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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036913
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】電場支援焼結用の焼結機
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/14 20060101AFI20220301BHJP
   B30B 11/02 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B22F3/14 101A
B30B11/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021129900
(22)【出願日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】10 2020 210 034.9
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521349163
【氏名又は名称】ドクトル フリッチュ ゾンデルマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト ベーバー
(72)【発明者】
【氏名】カール ベーバー
(72)【発明者】
【氏名】ウーテ ビルキンソン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電場支援焼結用の焼結機を提供する。
【解決手段】焼結対象の特に圧粉体状の焼結材料を収容するために設けられる収容空間3を持つ少なくとも1つの導電性ダイ2と、第1の調整装置5と、少なくとも1つの型パンチ4aと、及び、ダイ2に電流を印加することによってダイ2を加熱するように構成された抵抗加熱装置Wとを有し、抵抗加熱装置Wに、第2の調整装置7と、及び、少なくとも1つの接触パンチ6aとが設けられ、少なくとも1つの接触パンチ6aは、第2の調整装置7によって第2の調整軸線S2に沿ってダイ2に対して相対的に接触位置まで調整可能に移動でき、ダイ2に電流を印加するために、少なくとも1つの接触パンチは第2の圧縮力でダイ2の外面に押し付けられる、焼結機である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結対象の、特に、圧粉体状の未焼結の焼結材料(M)を収容するために設けられる収容空間(3)を有する少なくとも1つの導電性ダイ(2、2’、2’’)と、
第1の調整装置(5)と、
少なくとも1つの型パンチ(4a、4b、40a、40b)と、
前記ダイ(2、2’、2’’)に電流を印加することによって前記ダイを加熱するように構成された抵抗加熱装置(W)と、を有し、
前記少なくとも1つの型パンチ(4a、4b、40a、40b)は、前記第1の調整装置(5)によって第1の調整軸線(S1)に沿って前記収容空間(3)に対して相対的に押圧位置まで調整可能に移動でき、前記焼結材料(M)を第1の圧縮力で機械的に加圧するため、前記少なくとも1つの型パンチ(4a、4b、40a、40b)は前記収容空間(3)に軸線方向に挿込まれる、電場支援焼結用の焼結機(1)であって、
第2の調整装置(7)及び少なくとも1つの接触パンチ(6a~6d)は、前記抵抗加熱装置(W)に設けられ、前記少なくとも1つの接触パンチ(6a~6d)は、前記第2の調整装置(7)によって第2の調整軸線(S2、S2’、S2’’)に沿って前記ダイ(2、2’、2’’)に対して相対的に接触位置まで調整可能に移動でき、前記ダイ(2、2’、2’’)に電流を印加するため、前記少なくとも1つの接触パンチ(6a~6d)は、第2の圧縮力でダイ(2、2’、2’’)の外面(2a~2d)に押付けられることを特徴とする、焼結機(1)。
【請求項2】
前記第1の圧縮力を第1の値(W1)に調整し、前記第2の圧縮力を第2の値(W2)に調節するよう構成された調整装置(20)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の焼結機(1)。
【請求項3】
