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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036838
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】移動式作業台車
(51)【国際特許分類】
   B66F 17/00 20060101AFI20220301BHJP
   A01D 46/24 20060101ALI20220301BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20220301BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20220301BHJP
   B62D 55/075 20060101ALI20220301BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B66F17/00 E
A01D46/24 A
B62B3/00 B
B62B3/02 C
B62D55/075 A
B60P3/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141245
(22)【出願日】2020-08-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.展示会名:アグリビジネス創出フェア2019、展示日:令和元年11月20日~22日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度~令和2年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター、イノベーション創出強化研究推進事業、「傾斜地における安全作業をサポートする電動式・移動式作業台車兼運搬車の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】592081483
【氏名又は名称】三晃精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 元信
(72)【発明者】
【氏名】平子 晴庸
(72)【発明者】
【氏名】吉見 孝則
(72)【発明者】
【氏名】里田 正彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 知浩
(72)【発明者】
【氏名】吉見 龍矢
【テーマコード(参考)】
2B075
3D050
【Fターム(参考)】
2B075AA10
2B075AB10
2B075JA02
2B075JA03
2B075JA04
2B075JA20
3D050AA12
3D050BB03
3D050BB29
3D050DD06
3D050HH07
3D050KK11
3D050KK13
(57)【要約】
【課題】傾斜地において作業台を水平に保つことの可能な移動式作業台車を提供する。
【解決手段】本発明によれば、移動式作業台車であって、地面を走行可能な走行手段と、第1~第3の伸縮手段と、載置面を有する作業台と、前記載置面の傾きを検知する傾き検知手段と、制御手段と、を備え、前記第1~第3の伸縮手段はそれぞれ、一端側が前記走行手段側で支持されるとともに、他端側が軸受機構を介して前記作業台に取り付けられており、前記軸受機構は、球面軸受と一軸の関節部材とを組み合わせて構成されており、前記制御手段は、前記傾き検知手段から前記載置面の傾きの情報を取得して、前記載置面が略水平状態を維持するよう前記第1~第3の伸縮手段を伸縮制御する、移動式作業台車が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式作業台車であって、
地面を走行可能な走行手段と、
第1~第3の伸縮手段と、
載置面を有する作業台と、
前記載置面の傾きを検知する傾き検知手段と、
制御手段と、を備え、
前記第1~第3の伸縮手段はそれぞれ、一端側が前記走行手段側で支持されるとともに、他端側が軸受機構を介して前記作業台に取り付けられており、
前記軸受機構は、球面軸受と一軸の関節部材とを組み合わせて構成されており、
前記制御手段は、前記傾き検知手段から前記載置面の傾きの情報を取得して、前記載置面が略水平状態を維持するよう前記第1~第3の伸縮手段を伸縮制御する、移動式作業台車。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式作業台車であって、
前記軸受機構は、前記第1~第3の伸縮手段側に前記球面軸受、前記作業台側に前記関節部材が配置されるよう構成される、移動式作業台車。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動式作業台車であって、
前記傾き検知手段は、前記載置面のロール方向の傾き及びピッチ方向の傾きをそれぞれ検知するよう構成され、
前記第1の伸縮手段は、前記作業台の前方の位置において当該作業台を支持し、
前記第2及び第3の伸縮手段は、前記作業台の後方の位置において当該作業台を支持しており、
