(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036699
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】微生物活性剤及び微生物活性剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
C12N1/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141043
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】302052390
【氏名又は名称】阿部化学 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100216736
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100202706
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100082913
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 光宏
(72)【発明者】
【氏名】阿部 昌之
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065BB06
4B065BB08
4B065BB13
4B065BB26
4B065BB40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オゾン処理工程を含む下水処理に利用される微生物を効率よく活性化(増殖)できる微生物活性剤の提供。
【解決手段】腐植物質をオゾン処理することより得られたものである、微生物活性剤。前記腐植物質はフミン酸及びフルボ酸を含む。腐植物質をオゾン処理する工程を備える、微生物活性剤の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐植物質をオゾン処理することより得られたものである、微生物活性剤。
【請求項2】
前記腐植物質はフミン酸及びフルボ酸を含む、請求項1に記載の微生物活性剤。
【請求項3】
腐植物質をオゾン処理する工程を備える、微生物活性剤の製造方法。
【請求項4】
前記腐植物質はフミン酸及びフルボ酸を含む、請求項3に記載の微生物活性剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物活性剤及び微生物活性剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2010-46623号公報(特許文献1)がある。この公報には、「微生物の栄養源として、酵母エキス及び/またはペプトンを用いる」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、効率的に微生物を活性化(増殖)できないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、腐植物質をオゾン処理することより得られたものである、微生物活性剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、効率よく微生物を活性化(増殖)できる微生物活性剤を提供できる。
上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る微生物活性剤の顕微鏡写真である。
【
図2】実験例1のサンプルNO.1の顕微鏡写真である。
【
図3】実験例1のサンプルNO.2の顕微鏡写真である。
【
図4】実験例1のサンプルNO.3の顕微鏡写真である。
【
図5】実験例2のサンプルNO.1の顕微鏡写真である。
【
図6】実験例2のサンプルNO.2の顕微鏡写真である。
【
図7】実験例2のサンプルNO.3の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
微生物活性剤は、処理対象に含まれる微生物を活性化(増殖)するために用いられる。
例えば、本発明に係る微生物活性剤は、土壌改良、産廃地下水や河川や湖沼、港湾の汚泥処理及び水質浄化、家畜排泄物処理、又は生ゴミ処理等に利用できる。
より具体的には、本発明の微生物活性剤を、土壌、下水や河川や湖沼等の水域、港湾の汚泥やヘドロで汚染された処理対象域、家畜排泄物、又は生ゴミに撒布することにより、その中に生息する微生物が活性化され汚泥等の分解、水質の浄化を促進することができる。
【0009】
本発明に係る微生物活性剤は、詳細は後述するが、腐植物質をオゾン処理することにより製造できる。
腐植物質とは、生物の死後、生物体有機物が微生物的・化学的作用を受けて崩壊して生じた「化学構造が特定されない有機物(非生体有機物)」の総称である。より具体的には、腐植酸(フミン酸)、フルボ酸が腐植物質であると定義されている。
