(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036980
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】灌流用途のための接線流ろ過装置
(51)【国際特許分類】
C12M 3/06 20060101AFI20220301BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220301BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C12M3/06
C12M1/00 C
C12M1/12
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021188462
(22)【出願日】2021-11-19
(62)【分割の表示】P 2019566212の分割
【原出願日】2018-05-25
(31)【優先権主張番号】62/513,793
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アリソン・デュポン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】灌流システム及び方法のためのフィルターエレメントを提供する。
【解決手段】灌流フィルターエレメントシートであって、少なくとも0.65μmの平均孔径を有する微孔性膜112;及び織成繊維を含み少なくとも35%の開口面積を有する供給スペーサー120を含み、灌流システムにて使用したとき、灌流フィルターエレメントシートは本質的に等価の開口チャネルシステムと比較して30分後により高い流束を達成する、灌流フィルターエレメントシート、及び該シートを含むフィルターエレメントを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌流フィルターエレメントシートであって、
少なくとも約0.65μmの平均孔径を有する微孔性膜;及び
織成繊維を含み少なくとも約35%の開口面積を有する供給スペーサー
を含む、灌流フィルターエレメントシート。
【請求項2】
孔径が約0.8μm~約10μmである、請求項1に記載のフィルターエレメントシート。
【請求項3】
孔径が約1.0μm~約5μmである、請求項1又は2に記載のフィルターエレメントシート。
【請求項4】
供給スペーサーが、約35%~約55%の開口面積を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルターエレメント。
【請求項5】
供給スペーサーが、約6本の繊維/cm~約13本の繊維/cmの繊維密度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルターエレメント。
【請求項6】
供給スペーサーが、少なくとも約270μmの平均繊維径を有する繊維を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルターエレメント。
【請求項7】
供給スペーサーが、約300μm~約500μmの平均繊維径を有する繊維を含む、請求項6に記載のフィルターエレメント。
【請求項8】
供給スペーサーが、2/1綾織りパターンに織成された繊維を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルターエレメント。
【請求項9】
供給スペーサーが、1/1織りパターンに織成された繊維を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルターエレメント。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の少なくとも1つのフィルターエレメントシートを含む、フィルターエレメント。
【請求項11】
フィルターエレメントがスパイラル型フィルターエレメントである、請求項10に記載のフィルターエレメント。
【請求項12】
フィルターエレメントがカセットフィルターエレメントである、請求項10に記載のフィルターエレメント。
【請求項13】
灌流システムであって、
請求項10、11、又は12に記載の少なくとも1つのフィルターエレメント;及び
少なくとも1つのフィルターエレメントを通して液体供給原料の流れを制御するように配置されたポンプを含み、システムが接線流ろ過(TFF)モードにおいて稼働するように配置された、
灌流システム。
【請求項14】
ポンプが磁気浮上型ポンプである、請求項13に記載の灌流システム。
【請求項15】
ポンプが蠕動ポンプである、請求項13に記載の灌流システム。
【請求項16】
ポンプがダイヤフラムポンプである、請求項13に記載の灌流システム。
【請求項17】
システムが再循環モードにおいて稼働するように配置された、請求項13~16のいずれか一項に記載の灌流システム。
【請求項18】
システムが交互流モードにおいて稼働するように配置された、請求項13~17のいずれか一項に記載の灌流システム。
【請求項19】
少なくとも1つのフィルターエレメントの供給チャネルを通して液体供給原料を通過させる工程であって、少なくとも1つのフィルターエレメントが、供給チャネル内に設置された精密ろ過膜及び織成供給スペーサーを含む工程;並びに
フィルターエレメントにおいて、接線流ろ過(TFF)によって、液体供給原料を透過液及び保持液にろ過分離する工程
を含む、灌流プロセス。
【請求項20】
液体供給原料が細胞及び標的タンパク質を含む、請求項19に記載の灌流プロセス。
【請求項21】
透過液中に標的タンパク質を回収する工程をさらに含む、請求項20に記載の灌流プロセス。
【請求項22】
保持液中に細胞を保持する工程をさらに含む、請求項20又は21に記載の灌流プロセス。
【請求項23】
保持液の少なくとも一部を、少なくとも1つのフィルターエレメントを通して再循環させる工程をさらに含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の灌流プロセス。
【請求項24】
少なくとも1つのフィルターエレメントを通る液体の流れを交互に切り替える工程をさらに含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の灌流プロセス。
【請求項25】
精密ろ過膜が、少なくとも約0.65μmの平均孔径を有する微孔性膜である、請求項19~24のいずれか一項に記載の灌流プロセス。
【請求項26】
織成供給スペーサーが、少なくとも約35%の開口面積を有する、請求項19~25のいずれか一項に記載の灌流プロセス。
【請求項27】
保持液に、ある量の新鮮な培地を供給する工程;及び
保持液を、少なくとも1つのフィルターエレメントのバイオリアクター上流に戻す工程
をさらに含む、請求項19~26のいずれか一項に記載の灌流プロセス。
【請求項28】
液体供給原料を、少なくとも1つのフィルターエレメントの供給チャネルを通して通過させる工程及び保持液をバイオリアクターに戻す工程が連続的に行われ、保持液が次の灌流プロセスの液体供給原料である、請求項27に記載の灌流プロセス。
【請求項29】
宿主細胞を含有する液体供給原料から標的タンパク質を収穫するための灌流プロセスであって、
標的タンパク質及び宿主細胞を含有する液体供給原料を、少なくとも1つのフィルターエレメントの供給チャネルへ送達する工程であって、少なくとも1つのフィルターエレメントが、供給チャネル内に設置された精密ろ過膜及び織成供給スペーサーを含む工程;及び
少なくとも1つのフィルターエレメントにおいて、宿主細胞から標的タンパク質を分離する工程
を含む、灌流プロセス。
【請求項30】
標的タンパク質が、モノクローナル抗体である、請求項29に記載の灌流プロセス。
【請求項31】
標的タンパク質が、接線流ろ過(TFF)によって宿主細胞から分離される、請求項29又は30に記載の灌流プロセス。
【請求項32】
標的タンパク質を少なくとも1つのフィルターエレメントから回収する工程をさらに含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の灌流プロセス。
