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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036909
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】鼻鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/24 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
A61B17/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127869
(22)【出願日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020141215
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000225278
【氏名又は名称】内外化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】井原 孝
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM06
(57)【要約】
【課題】経時変化や使用頻度による作業性及び取扱い性の低下を抑制又は低減した鼻鏡を提供する。
【解決手段】本発明の鼻鏡1は、第1アーム部材10と第2アーム部材20が軸支機構により軸支され、第1アーム部材10は第1アーム部材10の先端側に設けられ、鼻孔を拡張する第1拡張部11と、第1アーム部材10の後端側に設けられた第1持ち手部12と、第1拡張部11と第1持ち手部12との間に設けられた第1軸支部13とを備え、第2アーム部材20は第2アーム部材20の先端側に設けられ、鼻孔を拡張する第2拡張部21と、第2アーム部材20の後端側に設けられた第2持ち手部22と、第2拡張部21と第2持ち手部22との間に設けられた第2軸支部23とを備えており、第1持ち手部12と第2持ち手部22の間には付勢部30が設けられ、第1拡張部11と第2拡張部21は弾性変形した状態にあり、相互に押圧力を作用させている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ弾性変形が可能な第1アーム部材と第2アーム部材とが軸支機構により軸支された鼻鏡であって、
前記第1アーム部材は、
前記第1アーム部材の先端側に設けられ、鼻孔を拡張するための第1拡張部と、
前記第1アーム部材の後端側に設けられた第1持ち手部と、
前記第1拡張部と前記第1持ち手部との間に設けられた第1軸支部とを備え、
前記第2アーム部材は、
前記第2アーム部材の先端側に設けられ、前記第1拡張部と対をなし、前記第1拡張部と共に鼻孔を拡張するための第2拡張部と、
前記第2アーム部材の後端側に設けられた第2持ち手部と、
前記第2拡張部と前記第2持ち手部との間に設けられた第2軸支部とを備えており、
前記軸支機構は、前記第1軸支部と前記第2軸支部とにより、前記第1アーム部材と前記第2アーム部材とを交差させることなく回動可能に軸支するものであり、
さらに、前記第1アーム部材の前記第1持ち手部と、前記第2アーム部材の前記第2持ち手部との間には、前記第1持ち手部と前記第2持ち手部とが相互に離間する方向に付勢する付勢部が設けられており、
前記第1拡張部と前記第2拡張部はそれぞれ、前記第1軸支部又は前記第2軸支部を支点として弾性変形した状態にあり、
前記第1拡張部及び前記第2拡張部の弾性復元力により相互に押圧力を作用させている鼻鏡。
【請求項2】
前記第1軸支部は、基底部と、前記基底部上に垂直方向に立設する回転軸部とを備え、
前記第2軸支部は、前記回転軸部を回動可能に挿通する軸孔部を備えており、
前記回転軸部は、前記第1拡張部及び前記第2拡張部が弾性変形した状態で前記第1アーム部材と前記第2アーム部材とが軸支されるように、前記軸孔部に挿通されている請求項1に記載の鼻鏡。
【請求項3】
前記付勢部は、少なくとも一部が略弧状に弾性変形した板バネであり、
