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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037050
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】固体イオン伝導性ポリマー材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20220301BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20220301BHJP
【FI】
C08L101/12
H01M10/0565
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021197604
(22)【出願日】2021-12-06
(62)【分割の表示】P 2018558343の分割
【原出願日】2016-10-13
(31)【優先権主張番号】15/148,085
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/282,002
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516164276
【氏名又は名称】イオニツク・マテリアルズ・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン,マイケル・エイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大きいイオン伝導率を有する固体半結晶イオン伝導性ポリマー材料を提供する。
【解決手段】複数のモノマーおよび複数の電荷移動錯体を含み、各電荷移動錯体がモノマー上に位置する、固体イオン伝導性非電導性ポリマー材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモノマーと、各電荷移動錯体がモノマー上に位置する複数の電荷移動錯体とを有し、材料の電導性が室温で1.0×10-5S/cm未満である、固体半結晶イオン伝導性ポリマー材料。
【請求項2】
材料の結晶化度が30%より高い、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
材料がさらに材料の融解温度未満の温度で存在するガラス状態を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
材料がさらにカチオン性およびアニオン性拡散イオンの両方を含み、これにより各拡散イオンはガラス状態で可動性であり、そして材料の結晶化度が30%より高い、請求項3に記載の材料。
【請求項5】
電荷移動錯体が、ポリマーと電子受容体との反応により形成される、請求項1に記載の材料。
【請求項6】
材料が、ガラス状態で、かつ、少なくとも1つのカチオン性および少なくとも1つのアニオン性拡散イオンを有し、各拡散イオンがガラス状態で可動性である、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
少なくとも3つの拡散イオンを有する、請求項6に記載の材料。
【請求項8】
1より多くのアニオン性拡散イオンを有する、請求項6に記載の材料。
【請求項9】
材料の融解温度が250℃より高い、請求項1に記載の材料。
【請求項10】
材料のイオン伝導性が室温で1.0×10-5S/cmより大きい、請求項1に記載の材料。
【請求項11】
材料が単一のカチオン性拡散イオンを含み、カチオン性拡散イオンの拡散率が室温で1.0×10-122/sより大きい、請求項6に記載の材料。
【請求項12】
材料が単一のアニオン性拡散イオンを含み、アニオン性拡散イオンの拡散率が室温で1.0×10-122/sより大きい、請求項6に記載の材料。
【請求項13】
少なくとも1つのカチオン性拡散イオンが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属またはポスト遷移金属を含む、請求項6に記載の材料。
【請求項14】
モノマーあたり少なくとも1つのアニオン性拡散イオンが存在する、請求項6に記載の材料。
【請求項15】
モノマーあたり少なくとも1つのカチオン性拡散イオンが存在する、請求項6に記載の材料。
【請求項16】
1リットルの材料あたり少なくとも1モルのカチオン性拡散イオンが存在する、請求項6に記載の材料。
【請求項17】
電荷移動錯体が、ポリマー、電子受容体およびイオン化合物の反応により形成され、各
カチオン性およびアニオン性拡散イオンがイオン化合物の反応生成物である、請求項1に記載の材料。
【請求項18】
材料が少なくとも1つのイオン化合物から形成され、イオン化合物がそれぞれカチオン性およびアニオン性拡散イオンを含む、請求項6に記載の材料。
【請求項19】
材料が熱可塑性物質である、請求項1に記載の材料。
【請求項20】
カチオン性拡散イオンがリチウムを含む、請求項6に記載の材料。
【請求項21】
少なくとも1つのカチオン性およびアニオン性拡散イオンのそれぞれが拡散率を有し、カチオン性拡散率がアニオン性拡散率よりも大きい、請求項6に記載の材料。
【請求項22】
材料のカチオン輸率が0.5より高く、そして1.0未満である、請求項6に記載の材料。
【請求項23】
リチウムの濃度が、1リットルの材料あたり3モルのリチウムより高い、請求項20に記載の材料。
【請求項24】
カチオン性拡散イオンがリチウムを含む、請求項22に記載の材料。
【請求項25】
拡散カチオンが一価である、請求項6に記載の材料。
【請求項26】
拡散カチオンの原子価が1より大きい、請求項6に記載の材料。
【請求項27】
材料がモノマーあたり1より多くの拡散アニオンを含む、請求項6に記載の材料。
【請求項28】
拡散アニオンがヒドロキシルイオンである、請求項6に記載の材料。
【請求項29】
拡散アニオンが一価である、請求項6に記載の材料。
【請求項30】
拡散アニオンおよび拡散カチオンの両方が一価である、請求項6に記載の材料。
【請求項31】
少なくとも1つのカチオン性およびアニオン性拡散イオンのそれぞれが拡散率を有し、アニオン性拡散率がカチオン性拡散率よりも大きい、請求項6に記載の材料。
【請求項32】
材料のカチオン輸率が0.5以下で、しかもゼロより大きい、請求項6に記載の材料。
【請求項33】
少なくともカチオン性拡散イオンの1つが1.0×10-122/sより大きい拡散率を有する、請求項6に記載の材料。
【請求項34】
少なくとも1つのアニオン性拡散イオンの1つが1.0×10-122/sより大きい拡散率を有する、請求項6に記載の材料。
【請求項35】
少なくとも1つのアニオン性拡散イオンおよび少なくとも1つのカチオン性拡散イオンの両方の1つが1.0×10-122/sより大きい拡散率を有する、請求項6に記載の材料。
【請求項36】
各モノマーがモノマーの骨格に位置する芳香族環または複素環構造を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項37】
材料がさらに、環構造に包含されるかまたは環構造に隣接する骨格上に位置するヘテロ原子を含む、請求項36に記載の材料。
【請求項38】
ヘテロ原子が硫黄、酸素または窒素からなる群から選択される、請求項37に記載の材料。
【請求項39】
ヘテロ原子が環構造に隣接するモノマーの骨格上に位置する、請求項38に記載の材料。
【請求項40】
ヘテロ原子が硫黄である、請求項39に記載の材料。
【請求項41】
材料がパイ共役である、請求項1に記載の材料。
【請求項42】
モノマーあたり少なくとも1つのアニオン性拡散イオンが存在し、そして少なくとも1つのモノマーがリチウムイオンを含む、請求項36に記載の材料。
【請求項43】
ポリマーが複数のモノマーを含み、モノマーの分子量が100グラム/モルより大きい、請求項1に記載の材料。
【請求項44】
材料が親水性である、請求項1に記載の材料。
【請求項45】
材料のイオン伝導性が等方性である、請求項1に記載の材料。
【請求項46】
室温で1×10-4S/cmより大きいイオン伝導率を有する、請求項1に記載の材料。
【請求項47】
80℃で1×10-3S/cmより大きいイオン伝導率を有する、請求項1に記載の材料。
【請求項48】
-40℃で1×10-5S/cmより大きいイオン伝導率を有する、請求項1に記載の材料。
【請求項49】
カチオン性拡散イオンがリチウムを含み、そしてリチウムイオンの拡散率が室温で1.0×10-132/sより大きい、請求項1に記載の材料。
【請求項50】
材料が不燃性である、請求項1に記載の材料。
【請求項51】
材料が第二の材料と混合した時に非反応性のままであり、第二の材料が電気化学的に活性な材料、電導性材料、レオロジー改質材料および安定化材料を含む群から選択される、請求項1に記載の材料。
【請求項52】
材料がフィルムの形状である、請求項1に記載の材料。
【請求項53】
材料のヤング率が3.0MPa以上である、請求項1に記載の材料。
【請求項54】
材料が電子受容体によりドープされた後にイオン伝導性となる、請求項1に記載の材料。
【請求項55】
材料が、カチオン性およびアニオン性拡散イオンの両方を含むイオン性化合物か、または、電子受容体による酸化を介してカチオン性およびアニオン性拡散イオンの両方に変換
可能なイオン化合物かのいずれかの存在下で、電子受容体によりドープされた後にイオン伝導性となる、請求項1に記載の材料。
【請求項56】
材料が、基材ポリマー、電子受容体およびイオン化合物の反応生成物から形成される、請求項1に記載の材料。
【請求項57】
基材ポリマーが共役ポリマーである、請求項56に記載の材料。
【請求項58】
基材ポリマーがPPSまたは液晶ポリマーである、請求項56に記載の材料。
【請求項59】
イオン化合物が酸化物、塩化物、水酸化物または塩である、請求項56に記載の材料。
【請求項60】
電荷移動錯体が電子受容体とポリマーとの反応により形成される、請求項1に記載の材料。
【請求項61】
電子受容体がキノンまたは酸素である、請求項56に記載の材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にポリマー化学に関し、より詳細には固体ポリマー電解質およびそれらの合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載 適用なし
【0003】
バッテリーの歴史は進歩が遅く、しかも徐々に改善されてきたものの一つである。バッテリーの性能、コストおよび安全性は、歴史的に矛盾する目標を有しており、グリッドレベルでの蓄電(grid-level storage)およびモバイルパワー(mobile power)のような最終用途の実行可能性を限定する、相反する結果を生じる。変革的なバッテリーの需要は国家レベルでの関心に達し、より高いエネルギー密度および低コストで安全な電気化学的エネルギーの貯蔵をもたらすために最大の努力を推進している。
【0004】
アレッサンドロ ボルタ(Alessandro Volta)は「ボルタ電堆」として知られるようになった正真正銘の最初のバッテリーを発明した。これは電解質として塩水に浸した布または板紙の層により互いに分離された上に積み重ねられた亜鉛および銅板対からなる。この知見は現実的ではないが、電気化学的電池および電解質の役割の理解を深めた。
【0005】
ボルタ以来、発明者達は水または有機溶媒中の塩、アルカリまたは酸の濃溶液で充填された多孔質セパレータに基づく液体電解質の改良を行った。これらの液体電解質は一般に腐食性かつ/または可燃性であり、そして多くの場合で電極材料に対して熱力学的に不安定であり、性能の限界および安全性の問題を生じる。このような課題により、バッテリーの開発に関しては固体状電解質が大いに魅力的なものとなる。固体電解質は電解質の漏出がないこと、より適応性のある配置(flexible geometry)、より高いエネルギー密度の電極および改善された安全性といった実質的な利点を提供することができる。
