする。
【0008】
バルブステム11は、先端側から、第1大径部12と、外径が第1大径部12から段付き状に縮径した小径部13と、外径が小径部13から段付き状に拡径し、第1大径部12よりも大径になった第2大径部14と、第2大径部14からテーパー状に2段に分かれて縮径した縮径部15と、そこから基端側へ延びた中径部16と、を有している。中径部16の途中部分には、バルブステム11の内部の流路11Aとその外部とを連通する貫通孔16Aが形成されている。なお、縮径部15は、2段に分かれていなくてもよく、第2大径部14の基端部と中径部16の先端部との間をまっすぐ連絡していてもよいし、縮径部15がなくてもよい。
【0009】
図2に示すように、バルブコア20は、筒形コア本体21の中心部を直動ロッド22が貫通した構造をなしている。筒形コア本体21は、バルブステム11の第1大径部12の内面に形成された雌螺子部12Bに螺合する頭部21Aと、バルブステム11に嵌合してシールされる胴部21Bと、を有している。
【0010】
直動ロッド22のうち筒形コア本体21から基端側に突出した部分には弁体23が備えられている。また、筒形コア本体21の先端と直動ロッド22の先端部との間には、図示しないコイルバネが配され、そのコイルバネの弾発力によって通常は筒形コア本体21の基端側開口21Cに弁体23が押し付けられている。これにより、通常は、バルブステム11内を流体が通過できないようになっていて、直動ロッド22が先端側から押されるか、或いは、バルブステム11内において、バルブコア20より先端側の圧力が基端側の圧力より一定圧以上高くなった場合に、弁体23が筒形コア本体21の基端側開口21Cから離間し、バルブステム11内を流体が通過する。
【0011】
図1に示すように、バルブステム11の先端部である第1大径部12の外周面にはキャップ用雄螺子部12Aが形成され、そこにバルブキャップ25が螺合装着されている。バルブキャップ25は一端有底の筒状をなす樹脂の成形品であって、内側面にキャップ用雄螺子部12Aと螺合する雌螺子部25Aが形成され、内側奥面にはエラストマー製のパッキン26が装着されている。そして、バルブキャップ25がキャップ用雄螺子部12Aに締め付けられることでバルブステム11の先端がパッキン26に密着している。同図に示すように、キャップ用雄螺子部12Aは、バルブステム11の第1大径部12のうち先端から基端寄り位置までの範囲に形成され、第1大径部12におけるキャップ用雄螺子部12Aより基端側の外面は平坦面12Cとなっている。
【0012】
図1に示すように、筒形弾性部材30は、バルブステム11における第2大径部14の基端寄り位置から中径部16の中間位置までの範囲を側方から覆ってバルブステム11に加硫接着されている。筒形弾性部材30の先端部31は、バルブステム11の径方向に延びた先端面32と、先端面32の外縁から基端側へ向かうにつれて拡径したテーパー面33と、を有する。筒形弾性部材30は、先端部31の基端側に、圧入部34とボトム係止部35とを有している。圧入部34は、先端部31の基端部よりも少し小径の円柱状をなし、ボトム係止部35は、圧入部34より大径の円柱状をなしている。なお、図1に示す例では、ボトム係止部35の基端部は、バルブステム11の貫通孔16Aに僅かに重なっているが、重なっていなくてもよい。
【0013】
筒形弾性部材30から基端側に突出したバルブステム11の基端部には、タイヤ圧検出装置50が取り付けられている。タイヤ圧検出装置50は、圧力センサ、温度センサ及び無線回路を有し、タイヤ内の圧力及び温度を検出して、それら検出結果を車両本体に備えた図示しないタイヤ監視装置に無線送信する。タイヤ監視装置は、受信した検出結果に基づいてタイヤ内の圧力及び温度の異常の有無を監視する。
【0014】