前記板バネの一方の端部が前記第1持ち手部の任意の位置に接合され、前記板バネの他方の端部が前記第2持ち手部の任意の位置に接合されている請求項1又は2に記載の鼻鏡。
【請求項4】
前記板バネに於いて弾性変形により凸状となっている部分の外側面には、凸状の補強部が設けられている請求項3に記載の鼻鏡。
【請求項5】
前記鼻鏡は射出成形により作製された合成樹脂製の一体成形品であり、
前記補強部には、前記射出成形の際のゲートの痕となるゲート痕が設けられている請求項4に記載の鼻鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻の治療及び検診等の際に、鼻孔を拡張するのに好適な鼻鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻の治療や検診等に於いては、鼻孔を拡張するための医療用器具として鼻鏡が用いられる。従来の鼻鏡としては、和辻式、俣野式、ハルトマン式、フレンケル式、榊田式、高橋式、及びキリアン式等が挙げられる。これらの鼻鏡の内、和辻式、俣野式、ハルトマン式、高橋式及びキリアン式等は、一対のアーム部材の先端側に、それぞれ鼻孔を拡張するための突起部が対となる様に設けられ、またアーム部材の持ち手側には、当該持ち手部を離間する方向に付勢する板バネ等が設けられた構造を有している。
【0003】
例えば、特許文献1には、可撓性を有する合成樹脂を素材として、一本の素材で構成された鼻鏡器が開示されている。この鼻鏡器によれば、両端部には鼻孔を拡げるための一対の突起が設けられており、これらの突起は支点に於いて回動可能となっており、握り部はループ状に形成された構成を有している。また、握り部の一方には舌圧子も突設されている。そして、特許文献1によれば、可撓性を有する合成樹脂を使用することにより、使い捨てが可能で安価に製造できると記載されている。さらに、鼻孔だけでなく口腔の検診も行うことができ、検診の煩雑さと検診時間の短縮が期待できるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、それぞれプラスチック製からなる第1のアーム及び第2のアームが回動可能に軸支され、さらに、当該第1のアームと第2のアームとの間にプラスチック製の略円弧状弾撥片を設けた鼻鏡器が開示されている。この鼻鏡器によれば、金属製の鼻鏡に比べ軽量であり、検診の作業性を向上させるとされている。また、プラスチック製にすることで、低コストで製造することができ、使い捨てができるとされている。
【0005】
さらに、特許文献3では、手で握る把持部と鼻孔の開拡部とを有してなる2つのア-ムを支点で固定してなる鼻鏡が開示されている。この鼻鏡によれば、2つのア-ム及びバネを合成樹脂により構成することで、安価で、使い捨てにすることができ、集団検診等でも衛生的であるとされている。また、2つのア-ムの内部のバネを脱着可能に構成することで、バネが劣化した際にも交換が可能であり、鼻の検診及び治療等を行うときの作業性等を阻害せず、またバネを取り外して滅菌や煮沸消毒を繰り返し行うことができるとされている。
【0006】
しかし、従来の鼻鏡では、板バネ等の弾性復元力が経時変化及び使用頻度により低減すると、アーム部材の持ち手側を相互に離間する方向に付勢する付勢力が劣化する結果、鼻の治療及び検診の際の作業性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08-071040号公報
【特許文献2】特開平09-117415号公報
【特許文献3】特開2010-119455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、経時変化や使用頻度による作業性及び取扱い性の低下を抑制又は低減した鼻鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鼻鏡は、前記の課題を解決するために、それぞれ弾性変形が可能な第1アーム部材と第2アーム部材とが軸支機構により軸支された鼻鏡であって、前記第1アーム部材は、前記第1アーム部材の先端側に設けられ、鼻孔を拡張するための第1拡張部と、前