前記第1の調整軸線(S1)及び前記第2の調整軸線(S2)が互いに対して平行及び/又は同軸上に配向され、前記少なくとも1つの接触パンチ(6a、6b)は、前記接触位置で前記ダイ(2)の下端面又は上端面(2a、2b)に押付けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の焼結機(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの接触パンチ(6a、6b)は貫通開口部を持つ環状を有し、前記貫通開口部を通って前記第1の調整軸線(S1)が長手方向に、特に同軸上に延びることを特徴とする、請求項3に記載の焼結機(1)。
【請求項5】
前記第1の調整軸線(S1)及び前記第2の調整軸線(S2’、S2’’)は互いに対して垂直に配向され、前記少なくとも1つの接触パンチ(6c、6d)は、前記接触位置で前記ダイ(2’、2’’)の側方の外殻面(2c、2d)に押付けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の焼結機(1)。
【請求項6】
前記ダイ(2’、2’’)は立方体状を有し、前記外殻面(2c、2d)は前記第2の調整軸線(S2’、S2’’)に対して垂直に配向され、前記第1の調整軸線(S1)に対して平行に配向されることを特徴とする、請求項5に記載の焼結機(1)。
【請求項7】
前記ダイ(2’’)が、複数の収容空間(3)を持つ多穴型として構成されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の焼結機(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの型パンチ(4a、4b)は非導電性であり、前記少なくとも1つの型パンチ(4a、4b)は絶縁材料で製造されている、及び/又は、電気絶縁被覆を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の焼結機(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの型パンチ(40a)が金属で製造されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の焼結機(1)。
【請求項10】
前記第1の調整装置(5)が、電気的及び/又は熱的に絶縁性の絶縁要素(19)を介して、前記少なくとも1つの型パンチ(4a、4b、40a、40b)に作用することを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の焼結機(1)。
【請求項11】
第1の型パンチ(4a、40a)及び第2の型パンチ(4b、40b)が設けられ、前記第1の型パンチ(4a、40a)及び前記第2の型パンチ(4b、40b)は、前記第1の調整装置(5)によって前記第1の調整軸線に沿って(S1)互いに反対方向に調整可能に移動でき、前記押圧位置において、互いに反対方向から軸線に沿って前記収容空間(3)に挿込まれることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の焼結機(1)。
【請求項12】
第1の接触パンチ(6a、6c)及び第2の接触パンチ(6b、6d)が設けられ、前記第1の接触パンチ(6a、6c)及び前記第2の接触パンチ(6b、6d)は、前記第2の調整装置(7)によって前記第2の調整軸線(S2、S2’、S2’’)に沿って互いに反対方向に調整可能に移動することができ、前記接触位置で前記ダイ(2、2’、2’’)の互いに反対側の外面(2a~2d)に押付けられることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の焼結機(1)。
【請求項13】
前記抵抗加熱装置(W)は、交流及び/又は直流、特にパルス直流を前記ダイ(2、2’、2’’)印加するように構成されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の焼結機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結対象の、特に圧粉体状の焼結材料を収容するために設けられる収容空間を持つ少なくとも1つの導電性ダイと、第1の調整装置と、少なくとも1つの型パンチと、及び、ダイに電流を印加することによってダイを加熱するよう構成された抵抗加熱装置とを有し、少なくとも1つの型パンチは第1の調整装置によって、第1の調整軸線に沿って収容空間に対してプレス位置まで調整可能に移動でき、焼結材料を第1の圧縮力で機械的に加圧するために、少なくとも1つの型パンチは軸線に沿って収容空間に挿込まれる、電場支援焼結用焼結機に関する。