【請求項33】
少なくとも約500L/m2のフィルターエレメントの収穫スループットにおいて、標的タンパク質の少なくとも約80%が液体供給原料から回収される、請求項32に記載の灌流プロセス。
【請求項34】
少なくとも約1000L/m2のフィルターエレメントの収穫スループットにおいて、標的タンパク質の少なくとも約80%が液体供給原料から回収される、請求項33に記載の灌流プロセス。
【請求項35】
少なくとも約500L/m2のフィルターエレメントの収穫スループットにおいて、標的タンパク質の少なくとも約90%が液体供給原料から回収される、請求項33に記載の灌流プロセス。
【請求項36】
少なくとも約1000L/m2のフィルターエレメントの収穫スループットにおいて、標的タンパク質の少なくとも約90%が液体供給原料から回収される、請求項35に記載の灌流プロセス。
【請求項37】
少なくとも約500L/m2のフィルターエレメントの収穫スループットにおいて、標的タンパク質の少なくとも約95%が液体供給原料から回収される、請求項33に記載の灌流プロセス。
【請求項38】
少なくとも約1000L/m2のフィルターエレメントの収穫スループットにおいて、標的タンパク質の少なくとも約95%が液体供給原料から回収される、請求項37に記載の灌流プロセス。
【請求項39】
宿主細胞を少なくとも1つのフィルターエレメントから回収する工程;
回収された宿主細胞に、ある量の新鮮な培地を供給する工程;及び
回収された宿主細胞を、少なくとも1つのフィルターエレメントのバイオリアクター上流に戻す工程
をさらに含む、請求項29~38のいずれか一項に記載の灌流プロセス。
【請求項40】
液体供給原料を少なくとも1つのフィルターエレメントの供給チャネルに送達する工程及び回収された宿主細胞をバイオリアクターに戻す工程が連続的に行われ、回収された宿主細胞が、次の灌流プロセスの液体供給原料である、請求項39に記載の灌流プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2017年6月1日に出願した米国仮出願第62/513,793号の利益を主張するものである。上記出願のすべての教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体(mAb)は、例えば、がん、移植拒絶反応及び循環器疾患を含む様々な適応症のための治療剤として使用される。例えば、流加プロセス及び灌流プロセスを含む、宿主細胞からmAbを生成し収穫するための様々な生物薬剤製造技法が存在する。流加バイオリアクターシステムにおいて、細胞は一定の期間にわたって、例えば、約7日~約21日にわたってバッチで培養される。この後、宿主細胞によって培地の栄養素が消費され、廃棄物が蓄積する。細胞培養期間に続いて、バッチは収穫段階を経て、ここで対象となるタンパク質(例えば、モノクローナル抗体又はmAbのような生成物)が細胞集団から分離される。流加システムとは対照的に、灌流バイオリアクターは、細胞に新鮮な培地を連続的に供給し、使用済みの培地を除去し、生成物を収穫しながら、より長い期間にわたって、例えば、数週間又は数か月にわたって、細胞を培養する。灌流システムは、流加システムと比較していくつかの利点を提供する。例えば、対象となるタンパク質が高レベルの廃棄物に曝露される前に、生成物が連続的に収穫され精製されるので、灌流システムでは生成物の劣化が低減される。さらに、灌流バイオリアクターは、著しく小さいスペースを占めながら、流加バイオリアクターと同様の生成物の収率を生成することができる。灌流は、流加(batch-fed process)と比較したその利点に起因して、生物薬剤産業界において好ましい製造技法になっている。しかしながら、灌流プロセスは、各生成プロセスの全体にわたって維持される宿主細胞の高密度、及びろ過のいくつかの反復を伴う連続的な収穫に依存しており、宿主細胞に物理的な損傷を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の灌流システム及びプロセスは、宿主細胞に損傷を引き起こす恐れのある障害物を回避するために、開口供給チャネル(open feed channel)を有するフィルターエレメントを使用している。しかしながら、こうした従来のシステム及びプロセスにおいて使用されているフィルターエレメントは、比較的短い寿命を有し、膜汚れに起因して、低い収穫スループットでの著しく低減されたふるい分けを示す。既存の開口チャネル及び中空繊維の装置と比較して、mAbの改善されたふるい分け及びスループットを示す、灌流システム及び方法用のフィルターエレメントが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、本発明は、少なくとも約0.65μmの平均孔径を有する微孔性膜、及び織成繊維(woven fiber)を含み少なくとも約35%の開口面積(open area)を有する供給スペーサーを含む、フィルターエレメントシートを包含する。
【0005】
織成繊維を含み少なくとも約35%の開口面積を有する供給スペーサーは、フィルターエレメントの供給チャネル内に低い剪断速度を提供することができ、このため宿主細胞はろ過中に損傷されない。供給スペーサーは、例えば、約35%~約55%の開口面積を有することができ、少なくとも約270μm、例えば、約300μm~約500μmの平均繊維径を有する繊維を含むことができる。供給スペーサーの孔径は、例えば、約0.8μm~約10μm、又は約1.0μm~約5μmであり得る。供給スペーサーの繊維密度は、約6本の繊維/cm~約13本の繊維/cmであり得る。供給スペーサーの繊維は、2/1(two-over-one)綾織りパターン又は1/1(one-over-one)織りパターンに織成され得る。
【0006】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つのフィルターエレメントシートを含むフィルターエレメントを提供する。フィルターエレメントは、スパイラル型(spiral-wound)フィルターエレメント又はカセットフィルターエレメントであり得る。
【0007】
さらなる実施形態において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つのフィルターエレメント、及び少なくとも1つのフィルターエレメントを通して液体供給原料(liquid feed)の流れを制御するように配置されたポンプを含む、灌流システムを包含する。
【0008】
こうした灌流システムは、例えば、接線流ろ過(TFF)モード、再循環モード及び/又は交互流モードにおいて稼働するように配置され得る。ポンプは、例えば、磁気浮上型ポンプ、蠕動ポンプ又はダイヤフラムポンプであり得る。
【0009】
さらに別の実施形態において、本発明は、少なくとも1つのフィルターエレメントの供給チャネルを通して液体供給原料を通過させる工程、並びにフィルターエレメントにおいて、接線流ろ過(TFF)によって、ろ過液体供給原料を透過液(permeate)及び保持液(retentate)に分離する工程を含む、灌流プロセスに関する。フィルターエレメントは、供給チャネル内に設置された精密ろ過膜及び織成供給スペーサーを含む。細胞及び標的タンパク質は液体供給原料中に存在し得る。
【0010】
