(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037294
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220302BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20220302BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220302BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141348
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小岩 永明
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028BB04
5H028BB07
5H028CC08
5H028CC13
5H028HH00
5H029AJ05
5H029AK03
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ03
5H029CJ07
5H029HJ00
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】正極シートからイオンが析出するのを抑制可能な二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る二次電池10は、捲回された正極シート20を備える。二次電池10の正極集電側に配置された正極シート20の未塗工部22には、正極シート20の捲回軸を基準とする半径方向外側へ屈曲する少なくとも1以上の第1の屈曲部221と、捲回軸を基準とする半径方向内側へ屈曲する少なくとも1以上の第2の屈曲部222とが形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲回された正極シートを備える二次電池であって、
前記二次電池の正極集電側に配置された前記正極シートの未塗工部に
前記正極シートの捲回軸を基準とする半径方向外側へ屈曲する少なくとも1以上の第1の屈曲部と、
前記捲回軸を基準とする半径方向内側へ屈曲する少なくとも1以上の第2の屈曲部と
が形成された、二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、前記正極シートと共に捲回された負極シート及びセパレータを備えており、
前記正極集電側において、
前記負極シートは、前記正極シートの塗工部の正極集電側端部よりも捲回軸方向外側まで延在し、
前記セパレータは、前記負極シートの正極集電側端部よりも捲回軸方向外側まで延在しており、
前記第1の屈曲部及び前記第2の屈曲部が、前記負極シートの正極集電側端部と前記セパレータの正極集電側端部との間に配置された、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1の屈曲部及び前記第2の屈曲部は、前記正極シートの積層数の半分以下の層を構成する前記正極シートであって前記半径方向外側に配置された前記正極シートの未塗工部に形成された、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記正極集電側において前記正極シートの未塗工部を束ねる正極集箔部をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記正極シートは、前記半径方向外側へ湾曲する湾曲部を有しており、
前記第1の屈曲部及び前記第2の屈曲部は、少なくとも前記湾曲部の前記正極シートの未塗工部に形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関し、特に、捲回型の電極体を備える二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等の電気を利用する車両では、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池が採用されている。二次電池には、電極シートを捲回して形成した捲回型の電極体を備えるものがある。
【0003】
このような捲回型の電極体の一例として、特許文献1は、正極シート及び負極シートが、セパレータを介して扁平状に捲回された捲回型電極体を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する捲回電極体では、電極シートの巻き緩みにより、電極シートの湾曲部(
図5の19a,19b)における正極シートと負極シートの極間距離、特に、最外周の極間距離が長くなる。そのため、特許文献1が開示する捲回電極体を初期充電する場合、電極シートの湾曲部の電位が高くなり、負極シートと電解液の界面にSEI(Solid Electrolyte Interphase)が均等に形成されない。このため、特許文献1が開示する捲回電極体では、正極シートからリチウムイオン等のイオンが析出する虞がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、正極シートからイオンが析出するのを抑制可能な二次電池を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る二次電池は、捲回された正極シートを備え、二次電池の正極集電側に配置された正極シートの未塗工部に、正極シートの捲回軸を基準とする半径方向外側へ屈曲する少なくとも1以上の第1の屈曲部と、捲回軸を基準とする半径方向内側へ屈曲する少なくとも1以上の第2の屈曲部とが形成される。
