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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036876
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/12 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
A01G9/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153436
(22)【出願日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020140779
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505237879
【氏名又は名称】株式会社竹内建築研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和男
(72)【発明者】
【氏名】竹内 貴史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和晴
【テーマコード(参考)】
2B023
【Fターム(参考)】
2B023AA11
2B023AC01
2B023AC02
2B023AC03
2B023AF01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】片手で容易に脱着可能であり、強風時でも樹枝からの果実の落下を防ぎ、果梗を任意の回転位置で固定可能な果実用の固定具を提供する。
【解決手段】固定具10は、第1端部から第1端部に対向する第2端部に向かう方向を長手方向とする板状の形状をなし、第1端部に設けられた懸架具固定機構、第2端部から長手方向の中央付近まで切り込まれた果梗用溝27、果梗用溝の両側に設けられた第1及び第2紐用溝23a,23bを有する果実固定板21と、第1紐状部と第2紐状部とが中央部で結合した構造をなし、中央部が懸架具固定機構に固定され、第1紐状部と第2紐状部によって果実固定板を枝に懸架する懸架具31を備え、中央部から第1紐状部が果実固定板の下面側を通り第1紐用溝を介して果実固定板の上面の上方に突出し、中央部から第2紐状部が下面側を通り第2紐用溝を介して果実固定板の上面の上方に突出することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部から該第1端部に対向する第2端部に向かう方向を長手方向とする板状の形状をなし、前記第1端部に設けられた懸架具固定機構、前記第2端部から前記長手方向の中央付近まで切り込まれて、果実の果梗を固定する果梗用溝、前記果梗用溝の両側の位置に設けられた第1及び第2紐用溝を有する果実固定板と、
第1紐状部と第2紐状部とが中央部で結合した構造をなし、該中央部が前記懸架具固定機構に固定され、前記第1紐状部と第2紐状部によって前記果実固定板を枝に懸架する懸架具と、
を備え、前記中央部から前記第1紐状部が前記果実固定板の下面側を通り前記第1紐用溝を介して前記果実固定板の上面の上方に突出し、前記中央部から前記第2紐状部が前記下面側を通り前記第2紐用溝を介して前記上方に突出することを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記最奥部の壁面が前記第2端部側に隆起した曲面であることを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記果梗用溝が、入口側から前記最奥部に向かうにしたがい、段階的に幅が狭まり、階段状を形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業分野の手作業具に係り、特に樹枝からの果実の落下を防止し、且つ果実の果梗(ツル)を任意の回転位置で固定可能な果実用の固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
果実栽培においては、台風等、強風時の果実の落下が大問題である。果実は風による揺れにより落下する。特に収穫直前の大きなものほど風の影響は大きく、つる(果梗)への負担が大きくなり、果実の落下の危険性が高まる。果実の落下は、主に、果梗と枝の接続部分が離れることにより生じる。又、果実が落下しなくとも、風による揺れで果実が枝等に触れ、傷がついてしまう問題もある。更に、揺れた際に果梗が傷み、それによる果実の生育不良も問題となる。これらの問題は、果実にかける袋の有無を問わないものである。
【0003】
従来技術として、特許文献1に記載の「果実保護袋」及び特許文献2に記載の「落果防止果実袋」が提案されている。特許文献1においては、果実に袋をかけて果梗部分で絞って袋を閉じた後、2本のワイヤをそれぞれ枝に括り付けなければならない。特許文献2でもほぼ同様であるが、果実に袋をかけて果梗部分で絞って袋を閉じた後、1本の針金を枝に巻付けなければならない。特許文献1及び2に記載の技術では果実袋が必須となる。又、果実袋をかけた上で、枝に対する固定動作が生じており、両手での煩雑な手間がかかり、多くの果実に対して行うには多大なる労力が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-3054号公報
【特許文献2】実開平5-70257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであって、片手で容易に脱着可能であり、強風時でも樹枝からの果実の落下を防ぎ、更には果梗を任意の回転位置で固定可能な果実用の固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、(a)第1端部から第1端部に対向する第2端部に向かう方向を長手方向とする板状の形状をなし、第1端部に設けられた懸架具固定機構、第2端部から長手方向の中央付近まで切り込まれて、果実の果梗を固定する果梗用溝、果梗用溝の両側の位置に設けられた第1及び第2紐用溝を有する果実固定板と、(b)第1紐状部と第2紐状部とが中央部で結合した構造をなし、中央部が懸架具固定機構に固定され、第1紐状部と第2紐状部によって果実固定板を枝に懸架する懸架具と、を備え、(c)中央部から第1紐状部が果実固定板の下面側を通り第1紐用溝を介して果実固定板の上面の上方に突出し、中央部から第2紐状部が下面側を通り第2紐用溝を介して果実固定板の上面の上方に突出することを特徴とする固定具であることを要旨とする。
【0007】
本発明によれば片手で容易に脱着可能であり、強風時でも樹枝からの果実の落下を防ぎ、更には果梗を任意の回転位置で固定可能な果実用の固定具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る固定具の斜視図である。
図2図2(a)は第1実施形態に係る固定具の平面図であり、図2(b)は第1実施形態に係る固定具の底面図であり、図2(c)は図2(a)のA部分の拡大図である。
図3】第1実施形態に係る固定具の使用状態を示す図である。
図4図4(a)は図3のA-A方向から見た部分断面図であり、図4(b)は図z4(a)のA部分の拡大図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る固定具の斜視図である。
図6図6(a)は第2実施形態に係る固定具の平面図であり、図6(b)は第2実施形態に係る固定具の底面図であり、図6(c)は図6(a)のA部分の拡大図である。