記第1アーム部材の後端側に設けられた第1持ち手部と、前記第1拡張部と前記第1持ち手部との間に設けられた第1軸支部とを備え、前記第2アーム部材は、前記第2アーム部材の先端側に設けられ、前記第1拡張部と対をなし、前記第1拡張部と共に鼻孔を拡張するための第2拡張部と、前記第2アーム部材の後端側に設けられた第2持ち手部と、前記第2拡張部と前記第2持ち手部との間に設けられた第2軸支部とを備えており、前記軸支機構は、前記第1軸支部と前記第2軸支部とにより、前記第1アーム部材と前記第2アーム部材とを交差させることなく回動可能に軸支するものであり、さらに、前記第1アーム部材の前記第1持ち手部と、前記第2アーム部材の前記第2持ち手部との間には、前記第1持ち手部と前記第2持ち手部とが相互に離間する方向に付勢する付勢部が設けられており、前記第1拡張部と前記第2拡張部はそれぞれ、前記第1軸支部又は前記第2軸支部を支点として弾性変形した状態にあり、前記第1拡張部及び前記第2拡張部の弾性復元力により相互に押圧力を作用させていることを特徴とする。
【0010】
前記の構成によれば、それぞれ弾性変形が可能な第1アーム部材と第2アーム部材とは軸支機構により軸支されている。この軸支機構は、第1軸支部と第2軸支部とにより、第1アーム部材と第2アーム部材とを交差させることなく回動可能に軸支するものである。そして、第1持ち手部と第2持ち手部との間に設けられた付勢部が、第1持ち手部と第2持ち手部の両者を相互に離間する方向に付勢している。また、第1拡張部及び第2拡張部はそれぞれ、第1軸支部又は第2軸支部を支点として弾性変形した状態にあり、これにより、第1拡張部及び第2拡張部は、弾性復元力に起因する押圧力を相互に及ぼし合い、密着した状態にある。すなわち、前記の構成であると、付勢部が第1持ち手部と第2持ち手部に作用する付勢力、及び第1拡張部と第2拡張部の弾性変形に起因した弾性復元力を利用することで、第1拡張部と第2拡張部とを相互に密着させた状態にさせることができる。これにより、板バネ等を用いた従来の鼻鏡と比較して、経時変化や使用頻度による作業性の低下を抑制又は低減した鼻鏡を提供することができる。
【0011】
前記の構成に於いて、前記第1軸支部は、基底部と、前記基底部上に垂直方向に立設する回転軸部とを備え、前記第2軸支部は、前記回転軸部を回動可能に挿通する軸孔部を備えており、前記回転軸部は、前記第1拡張部及び前記第2拡張部が弾性変形した状態で前記第1アーム部材と前記第2アーム部材とが軸支されるように、前記軸孔部に挿通されていることが好ましい。
【0012】
前記の構成によれば、第1拡張部及び第2拡張部が弾性変形した状態で、第1軸支部の回転軸部を第2軸支部の軸孔部に挿通させる。これにより、第1拡張部と第2拡張部は、それぞれの弾性復元力により相互に押圧力を作用させた状態で密着させることができる。
【0013】
前記の構成に於いて、前記付勢部は、少なくとも一部が略弧状に弾性変形した板バネであり、前記板バネの一方の端部が前記第1持ち手部の任意の位置に接合され、前記板バネの他方の端部が前記第2持ち手部の任意の位置に接合されたものとすることができる。
【0014】
さらに、前記板バネに於いて弾性変形により凸状となっている部分の外側面には、凸状の補強部が設けられていることが好ましい。
【0015】
板バネ対し、弾性変形により凸状になっている部分の外側面に補強部を設けることで、機械的強度を付与し、板バネが経時変化や使用頻度等に起因して塑性変形が生じるのを低減又は防止することができる。
【0016】
前記の構成に於いて、前記鼻鏡は射出成形により作製された合成樹脂製の一体成形品であり、前記補強部には、前記射出成形の際のゲートの痕となるゲート痕が設けられていてもよい。
【0017】
