(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037277
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】レーザ印字方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/26 20060101AFI20220302BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220302BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
B41M5/26
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141325
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000131245
【氏名又は名称】株式会社シード
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】永堀 智一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 慎
【テーマコード(参考)】
2H111
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
2H111HA14
2H111HA23
2H111HA32
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB21
3E086BB41
3E086BB62
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA27
3E086CA28
3E086DA08
4F100AA21B
4F100AB10
4F100AB33
4F100AK07A
4F100AK25B
4F100AK25G
4F100AK42C
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
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4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EJ52
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4F100GB15
4F100GB66
4F100HB00B
4F100JL10B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、レーザ光の照射による包装材の劣化を抑制すると共に、狭い印字範囲において精細な文字や記号等を印字する場合であっても、印字箇所の可読性及び視認性が確保されるレーザ印字方法を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、基材層と、酸化チタンを含有するインキ層と、表面層とがこの順で積層されてなる包装材に、前記表面層側からレーザ光を照射することにより、印字を行うレーザ印字方法において、前記レーザ光の出力が、0.1W以上2.0W未満であり、かつ、前記レーザ光の走査速度が2,000mm/sec以上5,000mm/sec未満であり、前記インキ層における前記酸化チタンの含有量が、2.5g/m
2 以上であり、印字前後の色差(ΔE)が20以上40未満であるレーザ印字方法により解決される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、酸化チタンを含有するインキ層と、表面層とがこの順で積層されてなる包装材に、前記表面層側からレーザ光を照射することにより、印字を行うレーザ印字方法において、
前記レーザ光の出力が、0.1W以上2.0W未満であり、かつ、前記レーザ光の走査速度が2,000mm/sec以上5,000mm/sec未満であり、
前記インキ層における前記酸化チタンの含有量が、2.5g/m2 以上であり、及び、
印字前後の色差(ΔE)が20以上40未満である、レーザ印字方法。
【請求項2】
前記レーザ光の出力が、0.5W以上1.8W未満である、請求項1に記載のレーザ印字方法。
【請求項3】
前記レーザ光の走査速度が、2,000mm/sec以上4,000mm/sec未満である、請求項1~2のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
【請求項4】
前記インキ層における前記酸化チタンの含有量が、2.5g/m2 以上5.0g/m2 未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
【請求項5】
前記レーザ光の照射幅が、0.01mm以上0.1mm未満であり、かつ、前記レーザ光の照射間隔が、0.01mm以上0.1mm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
【請求項6】
前記表面層が、ポリエチレンテレフタレートから構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
