(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036911
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】鼻鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 17/24 20060101AFI20220301BHJP
A61B 1/233 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A61B17/24
A61B1/233
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127920
(22)【出願日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020141229
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000225278
【氏名又は名称】内外化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】井原 孝
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
【Fターム(参考)】
4C160MM06
4C161AA12
4C161AA27
4C161CC01
(57)【要約】
【課題】従来の鼻鏡よりも取扱い性及び作業性に優れた新規の鼻鏡を提供する。
【解決手段】本発明の鼻鏡1は、先端側に鼻孔を拡張するための第1拡張部11が設けられ、後端側に持ち手部12が設けられ、第1拡張部11と持ち手部12の間に軸孔部13が設けられた本体部10と、軸孔部13に摺動可能に貫通する軸部20と、軸部20の一方の端部に接合され、第1拡張部11と対をなし、第1拡張部11と共に鼻孔を拡張するための第2拡張部21と、軸部20の他方の端部に設けられた押圧部30と、押圧部30と軸孔部13との間に設けられた付勢部40とを備え、付勢部40が、押圧部30と軸孔部13とを相互に離間させる方向に付勢力を作用させることにより、第1拡張部11と第2拡張部21とが相互に密着している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に鼻孔を拡張するための第1拡張部が設けられ、後端側に持ち手部が設けられ、前記第1拡張部と前記持ち手部の間に軸孔部が設けられた本体部と、
前記軸孔部に摺動可能に貫通する軸部と、
前記軸部の一方の端部に接合され、前記第1拡張部と対をなし、前記第1拡張部と共に鼻孔を拡張するための第2拡張部と、
前記軸部の他方の端部に設けられた押圧部と、
前記押圧部と前記軸孔部との間に設けられた付勢部とを備え、
前記付勢部が、前記押圧部と前記軸孔部とを相互に離間させる方向に付勢力を作用させることにより、前記第1拡張部と前記第2拡張部とが相互に密着している鼻鏡。
【請求項2】
前記付勢部は、少なくとも1つの板バネからなり、
前記板バネの一方の端部は前記押圧部に接続され、
前記板バネの他方の端部は前記軸孔部に接続されており、
前記板バネは、少なくとも一部が略弧状に弾性変形している請求項1に記載の鼻鏡。
【請求項3】
前記本体部に於ける前記持ち手部と前記軸孔部との間には、略クランク状に形成された屈曲部が設けられており、
前記押圧部は、前記持ち手部の延在方向の延長線側に位置している請求項1又は2に記載の鼻鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻の治療及び検診等の際に、鼻孔を拡張するのに好適な鼻鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻の治療や検診等に於いては、鼻孔を拡張するための医療用器具として鼻鏡が用いられる。従来の鼻鏡としては、和辻式、俣野式、ハルトマン式、フレンケル式、榊田式、高橋式、及びキリアン式等が挙げられる。これらの鼻鏡の内、和辻式、俣野式、ハルトマン式、高橋式及びキリアン式等は、一対のアーム部材の先端側に、それぞれ鼻孔を拡張するための突起部が対となる様に設けられ、またアーム部材の持ち手側には、当該持ち手部を離間する方向に付勢する板バネ等が設けられた構造を有している。
【0003】
例えば、特許文献1には、可撓性を有する合成樹脂を素材として、一本の素材で構成された鼻鏡器が開示されている。この鼻鏡器によれば、両端部には鼻孔を拡げるための一対の突起が設けられており、これらの突起は支点に於いて回動可能となっており、握り部はループ状に形成された構成を有している。また、握り部の一方には舌圧子も突設されている。そして、特許文献1によれば、可撓性を有する合成樹脂を使用することにより、使い捨てが可能で安価に製造できると記載されている。さらに、鼻孔だけでなく口腔の検診も行うことができ、検診の煩雑さと検診時間の短縮が期待できるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、それぞれプラスチック製からなる第1のアーム及び第2のアームが回動可能に軸支され、さらに、当該第1のアームと第2のアームとの間にプラスチック製の略円弧状弾撥片を設けた鼻鏡器が開示されている。この鼻鏡器によれば、金属製の鼻鏡に比べ軽量であり、検診の作業性を向上させるとされている。また、プラスチック製にすることで、低コストで製造することができ、使い捨てができるとされている。
