(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037067
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】直流電力ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 9/00 20060101AFI20220301BHJP
H01B 9/02 20060101ALI20220301BHJP
H01B 9/04 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
H01B9/00 C
H01B9/02 B
H01B9/04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199411
(22)【出願日】2021-12-08
(62)【分割の表示】P 2019559774の分割
【原出願日】2017-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2017-0078845
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0151398
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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(71)【出願人】
【識別番号】513096691
【氏名又は名称】エルエス ケーブル アンド システム リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヒョンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ギジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨンウン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】空間電荷(space charge)蓄積による直流絶縁耐力の低下及びインパルス破壊強度の低下を同時に防止する直流電力ケーブルを提供する。
【解決手段】直流電力ケーブル100は、導体10、導体を取り囲む内部半導電層12、それを取り囲む絶縁層14、絶縁層14を取り囲む外部半導電層16、外部半導電層16を取り囲む遮蔽層18、遮蔽層18を取り囲む外被20とを含み、これらの中で特に半導電層と絶縁層が改善された材料を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力ケーブであって、
導体と、
前記導体を取り囲む内部半導電層と、
前記内部半導電層を取り囲む絶縁層と、
前記絶縁層を取り囲む外部半導電層と、
前記外部半導電層を取り囲む外被とを含み、
前記内部半導電層又は前記外部半導電層は、ベース樹脂としてオレフィンと極性単量体の共重合樹脂及び前記樹脂内に分散された伝導性粒子を含む半導電組成物から形成され、 前記極性単量体の含量は前記共重合樹脂の総重量を基準に18重量%以下であり、
前記絶縁層は、ベース樹脂としてポリオレフィン樹脂、及び前記樹脂内に分散され、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ及びグラファイトからなる群から選択される1種以上の無機粒子を含む絶縁組成物から形成され、
前記無機粒子の含量は、前記絶縁層のベース樹脂100重量部を基準に、0.01~10重量部であり、
前記絶縁組成物及び前記半導電組成物は架橋剤をさらに含み、前記架橋剤の含量は前記ベース樹脂100重量部を基準に0.1~5重量部であり、
下記の式2によって定義される前記絶縁層の電界集中係数(Field Enhancement Factor;FEF)が100~140%であることを特徴とする、直流電力ケーブル。
【数2】
前記数学式2で、
前記試片は、厚さが120μmであり、前記絶縁層を形成する絶縁組成物から形成された絶縁フィルム、及び前記絶縁フィルムの上面及び下面にそれぞれ接着され、それぞれの厚さが50μmであり、前記半導電組成物から形成された半導電フィルムを含む試片であり、
前記試片に印加された電界は前記絶縁フィルムに1時間の間に印加された50kV/mmの直流電界であり、
前記試片において最大に増加した電界は前記絶縁フィルムに直流電界が印加される1時間の間に増加した電界値の中で最大値である。
【請求項2】
前記極性単量体は、アクリレート単量体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の直流電力ケーブル。
【請求項3】
前記無機粒子は酸化マグネシウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の直流電力ケーブル。
【請求項4】
前記無機粒子は、ビニルシラン、ステアリン酸、オレイン酸及びアミノポリシロキサンからなる群から選択される1種以上の表面改質剤によって表面改質されることを特徴とする、請求項1に記載の直流電力ケーブル。
【請求項5】
前記共重合樹脂は、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンメチルアクリレート(EMA)、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレンエチルメタクリレート(EEMA)、エチレン(イソ)プロピルアクリレート(EPA)、エチレン(イソ)プロピルメタクリレート(EPMA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)及びエチレンブチルメタクリレート(EBMA)からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の直流電力ケーブル。
【請求項6】
前記伝導性粒子の含量は、前記ベース樹脂100重量部を基準に、35~70重量部であることを特徴とする、請求項5に記載の直流電力ケーブル。
【請求項7】
前記架橋剤は、過酸化物系架橋剤であることを特徴とする、請求項1に記載の直流電力ケーブル。