さらなる実施形態において、本発明の灌流プロセスは、透過液中に標的タンパク質を回収する工程、及び/又は保持液中に細胞を保持する工程も含むことができる。いくつかの実施形態において、保持液の少なくとも一部は、少なくとも1つのフィルターエレメントを通して再循環され得る。追加的に又は代替的に、フィルターエレメントのセルフクリーニングのために、少なくとも1つのフィルターエレメントを通る液体の流れは交互に切り替え得る。灌流プロセスは、保持液に、ある量の新鮮な培地を供給する工程、並びに保持液及び新鮮な培地をバイオリアクターに戻す工程も含むことができる。灌流プロセスは、最初の灌流運転の保持液が次の灌流運転の液体供給原料であるという状態で、連続的に運転され得る。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、宿主細胞を含有する液体供給原料から標的タンパク質を収穫するための灌流プロセスを提供する。プロセスは、標的タンパク質及び宿主細胞を含有する液体供給原料を、少なくとも1つのフィルターエレメントの供給チャネルへ送達する工程、及び少なくとも1つのフィルターエレメントにおいて、宿主細胞から標的タンパク質を分離する工程を含む。少なくとも1つのフィルターエレメントは、供給チャネル内に設置された精密ろ過膜及び織成供給スペーサーを含む。標的タンパク質は、例えばモノクローナル抗体であることができ、標的タンパク質は、TFFによって宿主細胞から分離され、少なくとも1つのフィルターエレメントから回収され得る。灌流プロセスは、宿主細胞を少なくとも1つのフィルターエレメントから回収する工程、回収された宿主細胞に、ある量の新鮮な培地を供給する工程、及び回収された宿主細胞を、バイオリアクターに戻す工程をさらに含むことができる。灌流プロセスは、最初の灌流運転の回収された宿主細胞が次の灌流運転の液体供給原料であるという状態で、連続的に運転され得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の灌流プロセスは、開口チャネルろ過装置を含む従来の灌流プロセスと比較して、改善されたふるい分けを提供することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも約500L/m2のフィルターエレメントの収穫スループットにおいて、標的タンパク質の少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、液体供給原料から回収され得る。他の実施形態において、少なくとも約1000L/m2のフィルターエレメントの収穫スループットにおいて、標的タンパク質の少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、液体供給原料から回収され得る。
【0013】
添付図面に示されているように、同じ参照文字は異なる図にわたって同一部分を示す。本発明の例示的実施形態の以下のより詳細な記述から、前述は明白になる。図は必ずしも原寸に比例しておらず、その代りに、本発明の実施形態を説明することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】スパイラル型フィルターエレメントの例を説明する図形である。
【
図2】カセットフィルターエレメントの例の分解図である。
【
図3】TFFシステムの例を説明する概略図である。
【
図4A】織成繊維供給スペーサーの模擬画像である。
【
図4C】
図4Aの織成繊維供給スペーサーの剪断モデル化結果の三次元図である。
【
図5】織成繊維供給スペーサーを有する環境における、モデル化された剪断速度の図である。
【
図6】織成繊維供給スペーサーについての、モデル結果及び実験結果の表である。
【
図7】接線流ろ過装置の、ふるい分けの実験結果対収穫スループットの図である。
【
図8A】開口チャネルろ過装置における、膜汚れの実験結果の図である。
【
図8B】Prostak(商標)Ultrafiltration(UF)スクリーンを備える装置における、膜汚れの実験結果の図である。
【
図8C】D3スクリーンを備える装置における、膜汚れの実験結果の図である。
【
図8D】Dスクリーンを備える装置における、膜汚れの実験結果の図である。
【
図9】1ミクロンの膜及びD3スクリーンを備える接線流ろ過装置の、ふるい分けの実験結果対収穫スループットの図である。
【
図10】1ミクロンの膜及び1/1織成スクリーンを備える接線流ろ過装置の、ふるい分けの実験結果対収穫スループットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
特に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0016】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り複数を含む。
【0017】
「スパイラル型フィルターエレメント」という表現は、芯の周りにスパイラル状に巻かれたろ過膜を意味する。スパイラル型フィルターエレメントはハウジング内に含有されてもよく、代わりにスパイラル型フィルターモジュールと呼ばれてもよい。
【0018】
「圧力降下」は、フィルターエレメントの長さにわたる、供給チャネル内の圧力の降下(例えば、psid)を意味する。
【0019】
「流束」は、面積で正規化された流速である。
【0020】
「透過液流束」は、透過液チャネルにおける透過液の、面積で正規化された流速(例えば、リットル/時間/m2、lmh)である。
【0021】
「クロスフロー流束」は、供給チャネルにおける保持液の、面積で正規化された平均流速(例えば、リットル/分/m2、LMM)である。
【0022】
「クロスフロー」は、フィルター又は一連のフィルターにおける供給チャネルの入口と出口の間の保持液流速である。特に明記しない限り、「クロスフロー」は平均クロスフローを意味する。
【0023】
「剪断」という用語は、圧力によって生成される、物質の構造における歪みを意味する。
【0024】
「剪断速度」という用語は、漸進的な剪断変形が加えられる速度(例えば、s-1)を意味する。
【0025】
「供給原料」、「供給試料」及び「供給ストリーム」という用語は、分離用のろ過モジュール内へ導入される溶液を意味する。
【0026】
「分離」という用語は、2つのストリーム、透過液ストリーム及び保持液ストリームに供給試料を分離する行為を一般に意味する。
【0027】
「透過液」及び「透過液ストリーム」という用語は、膜を通って透過した供給原料の一部を意味する。
【0028】
「保持液」及び「保持液ストリーム」という用語は、膜によって保持された溶液の一部を意味し、保持液は保持された化学種に富むストリームである。
【0029】
「供給チャネル」は、供給原料用のろ過アセンブリ、モジュール又はエレメントにおける導管を意味する。
【0030】
「透過液チャネル」は、透過液用のろ過アセンブリ、モジュール又はエレメントにおける導管を意味する。
【0031】
「流路」という表現は、ろ過された溶液が(例えば、接線流モードにおいて)通過するろ過膜(例えば、限外ろ過膜、精密ろ過膜)を含む、チャネルを意味する。流路は、接線流を支える任意のトポロジー(例えば、直線状、コイル状、ジグザグ状に配置)を有することができる。流路は、中空繊維膜によって形成されたチャネルの例のように開口であることができ、又は、例えば、織成又は不織布のスペーサーによって離れて間隔を置いたフラットシート膜によって形成された矩形チャネルの場合のように、1つ以上の流れ障害物を有することができる。
【0032】
「TFFアセンブリ」、「TFFシステム」及び「TFF装置」は、単一通過モード(single-pass mode)及び/又は再循環モード(例えば、完全若しくは部分的再循環)及び/又は交互流モードにおける稼働のために配置された、接線流ろ過システムを意味するように、本明細書において互換的に使用される。
【0033】
「単葉」スパイラルは、1つの連続的な供給チャネルで形成され得るスパイラル型フィルターエレメントである。それらは、一般に1枚の膜で製造されている。
【0034】
「多葉」スパイラルは、複数の供給チャネルを有するスパイラル型フィルターエレメントである。それらは一般に1枚を超える膜で製造されているが、1枚の膜シートで製造されることもできる。
【0035】
「カセットホルダー」は、1つ以上のカセット用の圧縮アセンブリを意味する。典型的には、カセットホルダーが1つを超えるカセットを含有している場合、カセットは並列処理用に配置されるが、いくつかの実施形態において、カセットは直列処理用に配置されることができる。
【0036】
「カセット」は、TFFプロセスに好適なろ過(例えば、限外ろ過又は精密ろ過)膜シートを含む、カートリッジ又は平板モジュールを意味する。
【0037】
「ろ過膜」は、TFFシステムのようなろ過システムにおいて使用できる、選択透過膜を意味する。