【0005】
さらに、特許文献3では、手で握る把持部と鼻孔の開拡部とを有してなる2つのア-ムを支点で固定してなる鼻鏡が開示されている。この鼻鏡によれば、2つのア-ム及びバネを合成樹脂により構成することで、安価で、使い捨てにすることができ、集団検診等でも衛生的であるとされている。また、2つのア-ムの内部のバネを脱着可能に構成することで、バネが劣化した際にも交換が可能であり、鼻の検診及び治療等を行うときの作業性等を阻害せず、またバネを取り外して滅菌や煮沸消毒を繰り返し行うことができるとされている。
【0006】
これらの従来の鼻鏡は、
図6に示す様な方法により使用される。
図6は、従来の鼻鏡100を使用する様子を表す説明図である。すなわち、鼻鏡100を左手に把持し、人差し指を患者の鼻尖に当接させた状態で、一対の突起101、102を患者の鼻孔内に挿入する。そして、鼻孔を拡張する際には、一対のアーム103、104の握り部105、106を閉じた状態にする。このとき、一対のアーム103、104の内、下方に位置するアーム103(及び突起101)が可動側となり、上方に位置するアーム104(及び突起102)が固定側となる。
【0007】
しかし、この様な使用方法であると、鼻鏡100の使用に関し、一定程度以上の習熟が必要となる。使用に不慣れな場合には、例えば、鼻孔内の粘膜部を損傷し出血させるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08-071040号公報
【特許文献2】特開平09-117415号公報
【特許文献3】特開2010-119455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、従来の鼻鏡よりも取扱い性及び作業性に優れた新規の鼻鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の鼻鏡は、前記の課題を解決するために、先端側に鼻孔を拡張するための第1拡張部が設けられ、後端側に持ち手部が設けられ、前記第1拡張部と前記持ち手部の間に軸孔部が設けられた本体部と、前記軸孔部に摺動可能に貫通する軸部と、前記軸部の一方の端部に接合され、前記第1拡張部と対をなし、前記第1拡張部と共に鼻孔を拡張するための第2拡張部と、前記軸部の他方の端部に設けられた押圧部と、前記押圧部と前記軸孔部との間に設けられた付勢部とを備え、前記付勢部が、前記押圧部と前記軸孔部とを相互に離間させる方向に付勢力を作用させることにより、前記第1拡張部と前記第2拡張部とが相互に密着していることを特徴とする。
【0011】
前記の構成によれば、本体部には軸孔部が設けられており、この軸孔部には軸部が摺動可能に貫通している。また、本体部の先端側には鼻孔を拡張するための第1拡張部が設けられ、軸部の一方の端部には当該第1拡張部と対をなす第2拡張部が設けられている。さらに、軸部の他方の端部には押圧部が設けられており、この押圧部と軸孔部との間には両者を相互に離間させる方向に付勢させる付勢部が設けられている。そして、付勢部を設けることにより、押圧部を押圧しない状態では第1拡張部と第2拡張部を相互に密着した状態にしている。また、付勢部が有する付勢力に抗して押圧部を押圧し、押圧部を軸孔部に近づけた場合には、第1拡張部と第2拡張部とを相互に離間させることができる。すなわち、前記の構成であると、押圧部を押圧し、又は押圧を解除するだけで、第1拡張部と第2拡張部との開閉を容易に操作することができ、従来の鼻鏡と比較して、取扱い性及び作業性を向上させることができる。
【0012】
前記の構成に於いて、前記付勢部は、少なくとも1つの板バネからなり、前記板バネの一方の端部は前記押圧部に接続され、前記板バネの他方の端部は前記軸孔部に接続されており、前記板バネは、少なくとも一部が略弧状に弾性変形しているものであってもよい。
【0013】
また前記の構成に於いて、前記本体部に於ける前記持ち手部と前記軸孔部との間には、略クランク状に形成された屈曲部が設けられており、前記押圧部は、前記持ち手部の延在方向の延長線側に位置していることが好ましい。
【0014】