【背景技術】
【0002】
この形式の焼結機は特許文献1によって知られており、電場支援焼結のために提供される。いわゆる電場支援焼結は、FAST(電場支援焼結技術)及びSPS(スパークプラズマ焼結)という略語でも知られる。既知の焼結機は、焼結対象の焼結材料が導入される環状型形状の導電性ダイと、環状型に軸線に沿って互いに反対方向から挿込まれ得る2つの型パンチとを有する。加えて、パルス直流電流源と2つの電極とを備えた抵抗加熱装置が提供される。電極は、圧縮力を伝達し電気を通すように、型パンチの裏側に支持される。焼結材料に圧縮力を加えるために、調整装置が電極の裏側に作用し、型パンチと共に調整軸線に沿って電極を互いに向かって移動させる。同時に、ダイを加熱するために、パルス直流が電極を介して型パンチに導通し、そこからダイに導通する。ダイの電気抵抗によってダイは加熱され、その結果、焼結に必要な焼結材料の加熱がおこる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/177995(A1)号パンフレット
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、従来技術よりも改善された特性を有し、特に焼結材料の改善された加圧及び加熱を可能にする、冒頭で述べた形式の焼結機を提供することである。
【0005】
上記目的は、抵抗加熱装置に第2の調整装置及び少なくとも1つの接触パンチが設けられ、少なくとも1つの接触パンチは、第2の調整装置によって第2の調整軸線に沿ってダイに対して接触位置まで調整可能に移動でき、ダイに電流を印加するために、少なくとも1つの接触パンチが、第2の圧縮力でダイの外面に押付けられることで達成される。本発明による解決策は、ダイへの電流の印加とは無関係に、焼結材料の機械的加圧を実現すること、逆もまた同様に可能にする。これは、従来の電場支援焼結用焼結機とは対照的に、例えば、機械的加圧のために設けられる少なくとも1つの型パンチを介して同時にダイに電流が印加されないためである。その代わりに、本発明によれば、電流の印加は少なくとも1つの接触パンチを介して実現され、加圧は少なくとも1つの型パンチを介して実現される。つまり、単純化すると、力及び電流の流れが分離及び/又は独立しているとも言うことができる。本発明による解決策は、目的通りに、機械的加圧の要件とは無関係に、電流の印加を目的として少なくとも1つの接触パンチを構成することを可能にする。同時に、目的通りに、電流印加の要件とは無関係に、機械的加圧を目的として、少なくとも1つの型パンチを構成することを可能にする。少なくとも1つの型パンチ及び少なくとも1つの接触パンチは、例えば、有利なことに、異なる材料から製造され、及び/又は、異なる寸法を有することが可能である。特に、力の機械的伝達又は電気エネルギーに対して異なる断面、及び/又は、焼結材料又はダイの外面に接触するための異なる接触面を有することができる。つまり、本発明によれば、少なくとも1つの型パンチが導電性材料で製造されることは必須ではない。代わりに、特に圧力安定性のある材料、具体的にはセラミック又は同種のものを有利に使用することができる。同じく、本発明によれば、少なくとも1つの接触パンチが特に圧力安定性のある材料で製造されることは必須ではない。代わりに、特に導電性のある材料を有利に使用することができる。また、本発明によれば、少なくとも1つの型パンチは、第1の調整装置によって調整可能に移動することができ、少なくとも1つの接触パンチは、第2の調整装置によって調整可能に移動することができる。第1の調整装置は、焼結材料に圧縮力を加えるための第1の圧縮力をもたらす。第2の調整装置は、少なくとも1つの接触パンチをダイの外面に押付けるための第2の圧縮力をもたらす。このようにして、第2の圧縮力は、実現されるべき焼結材料の加圧とは無関係に、少なくとも1つの接触パンチと外面との間の電気接触抵抗を目的として、目的通りに設定することができる。同時に、第1の圧縮力は、少なくとも1つの接触パンチと外面との間で実現されるべき接触抵抗とは無関係に、焼結材料への圧縮力の適用を目的として設定することができる。本発明による解決策は、少なくとも1つの型パンチがダイと比較して小さい断面積及び/又は質量を有する場合に、特に利点を提供する。