【0038】
「精密ろ過膜」及び「MF膜」という用語は、約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートルの範囲の孔径を有する膜を意味するように、本明細書において使用される。
【0039】
「流動的に連結された」は、供給チャネル、保持液チャネル及び/又は透過液チャネルのような液体用の1つ以上の導管によって互いに連結された、複数のスパイラル型膜TFFモジュールを意味する。
【0040】
「生成物」は、標的化合物を意味する。典型的には、生成物は、モノクローナル抗体(mAb)のような対象となる生体分子(例えば、タンパク質)である。
【0041】
「処理」は、対象となる生成物を含有する供給原料を、(例えば、TFFによって)ろ過し、続いて生成物を(例えば、精製された形態で)回収する行為を意味する。生成物は、生成物の大きさ及びろ過膜の孔径に応じて、保持液ストリーム又は透過液ストリームにおいて、ろ過システム(例えば、TFFアセンブリ)から回収され得る。
【0042】
「並列処理」、「並列における処理」、「並列稼働」及び「並列における稼働」という表現は、供給チャネル又はマニホールドからアセンブリの各処理ユニットに供給原料を直接分配することによって流動的に連結された、複数の処理ユニットを含有するTFFアセンブリにおいて生成物を処理することを意味する。
【0043】
「直列処理」、「直列における処理」、「直列稼働」及び「直列における稼働」という表現は、供給チャネルからアセンブリの第1の処理ユニットだけに供給原料を直接分配することによって流動的に連結された、複数の処理ユニットを含有するTFFアセンブリにおいて生成物を処理することを意味する。直列処理において、アセンブリのそれぞれ他の次の処理ユニットは、前の処理ユニットの保持液ラインからこの供給原料を受け取る。(例えば、第1の処理ユニットからの保持液は、第2の隣接する処理ユニットのための供給原料として役割を果たす。)
本発明の例示的実施形態の記述が、以下に続く。
【0044】
灌流システムにおける接線流ろ過
灌流システム及び方法は、流加システムとは対照的に、細胞培養培地の連続的なろ過を含む。ろ過中に、mAbのような標的タンパク質、及び任意選択的に細胞廃棄物(例えば、乳酸及びアンモニア)のような他の可溶性成分が、細胞培養培地から取り出される。灌流システム(代わりに細胞保持システムと呼ばれる)は、灌流システムに含有される細胞がろ過装置を繰り返し通過し、繰り返し通過することが細胞に物理的な損傷を引き起こす恐れがあり、今度はこれがシステムの生産性を低減する恐れがあるので、流加システムと比較して独特の課題を提示する。標的タンパク質の継続的生成のために、できるだけ多くの細胞を保持するように、灌流システムにおけるろ過中の細胞損傷を最小限にすることが望ましい。
【0045】
接線流ろ過(TFF)は、溶液又は懸濁液中の成分を、大きさ、分子量又は他の違いに基づいて分離するために膜を使用する、分離プロセスである。TFFは、培地内に細胞を保持しながら、細胞培養培地から標的タンパク質を取り出すために、灌流プロセスにおいて使用される。TFFプロセスにおいて、流体は膜表面に沿って接線的にポンプで送り込まれ、膜を通過するには大きすぎる粒子、分子又は細胞は拒絶されて、プロセスタンクに戻される。TFFプロセスは、プロセス流体が十分に浄化、濃縮又は精製されるまで、膜を横切る流体の追加流路を含むことができる(例えば、再循環)。TFFのクロスフローの性質によって膜汚れは最小限になり、したがってバッチ当たり多量の処理が可能になる。膜は、スパイラル型フィルターエレメント(
図1)及びカセットフィルターエレメント(
図2)のような、様々な構造であり得るフィルターエレメント内に含有されている。
【0046】
灌流システムにおいて使用されている現行のTFF装置としては、中空繊維装置及びプレートアンドフレーム装置(plate-and-frame device)とも呼ばれる開口チャネルカセット装置が挙げられる。灌流システム用に現行で利用可能なろ過装置の例としては、中空繊維装置である、XCell(商標)ATFシステム(Repligen、Waltham、MA)及びKrosFlo(登録商標)灌流システム(Spectrum Laboratories、Rancho Dominguez、CA)、並びにカセット装置である、Prostak(商標)Microfiltration Modules(MilliporeSigma、Billerica、MA)が挙げられる。これらの装置は、供給ストリームにおける細胞への物理的な損傷を制限するように開口供給チャネルを含有しており、両装置は、汚れ(すなわち、膜の壁に沿った粒子の集積)を最小限にするために、高いクロスフロー速度を必要とする。膜汚れは、標的タンパク質及び廃棄材料の膜通過(すなわち、ふるい分け)が低減されるので、生成物の回収を低減させる。最終的に、膜汚れは、もはやろ過中に生成物が回収されず、装置の故障をもたらす恐れがある。
【0047】
低剪断供給スペーサーを備える灌流フィルターエレメント
ろ過中の細胞損傷を最小限にしながら、開口チャネル装置と比較してmAbの改善されたふるい分け及びスループットを示す、灌流システム用のフィルターエレメントが提供される。特に、開口微孔性膜及び低剪断供給スペーサーの組み合わせを含む、灌流フィルターエレメントシートが提供される。開口膜(例えば、約0.65μmより大きい、約1.0μmより大きい、又は約3μmより大きい孔径を有する膜)と低剪断供給スペーサーとの組み合わせは、細胞の安定性限界内にある、膜及び繊維の表面における剪断速度を維持もしながら、供給チャネルにおける混合を促進して汚れを最小限にする。
【0048】
一実施形態において、本発明は、微孔性膜及び織成繊維の供給スペーサーを含む、灌流フィルターエレメントシートを包含する。微孔性膜は、少なくとも約0.65μm(例えば、0.62μm、0.65μm、0.67μm、0.8μm)、少なくとも約1.0μm(例えば、0.95μm、1.0μm、1.2μm)、又は少なくとも約3.0μm(例えば、2.9μm、3.0μm、5μm)の平均孔径を有することができる。平均孔径は、約0.8μm~約10μm(例えば、0.77μm、0.8μm、0.9μm、2μm、4μm、6μm、8μm、10.3μm)、又は約1.0μm~約5μm(例えば、0.97μm、1.2μm、3μm、5.3μm)であり得る。平均孔径は、細胞培養流体内に細胞を保持しながら、細胞培養流体から標的タンパク質及び/又は廃棄材料のふるい分けを提供するように、選択され得る。好適な微孔性膜の例としては、以下の表1に列挙された膜が挙げられる。
【0049】
【0050】
供給スペーサーは、2/1綾織りパターン又は1/1織りパターンに織成された織成繊維を含むことができる。供給スペーサーは、少なくとも約35%、又は約35%~約55%(例えば、34.5%、35%、36%、39%、40%、50%、55%、55.5%)の開口面積を有することができる。供給スペーサーの繊維密度は、約6本の繊維/cm~約13本の繊維/cm(例えば、5.5本の繊維/cm、6本の繊維/cm、8本の繊維/cm、10.6本の繊維/cm、12.2本の繊維/cm、13.5本の繊維/cm)であり得る。供給スペーサーの繊維は、少なくとも約270μm(例えば、265μm、270μm、275μm)、又は約300μm~約500μm(例えば、290μm、300μm、400μm、500μm、510μm)の平均繊維径を有することができる。
【0051】
好適な供給スペーサーの例としては、2/1綾織りパターン、36%の開口面積、12.2本の繊維/cmの繊維密度、340μmの繊維径、及び610μmの厚みを有する、D-スクリーン(Propyltex(登録商標)スクリーン、製品番号05-500/36、Sefar、QC、Canada)並びに2/1綾織りパターン、39%の開口面積、10.6本の繊維/cmの繊維密度、360μmの繊維径、及び645μmの厚みを有する、D3-スクリーン(Propyltex(登録商標)スクリーン、製品番号05-590/39、Sefar、QC、Canada)が挙げられる。好適な供給スペーサーの別の例は、1/1織りパターン、46%の開口面積、8本の繊維/cmの繊維密度、400ミクロンの繊維径、及び785ミクロンの厚みを有する、Eスクリーン(PETEX(登録商標)スクリーン、製品番号07-840/46、Sefar、QC、Canada)である。