【請求項7】
前記包装材が、コンタクトレンズ用の包装材である、請求項1~6のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ印字方法に関する。詳しくは、酸化チタンを含有するインキ層をレーザ光の照射によって変色させて印字を行うレーザ印字方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医薬品、医療機器、食品等の包装材には、製造年月日、使用期限、品質管理番号、製品情報等が表示されている。
包装材への表示方法としては、包装材の表面にインクジェットプリンタで印字する方法が用いられていたが、保管中に印字した画像の一部が消滅、欠損する等の問題がある。また、インクが溶剤等で消せる場合があることから、表示事項が改ざんされる危険性も有していた。また、インクが固化することにより、インクジェットのノズルに目詰まりが発生しやすいことから、目詰まりを発生させないためには日常のメンテナンスを欠くことができない。メンテナンスの方法としては、一般的には有機溶剤を用いてノズルのインクを溶解させるため、作業者の健康上の悪影響も懸念されていた。
【0003】
近年、この様な問題を解決する方法として、包装材の表面にレーザ光を照射して熱印加することにより、文字や記号を印字する方法が用いられている。
しかしながら、レーザ照射によって発生する熱により包装材が劣化することで強度の低下や、ピンホールの形成等の問題がある。また、レーザ照射により削り取られて飛散した微細な削り屑がレーザ照射部に付着することによる照射効率の低下や、削り屑がレーザの冷却ファンのフィルタに付着し冷却効率を低下させることにより起こる発熱により、所定の照射効率が得られなくなる等の問題も発生している。さらには、日常的なフィルタの清掃や、短期間でのフィルタ交換が必要となることから、取扱いが煩雑となる等の問題も発生している。
【0004】
上記問題を解決するため、印字される側、すなわち、包装材の構成が検討されている。
例えば、特許文献1には、酸化チタン系顔料とバインダとを所定の質量比、且つ、2.5g/m2 以上の塗布量で有する白インキ層、ポリオレフィン系樹脂層が積層された基材を含む包装材に、基材側からレーザ光を走査することで色差40以上の印字を、表面に変形を生じることなく行うことができる包装材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、印字箇所が滲む等により文字が可読できない場合ある。例えばコンタクトレンズの容器及び包装材等の小さいサイズの医療機器等においては、表示すべき情報量が多い上に、印字可能範囲にも制限がある。従って、文字や記号等を小さなサイズにして印字しなければならない。以上のことから、狭い印字範囲において精細な文字や記号等を印字する場合に、印字箇所の可読性及び視認性の向上が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みて、レーザ光の照射による包装材の劣化を抑制すると共に、狭い印字範囲において精細な文字や記号等を印字する場合であっても、印字箇所の可読性及び視認性が確保されるレーザ印字方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来のレーザ印字方法では、印字前後の色差が40以上であることにより、特に狭い印字範囲において印字する場合に、印字箇所が滲むことによる文字潰れが発生し、可読性及び視認性が十分に得られないことがわかった。そこで、色差が40未満となるような構成要件について鋭意検討した結果、レーザ光照射条件と酸化チタンの含有量とのバランスが色差に影響を与えることがわかった。そして、ついに、レーザ光照射条件として出力及び走査速度を特定範囲に設定し、酸化チタンの含有量を特定範囲に設定することにより、印字前後の色差が40未満となり、その結果、レーザ光の照射による包装材の劣化を抑制すると共に、狭い印字範囲において精細な文字や記号等を印字する場合であっても、印字箇所の可読性及び視認性を確保することができることを見出した。本発明は、本発明者らによって初めて見出された知見及び成功例に基づいて完成されたものである。
【0009】
従って、本発明によれば、以下の態様のレーザ印字方法が提供される。
〔1〕基材層と、酸化チタンを含有するインキ層と、表面層とがこの順で積層されてなる包装材に、前記表面層側からレーザ光を照射することにより、印字を行うレーザ印字方法において、
前記レーザ光の出力が、0.1W以上2.0W未満であり、かつ、前記レーザ光の走査速度が2,000mm/sec以上5,000mm/sec未満であり、
前記インキ層における前記酸化チタンの含有量が、2.5g/m2 以上であり、及び、
印字前後の色差(ΔE)が20以上40未満である、レーザ印字方法。
〔2〕前記レーザ光の出力が、0.5W以上1.8W未満である、〔1〕に記載のレーザ印字方法。
〔3〕前記レーザ光の走査速度が、2,000mm/sec以上4,000mm/sec未満である、〔1〕~〔2〕のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