【0006】
セラミックスおよびガラスは、イオン伝導性(ionic conductivity)を有するように見出され、そして開発されることになった最初の固体材料であった。さらに材料は続いたが、これら全ての材料は全て大変高温でのみ十分に高いイオン伝導性が利用できるという特性を有する。例えば日本のトヨタ(Toyota)は、ガラス状セラミックLi10GeP212である新な「結晶超イオン結晶(crystalline superionic crystal)」を使用した研究開発を発表した。しかしこの材料は140℃より上でのみ高い伝導性を有し、しかもセラミックスは製造上の、および脆さの通例の問題に悩まされる。セラミックスを用いた製造上の課題は、特にバッテリー電極への材料の包含をできなくすることとなる。
【0007】
ポリマー電解質における最初の関心は、1975年にポリエチレンオキシド(PEO)の錯体が金属イオンを伝導できるというピーター V.ライト(Peter V.Wright)教授の知見が火付け役となった。その直後、ミハエル アーマンド(Michel Armand)教授はバッテリーの応用にPEO-リチウム塩錯体を使用する可能性を認識した。PEOとリチウム塩との組み合わせは、何年にもわたり開発された。この材料の一例がP(EO)nLiBETI錯体である。過去30年間、ポリエチレンオキシド
(PEO) -(CH2CH2-O)n-の伝導性を改善する多くの試みがあった。これら
のPEO基材では、カチオンの可動性(mobility)はポリマーのセグメント運動(segmental motion)により支配される。PEOのこのセグメント運動は、効果的な液体様メカニズムであるが、鎖のもつれおよび部分的結晶化度は電解質に幾らか固体のバルク特性を与える可能性がある。しかしセグメント運動はPEOがイオン伝導性となるために必須である。
【0008】
可塑化ポリマー-塩錯体は、固体ポリマーと液体電解質との間の折り合い(compromise)をつけるように液体可塑剤をPEOに加えることにより調製される。この環境的伝導性の大きさは、セグメント運動が上昇するので実質的に強化されるが、フィルムの機械的完全性の劣化、ならびに金属電極に対するポリマー電解質の腐食反応性の上昇という犠牲を払っている。
【0009】
ゲル電解質は、大量の液体溶媒(1もしくは複数)/液体可塑剤をポリマーマトリックスに包含させ、溶媒/可塑剤がポリマーホスト構造とのゲルを形成可能であることにより、得られる。液体溶媒はマトリックス中のポリマーにトラップされ、さもなくば非伝導性である固体ポリマーを通る液状伝導性通路を形成する。ゲル電解質は高い環境(ambient)伝導性を提供できるが、可塑化ポリマー電解質について述べたものと同様な欠点にも悩まされる。
【0010】
ゴム様電解質は、実際にはポリマー中塩(salt-in-polymer)とは対照的な塩中ポリマー系(polymer-in-salt system)であり、ここで大量の塩が少量のポリマー、すなわちポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)等と混合されている。これらの材料のガラス転移温度は低温であり、室温でゴム様または粘弾性を維持することができ、このことは次いでセグメント運動の強化による高い伝導性を提供する。しかし錯化/溶解した塩は結晶化の傾向があり、したがってそれらの現実的な電気化学的デバイスでの使用を妨げる。
【0011】
複合ポリマー電解質は、少画分のミクロ/ナノサイズの無機(セラミック)/有機充填剤粒子を、従来のポリマーホストに単に分散することにより調製される。ポリマーは第一相として作用し、一方、充填剤材料は第二相に分散される。分散の結果として、イオン伝導性、機械的安定性および界面活性は強化され得る。イオン伝導性は、充填剤の存在でポリマーの結晶化レベルの低下、およびそれに対応するセグメント運動の上昇に起因する。
【0012】
ポリ電解質は、ポリマー骨格に共有結合した荷電基を含み、これが反対に荷電したイオンを大変可動性にする。荷電基はカチオン性拡散に必要なセグメント運動を介してフレキシブルとなる。
【0013】
他のポリマー電解質には、Rod-Coil Blockポリイミド(NASAリサーチ)および種々のポリマー/液体ブレンド(イオン性液体/PVDF-HFP)がある。残念なことにイオン伝導性を可能にするために、ポリマーのセグメント運動が必要なので、室温での低い伝導性はこれら既知のポリマー電解質のすべてを現実的な応用から排除する。典型的なポリマー電解質のイオン伝導性は材料のガラス転移温度(Tg)を超える温度におけるセグメント運動に依存するので、有用な固体ポリマー電解質を作製するための全ての試みは、結晶相の抑止、および/または、セグメント運動が可能な状態(すなわち、粘弾性もしくはゴム様)へのガラス相転移温度の低下に集中してきた。
【0014】
結晶および非晶相の両方が存在するポリマー―塩錯体では、イオン輸送は非晶相で起こる。Vogel-Tamman-Fulcher(VTF)式は、ポリマーを通るイオン拡散の挙動を説明する。VTF式は、イオンが短いポリマーセグメントの半ランダム運動により輸送される仮定に基づく。そのようなセグメント運動の発生は、温度がガラス転移
温度、Tgより上に上がった時に起こり、そして粘弾性状態で温度がより高くなればさらに迅速になる。セグメント運動は、ポリマー上のイオンに呼応する多数の配位部位の溶媒和の破壊と、イオンが拡散できる空間または自由容積の提供の両方によりイオン運動を促進すると考えられる。ポリマーのセグメント運動がイオン輸送に必要であるという事実により、一般にそのような錯体が低いガラス転移温度の非晶質材料に集中せざるを得なくなった。
【発明の概要】
【0015】
一つの観点によれば、30%より高い結晶化度(crystallinity);融解温度;ガラス状態;および少なくとも1つのカチオン性およびアニオン性拡散イオン(diffusing ion)の両方を含む固体のイオン伝導性ポリマー材料が提供され、ここで拡散イオンはガラス状態で可動性である。材料はさらに複数の電荷移動錯体、および複数のモノマーを含むことができ、ここで各電荷移動錯体はモノマー上に位置している。
【0016】
材料はさらに室温で1.0×10-5S/cm未満の電導性を含む場合がある。
【0017】
一つの観点では、固体半結晶イオン伝導性ポリマー材料が提供され、それは、複数のモノマー;各電荷移動錯体がモノマー上に位置する複数の電荷移動錯体を有し、材料の電導性が室温で1.0×10-5S/cm未満である。材料は、30%より高い結晶化度;材料
の融解温度未満の温度で存在するガラス状態;およびカチオン性およびアニオン性拡散イオンの両方を有する場合があり、これにより各拡散イオンはガラス状態で可動性である。
【0018】
固体イオン伝導性ポリマー材料のさらなる観点によれば、材料の観点は以下の1もしくは複数を含む場合がある:
電荷移動錯体が、ポリマーと電子受容体との反応により形成される;
材料が、ガラス状態、および少なくとも1つのカチオン性および少なくとも1つのアニオン性拡散イオンを有し、ここで各拡散イオンがガラス状態で可動性である;
材料が少なくとも3つの拡散イオンを有する;
材料が1より多くのアニオン性拡散イオンを含む;
材料の融解温度が250℃より高い;
材料のイオン伝導率が室温で1.0×10-5S/cmより高い;
材料が単一のカチオン性拡散イオンを含み、ここでカチオン性拡散イオンの拡散率が室温で1.0×10-122/sより高い;
材料が単一のアニオン性拡散イオンを含み、ここでアニオン性拡散イオンの拡散率が室温で1.0×10-122/sより高い;
少なくとも1つのカチオン性拡散イオンが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属またはポスト遷移金属を含む材料;
材料がモノマーあたり少なくとも1つのアニオン性拡散イオンを含む;
材料がモノマーあたり少なくとも1つのカチオン性拡散イオンを含む;
材料が1リットルの材料あたり少なくとも1モルのカチオン性拡散イオンを含む;
材料の電荷移動錯体が、ポリマー、電子受容体およびイオン化合物の反応により形成され、ここで各カチオン性およびアニオン性拡散イオンがイオン化合物の反応生成物である;
材料が少なくとも1つのイオン化合物から形成され、ここでイオン化合物がそれぞれカチオン性およびアニオン性拡散イオンを含む;
材料が熱可塑性物質である;
材料のカチオン性拡散イオンがリチウムを含む;
材料の少なくとも1つのカチオン性およびアニオン性拡散イオンが拡散率を有し、ここでカチオン性拡散率がアニオン性拡散率よりも大きい;
材料の材料カチオン輸率(transference number)が0.5より高く、そして1.0未満である;
材料のカチオン性拡散イオンの濃度が、1リットルの材料あたり3モルのカチオンより高い;
材料のカチオン性拡散イオンがリチウムを含む;
材料の拡散カチオンが一価である;
拡散カチオンの原子価が1より大きい;
材料がモノマーあたり1より多くの拡散アニオンを含む;
材料の拡散アニオンがヒドロキシルイオンである;
材料の拡散アニオンが一価である;
材料の拡散アニオンおよび拡散カチオンが一価である;
材料の少なくとも1つのカチオン性およびアニオン性拡散イオンが拡散率を有し、ここでアニオン性拡散率がカチオン性拡散率よりも大きい;
材料の材料カチオン輸率が0.5以下で、しかもゼロより大きい;
材料の少なくともカチオン性拡散イオンが1.0×10-122/sより大きい拡散率を有する;
材料の少なくとも1つのアニオン性拡散イオンの1つが1.0×10-122/sより大きい拡散率を有する;
材料の少なくとも1つのアニオン性拡散イオンおよび少なくとも1つのカチオン性拡散イオンが1.0×10-122/sより大きい拡散率を有する;
材料の各モノマーがモノマーの骨格に位置する芳香族環または複素環構造を含む;
材料がさらに、環構造に包含されるかまたは環構造に隣接する骨格上に位置するヘテロ原子を含む;
材料が含むヘテロ原子が、硫黄、酸素または窒素からなる群から選択される;
材料のヘテロ原子が環構造に隣接するモノマーの骨格上に位置する;
材料のヘテロ原子が硫黄である;
材料がパイ共役である;
材料がモノマーあたり少なくとも1つの材料のアニオン性拡散イオンを含み、そしてここで少なくとも1つのモノマーがリチウムイオンを含む;
材料が複数のモノマーを含み、ここでモノマーの分子量が100グラム/モルより大きい;
材料が親水性である;
材料のイオン伝導性が等方性である;
材料が、室温で1×10-4S/cmより大きいイオン伝導率を有する;
材料が、80℃で1×10-3S/cmより大きいイオン伝導率を有する;
材料が、-40℃で1×10-5S/cmより大きいイオン伝導率を有する;
材料のカチオン性拡散イオンがリチウムを含み、そしてここでリチウムイオンの拡散率が室温で1.0×10-132/sより大きい;
材料が不燃性である;
材料が第二の材料と混合した時に非反応性であり、ここで第二の材料が電気化学的に活性な材料、電気伝導性材料、レオロジー改質材料および安定化材料を含む群から選択される;
材料がフィルムの形状である;
材料のヤング率が3.0MPa以上である;
材料が電子受容体によりドープされた後にイオン伝導性となる;
材料が、カチオン性およびアニオン性拡散イオンの両方を含むか、または電子受容体による酸化を介してカチオン性およびアニオン性拡散イオンの両方に変換可能ないずれかのイオン化合物の存在下で、電子受容体によりドープされた後にイオン伝導性となる;
材料が、基材ポリマー、電子受容体およびイオン化合物の反応生成物から形成される;
材料の基材ポリマーが共役ポリマーである;
材料の基材ポリマーがPPSまたは液晶ポリマーである;
材料のイオン化合物反応物が酸化物、塩化物、水酸化物または塩である;
材料の電荷移動錯体が電子受容体とポリマーとの反応により形成される;および
材料の反応物電子受容体がキノンまたは酸素である。
【0019】
一つの観点では、固体イオン伝導性高分子(macromolecule)および高分子を含む材料が提供され、これは;
各モノマーが芳香族環または複素環構造を含む複数のモノマー;
