(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036856
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】落下防止対策を施した平板材及びユニットシート、これを用いた落下防止工法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
E04F13/08 101G
E04F13/08 102N
E04F13/08 102S
E04F13/08 102K
E04F13/08 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141280
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】308031337
【氏名又は名称】株式会社オリオンセラミック
(74)【代理人】
【識別番号】100115303
【氏名又は名称】岩永 和久
(72)【発明者】
【氏名】古賀 謙一郎
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AA50
2E110AB04
2E110BA13
2E110BC03
2E110BC14
2E110CC02
2E110DA12
2E110DC31
2E110GA34W
2E110GB03Z
2E110GB12W
2E110GB23Y
2E110GB32W
2E110GB35Z
(57)【要約】
【課題】タイル貼りの容易さ及びタイルの落下防止を効果的に実現することができるタイル単体及びタイルユニットシート、このタイル単体やタイルユニットシートを用いた落下防止工法を提供する。
【解決手段】ユニットシート1は、目地間隔を設けて複数のタイル10が表面で粘着テープ20によりシート貼りされていて、タイル裏面に形成された溝11に沿って配列され、タイル10の両端から延伸された線材30と、線材30とタイル10とを固着する接着剤50と、を有する。線材30はタイル10の両端から延伸されているので、PC板の配筋に結束することで、落下防止対策を施したユニットシート1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に形成された溝に沿って配列され、片端又は両端から延伸された線材と、
前記線材と平板材とを固着する接着剤と、
を有することを特徴とする平板材。
【請求項2】
目地間隔を設けて複数の平板材が表面でシート貼りされたユニットシートであって、
平板材裏面に形成された溝に沿って配列され、前記平板材の両端から延伸された線材と、
前記線材と前記平板材とを固着する接着剤と、
を有することを特徴とするユニットシート。
【請求項3】
前記線材の上部には、前記線材を押圧する金属具が設けられていることを特徴とする請求項1記載の平板材又は請求項2記載のユニットシート。
【請求項4】
請求項1又は請求項3記載の平板材を用いて、
躯体に埋設される支持具と線材とを結束して平板材の落下防止を施したことを特徴とする落下防止工法。
【請求項5】
請求項2又は請求項3記載のユニットシートを用いて、
PC板或いはPCa板の配筋に前記線材を結束して平板材の落下防止を施したことを特徴とする落下防止工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板材単体又は複数の平板材がシート状にシート貼りされたユニットシートに平板材の落下防止対策を施した平板材及びユニットシート、この平板材又はユニットシートを用いた落下防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビル・マンション・学校・病院等の建築物において、建物の構造躯体を保護するとともに建物の意匠性を向上させる機能的利点から、躯体の壁面にタイル貼りをするタイル施工法が施される。タイル施工法は、後張り工法と先付工法に大分類され、湿式工法と乾式工法とに中分類される後張り工法では、張り付け材料や留め付け材料により、モルタル張り、接着剤張り、金具留め工法、引掛け工法やこれらを併用した工法などに分類される。また、先付工法では、緊張筋を用いて高引張強度を持たせたPC板(Prestressed Concrete)やPCa板(Precast Concrete)を用いるPC工法やPCa工法などに分類される。PCa工法が主流でPC工法はその中の一つの工法の呼び名である。
【0003】
このタイル貼りに際しては、躯体からのタイルの剥落や落下を防止する対策をとることが必要になり、仮にこのような剥落や落下の防止対策が施されていないものは、建築基準法等の関連法規による10年定期点検の義務対象となる。このため、メンテナンスの面においてもこのような防止対策を施した施工が必要となっている。
【0004】
このような防止対策は、直接的又は間接的に躯体に緊結や引っ掛け等で物理的固定を行うタイル張り工法によって実施され、躯体とタイルとを固定具で固定するものがある。
【0005】
また、タイルの落下防止を効果的に実現するため、タイルの裏面に溝が形成されていて、モルタルに対する貼付性を向上させるものがある。例えば、特許文献1に記載のタイルは、溝に金具が設けられ金具を溝に確実に固定するために変形防止部材(接着剤等)を仮止め材として充填して、金具と溝とを接着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-120020号公報(明細書[0068][0071])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、タイルの落下防止対策を行う際に、躯体とタイルとを固定具で固定する上で固定具をタイル裏面の溝に這わせる例は存在しない。大判タイルに比べて小さい45二丁、小口、二丁掛、三丁掛等がユニットシートとして提供されることでタイル貼りの容易さを実現している例もあり、このユニットシートに落下防止対策を施したものが提供できれば、効果的である。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイル等の平板材貼りの容易さ及び平板材の落下防止を効果的に実現することができる平板材及びユニットシート、この平板材やユニットシートを用いた落下防止工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1) 裏面に形成された溝に沿って配列され、片端又は両端から延伸された線材と、前記線材と平板材とを固着する接着剤と、を有することを特徴とする平板材。
【0011】