前記制御手段は、前記第2の伸縮手段を伸長又は収縮制御するとともに前記第3の伸縮手段を収縮又は伸長制御することで前記載置面のロール方向の傾きを制御し、その後、前記第1の伸縮手段を伸長又は収縮制御するとともに前記第2及び第3の伸縮手段を収縮又は伸長制御することで前記載置面のピッチ方向の傾きを制御する、移動式作業台車。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに記載の移動式作業台車であって、
前記第1~第3の伸縮手段はそれぞれパンタグラフ式とされ、電動シリンダによって駆動する、移動式作業台車。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載の移動式作業台車であって、
前記走行手段は、傾斜面を走行可能なクローラである、移動式作業台車。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかに記載の移動式作業台車であって、
前記作業台には、落下防止用の柵が取り付けられている、移動式作業台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地において用いられる移動式作業台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果樹園等の圃場において収穫作業及び収穫物の運搬作業に用いられる移動式作業台車がある。例えば、特許文献1には、傾斜地において用いられる歩行型の動力運搬車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-105501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の動力運搬車は、荷台に収穫物を載せた状態で傾斜地を走行可能ではあるものの、傾斜地では荷台が傾斜した状態となるため、荷台上での作業は困難であり、運搬中の収穫物の落下のおそれもあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、傾斜地において作業台(荷台)を水平に保つことの可能な移動式作業台車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、移動式作業台車であって、地面を走行可能な走行手段と、第1~第3の伸縮手段と、載置面を有する作業台と、前記載置面の傾きを検知する傾き検知手段と、制御手段と、を備え、前記第1~第3の伸縮手段はそれぞれ、一端側が前記走行手段側で支持されるとともに、他端側が軸受機構を介して前記作業台に取り付けられており、前記軸受機構は、球面軸受と一軸の関節部材とを組み合わせて構成されており、前記制御手段は、前記傾き検知手段から前記載置面の傾きの情報を取得して、前記載置面が略水平状態を維持するよう前記第1~第3の伸縮手段を伸縮制御する、移動式作業台車が提供される。
【0007】
本発明によれば、傾き検知手段による傾きの情報に基づいて制御手段が第1~第3の伸縮手段を伸縮制御することで、傾斜地であっても作業台の載置面を略水平状態に維持することが可能となっている。
【0008】
なお、傾斜地での収穫作業等の高所作業は、通常、脚立を使用して行われるが、傾斜地において脚立を用いると、バランスが悪いうえ足場も狭いため、転落等の事故につながるおそれがある。実際に脚立の使用による重大事故も発生しており、農林水産省や消費者庁からも注意喚起がなされている。この点、作業台の載置面を略水平状態に維持することができれば、高所作業において広い水平なスペースを構築し、安全且つ楽に作業を行うことも可能となる。
【0009】
また、第1~第3の伸縮手段と作業台とを接続する軸受機構が、球面軸受と一軸の関節部材とを組み合わせて構成されていることから、傾斜が大きい場合であっても各接続箇所同士の相互干渉を回避することが可能となっている。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0011】
好ましくは、前記軸受機構は、前記第1~第3の伸縮手段側に前記球面軸受、前記作業台側に前記関節部材が配置されるよう構成される。
【0012】
好ましくは、前記傾き検知手段は、前記載置面のロール方向の傾き及びピッチ方向の傾きをそれぞれ検知するよう構成され、前記第1の伸縮手段は、前記作業台の前方の位置において当該作業台を支持し、前記第2及び第3の伸縮手段は、前記作業台の後方の位置において当該作業台を支持しており、前記制御手段は、前記第2の伸縮手段を伸長又は収縮制御するとともに前記第3の伸縮手段を収縮又は伸長制御することで前記載置面のロール方向の傾きを制御し、その後、第1の伸縮手段を伸長又は収縮制御するとともに前記第2及び第3の伸縮手段を収縮又は伸長制御することで前記載置面のピッチ方向の傾きを制御する。
【0013】
好ましくは、前記第1~第3の伸縮手段はそれぞれパンタグラフ式とされ、電動シリンダによって駆動する。
【0014】
好ましくは、前記走行手段は、傾斜面を走行可能なクローラである。
【0015】
好ましくは、前記作業台には、落下防止用の柵が取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る移動式作業台車1を示す側面図である。