【0052】
別の実施形態において、本発明は、上述のろ過シートを含むフィルターエレメントを提供する。フィルターエレメントは、スパイラル型フィルターエレメント又はカセットフィルターエレメントであり得る。
【0053】
スパイラル型フィルターエレメント100の例は、膜エンベロープ115内の供給流れの方向を示す矢印及び透過液流れを示す矢印とともに、
図1で説明される。膜エンベロープ115は、任意選択の透過液スペーサー117の上に折り重ねられた膜112を含む。1つ以上の膜エンベロープ115が、スパイラル型フィルターエレメントに含まれ得る。膜エンベロープ115は、供給スペーサー120の外表面と面接触している。膜エンベロープ115及び供給スペーサー120は、穿孔された透過液収集管130の周りに巻かれる。
【0054】
灌流プロセスにおいて、細胞培養培地は膜112の供給側に導入される。液体供給原料(例えば、細胞培養培地)が膜112の表面を横切り、供給スペーサー120を通ってこの周りを移動するにつれて、それは透過液及び保持液に分離される。具体的には、標的タンパク質は膜112を通過し、収集チューブ130を通ってフィルターを出る透過液から回収される。細胞は保持され、フィルターを出る保持液から回収される。次に、保持液中の細胞培養培地をバイオリアクターに戻すことができ、透過液に含有されている標的タンパク質を、さらなる処理のために別の容器に収集することができる。
【0055】
カセットフィルター20の例は、
図2において説明される。カセットフィルター20は、少なくとも1つの供給プレート25及び少なくとも1つの膜プレート27を有する、カセットフィルターエレメント28を含む。供給プレート25は、織成繊維供給スペーサーを含む、又はそれから部分的に形成することができる。膜プレート27は、膜63を含む。フィルターエレメント28は、マニホールド32とマニホールド34の間の位置に置かれる。マニホールド32は、供給原料入口12及び保持液出口36を含む。マニホールド34は、透過液出口38及び供給原料入口40を含む。供給プレート25及び膜プレート27に設置された穴48及び49は、(例えば、供給原料入口12及び40を通って)フィルター20に入る液体供給原料が、矢印51、53、55及び57によって順次表される経路で移動し、透過液及び保持液に分かれるような構造においてシールされる。保持液は、これは膜63を通過しないが、(矢印67によって示されるように)保持液導管44へ移動して、保持液出口36を通ってフィルターを出る。透過液は、これは膜63を通過するが、次に、矢印59、61及び65によって順次表される経路で移動し、透過液導管42を通って移動して、透過液出口38を通ってフィルターを出る。
【0056】
本発明のフィルターエレメント(例えば、スパイラル型フィルターエレメント又はカセットフィルターエレメント)は、灌流システムにおいて使用されている既存の中空繊維及びカセット装置と比較して、いくつかの利点を提供する。モノクローナル抗体精製用の従来のろ過装置は、典型的には約0.2μm~約0.5μmの平均孔径を有する膜を含んでいる。対照的に、本発明の実施形態に含まれる微孔性膜は、少なくとも約0.65μm、例えば、少なくとも約1.0μm、又は少なくとも約3μmの平均孔径を有する「開口」微孔性膜と考えることができる。本明細書の実施例3及び5の結果は、0.2μm又は0.5μmの孔径を備える膜を有する従来のろ過装置と比較して、開口微孔性膜が改善されたふるい分け性能を提供することを実証している。膜孔径が増加するにつれて、より多くの細胞片が膜を通過する可能性が高い。本発明の発明者によって理解されるように、従来の灌流ろ過装置において、細胞片フラグメントは、静電気及び疎水的相互作用を通してタンパク質及びDNAと相互作用し、膜表面上にゲル様の層を形成すると、いかなる特定の理論にも固執することなく考えられる。こうした相互作用は、「より密な」膜(例えば、0.2μm又は0.5μmの孔径を有する膜)を有する装置において、汚れを増加させ、ふるい分けを低減する。追加的に、供給スクリーンは、フィルターを通って移動する細胞に容認できない剪断応力をかけると考えられるので、供給スクリーンは既存の灌流装置に含まれていない。これは細胞保持システムにおいて望ましくない。
図7に示されるように、従来のろ過装置のふるい分け性能は、稼働中に急激に減少し、わずか200L/m
2又は400L/m
2の収穫スループットの後に、ふるい分けはおよそ40%に低減される。実施例3及び5においてさらに記述したように、本発明の例示的実施形態は、開口微孔性膜及び織成繊維供給スペーサーシートを有し、少なくとも約500L/m
2(例えば、約1μmの膜孔径)又は少なくとも約1000L/m
2(例えば、約3μm若しくは約5μmの膜孔径)の収穫スループットにわたって、約100%のふるい分けを達成することができる。このように、本発明のフィルターエレメントの例は、既存の灌流フィルターと比較して、より長い稼働期間にわたって改善されたふるい分けを実証している。追加的に、少なくとも約35%の開口面積を有する織成繊維スペーサーシートは、細胞が供給チャネルを通過するための許容できる剪断速度をもたらしながら、供給チャネルにおける十分な乱流を促進して、汚れを低減することができることを、本明細書の実施例1~4の結果は実証している。
【0057】
灌流システム
本発明のフィルターエレメントは、灌流システムに含まれ得る。灌流システムは、本明細書に記載の1つ又は1つを超えるスパイラル型フィルターエレメント若しくはカセットフィルターエレメントを有する、TFFシステムを含むことができる。1つを超えるフィルターエレメントを有するシステムにおいて、フィルターエレメントは直列若しくは並列又は両方において流動的に連結され得る。
【0058】
TFFシステム300の例が、
図3に示される。供給タンクからの加圧された供給原料は、スパイラル型フィルターモジュールの供給ポート又はカセットフィルターのマニホールドに連結される。供給原料は、チャネル間圧力降下(trans-channel pressure drop)が適用された状態で、TFF装置の膜を並べた供給チャネルを通って流れ、典型的には、ポンプを使用して供給原料を加圧することによって達成される。供給ストリームからのいくらかの溶媒は、膜の面を通って透過液チャネル内へ流れ、溶媒とともに一部の透過性化学種(例えば、標的タンパク質、廃棄物)を運ぶ。残りの濃縮された供給ストリームは、保持液ポートを通ってモジュール又はマニホールドから流れ出る。モジュールの透過液ポートから流れる透過液は、プロセスに依存する場所に向けられ、そこに透過液は、(例えば、標的タンパク質のように)収集される、又は(例えば、廃棄物のように)捨てられる。
【0059】
TFFシステムは再循環モードで稼働することができ、この場合保持液のすべて又は一部は、さらなるろ過のためにフィルターエレメントに戻される。灌流システムにおいて、ろ過後、細胞培養培地がTFFシステムを通って再循環される前のある期間維持され得るバイオリアクターに、保持液を戻すことができる。
【0060】
TFF法を再循環させるのに用いられるフィルターエレメントを含有するTFFシステムは、システムのすべて又は一部を通って保持液を再循環させるための少なくとも1つのポンプ又は制御弁、及び保持液を再循環させる(例えば、運ぶ)ための少なくとも1つの導管を含むことができる。再循環される保持液の量は、例えば、ポンプ又は弁を使用して制御され得る。流量計を使用して、ポンプ又は弁にプロセス値を提供し、再循環される保持液の量を制御することができる。したがっていくつかの実施形態において、記述したTFFシステムは、保持液の再循環を制御するために、弁若しくはポンプ及び/又は流量計をさらに含むことができる。弁若しくはポンプ及び/又は流量計は、保持液出口、又は保持液をシステムから保持液容器に運ぶ流れラインの位置に置くことができる。代替的に又は追加的に、弁若しくはポンプ及び/又は流量計は、透過液出口、又は透過液をシステムから運ぶ流れラインの位置に置き、透過液流れを制御又は制限することができる。