〔4〕前記インキ層における前記酸化チタンの含有量が、2.5g/m2 以上5.0g/m2 未満である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
〔5〕前記レーザ光の照射幅が、0.01mm以上0.1mm未満であり、かつ、前記レーザ光の照射間隔が、0.01mm以上0.1mm未満である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
〔6〕前記表面層が、ポリエチレンテレフタレートから構成される、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
〔7〕前記包装材が、コンタクトレンズ用の包装材である、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の方法に比べ、レーザ光の出力がやや小さく、レーザ光の走査速度がやや高速であることから、包装材の劣化を抑制することが期待される。また、本発明によれば、レーザ光の出力が小さく、レーザ光の走査速度がやや高速の条件下であっても、インキ層に酸化チタンを多く含有することから、印字前後における色差を20以上40未満とすることができ、結果として、印字箇所の可読性及び視認性を確保することができる。以上のことから、本発明によれば、レーザ光の照射による包装材の劣化を抑制すると共に、狭い印字範囲において精細な文字や記号等を印字する場合であっても、印字箇所の可読性及び視認性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一態様のレーザ印字方法に用いる包装材の一形態を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の一態様のレーザ印字方法に用いる包装材の作製方法を説明するための概略断面図である。
【
図3】実施例において印字した包装材の実際の写真画像である。
【
図4】色反転文字(白抜き文字)にて印字した実際の写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一態様である組成物について詳細に説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0013】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
【0014】
〔レーザ印字方法〕
本発明の一態様のレーザ印字方法は、基材層と、酸化チタンを含有するインキ層と、表面層とがこの順で積層されてなる積層フィルムからなる包装材に、表面層側からレーザ光を照射することにより、印字を行うレーザ印字方法において、レーザ光の出力が、0.1W以上2.0W未満であり、かつ、レーザ光の走査速度が2,000mm/sec以上5,000mm/sec未満であり、インキ層における酸化チタンの含有量が、2.5g/m2 以上であり、印字前後の色差(ΔE)が20以上40未満である。
【0015】
〔包装材〕
本発明の一態様のレーザ印字方法において用いられる包装材は、基材層と、酸化チタンを含有するインキ層と、表面層とがこの順で積層されてなる構成である。
本発明の一態様のレーザ印字方法においては、例えばコンタクトレンズ等の医療機器等の小さいサイズ包装材に対して、狭い印字範囲において精細な文字や記号等を印字する場合に、特に有用である。
具体的には、包装材1は、
図1に示すように、基材層10上に、インキ層21と、表面層11とがこの順で積層されてなる多層フィルムであり、この例においては、コンタクトレンズ用のブリスターパックの蓋用の包装材とされる。
本発明の一態様のレーザ印字方法において、包装材1は、層間にレーザ印字に影響のない範囲で他の層を有していてもよい。
【0016】
〔表面層〕
表面層11は、包装材1の表面保護層として機能するものであり、その構成材料は、特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂が一般的に用いられる。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。本発明のレーザ印字方法に用いられる包装材おいては、これらの中でも、インキ層の保護、並びに、高い透明性による印字の判読性向上の観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0017】
表面層11の層厚は、特に限定されないが、例えば5μm~25μmとされ、好ましくは10μm~20μmとされる。
【0018】
〔インキ層〕
インキ層21は、少なくとも酸化チタンを含有する。インキ層21には、必要に応じてバインダや添加剤等が含有される。
インキ層21において、酸化チタンの含有量は、2.5g/m2 以上であり、好ましくは、2.5g/m2 以上5.0g/m2 未満である。酸化チタンの含有量が、2.5g/m2 未満である場合においては、色差20以上を担保することができず、印字箇所の可読性及び視認性が十分に得られないおそれがある。なお、酸化チタンの含有量は、サンプルにおけるチタン含有率の測定値より得られる、1m2 あたりチタン含有量を、Ti含有量×TiO2 原子量(79.88)/Ti原子量(47.88)に従い、TiO2 量に換算することにより算出することができる。