環構造に包含されるか、または環構造に隣接して位置するいずれかのヘテロ原子;
カチオン性およびアニオン性拡散イオンの両方が高分子の構造に包含されるカチオン性およびアニオン性拡散イオン;
からなり、
ここでカチオン性およびアニオン性の両方が高分子に沿って拡散でき;
ここでカチオン性またはアニオン性が高分子に沿って拡散する時、ポリマー材料にセグメント運動が存在しない。
【0020】
さらなるこの観点は、以下の1もしくは複数を含む場合がある:
材料が1×10-4S/cmより大きいイオン伝導率を有する;
各モノマーの分子量がモル当たり100グラムより大きい;
材料の少なくとも1つのカチオン性拡散イオンが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属またはポスト遷移金属を含む;
一つの観点は、固体イオン伝導性ポリマー材料の作製法であって:複数のモノマーからなる基材ポリマー、電子受容体およびイオン化合物を混合して第一混合物を作製し;第一混合物を加熱して固体イオン伝導性ポリマー材料を作製する工程を含む。
【0021】
さらなる観点は、固体イオン伝導性ポリマー材料の作製法であって:複数のモノマーからなるポリマー、およびイオンを含む化合物を混合して第一混合物を作製し;第一混合物を電子受容体でドープして第二混合物を作製し;そして第二混合物加熱する工程を含む。
【0022】
さらなる観点は、固体イオン伝導性ポリマー材料の作製法であって:複数のモノマーからなるポリマー、および電子受容体を混合して第一混合物を作製し;第一混合物を加熱して電荷移動錯体を含む中間体材料を作製し;中間体材料を、イオンを含む化合物と混合して固体イオン伝導性ポリマー材料を作製する工程を含む。
【0023】
固体イオン伝導性ポリマー材料を作製する方法のさらなる観点は、以下の1もしくは複数を含む場合がある:
アニーリング工程、ここでアニーリング工程では基材ポリマーの結晶化度が上昇する;
基材ポリマーが複数のモノマーを含み、そしてここでモノマー対電子受容体のモル比が1:1以上である;
基材ポリマーがガラス転移温度を有し、そしてここで基材ポリマーのガラス転移温度が80℃より高い;
混合工程の基材ポリマーおよびイオン化合物の重量比が5:1未満である;
加熱工程において、陽圧が混合物にかけられる;
加熱工程において、混合物が変色する;
加熱工程において、電荷移動錯体が形成される;
固体イオン伝導性ポリマー材料を第二材料と混合する追加の混合工程;
固体イオン伝導性ポリマー材料が押し出される押出し工程;および
固体イオン伝導性ポリマー材料が少なくとも1つのイオンを輸送するイオン伝導工程。
【0024】
さらなる観点は:前記観点の材料、および電気化学的に活性な材料を含む電気化学的に
活性な材料複合体;
前記観点の材料を含む電極;
前記観点の材料を含むバッテリー;
前記観点の材料を含む燃料電池;
前記観点の材料を含む電解質;
前記観点の材料を含むイオン伝導用の装置;
前記観点の材料を含むイオンを伝導する方法;および
前記観点の材料を含むイオンを分離する方法。
【0025】
さらなる観点では、新規イオン伝導メカニズムは、ポリマーの結晶相および非晶質のガラス状態の双方でイオン伝導を可能にし、これは室温で液体の伝導度を持つ固体ポリマー材料を可能にし;
そして増大した容量および寿命のために、ポリマーおよび電気化学的に活性な化合物を含有する複合負極および正極の作製をできるようにし;
豊富かつ廉価な活性材料の使用を可能にし;そして
低コスト、高容量押出し、および他のプラスチック加工技術を使用して新規なバッテリーの製造法を可能にする。
【0026】
これらのおよび他の観点、特徴、利点および目的は、以下の明細書、請求の範囲および添付の図面を参照して当業者によりさらに理解および認められるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面では:
図1】固体イオン伝導性ポリマー材料を含むLCO正極を使用したリチウムイオン電池のサイクル試験のプロットである。
図2】実施例6に関する放電曲線のプロットである。
図3図3A,3Bおよび3Cは実施例9に記載したx-線回折プロットである。
図4】実施例10に記載したDSCプロットである。
図5】比較例13に記載のような温度に対して測定された伝導度のプロットである。
図6】比較例13に記載のような温度に対して測定された伝導度のプロットである。
図7】実施例14に記載した材料サンプルについて測定された伝導度のプロットである。
図8】実施例16に記載の材料サンプルについて温度に対して測定された拡散率のプロットである。
図9】実施例17に記載した比較材料に関するNMR拡散率プロットである。
図10】実施例18に記載した基材ポリマー反応物のNMRスペクトルである。
図11】実施例18に記載した材料のNMRスペクトルである。
図12】実施例18に記載した材料のNMRスペクトルである。
図13】実施例18に記載した電子受容体のNMRスペクトルである。
図14】14Aは実施例18に記載した材料のNMRスペクトルである。14Bは実施例18に記載した材料のNMRスペクトルである。
図15】実施例19に記載した材料のNMRスペクトルである。
図16】実施例19に記載の材料を使用したバッテリーの図解である。
図17】実施例20に記載したような3つのバッテリーに関する放電曲線である。
図18】実施例21に記載したようなバッテリーに関する放電曲線である。
図19】実施例22に記載したようなバッテリーの放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本特許出願は、2015年5月8日に出願した米国特許仮出願第62/158,841号の優先権を主張する2016年5月6日に出願した米国特許出願第15/148,085号明細書の優先権を主張し:そして(a)2013年12月3日に出願した米国特許仮出願第61/911,049号明細書の優先権を主張する2014年12月3日に出願した米国特許出願第14/559,430号明細書:および(b) 2012年4月11日に出願した米国特許仮出願第61/622,705号明細書の優先権を主張する2013年4月11日に出願した米国特許出願第13/861,170明細書の双方の一部継続出願であり、この開示は引用によりそれら全部を本明細書に編入する。
【0029】
以下の用語の説明は、この章で説明する観点、態様および目的をより詳細に説明するために提供される。説明または別段の定めがない限り、本明細書で使用するすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。開示する様々な態様を検討し易くするために、以下の特定の用語の説明を提供する:
減極剤は、電気化学的活性物質、すなわち、電気化学反応の電荷移動段階中に、および、電気化学的活性材料中で、酸化状態を変化させるか、または、化学結合の形成もしくは破壊に参加する物質と同義である。電極が1より多くの電気活性物質を有する時、それらは共減極剤(codepolarizer)と呼ぶ場合がある。
【0030】
熱可塑性は、しばしばその融解温度またはその付近の特定温度より上でしなやか(pliable)または可塑的になり、そして冷却すると固まる塑性物質またはポリマーの特性である。
【0031】
固体電解質には溶媒を含まないポリマー、およびセラミック化合物(結晶およびガラス)を含む。
【0032】
「固体」は、その形状を無期限にわたって維持する能力を特徴とし、そして液相の材料とは区別され、そして異なる。固体の原子構造は結晶または非晶質のいずれかである場合がある。固体は複合構造の成分と混合する場合があり、またはその成分となる場合がある。しかし本出願および請求の範囲の目的では、固体材料は、当該材料は固体を通してイオン伝導性であるが、特に記載がない限り、溶媒、ゲル、または液相のいずれを通してもイオン伝導性でないことが要求される。本出願および請求の範囲の目的に関して、イオン伝導性が液体に依存するゲル化(または湿潤)ポリマーおよび他の材料は、それらがそれらのイオン伝導性を液相に依拠する点で固体電解質とは定義されない。
【0033】
ポリマーは一般に有機であり、そして炭素に基づく高分子から構成され、その各々が1もしくは複数の種類の反復単位またはモノマーを有する。ポリマーは軽く、延性であり、通常は非伝導性で、そして比較的低温で融解する。ポリマーは、射出、吹込および他の成形法、押出し、プレス、スタンピング、三次元プリント、機械加工(machining)および他のプラスチック加工により製品に作製される場合がある。ポリマーは一般にガラス転移温度Tg未満の温度でガラス状態を有する。このガラス温度(glass temperature)は鎖の柔軟性の関数であり、鎖の柔軟性が起きるのは、系中に十分な振動(熱)エネルギーがあって、ポリマー高分子の一連のセグメントが一団となって動くことを可能とする十分な自由容積が創出されるときである。しかしポリマーのガラス状態では、ポリマーのセグメント運動は起こらない。
【0034】
ポリマーはセラミックスとは区別され、セラミックスは無機の非金属性物質であり、一般に、酸素、窒素または炭素に共有結合している金属からなる化合物で脆く、硬質(strong)で非伝導性と定義される。
【0035】
幾つかのポリマーで起こるガラス転移は、ポリマー材料が冷却された時の過冷却液体状態とガラス状態との間の中間点温度である。ガラス転移の熱力学的測定は、ポリマーの物理的特性、例えば容積、エンタルピーまたはエントロピーおよび温度の関数として他の誘導的特性を測定することにより行われる。ガラス転移温度は、転移温度で選択した特性(エンタルピーの容積)の急な変化(break)としてのプロット、あるいは傾斜の変化(熱容量または熱的膨張係数)から観察される。ポリマーをTgより上からTg未満に冷却すると、ポリマー分子の移動度はポリマーがそのガラス状態に達するまでゆっくりと下がる。
【0036】
ポリマーは非晶質および結晶相の両方を含む場合があるので、ポリマーの結晶化度はポリマーの量に対するこの結晶相の量であり、そして百分率として表される。結晶化度の割合は、非晶質および結晶相の相対的領域の分析により、ポリマーのX線回折を介して算出する場合がある。
【0037】
ポリマーフィルムは一般にポリマーの薄い部分と説明されるが、300マイクロメートル厚以下と考えるべきである。
【0038】
イオン伝導性(ionic conductivity)は電導性(electrical conductivity)とは異なることに注目することが重要である。イオン伝導性はイオンの拡散性に依存し、そしてその特性はNernst-Einsteinの式により関連づけられる。イオン伝導性およびイオン拡散性は双方ともイオンの移動度の尺度である。イオンは材料中でのその拡散性が正ならば(ゼロより大きい)、その材料中で可動性であり、すなわちイオンは正の伝導性に貢献する。そのような全てのイオン移動度の測定は、特に言及しないかぎり室温(約21℃)で行われる。イオンの移動度は温度に影響されるので、低温で検出することは困難になる。装置の検出限界が、小さい移動量を測定する因子となり得る。移動度は、少なくとも1×10-142/s、そして好ましくは少なくとも1×10-132/sのイオン拡散率と考える場合があり、これらは両方ともイオンが材料中で可動性であると伝えている。
【0039】
固体ポリマーイオン伝導性材料は、ポリマーを含む固体であり、そしてさらに記載するようにイオンを伝導する固体である。
【0040】
本発明の観点は、少なくとも3つの別個の成分:ポリマー、ドーパントおよびイオン化合物から固体イオン伝導性ポリマー材料の合成法を含む。成分および合成法は、材料の特定の応用に選択される。ポリマー、ドーパントおよびイオン化合物の選択も、材料の所望する性能に基づき変動する場合がある。例えば所望の成分および合成法は、所望する物理的特性(例えばイオン伝導性)の至適化により決定する場合がある。
【0041】
合成