【0010】
フミン酸とは、広葉樹などの各種植物が、炭酸同化作用による自らの成長のために必要な高分子有機酸として作ったもので、直鎖炭化水素と多環芳香族化合物の分子量数千から1万程度の難分解性高分子化合物である。
フルボ酸とは、海草・藻類・植物類などの有機物が、自然環境の中で微生物の作用を受けながら分解と再構築を繰り返し、生成・蓄積した有機物である。
【0011】
なお、本発明に係る微生物活性剤は、詳細は後述するが、オゾン耐性である。故に、オゾン処理工程を含む下水処理であっても本発明に係る微生物活性剤を利用することで、下水処理に利用される微生物を活性化(増殖)できる。
【実施例0012】
[微生物活性剤の製造]
5Lの容器に、100gの腐植物質及び水道水1Lを入れ、オゾン製造装置を用いてオゾンを吹き込んだ。
腐植物質は、スギムラ化学工業株式会社が販売する粉体フミンエースP(商品名)であり、同社の測定によると、成分(代表値)は、フミン酸が40%、フルボ酸が20%、炭素が10%であった。
オゾン製造装置は、JAPAN SEVOCO.LO.LTD製であり、オゾンガス発生量は2L/minであった。
【0013】
効率よくオゾン処理を行うため、オゾン製造装置のオゾン吹出口には、外径0.5mmのステンレス針24本を束ねたものを取り付けた。
オゾンの吹込みを開始すると容器内の液体の粘度が高くなり、容器から液体が泡立ち、吹きこぼれそうになったため吹込量を適宜減少させた。
オゾンの吹込みを開始してから約10分で容器内の液体の泡立ちが収まったところでオゾンの吹込みを終了した。
容器内に残った液体(以下、本発明に係る微生物活性剤とする場合がある。)は、黒色であり、やや粘性があった。
【0014】
[顕微鏡分析]
顕微鏡(オリンパス株式会社製 システム生物顕微鏡BX51(30倍拡大鏡付き) 倍率24000倍)を用いて本発明に係る微生物活性剤を観察及び顕微鏡写真(
図1)を撮影した。
棒状又は粒子状の生菌の存在を認めた。当該生菌はオゾン処理した後も残ったもの(殺菌されなかったもの)であるため、オゾン耐性があるといえる。
【0015】
[実験例1]
以下の表1の「充填物」を容器に其々充填し、振とう器に設置し、37℃の環境下で、24時間振とうさせた。その後、各容器内の充填物を顕微鏡(オリンパス株式会社製 システム生物顕微鏡BX51 倍率800倍)を用いて観察及び顕微鏡写真(
図2乃至
図4)を撮影した。
【0016】
なお、表1におけるザ・ガードα3+は興和株式会社が販売するザ・ガードコーワ整腸錠α3+(商品名)である。同社の情報によると、ザ・ガードコーワ整腸錠α3+には、生菌(納豆菌末、乳酸菌、及びビフィズス菌)が含まれている。
また、表1におけるペプトンは松林工業薬品株式会社が販売するものを用いた。
【0017】
【0018】
サンプルNO.1乃至NO.3(
図2乃至
図4)には生菌が存在することを確認した。
サンプルNO.2(
図3)における生菌の数は、サンプルNO.1(
図2)における生菌の数より、多いことを確認した。
サンプルNO.3(
図4)における生菌の数は、サンプルNO.1(
図2)及びサンプルNO.2(
図3)における生菌の数より、多いことを確認した。
また、顕微鏡観察により、サンプルNO.3における生菌は、サンプルNO.1及びサンプルNO.2における生菌より、活発に動いていることを確認した。
【0019】
以上の結果より、本発明に係る微生物活性剤は、効率よく微生物を活性化(増殖)できることを確認した。
【0020】
[実験例2]
以下、表2の「充填物」を容器に其々充填し、其々の容器を振とう器に設置し、37℃の環境下で、24時間振とうさせた。その後、各容器内の充填物を顕微鏡(オリンパス株式会社製 システム生物顕微鏡BX51 倍率800倍)を用いて観察及び顕微鏡写真(
図5乃至
図7)を撮影した。
【0021】
なお、表2におけるザ・ガード PCは興和株式会社が販売するザ・ガードコーワ整腸錠PC(商品名)である。同社の情報によると、ザ・ガードコーワ整腸錠PCには、生菌(納豆菌末及び乳酸菌)が含まれている。
また、表2におけるペプトンは松林工業薬品株式会社が販売するものを用いた。
【0022】
【0023】
サンプルNO.1乃至NO.3(
図5乃至
図7)には生菌が存在することを確認した。
サンプルNO.2(
図6)における生菌の数は、サンプルNO.1(
図5)における生菌の数より、多いことを確認した。
サンプルNO.3(
図7)における生菌の数は、サンプルNO.1(
図5)及びサンプルNO.2(
図6)における生菌の数より、多いことを確認した。
また、顕微鏡観察により、サンプルNO.3における生菌は、サンプルNO.1及びサンプルNO.2における生菌より、活発に動いていることを確認した。
【0024】
以上の結果によっても、本発明に係る微生物活性剤は、効率よく微生物を活性化(増殖)できることを確認した。
【0025】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。