【請求項8】
前記過酸化物系架橋剤は、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン及びジ-t-ブチルペルオキシドからなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項7に記載の直流電力ケーブル。
【請求項9】
前記絶縁層のベース樹脂としてポリオレフィン樹脂はポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の直流電力ケーブル。
【請求項10】
前記絶縁組成物は、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン((2,4-diphenyl-4-methyl-1-pentene)、1,4-ヒドロキノン(1,4-hydroquinone)及びヒドロキノン誘導体からなる群から選択される1種以上を含むスコーチ抑制剤を含み、前記スコーチ抑制剤の含量は、前記ベース樹脂100重量部を基準に、0.1~1.0重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の電力ケーブル。
【請求項11】
前記スコーチ抑制剤は、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンを含むことを特徴とする、請求項10に記載の電力ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流電力ケーブルに関するものである。具体的に、本発明は空間電荷(space charge)の蓄積による直流絶縁耐力の低下及びインパルス破壊強度の低下を同時に防止することができ、絶縁層などの押出性を低下せずに製造コストを節減することができる直流電力ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、大容量及び長距離の送電が要求される大型電力系統では、電力損失の減少、建設用地の問題、送電容量の増大などの観点で送電電圧を高める高圧送電が必須だと言える。
【0003】
送電方式は、大別して交流送電方式と直流送電方式に区分されることができる。このうち、直流送電方式は直流で電気エネルギーを伝送することを言う。具体的に、前記直流送電方式は、まず送電側の交流電力を適当な電圧に変え、順変換装置によって直流に変換した後、送電線路を介して受電側に伝送すれば、受電側では逆変換装置によって直流電力を再び交流電力に変換する方式である。
【0004】
特に、前記直流伝送方式は、大容量の電力を長距離輸送するのに有利であり、非同期電力系統の相互連携が可能であるという利点があるだけではなく、長距離送電において直流が交流より電力損失が少なくて安定度が高いので多く用いられている実情である。
【0005】
ところが、高圧直流送電ケーブルを用いて送電が進行される場合、ケーブル絶縁体の温度が上昇するときあるいは負極性インパルス又は極性反転がなされた場合、前記絶縁体の絶縁特性が著しく低下する現象を示す問題点がある。これは、絶縁体内に一端の電荷が捕獲されるか放電されることなしに寿命の長い空間電荷(space charge)が蓄積されるからであると知られている。
【0006】
上述した空間電荷は高圧直流送電ケーブル絶縁体内の電場を歪ませて最初設計の絶縁破壊電圧より低い電圧で絶縁破壊を引き起こすことがある。
【0007】
前記空間電荷蓄積によるケーブルの直流絶縁耐力及び破壊電圧低下の問題を解決するために、ケーブルの絶縁層を構成する絶縁基材樹脂に珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどの無機粒子を添加する技術が用いられている。
【0008】
しかし、前記空間電荷蓄積は、ケーブルの導体から前記絶縁層内に注入される電荷、前記絶縁層の架橋によって不可避に生成される架橋副産物、前記絶縁層と接触する半導電層の架橋によって不可避に生成されて前記絶縁層内に移行する架橋副産物、前記半導電層を形成するベース樹脂に含まれ、前記絶縁層内に移行する極性単量体などの多様な原因によって発生するから、単純に前記絶縁層に前記無機粒子を添加することによって前記空間電荷蓄積及びこれによる直流絶縁耐力及び破壊電圧の低下の問題を充分に解決することはできなかった。
【0009】
また、前記問題を解決するために、前記絶縁層に添加される無機粒子の含量を増加させる場合、前記無機粒子は不純物として作用して絶縁層の押出性を低下させるだけでなく、電力ケーブルに要求されるまた一つの重要特性であるインパルス強度を低下させる問題がある。このような問題のため、直流電力ケーブルにおいて絶縁層の厚さはケーブルの絶縁破壊電圧よりはインパルス強度によって決定され、これによりケーブルの外径が増加して製造及び経済的な観点で問題となっている。それだけでなく、直流電力ケーブルの絶縁層の厚さはケーブルの絶縁破壊電圧及びインパルス強度によって決定され、これによりケーブルの外径が増加して製造及び経済的観点で問題となっている。
【0010】
したがって、空間電荷(space charge)蓄積による直流絶縁耐力の低下及びインパルス破壊強度の低下を同時に防止することができ、絶縁層などの押出性を低下せずに製造コストを節減することができる直流電力ケーブルが切実に要求されている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、空間電荷(space charge)の蓄積による直流絶縁耐力の低下及びインパルス破壊強度の低下を同時に防止することができる直流電力ケーブルを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、絶縁層などの押出性を低下せずに製造コストを節減することができる直流電力ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は、直流電力ケーブであって、導体と、前記導体を取り囲む内部半導電層と、前記内部半導電層を取り囲む絶縁層と、前記絶縁層を取り囲む外部半導電層と、前記外部半導電層を取り囲む外被とを含み、前記内部半導電層又は前記外部半導電層は、ベース樹脂としてオレフィンと極性単量体の共重合樹脂及び前記樹脂内に分散された伝導性粒子を含む半導電組成物から形成され、前記極性単量体の含量は前記共重合樹脂の総重量を基準に18重量%以下であり、前記絶縁層は、ベース樹脂としてポリオレフィン樹脂、及び前記樹脂内に分散され、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ及びグラファイトからなる群から選択される1種以上の無機粒子を含む絶縁組成物から形成され、前記無機粒子の含量は、前記絶縁層のベース樹脂100重量部を基準に、0.01~10重量部であり、下記の式2によって定義される前記絶縁層の電界集中係数(Field Enhancement Factor;FEF)が100~140%であることを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【数2】