図7】果実の果梗の仮想的位置を複数示した、図6(a)のB部分の拡大図1である。
図8】果実の果梗の仮想的位置を複数示した、図6(a)のB部分の拡大図2である。
図9】本発明の第3実施形態に係る固定具の斜視図である。
図10図10(a)は第3実施形態に係る固定具の平面図であり、図10(b)は第3実施形態に係る固定具の底面図である。
図11】第3実施形態に係る固定具の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、図面を参照して、本発明の第1~3実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。したがって、具体的な装置の構造や配置、部材間の連係、設置方法等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。本発明の技術的思想は、本発明の第1及び第2実施形態で記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明特定事項の有機的結合が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る固定具10は、図1に示すように、複数の溝を除いた概形(外形の包絡線形状から想起される概略の形状)が矩形板状である果実固定板21と、果実固定板21に接続された紐状の懸架具31の2種類の部材から構成される。果実固定板21は、図1に示すように、果実固定板21の長手方向の一端側の垂直端面(以下において「第1端部」という。)から果実固定板21の長手方向(以下において「長手方向」と略記する。)に沿って互いに平行に切り込まれたU字型の第1懸架具固定機構25a及び第2懸架具固定機構25b、第1端部に平行に対向する長手方向の他端側の垂直端面(以下において「第2端部」という。)の中央部から長手方向に沿った中心位置付近までV字型に切り込まれた果梗用溝27、果梗用溝27の両側において、果梗用溝27の長手方向の中心線にほぼ平行に第2端部から切り込まれたU字型の第1紐用溝23a及び第2紐用溝23bを有する。第1紐用溝23a及び第2紐用溝23bのそれぞれは、果梗用溝27の長手方向の最奥部よりも浅い位置まで長手方向に切り込まれているので、第1紐用溝23a及び第2紐用溝23bの第2端部から測られる長手方向の切り込み深さは、果梗用溝27の長手方向の切り込み深さよりも浅い。懸架具31は、図1に示すように、懸架具31の中央部が果実固定板21の第1懸架具固定機構25aと第2懸架具固定機構25bの間の凸部に引掛けられている。懸架具31の中央部から一端側の領域(懸架具31全体の半分の長さ)は、懸架具31の中央部から第2端部の第1紐用溝23a方向に延伸する「第1紐状部」として、果実固定板21の下面側を通り、先端部分が第1紐用溝23aを介して果実固定板21の上面の上方に向かい、果実固定板21の上面に垂直方向に突出している。これに対向し、懸架具31の中央部から他端側の領域(懸架具31全体の半分の長さ)は、懸架具31の中央部から第2端部の第2紐用溝23b方向に延伸する「第2紐状部」として、果実固定板21の下面側を通り、先端部分が第2紐用溝23bを介して果実固定板21の上面の上方に向かい、果実固定板21の上面に垂直方向に突出している。
【0011】
図1に示すように、果実固定板21の懸架具固定機構(25a、25b)は、果実固定板21の第1端部に第1引掛溝25a及び第2引掛溝25bを有する。第1引掛溝25a及び第2引掛溝25bはそれぞれ、図1においては、果実固定板21の長手方向に平行に切り込まれた、幅が一定であり同一の形状の溝で図示されている。図2(a)の平面図において、第1引掛溝25a及び第2引掛溝25bをそれぞれ凹部とすると、第1引掛溝25aと第2引掛溝25bとの間や両側は凸部とみなされ、第1引掛溝25a及び第2引掛溝25bを含めた周辺部分で凹凸状の懸架具固定機構(25a、25b)が構成される。懸架具固定機構(25a、25b)は、図1に示すように、紐状の懸架具31の中央部を引掛けて果実固定板21に接続するための凹凸である。懸架具固定機構(25a、25b)は懸架具31を引掛けて固定できればよいので、第1引掛溝25a及び第2引掛溝25bのそれぞれの溝の深さや幅は問わず、互いに同一の形状である必要はない。図2(a)等に示すように、果実固定板21の平面図の概形は矩形であり、図2(a)の紙面において、左右方向が長手方向、上下方向が短手方向となる。尚、図2(a)においては、果実固定板21の構造をより見えやすくすべく、図1において図示されている懸架具31の両端部分の果実固定板21上方への突出部分を、中途で切断した断面で示し、懸架具31の両端部分の図示を省略している。
【0012】
図1等に示すように、果実固定板21の果梗用溝27は、果実固定板21の長手方向の第2端部から中央付近まで、長手方向と平行に切り込まれた溝である。図2(a)の平面図においては、果梗用溝27の溝の幅については一定ではなく、溝の入口側から最奥部に向かうにつれ、連続的に狭まるように図示されている。果梗用溝27の最奥部から入口側までは末広がりの構造となる。図2(c)に示すように、果梗用溝27は、溝の最奥部に位置する隆起面27s、隆起面27sの両側に接する第1支持面27a及び第2支持面27bという、3つの面で囲まれた溝である。隆起面27sは、果実固定板21の上面側から下面側にかけての中央部分が一様に緩やかに凸となった面である。第1支持面27a及び第2支持面27bは、果梗用溝27の入口側から最奥部まで続く一対の同一形状の平面である。果梗用溝27は、図3及び図4で示すように、果実の果梗(つる)43を挟むための溝である。
【0013】
第1紐用溝23a及び第2紐用溝23bはそれぞれ、図1等に示すように、果梗用溝27の最奥部よりも果実固定板21の長手方向の第2端部側、即ち、第1引掛溝25a及び第2引掛溝25bが設けられている第1端部側とは反対の端部側に設けられた溝である。第1紐用溝23a及び第2紐用溝23bはそれぞれ、図1等においては、果実固定板21の長手方向に平行に切り込まれた、幅が一定であり、果梗用溝27の両脇に位置する同一の形状の溝で図示されている。第1紐用溝23a及び第2紐用溝23bは、図1に示すように、懸架具31の紐状部の両端部分を、果実固定板21の上方に突出させるための溝である。懸架具31の紐状部の両端部分は、図1に示すように、果梗用溝27の最奥部より第2端部側の位置から果実固定板21の上方に突出することになる。
【0014】
懸架具31は、中央部と、中央部から両端に延伸する2本の紐状部、即ち第1及び第2紐状部から構成される紐状体である。懸架具31の中央部は、懸架具31全体のうち、果実固定板21の上面にて第1引掛溝25a及び第2引掛溝25bのそれぞれの最奥部をつなぐように渡されている部分である。懸架具31の第1紐状部は、懸架具31全体のうち、図1において懸架具31の中央部の紙面奥側から連続する部分であり、第1引掛溝25aを通って果実固定板21の下面側を第1紐用溝23a側に走り、第1紐用溝23aの最奥部から果実固定板21の上方に向かって突出する。懸架具31の第2紐状部は、懸架具31全体のうち、図1において懸架具31の中央部の紙面手前側から連続する部分であり、第2引掛溝25bを通って果実固定板21の下面側を第2紐用溝23b側に走り、第2紐用溝23bの最奥部から果実固定板21の上方に向かって突出する。図1においては、第1及び第2紐状部のそれぞれの端部は環状で図示されているが、環状でなくてもよい。懸架具31の中央部、第1及び第2紐状部は、それぞれ連続して一体となった構造であってもよいし、それぞれ別個の部材からなる合成部材であってもよい。
【0015】