ゲート痕の形成位置は、金型を用いて鼻鏡を成形する際、鼻鏡の原料である合成樹脂の溶融樹脂を金型のキャビティ内に注入するときのゲート位置によって決まる。前記構成では、鼻鏡を、補強部にゲート痕が形成されたものとして構成することで、キャビティ内での溶融樹脂の流動性を良好にし、例えば、板バネ等にウェルドラインが形成されるのを防止する。これにより、ウェルドラインが形成された板バネと比較して、板バネの機械的強度が低下するのを抑制し、経時変化や使用頻度等に起因した弾性復元力の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鼻鏡によれば、第1アーム部材及び第2アーム部材は、第1軸支部と第2軸支部とにより、交差させることなく回動可能に軸支されている。また、第1持ち手部と第2持ち手部との間に設けられた付勢部が、第1持ち手部と第2持ち手部の両者を相互に離間する方向に付勢している。さらに、第1拡張部及び第2拡張部ではそれぞれ、第1軸支部又は第2軸支部を支点として弾性変形した状態にある。これにより、第1拡張部及び第2拡張部は、付勢部の付勢力、及び第1拡張部と第2拡張部の弾性復元力に起因する押圧力を相互に及ぼし合い、密着した状態にある。その結果、従来の鼻鏡と比べ、経時変化や使用頻度による作業性・取扱い性の低下を抑制又は低減した鼻鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る鼻鏡を表す斜視図である。
図2図2(a)は本発明の実施の形態に係る鼻鏡を表す平面図であり、同図(b)は前記鼻鏡を表す底面図である。
図3図3(a)は本発明の実施の形態に係る鼻鏡に於いて、第1アーム部材と第2アーム部材を軸支機構により軸支する前の状態を表す平面図であり、同図(b)はその底面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る鼻鏡に於いて、第1アーム部材の第1突起部を表す斜視図である。
図5図5(a)は本発明の実施の形態に係る鼻鏡に於いて、第1アーム部材の第1軸支部の要部を表す斜視図であり、同図(b)は前記第1軸支部の要部を表す平面図である。
図6図6(a)~図6(e)は、本発明の実施の形態に係る鼻鏡に於いて、付勢部の横断面形状を表す断面模式図である。
図7図7(a)は本発明の実施の形態に係る鼻鏡に於いて、第1拡張部と第2拡張部とを開状態にした様子を表す平面図であり、同図(b)はその底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(鼻鏡)
本発明の実施の一形態に係る鼻鏡について、図1図7を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0021】
本実施の形態に係る鼻鏡1は、図1図2(a)、図2(b)及び図3に示すように、和辻式の鼻鏡であり、第1アーム部材10と第2アーム部材20とが軸支機構により軸支された構造を有している。また、本実施の形態の鼻鏡1に於いては、第1アーム部材10の第1持ち手部12と、第2アーム部材20の第2持ち手部22との間に、これらを相互に離間させる方向に付勢する付勢部30が設けられている。本実施の形態の鼻鏡1は一体成形品であり、鼻の治療及び検診等に於いて鼻孔を拡張するための医療用器具として用いることができる。
【0022】
尚、図1は鼻鏡1を表す斜視図である。また、図2(a)は鼻鏡1を表す平面図であり、同図(b)は鼻鏡1を表す底面図である。図3(a)は鼻鏡1に於いて、第1アーム部材10と第2アーム部材20を軸支機構により軸支する前の状態を表す平面図であり、同図(b)はその底面図である。
【0023】
第1アーム部材10は弾性変形が可能であり、当該第1アーム部材10の先端側に設けられた第1拡張部11と、第1アーム部材10の後端側に設けられた第1持ち手部12と、第1拡張部11及び第1持ち手部12の間に設けられた第1軸支部13とを少なくとも備える。また、第2アーム部材20も弾性変形が可能であり、当該第2アーム部材20の先端側に設けられた第2拡張部21と、第2アーム部材20の後端側に設けられた第2持ち手部22と、第2拡張部21及び第2持ち手部22の間に設けられた第2軸支部23とを少なくとも備える。
【0024】
第1拡張部11及び第2拡張部21には、それぞれの先端部に第1突起部111と第2突起部211とが設けられている(図3及び図4参照)。図4は、鼻鏡1に於いて、第1アーム部材10の第1突起部111を表す斜視図である。
【0025】