前記数学式2で、
前記試片は、厚さが120μmであり、前記絶縁層を形成する絶縁組成物から形成された絶縁フィルム、及び前記絶縁フィルムの上面及び下面にそれぞれ接着され、それぞれの厚さが50μmであり、前記半導電組成物から形成された半導電フィルムを含む試片であり、
前記試片に印加された電界は前記絶縁フィルムに1時間の間に印加された50kV/mmの直流電界であり、
前記試片において最大に増加した電界は前記絶縁フィルムに直流電界が印加される1時間の間に増加した電界値の中で最大値である。
【0014】
前記絶縁組成物又は半導電組成物は架橋剤をさらに含み、
前記架橋剤の含量は、前記ベース樹脂100重量部を基準に、0.1~5重量部であることを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【0015】
また、前記極性単量体は、アクリレート単量体を含むことを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【0016】
そして、前記無機粒子は酸化マグネシウムを含むことを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【0017】
また、前記無機粒子は、ビニルシラン、ステアリン酸、オレイン酸及びアミノポリシロキサンからなる群から選択される1種以上の表面改質剤によって表面改質されることを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【0018】
一方、前記共重合樹脂は、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンメチルアクリレート(EMA)、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレンエチルメタクリレート(EEMA)、エチレン(イソ)プロピルアクリレート(EPA)、エチレン(イソ)プロピルメタクリレート(EPMA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)及びエチレンブチルメタクリレート(EBMA)からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【0019】
ここで、前記伝導性粒子の含量は、前記ベース樹脂100重量部を基準に、35~70重量部であることを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【0020】
一方、前記架橋剤は、過酸化物系架橋剤であることを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【0021】
ここで、前記過酸化物系架橋剤は、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン及びジ-t-ブチルペルオキシドからなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【0022】
そして、前記絶縁層のベース樹脂としてポリオレフィン樹脂はポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする、直流電力ケーブルを提供する。
【0023】
一方、前記絶縁組成物は、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン((2,4-diphenyl-4-methyl-1-pentene)、1,4-ヒドロキノン(1,4-hydroquinone)及びヒドロキノン誘導体からなる群から選択される1種以上を含むスコーチ抑制剤を含み、前記スコーチ抑制剤の含量は、前記ベース樹脂100重量部を基準に、0.1~1.0重量部であることを特徴とする、電力ケーブルを提供する。
【0024】
ここで、前記スコーチ抑制剤は、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンを含むことを特徴とする、電力ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明による直流電力ケーブルは、半導電層のベース樹脂及び架橋度を精密に制御するとともに絶縁層の内部に精密に制御された含量の無機粒子を添加することによって絶縁層内部の空間電荷の蓄積及びこれによる直流絶縁耐力の低下及びインパルス破壊強度の低下を同時に防止することができる優れた効果を示す。
【0026】
また、本発明は、絶縁層に含まれて空間電荷の蓄積を抑制する無機粒子の添加量を減縮させることにより前記無機粒子による絶縁層などの押出性低下を抑制し、かつ前記絶縁層の厚さ増加を抑制してケーブルの製造コストを節減させることができる優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による電力ケーブルの実施例の断面構造を概略的に示す図である。
【
図2】本発明による電力ケーブルの他の実施例の断面構造を概略的に示す図である。
【
図3】実施例による絶縁試片の温度による体積抵抗率を示すグラフである。
【
図4】実施例による絶縁+半導電試片に対するFT-IR評価結果を示す図である。
【
図5】実施例による絶縁+半導電試片に対するPEA評価結果を示す図である。
【