さて、図1に示すように、本実施形態のタイヤバルブ10では、バルブステム11のうち筒形弾性部材30とバルブキャップ25との間に、樹脂製スリーブ40が装着されている。樹脂製スリーブ40は、筒形弾性部材30とバルブキャップ25との両方に隣接していて、バルブステム11のうち筒形弾性部材30とバルブキャップ25との間の略全体を覆っている(図3及び図4参照)。図1に示すように、樹脂製スリーブ40の基端部に雌螺子部41が形成されている一方、バルブステム11の第2大径部14の外周面のうち筒形弾性部材30より先端側にスリーブ用雄螺子部14A(特許請求の範囲中の「スリーブ係合部」に相当する)が形成されていて、それらが螺合することで、樹脂製スリーブ40が螺合装着されている。
【0015】
バルブステム11の第2大径部14におけるスリーブ用雄螺子部14Aより基端側の外面は、スリーブ用雄螺子部14Aの外径(呼び径)より大径な平坦面14Bとなっていて、スリーブ用雄螺子部14Aと平坦面14Bとの間は段差面14Cにより連絡されている。この段差面14Cと筒形弾性部材30の先端面32とは面一になっていて、それらの面(段差面14C及び先端面32)に、スリーブ用雄螺子部14Aに螺合された樹脂製スリーブ40の基端が当接する。また、スリーブ用雄螺子部14Aの外径(呼び径)は、キャップ用雄螺子部12Aの外径(呼び径)より大きく、スリーブ用雄螺子部14Aのピッチはキャップ用雄螺子部12Aのピッチよりも大きく、スリーブ用雄螺子部14Aと雌螺子部41との掛かり代は、キャップ用雄螺子部12Aと雌螺子部25Aとの掛かり代より大きい。
【0016】
ここで、図1に示すように、樹脂製スリーブ40の先端寄り位置には、溝状の係合部42が全周に亘って形成されている。係合部42は、溝の底面をなす円柱面42Aと、円柱面42Aの先端からバルブステム11の径方向に延び先端側内側面42Bと、円柱面42Aの基端から基端側へ傾斜して延びた基端側内側面42Cと、を有している。なお、図1に示す例では、樹脂製スリーブ40のうち係合部42より先端側は、係合部42より基端側より径が大きくなっているが、同径であってもよいし、径が小さくてもよい。また、樹脂製スリーブ40のうち係合部42より先端側は、バルブキャップ25より僅かに大径になっているが、同径であってもよいし、小径であってもよい。
【0017】
タイヤバルブ10は以下のようにして製造される。まず、バルブステム11に筒形弾性部材30が加硫装着される。その後、バルブコア20及び樹脂製スリーブ40が雌螺子部12B及びスリーブ用雄螺子部14Aに螺合装着される。最後にバルブキャップ25がキャップ用雄螺子部12Aに螺合装着され、タイヤバルブ10が完成する。
【0018】
本実施形態のタイヤバルブ10の構成は以上である。次に、タイヤバルブ10の作用効果について説明する。図5に示すように、タイヤバルブ10は、車両用ホイール90(特許請求の範囲中の「タイヤホイール」に相当する)に取り付けられて使用される。車両用ホイール90のタイヤリム91は、車幅方向の外側に配された大径部91Aと、車幅方向の内側に配された小径部91Bと、大径部91Aと小径部91Bとを接続する起立部91Cと、を有し、起立部91Cにバルブ取付孔92が貫通形成されている。
【0019】
そして、タイヤバルブ10は、そのバルブ取付孔92にタイヤリム91の内側から圧入される。具体的には、図6に示すように、タイヤ圧検出装置50が車両用ホイール90の径方向の内側に位置する向きでタイヤバルブ10の先端部をバルブ取付孔92に挿入し、バルブ取付孔92の開口縁に筒形弾性部材30の先端部31のテーパー面33が当接したところで、タイヤリム91の外側でタイヤバルブ10における樹脂製スリーブ40の係合部42を工具100で把持して引っ張って、タイヤバルブ10の圧入部34をバルブ取付孔92に圧入する(図5参照)。これにより、バルブ取付孔92が密閉される。
【0020】
タイヤバルブ10が車両用ホイール90に取り付けられると、タイヤバルブ10に備えたタイヤ圧検出装置50によってタイヤ93内のガス圧及び温度、タイヤ93の回転が検出されてそれら検出結果が車両本体に無線送信され、これによりタイヤ93を車両本体側で監視することができる。
【0021】