また合成法も、特定の成分および所望する最終材料の形態(例えばフィルム、粒子等)により変動する場合がある。しかし方法には少なくとも2つの成分を最初に混合し、第三成分を任意の第二混合工程で加え、そして成分/反応物を加熱して加熱工程で固体イオン伝導性ポリマー材料を合成する基本工程を含む。本発明の1つの態様では、生じた混合物は任意に所望のサイズのフィルムに形成する場合がある。ドーパントが第一工程で生成された混合物に存在しなければ、ドーパントは引き続き混合物に加熱そして場合により圧をかけながら(陽圧または陰圧)加える場合がある。全ての3成分が存在し、そして混合され、そして加熱されて、単回工程で固体イオン伝導性ポリマー材料の合成を完了する場合がある。しかしこの加熱工程は、いかなる混合からも分かれた工程の時に行われる場合があり、あるいは混合が行われている間に完了する場合がある。加熱工程は混合物の形態(例えばフィルムまたは粒子等)にかかわらず行う場合がある。合成法の態様では、全ての
3成分が混合され、そして次にフィルムに押し出される。フィルムは加熱されて合成が完了する。
【0042】
固体イオン伝導性ポリマー材料が合成された時、変色が生じ、これは反応物の色が比較的明るい色であり、そして固体イオン伝導性ポリマー材料が比較的暗いか、または黒色であるので視覚的に観察する場合がある。この変色は電荷移動錯体が形成された時に生じ、そして合成法に依存して徐々に、または迅速に起こることになると考えられる。
【0043】
合成法の態様は、基材ポリマー、イオン化合物およびドーパントを一緒に混合し、そして混合物を第二工程で加熱することである。ドーパントはガス相の場合があるので、加熱工程はドーパントの存在下で行う場合がある。混合工程は押出し機、ブレンダ―、ミルまたは他の一般的なプラスチック加工装置中で行う場合がある。加熱工程は数時間続く可能性があり(例えば24時間)、そして変色は合成が完了または一部完了した信頼できる表示である。合成が完了した後の追加の加熱は材料に悪影響を及ぼさないようである。
【0044】
合成法の態様では、基材ポリマーおよびイオン化合物を最初に混合する場合がある。次いでドーパントがポリマー―イオン化合物混合物と混合され、そして加熱される。加熱は第二混合物工程中、または混合工程に続いて混合物に適用する場合がある。
【0045】
別の合成法の態様では、基材ポリマーおよびドーパントが最初に混合され、そして次いで加熱される。この加熱工程は混合後、または混合中に適用する場合があり、そして電荷移動錯体の形成、およびドーパントと基材ポリマーとの間の反応を示す変色を生じる。次いでイオン化合物が反応したポリマードーパント材料と混合されて固体イオン伝導性ポリマー材料の形成が完了する。
【0046】
ドーパントの一般的な添加法は当業者には既知であり、そしてポリマーおよびイオン化合物を含有するフィルムの蒸気ドーピング、および当業者には知られている他のドーピング法も含む場合がある。固体ポリマー材料のドーピングでイオン伝導性となり、そしてドーピングが固体ポリマー材料のイオン成分を活性化するように作用するのでそれらが拡散イオンになると考えられる。
【0047】
他の非反応性成分を、上記の混合物に初期混合工程、第二混合工程または加熱に引き続く混合工程中に加える場合がある。そのような他の成分には、減極剤または電気化学的に活性な物質、例えば負極または正極活性材料、炭素のような電導性材料、結合剤または押出助剤(例えばエチレンプロピレンジエンモノマー“EPDM”)のようなレオロジー改質剤(rheological agent)、触媒および混合物の所望する物理特性を達成するために有用な他の成分を含むがこれらに限られない。
【0048】
固体イオン伝導性ポリマー材料の合成に反応物として有用なポリマーは、電子供与体または電子受容体により酸化され得るポリマーである。30%より高い、そして50%より高い結晶化指数の半結晶ポリマーは、適切な反応物ポリマーである。完全(totally)結晶のポリマー材料、例えば液晶ポリマー(“LCPs”)も有用な反応物ポリマーである。LCPsは完全結晶であり、したがってこれによりそれらの結晶化指数は100%と定義される。非ドープ共役ポリマーおよびポリフェニレンスルフィド(“PPS”)のようなポリマーも適切なポリマー反応物である。
【0049】
ポリマーは一般に電導性ではない。例えば新品(virgin)PPSは、10-20
cm-1の電導性を有する。非電導性ポリマーが適切な反応物ポリマーである。
【0050】
一つの態様では、反応物として有用なポリマーは各反復モノマー基の骨格中に芳香族ま
たは複素環成分を有し、ならびに、素環中に包含されるか、または、芳香族環に隣接して位置する骨格に沿って位置するヘテロ原子を有する場合がある。ヘテロ原子は骨格に直接位置する場合があり、あるいは、骨格上に直接位置する炭素原子に結合する場合がある。ヘテロ原子が骨格に位置するか、あるいは骨格上に位置する炭素原子に結合している両方の場合で、骨格の原子は芳香族環に隣接する骨格に位置している。本発明のこの態様に使用されるポリマーの非限定的例は、PPS、ポリ(p-フェニレンオキシド)(“PPO”)、LCPs、ポリエーテルエーテルケトン(“PEEK”)、ポリフタルアミド(“PPA”)、ポリピロール、ポリアニリンおよびポリスルフォンを含む群から選択する場合がある。列挙したポリマーおよびこれらポリマーの混合物のモノマーを含むコポリマーも使用する場合がある。例えばp-ヒドロキシ安息香酸のコポリマーは、適切な液晶ポリマー基材ポリマーとなり得る。表1は本発明に有用な反応物ポリマーの非限定的例を、モノマー構造および幾らかの物理特性情報と一緒に詳細に示すが、これらもポリマーがそれらの物理的特性に影響を及ぼすことができる多くの形態をとる場合があるので、非限定的と考えるべきである。
【0051】
【表1-1】
【0052】
【表1-2】
【0053】
固体イオン伝導性ポリマー材料の合成に反応物として有用なドーパントは、電子受容体または酸化物である。ドーパントはイオン輸送および移動のためにイオンを放出すると考
えられ、そしてイオン伝導性のために電荷移動錯体に類似の部位またはポリマー内の部位を作成すると考えられる。有用なドーパントの非限定的例はキノン類、例えば:“DDQ”としても知られている2,3-ジシアノ-5,6-ジクロロジシアノキノン(C8Cl222)、およびクロラニルとしても知られているテトラクロロ-1,4-ベンゾキノン(C6Cl42)、TCNEとしても知られているテトラシアノエチレン(C64)、三酸化硫黄(“SO3”)、オゾン(三酸素すなわちO3)、酸素(O2、空気を含む)、二酸化マンガン(“MnO2”)を含む遷移金属酸化物、あるいは適切な電子受容体等、およびそれらの組み合わせである。ドーパントは、合成の加熱工程の温度で温度安定性のものが有用であり、そして温度安定性で、しかも強力な酸化剤キノンの両方であるキノン類および他のドーパントが最も有用である。表2はドーパントの非限定的一覧をそれらの化学的図解と共に提供する。
【0054】
【表2】
【0055】
固体イオン伝導性ポリマー材料の合成で反応物として有用なイオン化合物は、固体イオン伝導性ポリマー材料の合成中に所望のイオンを放出する化合物である。イオン化合物は、イオン化合物とドーパントの両方を必要とする点でドーパントとは異なる。非限定的例には、Li2O、LiOH,ZnO,TiO2,Al32,NaOH,KOH,LiNO3
,Na2O,MgO,CaCl2,MgCl2、AlCl3、LiTFSI(リチウム ビス-トリフルオロメタンスルホンイミド)、LiFSI(リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド)、リチウム ビス(オキサレート)ボレート(LiB(C242“Li
BOB”)、ならびに他のリチウム塩およびそれらの組み合わせがある。これら化合物の水和形(例えば一水素化物)を使用して化合物を取扱い易くする場合がある。無機酸化物、塩化物および水酸化物は、それらが合成中に解離して少なくとも1つのアニオン性およびカチオン性拡散イオンを生じる点で適切なイオン化合物である。解離して少なくとも1つのアニオン性およびカチオン性拡散イオンを生じる任意のそのようなイオン化合物も同様に有用である。多数のイオン化合物も有用となる場合があるので、多くのアニオン性およびカチオン性拡散イオンが好適となり得る。合成に含まれる特定のイオン化合物は、材料の所望する用途に依存する。例えばリチウムカチオンを有することを望む場合の応用では、リチウムおよび水酸化イオンに転換可能な、水酸化リチウムまたは酸化リチウムが適切であろう。リチウム正極および拡散アニオンの両方を合成中に放出するいかなるリチウ
ム含有化合物も適切であろう。そのようなリチウムイオン化合物の非限定的群には有機溶媒中でリチウム塩として使用されるものを含む。同様にアルミニウムまたは他の特異的カチオンを望む場合、アルミニウムまたは他の特異的イオン化合物はこのような系での合成中に特異的な所望のイオンおよび拡散アニオンを放出するように反応する。さらに示すように、所望するカチオンおよびアニオン拡散種の両方を生成する場合がある形態のアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびポスト遷移金属を含むイオン化合物は、合成反応物のイオン化合物として適切である。
【0056】
材料の純度は、いかなる意図しない副反応も防ぎ、そして合成反応の効率を最大にして高度に伝導性の材料を生成するように、潜在的に重要となる。一般に高純度のドーパント、基材ポリマーおよびイオン化合物を含む実質的に純粋な反応物が好適であり、そして98%より高い純度がより好適であるがさらに高い純度、例えばLiOH:99.6%、DDQ:>98%、そしてクロラニル:>99%が最も好ましい。
【0057】
固体イオン伝導性ポリマー材料の用途、および本発明の固体イオン伝導性ポリマー材料の上記記載の合成法の多様性をさらに説明するために、多くの電気化学的応用に有用で、そしてそれらの応用により区別される数種の固体イオン伝導性ポリマー材料を記載する:
【0058】
リチウムイオンバッテリー
この態様では、反応物(reacting)または基材ポリマーは半結晶または完全結晶、そして30%から100%の間の結晶化度、そして好ましくは50%から100%の間の結晶化度を有することを特徴とする。基材ポリマーは80℃より高い、そして好ましくは120℃より高い、そしてより好ましくは150℃より高い、そして最も好ましくは200℃より高いガラス転移温度を有する。基材ポリマーは250℃より高い、そして好ましくは280℃より高い、そしてより好ましくは320℃より高い融解温度を有する。本発明の基材ポリマーのモノマー単位の分子量は、100~200gm/molの範囲であり、そして200gm/molより高い可能性がある。基材ポリマーに使用できる一般的な材料には、液晶ポリマーおよびPPSとしても知られているポリフェニレンスルフィド、または30%より高い結晶化指数、そして好ましくは50%より高い結晶化指数を有する半結晶ポリマーがある。
【0059】
この態様では、ドーパントは電子受容体、例えばDDQ、TCNE、クロラニル、および三酸化硫黄(SO3)である。電子受容体は他の全ての成分と「プレミックス」される場合があり、そして後処理なしで押し出されるか、あるいはそうではなく蒸気ドーピングのようなドーピング手順を使用して、他の成分が押出し機内などで混合され、そしてフィルムに形成された後、電子受容体を組成物に加える場合がある。
【0060】
本発明のこの態様で使用するためのイオン源または「イオン化合物」を含む一般的な化合物には、Li2O、LiOH,ZnO,TiO2,Al32,LiTFSI、おおび他のリチウムイオン化合物およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。イオン化合物は安定な形態で適切なイオンを含み、これは修飾(modified)されて固体イオン伝導性ポリマー材料の合成中にイオンを放出する。
【0061】
実施例1
PPSおよびクロラニル粉末を4.2:1のモル比(1:1より大きい基材ポリマーモノマー:ドーパント比)で混合する。次いで混合物をアルゴンまたは空気中で高温(最高350℃)にて24時間、大気圧にて加熱する。変色を観察して、ポリマー―ドーパント反応混合物中に電荷移動錯体の生成を確認する。次いで反応混合物を1~40マイクロメートルの小さい平均粒子サイズに再度、挽く。次いでLiTFSIを反応混合物と混合して合成された固体イオン伝導性ポリマー材料を作製する。