前記の構成によれば、本体部に略クランク状に形成された屈曲部を設けることで、持ち手部の延在方向の延長線側に位置する押圧部の高さ位置を当該延長線に対し相対的に下げることができる。その結果、例えば、左手で持ち手部を把持して鼻鏡を使用する際、左手親指により押圧部を押圧するのを容易にすることができる。これにより、鼻鏡の取扱い性及び作業性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鼻鏡によれば、本体部に軸孔部を設け、この軸孔部に軸部を摺動可能に貫通させる。また、本体部の先端側には鼻孔を拡張するための第1拡張部を設け、軸部の一方の端部には当該第1拡張部と対をなす第2拡張部を設ける。さらに、軸部の他方の端部に押圧部を設け、この押圧部と軸孔部との間には両者を相互に離間させる方向に付勢させる付勢部を設ける。この様な構成であると、押圧部を押圧し、又は解除するだけで、第1拡張部と第2拡張部との開閉を動作させることができるので、一対のアーム部材を軸支機構により軸支させた従来の鼻鏡と比較して、取扱い性及び作業性を向上させた鼻鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鼻鏡を表す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る鼻鏡を表す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る鼻鏡に於いて、本体部の第1突起部を表す斜視図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(e)は、本発明の実施の形態に係る鼻鏡に於いて、付勢部の横断面形状を表す断面模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る鼻鏡に於いて、第1拡張部と第2拡張部が開状態となる様子を表す斜視図である。
【
図6】従来の鼻鏡を使用する様子を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(鼻鏡)
本発明の実施の一形態に係る鼻鏡について、
図1~
図5を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0018】
本実施の形態に係る鼻鏡1は、
図1及び
図2に示すように、本体部10と、軸部20と、押圧部30と、付勢部40とを少なくとも備え、鼻の治療及び検診等に於いて鼻孔を拡張するための医療用器具として用いることができる。尚、
図1は鼻鏡1を表す斜視図である。また、
図2は鼻鏡1を表す断面図である。
【0019】
本体部10は、先端側に設けられた第1拡張部11と、後端側に設けられた持ち手部12と、第1拡張部11及び持ち手部12の間に設けられた軸孔部13と、軸孔部13と持ち手部12との間に形成された屈曲部14とを少なくとも備える。
【0020】
第1拡張部11には、その先端部に第1突起部111が設けられている(
図3参照)。
図3は、鼻鏡1に於いて、本体部10の第1突起部111を表す斜視図である。第1突起部111は、本実施の形態の鼻鏡1を使用するに際して、鼻孔に挿入され、鼻孔を拡張する機能を有する。第1突起部111の詳細については後述する。
【0021】
持ち手部12は、鼻鏡1を使用するに際して使用者が把持する部分となる。
【0022】
軸孔部13は円筒状であり、後述の軸部20を摺動可能に貫通させる。
【0023】
屈曲部14は、略クランク状に屈曲する様に設けられている。屈曲部14を設けることで、持ち手部12の延在方向の延長線側に位置する押圧部30の高さ位置を当該延長線に対し相対的に下げることができる。これにより、例えば、左手で持ち手部12を把持して鼻鏡1を使用する際、左手親指により押圧部30の押圧及びその解除を容易にし操作性を向上させることができる。尚、押圧部30の詳細については後述する。
【0024】
軸部20は略円柱状であり、一方の端部には第2拡張部21が接合されている。また、軸部20の他方の端部には押圧部30が連結されている。この他方の端部の端面には、押圧部30との連結を可能にするため、一対の柱状部20aが設けられている。すなわち、一対の柱状部20aが、端面の中央部に於いて、軸部20の軸方向に向かって立設している。また、一対の柱状部20aは相互に対向する様にして立設している。さらに、各柱状部20aの先端には、それぞれ外方に突出した係止部20bが設けられている。
【0025】
第2拡張部21には、その先端部に第2突起部211が設けられている。第2突起部211は、第1突起部111と対をなすものであり、鼻孔を拡張する機能を有する。第1突起部111及び第2突起部211はそれぞれ、第1拡張部及び第2拡張部の延在方向に対し、同一方向に垂直に立設している。また、第1突起部111と第2突起部211は、両者が密着した状態では、第1拡張部及び第2拡張部から離れるに従い先細りとなる、略円錐台状となる外形を有している。これにより、第1突起部111及び第2突起部211を鼻孔の奥まで挿入することができ、かつ、当該鼻孔内での裂傷等の発生を防止することができる。さらに、第1突起部111と第2突起部211とが密着した状態で形成される内側形状では、
図2に示すように、貫通口50が形成される。この様な内側形状であると、第1突起部111及び第2突起部211を鼻孔に挿入して鼻孔を拡張したときの他、両者を密着した状態で鼻孔に挿入したときでも、鼻孔内部の観察を良好に行うことができる。
【0026】