図6】PEA及びFT-IR評価用絶縁+半導電試片の製造例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。しかし、本発明はここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具体化されることもできる。むしろ、ここで紹介する実施例は開示する内容が徹底的で完全になることができるように、かつ当業者に本発明の思想が充分に伝達されるようにするために提供するものである。明細書全般にわたって同じ参照番号は同じ構成要素を示す。
【0029】
図1は本発明による直流電力ケーブルの実施例の断面構造を概略的に示す図である。
図1に示したように、本発明による直流電力ケーブル100は、中心導体10、前記導体10を取り囲む内部半導電層12、前記内部半導電層12を取り囲む絶縁層14、前記絶縁層14を取り囲む外部半導電層16、前記外部半導電層16を取り囲み、金属シース又は中性線からなり、電気遮蔽及び短絡電流の帰路のための遮蔽層18、前記遮蔽層18を取り囲む外被20などを含むことができる。
【0030】
図2は本発明による直流電力ケーブルの他の実施例の断面構造を概略的に示すもので、海底ケーブルの断面構造を概略的に示す図である。
【0031】
図2に示したように、本発明による直流電力ケーブル200において、導体10、内部半導電層12、絶縁層14及び外部半導電層16は前述した
図1の実施例と類似しているので、その繰り返し説明は省略する。
【0032】
前記外部半導電層16の外部には、外部の水のような異物が浸入すれば絶縁層14の絶縁性能が低下するので、これを防止するために鉛(lead)からなる金属シース(metal sheath)、いわゆる‘鉛被シース’30を備える。
【0033】
さらに、前記鉛被シース30の外部に、ポリエチレン(polyethylene)などの樹脂から構成されたシース32と水が直接接触しないように、ベッディング層34を備える。前記ベッディング層34上には鉄線外装40を備えることができる。前記鉄線外装40は前記ケーブルの外側に備えられ、海底の外部環境からケーブルを保護するように機械的強度を高める役割をすることになる。
【0034】
前記鉄線外装40の外側、すなわちケーブルの外側にはケーブルの外装としてジャケット42を備える。ジャケット42はケーブルの外側に備えられ、ケーブル200の内部構成を保護する役割をする。特に、海底ケーブルの場合、ジャケット42は海水などの海底環境に耐えることができる耐候性及び機械的強度に優れた性質を有することになる。例えば、前記ジャケット42はポリプロピレンヤーン(polypropylene yarn)などからなることができる。
【0035】
前記中心導体10は、銅、アルミニウム、好ましくは銅からなる単線又は複数の導線が連合した撚線によってなることができ、前記中心導体10の直径、撚線を構成する素線の直径などを含む規格はこれを含む直流電力ケーブルの送電圧、用途などによって違い、通常の技術者によって適切に選択できる。例えば、本発明による直流電力ケーブルが海底ケーブルのように敷設性、可撓性などが要求される用途に使われる場合、前記中心導体10は単線よりは、柔軟性に優れた撚線からなることが好ましい。
【0036】
前記内部半導電層12は前記中心導体10と前記絶縁層14との間に配置され、前記中心導体10と前記絶縁層14間の浮き上がりを引き起こす空気層をなくし、局部的な電界集中を緩和させるなどの機能を果たす。一方、前記外部半導電層16は、前記絶縁層14に均等な電界がかかるようにする機能、局部的な電界集中の緩和及び外部からケーブル絶縁層を保護する機能を果たす。
【0037】
通常、前記内部半導電層12及び外部半導電層16はベース樹脂にカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレート、グラファイトなどの伝導性粒子が分散されており、架橋剤、酸化防止剤、スコーチ抑制剤などがさらに添加された半導電組成物の押出しによって形成される。
【0038】
ここで、前記ベース樹脂は、前記半導電層12、16と前記絶縁層14間の層間接着力のために、前記絶縁層14を形成する絶縁組成物のベース樹脂と類似した系のオレフィン樹脂を使うことが好ましく、より好ましくは前記伝導性粒子との相溶性を考慮して、オレフィンと極性単量体、例えばエチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンメチルアクリレート(EMA)、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレンエチルメタクリレート(EEMA)、エチレン(イソ)プロピルアクリレート(EPA)、エチレン(イソ)プロピルメタクリレート(EPMA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)、エチレンブチルメタクリレート(EBMA)などを使うことが好ましい。
【0039】
また、前記架橋剤は、前記半導電層12、16に含まれたベース樹脂の架橋方式によってシラン系架橋剤、又はジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルペルオキシドなどの有機過酸化物系架橋剤であってもよい。
【0040】
前記内部半導電層12及び前記外部半導電層16を形成する半導電組成物に含まれるベース樹脂として、オレフィンと極性単量体の共重合樹脂及び/又は極性単量体が前記半導電層12と前記絶縁層14間の界面を通して前記絶縁層14の内部に移動することによって前記絶縁層14の空間電荷の蓄積をもっと加重させ、また前記半導電層12、16の架橋時に生成される架橋副産物が前記半導電層12と前記絶縁層14間の界面を通して前記絶縁層14の内部に移動し、これによって前記絶縁層14の内部に異種電荷(heterocharge)を蓄積させて電界の歪みを加重させることによって前記絶縁層14の絶縁破壊電圧を低下させる問題を引き起こすことがある。
【0041】
具体的に、本発明による直流電力ケーブルにおいて、前記半導電層12を形成する半導電組成物は、その総重量を基準に、オレフィンと極性単量体の共重合樹脂の含量が約60~70重量%、前記共重合樹脂の総重量を基準に、前記極性単量体の含量が1~18重量%、好ましくは1~12重量%に精密に調節されることができる。