第1突起部111及び第2突起部211は、本実施の形態の鼻鏡1を使用するに際して、鼻孔に挿入され、鼻孔を拡張する機能を有する。第1突起部111と第2突起部211は相互に対をなしており、それぞれ第1拡張部11及び第2拡張部21の延在方向に対し、同一方向に垂直に立設している。また、第1突起部111と第2突起部211は、両者が密着した状態では、第1拡張部11及び第2拡張部21から離れるに従い先細りとなる、略円錐台状となる外形を有している。これにより、第1突起部111及び第2突起部211を鼻孔の奥まで挿入することができ、かつ、当該鼻孔内での裂傷等の発生を防止することができる。さらに、第1突起部111と第2突起部211とが密着した状態で形成される内側形状では、図2(b)に示すように、貫通口40が形成される。この様な内側形状であると、第1突起部111及び第2突起部211を鼻孔に挿入して鼻孔を拡張したときの他、両者を密着した状態で鼻孔に挿入したときでも、鼻孔内部の観察を良好に行うことができる。
【0026】
第1持ち手部12及び第2持ち手部22は、鼻鏡1を使用するに際して使用者が把持する部分となる。
【0027】
また、前記軸支機構は、第1軸支部13と第2軸支部23とにより、第1アーム部材10と第2アーム部材20とを交差させることなく回動可能に軸支するものである。また、この様な軸支機構で第1アーム部材10と第2アーム部材20とを軸支させることにより、第1拡張部11と第2拡張部21とはそれぞれ、第1軸支部13又は第2軸支部23を支点として弾性変形した状態で相互に密着している。そして、第1拡張部11と第2拡張部21とは、これらを弾性変形させることで、それぞれ第1軸支部13と第2軸支部23を支点として弾性復元力を生じさせ、相互に押圧力を及ぼし合っている。
【0028】
ここで、第1軸支部13は、図3図5(a)及び図5(b)に示すように、基底部131と、基底部131の一方の円盤面上に於いて垂直方向に立設する回転軸部と、円弧状の壁部135とを少なくとも備える。尚、図5(a)は鼻鏡1に於いて、第1アーム部材10の第1軸支部13の要部を表す斜視図であり、同図(b)は第1軸支部13の要部を表す平面図である。
【0029】
基底部131は略円盤状であり、回転軸部132及び壁部135を支持する。
【0030】
回転軸部132は、弾性変形が可能な一対の柱状部133と、第2軸支部23の回動をガイドするガイド部134とを少なくとも備える。回転軸部132は、第2軸支部23が有する軸孔部(詳細については後述する。)に挿通することで、第1アーム部材10と第2アーム部材20とを軸支する。
【0031】
柱状部133は、その先端部に於いて、外方に突出した係止部133aを有している。柱状部133は、回転軸部132を軸孔部に挿通させる際、弾性変形するため、当該挿通を容易に行うことができる。また、柱状部133の先端には係止部133aが設けられており、回転軸部132を軸孔部に挿通させた後は、軸孔部の内部に設けられた環状突条部(詳細については後述する。)に係止する結果、回転軸部132が軸孔部から外れるのを防止することができる。
【0032】
ガイド部134は、基底部131上に於いて、一対の柱状部133と共に環状に配列する一対のガイド壁部134aと、一対のガイド壁部134aを相互に連結する補強部134bとからなる。ガイド壁部134aは、回転軸部132を軸孔部に挿通させる際、及び回転軸部132が軸孔部を回動する際にガイドとして機能する。また、補強部134bは、当該ガイド壁部134aがガイドとして機能する際に弾性変形しないように機械的強度を付与する。
【0033】
円弧状の壁部135は、回転軸部132を軸孔部に挿通させる際、及び回転軸部132が軸孔部を回動する際のガイドとして機能する。
【0034】
また第2軸支部23は、前述の通り、回転軸部132を回動可能に挿通する環状の軸孔部231を備えている。また、軸孔部231には、その内部に向かって環状に突出する環状突条部232が設けられている。この環状突条部232は、第1軸支部13の係止部133aとの係止を可能にする。
【0035】