図2図1の移動式作業台車1の背面図である。
図3図1の移動式作業台車1の平面図であって、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cの配置を模式的に示す図である。
図4図1の移動式作業台車1の水平維持制御に関連する構成を示すブロック図である。
図5図1の移動式作業台車1の第1の伸縮手段4Aを示す側面図であり、図4Aは、第1の伸縮手段4A収縮した状態を示し、図4Bは、第1の伸縮手段4Aが伸長した状態を示す。
図6図1の移動式作業台車1の第1の伸縮手段4Aを示す背面図であり、図5Aは、図4Aに対応して第1の伸縮手段4A収縮した状態を示し、図5Bは、図4Bに対応して第1の伸縮手段4Aが伸長した状態を示す。
図7図7A及び図7Bは、図1の移動式作業台車1の軸受機構5の拡大図である。
図8図8A及び図8Bは、図1の移動式作業台車1の軸受機構5を図7A及び図7Bとは異なる方向から見た拡大図である。
図9図4の制御手段8による水平維持制御のフローチャートである。
図10】傾斜地が主に左右方向に傾いている場合における、移動式作業台車1の状態を示す説明図である。
図11】傾斜地が主に前後方向に傾いている場合における、移動式作業台車1の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0018】
1.移動式作業台車1の構成
本実施形態の移動式作業台車1は、図1及び図2に示すように、骨格をなす車体フレーム2と、走行手段としてのクローラ3と、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cと、軸受機構5と、載置面60を有する作業台6とを備える。また、移動式作業台車1は、図3に示すように、傾き検知手段7と、制御手段8とを備える。図1及び図2には図示されていないが、傾き検知手段7は、載置面60の平面視における略中央位置に設置される。また、制御手段8は、車体フレーム2の適宜の位置に配置される。以下、移動式作業台車1の各構成について説明する。
【0019】
クローラ3は、車体フレーム2の下部に配置され、一対の無限軌道30と、図示しない動力源とを備え、傾斜面を走行可能に構成される。動力源としては、バッテリにより駆動するモータを用いることが好ましいが、内燃機関によるもの等、他の方式のものであっても良い。なお、クローラ3の構成は、傾斜面を走行可能であれば、従来既知の任意の構成を採用することができるため、その詳細な説明を省略する。また、以下の説明では、クローラ3の一対の無限軌道30を同方向に駆動させた際の進行方向を前後方向とし、当該前後方向及び鉛直方向と垂直な方向を左右方向とする。
【0020】
第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cは、図5A図6Bに示すように、それぞれパンタグラフ式とされ、電動シリンダ40によって駆動する構成である。第1の伸縮手段4Aは、作業台6の前方の位置において作業台6を支持し、第2の伸縮手段4B及び第3の伸縮手段4Cは、作業台6の後方の位置において当該作業台6を支持する。ここで、図3に示すように、第1の伸縮手段4Aによる作業台6の支持位置は、左右方向の中央であり、第2の伸縮手段4B及び第3の伸縮手段4Cによる作業台6の前後方向の支持位置は、同一である。
【0021】
第1の伸縮手段4Aは、具体的には、電動シリンダ40と、パンタグラフジャッキ41とを備える。電動シリンダ40は、シリンダ部40aと、ロッド部40bとを備えており、シリンダ部40aに対しロッド部40bが伸縮するよう構成される。パンタグラフジャッキ41は、底板部材41aと、天板部材41bと、一対のアーム部材41cと、シリンダ保持部材41dと、ロッド保持部材41eとを備える。
【0022】
底板部材41a及び天板部材41bは、それぞれ平面視が矩形の板状に形成される。一対のアーム部材41cは、図5Bに示すように、X字形状に配置され、それぞれ一端が底板部材41aに軸支され、他端が天板部材41bに軸支されるとともに、長手方向の中央位置で回転軸41f(図6B参照)に軸支されている。本実施形態において、一対のアーム部材41cは、図6Bに示すように、電動シリンダ40の幅方向両側に1組ずつ、計2組設けられている。
【0023】
また、シリンダ保持部材41dは、底板部材41aの下方に固定され、シリンダ部40aを回動可能に軸支する。また、ロッド保持部材41eは、図6Bに示すように、一端が回転軸41fに軸支され、他端がロッド部40bに回転可能に指示された回転軸41gに軸支される。
【0024】
本実施形態の第1の伸縮手段4Aは、以上のような構成となっていることから、シリンダ部40aに対するロッド部40b伸縮駆動により底板部材41aに対し天板部材41bが平衡状態を保ったまま昇降するようになっている。つまり、第1の伸縮手段4Aは、電動シリンダ40が伸長するとパンタグラフジャッキ41が伸びて作業台6を持ち上げ、電動シリンダ40が収縮するとパンタグラフジャッキ41が縮んで作業台6を引き下げるようになっている。
【0025】
なお、第2の伸縮手段4B及び第3の伸縮手段4Cの構成も、第1の伸縮手段4Aの構成と同一である。
【0026】