【0061】
TFFシステム稼働中の最大達成可能な流束は、透過液排出のための適切な膜間差圧(TMP)の選択によって得ることができる。これは圧力依存性で物質移動が制限された稼働領域に当てはまる。スパイラル型フィルターの場合、所望のTMPの到達は、モジュールの末端において測定することによって測定される。例えば2つの透過液出口を備えるカセットの場合、所望のTMPの到達は、平均供給チャネル圧力によって測定される。膜を通しての圧力降下、及び透過液チャネルから透過液を排出するための最大圧力の両方を支えるために、膜間差圧は十分でなければならない。代替的に又は追加的に、TFFシステム稼働中の最大達成可能な流束は、透過液排出のための適切な透過液流速の選択によって得ることができる。透過液流速は、透過液弁又はポンプの使用によって一定の値に制御することができる。灌流を適用する場合、制御されない透過液ストリームの場合より透過液流速を低いレベルに維持し、より安定な流れを維持することが望ましい可能性がある。
【0062】
TFFシステムは、交互流モードにおいても稼働することができる。交互流モードは、様々な方法によって達成することができる。第1の方法において、ポンプ、例えばダイヤフラムポンプは、フィルターエレメントの保持液ポートに連結される。供給原料は、ポンプによってフィルターエレメントの供給ポート内へ引き寄せられ、フィルター内の供給チャネルを通り、保持液ポートを出て、ポンプ内に移動する。次に、ポンプを逆転させ、液体培地(以前は供給原料溶液を含んでいた)はポンプから押し出され、フィルターエレメントの保持液側を通り、供給チャネル内に入り、フィルターの供給ポートを出て、バイオリアクターに戻る。第2の方法において、ポンプはフィルターエレメントを通して、液体培地を交互に押し、引き寄せる。例えば、液体供給原料は、典型的にはフィルターエレメントの供給側に導入される。供給原料は、ポンプ(例えば、フィルターエレメントの供給ポートに連結されたポンプ)を介してバイオリアクターから引き寄せられ、供給ポートを通ってフィルターエレメント内に押し込まれる。次に、液体培地は、供給チャネルを通り、保持液ポート出て、バイオリアクターに戻って移動する。次に、ポンプは方向を逆転させ、供給原料をバイオリアクターからフィルターエレメント内に保持液ポートを通して引き寄せる。次に、液体培地は供給チャネルを通り、供給ポートを出て、ポンプを通って移動し、次に、そこから液体培地はバイオリアクターに押し戻される。第3の方法において、TFFシステムは、ポンプ及びバルブブロックの使用によって、交互流モードにおいて稼働することができる。この方法において、ポンプは、液体培地の流れを連続的にバイオリアクターから引き寄せ、装置の供給チャネル内に培地を押し込む。ポンプを通過した後、弁を使用してフィルターに入る液体培地の流れの方向を変化させる。例えば、液体培地の流れは、最初ポンプを通過し、フィルターの供給ポートに入る。培地は供給チャネルを通過し、保持液ポートを通ってフィルターを出て、バイオリアクターに戻る。ある期間の後、弁の位置を切り替え、ポンプからの液体培地の流れを、フィルターの保持液ポートに入らせ、供給チャネルを通過させ、供給ポートを通ってフィルターから出て、次にバイオリアクターに戻らせる。交互流は、フィルター膜のバックフラッシュをもたらし、膜を自己洗浄して汚れを低減することができる。
【0063】
図3で説明する供給ポンプは、再循環モード及び/又は交互流モードにおいて稼働するように、配置され得る。供給ポンプは、磁気浮上型ポンプ、ダイヤフラムポンプ、蠕動ポンプ又はロータリベーンポンプのような、細胞へ損傷を与えないポンプであり得る。好適な磁気浮上型ポンプの例としては、Levitronix(登録商標) Puralev(登録商標)Seriesポンプ(Levitronix Technologies、Framingham、MA)が挙げられる。好適なダイヤフラムポンプの例としては、Repligen XCell(商標)ATFポンプ(Repligen、Waltham、MA)が挙げられる。好適な蠕動ポンプの例としては、Watson Marlow Series 500及びSeries 600ポンプ(Watson Marlow、Wilmington、MA)が挙げられる。
【0064】
灌流プロセス
一実施形態において、本発明は、本発明の少なくとも1つのフィルターエレメントを通して液体供給原料を通過させ、フィルターエレメントにおいて、液体供給原料を透過液及び保持液に分離し;透過液及び保持液の少なくとも一部をフィルターエレメントから回収する、方法に関する。液体供給原料は、細胞及び標的タンパク質を含有する細胞培養培地を含むことができる。標的タンパク質は透過液中に回収され得、細胞は保持液中に保持され得る。
【0065】
プロセスは、保持液の少なくとも一部を、フィルターエレメントを通して再循環させる工程を含むことができる。再循環を継続的又は一定間隔で実施して、細胞培養培地から絶え間なく生成物を収穫することができる。
【0066】
追加的に、起動中に保持液のすべて又は一部を再循環させることは、システムが平衡に到達し、生成物容器内へ保持液を収集する前に保持液が所望の濃度を達成することを確実にする方法を提供する。それは、処理中のシステム不調に応答し、より堅固なプロセスを提供する簡便な方法も提供する。細胞濃度、新しい膜透過性、膜汚れ、膜透過性又は膜の物質移動若しくは圧力降下がバッチごとに変化したとしても、毎回の運転での、安定した保持液濃度及び/又は生成物収集容器への安定した透過液流速を保証するために、再循環される保持液の割合は、システムを調整する方法としてのポンプ又は制御弁の調整を介して調節することができる。次の稼働の成功が前の稼働の出力に依存する連続処理の情況において、この戦略は特別の利点を有する。保持液の再循環は、増加するクロスフローの速度を通して、洗浄の実効性を改善することができ、再循環を通して清浄液を低減することができる。
【0067】
再循環している保持液は、TFFシステムにおける、又はこの前の任意の上流の場所(例えば、TFFシステムの上流に設置されたバイオリアクター)に戻すことができる。一実施形態において、保持液は供給タンクに再循環される。別の実施形態において、保持液は、TFFシステムの供給原料入口の前の、供給ポンプの近くの供給ラインに再循環される。
【0068】
実施形態において、本明細書に記載の方法は、灌流(例えば、バイオリアクターからタンパク質生成物及び細胞の廃棄成分を取り出し、液体供給原料に新鮮な培地を供給すること)を実施することを含む。灌流は、連続的なバイオプロセッシングが行われる、一種のダイアフィルトレーションである。灌流細胞培養培地が周期的にろ過されて、標的タンパク質及び廃棄物が取り出されると、新鮮な培地は、周期的に又は連続的に再供給され得る。一実施形態において、灌流は、透過液がTFFシステムから除去されるのと同じ速度で、新鮮な培地をバイオリアクターへ添加することによって実施され、このプロセスは、当該技術分野において連続的又は定量灌流として公知である。灌流又はダイアフィルトレーションを実施するために、TFFシステムは、新鮮な培地又はダイアフィルトレーション溶液用の貯蔵器又は容器、及び新鮮な培地又はダイアフィルトレーション溶液を新鮮な培地又はダイアフィルトレーション溶液容器からバイオリアクターに運ぶための1つ以上の導管を含むことができる。
【0069】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法は、フィルターエレメントを通る液体の流れを交互に切り替えることをさらに含む。方法は、ある期間、液体供給原料が保持液側を通ってフィルターに入り、供給側を通って出て膜をバックフラッシュするように、供給ポンプの方向を逆転させることを含むことができる。流れの方向は、例えば、約12秒又はそれ以上ごとに逆転させることができる。
【0070】