従来技術の焼結機では、焼結機の規定及び特定の条件により、電流印加の目的としては、型パンチの断面及び/又は質量がダイに対して小さすぎるため、電流を充分に印加し、それによって充分に加熱することができない。本発明による解決策では、電流の印加やそれによる加熱は、少なくとも1つの型パンチとは無関係に、少なくとも1つの接触パンチを介してもたらされるため、上記のような影響がない。さらに、本発明による解決策は、例えば、焼結材料が液相を有するために、比較的低い圧縮力が焼結材料に加えることのみ必要である場合、特に利点を提供する。従来技術の焼結機の場合、焼結機の規定及び特定の条件により、押圧力が比較的低く電気接触抵抗が高すぎるため、電流を最適に印加し、それによって最適に加熱することができない。一方、本発明による解決策は、比較的低い第1の圧縮力で圧縮力を加える場合でも、電気接触抵抗を確実に充分に抑え得る。これは、電気接触抵抗の実現に重要な第2の圧縮力が、少なくとも1つの型パンチとは無関係に、少なくとも1つの接触パンチによって加えられるためである。ダイは、型又は焼結型とも呼ばれ得る。第1の圧縮力は押圧力とも呼ばれ得る。第2の圧縮力は、接触力とも呼ばれ得る。第1の調整軸線及び第2の調整軸線は、特に互いに対して平行、同軸上、又は、垂直に配向され得る。本発明の一構成では、複数の型パンチ及び/又は複数の接触パンチが設けられ得る。第1の圧縮力及び/又は第2の圧縮力は、油圧で生成されるのが好ましい。したがって、第1の調整装置及び/又は第2の調整装置は、油圧調整装置、空気圧調整装置、又は起電力調整装置であることが好ましい。つまり、第1の圧縮力及び/又は第2の圧縮力を加えるために、各々少なくとも1つの油圧シリンダー、空気圧シリンダー及び/又はモータ駆動スピンドルが設けられ得る。本発明による焼結機は、電場支援焼結用に構成されており、電場支援焼結は、FAST(電場支援焼結技術)及び/又はSPS(スパークプラズマ焼結)といった略語でも呼ばれ得る。
【0006】
本発明の一構成では、第1の圧縮力を第1の値に調整し、第2の圧縮力を第2の値に調整するように構成された調整装置が提供される。結果として、一方では、焼結材料に対して非常に正確に圧縮力を適用し得る。他方では、第2の圧縮力を調整することで、少なくとも1つの接触パンチとダイの外面との間に生じる電気的接触抵抗に、目的通りの影響を及ぼし、調整することを可能にする。これにより、電流の印加及びそれによる加熱を更に改善することが可能になる。それに代わって又はそれに加えて、調整装置は、第1の圧縮力及び第2の圧縮力を制御するように構成され得る、つまり、単純な制御装置として設計されてもよい。
【0007】
本発明の更なる構成では、第1の調整軸線及び第2の調整軸線は、互いに対して平行及び/又は同軸上に配向され、少なくとも1つの接触パンチが、接触位置において、ダイの下端面又は上端面に押付けられる。このようにして、特に、構造的に単純な構成の焼結機が得られる。第1の圧縮力及び第2の圧縮力は、調整軸線に対応して、互いに平行及び/又は同軸上に向けられる。ダイの下端面又は上端面は、第2の圧縮力、つまり、第2の調整軸線に対して垂直に配向するのが好ましい。
【0008】
本発明の更なる構成では、少なくとも1つの接触パンチは貫通開口部を備える環状を有し、環状を通って、第1の調整軸線が特に同軸上に長手方向に延びる。このようにして、より単純化された構造の焼結機が得られる。少なくとも1つの接触パンチの環状は、好ましくは円筒形状である。貫通開口部は、好ましくは円筒形の貫通開口部である。環状及び/又は貫通開口部の軸線方向は、第2の調整軸線の同軸上に配向されるのが好ましい。型パンチ及び/又は第1の調整装置は、少なくとも各々の特定の部分において、貫通開口部を通って長手方向に延びることが好ましい。いずれの場合も、型パンチ及び/又は第1の調整装置は、押圧位置では長手方向に延びる。本発明のこの構成において、ダイは環状、特に円筒形状を有するのが好ましい。
【0009】
本発明の更なる構成では、第1の調整軸線及び第2の調整軸線は、互いに対して垂直に配向され、少なくとも1つの接触パンチが、接触位置でダイの側方の外殻面に押付けられる。外殻面は、第2の調整軸線及び/又は第2の圧縮力に対して垂直に配向される。本発明のこの構成では、第1の調整軸線は垂直に配向され、第2の調整軸線は水平に配向される、又はその逆も同様である。このような調整軸線の配向によって、構造上の利点が与えられる。特に、利用可能な構造空間をより改善された方法で使用することができる。