このような構成の第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cは、図3の平面図に示すように、パンタグラフジャッキ41の底板部材41a及び天板部材41bの長手方向が、それぞれ作業台6の3点の支持位置によって形成される三角形(二等辺三角形)の垂心方向を向くよう配置される。このような配置により、パンタグラフジャッキ41を作業台6の下部に収まりよく配置することができる。ただし、パンタグラフジャッキ41は、作業台6の下部に配置することができれば、他の方向を向くよう配置されいていても良い。
【0027】
軸受機構5は、図7A図8Bに示すように、球面軸受50と、一軸の関節部材51とを組み合わせて構成される。球面軸受50は、外側に凹の球状部を備える外輪部材50aと、外側に凸の球状部を備える内輪部材50bとを備える。外輪部材50aと内輪部材50bとは、互いの球状部が嵌り合うことで、任意の角度に摺動可能に連結される。
【0028】
一方、一軸の関節部材51は、基端部材51aと、先端部材51bとが回転軸51cを介して当該回転軸51cまわりに回動可能に連結されて構成される。
【0029】
そして、外輪部材50aは、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cに固定され、内輪部材50bと基端部材51aとが固定され、先端部材51bは、作業台6に固定される。なお、各軸受機構5における一軸の関節部材51の回転軸51cは、図3に示すように、上述した作業台6の3点の支持位置によって形成される三角形の垂心方向及び鉛直方向に垂直となるよう配置される。
【0030】
なお、本実施形態では、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4C側に球面軸受50が配置され、作業台6側に関節部材51が配置されるが、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4C側に関節部材51を配置し、作業台6側に球面軸受50を配置する構成とすることも可能である。
【0031】
作業台6は、使用者が上部に乗って高所作業等が可能な台であり、上面が平らな載置面60となっている。また、作業台6は、その上部に、使用者の落下防止用の柵61を備える。作業台6は、上述したように、軸受機構5を介して第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cに支持される。
【0032】
傾き検知手段7は、作業台6の載置面60のロール方向及びピッチ方向の傾きを検知可能な手段である。ここで、ロール方向の傾きとは、載置面60が前後方向の回転軸周りに回転するときの傾きであり、以下の説明では、載置面60の左側が下がる方向の回転方向を正方向、右側が下がる回転方向を負方向とする。また、ピッチ方向の傾きとは、左右方向の回転軸周りに回転するときの傾きであり、以下の説明では、載置面60の前側が下がる方向の回転方向を正方向、後側が下がる方向の回転方向を負方向とする。傾き検知手段7としては、具体的には、3軸ジャイロセンサを用いることが好適である。傾き検知手段7は、ロール方向の傾き角度とピッチ方向の傾き角度の情報を制御手段8に送信する。
【0033】
制御手段8は、上記傾き検知手段7から作業台6の載置面60の傾きの情報を取得して、載置面60が略水平状態を維持するよう、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cを伸縮制御する。制御手段8は、具体的には例えば、CPU及びメモリ(例えばフラッシュメモリ)を有する情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段8の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、マイコン、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)等が用いられる。ただし、制御手段8の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。また、傾き検知手段7としてのジャイロセンサと制御手段8としてのマイコンが一体化されたマイコンボードを用いることも好適である。なお、制御手段8に、上記第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cを伸縮制御に加えて、クローラ3の駆動制御を行わせても良い。制御手段8による具体的な制御のアルゴリズムについては後述する。
【0034】
2.移動式作業台車1の動作
次に、図9のフローチャートを用いて、上記構成の移動式作業台車1の動作、特に、傾斜地において作業台6の載置面60を略水平状態に維持する水平維持制御の動作について説明する。なお、水平維持制御は、図示しないコントローラからの指示を受け付けることによって開始される。ただし、移動式作業台車1を起動させた際に自動的に開始するようにしても良い。
【0035】
移動式作業台車1が水平維持制御を開始すると、ステップS1において、まず、制御手段8は、コントローラからの制御終了の信号(命令)の有無を判定する。終了の命令があれば、制御を終了する。制御終了の信号がなければ、ステップS2に進む。