【0042】
ここで、前記極性単量体の含量が18重量%を超える場合、前記絶縁層14の空間電荷の蓄積が大きく加速化する反面、前記極性単量体の含量が1重量%未満の場合、前記ベース樹脂と前記伝導性粒子の相溶性が低下して前記半導電層12、16の押出性が低下し、半導電特性が具現されないこともある。
【0043】
また、本発明による直流電力ケーブルにおいて、前記半導電層12を形成する半導電組成物は、そのベース樹脂100重量部を基準に、前記架橋剤の含量が0.1~5重量部、好ましくは0.1~1.5重量部に精密に調節されることができる。
【0044】
ここで、前記架橋剤の含量が5重量部を超える場合、前記半導電組成物に含まれたベース樹脂の架橋時に必須に生成される架橋副産物の含量が余りにも多く、このような架橋副産物が前記半導電層12、16と前記絶縁層14間の界面を通して前記絶縁層14の内部に移動して異種電荷(heterocharge)を蓄積して電界の歪みを加重させて前記絶縁層14の絶縁破壊電圧を低下させる問題を引き起こすことができる反面、0.1重量部未満の場合、架橋度が十分でなくて前記半導電層12、16の機械的特性、耐熱性などが不十分になることがある。
【0045】
そして、本発明による直流電力ケーブルにおいて、前記内部及び外部半導電層12、14を形成する半導電組成物は、そのベース樹脂100重量部を基準に、カーボンブラックなどの伝導性粒子を35~70重量部含むことができる。前記伝導性粒子の含量が35重量部未満の場合、十分な半導電特性が具現されることができない反面、70重量部を超える場合、前記内部及び外部半導電層12、14の押出性が低下して表面特性が低下するかケーブルの生産性が低下する問題がある。
【0046】
前記絶縁層14は、例えばベース樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂であってもよく、好ましくはポリエチレン樹脂と無機粒子を含む絶縁組成物の押出しによって形成されることができる。
【0047】
前記ポリエチレン樹脂は、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、又はこれらの組合せであってもよい。また、前記ポリエチレン樹脂は、単独重合体、エチレンとプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィンとランダム又はブロック共重合体、又はこれらの組合せであってもよい。
【0048】
前記無機粒子は、ナノサイズの珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ、グラファイトなどを使うことができる。ただ、前記絶縁層14のインパルス強度の側面で、前記無機粒子として酸化マグネシウムが好ましい。前記酸化マグネシウムは天然鉱石から得られるが、海水中のマグネシウム塩を用いた人工合成原料からも製造することができ、高純度に品質又は物性が安定した材料として供給することができるという利点もある。
【0049】
前記酸化マグネシウムは基本的に面心立方構造の結晶構造を有するが、合成方法によって多様な形態、純度、結晶化度、物性などを有することができる。具体的に、前記酸化マグネシウムは、立方体状(cubic)、テラス状(terrace)、棒状(rod)、多孔状(porous)、球状(spherical)に区分され、それぞれの特異な物性によって多様に用いることができ、基材樹脂と無機粒子間の境界にポテンシャル井戸(potential well)を形成することにより、電荷移動及び空間電荷蓄積を抑制する効果を発揮する。
【0050】
また、前記グラファイトを含むナノ炭素粒子又はカーボンナノチューブも多様な形態を有することができ、絶縁性能を維持しながら超高圧直流送電ケーブル内で発生する空間電荷を除去することができ、空間電荷を除去することにより、高圧直流送電ケーブ絶縁体において最初に設計された絶縁破壊電圧より低い電圧で絶縁破壊を引き起こす絶縁電圧下降現象を最小化することができる。特に、部分的に炭化したグラファイトナノファイバーは残っているPAN構造によって電気的に連結されていないので、絶縁性を有しながらも、一部のグラファイト構造によって外部電場によって充分に分極されて空間電荷を除去することができるトラップサイトの役割をすることができる。
【0051】
このような酸化マグネシウムを含めた無機粒子は、ケーブルに電界を印加するときに基材樹脂と無機粒子間の境界にポテンシャル井戸(potential well)を形成することにより、電荷の移動及び空間電荷蓄積を抑制する効果を発揮する。
【0052】
前記無機粒子の誘電率は一般的に前記ベース樹脂の誘電率より高い。例えば、前記無機ナノ粒子として酸化マグネシウムの誘電率は約10である反面、前記ベース樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)の誘電率は約2.2~2.3である。したがって、前記ベース樹脂に前記無機ナノ粒子を添加した前記絶縁組成物の誘電率は前記ベース樹脂の誘電率より高くなければならない。
【0053】
しかし、前記無機粒子のサイズがナノスケール、例えば1nm~100μm、好ましくは1~100nmの場合には、マイクロスケールの無機粒子を添加した場合とは違い、むしろ前記絶縁組成物の誘電率が前記ベース樹脂の誘電率より低くなる現象が発生し、またインパルス絶縁破壊電圧も上昇することを実験的に確認した。
【0054】
前記無機粒子のサイズがナノスケールの場合、前記絶縁組成物の誘電率が前記ベース樹脂の誘電率より低くなる現状の理由は確認することができないが、いわゆるナノ効果(nano effect)による結果であると予測され、また前記無機粒子のサイズがナノスケールに調節されることにより、前記ベース樹脂内部の界面が安定化することによるものであると予測される。
【0055】
すなわち、前記無機粒子のサイズがナノスケールに調節されることにより、これを含む前記絶縁組成物の誘電率が低くなり、前記絶縁組成物から形成される絶縁層のインパルス絶縁破壊電圧が上昇し、前記絶縁層を含むケーブルの寿命が延ばされる効果を誘発することができる。
【0056】