【0010】
本発明の更なる構成では、ダイは立方体状を有し、外殻面は、第2の調整軸線に対して垂直に、第1の調整軸線に対して平行に配向される。このような立方体状のダイは、特に、ダイが複数の収容空間を備えた多穴型として構成される場合に有利である。このような多穴型は、例えば歯科治療用の研削点又はバー(bur)など、比較的「小さい」焼結部品の工業的製造時に特に利点を与える。立方体状及び対応する外殻面の配向により、特に円筒形状のダイと比較して、少なくとも1つの接触パンチと外殻面との間に比較的大きな接触面を得ることが可能になる。さらに、利用可能な構造空間をより改善された方法で使用することができる。
【0011】
本発明の更なる構成では、ダイは、複数の収容空間を備えた多穴型として構成される。このような構成は、特に本発明の前述の構成と組み合わせた場合に特に有利である。少なくとも1つの型パンチが複数の収容空間の各々に設けられるため、複数の型パンチがそれに応じて備えられる。
【0012】
本発明の更なる構成では、少なくとも1つの型パンチは非導電性であり、少なくとも1つの型パンチは電気絶縁材料で製造され、及び/又は、電気絶縁被覆を有する。このため、少なくとも1つの型パンチは、特にセラミックで製造され、又は、セラミック被覆を有していてもよい。従来技術で知られている電場支援焼結用の焼結機では、通常、1つ又は複数の型パンチが導電性構成であることを必須の前提としている。本発明が上記構成をとることによって、構成に通常関連した材料選択の制限が回避される。
【0013】
本発明の更なる構成では、少なくとも1つの型パンチは金属で製造される。このように型パンチの材料を選択できることは、「小さな」焼結部品の製造用に多穴型として構成されたダイと組み合わせた場合に特に有利であるが、これに限られない。少なくとも1つの型パンチは金属で製造されているため、電気抵抗が比較的低い。これは、少なくとも1つの型パンチに関連した抵抗に起因する加熱温度も比較的低くなるため、通常の電場支援焼結プロセスを実行する場合には不都合が生じる。この不都合な点は、本発明による電流の印加と圧縮力の適用との分離によって回避される。これは、電流の印加が少なくとも1つの接触パンチを介して、つまり、少なくとも1つの金属製の型パンチとは分離して実現されるためである。
【0014】
本発明の更なる構成では、第1の調整装置は、電気的及び/又は熱的に絶縁性のある絶縁要素を介して少なくとも1つの型パンチに作用する。換言すると、第1の調整装置は、絶縁要素によって、少なくとも1つの型パンチから電気的及び/又は熱的に絶縁されている。これは、第1の調整装置を介した電流及び/又は熱の望ましくない散逸を解消する。これにより、焼結材料への電流の印加及びそれによる加熱を更に改善することが可能になる。絶縁要素は、セラミック材料で製造されるのが好ましい。
【0015】
本発明の更なる構成では、第1の型パンチ及び第2の型パンチが設けられ、これらは、第1の調整装置によって第1の調整軸線に沿って互いに反対方向に調整可能に移動でき、押圧位置において、互いに反対方向から軸線に沿って収容空間に挿込まれる。この構成では、収容空間は、ダイを通って軸線方向に延び、互いに反対の面に開口を有する貫通開口状である。2つの型パンチの各々は、押圧位置において、面開口の1つに軸線方向に突出する。第1の圧縮力を加えるため、第1の型パンチ及び/又は第2の型パンチは、第1の調整軸線に沿って互いに向かって相対的に移動される。このため、第1の型パンチ及び/又は第2の型パンチは、第1の調整装置によって調整可能に移動可能な方法で変位させることができる。換言すると、2つの型パンチ又は2つの型パンチのうちの1つのみを、調整可能に移動可能な方法で変位させてもよい。
【0016】
本発明の更なる構成では、第1の接触パンチ及び第2の接触パンチが設けられ、第1の接触パンチ及び第2の接触パンチは、第2の調整装置によって第2の調整軸線に沿って互いに反対方向に調整可能に移動でき、接触位置において、ダイの互いに反対側の外面に押付けられる。第2の調整軸線の向きによって、互いに反対側の外面は、ダイの軸線方向に互いに反対の端面、又は、ダイの横方向に互いに反対の外殻面であり得る。第2の圧縮力を加えるために、第1の接触パンチ及び第2の接触パンチは、第2の調整軸線に沿って互いに向かって相対的に移動される。この目的のために、第1の接触パンチ及び/又は第2の接触パンチは、第2の調整装置によって調整可能に移動可能な方法で変位させることができる。換言すると、2つの接触パンチ又は2つの接触パンチのうちの1つのみを、調整可能に移動可能な方法で変位させてもよい。