押圧部30は、その全体形状が円筒状であり、前述の通り、軸部20の他方の端部に設けられている。また、押圧部30の内面には、環状に段差した環状段差部30aが設けられている。軸部20の他方の端部と押圧部30との連結は、軸部20の柱状部20aを押圧部30の内部に挿入させることで可能になる。すなわち、柱状部20aは、これを押圧部30の内部に挿入させる際、弾性変形するため、当該挿入を容易に行うことができる。また、柱状部133の先端には、前述の通り、係止部20bが設けられており、柱状部20aを押圧部30内に挿入した後は、押圧部30の内部に設けられた環状段差部30aに係止する結果、押圧部30が軸部20から外れるのを防止することができる。
【0027】
付勢部40は、押圧部30と軸孔部13との間に対となる様に設けられている。付勢部40は、略弧状に弾性変形した板バネからなる。付勢部40の横断面形状(付勢部40の長尺方向に対して垂直となる横断面の形状)は、
図4(a)に示すように、長方形状となっている。
図4(a)~
図4(e)は、付勢部の横断面形状を表す断面模式図である。また、付勢部40の一方の端部は、押圧部30に接合され、他方の端部は軸孔部13に接合されている。付勢部40を設けることで、押圧部30及び軸孔部13に対して相互に離間する方向に付勢力を作用させることができる。
【0028】
尚、付勢部40の長さ、幅及び厚さについては特に限定されず、押圧部30及び軸孔部13に対し付勢させたい付勢力の強さや、第1拡張部11と第2拡張部21を密着させた状態での押圧部30と軸孔部13との距離等に応じて適宜設定することができる。
【0029】
鼻鏡1を構成する材料は合成樹脂であれば特に限定されないが、医療用途としての安全性が確立されたものが好ましい。鼻鏡1を合成樹脂製にすることで、金属製の鼻鏡と比べ軽量化が図れ、取扱い性を向上させることができる。また、安価に製造できることから、使い捨てが可能となり、例えば、集団検診等でも良好な衛生状態を維持することができる。さらに、金属製の鼻鏡は電子線滅菌やガンマ線滅菌には適しておらず、また高圧蒸気滅菌を行った後は、十分な乾燥やふき取りをしなければ残留する水分により、鼻鏡の腐食が進行するという問題がある。しかし、本発明の様に合成樹脂製の鼻鏡1であると、電子線滅菌やガンマ線滅菌を行っても問題はなく、また、高圧蒸気滅菌を行っても、残留する水分による腐食の心配がない。 その上、患者によっては金属製品が人体と接触すると痛いとの先入観を持っている場合もあるが、合成樹脂製の鼻鏡1であればその様な精神的ストレスも軽減ないし抑制することができる。
【0030】
合成樹脂としては熱可塑性樹脂が挙げられ、より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニルサルホン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、環状オレフィンコポリマー樹脂、シクロオレフィンコポリマー樹脂等の従来医療用途に用いられている樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、高い透明性を鼻鏡1に付与できるとの観点からは、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニルサルホン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、環状オレフィンコポリマー樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂を用いることにより、鼻腔内を観察する際、外部からの光が第1突起部111及び第2突起部211を透過するので、鼻腔内がより鮮明になる。また、第1突起部111及び第2突起部211で鼻孔を拡張させる際、第1突起部111又は第2突起部211に当接する鼻腔壁を、第1突起部111又は第2突起部211を介して観察することができる。また、鼻鏡1には着色剤等の任意の成分が添加されていてもよい。尚、付勢部40については合成樹脂からなる場合の他、金属製の板バネであってもよい。
【0031】
以上に説明した構成の鼻鏡1は通常、付勢部40の付勢力により、押圧部30と軸孔部13とが相互に離間して開いており、かつ、第1拡張部11と第2拡張部21とは相互に密着して閉じている(
図1参照)。その一方、付勢部40の付勢力に抗して、押圧部30を押圧し、軸孔部13に押圧部30を近づけると、第1拡張部11と第2拡張部21とは相互に離間し開いた状態になる(
図5参照)。そして、第1拡張部11及び第2拡張部21を開いた状態から閉じた状態に移行する際には、付勢部40の付勢力が、押圧部30及び軸孔部13に作用する結果、容易に行うことができ、良好な作業性及び取扱い性を実現することができる。
【0032】
また、