よって、本発明による絶縁組成物は、下記の式1によって定義される誘電率減少率(%)が1%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上である。
【数1】
前記数学式1で、aはベース樹脂の誘電率、bは絶縁組成物の誘電率である。
【0057】
前記無機ナノ粒子は、例えばテラス状(terrace)、立方体状(cubic)、棒状(rod)、エッジレス状(edge-less)などの形状を有することができ、前記ベース樹脂内部の界面安定化の観点で立方体状(cubic)が好ましい。
【0058】
好ましくは、前記酸化マグネシウムを含めた無機粒子は、ビニルシラン、ステアリン酸、オレイン酸、アミノポリシロキサンなどで表面改質することができる。一般に、酸化マグネシウムなどの無機粒子は高表面エネルギーを有する親水性である反面、ポリエチレンなどの基材樹脂は低表面エネルギーを有する疎水性であるため、酸化マグネシウムなどの無機粒子がポリエチレンなどの基材樹脂に対する分散性が良くなく、電気的特性にも悪影響を及ぼすことがある。よって、このような問題点を解決するために、酸化マグネシウムなどの無機粒子を表面改質することが好ましい。
【0059】
前記酸化マグネシウムなどの無機粒子を表面改質しない場合、無機粒子とポリエチレンなどの基材樹脂との間にギャップ(gap)が生じて機械的物性を低下させるのはもちろんのこと、絶縁破壊強度などの電気絶縁特性の低下を引き起こすことができる。一方、酸化マグネシウムなどの無機粒子はビニルシランなどで表面改質されることにより、ポリエチレンなどの基材樹脂に対してもっと優れた分散性を示し、改善した電気的特性を示す。ビニルシランなどの加水分解基が縮合反応によって酸化マグネシウムなどの表面に化学結合することにより、表面改質された無機粒子が形成される。よって、前記ビニルシランなどで表面改質された無機粒子のシラン基がポリエチレンなどの基材樹脂と反応して優れた分散性を確保することができるようになる。
【0060】
また、前記酸化マグネシウムなどの無機粒子は単結晶又は多結晶の結晶形態のいずれも有することができ、基材樹脂100重量部を基準に、0.01~10重量部の含量で絶縁組成物に含まれることができる。前記無機粒子の含量が0.01重量部未満の場合、空間電荷蓄積低減の効果が十分ではないことがあり、10重量部を超える場合、インパルス強度、機械的特性、連続押出性などが低下することがある。
【0061】
また、前記絶縁層14を形成する絶縁組成物は架橋剤を含むことにより、前記絶縁層14は、押出しの際又は押出しの後、別途の架橋工程によって架橋ポリオレフィン(XLPO)、好ましくは架橋ポリエチレン(XLPE)からなることができる。
【0062】
前記絶縁組成物に含まれる架橋剤は前記半導電組成物に含まれる架橋剤と同一であってもよく、例えば前記ポリオレフィンの架橋方式によって、シラン系架橋剤、又はジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルペルオキシドなどの有機過酸化物系架橋剤であってもよい。ここで、前記絶縁組成物に含まれる架橋剤は、前記ベース樹脂100重量部を基準に、0.1~5重量部含まれることができる。
【0063】
また、前記絶縁組成物は、酸化防止剤、耐熱剤、押出性向上剤、イオンスカベンジャー、スコーチ抑制剤、架橋助剤などのその他の添加剤をさらに含むことができる。
【0064】
特に、前記酸化防止剤として、アミン系酸化防止剤;ジアルキルエステル系、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネートのようなチオエステル系酸化防止剤;テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレンジフォスファイト、2,2’-チオジエチルビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリトリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、4,4’-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート])のようなフェニル系酸化防止剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される酸化防止剤を使うことができる。ここで、前記酸化防止剤は、前記基材樹脂100重量部を基準に、0.1~2重量部を使うことができる。
【0065】
そして、前記耐熱剤として、ジフェニルアミンとアセトンの反応物、ジンク2-メルカプトベンズイミダゾレート、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-シオプロピオネート、2,2’-チオジエチルレンビス-[3-(3,5-ジテルト、ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、β,β’-チオジプロピオン酸のジステアリル-エステル及びこれらの混合物からなる群から選択される耐熱剤を使うことができる。ここで、前記耐熱剤は、前記基材樹脂100重量部を基準に、0.1~2重量部を使うことができる。
【0066】
また、前記イオンスカベンジャーとして、アリール系シランなどを使うことができる。ここで、前記イオンスカベンジャーは、前記基材樹脂100重量部を基準に、0.1~2重量部を使うことができ、空間電荷蓄積低減の効果を促進することができる。
【0067】
そして、前記スコーチ抑制剤は前記架橋剤の架橋効率を増加させ、スコーチ耐性を向上させる機能をし、例えば2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン((2,4-diphenyl-4-methyl-1-pentene)、1,4-ヒドロキノン(1,4-hydroquinone)及びヒドロキノン誘導体からなる群から選択される1種以上を含むが、これに限られるものではなく、具体的には2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンを使うことができる。前記スコーチ抑制剤の含量は、前記ベース樹脂100重量部を基準に、0.1~1.0重量部、好ましくは0.2~0.8重量部である。前記スコーチ抑制剤の含量が0.1重量部未満の場合には架橋促進効果が低く、1.0重量部を超える場合には架橋効率の減少をもたらすことになる。