【0036】
ステップS2において、傾き検知手段7は作業台6の載置面60のロール方向の傾きを検知する。そして、ステップS3において、制御手段8は、傾き検知手段7が検知したロール方向の傾きの情報を取得し、ロール方向の傾きが±1度以内であるか否かを判定する。そして、ロール方向の傾きが±1度以内でなければ、ロール方向の傾きは略水平ではないと判断してステップS4に進み、ロール制御を開始する。
【0037】
<ロール制御>
ロール制御を開始すると、まず、ステップS5において、制御手段8は、傾き検知手段7が検知したロール方向の傾きが0度未満であるか否か、すなわち載置面60の左側が上がっているか否かを判定する。ロール方向の傾きが0度未満でなければ、すなわち載置面60の左側が下がっていれば、ステップS6において、制御手段8は、左側にある第2の伸縮手段4Bを伸長させるとともに、右側にある第3の伸縮手段4Cを収縮させる。
【0038】
また、ロール方向の傾きが0度未満であれば、すなわち載置面60の左側が上がっていれば、ステップS7において、制御手段8は、第2の伸縮手段4Bを収縮させるとともに、第3の伸縮手段4Cを伸長させる。そして、ステップS5の判定の後、ステップS6又はステップS7において一定期間各ステップにおける制御を実行したら、ステップS8において当該制御を完了し、ステップS2に戻る。なお、図10は、移動式作業台車1を使用する傾斜地が主に左右方向に傾いている場合において、ロール制御によりロール方向の傾きを±1度以内としたときの移動式作業台車1の状態を示す背面図となっている。
【0039】
一方、ステップS3において、ロール方向の傾きが±1度以内であれば、ロール方向の傾きは略水平であると判断してステップS9に進む。そして、ステップS9において、傾き検知手段7は載置面60のピッチ方向の傾きを検知する。次に、ステップS10において、制御手段8は、傾き検知手段7が検知したピッチ方向の傾きの情報を取得し、ピッチ方向の傾きが±1度以内であるか否かを判定する。そして、ピッチ方向の傾きが±1度以内でなければ、ピッチ方向の傾きは略水平ではないと判断してステップS11に進み、ピッチ制御を開始する。
【0040】
<ピッチ制御>
ピッチ制御を開始すると、まず、ステップS12において、制御手段8は、傾き検知手段7が検知したピッチ方向の傾きが0度未満であるか否か、すなわち載置面60の前側が上がっているか否かを判定する。ピッチ方向の傾きが0度未満でなければ、すなわち載置面60の前側が下がっていれば、ステップS13において、制御手段8は、第1の伸縮手段4Aを伸長させるとともに、第2の伸縮手段4B及び第3の伸縮手段4Cを収縮させる。
【0041】
また、ピッチ方向の傾きが0度未満であれば、すなわち載置面60の前側が上がっていれば、ステップS14において、制御手段8は、第1の伸縮手段4Aを収縮させるとともに、第2の伸縮手段4B及び第3の伸縮手段4Cを伸長させる。そして、ステップS12の判定の後、ステップS13又はステップS14において一定期間各ステップにおける制御を実行したら、ステップS15において当該制御を完了し、ステップS9に戻る。なお、図11は、移動式作業台車1を使用する傾斜地が主に前後方向に傾いている場合において、ピッチ制御によりピッチ方向の傾きを±1度以内としたときの移動式作業台車1の状態を示す側面図となっている。
【0042】
制御手段8は、以上のような各ステップの制御を制御終了の信号を受け取るまで実行し続けることで、作業台6の載置面60を略水平状態に維持するようになっている。
【0043】
3.作用効果
本実施形態に係る移動式作業台車1によれば、傾き検知手段7によるロール方向及びピッチ方向の傾きの情報に基づいて制御手段8が第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cを伸縮制御することで、傾斜地であっても、作業台6の載置面60をロール方向及びピッチ方向において略水平状態に維持することが可能となっている。また、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cの3つの伸縮手段の駆動により水平維持制御を行うことで、水平を維持しながら作業台6の昇降を行うことも可能となっている。このような構成により、傾斜地において広い水平なスペースを構築し、高所作業についても安全且つ楽に行うことが可能となっている。
【0044】
また、本実施形態の移動式作業台車1は、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cと作業台6とを接続する軸受機構5が、球面軸受50と一軸の関節部材51とを組み合わせて構成されている。したがって、水平維持制御において、傾斜地の傾斜が大きいため水平維持制御された載置面60に対して第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cの天板部材41bが大きく傾いている場合であっても、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cと作業台6の接続箇所同士の相互干渉を回避し、作業台6(載置面60)が撓んだり、撓みを開放しようとする力が電動シリンダ40に加わって電動シリンダ40に悪影響を及ぼすことを防止することが可能となっている(例えば、図10及び図11参照)。なお、本実施形態では、一軸の関節部材51の回転軸51cを作業台6の3点の支持位置によって形成される三角形の垂心方向及び鉛直方向に垂直となるよう配置していることで(図3参照)、より効果的に作業台6の撓みを抑制することが可能となっている。