このように、本実施形態のタイヤバルブ10によれば、タイヤバルブ10を取り付ける際に、樹脂製スリーブ40の係合部42に工具100を係合させてタイヤバルブ10を引っ張ることが可能であり、バルブステム11に工具100を係合させるための係合部を形成する必要がなくなる。これにより、金属製のバルブステム11を露出させる必要がなくなるので、タイヤバルブ10の外観が向上する。また、樹脂製スリーブ40は、バルブステム11のうち筒形弾性部材30とバルブキャップ25との間の略全体を覆っているので、外方から見てバルブステム11がほとんど露出せず、外観がさらに向上する。さらに、バルブステム11が樹脂製スリーブ40により覆われていることにより、金属製のバルブステム11に錆や緑青が生じることが防がれたり、錆や緑青が生じてもその錆や緑青を露出させないようにすることができ、外観がさらに向上する。また、バルブステム11に工具100を係合させるための係合部(例えば、溝状)を形成する必要がなくなることから、バルブステム11の肉厚を小さくすることも可能である。
【0022】
また、樹脂製スリーブ40はバルブステム11に螺合装着されているので、バルブキャップ25を外しても樹脂製スリーブ40が脱落しないようになっている。さらに、樹脂製スリーブ40を螺合するためのスリーブ用雄螺子部14Aがバルブステム11のうち筒形弾性部材30寄り位置に配されているので、工具100の引っ張りによりバルブステム11に力がかかる箇所(スリーブ用雄螺子部14A)と、筒形弾性部材30とバルブ取付孔92の開口縁との摩擦によりバルブステム11に力がかかる箇所と、が近付くため、バルブステム11にかかる負荷が抑制される。
【0023】
ところで、従来、タイヤバルブを取り付ける際に、バルブキャップに工具を引っ掛けて引っ張ることでバルブキャップの雌螺子部が壊れてしまうことがあった。これに対して、本実施形態のタイヤバルブ10によれば、樹脂製スリーブ40に工具100を係合させて引っ張る構成で、スリーブ用雄螺子部14Aの外径がキャップ用雄螺子部12Aの外径より大きい、即ち、樹脂製スリーブ40の雌螺子部41の方がバルブキャップ25の雌螺子部25Aより内径が大きいので、強度が高く、バルブキャップ25の雌螺子部25Aの破損を防ぎつつ、樹脂製スリーブ40の雌螺子部41の破損も防がれる。また、スリーブ用雄螺子部14Aのピッチ(即ち、樹脂製スリーブ40の雌螺子部41のピッチ)がキャップ用雄螺子部12Aのピッチ(即ち、バルブキャップ25の雌螺子部25Aのピッチ)よりも大きく(即ち、ねじ山の肉厚が大きく)、かつ、スリーブ用雄螺子部14Aと樹脂製スリーブ40の雌螺子部41との掛かり代がキャップ用雄螺子部12Aとバルブキャップ25の雌螺子部25Aとの掛かり代より大きいので、樹脂製スリーブ40の雌螺子部41の強度がさらに高まり、より破損が防がれる。
【0024】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、樹脂製スリーブ40は、バルブステム11に螺合されていたが、接着材等で固定される構成であってもよいし、直動可能な状態でバルブキャップ25と筒形弾性部材30とにより位置決めされた構成でもよい。
【0025】
(2)樹脂製スリーブ40の係合部42は全周に亘っていなくてもよい。例えば、樹脂製スリーブ40の外周面のうち180度で対する2位置に形成された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 タイヤバルブ
11 バルブステム(金属製筒体)
12A キャップ用雄螺子部
14A スリーブ用雄螺子部(スリーブ係合部)
20 バルブコア
25 バルブキャップ
25A 雌螺子部
30 筒形弾性部材(弾性部材)
33 テーパー面
34 圧入部
35 ボトム係止部
40 樹脂製スリーブ
41 雌螺子部
42 係合部
92 バルブ取付孔
100 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6