さらに別の実施形態において、本発明は、宿主細胞を含有する液体供給原料から標的タンパク質を収穫するための灌流プロセスに関する。方法は、標的タンパク質及び宿主細胞を含有する液体供給原料を、本発明の少なくとも1つのフィルターエレメントの供給チャネルへ送達し、フィルターエレメントにおいて、宿主細胞から標的タンパク質を分離することを含む。標的タンパク質は、モノクローナル抗体であることができ、標的タンパク質は、TFFによって宿主細胞から分離され、フィルターエレメントの透過液から回収される。
【0071】
上述及び本明細書の実施例4において記述したように、本発明の灌流プロセスは、開口チャネルカセットフィルターエレメント及び中空繊維フィルターエレメントの使用を含む灌流プロセスと比較して、いくつかの利点を提供する。具体的には、開口微孔性膜及び低剪断供給スペーサーを含むフィルターに、宿主細胞を含有する液体供給原料を送達することを含む灌流プロセスは、フィルターエレメントの増加した寿命を提供する。例えば、本明細書の
図7に示し、実施例4に関してさらに記述したように、本発明の灌流プロセスを使用して、従来の灌流プロセスと比較して、より長い期間にわたって、より多量の標的タンパク質を細胞培養溶液から回収することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、少なくとも約500L/m2、少なくとも約800L/m2、又は少なくとも約1000L/m2のフィルターエレメントの収穫スループットにおいて、標的タンパク質の少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、細胞培養溶液から回収され得る。
【実施例0073】
[実施例1] 供給スペーサースクリーンのモデル化
供給スクリーンパラメーターの剪断速度に対する影響を評価するために、モデル化研究を実行した。Autodesk Inventor(Autodesk,Inc.Boston、MA)のパラメーター幾何学的形状機能を使用して、それぞれ3つの供給スクリーンの幾何学的形状が、モデル用に作り出された。モデル化された供給スクリーンは、以下を含んだ:(1)2/1綾織りパターン、32%の開口面積、16.2本の繊維/cmの繊維密度、270μmの繊維径、及び515μmの厚みを有する、C-スクリーン(Propyltex(登録商標)screens、Sefar、QC、Canada);(2)2/1綾織りパターン、36%の開口面積、12.2本の繊維/cmの繊維密度、340μmの繊維径、及び610μmの厚みを有する、D-スクリーン(Propyltex(登録商標)screens、Sefar、QC、Canada);並びに(3)2/1綾織りパターン、39%の開口面積、10.6本の繊維/cmの繊維密度、360μmの繊維径、及び645μmの厚みを有する、D3-スクリーン(Propyltex(登録商標)screens、Sefar、QC、Canada)。
図4Aは、D3織成繊維供給スペーサーの幾何学的形状のシミュレーションを説明している。
【0074】
次に、供給スクリーン幾何学的形状は、COMSOL Multiphysics(登録商標)Modeling Software(COMSOL,Inc.、Burlington MA)内に取り込まれて、圧力降下、速度及び剪断速度を評価した。
図4Bは、
図4AのD3織成繊維供給スペーサーを含有する環境のモデルを説明している。モデルは、COMSOLソフトウェアのParticle Tracing Moduleを使用して作成された。粒子移動のための境界条件は、非透過性上部板、織成繊維供給スペーサーの幾何学的形状及び透過性膜表面を含んだ。モデルの膜特性は、MilliporeSigma 0.65micron Durapore(登録商標)膜に基づいた。モデルは、表2に要約された条件に基づいて作成された。
【0075】
【0076】
図4Cは、供給チャネルにおける6LMMクロスフロー流束とともに、
図4Bのモデルにおける速度の大きさを説明している。膜及び繊維それぞれのスクリーンについて、膜及び繊維の表面の両方における最大剪断速度が、
図5に示される。およそ3500s
-1の剪断速度は、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovarian)(CHO)細胞にとって容認される限度であり、この細胞は、mAbのような治療用タンパク質の生成において使用される主な宿主細胞タイプである。
図5に示されるように、C-スクリーンを含有する灌流フィルターエレメントシートの膜及び繊維の表面の両方における剪断速度は、容認できる限度を超えており、こうしたシートを含有するフィルターエレメントを通って移動するCHO細胞が、容認できない高い剪断を経験することを示している。
図5に同様に示されるように、D-スクリーン又はD3-スクリーンのいずれかを含有する灌流フィルターエレメントの剪断速度は、容認できる限度未満であった。
【0077】
[実施例2] モデル結果と実験結果との比較
2つの試作品フィルターエレメントが作成され、それぞれ、Pellicon(登録商標)3ミクロプレート及びフレーム様式に配置された、単一のフィルターエレメントシートを含んでいる。両方のフィルターエレメントシートは、0.65ミクロンのDurapore(登録商標)膜を含んだ。一方のフィルターエレメントシートはD-スクリーン供給スペーサーを含有し、他方はD3-スクリーン供給スペーサーを含有した。フィルターエレメントは、CHO Cellvento(商標)110培地中に、1ミリリットル当たり3000万~6000万細胞の密度のCHO-S細胞を含有する細胞培養溶液を用いる、AEKTAcrossflow(商標)システム(GE Healthcare Lifesciences、Marlborough、MA)において、試験を受けた。供給原料、保持液及び透過液の流れは実験中に制御され、
図6に示されるように、供給圧力測定値が得られた。得られた実験の供給圧力を、対応する保持液及び透過液圧力値を使用するモデル化装置のものと比較した。
図6に示されるように、モデル化装置の結果は、試作品装置を用いて測定された供給圧力値とよく相関した。このように、モデルは、試作品装置の供給チャネルにおいて細胞によって経験される剪断の正確な推定値を提供することを、示している。
【0078】
[実施例3] フィルターエレメント及びポンプの試験
市販のフィルターエレメントを有する4つのシステム、及び試作品フィルターエレメントを有する4つのシステムを含む、6つの異なる細胞保持システム(すなわち、灌流システム)を評価した。システムは以下を含む。
【0079】
(1)ダイヤフラムポンプ及び0.13m2、0.2ミクロンのPES中空繊維フィルターエレメントを備える、XCell(商標)ATF-2システム(Repligen、Waltham、MA)。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、交互流モードにおいて稼働させた。
【0080】
(2)ダイヤフラムポンプ及び0.13m2、0.5ミクロンのPES中空繊維フィルターエレメントを備える、XCell(商標)ATF-2システム。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、交互流モードにおいて稼働された。
【0081】
(3)磁気浮上型ポンプ(Levitronix(登録商標))及び0.13m2、0.5ミクロンのPES中空繊維フィルターエレメント。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、再循環モードにおいて稼働された。
【0082】
(4)蠕動ポンプ(Watson Marlow)及び0.06m2、0.22ミクロンのPVDF膜を備える、Prostak(商標)カセット(MilliporeSigma、Billerica、MA)。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、再循環モードにおいて稼働された。
【0083】