【0008】
また、二次電池は、正極シートと共に捲回された負極シート及びセパレータを備えており、正極集電側において、負極シートは、正極シートの塗工部の正極集電側端部よりも捲回軸方向外側まで延在し、セパレータは、負極シートの正極集電側端部よりも捲回軸方向外側まで延在しており、第1の屈曲部及び第2の屈曲部が、負極シートの正極集電側端部とセパレータの正極集電側端部との間に配置されることが好ましい。
【0009】
さらに、第1の屈曲部及び第2の屈曲部は、正極シートの積層数の半分以下の層を構成する正極シートであって半径方向外側に配置された正極シートの未塗工部に形成されることが好ましい。
【0010】
さらに、正極集電側において正極シートの未塗工部を束ねる正極集箔部をさらに備える。
【0011】
さらに、正極シートは、半径方向外側へ湾曲する湾曲部を有しており、第1の屈曲部及び第2の屈曲部は、少なくとも湾曲部の正極シートの未塗工部に形成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、正極シートからイオンが析出するのを抑制可能な二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池を示す概略図である。
【
図2】
図1の断面線I-Iに沿った本発明の一実施形態に係る二次電池の垂直断面を示す断面図である。
【
図3】
図1の断面線II-IIに沿った本発明の一実施形態に係る二次電池の水平断面を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る二次電池と他の二次電池に充放電サイクル試験を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池10を示す概略図である。二次電池10は、捲回型の電極体(図示せず)と、正極集電部11と、負極集電部12とを備える。
【0015】
捲回型の電極体は、正極シート、負極シート及びセパレータを積層して、捲回軸を中心に捲回した後、扁平にすることで形成される。捲回型の電極体は、
図1に示すように、電極体の厚さ方向と二次電池10の厚さ方向が一致し、かつ、電極体の捲回軸方向と二次電池の幅方向が一致するように、二次電池10内に収容される。そのため、二次電池10の上部13及び下部14の双方において、捲回型の電極体は、捲回軸を基準とする半径方向外側へ湾曲する湾曲部を有する。
【0016】
正極集電部11及び負極集電部12は、二次電池10内で正極集電側の正極シート及び負極集電側の負極シートをそれぞれ束ねる集箔部(図示せず)に接続され、正極シート及び負極シートから集箔部を介して集電する。
【0017】
図2は、
図1の断面線I-Iに沿った二次電池10の垂直断面を示す図である。
図2は、二次電池10の上部13に位置する電極体の正極集電側の一部を示す。なお、二次電池10の下部14にも、
図2に示す構成と同様の構成が存在する。
【0018】
正極シート20は、正極活物質(コバルト酸リチウム等)が塗布された塗工部21と、正極活物質が塗布されていない未塗工部22とを含む。二次電池10の正極集電側に配置された正極シート20の未塗工部22の一部には、捲回軸を基準とする半径方向外側へ屈曲する第1の屈曲部221と、捲回軸を基準とする半径方向内側へ屈曲する第2の屈曲部222とが形成される。
【0019】
セパレータ40のうち、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222が形成された正極シート20の半径方向内側に位置するセパレータ40には、捲回軸を基準とする半径方向外側へ屈曲する第1の屈曲部41と、捲回軸を基準とする半径方向内側へ屈曲する第2の屈曲部42が形成される。
【0020】
図2に示すように、二次電池10の正極集電側では、負極シート30が、正極シート20の塗工部21の正極集電側端部よりも捲回軸方向外側まで延在し、セパレータ40が、負極シート30の正極集電側端部よりも捲回軸方向外側まで延在する。正極シート20の第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222と、セパレータ40の第1の屈曲部41及び第2の屈曲部42は、負極シート30の正極集電側端部とセパレータ40の正極集電側端部との間に配置されることが好ましい。
【0021】
二次電池10の正極集電側では、正極シート20の未塗工部22が、正極集箔部(図示せず)に引っ張られた状態で接続される。
【0022】
図3は、
図1の断面線II-IIに沿った二次電池10の水平断面を示す断面図である。
図3に示すように、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222が形成された正極シート20は、捲回軸を基準とする半径方向外側に配置される。第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222は、
図3に示すように正極シート20が捲回された状態で、正極シート20の積層数の半分以下の層を構成する正極シート20の未塗工部22に形成するのが好ましい。例えば、
図3に示す例では、正極シート20の積層数は12層であるため、半径方向外側に配置された6層以下の正極シート20の未塗工部22に、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222を形成するのが好ましい。なお、正極シート20の積層数は、
図3に示す数に限定されず、任意の数を採用することができる。
【0023】