酸化チタンとしては、例えば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン等を用いることができる。また、酸化チタンは、平均粒子径が150nm~500nmのものであることが好ましい。
【0019】
インキ層21に含有されるバインダとしては、特に限定されず、公知の種々のものを用いることができる。例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ゴム、塩化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース等が挙げられる。
インキ層21に含有される添加剤としては、特に限定されず、公知の種々のものを用いることができる。
【0020】
インキ層21の層厚は、特に限定されないが、印字箇所の可読性及び視認性の観点から、1μm~10μmが好ましい。
【0021】
〔基材層〕
基材層10は、包装材の用途によって適宜変更することができるが、この例においては、基材層10は、接着層31と、アルミ箔層41と、ポリオレフィン系樹脂層51とから構成される。
【0022】
接着層31は、インキ層21とアルミ箔層41とを接着させるための層であり、接着剤によって構成される。接着剤としては、特に限定されず、公知の種々のものを用いることができるが、例えば、アクリル樹脂系接着剤、α-オレフィン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ニトロセルロース接着剤、フェノール樹脂系接着剤、変成シリコーン系接着剤等が挙げられる。この例においては、これらの中でも、アクリル樹脂系接着剤が好ましい。
接着層31の層厚は、特に限定されないが、例えば1μm~10μmとされ、好ましくは1μm~7μmとされる。
【0023】
アルミ箔層41は、一般的なアルミニウム箔から構成される。
アルミ箔層41の層厚は、特に限定されないが、例えば10μm~100μmとされ、好ましくは10μm~75μmとされる。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂層51は、ポリオレフィン系樹脂から構成されれば特に限定されず、公知の種々のものを用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等が挙げられる。この例においては、これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。
【0025】
〔包装材の作製方法〕
本発明のレーザ印字方法に用いられる包装材の作製方法としては、特に限定されず、公知の種々の方法を採用することができる。
例えば、
図2に示すように、例えばポリエチレンテレフタレートからなる表面層11の全面に、酸化チタン及びバインダ等を含有するインキ剤を1回又は複数回塗布してインキ層21を形成し、積層フィルム体20を作製する。次に、ポリオレフィン系樹脂からなるポリオレフィン系樹脂層51の全面にアクリル樹脂系接着剤を塗布してアルミニウム箔を重ね合わせ圧着することによりアルミ箔層41を形成し、積層フィルム体30を作製する。そして、積層フィルム体20のインキ層21と、積層フィルム体30のアルミ箔層41とを、接着剤からなる接着層31を介して貼り合わせることにより包装材1を作製することができる。
【0026】
本発明のレーザ印字方法においては、包装材に対して、表面層側からレーザ光を照射し、当該レーザ光の熱エネルギーをインキ層の成分である酸化チタンが吸収し変色することにより印字が行われる。
【0027】
本発明のレーザ印字方法において、照射するレーザ光としては、YAGレーザ、YVO4 レーザ、半導体レーザ、CO2 レーザなどの一般的なレーザ光を使用でき、YVO4 レーザが好ましく用いられる。
【0028】
〔レーザ光照射条件〕
本発明のレーザ印字方法において、レーザ光の照射による包装材の劣化を抑制する観点から、レーザ光の出力は、0.1W以上2.0W未満であり、好ましくは、0.5W以上1.8W未満である。また、レーザ光の走査速度は、レーザ光の照射による包装材の劣化を抑制する観点から、2,000mm/sec以上5,000mm/sec未満であり、好ましくは、2,000mm/sec以上4,000mm/sec未満である。
また、本発明のレーザ印字方法において、レーザ光の照射幅(1本あたり)は、0.01mm以上0.1mm未満であることが好ましく、より好ましくは、0.03mm以上0.07mm未満である。また、レーザ光の照射間隔は、0.01mm以上0.1mm未満であることが好ましく、より好ましくは0.03mm以上0.07mm未満である。本発明のレーザ印字方法においては、レーザ光の照射幅及び照射間隔が上記範囲内であることにより、詳細な文字や記号等が印字されることとなるが、印字箇所の可読性及び視認性を十分に確保することができる。
また、本発明のレーザ印字方法において、包装材に対するレーザ光の走査回数は、印字前後の色差(ΔE)が20以上40未満となれば、特に限定されないが、例えば1~5回である。
【0029】
〔色差(ΔE)〕