(5)蠕動ポンプ(Watson Marlow)を備え、0.06m2、3ミクロンのトラックエッチングされた膜(Sterlitech)及びD3供給スペーサー(Sefar)を含む、スパイラル型フィルターエレメント。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、再循環モードにおいて稼働された。
【0084】
(6)Levitronix磁気浮上型ポンプを備え、0.06m2、3ミクロンのトラックエッチングされた膜(Sterlitech)及びD3供給スペーサー(Sefar)を含む、スパイラル型フィルターエレメント。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、再循環モードにおいて稼働された。
【0085】
(7)Repligenダイヤフラムポンプを備え、0.06m2、3ミクロンのトラックエッチングされた膜(Sterlitech)及びD3供給スペーサー(Sefar)を含む、スパイラル型フィルターエレメント。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、交互流モードにおいて稼働された。
【0086】
(8)Repligenダイヤフラムポンプを備え、0.06m2、5ミクロンのDurapore(登録商標)膜(MilliporeSigma)及びD3供給スペーサー(Sefar)を含む、スパイラル型フィルターエレメント。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、交互流モードにおいて稼働された。
【0087】
すべてのシステムを、CHO細胞を含む供給原料を用いて試験した。特に、MilliporeSigma Mobius(登録商標)3L使い捨てバイオリアクターに、CHO-S細胞株(cell line)及びCHO Cellvento 110培地を、1ミリリットル当たり50万細胞で接種した。細胞は、3日目までに1ミリリットル当たり400万細胞まで成長し、この時点で、細胞保持システムは稼働状態にした。1日当たりの容器容積における灌流速度は、3日目~6日目にわたって1~3に増加され、次に、残りの運転で3に維持した。7日目に毎日の細胞ブリード(daily cell bleed)を開始し、1ミリリットル当たり3000万~6000万細胞の範囲に細胞密度を維持した。
【0088】
結果は、
図7に示される。各装置の膜面積が異なるので、各装置のふるい分け性能は、装置スループット(L/m
2、プロセス量)の関数としてプロットする。
図7に示されるように、システム(5)~(8)はシステム(1)~(4)と比較して、スループットの関数としての著しく改善された生成物ふるい分けを実証した。追加的に、交互流モードにおいて稼働するシステム(8)は、生成物ふるい分けの最も高いパーセンテージを実証した。
【0089】
[実施例4] 膜汚れ試験
4つの単層フィルターエレメントを、MilliporeSigmaにおいて開発された単層試験細胞(single layer test cell)に、0.65ミクロンのDurapore(登録商標)膜(MilliporeSigma)を用いて作製し、開口供給チャネル、及び様々なスクリーンを含む供給チャネルを含む、異なる供給チャネル構造を評価した。フィルターエレメントは、AEKTAcrossflow(商標)システムにおける試験を受け、供給チャネルの効率(開口対様々なスクリーン)を比較した。システムは、透過液ポンプを利用して運転し、TMPを制御した。システムは、保持液及び透過液の両方をもとの供給タンクに送る、完全な再循環モードにおいて稼働された。システム用にクロスフローを設定し、流束対TMPのエクスカーション(excursion)が実施された。1、2、3、4及び5psiの膜間差圧値を、これらの実験では標的とした。溶液を各設定TMPにおいて30分間再循環し、流束をモニタリングした。実験を、安定した流束が観察された値について実施した。減少する流束によって、装置内の汚れを測定する。すべての安定した流束値を、クロスフロー及びTMPの関数としてプロットする。
【0090】
試験フィルターエレメントは、以下を含む;
(1)開口供給チャネル(供給スペーサーは含まない)、
(2)Prostak(商標)Ultrafiltration(UF) Screen(66%の開口面積、6.5本の繊維/cmの繊維密度、326μmの繊維径、590μmの厚み)、
(3)D-スクリーン及び
(4)D3-スクリーン。
【0091】
試験フィルターエレメントの測定されたクロスフロー流束(LMH)が、
図8A~8Dに示される。
図8Aにおいて示されるように、試験フィルターエレメント(1)は、膜表面を横切る最低の流束値を実証し、最も多量の膜汚れが開口チャネル装置において行われたことを示している。
図8B~8Dにおいて示されるように、フィルターエレメント(3)及び(4)は、フィルターエレメント(2)より高い流束値を実証し、D-スクリーン及びD3-スクリーンは、それぞれ膜表面における粒子集積を、より密に織成されたUFスクリーンより大きく低減したことを示している。
【0092】
[実施例5] 1ミクロン膜のモデリング/試験
0.06m
2、1ミクロンのDurapore(登録商標)膜(MilliporeSigma)及びD3供給スペーサー(Sefar)を含むスパイラル型フィルターエレメントを、Repligenダイヤフラムポンプを用いて試験した。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、交互流モードにおいて稼働された。システムを、CHO細胞を含む供給原料を用いて試験した。特に、MilliporeSigma Mobius(登録商標)3L使い捨てバイオリアクターに、CHO-S細胞株及びCHO Cellvento 110培地が、1ミリリットル当たり50万細胞において接種された。細胞は、3日目までに1ミリリットル当たり400万細胞まで成長し、この時点で、細胞保持システムは稼働状態にした。1日当たりの容器容積における灌流速度は、3日目~6日目にわたって1~3に増加され、次に、残りの運転で3に維持した。7日目に毎日の細胞ブリードを開始し、1ミリリットル当たり3000万~6000万細胞の範囲に細胞密度を維持した。結果は、
図9に示される。
図9に示されるように、1ミクロンのDurapore(登録商標)膜は、スループットがおよそ900L/m2以下の著しく改善されたふるい分けをもたらした。
【0093】
[実施例6] 1/1織り供給スクリーンのモデリング/試験
0.06m2、1ミクロンのDurapore(登録商標)膜(MilliporeSigma)及び1/1供給スペーサー(46%の開口面積、8.0本/cmの繊維密度、400μmの繊維径、785μmの厚み、Sefar)を含むスパイラル型フィルターエレメントを、Repligenダイヤフラムポンプを用いて試験した。システムは、推奨されるクロスフロー速度の下で、交互流モードにおいて稼働された。システムを、CHO細胞を含む供給原料を用いて試験した。特に、MilliporeSigma Mobius(登録商標)3L使い捨てバイオリアクターに、CHO-S細胞株及びCHO Cellvento 110培地が、1ミリリットル当たり50万細胞において接種された。細胞は、3日目までに1ミリリットル当たり400万細胞まで成長し、この時点で、細胞保持システムは稼働状態にした。1日当たりの容器容積における灌流速度は、3日目~6日目にわたって1~3に増加され、次に、残りの運転で3に維持した。7日目に毎日の細胞ブリードを開始し、1ミリリットル当たり3000万~6000万細胞の範囲に細胞密度を維持した。
【0094】
結果は
図10に示される。
図10に示されるように、1/1スクリーンは、スループットがおよそ500L/m2以下の著しく改善されたふるい分けをもたらした。
【0095】
本明細書に引用された、すべての特許、公開された出願及び参考文献の教示は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0096】
本発明はそれらの例示的実施形態を参照して、個々に示され、記述されているが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更が行われ得ることは、当業者によって理解される。