図6に示す様な従来の鼻鏡100であると、使用者は鼻鏡100を左手に把持し、人差し指を患者の鼻尖に当接させた状態で使用する。具体的には、相互に密着した(閉じた)状態の一対の突起101、102を患者の鼻孔内に挿入し、鼻孔を拡張させる際は、一対の突起101、102を相互に離間させた状態にする。この際、突起101を固定した状態で、突起102を可動させて鼻孔の拡張を行う。しかし、この様な使用方法及び動作機構であると、固定させる突起101を拡張し易い鼻翼側に当接させて行うことになる。そのため、使用者は、鼻孔を拡張させる際には、突起101で鼻翼を挙上させる操作が必要となる。しかし、本実施の形態の鼻鏡1であると、第2突起部211を、拡張し易い鼻翼側に当接させて鼻孔を拡張させることが可能になる。そのため、従来の鼻鏡の様に、使用者は鼻翼を挙上させる操作が不要となる。従って、本実施の形態の鼻鏡1は、従来の鼻鏡と比べ、操作性に一層優れる。
【0033】
尚、
図5は鼻鏡1に於いて第1拡張部11と第2拡張部21とを開状態にした様子を表す斜視図である。
【0034】
(鼻鏡の製造方法)
本実施の形態に係る鼻鏡1は、例えば、本体部10、軸部20、押圧部30及び付勢部40を、それぞれ射出成形法等の公知の方法により個別に成形した後、組み立てることにより製造することができる。より具体的には、例えば、本体部10の射出成形を行う場合、先ず一対の金型を用意して型閉じし、金型内にキャビティを形成する。次いで、キャビティ内に溶融樹脂を注入する。溶融樹脂を射出するゲートとしては特に限定されず、例えば、ピンポイントゲート、オープンゲート、バルブゲート等が挙げられる。
【0035】
溶融樹脂の注入後、溶融樹脂は所定時間冷却される。冷却後、本実施の形態の本体部10が成形される。尚、溶融樹脂の射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。また、溶融樹脂の冷却時間も特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。最後に、一対の金型の型開きを行うと、本実施の形態に係る本体部10が得られる。
【0036】
(その他の事項)
以上の説明に於いては、本発明の最も好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、第1突起部及び第2突起部の外形に関し、前記実施の形態では、両者が密着した状態に於いて略円錐台状となる場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、例えば、第1突起部及び第2突起部が密着した状態で円筒状となるものや、第1突起部及び第2突起部の全体が長尺の板状(ヘラ状)のものであってもよい。また、先端側が長尺の板状(ヘラ状)であり、後端側が、第1拡張部及び第2拡張部から離れるに従い先細りとなる略円錐状の外形を形成する場合であってもよい。
【0038】
また、付勢部の横断面形状に関し、前記実施の形態では、長方形状の板バネからなる付勢部40を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、例えば、
図4(b)に示す様な横断面形状の板バネからなる付勢部41であってもよい。この付勢部41では、横断面形状は、表面及び裏面の中央部が両端部に比べ肉厚であり、凸状となっている。この様な横断面形状の付勢部41であると、
図4(a)に示す様な長方形状の付勢部40と比較して、付勢力を大きくすることができる。また、
図4(c)に示す様な横断面形状の板バネからなる付勢部41であってもよい。この付勢部42では、横断面形状は、一方の面のみで中央部が両端部に比べ肉厚の凸状となっており、他方の面で平坦面となっている。この様な横断面形状の付勢部42であっても、
図4(a)に示す様な長方形状の付勢部40と比較して、付勢力を大きくすることができる。尚、付勢部42は、肉厚の凸状となっている面が、弾性変形により略弧状となっている付勢部42の内側面となる様に、押圧部30及び軸孔部13に接合されるのが好ましい。また、
図4(d)に示す様な横断面形状の板バネからなる付勢部43であってもよい。この付勢部43では、横断面形状は、一方の面のみで中央部が両端部に比べ肉厚の曲面状となっており、他方の面で平坦面となっている。この様な横断面形状の付勢部43であっても、
図4(a)に示す様な長方形状の付勢部40と比較して、付勢力を大きくすることができる。尚、付勢部43は、中央部が肉厚の曲面状となっている面が、弾性変形により略弧状となっている付勢部43の内側面となる様に、押圧部30及び軸孔部13に接合されるのが好ましい。また、
図4(e)に示す様な横断面形状の板バネからなる付勢部44であってもよい。この付勢部44では、横断面形状は、表面及び裏面で中央部が両端部に比べ肉厚の曲面状となっている。この様な横断面形状の付勢部44であっても、
図4(a)に示す様な長方形状の付勢部40と比較して、付勢力を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 鼻鏡
10 本体部
11 第1拡張部
12 持ち手部
13 軸孔部
14 屈曲部
20 軸部
20a 柱状部
21 第2拡張部
30 押圧部
30a 環状段差部
40~44 付勢部
50 貫通口
111 第1突起部
133 柱状部
211 第2突起部