固定具10は、果実固定板21と懸架具31とが互いに脱着可能な状態であってもよいし、果実固定板21の一部と懸架具31の一部とが互いに脱離不能の状態であってもよい。果実固定板21と懸架具31とが互いに脱着可能である場合は、固定具10を使用しない時には、果実固定板21と懸架具31とを別々に保管しておくことも可能である。果実固定板21の一部と懸架具31の一部とが互いに脱離不能とするには、例えば懸架具31の中央部と果実固定板21の懸架具固定機構(25a、25b)を接着等して固定してもよいし、果実固定板21の下面側と懸架具31の第1及び第2紐状部を接着等して固定してもよいし、それ以外であってもよい。
【0016】
果実固定板21の素材としては、木材、金属、樹脂等、様々な素材を採用することができる。果実固定板21の素材として木材を用いた場合は、軽量であり、かつ、自然に優しく、果実や樹木自体に傷をつけにくいという効果を奏する。果実固定板21の素材としてアルミニウム等の金属を用いた場合は、強度を保ったまま果実固定板21の厚さをより薄くすることも可能であり、それにより部材全体の軽量化を行うことができる。
【0017】
懸架具31の素材としては、金属、樹脂等、様々な素材を採用することができ、また、複数の異なる素材を組み合わせて用いることも可能である。懸架具31として、例えば、細い針金状の部材を芯として、細い繊維状の部材を織り込んだ、いわゆるモールのような素材を採用することができる。懸架具31は使用の際に手指等で形状を変えられることと、固定具10自体を果実の枝に固定できることとを両立するため、少なくとも懸架具31の両端部分は形状可変な金属製であることが好ましい。
【0018】
第1実施形態に係る固定具10は、図3及び図4に示すように、果梗用溝27で果実41の果梗43を挟むようにして、果実41と枝45の間に果実固定板21を差し入れ、懸架具31の両端部分を枝45に固定して用いる。図4(a)及び(b)に示すように、固定の観点からは、果梗43は果梗用溝27の最奥部に位置させることが好ましい。図4(b)に示すように、果梗43は、隆起面27s、第1支持面27a及び第2支持面27bの3カ所で保持されることが好ましい。果梗43と隆起面27s、第1支持面27a及び第2支持面27bとのそれぞれの接し方は、点状、線状又は面状のいずれでもよい。果梗43の垂直方向の保持位置については、図3に示すように、果梗43と枝45の接続付近であれば尚よい。図3に示すように、果梗43が枝45に近い程太くなるタイプの果実であれば、果実固定板21の第2端部側、即ち、果梗用溝27の入口側が上になるように水平状態から傾けることで、果梗用溝27がより果梗43に食い込んで固定されやすくなる。図3のように果実固定板21を水平から傾けた状態で懸架具31を枝45に固定すると、果梗43と枝45の結合力がより高まる。尚、図3に示すのは、枝45がほぼ水平であり、果梗43が略垂直の場合であり、果実固定板21を果梗用溝27の入口側が上になるように水平状態から傾けることで固定力を増大させることができるが、果実41は自然物であり、果実41の生り方は図3の通りとは限らない。例えば、枝45が図3に示すよりも紙面右方が大きく下方に傾いていると、果梗43は図3の通りに真っ直ぐとはならず、果実41の重みにより湾曲する場合もある。果梗43が湾曲した場合であっても、果梗43と枝45の接続付近で果実固定板21により果梗43を保持することが可能であれば、第1実施形態に係る固定具10は問題なく使用することができる。又、図3に示すのは、枝45の下側に果梗43が接続している場合を図示しているが、果梗43の接続箇所は、枝45の側面側や上側等多岐にわたる。果梗43が枝45の側面側や上側に接続している場合であっても、果梗43と枝45の接続付近で果実固定板21により果梗43を保持することが可能であれば、第1実施形態に係る固定具10は問題なく使用することができる。図5に示す第2実施形態に係る固定具11においても同様である。
【0019】
図3に示すように、懸架具31を枝45に固定する際には、懸架具31の中央部、第1及び第2紐状部全体にわたって、撓まずにピンと張られた状態が好ましい。懸架具31をピンと張るようにすると、懸架具31の両端部分を上方に引っ張ることとなり、果実固定板21の第1端部側、即ち、懸架具固定機構(25a、25b)が設けられた第1端部側が相対的に下がることとなる。固定具10の使用の際には、果実固定板21の第1端部側は果実41に触れても構わないし、果実固定板21の第2端部側が枝45に触れても構わない。懸架具31を枝45に固定する際には、図3にも示すように、懸架具31の両端部分を枝45の上側で捻じりあげるようにして互いを絡ませて固定してもよいし、懸架具31の両端部分を枝45の上側で結んで固定してもよい。
【0020】
第1実施形態に係る固定具10は、図3及び図4に示す状態から、懸架具31の両端部分の枝45への固定を解除し、果実固定板21を果実41と枝45の間から抜いて果梗43への固定を解除することで、果実41から脱離させることができる。即ち、固定の場合の逆の作業で、固定具10を果実41から脱離させることができる。
【0021】
第1実施形態に係る固定具10は、果梗用溝27の最奥部よりも果実固定板21の第2端部寄りの位置で、第1支持面27a及び第2支持面27bの2カ所の保持により、果梗43を固定してもよい。自然物である果実41の果梗43は、果実の種類による差や同種内の個体差により、太さが不揃いである。様々な太さの果梗43に対応できるよう、果梗用溝27は、図1等に示すように、溝の幅が連続的に変化した構造である方が好ましい。又、果実41の成長度合等に応じて、一度固定した果梗43の固定位置を果梗用溝27内で変動させることもできる。例えば、果梗用溝27の最奥部において3カ所の保持により一度固定した果梗43が成長により太くなった際に、果梗用溝27の最奥部から果実固定板21の第2端部寄りの位置に果梗43が位置するよう、水平方向に果実固定板21を移動させ、2カ所の保持により果梗43を固定し直す、というものである。その際、果梗43と果梗用溝27の相対的位置がずれるため、固定具10の固定自体に不具合が生じる可能性もある。その場合は必要に応じて、果実固定板21の水平面からの傾きを変動させたり、懸架具31をきつく締め直したり、あるいは懸架具31を緩めたりする作業が伴ってもよい。又、上記とは逆に、第1支持面27a及び第2支持面27bの2カ所の保持から、隆起面27sも加えた3カ所の保持にするよう、果梗43を固定し直すことも可能である。
【0022】
更に例えば、果梗用溝27の最奥部において3カ所の保持により一度固定した果梗43が成長により太くなった際に、果梗43を果梗用溝27の最奥部に位置させたまま、果実固定板21を上下方向に動かし、より細い部位で果梗43を固定するように調整し直すことも可能である。その際、果梗43と果梗用溝27の相対的位置がずれるため固定具10の固定自体に不具合が生じる可能性もある。その場合は必要に応じて、果実固定板21の水平面からの傾きを変動させたり、懸架具31をきつく締め直したり、あるいは懸架具31を緩めたりする作業が伴ってもよい。
【0023】
第1実施形態に係る固定具10の取付け時期は、果実の成長段階のいつでもよい。同様に、第1実施形態に係る固定具10の取外し時期についても、果実の成長段階のいつでもよい。図3の果実41をリンゴと仮定すると、実すぐり(摘果)時に取り付けてもよいし、より収穫期に近づいたツル回し時等に取り付けてもよい。台風等の強風の前に、落下させたくない果実、又は、高所等の落下の危険性が高い果実に取り付けてもよい。
【0024】