【0062】
実施例2
実施例1から合成した材料を含有する酸化コバルトリチウム(LiCoO2)(“LC
O”)正極を調製した。固体イオン伝導性ポリマー材料および電導性炭素と混合する正極は、70重量%の高いLCO装填を使用した。電池はリチウム金属負極、多孔質ポリプロピレンセパレータおよびLiPF6塩からなる標準Li-イオン液体電解質および炭素基材溶媒を使用して調製した。この電池は乾燥グローブボックス中で組立て、そしてサイクル試験を行った。
【0063】
容量を、これらの電池に使用したLCOのグラムでの重量と言う意味で図1に示す。容量は4.3Vで充電しても安定であり、充電中、正極から移動する目標の0.5当量のLiは一定であったことが分かる。また電池は4.5Vのより高い充電電圧でも循環し、これは正極からより高い割合のリチウムを利用し、そして高容量>140mAh/gを生じた。4.5Vの充電試験で観察されたサイクル数に伴う容量のわずかな低下は、この高い電圧で液体電解質の分解(すなわち不安定)と一致している。全体的に本発明の材料を含有するLCO正極の性能は好ましく、スラリーをコートしたLCO正極に匹敵する。
【0064】
アルカリバッテリー
ヒドロキシルイオンの移動度を有する固体イオン伝導性ポリマー材料の基材ポリマーは、好ましくは結晶または半結晶ポリマーであり、これは一般に30%より高い、そして最高100%を含む結晶化度を有し、そして好ましくは50%から100%の間である。本発明のこの態様の基材ポリマーは、80℃より高いガラス転移温度、そして好ましくは120℃より高い、そしてより好ましくは150℃より高い、そして最も好ましくは200℃より高いガラス転移温度を有する。基材ポリマーは、250℃より高い融解温度、そして好ましくは280℃より高い、そしてより好ましくは300℃より高い融解温度を有する。
【0065】
ヒドロキシルイオンの移動度を有する固体イオン伝導性ポリマー材料のドーパントは、電子受容体またはオキシダントである。本発明のこの態様に使用するための一般的なドーパントは、DDQ、クロラニル、TCNE、SO3、酸素(空気を含む)、MnO2および他の金属酸化物等である。
【0066】
ヒドロキシルイオンの移動度を有する固体イオン伝導性ポリマー材料のイオン源を含む化合物には、塩、水酸化物、酸化物またはヒドロキシルイオンを含むか、もしくはそのような物質に転換可能な他の物質があり、例えば、LiOH、NaOH,KOH,Li2
,LiNO3等を含むが、これらに限定されない。
【0067】
実施例3
PPSポリマーをイオン化合物LiOH一水和物と、それぞれ67%対33%(重量による)の比率で混合し、そしてジェットミルを使用して混合した。DDQドーパントは蒸気ドーピングを介して生じた混合物に、4.2モルのPPSモノマーあたり1モルのDDQの量で加えた。この混合物を190~200℃で30分間、中圧(500~1000PSI)で加熱処理した。
【0068】
複合MnO2正極
固体イオン伝導性ポリマー材料-MnO2複合正極の製造に関連する本発明のこの態様では、基材ポリマーは30%より高い結晶化指数を有する半結晶、または完全結晶ポリマーである場合があり、そして共役ポリマーまたは選択したドーパントで容易に酸化される場合があるポリマーからなる群から選択する場合がある。本発明のこの態様に使用される基材ポリマーの非限定的例には、PPS、PPO,PEEK,PPA等がある。
【0069】
この態様では、ドーパントは電子受容体またはオキシダントである。ドーパントの非限定的例は、DDQ、クロラニル、TCNEとしても知られているテトラシアノエチレン、SO3、オゾン、酸素、空気、MnO2を含む遷移金属酸化物、または任意の適切な電子受容体等である。
【0070】
この態様では、イオン源を含む化合物は塩、水酸化物、酸化物、またはヒドロキシルイオンを含む他の材料、あるいはそのような材料に転換可能な材料であり、LiOH、NaOH、KOH、Li2O、LiNO3等を含むが、これらに限定されない。
【0071】
実施例4
PPSポリマーおよびLiOH一水和物を、一緒にそれぞれ67%対33%(重量による)の比率で加え、そしてジェットミルを使用して混合した。追加のアルカリバッテリー正極成分を加えてさらに混合した:MnO2、Bi23および伝導性炭素。MnO2含量は50%から80重量%で変動し、Bi23は0から30重量%の範囲で、カーボンブラック量は3~25重量%であり、そしてポリマー/LiOH含量は10~30重量%であった。
【0072】
混合物を加熱して、一般的な亜鉛―二酸化マンガンアルカリバッテリーに有用な固体イオン伝導性ポリマー材料を含むアルカリバッテリー正極を合成した。
【0073】
実施例5
亜鉛―二酸化マンガンアルカリ電池は、実施例4の正極、および市販の不織セパレータ(NKK)、Znホイル負極、および電解質として6M LiOH溶液を使用して作製した。
【0074】
電池は、Bio-Logic VSP 15試験システムを使用して0.5mA/cm2の一定電流条件下で放電した。MnO2の比容量は、303mAh/gで、すなわち理論的な1e-放電に近いことが分かった。
【0075】
金属空気電池
この態様では、固体イオン伝導性ポリマー材料が金属空気電池で使用され、そして基材ポリマー、イオン源を含む化合物、およびドーパントを含む。ポリマーはPPS、LCP、ポリピロール、ポリアニリンおよびポリスルホンおよび他の基材ポリマー群から選択する場合がある。
【0076】
ドーパントは電子受容体、またはポリマーと酸化反応を開始できる機能的電子受容体を含有する化合物でよい。一般的なドーパントはDDQ、クロラニル、TCNE、SO3、オゾン、およびMnO2を含む遷移金属酸化物である。イオン源を含む材料は塩、水酸化物、酸化物、またはヒドロキシルイオンを含む他の材料、あるいはそのような材料に転換可能な材料の形態である場合があり、LiOH、NaOH、KOH、Li2O、LiNO3等を含むが、これらに限定されない。
【0077】
実施例6
実施例3で合成した材料を使用して、固体イオン伝導性ポリマー材料を種々の炭素、具体的には:TIMCAL SUPER C45伝導性カーボンブラック(C45)、Timcal SFG6(合成グラファイト)、アシュバリー(Ashbury)からのA5303カーボンブラック、およびアシュバリーからの天然脈状グラファイトナノ(N99)と混合することにより空気電極を調製した。炭素含量は15~25重量%で変動した。
【0078】
正極は2032ボタン電池に合うように抜いた。亜鉛ホイルを負極として使用した。不織セパレータを40%KOH水溶液に浸した。2つの穴を、正極に面するコインの上面にドリルで開けた。電池は、室温でMTIボタン電池テスターを0.5mAの定電流で使用して放電した。
【0079】
正極パラメータおよび試験結果を表3にまとめる。放電曲線は図2に示す。本発明の材料を用いたこの実施例の空気正極を持つ電池は、混合物に加えるいかなる従来の触媒(遷移金属基材)なしでも、Zn-空気電池に関する典型的な放電挙動を示す。空気正極から負極へ伝導するヒドロキシルイオンに加えて、材料は正極表面に存在する酸素からヒドロキシルイオンの形成を触媒するように作用する。この実施例で示すように、本発明の材料は、触媒機能を有する。
【0080】
【表3】
【0081】
他のイオン化合物
多数のアニオンおよびカチオンを本発明の材料により伝導する場合がある。合成に使用するイオン化合物は、所望の拡散イオンが合成された材料に含まれるように選択する場合がある。
【0082】
実施例7
材料サンプルは、ザイダー(Xydar)という登録商標でソルベイ(Solvay)から得たLCPポリマーおよびイオン化合物を様々な比率で混合することにより作製した。DDQはドーパントとして使用した。ポリマーのモノマー対ドーパントのモル比は4.2:1であった。表4に掲載する。混合物は190~200Cで30分間、中圧(500~1000psi)で熱処理した。
【0083】
サンプルはステンレス鋼製の電極間に挟み、そして試験装置に配置した。ACインピーダンスは、Bio-Logic VSP試験システムを使用して800KHzから100Hzの範囲で記録して電解質の伝導率を測定した。
【0084】
結果を以下の表3に示す。観察された高いイオン伝導率は、固体ポリマー材料がリチウムLi+、カリウムK+、ナトリウムNa+、カルシウムCa2+、マグネシウムMg2+、ア
ルミニウムAl3+、ヒドロキシルOH-およびクロライドCl-イオンを含む多くのイオンを伝導できることを示している。
【0085】
【表4】
【0086】
ドーパントにより解離され得る任意のイオン化合物は、解離したイオンが、材料が使用される応用可能な電気化学的用途に望ましい限り使用できる。イオン化合物から誘導されるアニオンおよびカチオンは、このように材料によりイオン伝導性となる。イオン化合物には酸化物、塩化物、水酸化物、および他の塩を含む。この実施例では、金属(または他のカチオン)酸化物が金属(または他のカチオン)カチオンおよびヒドロキシルイオンを生じる。
【0087】
リチウムカチオンに加えて、複数のイオンを伝導する能力は、本発明の材料の応用に新な道を開く。ナトリウム―およびカリウム―に基づくエネルギー貯蔵システムは、主に低コストおよび比較的豊富な原材料から推進され、Li-イオンに代わるものと考えられている。カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの伝導性は、Li-イオンバッテリーの能力を超えて潜在的にエネルギー密度を上げることができる多価インターカレーションシステムに必要である。またリチウムよりも安定、安全、しかも低コストの金属負極を有する電源を作製するために、そのような材料を利用することも可能である。
【0088】
実施例8
実施例1の合成法を使用して調製したらさらなる固体イオン伝導性ポリマー材料を、それらの反応物および関連するイオン伝導性(EIS法)とともに表5に列挙した。
【0089】
【表5】
【0090】
実施例3の合成法を使用して調製した追加の固体イオン伝導性ポリマー材料を、それら
の反応物および関連するイオン伝導性(EIS法)とともに表6に列挙した。
【0091】
【表6】
【0092】
表6に挙げたLCPは、ソルベイ(Solvay)からXydarという商標で供給されたものであり、そして異なる融解温度をもつLCP等級である。
【0093】
固体イオン伝導性ポリマー材料の物理特性:
固体イオン伝導性ポリマー材料の物理特性は、使用する反応物に基づき変動する場合がある。具体的なイオン移動度およびアニオンおよびカチオン拡散イオンは材料の合成から誘導されるが、他の物理特性は反応物ポリマーに対して有意に変化しないようである。
【0094】
実施例9
結晶化度
実施例3からの反応物PPS、DDQおよびLiOHを使用して、反応物ポリマーと合成した固体イオン伝導性ポリマー材料の相対的物理特性を比較した。
【0095】
第一工程では、PPS反応物およびLiOH一水素化物を混合し、そしてx-線回折(“XRD”)を介して分析した。図3Aでは、この非晶質ポリマー混合物のXRDが、LiOH一水素化物に対応するピークを30から34度の間に示す。その他の点では、そのXRDはポリマーが非晶質であり、そしていかなる有意な結晶性も欠くことを示す。
【0096】
混合物を押し出し、そしてフィルムに引き出す。この工程で押出し機を介するPPSポリマーの加熱は、非晶質PPS材料をアニールし(融点未満の適切な温度で加熱、そして維持し、続いてゆっくり冷却する)、同時に材料をフィルムに押出し、これにより結晶化度を生じるか、または上げる。図3Bでは、重要な結晶ポリマーピークを示し、これは約60%でPPS材料の結晶化度を定量するためにも使用する場合がある。LiOH一水素化物のピークも残る。
【0097】