本発明によれば、平板材裏面に形成された溝に沿って配列された線材と、線材と平板材とを固着する接着剤とにより、平板材単体に落下防止対策を施したものを提供することができる。線材は平板材の片端又は両端から延伸されているので、他の部材に結束可能である。
【0012】
(2) 目地間隔を設けて複数の平板材が表面でシート貼りされたユニットシートであって、平板材裏面に形成された溝に沿って配列され、前記平板材の両端から延伸された線材と、前記線材と前記平板材とを固着する接着剤と、を有することを特徴とするユニットシート。
【0013】
本発明によれば、平板材裏面に形成された溝に沿って配列された線材と、線材と平板材とを固着する接着剤とにより、ユニットシートに落下防止対策を施したものを提供することができる。線材は平板材の両端から延伸されているので、他の部材に結束可能である。
【0014】
(3) 前記線材の上部には、前記線材を押圧する金属具が設けられていることを特徴とする平板材又はユニットシート。
【0015】
本発明によれば、線材の上部には金属具が設けられていて、金属具により線材が押さえられて押圧することから、線材が溝から浮き上がることを防止し、線材と平板材との接着強度を強めて、線材の抜けを防止し、接着強度を増大することができる。
【0016】
(4) 上記平板材を用いて、躯体に埋設される支持具と線材とを結束して平板材の落下防止を施したことを特徴とする落下防止工法。
(5) 上記ユニットシートを用いて、PC板或いはPCa板の配筋に前記線材を結束して平板材の落下防止を施したことを特徴とする落下防止工法。
【0017】
本発明によれば、躯体に埋設される支持具と線材とを結束して、又は、PC板或いはPCa板の配筋に線材を結束して、平板材の落下防止を施すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の平板材及びユニットシートによれば、平板材貼りの容易性・簡便性を損なうことなく、平板材の両端から延伸された線材を配筋に結束することで平板材の落下防止を実現することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係るユニットシートを裏面から見た斜視図。
【
図2】本発明の実施の形態に係るユニットシートの底面図。
【
図4】本発明の実施の形態に係るユニットシートの使用例を示す図。PC工法の例。
【
図5】本発明の実施の形態に係る平板材を裏面から見た斜視図。後張工法の例。
【
図6】本発明の実施の形態に係る平板材の使用例を示す図。後張工法の例。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係るユニットシートについて、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るユニットシート1を裏面から見た斜視図、
図2はユニットシート1の底面図であり、9つの平板材を縦横に整列してユニット化されている例を示している。以下では、平板材としてのタイルをユニット化した例について説明するが、ユニット加工ができる素材であれば石やガラスなどタイル以外にも適用可能である。
【0021】
ユニットシート1は、目地間隔を設けて複数のタイル10が表面で粘着テープ20によってシート貼りされている。タイル10の裏面には凹み溝11が形成されており、この溝11に沿って線材30を配列している。線材30は、各タイル10の両端から延伸されていて目地間隔の間のタイル同士に架け渡されているとともに、ユニットシート1の端側にあるタイル10の両端から延伸されていて配筋と結束できるようにされている。線材30は、ステン線やカーボン線などの強固なものである。なお、目地間隔には仮目地材(不図示)が設けられている。
【0022】
タイル10と線材30とは、接着剤50で固着されている。接着剤50は、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂、瞬間接着剤など成分や種類を問わない。
【0023】
図3は、ユニットシート1を左右片端から見た一部拡大図であり、(A)は矩形溝の例、(B)はアリ溝の例である。タイル10の表面には粘着テープ20が貼られていて、複数のタイル10をユニット化している。タイル10の裏面には溝11が形成されていて、3つの溝の1つに線材30が配列された上で接着剤50で固着されている。また、線材30の上部には溝11の両端で支持される金属具60が設けられている。金属具60は、線材30を押圧して線材を溝11内に収めている。特に、溝11内に線材30を配列して接着剤50を注入する際に、線材30が接着剤50によって浮き上がってしまい溝の上部で固着してしまうと、線材30が溝11から抜けやすくなることから、浮き上がりを防止するために金属具60を利用する。線材30が固着された接着剤50からの抜けを防止するものであり、線材30の引張強度を補強している。金属具60は、例えば溝11の両端で支持されて溝内に収まるものであり、バネ鋼等が挙げられる。
【0024】
図4は、本発明の実施の形態に係るユニットシート1の使用例を示す図である。
図4に示すユニットシート1は、線材30がPC板の配筋Sで結束されていて、タイル10の落下を防止する。
【0025】
図5は、本発明の実施の形態に係る平板材を裏面から見た斜視図、
図6は、本発明の実施の形態に係る平板材の使用例を示す図である。平板材としてのタイル10単体としても落下防止対策が施された本実施形態では、タイル10の裏面に形成された溝11に沿って配列され、片端から延伸された線材30と、線材30を固着する接着剤50と、を有し、さらに線材30が固着された接着剤50からの抜けを防止するための金属具60(不図示。
図3参照)が設けられている。
【0026】
図6は、後張工法の例として本発明の実施の形態に係るタイル取付方法の取付例を示す図である。
まず、躯体の壁面に支持具としてのアンカーボルトを埋設するために、ドリルで下穴を開けておき、アンカーボルトを打ち込んで取り付ける。次に、壁面に変成シリコン・エポキシ樹脂系等の弾性接着剤をだんご状に点張りするかビート状に縦塗りする。次に、タイル10を張り付け、タイル10に付属しているステン線等の線材30をアンカーボルトに巻き付ける。最後に、タイル10の落下防止としてドリルでボルトを締め付けて、線材30を緊結する。
【0027】
図5は平板材単体で線材30はタイル10の片端から延伸されているので、
図6は建物の躯体にアンカーボルト等と結束することで、落下防止対策を施した。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の平板材及びユニットシートは、平板材の落下を防止するものとして有用でありコスト的にも優れている。
【符号の説明】
【0029】
1 ユニットシート
10 タイル(平板材)
20 粘着テープ
30 線材
50 接着剤
60 金属具