【0017】
本発明の更なる構成では、抵抗加熱装置は、交流及び/又は直流、特にパルス直流をダイに印加するように構成される。特定の使用状況及び/又は焼結対象の焼結材料に応じて、交流又は直流、特にパルス直流の印加は特定の利点を提供し得る。したがって、本発明のこの構成は、焼結機の特に柔軟な使用を可能にする。
【0018】
本発明の更なる利点及び特徴は、特許請求の範囲、及び、図面を参照して提示される本発明の好ましい例示的実施形態の以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係わる、電場支援焼結のために提供される焼結機の一実施形態の大幅に簡略化された概略図を示す。
図2図2は、本発明に係わる焼結機の更なる実施形態の詳細の概略的かつ部分的な断面図を示す。
図3図3は、本発明に係わる焼結機の更なる実施形態の詳細の概略的かつ部分的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1によると、焼結機1は電場支援焼結のために構成されており、したがって、FAST又はSPSプロセスを実施するために構成される。
【0021】
焼結機1は、型又は焼結型とも呼ばれるダイ2を有する。ダイ2は、焼結対象の焼結材料Mを収容するために設けられた収容空間3を有する。つまり、ダイ2は導電性材料から製造され、この場合にはグラファイトが材料として選択される。図1に示される実施形態では、粉末部品、圧縮体、又は、未焼結の成形体とも呼ばれ得る未焼結の圧粉体状の焼結材料Mが、収容空間3に収容される。
【0022】
焼結材料Mの電場支援焼結を実施するために、前述した焼結材料は、一方では機械的に加圧される。他方では、焼結材料Mは同時に加熱される、つまり、熱に曝される。
【0023】
焼結材料Mを加圧するため、焼結機1は、少なくとも1つの型パンチ4a及び第1の調整装置5を有する。型パンチ4aは、第1の調整装置5によって、ダイ2に対して相対的に、つまり、収容空間3に対しても相対的に、第1の調整軸線S1に沿って異なる位置の間で調整可能に移動することができる。つまり、図1を参照すると、型パンチ4aの押圧位置が示される。押圧位置では、焼結材料Mの機械的加圧のために、前述の型パンチが第1の調整軸線S1に沿って軸線方向に収容空間3に挿込まれている。このようにして、第1の調整軸線S1に沿って軸線方向に作用する第1の圧縮力(より詳細には示されない)が焼結材料Mに伝達される。第1の圧縮力は、押圧力とも呼ばれ得る。
【0024】
焼結材料Mを加熱するため、焼結機1は抵抗加熱装置Wを有する。少なくとも1つの接触パンチ6a及び第2の調整装置7が抵抗加熱装置Wに設けられる。つまり、接触パンチ6aは、第2の調整装置7によって、ダイ2に対して相対的に、第2の調整軸線S2に沿って異なる位置の間で調整可能に移動することができる。図1を参照すると、接触パンチ6aは、接触位置に示される。この位置で、接触パンチ6aは、ダイに電流を印加するため、ダイ2の外面(より詳細には示されない)に押付けられる。つまり、第2の圧縮力が作用する。第2の圧縮力は接触力とも呼ばれ得る。
【0025】
一方で加圧し、他方で電流の印加によって加熱するといった上記の構造的分離により多くの利点が得られる。
【0026】
特に、押圧力と接触力を互いに独立して選択及び/又は設定することが可能である。同じことが、型パンチ4a及び接触パンチ6aの有効断面及び/又は接触面の構造的構成にも当てはまる。換言すれば、電流印加を実現する接触パンチ6aの寸法は、加圧を実現する型パンチ4aの寸法とは構造的に独立している。これは、「小さな」焼結部品を焼結するために、ダイの寸法と比較して小さい型パンチが必要な場合に特に有利である。
【0027】
さらに、本発明に係わる焼結機1の構造では、型パンチ4aが導電性であることは必須ではない。その代わりに、例えば、特に圧力安定性のある材料を使用することが可能である。逆も同じで、接触パンチ6aが特に圧力安定性がある必要はなく、故に、電流を可能な限り最適に印加するため、特に導電性の材料を使用することができる。
【0028】
図1を参照して示される実施形態の更なる空間物理的特徴及び機能的特徴について以下に詳述する。これらの特徴は有利であるが、本発明において不可欠及び/又は必須と見なされるべきではない。