第1実施形態に係る固定具10によれば、台風等の強風時であっても果実の揺れを防止し、果実が樹枝から落下する危険性を大幅に低減することができる。第1実施形態に係る固定具10は、「果梗への取付け」及び「樹枝への取付け」の2段階の工程で、誰でも片手で容易に取り付けることができる。取り外しについても同様に、「樹枝からの取外し」及び「果梗からの取外し」の2段階の工程で、誰でも片手で容易に取り外すことができる。
【0025】
第1実施形態に係る固定具10によれば、取付けの時期を問わないため、例えば強風が吹く直前であっても容易に多数の果実落下防止処置を短時間で行うことができる。
【0026】
第1実施形態に係る固定具10によれば、強風時の果実落下防止のみならず、果実を任意の回転位置で固定する際にも好適に用いることができる。例えば対象の果実がリンゴである場合、色むらを無くすべく、全面を良く日光に当てるために「ツル回し」を収穫前に行うのが一般的である。ツル回しにおいては、ツル(果梗)を回転軸として回転させて、望みの回転位置でそのまま留めておく必要がある。元々樹枝にもたれかかっているリンゴであれば、回転後、その樹枝にもたれかからせれば固定されるが、樹枝と直接の接触がないリンゴは、ツルを回転軸として回転させても、手を離せば元の位置に戻ってしまう。第1実施形態に係る固定具10を用いることで、樹枝と直接の接触がないリンゴであっても、任意の回転位置でリンゴの向きを固定することが容易となり、色むらの少ないリンゴを得ることが可能となる。第1実施形態に係る固定具10は取付けの向きや角度を変えることが可能であるため、第1実施形態に係る固定具10自体が色むらの要因とはならずに使用を継続することができる。
【0027】
第1実施形態に係る固定具10によれば、果実袋等のような他の用具は不要であり、何度でも再利用可能である。例えば、リンゴに被せる果実袋は取り外す際には破くことが多く、再利用は不可能である。第1実施形態に係る固定具10は再利用が可能であるので、大変経済的である。
【0028】
第1実施形態に係る固定具10によれば、果実や樹枝を傷つけることなく、果実を樹枝に固定することができる。第1実施形態に係る固定具10の果梗用溝27は、果梗の太さに応じて挟む箇所を変えることが容易である。又、果梗用溝27は入口側が開放されており、果梗の成育スペースが確保されている。果梗の成長が妨げられないため、果肉の成育も阻害されない。
【0029】
第1実施形態に係る固定具10によれば、果実の重量が増し、果梗の径が大きくなる程、果梗の固定力が増大し、効果的に果実落下防止を行える。収穫期間近の重量が増した果実の果梗に対する固定力が増すことで、効果的に果実の落下を防止できる。
【0030】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る固定具11は、図5に示すように、複数の溝を除いた概形が矩形板状である果実固定板51と、果実固定板51に接続された紐状の懸架具61の2つの部材から構成される。果実固定板51は、図5に示すように、第1端部に設けられた凹凸状の懸架具固定機構(55a、55b)、第2端部から中央付近まで切り込まれた果梗用溝57、果梗用溝57の最奥部よりも第2端部側に設けられた第1紐用溝53a及び第2紐用溝53bを有する。懸架具61は、図5に示すように、中央部が果実固定板51の懸架具固定機構(55a、55b)に引掛けられ、中央部から一方に延伸する第1紐状部が果実固定板51の下面側を通り第1紐用溝53aを介して果実固定板51の上面の上方に突出し、中央部から他方に延伸する第2紐状部が果実固定板51の下面側を通り第2紐用溝53bを介して果実固定板51の上面の上方に突出している。尚、第2実施形態に係る固定具11における、果実固定板51の「第1端部」及び「第2端部」、懸架具61の「中央部」、「第1紐状部」及び「第2紐状部」については、第1実施形態に係る固定具10と同様の考え方であり、同様の配置・接続関係等となる。
【0031】
図5に示すように、果実固定板51の懸架具固定機構(55a、55b)は、図1に示す第1実施形態に係る果実固定板21の懸架具固定機構(25a、25b)と同様に、果実固定板51の第1端部に第1引掛溝55a及び第2引掛溝55bを有する。第1引掛溝55a及び第2引掛溝55bはそれぞれ、図5においては、果実固定板51の長手方向に平行に切り込まれた、幅が一定であり同一の形状の溝で図示されている。図6(a)の平面図において、第1引掛溝55a及び第2引掛溝55bをそれぞれ凹部とすると、第1引掛溝55aと第2引掛溝55bとの間や両側は凸部とみなせ、第1引掛溝55a及び第2引掛溝55bを含めた周辺部分で凹凸状の懸架具固定機構(55a、55b)が構成される。懸架具固定機構(55a、55b)は、図5に示すように、紐状の懸架具61の中央部を引掛けて果実固定板51に接続するための凹凸である。懸架具固定機構(55a、55b)は懸架具61を引掛けて固定できればよいので、第1引掛溝55a及び第2引掛溝55bのそれぞれの溝の深さや幅は問わず、互いに同一の形状である必要はない。図6(a)等に示すように、果実固定板51の平面図の概形は矩形であり、図6(a)の紙面において、左右方向が長手方向、上下方向が短手方向となる。尚、図6(a)においては、果実固定板51の構造をより見えやすくすべく、図5において図示されている懸架具61の両端部分の果実固定板51上方への突出部分を、中途で切断した断面で示し、懸架具61の両端部分の図示を省略している。
【0032】
図5等に示すように、果実固定板51の果梗用溝57は、果実固定板51の第2端部から中央付近まで、長手方向と平行に切り込まれた溝である。図6(c)の平面図においては、果梗用溝57の溝の幅については一定ではなく、溝の入口側から最奥部に向かうにつれ、段階的に狭まるように図示されている。図6(c)に示すように、果梗用溝57は、溝の最奥部に位置する第1空間57a、第1空間57aに隣接する第2空間57b、第2空間57bに隣接する第3空間57cから構成される。第3空間57cは、第2空間57bに隣接する部分から、果梗用溝57の入口まで続く空間である。図6(c)に示すように、溝の最奥部となる第1空間57aの幅が最も狭く、第2空間57bの幅が第1空間57aの幅より広く、第3空間57cのうち第2空間57bに隣接する部分の幅が第2空間57bの幅より広い。第3空間57cは、図6(a)~図6(c)に示すように、連続的に幅が狭まっていてもよい。図6(c)においては、果梗用溝57は最奥部に向かって2段階で狭まり、第1空間57aと第2空間57bとの境界及び第2空間57bと第3空間57cとの境界でそれぞれ、段差が設けられた構造である。果梗用溝57の階段状の幅の狭まりは、図6(c)においては2段階であるが、それ以上の数設けられていてもよい。果梗用溝57は、図7及び図8で示すように、果実の果梗(つる)を挟むための溝である。
【0033】
第1紐用溝53a及び第2紐用溝53bはそれぞれ、図5等に示すように、果梗用溝57の最奥部よりも果実固定板51の第2端部側に設けられた溝である。第1紐用溝53a及び第2紐用溝53bはそれぞれ、図5等においては、果実固定板51の短手方向に平行に切り込まれた、幅が一定であり、果梗用溝57の両脇に位置する同一の形状の溝で図示されている。第1紐用溝53a及び第2紐用溝53bは、図5に示すように、懸架具61の両端部分を、果実固定板51の上方に突出させるための溝である。懸架具61の両端部分は、図5に示すように、果梗用溝57の最奥部より第2端部側の位置から果実固定板51の上方に突出することになる。
【0034】