【0045】
なお、軸受機構5をより複雑な構成、例えば3つ以上の軸受部材によって軸受機構5を構成する場合、各関節の遊びの積み上げから作業台6にガタつきが生じるおそれがある。しかしながら、本実施形態の移動式作業台車1は、必要最小限の軸受で構成していることから、このような作業台6ガタつきも抑制することが可能である。
【0046】
また、本実施形態において、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cはそれぞれパンタグラフ式となっていることから、電動シリンダ40を斜め向きに配置することができ、上下方向のスペースを削減することが可能となっている。
【0047】
ところで、作業台6(載置面60)を略水平状態に維持することを考えた場合、4つ以上の伸縮手段により水平維持制御を行うことも考えられる。しかしながら、4つ以上の伸縮手段による制御を行う場合、各シリンダの相互干渉を回避するため、ストローク量を計測・制御する必要があって制御が複雑になってしまう。また、4つ以上の伸縮手段によって作業台6を支持する構成であると、万が一伸縮手段の誤作動があると、作業台6が歪んだり損傷してしまうおそれがある。この点、本実施形態の移動式作業台車1は、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cの3つの伸縮手段によって水平維持制御を行う構成である。したがって、制御における第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cの目標の伸縮状態が一意に定まるため、容易なアルゴリズムによって制御を行うことが可能となる。また、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cが相互干渉を生じさせることなく任意の伸縮状態を取れるため、上述した軸受機構5を備えていることとも相まって、作業台6の撓みを抑制することが可能となっている。
【0048】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0049】
上記実施形態では、走行手段としてクローラ3が用いられていた。しかしながら、傾斜面を走行可能であれば、走行手段として、例えば、タイヤによって走行する構成のものを用いることも可能である。
【0050】
上記実施形態では、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cは、それぞれパンタグラフ式とされ、パンタグラフジャッキ41を電動シリンダ40によって駆動する構成であった。しかしながら、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cとして、パンタグラフジャッキ41を用いることなく、電動シリンダ40を直接用いても良い。また、電動シリンダ40の代わりに、電動ネジアクチュエータ又は油圧アクチュエータを用いることも可能である。
【0051】
上記実施形態では、第1の伸縮手段4Aが作業台6の前方の位置において作業台6を支持し、第2の伸縮手段4B及び第3の伸縮手段4Cが作業台6の後方の位置において当該作業台6を支持する構成であった。しかしながら、第1の伸縮手段4A~第3の伸縮手段4Cが作業台6を3点で支持していれば、支持する位置は任意である。
【0052】
上記実施形態では説明しなかったが、水平維持制御を行う際に接地させて移動式作業台車1を安定させる支持脚(図示せず)を設けることも有効である。支持脚を用いることにより、作業台6をより一層安定させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 :移動式作業台車
2 :車体フレーム
3 :クローラ(走行手段)
4A~4C :第1~第3の伸縮手段
5 :軸受機構
6 :作業台
7 :傾き検知手段
8 :制御手段
30 :無限軌道
40 :電動シリンダ
40a :シリンダ部
40b :ロッド部
41 :パンタグラフジャッキ
41a :底板部材
41b :天板部材
41c :アーム部材
41d :シリンダ保持部材
41e :ロッド保持部材
41f :回転軸
41g :回転軸
50 :球面軸受
50a :外輪部材
50b :内輪部材
51 :関節部材
51a :基端部材
51b :先端部材
51c :回転軸
60 :載置面
61 :柵
S1~S15 :ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2020-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式作業台車であって、
地面を走行可能な走行手段と、
第1~第3の伸縮手段と、
載置面を有する作業台と、
前記載置面の傾きを検知する傾き検知手段と、
制御手段と、を備え、