【0029】
図1を参照して示される実施形態では、第1の調整軸線S1及び第2の調整軸線S2は同軸上に配向される。
【0030】
この場合、第1の型パンチとも呼ばれ得る型パンチ4aに加えて、焼結機1は更なる型パンチ4bを有する。前述の更なる型パンチは、第2の型パンチとも呼ばれ得る。第1の型パンチ4a及び第2の型パンチ4bは、第1の調整軸線S1に沿って互いに反対方向に調整可能に移動することができる。押圧位置では、2つの型パンチ4a、4bが、軸線に沿って反対方向から収容空間3に挿込まれる。図示される実施形態では、前述した収容空間は、ダイ2を通って軸線方向に延びる通路孔として構成される。2つの型パンチ4a、4bはまた、第1の調整装置5によって互いに対して相対的に移動することができる。
【0031】
図1に示される実施形態では、第1の調整装置5は、上部押圧シリンダー8a、9a及び下部押圧シリンダー8b、9bを有する。上部押圧シリンダー8a、9aは、第1の型パンチ4aに作用する。下部押圧シリンダー8b、9bは、第2の型パンチ4bに作用する。上部押圧シリンダー8a、9aは、本体8aと可動押圧パンチ9aとを有する。同じことが下部押圧シリンダー8b、9bにも同様に当てはまる。
【0032】
図1に示される実施形態では、第1の接触パンチとも呼ばれ得る接触パンチ6aに加えて、焼結機1は、更に接触パンチ6bを有する。後者は、第2の接触パンチとも呼ばれ得る。図示される接触位置(図1)では、2つの接触パンチ6a、6bが、ダイ2の互いに反対側の端面2a、2bに押付けられている。第2の圧縮力を加えるため、また、電気的に接触するため、2つの接触パンチ6a、6bは、第2の調整装置7によって、第2の調整軸線S2に沿って互いに対して相対的に移動することができる。この場合、第2の調整装置7は更なる押圧シリンダーとして構成され、テーブルシリンダー10、11と呼ばれ、本体10及び前記本体に対して相対的に移動可能なテーブルパンチ11を有する。
【0033】
図1に示される実施形態では、上部押圧シリンダー8a、9a、下部押圧シリンダー8b、9b、及びテーブルシリンダー10、11は、それぞれ油圧シリンダーとして構成される。
【0034】
一実施形態(図示せず)では、押圧シリンダー及びテーブルシリンダーは、空気圧シリンダーとして構成される。更なる実施形態(図示せず)では、調整軸線に沿って調整動作を適用するために、代わりに電動駆動の球形スピンドルが設けられる場合がある。
【0035】
図1に示される実施形態では、焼結機1はまたフレーム構成12、13、14、15を有する。フレーム構成は、位置が固定された上部プレート12、位置が固定された下部プレート13、位置が固定されたプレート12、13の間に長手方向に延びる複数のガイドコラム14、及び、ガイドコラム14に移動可能に支持される可動プレート15を有する。上部プレート12はクロスヘッドとも呼ばれ得る。下部プレート13はベースプレートとも呼ばれ得る。可動プレート15は、プレステーブルとも呼ばれ得る。
【0036】
図1に示される実施形態では、テーブルシリンダー10、11及び下部押圧シリンダー8b、9bは、いわば、運動学的に直列に接続されている。このため、下部押圧シリンダー8b、9bは、テーブルシリンダー10、11のテーブルパンチ11に支持されている。テーブルシリンダー10、11の本体10は、ベースプレート13に固定的に接続されている。対照的に、下部押圧シリンダー8b、9bの本体8bは、プレステーブル15に固定的に接続されている。上部押圧シリンダー8a、9aの本体8aは、クロスヘッド12に固定的に接続されている。
【0037】
抵抗加熱装置Wは、交流及び/又は直流、特にパルス直流をダイ2に印加するように構成され、変圧器16、接続要素17(この場合には銅の接続として設計される)、及び電極18を有する。電極は真ちゅう電極として設計されている。変圧器16から流れる電流は、接続要素17、電極18を介し、そこから、接触パンチ6a、6bを介してダイ2に印加され得る。
【0038】
図1に示される実施形態では、2つの接触パンチ6a、6bは、それぞれ貫通開口部(より詳細には示されない)を備えた環状を有し、貫通開口部を通って、第1の調整装置5の第1の調整軸線S1が延びる。上部押圧パンチ9a及び/又は第1の型パンチ4aは、第2の接触パンチ6bの貫通開口部に軸線方向に突出する。下部押圧パンチ9b及び/又は第2の型パンチ4bは、第1の接触パンチ6aの貫通開口部に突出する。