懸架具61は、図1に示す第1実施形態に係る懸架具31と同様に、中央部と、中央部から両端に延伸する2本の紐状部、即ち第1及び第2紐状部から構成される紐状体である。懸架具61の中央部は、懸架具61全体のうち、果実固定板51の上面にて第1引掛溝55a及び第2引掛溝55bのそれぞれの最奥部をつなぐように渡されている部分である。懸架具61の第1紐状部は、懸架具61全体のうち、図5において懸架具61の中央部の紙面奥側から連続する部分であり、第1引掛溝55aを通って果実固定板51の下面側を第1紐用溝53aの最奥部側に走り、第1紐用溝53aの最奥部から果実固定板51の上方に向かって突出する。懸架具61の第2紐状部は、懸架具61全体のうち、図5において懸架具61の中央部の紙面手前側から連続する部分であり、第2引掛溝55bを通って果実固定板51の下面側を第2紐用溝53bの最奥部側に走り、第2紐用溝53bの最奥部から果実固定板51の上方に向かって突出する。図5においては、第1及び第2紐状部のそれぞれの端部は環状で図示されているが、環状でなくてもよい。懸架具61の中央部、第1及び第2紐状部は、それぞれ連続して一体となった構造であってもよいし、それぞれ別個の部材からなる合成部材であってもよい。
【0035】
固定具11は、図1に示す第1実施形態に係る固定具10と同様に、果実固定板51と懸架具61とが互いに脱着可能な状態であってもよいし、果実固定板51の一部と懸架具61の一部とが互いに脱離不能の状態であってもよい。果実固定板51と懸架具61とが互いに脱着可能である場合は、固定具11を使用しない時には、果実固定板51と懸架具61とを別々に保管しておくことも可能である。果実固定板51の一部と懸架具61の一部とが互いに脱離不能とするには、例えば懸架具61の中央部と果実固定板51の懸架具固定機構(55a、55b)を接着等して固定してもよいし、果実固定板51の下面側と懸架具61の第1及び第2紐状部を接着等して固定してもよいし、それ以外であってもよい。
【0036】
果実固定板51の素材としては、図1に示す第1実施形態に係る果実固定板21と同様に、木材、金属、樹脂等、様々な素材を採用することができる。果実固定板51の素材として木材を用いた場合は、軽量であり、かつ、自然に優しく、果実や樹木自体に傷をつけにくいという効果を奏する。果実固定板51の素材としてアルミニウム等の金属を用いた場合は、強度を保ったまま果実固定板51の厚さをより薄くすることも可能であり、それにより部材全体の軽量化を行うことができる。
【0037】
懸架具61の素材としては、図1に示す第1実施形態に係る懸架具31と同様に、金属、樹脂等、様々な素材を採用することができ、また、複数の異なる素材を組み合わせて用いることも可能である。懸架具61として、例えば、細い針金状の部材を芯として、細い繊維状の部材を織り込んだ、いわゆるモールのような素材を採用することができる。懸架具61は使用の際に手指等で形状を変えられることと、固定具11自体を果実の枝に固定できることとを両立するため、少なくとも懸架具61の両端部分は形状可変な金属製であることが好ましい。
【0038】
第2実施形態に係る固定具11は、第1実施形態に係る固定具10と同様に、図3に示すような方法で、果梗用溝57で果実の果梗を挟むようにして、果実と枝の間に果実固定板51を差し入れ、懸架具61の両端部分を枝に固定して用いる。図7に固定位置を例示するように、固定の観点からは、果梗は果梗用溝57の最奥部である第1空間57aに収まるように、第1固定位置43aに位置させることが好ましい。図7に示すように、第1固定位置43aにて、果梗は第1空間57aの壁面の3カ所に接して固定されるのが好ましい。果梗の垂直方向の保持位置については、図3に示す第1実施形態に係る固定具10と同様に、果梗と枝の接続付近であれば尚よい。図3に示すように、果梗が枝に近い程太くなるタイプの果実であれば、果実固定板51の第2端部側、即ち、果梗用溝57の入口側が上になるように水平状態から傾けることで、果梗用溝57がより果梗に食い込んで固定されやすくなる。図3の果実固定板21のように、果実固定板51を水平から傾けた状態で懸架具61を固定すると、果梗と枝の結合力がより高まる。懸架具61を枝に固定する際には、懸架具61の中央部、第1及び第2紐状部全体にわたって、撓まずにピンと張られた状態が好ましい。懸架具61をピンと張るようにすると、懸架具61の両端部分を上方に引っ張ることとなり、果実固定板51の第1端部側、即ち、懸架具固定機構(55a、55b)が設けられた第1端部側が相対的に下がることとなる。固定具11の使用の際には、果実固定板51の第1端部側は果実に触れても構わないし、果実固定板51の第2端部側が枝に触れても構わない。懸架具61を枝に固定する際には、図3の第1実施形態に係る懸架具31と同様に、懸架具61の両端部分を枝の上側で捻じりあげるようにして互いを絡ませて固定してもよいし、懸架具61の両端部分を枝の上側で結んで固定してもよい。
【0039】
第2実施形態に係る固定具11は、図3に示すような固定された状態から、懸架具61の両端部分の枝への固定を解除し、果実固定板51を果実と枝の間から抜いて果梗への固定を解除することで、果実から脱離させることができる。即ち、固定の場合の逆の作業で、固定具11を果実から脱離させることができる。
【0040】
第2実施形態に係る固定具11は、果梗用溝57の最奥部よりも果実固定板51の第2端部寄りの位置で、即ち、図7に示す第2空間57bの第2固定位置43bに果梗が収まるようにすることも可能である。この場合、図7に示すように、第2固定位置43bにて、果梗は第2空間57bの対向する壁面の2カ所に接し、固定されるのが好ましい。又、果実の成長度合等に応じて、一度固定した果梗の固定位置を果梗用溝57内で変動させることもできる。例えば、第1固定位置43aにおいて3カ所の保持により一度固定した果梗が成長により太くなった際に、第2固定位置43bに果梗が位置するよう、水平方向に果実固定板51を移動させ、2カ所の保持により果梗を固定し直す、というものである。その際、果梗と果梗用溝57の相対的位置がずれるため、固定具11の固定自体に不具合が生じる可能性もある。その場合は必要に応じて、果実固定板51の水平面からの傾きを変動させたり、懸架具61をきつく締め直したり、あるいは懸架具61を緩めたりする作業が伴ってもよい。又、上記とは逆に、第2固定位置43bでの2カ所の保持から、第1固定位置43aでの3カ所の保持にするよう、果梗を固定し直すことも可能である。
【0041】
第2実施形態に係る固定具11は、第2空間57bよりも果実固定板51の第2端部寄りの位置で、即ち、図7に示す第3空間57cの第3固定位置43cに収まるように果梗を位置させることも可能である。この場合、図7に示すように、第3固定位置43cにて、果梗は第3空間57cの対向する壁面の2カ所に接して固定されるのが好ましい。又、果実の成長度合等に応じて、一度固定した果梗の固定位置を果梗用溝57内で変動させることもできる。例えば、第1固定位置43a又は第2固定位置43bにおいて3カ所又は2カ所の保持により一度固定した果梗が成長により太くなった際に、第3固定位置43cに果梗が位置するよう、水平方向に果実固定板51を移動させ、2カ所の保持により果梗を固定し直す、というものである。その際、果梗と果梗用溝57の相対的位置がずれるため、固定具11の固定自体に不具合が生じる可能性もある。その場合は必要に応じて、果実固定板51の水平面からの傾きを変動させたり、懸架具61をきつく締め直したり、あるいは懸架具61を緩めたりする作業が伴ってもよい。又、上記とは逆に、第3固定位置43cでの2カ所の保持から、第1固定位置43aでの3カ所の保持又は第2固定位置43bでの2カ所の保持にするよう、果梗を固定し直すことも可能である。
【0042】