前記第1~第3の伸縮手段はそれぞれ、一端側が前記走行手段側で支持されるとともに、他端側が軸受機構を介して前記作業台に取り付けられており、
前記軸受機構は、球面軸受と一軸の関節部材とを組み合わせて構成され
前記一軸の関節部材は、第1部材と、第2部材と、回転軸とを備え、前記第1部材と前記第2部材とが前記回転軸を介して当該回転軸まわりに回動可能に連結されて構成されており、
前記制御手段は、前記傾き検知手段から前記載置面の傾きの情報を取得して、前記載置面が略水平状態を維持するよう前記第1~第3の伸縮手段を伸縮制御する、移動式作業台車。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式作業台車であって、
前記軸受機構は、前記第1~第3の伸縮手段側に前記球面軸受、前記作業台側に前記関節部材が配置されるよう構成される、移動式作業台車。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動式作業台車であって、
前記傾き検知手段は、前記載置面のロール方向の傾き及びピッチ方向の傾きをそれぞれ検知するよう構成され、
前記第1の伸縮手段は、前記作業台の前方の位置において当該作業台を支持し、
前記第2及び第3の伸縮手段は、前記作業台の後方の位置において当該作業台を支持しており、
前記制御手段は、前記第2の伸縮手段を伸長又は収縮制御するとともに前記第3の伸縮手段を収縮又は伸長制御することで前記載置面のロール方向の傾きを制御し、その後、前記第1の伸縮手段を伸長又は収縮制御するとともに前記第2及び第3の伸縮手段を収縮又は伸長制御することで前記載置面のピッチ方向の傾きを制御する、移動式作業台車。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに記載の移動式作業台車であって、
前記第1~第3の伸縮手段はそれぞれパンタグラフ式とされ、電動シリンダによって駆動する、移動式作業台車。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載の移動式作業台車であって、
前記走行手段は、傾斜面を走行可能なクローラである、移動式作業台車。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかに記載の移動式作業台車であって、
前記作業台には、落下防止用の柵が取り付けられている、移動式作業台車。
【手続補正書】
【提出日】2021-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の傾斜地における収穫作業及び運搬作業に用いられる移動式作業台車であって、
地面を走行可能な走行手段と、
第1~第3の伸縮手段と、
載置面を有する作業台と、
前記載置面の傾きを検知する傾き検知手段と、
制御手段と、を備え、
前記第1~第3の伸縮手段はそれぞれ、一端側が前記走行手段側で支持されるとともに、他端側が軸受機構を介して前記作業台に取り付けられており、
前記軸受機構は、球面軸受と一軸の関節部材とを組み合わせて構成され、
前記一軸の関節部材は、第1部材と、第2部材と、回転軸とを備え、前記第1部材と前記第2部材とが前記回転軸を介して当該回転軸まわりに回動可能に連結されて構成されており、
前記制御手段は、前記傾き検知手段から前記載置面の傾きの情報を取得して、前記載置面が略水平状態を維持するよう前記第1~第3の伸縮手段を伸縮制御する、移動式作業台車。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式作業台車であって、
前記軸受機構は、前記第1~第3の伸縮手段側に前記球面軸受、前記作業台側に前記関節部材が配置されるよう構成される、移動式作業台車。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動式作業台車であって、
前記傾き検知手段は、前記載置面のロール方向の傾き及びピッチ方向の傾きをそれぞれ検知するよう構成され、
前記第1の伸縮手段は、前記作業台の前方の位置において当該作業台を支持し、
前記第2及び第3の伸縮手段は、前記作業台の後方の位置において当該作業台を支持しており、
前記制御手段は、前記第2の伸縮手段を伸長又は収縮制御するとともに前記第3の伸縮手段を収縮又は伸長制御することで前記載置面のロール方向の傾きを制御し、その後、前記第1の伸縮手段を伸長又は収縮制御するとともに前記第2及び第3の伸縮手段を収縮又は伸長制御することで前記載置面のピッチ方向の傾きを制御する、移動式作業台車。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに記載の移動式作業台車であって、
前記第1~第3の伸縮手段はそれぞれパンタグラフ式とされ、電動シリンダによって駆動する、移動式作業台車。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載の移動式作業台車であって、
前記走行手段は、傾斜面を走行可能なクローラである、移動式作業台車。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかに記載の移動式作業台車であって、
前記作業台には、落下防止用の柵が取り付けられている、移動式作業台車。