【0039】
したがって、電気的接触のため接触パンチ6a、6bの裏側に配置された電極18は、押圧パンチ9a、9bのためにそれぞれ貫通開口部(より詳細には示されていない)を備えた環状構成である。また、接続要素17も同様に、電極18との接触領域においてそれぞれそのような環状構成を有する。
【0040】
接触パンチ6a、6bは、クロスヘッド12とプレステーブル15との間に、第2の調整軸線S2に沿って配置され、各電極18及び各接続要素17を介して、上部はクロスヘッド12に、下部はプレステーブル15に支持される。
【0041】
接触パンチ6a、6bを押付けるため、プレステーブル15は、第2の調整軸線S2に沿って、クロスヘッド12の方向に、つまり、図1の図面平面で上向きに変位する。これはテーブルシリンダー10、11の動作によって実現し、テーブルパンチ11は、下部押圧シリンダー8b、9bのうち、プレステーブル15の底部で支持された本体8bを持ち上げる。接触パンチ6a、6bが接触位置をとり、必要な第2の圧縮力が達成されるとすぐに、それに対応して上部押圧パンチ9a及び下部押圧パンチ9bの移動が調節されることによって、焼結材料Mに対して必要な圧縮力が適用され得る。
【0042】
図1に示される実施形態では、型パンチ4a、4bは、各々の絶縁要素19によって、それぞれ押圧パンチ9a及び9bから絶縁されている。この場合、絶縁要素19が熱的及び電気的絶縁を確実にし、絶縁要素19は、この目的のためにセラミック材料で製造されている。
【0043】
さらに、型パンチ4a、4bは、それぞれ非導電性であり、この目的のために電気絶縁材料、例えばセラミックで製造されている。一実施形態(図示せず)では、型パンチに代わりに電気絶縁被覆のみが設けられていてもよい。
【0044】
この場合、焼結機1は調整装置20も有する。調整装置20は、第1の圧縮力を第1の値W1に調整し、第2の圧縮力を第2の値W2に調整するよう構成される。調整装置20は、大幅に簡略化された概略図として示される。図1を参照して破線で示される、調整装置20と焼結機1のその他の構成要素との間の接続は、少なくとも第1の調整装置5及び第2の調整装置7への調整システムにおける動作接続を概略的に構成している。調整装置20は、押圧力及び接触力を互いに別々に設定し、これらの力を所定の値W1、W2に調整することを可能にする。これは、テーブルシリンダー10、11と下部押圧シリンダー8b、9bとの間の上述した運動学的な直列接続と組み合わせることで特に有利である。
【0045】
図2及び図3は、本発明に係わる焼結機の更なる実施形態の詳細図を示す。繰り返しを避けるため、図1の実施形態に対して、図2及び図3の実施形態が大きく異なる部分のみ以下に記載する。つまり、同一の構成要素には同一の参照記号が付され、個別に説明されない。
【0046】
図2の実施形態が大きく異なる部分は、第2の調整軸線S2’が第1の調整軸線S1に対して垂直に配向されることである。したがって、図2に示される接触位置において、接触パンチ6c、6dは、ダイ2’の側方の外殻面2c、2dに押付けられる。外殻面2c、2dは、第2の調整軸線S2’に対して垂直に配向される。接触パンチ6c、6dの接触を可能な限り面的にするため、外殻面2c、2dは、互いに平行な平面に配向され、ダイ2’は長方形、特に正方形の外輪郭を有する。これは、図1に係わるダイ2の円筒形の構成とは異なる。
【0047】
図3の実施形態の大きく異なる部分は、ダイ2’’が、複数の収容空間3を備えた多穴型として構成されることである。収容空間3は、各々が焼結対象の焼結材料Mを収容するために設けられており、したがって、本構成では複数の焼結部品を同時に焼結することができる。第1の調整軸線S1に沿って反対方向に調整可能に移動できる2つの型パンチ40a、40bが、各収容空間3に設けられている。つまり、型パンチ40aはそれぞれ金属で製造されている。これは、図3を参照して示される型パンチ40aの比較的薄い特定部分の構成で特に有利である。接触力(詳細には示されない)は、第2の調整軸線S2’’に沿ってダイ2’’の外殻面2c、2dに加えられる。第2の調整軸線S2’’は、対に配置された型パンチ40a、40bの第1の調整軸線S1に対して垂直に配向される。さらに、ダイ2’’は、図2のダイ2’と同様に、外殻面2c、2dが第2の調整軸線S2’’に対して垂直に、そして第1の調整軸線S1に対して平行に配向される立方体状を有する。
図1
図2
図3
【外国語明細書】