【0068】
本発明者らは、本発明による直流電力ケーブルにおいて前記絶縁層14内の空間電荷蓄積によって前記絶縁層14に印加される電界が歪んで直流絶縁耐力が低下することができることを前提として、下記の式2によって定義される前記絶縁層14の電界集中係数(Field Enhancement Factor;FEF)が100~140%の場合、前記ケーブルの設計された直流絶縁耐力及び絶縁破壊電圧が同等な水準に維持されることができることを実験的に確認することによって本発明を完成した。
【数2】
前記式2で、前記試片は、厚さが120μmであり、前記絶縁層を形成する絶縁組成物から形成された絶縁フィルム及び前記絶縁フィルムの上面及び下面にそれぞれ接着され、それぞれの厚さが50μmであり、前記半導電組成物から形成された半導電フィルムを含む試片であり、
前記試片に印加された電界は前記絶縁フィルムに1時間の間に印加された50kV/mmの直流電界であり、
前記試片において最大に増加した電界は前記絶縁フィルムに直流電界が印加される1時間の間に増加した電界値の最大値である。
【0069】
すなわち、本発明者らは、前記絶縁層14の電界集中係数(FEF)が140%を超える場合、前記絶縁層14内の空間電荷蓄積が過度になって電界が大きく歪み、結果的に直流絶縁耐力及び絶縁破壊電圧が急激に低下することを実験的に確認することによって本発明を完成した。
【0070】
また、前述した絶縁層14内に含まれる無機粒子の含量及び前記半導電層12、16に含まれる極性単量体及び架橋剤の含量を精密に調節することにより、前記絶縁層14の電界集中係数(FEF)を精密に制御することができる。
【0071】
前記ジャケット層20は、ポリエチレン、ポリビニルクロリド、ポリウレタンなどを含むことができ、例えばポリエチレン樹脂からなることが好ましく、ケーブルの最外側に配置される層であるので、機械的強度を考慮すると、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂からなることがより好ましい。また、前記ジャケット層20は、前記直流電力ケーブルの色相を具現するために、カーボンブラックなどの添加剤を少量、例えば2~3重量%含むことができ、例えば0.1~8mmの厚さを有することができる。
【0072】
[実施例]
1.製造例
1)PEA及びFT-IR評価用絶縁+半導電試片の製造例
PEA(pulsed electro acoustic)評価のために、以下の図に示したような絶縁薄膜フィルム及び絶縁+半導電薄膜フィルムを用いて試片をそれぞれ製造した。
【0073】
【0074】
前記絶縁薄膜フィルムは、ポリエチレン樹脂、無機粒子としてビニルシランで表面処理された酸化マグネシウム、過酸化物架橋剤、その他の添加剤を含む絶縁組成物を120℃で5分間加熱圧縮して薄膜フィルムを製造し、180℃で8分間架橋した後、120℃に冷却し、さらに室温に冷却した。製造された絶縁薄膜フィルムの厚さは約120μmであった。
【0075】
一方、絶縁+半導電薄膜フィルムは、ポリエチレン樹脂、無機粒子としてビニルシランで表面処理された酸化マグネシウム、過酸化物架橋剤、その他の添加剤を含む絶縁組成物を120℃で5分間加熱圧縮して絶縁フィルムを製造し、ブチルアクリレート(BA)を含む樹脂、架橋剤、その他の添加剤を含む半導電組成物を120℃で5分間加熱圧縮して半導電フィルムを製造し、前記半導電フィルムを前記絶縁フィルムの前面及び後面に付着し、120℃で5分間さらに溶融させて互いに熱的に結合させた後、180℃で8分間架橋した後、120℃に冷却し、さらに室温に冷却した。製造された絶縁フィルム及び半導電フィルムの厚さはそれぞれ約120μm及び約50μmであった。
【0076】
ここで、前記半導電組成物は、樹脂の総重量を基準に、ブチルアクリレート(BA)の含量が17重量%である半導電組成物(SC-a)から形成された半導電フィルム、及びブチルアクリレート(BA)の含量が3重量%である半導電組成物(SC-b)からなる半導電フィルムがそれぞれ適用された絶縁+半導電薄膜フィルムを製造した。
【0077】
また、FT-IR評価のためには、もっと厚いフィルムを製造し、絶縁フィルム又は絶縁薄膜フィルムの厚さは20mm、半導電フィルムの厚さは1mmに製造した。そして絶縁+半導電薄膜フィルムは、半導電フィルムが絶縁フィルムの一面にのみ結合され、1mm厚さのミクロトーム(microtome)で断面を切断した。そして、前記絶縁薄膜フィルム、前記絶縁+半導電(SC-a)薄膜フィルム及び前記絶縁+半導電(SC-b)薄膜フィルムのそれぞれを真空及び70℃で5日間脱ガス化して架橋副産物を除去したフィルムも追加的に製造した。
【0078】
2)インパルス破壊試験用モデルケーブルの製造例
インパルス破壊試験のためのモデルケーブルの製造のために、下記の表1の絶縁組成物A及びBをそれぞれ製造した。下記の表1に記載した含量の単位は重量部である。
【表1】
【0079】
-基材樹脂:低密度ポリエチレン樹脂(LG化学、LE2030;密度:085~0.95kg/m
2;溶融指数(MI):1~2)
-無機粒子:ビニルシランで表面改質された酸化マグネシウム(平均粒径:200nm)
-架橋剤:過酸化ジクミル
-酸化防止剤:テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレンジフォスフェート
また、前記絶縁組成物A又はBからなる絶縁層を備え、前記半導電組成物(SC-a)又は前記半導電組成物(SC-b)からなる内部半導電層と外部半導電層を備え、絶縁厚さが4mm、導体断面積が400sqであるモデルケーブルA~Dをそれぞれ製造した。前記モデルケーブルA~Dの内部半導電層、絶縁層及び外部半導電層の具体的な構成は下記の表2に記載した通りである。
【表2】
【0080】
2.物性評価
1)絶縁+半導電試片に対するFT-IR評価
絶縁フィルムと半導電フィルム間のアクリレート及び架橋副産物の移行可否を判断するために、4cm
-1の解像度で64スキャンにかけて4000~650cm