本発明のレーザ印字方法において、印字前後の色差(ΔE)は20以上40未満であり、好ましくは、25以上35未満である。色差(ΔE)が20以上40未満であることは、従来技術に比べてやや小さい値、すなわちやや薄い印字となるが、印字箇所の可読性及び視認性は確保される上、特に、狭い印字範囲において精細な文字や記号等を印字する場合にあっては、やや薄い印字が印字箇所の可読性及び視認性の向上に寄与する。
【0030】
本発明のレーザ印字方法においては、印字前後の色差(ΔE)は絶対値である。具体的には、本発明のレーザ印字方法において印字する文字等の画像は、着色文字だけではなく、色反転文字(白抜き文字)にも採用される。すなわち、白地の包装材に対し、背景を白地で、文字や記号等を黒地で表示する場合(例えば
図3を参照)、背景を黒字で、文字や記号等を白地(白抜き)で表示する場合(例えば
図4を参照)、いずれの場合も含まれる。
本発明のレーザ印字方法において、色差(ΔE)は、印字前後のL
*a
*b
*を測定し、差分を算出することにより求めることができる。
【0031】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0032】
〔包装材〔A〕,〔B〕の作製〕
厚さ10μmのPETからなる表面層11の全面にコロナ処理を施した後、表1に示すインク剤(酸化チタン、アクリル樹脂、トルエン)を表1に示す回数塗布し、インキ層21を形成することにより、多層フィルム体20を得た。
厚さ15μmの変性ポリプロピレンのポリオレフィン系樹脂層51の全面にアクリル樹脂系接着剤を塗布した後に、厚さ40μmのアルミニウム箔からなるアルミ箔層41を重ね合わせ圧着することにより、多層フィルム体30を得た。
表面層11が下側に、インキ層21が上側になるように載置した多層フィルム体20のインキ層21にアクリル樹脂系接着剤を厚さ2μmで塗布し、接着層31を形成した後に、アルミ箔層41が下側に、ポリオレフィン系樹脂層51が上側になるように載置した多層フィルム体30を、接着層31に重ね合わせ圧着することにより、包装材〔A〕,〔B〕を作製した。
【0033】
【0034】
〔実施例1~5及び参考例1〕
レーザ照射装置「MD-U1020C」(YVO4 レーザ/波長355nm/出力2.5W)(株式会社キーエンス製)を用いて、表2に示すレーザ光照射条件により、包装材〔A〕または〔B〕に対してレーザ光照射を行った。
・焦点距離:40mm/50mm
・走査速度:1,000mm/sec~3,500mm/sec(500mm/sec毎)
・出力:照射最大出力比30%~90%(10%毎)
・照射幅(1本当たり):0.04mm(焦点距離±0のとき)
・照射間隔:0.04mm
・照射面積:10mm四方
【0035】
〔色差(ΔE)の測定〕
印字前後の包装材について、L*a*b*を、分光色彩計(SD7000型/日本電色工業株式会社製)を用いて測定し、色差(ΔE)を算出した。結果を表2に示す。
【0036】
〔可読性及び視認性の評価〕
縦1.5mm、横2.0mmの範囲に印字した文字及び記号について、可読性及び視認性の評価を下記評価基準に従って行った。結果を表2及び
図3に示す。
評価基準
A:文字つぶれがなく、全ての文字の判読が可能
B:文字つぶれがなく、全ての文字の判読は可能であるが、文字色がやや薄い
C:一部に文字つぶれがあり、一部の文字の判読が不可能
【0037】
〔QRコード(登録商標)の読み取り評価〕
5mm四方に印字したQRコード(登録商標)を、二次元バーコードリーダーを用いて読み取りを行い、下記評価基準に従い評価した。結果を表2及び
図3に示す。
評価基準
○:読み取りができる
×:読み取りができない
【0038】
〔包装材の劣化の評価〕
レーザ光の照射による包装材の劣化(ピンホールの発生の有無)を下記に従い確認した。
コンタクトレンズ保存用のポリプロピレン製ブリスター容器を6個用意し、各々の窪み部に純水を適量注入した後に、各々の天面を表2に示す照射条件(実施例1~5、及び、参考例1)によりレーザ印字を施した包装材で封止した。
次いで、ローダミンB0.3重量%、PVP(K-90)0.15重量%、イソプロピルアルコール5重量%、純水94.55重量%、よりなる探傷剤溶液を1.5L調製し、当該溶液に上記により準備した全てのブリスター容器を15分間浸漬し、窪み部内への探傷剤溶液の流入の有無を確認することにより、包装材の劣化を下記評価基準に従い評価した。結果を表2に示す。
評価基準
○:探傷剤の流入なし(包装材の劣化なし)
×:探傷剤の流入あり(包装材の劣化あり)
【0039】
【0040】
表2及び
図3の結果より、レーザ光の出力が、0.1W以上2.0W未満であり、かつ、レーザ光の走査速度が2,000mm/sec以上5,000mm/sec未満であり、インキ層における酸化チタンの含有量が、2.5g/m
2 以上である実施例1~5については、色差が20以上40未満となり、可読性及び視認性が十分に確保されると共に、包装材の劣化が抑制される結果となった。
本発明の一態様のレーザ印字方法においては、例えば、医薬品、医療機器、食品等の包装材に対して、製造年月日、使用期限、品質管理番号、製品情報等を表示する方法として好適であり、特に、狭い印字範囲において精細な文字や記号等を印字する場合に、印字箇所の可読性及び視認性が確保されるため好適である。