更に例えば、果梗用溝57の第1固定位置43aにおいて3カ所の保持により一度固定した果梗が成長により太くなった際に、果梗を果梗用溝57の第1固定位置43aに位置させたまま、果実固定板51を上下方向に動かし、より細い部位で果梗を固定するように調整し直すことも可能である。第2固定位置43b及び第3固定位置43cについても同様である。その際、果梗と果梗用溝57の相対的位置がずれるため固定具11の固定自体に不具合が生じる可能性もある。その場合は必要に応じて、果実固定板51の水平面からの傾きを変動させたり、懸架具61をきつく締め直したり、あるいは懸架具61を緩めたりする作業が伴ってもよい。
【0043】
第2実施形態に係る固定具11は、図7の第1空間57aよりも果実固定板51の第2端部寄りの位置で、即ち、図8に示す第4固定位置43dに果梗が収まるようにすることも可能である。この場合、図8に示すように、第4固定位置43dにて、果梗は第2空間57bの壁面の2カ所と、第1空間57aと第2空間57bの境界の段差の2カ所の、合計4カ所に接して固定されるのが好ましい。又、果実の成長度合等に応じて、一度固定した果梗の固定位置を果梗用溝57内で変動させることもできる。例えば、第1固定位置43aにおいて3カ所の保持により一度固定した果梗が成長により太くなった際に、第4固定位置43dに果梗が位置するよう、水平方向に果実固定板51を移動させ、4カ所の保持により果梗を固定し直す、というものである。その際、果梗と果梗用溝57の相対的位置がずれるため、固定具11の固定自体に不具合が生じる可能性もある。その場合は必要に応じて、果実固定板51の水平面からの傾きを変動させたり、懸架具61をきつく締め直したり、あるいは懸架具61を緩めたりする作業が伴ってもよい。又、上記とは逆に、第4固定位置43dでの4カ所の保持から、第1固定位置43aでの3カ所の保持にするよう、果梗を固定し直すことも可能である。
【0044】
第2実施形態に係る固定具11は、第4固定位置43dよりも果実固定板51の第2端部寄りの位置で、即ち、図8に示す第5固定位置43eに果梗が収まるようにすることも可能である。この場合、図8に示すように、第5固定位置43eにて、第4固定位置43dと同様に、果梗は第3空間57cの壁面の2カ所と、第2空間57bと第3空間57cの境界の段差の2カ所の、合計4カ所に接して固定されるのが好ましい。又、果実の成長度合等に応じて、一度固定した果梗の固定位置を果梗用溝57内で変動させることもできる。例えば、第1固定位置43a、第2固定位置43b又は第4固定位置43dにおける保持により一度固定した果梗が成長により太くなった際に、第5固定位置43eに果梗が位置するよう、水平方向に果実固定板51を移動させ、4カ所の保持により果梗を固定し直す、というものである。その際、果梗と果梗用溝57の相対的位置がずれるため、固定具11の固定自体に不具合が生じる可能性もある。その場合は必要に応じて、果実固定板51の水平面からの傾きを変動させたり、懸架具61をきつく締め直したり、あるいは懸架具61を緩めたりする作業が伴ってもよい。又、上記とは逆に、第5固定位置43eでの4カ所の保持から、他の固定位置での保持にするよう、果梗を固定し直すことも可能である。
【0045】
更に例えば、果梗用溝57の第4固定位置43d又は第5固定位置43eにおいて34カ所の保持により一度固定した果梗が成長により太くなった際に、果梗を果梗用溝57の第4固定位置43d又は第5固定位置43eに位置させたまま、果実固定板51を上下方向に動かし、より細い部位で果梗を固定するように調整し直すことも可能である。その際、果梗と果梗用溝57の相対的位置がずれるため固定具11の固定自体に不具合が生じる可能性もある。その場合は必要に応じて、果実固定板51の水平面からの傾きを変動させたり、懸架具61をきつく締め直したり、あるいは懸架具61を緩めたりする作業が伴ってもよい。
【0046】
固定具11は、図7及び8に示すように、第1固定位置43a、第2固定位置43b、第3固定位置43c、第4固定位置43d及び第5固定位置43eのいずれに果梗が位置していても、第1切込溝53aの最奥部が果梗の固定位置より果実固定板51の第1端部側にならないことが好ましい。図5に示す第2切込溝53bについても同様である。第1切込溝53a及び第2切込溝53bのそれぞれの最奥部が果梗の固定位置より果実固定板51の第1端部側にならないことで、固定具11の固定の際に、果実固定板51の第1端部側を相対的に下方に傾けることが容易となる。
【0047】
図7及び8に示す、第1固定位置43a、第2固定位置43b、第3固定位置43c、第4固定位置43d及び第5固定位置43eは、果梗の固定位置のあくまで例示の位置であり、この5つの固定位置に限られるものではない。
【0048】
第2実施形態に係る固定具11の取付け時期は、第1実施形態に係る固定具10と同様に、果実の成長段階のいつでもよい。同様に、第2実施形態に係る固定具11の取外し時期についても、果実の成長段階のいつでもよい。対象の果実をリンゴと仮定すると、実すぐり(摘果)時に取り付けてもよいし、より収穫期に近づいたツル回し時等に取り付けてもよい。台風等の強風の前に、落下させたくない果実、又は、高所等の落下の危険性が高い果実に取り付けてもよい。
【0049】
第2実施形態に係る固定具11によれば、台風等の強風時であっても果実の揺れを防止し、果実が樹枝から落下する危険性を大幅に低減することができる。第2実施形態に係る固定具11は、「果梗への取付け」及び「樹枝への取付け」の2段階の工程で、誰でも片手で容易に取り付けることができる。取り外しについても同様に、「樹枝からの取外し」及び「果梗からの取外し」の2段階の工程で、誰でも片手で容易に取り外すことができる。
【0050】
第2実施形態に係る固定具11によれば、取付けの時期を問わないため、例えば強風が吹く直前であっても容易に多数の果実落下防止処置を短時間で行うことができる。
【0051】
第2実施形態に係る固定具11によれば、強風時の果実落下防止のみならず、果実を任意の回転位置で固定する際にも好適に用いることができる。例えば対象の果実がリンゴである場合、色むらを無くすべく、全面を良く日光に当てるために「ツル回し」を収穫前に行うのが一般的である。ツル回しにおいては、ツル(果梗)を回転軸として回転させて、望みの回転位置でそのまま留めておく必要がある。元々樹枝にもたれかかっているリンゴであれば、回転後、その樹枝にもたれかからせれば固定されるが、樹枝と直接の接触がないリンゴは、ツルを回転軸として回転させても、手を離せば元の位置に戻ってしまう。第2実施形態に係る固定具11を用いることで、樹枝と直接の接触がないリンゴであっても、任意の回転位置でリンゴの向きを固定することが容易となり、色むらの少ないリンゴを得ることが可能となる。第2実施形態に係る固定具11は取付けの向きや角度を変えることが可能であるため、第2実施形態に係る固定具11自体が色むらの要因とはならずに使用を継続することができる。
【0052】
第2実施形態に係る固定具11によれば、果実袋等のような他の用具は不要であり、何度でも再利用可能である。例えば、リンゴに被せる果実袋は取り外す際には破くことが多く、再利用は不可能である。第2実施形態に係る固定具11は再利用が可能であるので、大変経済的である。
【0053】
第2実施形態に係る固定具11によれば、果実や樹枝を傷つけることなく、果実を樹枝に固定することができる。第2実施形態に係る固定具11の果梗用溝57は、果梗の太さに応じて挟む箇所を変えることが容易である。又、果梗用溝57は入口側が開放されており、果梗の成育スペースが確保されている。果梗の成長が妨げられないため、果肉の成育も阻害されない。
【0054】
第2実施形態に係る固定具11によれば、果実の重量が増し、果梗の径が大きくなる程、果梗の固定力が増大し、効果的に果実落下防止を行える。収穫期間近の重量が増した果実の果梗に対する固定力が増すことで、効果的に果実の落下を防止できる。