次いでフィルム混合物をDDQドーパントの蒸気ドーピングにかけて本発明の固体イオン伝導性ポリマー材料を作製し、そして対応するXRDを図3Cに示す。変色は、材料がドーピングされた後に黒になるのでドーピング中に観察される。この変色はイオンの電荷移動錯体が形成され、ポリマーおよびドーパント反応物がイオン化合物の存在下で反応したこと、そして材料は活性化されてイオン伝導性になったことを示す。ポリマーのピークは残り、そして材料の結晶化度の程度が約60%のままであり、したがって変化していないことを示す。しかしLiOH一水素化物のピークは消失し、そしていかなる他のピークにも置き変わらない。導かれる結論は、イオン化合物がその成分のカチオンおよびアニオンに解離し、そしてこれらイオンは今や材料構造の一部であるということである。
【0098】
ガラス転移および融点温度
実施例10
バルクおよび薄いフィルムポリマーサンプルの融解温度およびTgの測定に関する多くの技法が存在するが、示差走査熱量測定(“DSC”そしてASTM D7426(2013)に記載されている)は、ポリマー材料の比熱容量の変化を測定するための迅速な試験法を提供する。ガラス転移温度は、比熱容量における段階的変化として現れる。
【0099】
図4について、実施例1から合成した材料に関するDSCプロットを示す。材料[PPS-クロラニル-LiTFSI]の融点をDSCから導き出し、そして反応物ポリマーPPS:約300CのTmとは異ならないと決定する。この基材ポリマーのガラス転移温度Tgは80~100Cの間であるが、DSCプロットではTg変化(inflection)は見られず、そして合成で固体イオン伝導性ポリマー材料はその粘弾性状態を失ったと考えられ、これはPPS基材ポリマーで明白であり、ガラス状態が材料の融解温度未満の下の温度範囲に広がっている。130Cでのプロットの急落はイオン化合物のアーティファクトと考えられる。
【0100】
イオン伝導性
本発明の固体イオン伝導性ポリマー材料のイオン伝導性を測定し、そして関連する
従来の電解質とを比較する。本発明の材料は、環境条件でイオン伝導性であると判明し、一方、ガラス状態では反応物ポリマーはイオン的に断絶されていた。材料はガラス状態であるので、関連するセグメント運動は存在することはなく、したがってリチウムカチオンおよびアニオンの拡散は、セグメント運動が必要ではない異なるイオン伝導メカニズムを介して可能にしなければならない。
【0101】
具体的に、実施例1に記載した本発明の固体イオン伝導性ポリマー材料のフィルムを.0003インチ(7.6マイクロメートル)から厚さの範囲を上げて押し出す。フィルムのイオンの表面伝導性は、当業者には既知のAC-電気化学的インピーダンス分光法(EIS)の標準試験を使用して測定する。固体イオン伝導性ポリマー材料フィルムのサンプルは、ステンレス鋼製のブロッキング電極に挟み、そして試験装置に配置する。AC-インピーダンスを800KHz~100Hzの範囲でBio-Logic VSP試験システムを使用して記録して、材料のイオン伝導性を測定した。面内(in-plane)および交差面(through plane)のイオン伝導性を、材料フィルムを適切なジグに配置することによりBio-Logicを使用して測定した。交差面の伝導性は3.1×10-4S/cmで、そして面内の伝導性は3.5×10-4S/cmで測定した。それらの測定値は、材料の等方性の相対イオン伝導性(isotropic relative ion conductivity)を考察するために十分に類似していた。
【0102】
実施例1の材料を使用して約 150マイクロメートル厚のフィルムを作製した。電導
性は、定電位実験を介して直接測定した。フィルムは2つのステンレス鋼製のブロッキン
グ電極間に配置し、(1.656cm2の面積)、そして0.25Vの電圧を電極間に保
持した。電流は180ナノアンペアで測定し、室温で2.3×106オームcm2の単位面積当たりの抵抗を生じた。この測定された電導度(単位面積当たりの抵抗)は低く、そして変換可能な、電導性が電解質として十分な室温で1.0×10-5S/cm(具体的には6.5×10-8S/cm)未満をしめす。
【0103】
実施例1の材料の熱重量分析は、材料の水分含量を測定するために行った。乾燥環境のグローブボックスに材料を保管した後、熱重量分析を行い、そして材料が<5ppmの水を含むことが示された。固体イオン伝導性ポリマー材料に反応物として使用した特定の塩(例えばイオン化合物としてLiOH)は大気水を誘引し、これが材料を親水性とする場合がある。
【0104】
実施例12
実施例3で合成した材料のモジュラスを試験した。この具体的な固体ポリマー材料から作製された電解質のヤング率の範囲は、3.3~4.0GPaである。しかしこの応用で列挙する材料のヤング率の範囲は一層大きく、そして3.0MPa~4GPaに広がる。合成した材料は熱可塑性を維持し、そしてプラスチック加工技術により再形成され得る。実施例3の材料を、その融点より過度に加熱し、そして冷却した。次いで材料はフィルムに再形成された。このように材料は高いモジュラスを有し、そして熱可塑性である両方が示される。
【0105】
比較例13
実施例1で報告したイオン伝導性の測定値の結果を図5および6で具体的に説明する。本発明による固体イオン伝導性ポリマー材料フィルム(△)の伝導性を、トリフルオロメタンスルホネートPEO(□)、およびLi塩溶質およびエチレンカーボネート―プロピレンカーボネート“EC:PC”組み合わせ溶媒からセルガード(Celgard)セパレータを使用して作られた電解質(O)の伝導性と比較する。
【0106】
図5に関しては、温度の関数として固体ポリマーイオン伝導性材料の測定された伝導率を表す。またセルガードセパレータを用いたLiPF6塩を含む液体電解質EC:PC、およびPEO-LiTFSI電解質の測定されたイオン伝導率を示す。室温での固体イオン伝導性ポリマー材料の伝導率は、PEO-LiTFSI電解質と比べて約2.5桁高く、そして同様な条件で測定された従来の液体電解質/セパレータ系の伝導度に匹敵する。固体イオン伝導性ポリマー材料の伝導度の温度依存性は、温度により活性化されるVogel Tamman-Fulcher挙動により記載されるように、鎖移動が随伴するそのガラス転移温度より高い鋭い上昇は示さない。したがってポリマー電解質材料のイオン伝導メカニズムとしてセグメント運動は、材料がそのガラス状態で有意なイオン伝導性を示すので起こっていない。さらにこのことは発明のポリマー材料が液体電解質に対して同様なレベルのイオン伝導性を有することを証明している。
【0107】
図6では、固体イオン伝導性ポリマー材料のイオン伝導性を従来の液体電解質、比較例のリン酸リチウムオキシナイトライド“LIOPN”と、そして伝導性および温度の両方について関連のDOE目標と比較する。図5Bについて、固体イオン伝導性ポリマー材料のイオン伝導性は室温(約21℃)で1×10-04S/cmより高く、約-30℃で約1
×10-04S/cm(そして1×10-05S/cmより高く、そして約80℃で1×10-03S/cmより高い。
【0108】
実施例14
イオン伝導性は材料の配合を調整することにより最適化できる。図7はイオン伝導性の改善および最適化を示し、これはポリマー材料の配合を調整すること、例えば基材ポリマ
ー、ドーパントまたはイオン化合物の変化によりもたらされた。
【0109】
拡散性
イオン伝導性に加えて、拡散性はいかなる電解質およびイオン伝導性材料でも重要な固有の特性である。
【0110】
実施例15
拡散性の測定は実施例3で作製した材料について行った。
【0111】
基本的なNMR技法を使用して、固体イオン伝導性ポリマー材料中の自由に流動するイオンとしてLi+を明確に同定した。NMRは元素特異的(例えばH、Li,C,F,PおよびCo)であり、そして局所構造の小さな変化に感受性である。
【0112】
具体的には、リチウムおよびヒドロキシルイオンの拡散性をパルス化勾配スピンエコー(“PGSE”)リチウムNMR法により評価した。このPGSE-NMR測定はVarian-S Direct Drive 300(7.1T)分光計を使用して行った。マジック角回転法を使用してケミカルシフトの異方性および双極子相互作用を平均化した。パルス化勾配スピン刺激エコーパルス配列を、自己―拡散(拡散性)測定に使用した。各材料サンプル中のカチオンおよびアニオンに関する自己拡散係数の測定値は、それぞれ1Hおよび7Li核を使用して作成した。NMRで決定した自己拡散係数はブラウン運動に類似する不規則な熱誘導性の並進運動(translational motion)の尺度であり、ここでは外部の駆動力が存在しない。しかし自己拡散はNernst Einstein式を介するイオン移動度およびイオン伝導度に緊密に関連し、したがってバッテリー電解質を特徴付ける場合に測定すべき重要なパラメータである。イオン伝導性および拡散性の両データを有する場合、電解質の性能を限定するイオン対またはより高い凝集効果の存在を確かめることが可能である。このような試験は、固体ポリマーイオン伝導性材料が室温で5.7×10-112/sのLi+拡散率を有すると結論し、90℃でPEO/LiTFSIよりも高くし、そしてLi10GeP212より少なくとも1桁高くする(高温で測定)。このように固体イオン伝導性ポリマー材料は、拡散でき、そして可動性となり得る多くのイオンを伝導し、そして室温でバッテリーおよび他の応用に十分高いイオン伝導性を提供する独自な能力を持つ新な固体電解質として作用する場合がある。
【0113】
OH-イオンの拡散率は室温で4.1×10-112/sであった。このように固体イオ
ン伝導性ポリマー材料は、固体のOH-コンダクターについて大変高い拡散率を有する。
対応するカチオン輸率(以下の式(1)で定義)は0.58であり、これもまた有意に高く、そして従来技術の固体電解質とは異なる。
【0114】
実施例16
拡散性の測定は実施例1で作製した材料[PPS-DDQ-LiTFSI]について行った。自己拡散は実施例15に説明する技術を使用して測定した。材料は室温で0.23×10-92/sのカチオン拡散率D(7Li)、およびアニオン拡散率D(1H)は室温で0.45×10-92/sであった。
【0115】
材料の伝導性を下げるイオン会合の程度を測定するために、材料の伝導性をNernst Einstein式を介して測定した拡散測定値を使用して算出し、関連する算出された伝導性は測定された伝導性よりも大変大きいと決定された。この差は平均して少なくとも1桁であった(すなわち10x)。したがって伝導性はイオン解離を改良することにより改善できると考えられ、そして算出された伝導性はこの伝導性の範囲内にあると考えることができる。
【0116】
カチオン輸率は、拡散係数データから式(1)を介して以下のように予想することができる:
+~D+/(D++D-)(1)
式中、D+およびD-は、それぞれLiカチオンおよびTFSIアニオンの拡散係数を指す。上記データから、対応するPEO電解質における約0.2のt+値(液体カーボネー
ト電解質も約0.2のt+値を有する)と比べて、固体イオン伝導性ポリマー材料では約
0.7のt+値を得る。この高いカチオン輸率の特性は、バッテリーの性能に重要な意味
を有する。理想的にはLiイオンが全ての電流を運ぶことを意味する1.0のt+値が好
ましいことになる。アニオン移動度はバッテリーの性能を限定する恐れがある電極分極効果を生じる。両イオンが可動性となり得る材料では、0.5以上のt+値が大変求められ
るが、大変稀にしか達成されない。算出された0.7の輸率は、いかなる液体またはPEO基材の電解質でも観察されたことはないと思われる。イオン会合は計算に影響を及ぼすかもしれないが、電気化学的結果は、0.65から0.75間の輸率の範囲を確認する。
【0117】
+は、リチウムカチオンの拡散が高いのでアニオン拡散に依存的であると考える。カ
チオン拡散が対応するアニオン拡散より大きい場合、カチオン輸率は常に0.5より高く、そしてアニオンが可動性の場合、カチオン輸率も1.0未満でなければならない。イオン化合物としてリチウム塩の調査は、この0.5より高く、そして1.0未満というカチオン輸率の範囲を生じるものと考える。比較例として、幾つかのセラミックスが高い拡散数を有すると報告されたが、そのようなセラミックスは単一イオンを輸送するだけであり、したがってカチオン輸率はD-がゼロの場合に1.0に下がる。