付勢部30は、略弧状に弾性変形した板バネからなる。付勢部30の横断面形状(付勢部30の長尺方向に対して垂直となる横断面の形状)は、図6(a)に示すように、長方形状となっている。図6(a)~図6(e)は、付勢部の横断面形状を表す断面模式図である。また、付勢部30の一方の端部は、第1持ち手部12の後端部に接合され、他方の端部は第2持ち手部22の後端部に接合されている。付勢部30を設けることで、第1持ち手部12及び第2持ち手部22に対して相互に離間する方向に付勢力を作用させることができる。その結果、本実施の形態では、第1拡張部11及び第2拡張部21のそれぞれに対し、第1軸支部又は第2軸支部を支点とした弾性変形を生じさせることができる。板バネが略弧状に弾性変形する方向は、第1拡張部11及び第2拡張部21に向かって凸状となる方向である。但し、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、第1拡張部11及び第2拡張部21に向かう方向とは反対側に向かって凸状となる様に弾性変形させてもよい。
【0036】
尚、付勢部30の長さ、幅及び厚さについては特に限定されず、第1持ち手部12及び第2持ち手部22に対し付勢させたい付勢力の強さの程度に応じて適宜設定することができる。また、付勢部30の接合位置は、第1持ち手部12及び第2持ち手部22の後端部に限定されるものではなく、それぞれ任意の位置で接合させることができる。
【0037】
また、付勢部30の中央部には、第1拡張部11及び第2拡張部21(すなわち、付勢部30の凸状面に対し垂直となる方向)に向かって突出する略四角柱状の補強部31が設けられている(図1図3参照)。本実施の形態の場合、付勢部30の弾性変形による応力は付勢部30の中央部に最も加わるが、当該中央部に補強部31を設けることで機械的強度を付与し、付勢部30の弾性限界を向上させることができる。その結果、経時変化及び使用頻度により、付勢部30の付勢力(弾性復元力)が低下したり、塑性変形が生じるのを抑制又は低減することができる。尚、付勢部30の長さ、幅及び厚さについては特に限定されず、適宜設定することができる。また、補強部31の形状は略四角柱状の場合に限定されるものではなく、凸状であればよい。
【0038】
また、本実施の形態に於いて付勢部30には、射出成形(詳細については後述する。)の際のゲートの痕となるゲート痕32が設けられている。ゲート痕32は略円柱状であり、付勢部30の延在方向に対し垂直となる様に突出している。また、ゲート痕32の突出方向は、第1突起部111及び第2突起部211の立設方向とは反対側の方向である。ゲート痕32を付勢部30に設けることにより、例えば、本実施の形態の鼻鏡1を射出成形により一体成形品として成形する際、付勢部30にウェルドラインが形成されるのを防止し、金型内に形成されるキャビティ内での溶融樹脂の流動性を良好にすることができる。その結果、ウェルドラインが形成された板バネと比較して、機械的強度が低下するのを抑制し、経時変化や使用頻度等に起因した弾性復元力の低下を抑制することができる。
【0039】
尚、本明細書に於いて「ゲート痕」とは、金型のキャビティ内への溶融樹脂の注入口であるゲートの痕跡として、成形体(本実施の形態においては、例えば、鼻鏡1を意味する。)に形成される凸形状を有するものを意味する。本発明に於いて、ゲート痕32の形状は略円柱状の場合に限定されない。例えば、略円錐台状や略角柱状、略角錐台状であってもよい。また、ゲート痕32の大きさ(すなわち、ゲート痕32が突出する方向の高さ及びゲート痕32の断面形状に於ける直径)についても特に限定されず、適宜設定することができる。
【0040】
鼻鏡1を構成する材料は合成樹脂であれば特に限定されないが、医療用途としての安全性が確立されたものが好ましい。鼻鏡1を合成樹脂製にすることで、金属製の鼻鏡と比べ軽量化が図れ、取扱い性を向上させることができる。また、安価に製造できることから、使い捨てが可能となり、例えば、集団検診等でも良好な衛生状態を維持することができる。さらに、金属製の鼻鏡は電子線滅菌やガンマ線滅菌には適しておらず、また高圧蒸気滅菌を行った後は、十分な乾燥やふき取りをしなければ残留する水分により、鼻鏡の腐食が進行するという問題がある。しかし、本発明の様に合成樹脂製の鼻鏡1であると、電子線滅菌やガンマ線滅菌を行っても変形や損傷等の問題がなく、また、高圧蒸気滅菌を行っても、残留する水分による腐食の心配がない。 その上、患者によっては金属製品が人体と接触した場合の痛み等の先入観を持っている場合もあるが、合成樹脂製の鼻鏡1であればその様な精神的ストレスも軽減ないし抑制することができる。