【0055】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る固定具12は、図9に示すように、溝を除いた概形が矩形板状である果実固定板22と、果実固定板22の下面に接続された帯状の懸架具(32a、32b)の2種類の部材から構成される。果実固定板22においては、図9の紙面において、矩形平板の右側の一端側に位置し、右上方向を長辺方向として伸びる長方形の垂直端面を「第1端部」と定義すると、第1端部に平行に対向する垂直端面である「第2端部」は図9の紙面左側(奥側)の他端側の端面であり、この垂直端面に溝の開口部が定義される。果実固定板22においては、第1端部から対向する第2端部に向かう方向が果実固定板22の「長手方向」となる。又は、第2端部から対向する第1端部に向かう方向を果実固定板22の「長手方向」としてもよい。果梗用溝28は、果実固定板22の第2端部の中央部から長手方向の中央付近まで切り込まれているV字型の溝である。V字型の溝によって第2端部は2つの横長の長方形の垂直端面に分割される。V字型の溝は、V字の底に位置する小さな垂直端面とV字を形成する2つの横長の長方形の垂直端面を有する。
【0056】
懸架具(32a、32b)は、図9及び図10に示すように帯状の第1懸架帯32a及び帯状の第2懸架帯32bにより構成される。図9に示すように、第1懸架帯32aは果実固定板22の下面に向かい左下方向に伸び、第1懸架帯32aの左下側の短辺付近は、果梗用溝28の最奥部より第2端部側において、果実固定板22の下面に接続されている。第2懸架帯32bは図9において、果実固定板22の下面に向かい右上方向に伸び、右上側の短辺付近は、果梗用溝28の最奥部より第2端部側において、果実固定板22の下面に接続されている。図10(b)では、第1懸架帯32aは上方向に伸び、第1懸架帯32aの上側の短辺付近は、果梗用溝28の最奥部より第2端部側において、果実固定板22の下面に接続されている。第2懸架帯32bは図10(b)において、下方向に伸び、下側の短辺付近は、果梗用溝28の最奥部より第2端部側において、果実固定板22の下面に接続されている。図10(b)から分かるように、第1懸架帯32aの上側の短辺と第2懸架帯32bの下側の短辺は、互いに対向し、この対向する位置において、それぞれの一方の端部を固定され、それぞれの他方の端部は互いに反対方向に延伸する。
【0057】
第1懸架帯32a及び第2懸架帯32bは、長手方向の長さが同程度であってもよいし、異なっていてもよい。第1懸架帯32a及び第2懸架帯32bの延伸部分の一方の面(これを「上面」と定義する。)は、図9及び図10に示すように、フック状又はループ状に密集して起毛された面であり、「面ファスナー」と等価な構造(面ファスナー構造)を構成している。面ファスナー構造は、第1懸架帯32a及び第2懸架帯32bの延伸部分の上面にそれぞれフックとループの両方が植え込まれ、フック面とループ面との区別のないタイプでもよく、マッシュルーム状に起毛されていてもよく、更には鋸歯状のシャークバイト(鮫歯)タイプでもよく、上面の面ファスナー構造には種々のバリエーションが採用可能である。
【0058】
図9及び10に示すように、果実固定板22の果梗用溝28は、果実固定板22の第2端部から中央付近まで、長手方向と平行に切り込まれた溝である。果梗用溝28の溝のタイプは、第1実施形態に係る果梗用溝27と同様でもよいし、第2実施形態に係る果梗用溝57と同様でもよいし、それ以外であってもよい。
【0059】
固定具12は、果実固定板22と懸架具(32a、32b)とが互いに脱着可能な状態であってもよいし、互いに脱離不能の状態で固定されていてもよい。果実固定板22と懸架具(32a、32b)とが互いに脱着可能である場合は、固定具12を使用しない時には、果実固定板22と懸架具(32a、32b)とを別々に保管しておくことも可能であるし、掃除等のメンテナンスもしやすい。
【0060】
果実固定板22の素材としては、図1に示す第1実施形態に係る果実固定板21と同様に、木材、金属、樹脂等、様々な素材を採用することができる。果実固定板22の素材として木材を用いた場合は、軽量であり、かつ、自然に優しく、果実や樹木自体に傷をつけにくいという効果を奏する。果実固定板22の素材としてアルミニウム等の金属を用いた場合は、強度を保ったまま果実固定板22の厚さをより薄くすることも可能であり、それにより部材全体の軽量化を行うことができる。
【0061】
第1懸架帯32a及び第2懸架帯32bはそれぞれ、面ファスナー構造そのものであってもよいし、面ファスナー構造を薄い樹脂のテープ状基材に固定した部材で面ファスナー構造の部分(以下において、面ファスナーそのものを含めて「面ファスナー構造部分」という。)を構成してもよい。第1懸架帯32a及び第2懸架帯32bは、図10(b)に示すように別個の部材であってもよいし、果実固定板22の下面側で接続している一体的な部材であってもよい。又、第1懸架帯32a及び第2懸架帯32bには、補強や形状保持の観点から、それぞれの長手方向に平行に、針金等の形状可変の金属線が1本又は複数本、埋め込まれたり、又は、接着されていたりしてもよい。更に、第1懸架帯32a及び第2懸架帯32bのいずれか一方あるいは両方において、他方の端部付近に紐状体が接続されていてもよい。
【0062】
第3実施形態に係る固定具12は、図11に示すように果実固定板22の果梗用溝28で果実41の果梗43を挟む。そして、図11に示すような配置関係において、果実41と枝45の間に果実固定板22を差し入れ、懸架具(32a、32b)のそれぞれの他方の端部を枝45の上方で互いに接続する。固定の観点からは、果梗43は果梗用溝28の最奥部に収まることが好ましい。果梗43の垂直方向の保持位置については、図11に示すように、果梗43と枝45の接続付近であれば尚よい。図11に示すように、果梗43が枝45に近い程太くなるタイプの果実であれば、果実固定板22の第2端部側、即ち、果梗用溝28の入口側が上になるように水平状態から傾けることで、果梗用溝28がより果梗43に食い込んで固定されやすくなる。図11のように、果実固定板22を水平から傾けた状態で懸架具(32a、32b)を固定すると、果梗43と枝45の結合力がより高まる。懸架具(32a、32b)を枝45に固定する際には、懸架具(32a、32b)全体にわたって撓まない状態が好ましい。
【0063】
懸架具(32a、32b)を撓まないようにすると、懸架具(32a、32b)のそれぞれの他方の端部を上方に引っ張ることとなり、果実固定板22の第1端部側が相対的に下がることとなる。固定具12の使用の際には、果実固定板22の第1端部側は果実41に触れても構わないし、果実固定板22の第2端部側が枝45に触れても構わない。懸架具(32a、32b)を枝45に固定する際には、懸架具(32a、32b)のそれぞれの他方の端部を、面ファスナー構造部分の結合面を互いに合わせるようにして固定する。懸架具(32a、32b)のそれぞれの面ファスナー構造部分は、すべてが合せられなくとも構わないし、それぞれの他方の端部の端が互いに揃う必要もなく、合わせ方は自在に変化させられる。2つの面ファスナー構造部分の結合面が結合した固定部分を、更に別個の固定用部材でもって強固に固定してもよい。別個の固定用部材とは、例えば、ゴムバンドやクリップ等である。又、第1懸架帯32a及び第2懸架帯32bのいずれか一方あるいは両方において、他方の端部付近に紐状体が接続されている場合は、2つの面ファスナー構造部分の結合面が結合した固定部分を紐状体で縛って強固に固定してもよい。