【0118】
輸率はNMRに由来する拡散測定から算出されるが、輸率を算出する別の手段は、Bruce and Vincent法のような直接法により行うことができる。Bruce
and Vincent法は、固体イオン伝導性ポリマー材料の輸率を算出するために使用され、そしてNMR由来の測定値に対して良好な相関が見出された。
【0119】
図8に関して、広い温度範囲にわたる固体イオン伝導性ポリマー材料の拡散測定の結果を示し、そしてイオン源としてLiTFSIを含むPEOと比較する。最も重要な結論は:(i)両化合物が測定できる温度で、Liの拡散は固体ポリマーイオン伝導性材料がPEO LiTFSIポリマー電解質よりもほぼ2桁高く;(ii)固体ポリマーイオン伝導性材料の拡散係数は、少なくとも-45℃まで測定可能であり、固体材料ではLi拡散について大変低温で測定され、具体的にはリチウムイオン拡散率は1×10-132/sより大きい。低温での固体イオン伝導性ポリマー材料のこの優れたイオン伝導性の性能は、一般の液体バッテリー電解質を凌ぐ。またNMRスペクトルの温度依存性は、イオン運動がポリマーのセグメント運動によるものではなく、代わりにそのガラス状態で有意なイオン拡散を可能にするという点でポリマーから分断されている(decoupled)ことを示唆していることに注目すべきである。このように30%より高い結晶化度;ガラス状態;および少なくとも1つのカチオン性およびアニオン性拡散イオンの両方を有する固体イオン伝導性ポリマー材料の存在が示され、ここで少なくとも1つの(この態様では両拡散イオン)拡散イオンがガラス状態で可動性である。
【0120】
比較例17
LiPONのカチオン拡散率は、「新規Li3PS4セラミックイオンコンダクターの固体状およびパルス磁場勾配NMRによる構造的特性決定およびLiの動力学(Structural characterization and Li dynamics in new Li3PS4 ceramic ion conductor by so
lid-state and pulsed-field gradient NMR)」Mallory Govet,Steve Greenbaum,Chengdu Liang and Gayari Saju,Chemistry of Metals
(2014)から取る。実験法は、実施例15および16に説明した方法に準じて使用し、そして拡散曲線は図9に説明する。LiPONは100℃で0.54×10-122/sのカチオン拡散率D(7Li)を有する。この拡散率は周囲温度(21℃)で本発明の材料の拡散率より約80倍小さい。
【0121】
材料の化学構造
固体イオン伝導性ポリマー材料の化学構造に関する情報を測定するための実験を行う。
【0122】
実施例18
この実施例では、実施例3で合成した材料をその反応成分PPSおよびDDQおよびLiOH一水素化物と一緒に実験した。
【0123】
反応物または基材ポリマーPPSを最初に分析し、そして図10ではテトラメチルシラン(“TMS”)の分光標準に対して、PPSのプロトン(1H)NMRスペクトルが6
.8ppmに中心を持つ単一ピークにより特徴付けられる。これはポリマーの構造から予想されるような芳香族水素の明確な表示である。このPPSポリマーのプロトンの固体状MAS NMRスペクトルは、300MHz装置で取った。アスタリスクはスピニングサイドバンドを示し、そして挿入図は拡大解像図を示す。
【0124】
図11に関して、固体イオン伝導性ポリマー材料(上)、OH-型プロトンへのスペクトルデコンボレリューションを含む(中央)、および芳香族プロトン(下)の1H NM
Rスペクトル。このスペクトルでは芳香族水素および水酸化物を確認する。材料のプロトンの固体状態のMAS NMRスペクトルは500MHz装置で取る。アスタリスクはスピニングサイドバンドを示し、そして挿入図は拡大解像図を示す。OH-および基材ポリ
マーのプロトンに対するスペクトルのデコンボリューションは、追加の実験スペクトルとして挿入図に示す。NMR分光法は定量的なので(シグナルが飽和しないように注意を払う限り)、スペクトルピークの直接的積分は特定の相での核の割合を与える。この積分の結果は、材料が反復基の芳香族あたり1より多くの可動性OHイオンを有し:そしてポリマーの反復単位(モノマー)あたり約2個のLiOH分子を含むことを示し、これは大変高いイオン濃度である。狭いOHシグナルは、OHイオンの高い可動性を示す。
【0125】
追加の構造的情報は、炭素-13 固体状MAS NMRにより得ることができ、これは~1%の天然存在度の13Cにより可能となる。交差分極(CP)が使用され、これにより近くのプロトンは検出感度を強化するために「レア(rear)」スピンへの移動核磁化(transfer nuclear magnetization)のように、13C核と同時に共鳴される。図12では、PPSポリマースペクトルが、全ての炭素がシグナルに参加する直接分極(下)、および水素へ直接結合しているもののみが参加するCP(上)の両方で表される。異なるスペクトル(中央)は、すなわち硫黄に結合している炭素に対応する。
【0126】
図13では、直接分極により500MHz装置で取った電子受容体化合物の13CスペクトルMAS NMRスペクトルを、電子受容体DDQの提案されたスペクトルの割り当てと共に示す。この分子中には水素が無いので、スペクトルは直接検出下で得た。大変長いスピン-格子緩和時間(1分より長いような)により、シグナル対ノイズ比はやや低い。様々なピークに関する割り当てを図13に示す。予想された4つ(4種の化学的に等価でない炭素に対応する)に対して6つの異なるピークの出現は、異性体の存在の可能性を示唆している。
【0127】
直接分極により500MHz装置で取った固体イオン伝導性ポリマー材料の13C固相MAS NMRスペクトルを図14Aに表し、PPSからイオン伝導性材料に入ってくるメ
インピーク(芳香族炭素に占められる)中のシフトを示す。挿入図の中央のCPスペクトルは、PPSポリマーがLiOHのOH基と強く相互作用していることを示唆している。材料およびDDQ電子受容体の両拡大スペクトルは図14Bで比較し、材料中に反応物の元の分光的特徴を曖昧にする化学反応があることを示す。
【0128】
このNMR分析は、3種の異なる反応物が反応して本発明の固体イオン伝導性ポリマー材料を形成することを明らかに示している。単にその成分の混合物ではない新な材料が形成された。3種の成分の間に反応があり、そして固体ポリマーイオン伝導性材料は反応生成物である。特に、基材ポリマーと合成された材料との間には13C NMRピークにシフトが存在する。さらにOHに関連する水素の1H共鳴および13C共鳴の同時照射の効果は
、イオンが構造に取り込まれたこと、したがってすべての3種の別個の成分が反応し、そして新規な合成された材料の一部であることを示す。
【0129】
実施例19
実施例3の材料中のカチオン(例えばリチウムイオン)濃度の定量は、材料を内部同軸管に挿入し、そしてリチウムジスプロシウムポリフォスフェート(Dy)のようなシフト試薬錯体の外部参照溶液で囲むことにより完了することができる。図15を参照すると、Liカチオン共鳴のシフトが、サンプル中のリチウムの定量を可能にする常磁性Dyにより誘導される。測定したサンプルでは、リチウムカチオン濃度は1リットルの材料あたり約3モルになることが分かった([Li]~3モル/リットル)。この高濃度のカチオンは、固体イオン伝導性ポリマー材料が大変高いイオン伝導性を室温および広い温度範囲にわたり有することを可能にする。
【0130】
材料の安定性
液体電解質および他のポリマー電解質は、リチウムの安定性に関する課題に取り組むことになる。それらのリチウムとの相互作用は、リチウムと電解質との間にバッテリーの寿命に不利な反応を生じる。また電解質は、インターカレーション材料、電導性添加剤、レオロジー剤および他の添加剤を含む電気化学的に活性な物質のような他のバッテリー成分と使用する場合、適合性および非反応性になることが必要である。さらに4.0ボルトより高い電圧で、一般的な電解質は単に分解する可能性があり、これも良くないバッテリー寿命をもたらす。このようにリチウムの「安定性」は、ポリマー電解質の要件となる。具体的にはポリマー電解質は非反応性で分解しないと同時に、リチウム金属を4.0V、4.5Vおよび5.0Vより高い電圧で輸送する。
【0131】
図16を参照にして、薄いフィルムバッテリー構造10を表す。負極は関連する集電装置(示さず)を含むリチウム金属10、すなわちリチウムイオンバッテリーに典型的な負極インターカレーション材料から構成される。インターカレーション材料が選択されれば、固体イオン伝導性ポリマー材料をそれらと混合する。正極30は正極集電装置(cathode collector)(示さず)および電気化学的に活性な物質またはインターカレーション材料から構成される。ここでも固体イオン伝導性ポリマー材料が電導性材料と一緒にそれらと混合される。固体イオン伝導性ポリマー材料のフィルムは、セパレータ/電解質40として使用され、そして負極と正極との間に挟まれる。
【0132】
実施例20
固体イオン伝導性ポリマー材料は、広範な種々の現在のリチウムイオン化学との適合性を示す。図17に関しては、図16に従い構成したバッテリーの性能、および関連する正極の電気化学的活性物質に従った標識である。具体的には、バッテリーをLiFePO4
、LiMn24、およびLiCoO2正極およびリチウム金属負極で構築した。電気化学
的活性物質と正極中で混合した本発明の材料で構築したバッテリーは、電解質としてリチウムイオンを負極および正極から、そしてそれらへ伝導するために使用し、そして適切な
放電性能を示す。
【0133】
この固体ポリマー材料を電解質としてすべてのバッテリー構造内で、または1つの構造内(負極、正極、セパレータおよび電解質)で使用することにより、いかなる液体電解質も使用せずに新しいレベルの性能を達成することができる。材料は少なくとも1つの電極内の電気化学的活性材料またはインターカレーション材料と混合する場合がある。バッテリーの電気化学的反応に必要なイオンは、電解質を通って伝導される。材料は粒状、スラリー、フィルムまたは他のバッテリーに適する用途の形態である場合がある。フィルムとして材料は電極間、または電極と集電装置との間に挟まれ、集電装置または電極を封入して配置され、あるいはイオン伝導性が必要な場所に配置される。図16に記載するようにバッテリーの全ての三主要成分は固体ポリマー材料を使用して作る場合がある。図16に示す態様では、フィルム形の電極および挟まれたセパレータまたは電解質は独立構造である場合があり、あるいは熱溶接または熱可塑性フィルムを合体するための他の手段により互いに固定される場合がある。
【0134】
実施例21
正極は実施例1からの材料でLCO封入を用いて製造された。正極はリチウム金属の負極と対になり、そして材料のフィルムは図16の構成で記載したように負極と正極との間に挟まれた。次いで集成したバッテリーを複数のサイクルで充電そして放電した。図18は多数のサイクルにわたって生じた放電曲線を示す。
【0135】
充電―放電曲線は分極をほとんど示さず、そして効率は少なくとも99%である。この結果は、正極内のイオン輸送媒体としてのポリマーの機能性、そしてまた固体状態のバッテリー内の電解質として役立つ能力を証明している。また重要なことは、4(4.0)ボルトから4.3Vそして5.0Vにわたり操作している間の電解質の電圧安定性、リチウム金属の安定性、および100mAh/gを越える速度でリチウムを輸送する安定性(具体的には少なくとも:133.5mAh/gリチウム)である。
【0136】
実施例22
図16に記載した構成で作製されたリチウム金属負極および硫黄正極を含むLiSバッテリーを構築する。実施例1からの材料を、バッテリーの作製に使用する。一般にリチウム―硫黄系では、そのようなバッテリーに典型的な液体電解質中の硫黄反応化学の中間体(intermediary)の解離により引き起こされる低いサイクル寿命の克服に取り組んできた。
【0137】