【0041】
合成樹脂としては熱可塑性樹脂が挙げられ、より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニルサルホン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、環状オレフィンコポリマー樹脂、シクロオレフィンコポリマー樹脂等の従来医療用途に用いられている樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、高い透明性を鼻鏡1に付与できるとの観点からは、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニルサルホン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、環状オレフィンコポリマー樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂を用いることにより、鼻腔内を観察する際、外部からの光が第1突起部111及び第2突起部211を透過するので、鼻腔内がより鮮明になる。また、第1突起部111及び第2突起部211が鼻孔を拡張させる際、第1突起部111又は第2突起部211に当接する鼻腔壁を、第1突起部111又は第2突起部211を介して観察することができる。また、鼻鏡1には着色剤等の任意の成分が添加されていてもよい。尚、付勢部30については合成樹脂からなる場合の他、金属製の板バネであってもよい。
【0042】
以上に説明した構成の鼻鏡1は通常、第1拡張部11及び第2拡張部21の弾性復元力、並びに付勢部30の付勢力により、第1持ち手部12と第2持ち手部22とが相互に離間して開いており、かつ、第1拡張部11と第2拡張部21とは相互に密着して閉じている(図2参照)。その一方、第1拡張部11及び第2拡張部21の弾性復元力、並びに付勢部30の付勢力に抗して、第1持ち手部12及び第2持ち手部22を閉じた状態にすると、第1拡張部11と第2拡張部21とは相互に離間し開いた状態になる(図7参照)。そして、第1拡張部11及び第2拡張部21を開いた状態から閉じた状態に移行する際には、第1拡張部11及び第2拡張部21の弾性復元力、並びに付勢部30の付勢力が、第1持ち手部12及び第2持ち手部22に作用する結果、容易に行うことができ、良好な作業性及び取扱い性を実現することができる。
【0043】
尚、図7(a)は鼻鏡1に於いて第1拡張部11と第2拡張部21とを開状態にした様子を表す平面図であり、同図(b)はその底面図である。
【0044】
(鼻鏡の製造方法)
本実施の形態に係る鼻鏡1は、射出成形法等の公知の方法により製造することができる。例えば、一体成形品である鼻鏡1を射出成形により成形する場合、先ず一対の金型を用意して型閉じし、金型内にキャビティを形成する。次いで、キャビティ内に溶融樹脂を注入する。溶融樹脂の注入は、本実施の形態の場合、溶融樹脂を射出するゲートのゲート位置が付勢部30に設けられた補強部31の先端となる様に設定する。ゲートとしては特に限定されず、例えば、ピンポイントゲート、オープンゲート、バルブゲート等が挙げられる。
【0045】
溶融樹脂の注入後、溶融樹脂は所定時間冷却される。冷却後、本実施の形態の鼻鏡1が成形される。尚、溶融樹脂の射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。また、溶融樹脂の冷却時間も特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。最後に、一対の金型の型開きを行うと、本実施の形態に係る鼻鏡1が得られる。
【0046】
(その他の事項)
以上に述べた実施の形態に於いては、本発明の鼻鏡が和辻式である場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、例えば、ハルトマン式等の鼻鏡であってもよい。