【0064】
第3実施形態に係る固定具12は、図11に示すように固定された状態から、懸架具(32a、32b)のそれぞれの他方の端部において合せられた面ファスナー構造部分の結合面を互いに離隔し、枝45への固定を解除し、果実固定板22を果実41と枝45の間から抜いて果梗43への固定を解除することで、果実41から脱離させることができる。即ち、固定の場合の逆の作業で、固定具12を果実41から脱離させることができる。
【0065】
第3実施形態に係る固定具12の取付け時期は、第1実施形態に係る固定具10と同様に、果実の成長段階のいつでもよい。同様に、第3実施形態に係る固定具12の取外し時期についても、果実の成長段階のいつでもよい。対象の果実をリンゴと仮定すると、実すぐり(摘果)時に取り付けてもよいし、より収穫期に近づいたツル回し時等に取り付けてもよい。台風等の強風の前に、落下させたくない果実、又は、高所等の落下の危険性が高い果実に取り付けてもよい。固定具12の取付け時期については、果実の周囲の葉を取り除く「葉とり」と呼ばれる作業を行った後の方が、果実の果梗に取付けしやすいために好ましい。
【0066】
第3実施形態に係る固定具12によれば、台風等の強風時であっても果実の揺れを防止し、果実が樹枝から落下する危険性を大幅に低減することができる。第3実施形態に係る固定具12は、「果梗への取付け」及び「樹枝への取付け」の2段階の工程で、誰でも片手で容易に取り付けることができる。取り外しについても同様に、「樹枝からの取外し」及び「果梗からの取外し」の2段階の工程で、誰でも片手で容易に取り外すことができる。
【0067】
第3実施形態に係る固定具12によれば、取付けの時期を問わないため、例えば強風が吹く直前であっても容易に多数の果実落下防止処置を短時間で行うことができる。
【0068】
第3実施形態に係る固定具12によれば、強風時の果実落下防止のみならず、果実を任意の回転位置で固定する際にも好適に用いることができる。例えば対象の果実がリンゴである場合、色むらを無くすべく、全面を良く日光に当てるために「ツル回し」を収穫前に行うのが一般的である。ツル回しにおいては、ツル(果梗)を回転軸として回転させて、望みの回転位置でそのまま留めておく必要がある。元々樹枝にもたれかかっているリンゴであれば、回転後、その樹枝にもたれかからせれば固定されるが、樹枝と直接の接触がないリンゴは、ツルを回転軸として回転させても、手を離せば元の位置に戻ってしまう。第3実施形態に係る固定具12を用いることで、樹枝と直接の接触がないリンゴであっても、任意の回転位置でリンゴの向きを固定することが容易となり、色むらの少ないリンゴを得ることが可能となる。第3実施形態に係る固定具12は取付けの向きや角度を変えることが可能であるため、第3実施形態に係る固定具12自体が色むらの要因とはならずに使用を継続することができる。
【0069】
第3実施形態に係る固定具12によれば、果実袋等のような他の用具は不要であり、何度でも再利用可能である。例えば、リンゴに被せる果実袋は取り外す際には破くことが多く、再利用は不可能である。第3実施形態に係る固定具12は再利用が可能であるので、大変経済的である。
【0070】
第3実施形態に係る固定具12によれば、果実や樹枝を傷つけることなく、果実を樹枝に固定することができる。第3実施形態に係る固定具12の果梗用溝28は、果梗の太さに応じて挟む箇所を変えることが容易である。又、果梗用溝28は入口側が開放されており、果梗の成育スペースが確保されている。果梗の成長が妨げられないため、果肉の成育も阻害されない。
【0071】
第3実施形態に係る固定具12によれば、果実の重量が増し、果梗の径が大きくなる程、果梗の固定力が増大し、効果的に果実落下防止を行える。収穫期間近の重量が増した果実の果梗に対する固定力が増すことで、効果的に果実の落下を防止できる。
【0072】
第3実施形態に係る固定具12によれば、第1実施形態に係る固定具10及び第2実施形態に係る固定具11のような紐状の懸架具では固定しにくい場所であっても、ワンタッチで固定することができる。例えば、葉が多く繁った樹木の場合、枝の果実付近においては特に葉が多く、紐状の懸架具を通しにくいので、互いに絡ませて止めることが困難であることがある。しかし、第3実施形態に係る固定具12を用いると、枝の上に少しの隙間があれば、懸架具(32a、32b)の互いの面ファスナー構造部分の結合面を合わせるだけで即座に固定することができるのである。
【0073】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は上記の第1~3実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0074】
例えば、2つの切込溝は、第1実施形態に係る固定具10においては果実固定板21の長手方向に平行にそれぞれ設けられ、第2実施形態にかかる固定具11においては果実固定板51の短手方向に平行にそれぞれ設けられている。しかし、2つの切込溝は、懸架具の両端部分が固定板の上方にそれぞれ突出できるような溝であればよいので、固定板の長手方向又は短手方向に平行である必要はない。2つの引掛溝についても同様の考え方であり、懸架具の中央部を引っ掛けることができればよいので、必ずしも固定板の長手方向に平行である必要は無い。
【0075】
更に、第1実施形態に係る固定具10において、果梗用溝27の最奥部には隆起面27sが設けられているが、果梗用溝27の最奥部は平面であってもよい。果梗用溝27の最奥部が平面であっても、他の2面とあわせての3カ所の保持は問題なく可能である。
【0076】
更に、第1実施形態に係る固定具10の懸架具31について、果実固定板21の下面側において、第1紐状部と第2紐状部とが交差し、果実固定板21の上面の上方にそれぞれ突出する形態にすることも可能である。即ち、図1を用いて説明すると、懸架具31の第1紐状部が第2紐用溝23bの最奥部を介して果実固定板21の上方に突出し、第2紐状部が果実固定板21の下面側で第1紐状部に交差し、第1紐用溝23aの最奥部を介して果実固定板21の上方に突出する形態である。第1紐状部と第2紐状部とが交差した場合、懸架具31の果実固定板21への接続が、より強固となる。ただし、果梗を果梗用溝27で挟む都合上、果実固定板21の下面側において、第1紐状部又は第2紐状部が果梗用溝27にかからないようにしなければならない。勿論、第2実施形態に係る固定具11においても同様に、懸架具61を果実固定板51の下面側で交差して用いることができる。
【0077】
更に、第1実施形態に係る固定具10、第2実施形態に係る固定具11及び第3実施形態に係る固定具12は、概形を「矩形」タイプで例示したが、矩形の角がとれた「角丸矩形」タイプでも構わないし、概形が正円や楕円の「円形」タイプであっても構わない。概形が「円形」である場合は、果実の果梗付近の窪みに沿いやすく、窪みの周りの果肉の盛り上がりに触れることなく果実を固定することが容易となる。
【0078】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0079】
10、11、12…固定具
21、22、51…果実固定板
23a、23b、53a、53b…紐用溝
25a、25b、55a、55b…引掛溝
27、28、57…果梗用溝
27a、27b…支持面
27s…隆起面
31、61…懸架具
32a、32b…懸架帯
41…果実
43…果梗
43a、43b、43c、43d、43e…(果梗の)固定位置
45…枝
57a、57b、57c…(果梗用溝57の)空間
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11