固体ポリマー材料は、反応中間体を固体系に捕捉することにより反応中間体のこの解離を制限してLi-S系を可能にするように作用する。固体ポリマー材料はリチウムイオンを輸送できると同時に、ポリスルフィドイオンが負極に達することを遮断する。固体ポリマー材料は硫黄粒子の溶解性およびスルフィドの輸送を制限し、これにより、より多くの硫黄が反応に参加することを可能とし、そして正極の容量を改善する。硫黄および炭素のみを含む標準的な正極を含むバッテリーに対して、この改善された容量を図19に示す。ここでもこのデータが室温で取られたことに注目することが重要である。固体ポリマー材料は、液体電解質に典型的な、そして幾つかの一般的ポリマー電解質に典型的な「無差別拡散(indiscriminate diffusion)」は可能にしないが、代わりに合成中に材料に包含されたイオンの拡散のみを可能にする。このようにスルフィドは拡散できず、そして代わりに拡散アニオン(1もしくは複数)およびカチオン(1もしくは複数)以外の他のイオンと全く同様にイオン非伝導性である(non-ionically conductive)。すなわち材料は、選択したイオンについてのみイオンの移動を可能とするように工作できるイオン分離膜として作用する場合がある。
【0138】
固体ポリマー電解質
記載したように固体イオン伝導性ポリマー材料は固体電解質として作用する。固体電解質として、これはセパレータの必要性を不要にするが、多くの同じセパレータの特性が固体電解質に必要とされる。
【0139】
セパレータは、バッテリーの負極と正極との間に置かれるイオン透過性膜である。セパレータの主な機能は2つの電極を離しておき、短絡を防ぐと同時に、電気化学電池の電流の通過中に回路を閉じることが必要なイオン電荷キャリアの輸送も可能にする。この分離およびイオン輸送操作は、全てのバッテリーに必要である。
【0140】
また固体電解質は、バッテリーが繰り返しフル充電および放電される時に、激しい反応環境下で電極材料に対して化学的に安定でなければならない。セパレータはバッテリーの正常および異常な使用中に分解すべきでない。中でも特に重要なことは、充電および放電中に遭遇する電圧範囲にわたる電圧の安定性である。
【0141】
固体電解質は、バッテリーのエネルギーおよびパワー密度(power density)を促進するために薄くなければならない。しかし固体電解質はセパレータとして作動しなければならず、機械的強度および安全性を両立させるため薄すぎることはできない。厚さは多くの充電サイクルを支持するために均一であるべきである。約25.4μm-(1.0mil)および30マイクロメートル未満が一般に標準的幅である。固体電解質の厚さは、パルプ製紙業界技術協会(Technical Association of
the Pulp and Paper Industry)によるT411 om-83法を使用して測定することができ、そして5~150マイクロメートルの厚さに押し出された。
【0142】
ポリマーセパレータは、一般に4から5倍まで電解質の抵抗を上げ、そして均一な透過性からの逸脱は不均一な電流密度の分布を生じ、これはデンドライトの形成を引き起こす。両課題は、均一で等方性のイオン伝導性を生じ、そして有する固体電解質の使用により排除することができる。
【0143】
固体電解質はバッテリー集成中のいかなる屈曲操作に張力、あるいはバッテリーの曲げや他の乱用にも耐えるために十分の強くなければならない。機械強度は一般に機械(屈曲)方向と交差方向の両方の引張り強さと言う意味で、引裂抵抗および穿刺強度と言う意味で定められる。これらのパラメータは、応力対歪の比であるヤング率という意味で定められる。固体ポリマー材料から作られた電解質のヤング率の範囲は3.0Mpa-4.0GPaであり、そして必要に応じてガラス繊維またはカーボンファイバーのような添加物を使用することにより、より高くに設計する場合がある。
【0144】
固体電解質はカーリングやパッカリング無しに完全に平に置いて、広い温度範囲にわたり安定でなければならない。本発明の固体電解質のイオン輸送特性は温度により変動するが、構造的完全性は以下に完全に記載するように過剰な熱に暴露された時でも安定なままである。
【0145】
このように固体イオン伝導性ポリマー材料は、上に挙げた要件のそれぞれを達成するので、セパレータおよび固体電解質の要件を満たす。具体的には固体ポリマー電解質は3.0Mpaより大きいヤング率、50マイクロメートル未満の厚さ、等方性のイオン伝導性、-45℃もの低温で多数のイオンの拡散性、リチウム金属との安定性(非反応性)、電気化学的に活性な材料、および高電圧での電導性添加剤、熱可塑性および成形可能性を有する。
【0146】
実施例23
固体ポリマー材料は、UL 94-V0燃焼性試験のパラメータに従い、燃焼性について試験した。固体ポリマー材料はほとんど不燃性―2秒で自己-消火性(self-extinguish)であることが分かった。UL 94-V0標準により、不燃性と考えるためには、材料は10秒以内に自己―消火となる必要がある。
【0147】
本発明を特定の好ましい態様と結び付けてここに詳細に記載してきたが、その中の多くの改変および変更は、当業者により本発明の精神から逸脱せずになされ得るであろう。したがって我々は添付の請求の範囲により限定されるだけであり、本明細書に記載した態様の詳細および手段によってはどのようにも限定されないことを意図している。
【0148】
本発明の概念から離れることなく前記構造に様々な変更および改良を行う場合があると理解され、そしてさらにそのような概念は特に明記しなくても、以下の請求の範囲により網羅されることを意図していると理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2021-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温で1.0×10-5S/cm未満の電導性を有する、固体半結晶イオン伝導性ポリマー材料であって、以下の方法のひとつによってつくられる材料、
ア)基材ポリマーおよびイオン化合物を混合し、次いでドーパントをポリマー-イオン化合物混合物と混合し、そして加熱する、ただし、加熱は二番目の混合工程中、または該混合工程に続いて混合物に適用される、または、
イ)基材ポリマーおよびドーパントが最初に混合され、そして次いで加熱され、ただし加熱工程は混合後、または混合中に適用され、複数の電荷移動錯体の形成およびドーパントと基材ポリマーとの間の反応を示す変色を生じ、次いでイオン化合物が反応したポリマードーパント材料と混合されて固体イオン伝導性ポリマー材料の形成が完了する、
ただし、固体イオン伝導性ポリマー材料の合成に反応物として有用なドーパントは、電子受容体または酸化物であり、そして、
固体イオン伝導性ポリマー材料は、基材ポリマーと電子受容体との反応によって形成される複数の電荷移動錯体を含む。
【請求項2】
a.材料が親水性である、および/または、
b.材料のイオン伝導性が等方性である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
材料がさらに材料の融解温度未満の温度で存在するガラス状態を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
材料が、ガラス状態を有し、かつ、少なくとも1つのカチオン性および少なくとも1つのアニオン性拡散イオンを有し、各拡散イオンがガラス状態で可動性である、請求項1に記載の材料。
【請求項5】
a.基材ポリマーが複数のモノマーを含み、モノマーあたり少なくとも1つのアニオン性拡散イオンが取り込まれ、および/または、
b.基材ポリマーは複数のモノマーを含み、モノマーあたり少なくとも1つのカチオン性拡散イオンが取り込まれ、および/または、
c.1リットルの材料あたり少なくとも1モルのカチオン性拡散イオンが存在する、および/または、
d.基材ポリマーは複数のモノマーを含み、材料はモノマーあたり1より多くの拡散アニオンが取り込まれる、および/または、
e.材料のカチオン輸率が0.5以下で、しかもゼロより大きい、請求項4に記載の材料。
【請求項6】
カチオン性拡散イオンがリチウムを含む、請求項4に記載の材料。
【請求項7】
材料のカチオン輸率が0.5より高く、そして1.0未満である、請求項4に記載の材料。
【請求項8】
基材ポリマーは複数のモノマーを含み、各モノマーがモノマーの骨格に位置する芳香族環または複素環構造を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項9】
材料がさらに、環構造に包含されるかまたは環構造に隣接する骨格上に位置するヘテロ原子を含む、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
ヘテロ原子が硫黄、酸素または窒素からなる群から選択される、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
モノマーあたり少なくとも1つのアニオン性拡散イオンが取り込まれ、そして少なくとも1つのモノマーがリチウムイオンを含む、請求項8に記載の材料。
【請求項12】
a.基材ポリマーが共役ポリマーである、および/または、
b.基材ポリマーがPPSまたは液晶ポリマーである、および/または、
c.イオン化合物が酸化物、塩化物、水酸化物または塩である、および/または、
d.電子受容体がキノンまたは酸素である、請求項1に記載の材料。
【請求項13】
材料がさらにカチオン性およびアニオン性拡散イオンの両方を含み、これにより各拡散イオンはガラス状態で可動性であり、そして材料の結晶化度が30%より高い、請求項3に記載の材料。
【請求項14】
リチウムの濃度が、1リットルの材料あたり3モルのリチウムより高い、請求項6に記載の材料。
【請求項15】
カチオン性拡散イオンがリチウムを含む、請求項7に記載の材料。
【請求項16】
ヘテロ原子が環構造に隣接するモノマーの骨格上に位置する、請求項9に記載の材料。
【請求項17】
ヘテロ原子が硫黄である、請求項16に記載の材料。
【請求項18】
基材ポリマーがポリフェニレン スルフィド(PPS)、ポリ(p-フェニレンオキシド)(PPO)、液晶ポリマー(LPCs)、ポリエーテル エーテル ケトン(PEEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリスルフォン、ポリアニリン ポリ-フェニルアミン[C64NH]n、ポリ-パラフェニレン テトラフタルアミド [-CO-C64-CO-NH-C64-NH-]n,ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、ポリエチレン(PE)、挙げられたポリマーのモノマーを含むコポリマー、および、これらのポリマーの混合物を含む群より選ばれる、請求項1の材料。
【請求項19】
イオン化合物がLi2O、LiOH,ZnO,TiO2,Al23,NaOH,KOH,
LiNO3,Na2O,MgO,CaCl2,MgCl2、AlCl3、LiTFSI(リチウム ビス-トリフルオロメタンスルホンイミド)、LiFSI(リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド)、リチウム ビス(オキサレート)ボレート(LiB(C242、LiBOB)、その他のリチウム塩、およびこれらの組み合わせを含む群より選ばれる請求項1の材料。
【請求項20】
ドーパントが、2,3-ジクロロー5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)(C8l222)、テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン(クロラニル)(C6Cl42)、テトラシアノエチレン(TCNE)(C64)、三酸化硫黄(SO3)、オゾン(三酸素またはO3)、酸素(O2、空気を含む)、遷移金属酸化物、およびこれらの組合せを含む群より選ばれる請求項1の材料。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7
【外国語明細書】