-1のスペクトルデータ(spectral data)を収集した。FT-IR評価は、マイクロスコープ及びMCT検出器を備えたVarian 7000e装備で遂行した。評価結果は
図4に示した通りである。
【0081】
図4に示したように、脱ガス化によって架橋副産物が除去されていないフィルムとして、絶縁薄膜フィルム(a)、絶縁+半導電(SC-a)薄膜フィルム(c)及び絶縁+半導電(SC-b)薄膜フィルム(e)は架橋副産物の一つであるアセトフェノンを示す1694.3cm
-1のピークが観察された反面、脱ガス化によって架橋副産物が除去されたフィルムとして、絶縁薄膜フィルム(b)、絶縁+半導電(SC-a)薄膜フィルム(d)及び絶縁+半導電(SC-b)薄膜フィルム(f)は架橋副産物の一つであるアセトフェノンを示す1694.3cm
-1のピークが観察されなかった。
【0082】
また、半導電フィルムが結合されていない絶縁薄膜フィルム(a、b)はアクリレート樹脂を示す1735.6cm-1のピークが観察されない反面、半導電フィルムが結合された絶縁+半導電薄膜フィルム(c、d、e、f)はアクリレート樹脂を示す1735.6cm-1のピークが観察された。特に、半導電フィルムに結合された、アクリレート含量の相対的に低い絶縁+半導電(SC-b)薄膜フィルムに比べ、半導電フィルムに結合された、アクリレート含量の相対的に高い絶縁+半導電(SC-a)薄膜フィルムでアクリレート樹脂を示す1735.6cm-1のピークが大きいことから、半導電フィルムから絶縁フィルムへのアクリレート樹脂の移行が大きいことが確認された。
【0083】
2)絶縁+半導電試片に対する異種電荷と空間電荷の挙動及び電界集中係数の評価
前記PEA評価用試片製造例によって製造された絶縁薄膜フィルムからなる試片(a)、絶縁+半導電(SC-a)薄膜フィルムからなる試片(b)及び絶縁+半導電(SC-b)薄膜フィルムからなる試片(c)に対してPEA(pulsed electro acoustic)評価を遂行した。具体的に、前記フィルムの両面に電極を形成し、室温で50kV/mmのDC電界を1時間印加した後、電界印加を中断し、1時間の間に短絡させる。DC電界を印加した場合と短絡させた場合、LabViewプログラムを用いて電荷密度を測定した。測定結果は
図5に示した通りである。
【0084】
また、時間別電荷密度を示す
図5のグラフから電界(Electric field)を示す積分値を計算し、積分値の中で最大値を選別して前記数学式2の電界集中係数(FEF)を計算した。試片(a)、(b)及び(c)に対する時間別に増加した電界測定結果及び電界集中係数(FEF)の計算結果は下記の表1に示した通りである。下記の表3に記載した数値は特別に表示された場合を除き、電界値を示すkV/mmである。
【表3】
【0085】
図5に示したように、前記試片(a)はこれに含まれた無機粒子が電極から前記フィルムの内部に移動する電荷をトラップ(trap)し、また半導電フィルムと結合されていないから、前記半導電フィルムの架橋時に発生した架橋副産物が絶縁薄膜フィルム側に移動しなくて異種電荷(heterocharge)が形成されなく、半導電フィルムのブチルアクリレート(BA)が絶縁薄膜フィルム側に移動しないので、DC電界が印加された(a)及びDC電界印加が中断された(b)で空間電荷の蓄積が少ないことが確認され、これによって電界集中係数(FEF)も低いことが確認された。
【0086】
一方、試片(b)及び試片(c)は前記半導電薄膜フィルムの架橋副産物又はブチルアクリレート(BA)が前記絶縁薄膜フィルム側に移動して絶縁薄膜フィルムと半導電薄膜フィルム間の界面付近に異種電荷が形成され、絶縁薄膜フィルムと半導電薄膜フィルム間の界面付近に空間電荷が相対的に多く蓄積され、これによって電界集中係数(FEF)も相対的に高いことが確認され、特にブチルアクリレート(BA)の含量が高い試片(b)はブチルアクリレート(BA)の含量が相対的に低い試片(c)に比べ、空間電荷が相対的に多く蓄積されたことが確認され、これによって電界集中係数(FEF)も相対的に大きいことが確認された。
【0087】
3)インパルス破壊電圧及び温度による体積抵抗率変化の評価
前記モデルケーブルA~Dのインパルス破壊電圧を測定するために、インパルス電圧発生器を用いて300kVのインパルス電圧を印加してインパルス破壊電圧を測定した。具体的に、初期印加電圧300kVから20kVずつ昇圧させながら試片に3回印加し、破壊(breakdown)が発生するときの電圧を測定した。測定結果(破壊確率0%)は下記の表4に示した通りである。
【0088】
そして、前記モデルケーブルAとモデルケーブルCの絶縁層から試片を採取し、25℃、50℃、70℃及び90℃でそれぞれ体積抵抗率(resistivity)を測定した。測定結果は
図3に示した通りである。
【表4】
【0089】
前記表4に示したように、無機粒子を含むモデルケーブルA及びモデルケーブルBの場合、直流電場の下で前記無機粒子が分極化し、分極化した無機粒子が空間電荷をトラップ(trap)することができるだけでなく、前記無機粒子は前記絶縁層に均一に分散されているので、空間電荷蓄積及びこれによる局所的な電界歪みを防止することにより、高いインパルス破壊電圧が具現された。一方、無機粒子を含んでいないモデルケーブルC及びモデルケーブルDの場合、絶縁体の内部に空間電荷蓄積による電界歪みが誘発され、結果的にインパルス破壊電圧が大きく低下することが確認された。
【0090】
それだけでなく、
図3のように絶縁層に無機粒子を含むモデルケーブルAは、空間電荷の蓄積が効果的に抑制されることにより、温度が増加するにつれて体積抵抗率が最大限に維持されることから、温度に対する依存度が低いことが確認された反面、無機粒子を含んでいないモデルケーブルCは、空間電荷の蓄積によって70及び90℃で体積抵抗率が急激に減少することから、温度に対する依存度が高いことが確認された。
【0091】
本明細書は本発明の好適な実施例を参照して説明したが、当該技術分野の当業者は以下で記述する特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更して実施することができるであろう。したがって、変形実施が基本的に本発明の特許請求範囲の構成要素を含むならばいずれも本発明の技術的範疇に含まれると見なさなければならない。