【0047】
また、第1突起部及び第2突起部の外形に関し、前記実施の形態では、両者が密着した状態に於いて略円錐台状となる場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、例えば、第1突起部及び第2突起部が密着した状態で円筒状となるものや、第1突起部及び第2突起部の全体が長尺の板状(ヘラ状)のものであってもよい。また、先端側が長尺の板状(ヘラ状)であり、後端側が、第1拡張部及び第2拡張部から離れるに従い先細りとなる略円錐状の外形を形成する場合であってもよい。
【0048】
また、前記実施の形態に於いては、付勢部として、一方の端部が第1持ち手部の後端に接合され、他方の端部が第2持ち手部の後端に接合された、合成樹脂製の板バネである場合を例にして説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、付勢部が金属製の第1板バネ部と、金属製の第2板バネ部とからなり、第1板バネ部の一方の端部は第1持ち手部の後端に連結されると共に、第2板バネ部の一方の端部は第2持ち手部の後端に連結され、さらに、第1板バネ部の他方の端部と第2板バネ部の他方の端部とが、第1軸支部及び第2軸支部の近傍で相互に係止したものであってもよい。
【0049】
また、付勢部の横断面形状に関し、前記実施の形態では、長方形状の板バネからなる付勢部30を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、例えば、図6(b)に示す様な横断面形状の板バネからなる付勢部33であってもよい。この付勢部33では、横断面形状は、表面及び裏面の中央部が両端部に比べ肉厚であり、凸状となっている。この様な横断面形状の付勢部33であると、図6(a)に示す様な長方形状の付勢部30と比較して、付勢力を大きくすることができる。また、図6(c)に示す様な横断面形状の板バネからなる付勢部34であってもよい。この付勢部34では、横断面形状は、一方の面のみで中央部が両端部に比べ肉厚の凸状となっており、他方の面で平坦面となっている。この様な横断面形状の付勢部34であっても、図6(a)に示す様な長方形状の付勢部30と比較して、付勢力を大きくすることができる。尚、付勢部34は、肉厚の凸状となっている面が、弾性変形により略弧状となっている付勢部34の内側面となる様に、第1持ち手部12の後端部及び第2持ち手部22の後端部に接合されるのが好ましい。また、図6(d)に示す様な横断面形状の板バネからなる付勢部35であってもよい。この付勢部35では、横断面形状は、一方の面のみで中央部が両端部に比べ肉厚の曲面状となっており、他方の面で平坦面となっている。この様な横断面形状の付勢部35であっても、図6(a)に示す様な長方形状の付勢部30と比較して、付勢力を大きくすることができる。尚、付勢部35は、中央部が肉厚の曲面状となっている面が、弾性変形により略弧状となっている付勢部35の内側面となる様に、第1持ち手部12の後端部及び第2持ち手部22の後端部に接合されるのが好ましい。また、図6(e)に示す様な横断面形状の板バネからなる付勢部36であってもよい。この付勢部36では、横断面形状は、表面及び裏面で中央部が両端部に比べ肉厚の曲面状となっている。この様な横断面形状の付勢部36であっても、図6(a)に示す様な長方形状の付勢部30と比較して、付勢力を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 鼻鏡
10 第1アーム部材
11 第1拡張部
12 第1持ち手部
13 第1軸支部
20 第2アーム部材
21 第2拡張部
22 第2持ち手部
23 第2軸支部
30、33~36 付勢部
31 補強部
32 ゲート痕
40 貫通口
111 第1突起部
131 基底部
132 回転軸部
133 柱状部
133a 係止部
134 ガイド部
134a ガイド壁部
134b 補強部
135 壁部
211 第2突起部
231 軸孔部
232 環状突条部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7