二次電池10の正極集電側では、正極シート20の未塗工部22が、正極集箔部50によって束ねられ、正極集箔部50に引っ張られた状態で接続される。なお、二次電池10の負極集電側では、負極シート30の未塗工部32が、負極集箔部51によって束ねられ、負極集箔部51に引っ張られた状態で接続される。
【0024】
上述した実施形態では、二次電池10は、捲回された正極シート20を備えており、二次電池10の正極集電側に配置された正極シート20の未塗工部22には、正極シート20の捲回軸を基準とする半径方向外側へ屈曲する第1の屈曲部221と、捲回軸を基準とする半径方向内側へ屈曲する第2の屈曲部222とが形成される。
【0025】
この構成を採用することにより、正極シート20の未塗工部22が、正極集箔部50によって半径方向内側へ引っ張られると、正極シート20が半径方向内側に移動し、当該正極シート20と、隣接する負極シート30との極間距離が縮まる。特に、捲回型の電極体の湾曲部における極間距離が縮まる。その結果、電極体を初期充電した場合に、電極体の湾曲部の電位が上昇するのを抑制でき、負極シートと電解液の界面にSEIを均等に形成することができる。このため、正極シートからリチウムイオン等のイオンが析出するのを抑制することができる。
【0026】
また、上述した実施形態では、正極集電側において、負極シート30は、正極シート20の塗工部21の正極集電側端部よりも捲回軸方向外側まで延在し、セパレータ40は、負極シート30の正極集電側端部よりも捲回軸方向外側まで延在する。第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222は、負極シート30の正極集電側端部とセパレータ40の正極集電側端部との間に配置される。これにより、正極集箔部50を用いて正極シート20の未塗工部22を効率よく引っ張ることができ、極間距離を効率よく縮めることができる。
【0027】
さらに、上述した実施形態では、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222は、正極シート20の積層数の半分以下の層を構成する正極シート20であって半径方向外側に配置された正極シート20の未塗工部22に形成することができる。
【0028】
図4は、本発明の一実施形態に係る二次電池と他の二次電池に充放電サイクル試験を行った結果を示す。この試験では、低温環境下(-10℃)で、SOC(State Of Charge)80%から、電流値50Cで10秒の充電及び放電を500サイクル行った。
【0029】
図4の表の「屈曲部の位置」は、
図2に示す負極シート30の正極集電側端部を基準とした第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222の位置を表す。「端部間」は、負極シート30の正極集電側端部と、セパレータ40の正極集電側端部との間の位置を表す。「内側」は、負極シート30の正極集電側端部よりも捲回軸方向内側の位置を表す。
【0030】
図4の表に示す「屈曲部が形成された正極シートの割合」は、正極シート20の積層数に対し、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222が形成された正極シート20の層数の割合を表す。当該試験では、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222の形成された正極シート20が半径方向外側に配置された二次電池10を使用した。
【0031】
図4の表に示す「電池容量の維持率」は、充放電サイクル試験を実施した二次電池10の容量の維持率を表す。これは、正極シート20からのイオン(リチウムイオン等)の析出の多寡を反映する。
図4の表に示す「短絡の発生」は、充放電サイクル試験における二次電池10の短絡の発生の有無を表す。
【0032】
図4の試験結果に示す通り、実施例1、実施例2及び実施例3、すなわち、正極シート20の積層数の半分以下の層を構成する半径方向外側に配置された正極シート20の未塗工部22に、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222を形成した場合では、二次電池10の容量の維持率が高く、また、短絡が発生しなかった。このうち、実施例1の二次電池10、すなわち、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222が形成された正極シートの割合が50%の二次電池10の容量の維持率が最も高かった。
【0033】
一方、比較例1、すなわち、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222が形成されていない場合には、二次電池10の短絡は発生しなかったが、実施例1~3と比較して、容量の維持率が低い結果となった。
【0034】
また、比較例2、すなわち、正極シート20の積層数の半分を超える60%の正極シート20の未塗工部22に、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222を形成した場合では、二次電池10の容量の維持率が、実施例1よりも僅かに高くなったが、短絡が発生した。
【0035】
さらに、比較例3、すなわち、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222を、負極シート30の正極集電側端部よりも捲回軸方向内側に形成し、かつ、正極シート20の積層数の半分の正極シート20の未塗工部22に形成した場合では、二次電池10の容量の維持率は高くなったが、短絡が発生した。
【0036】
これらの試験結果から、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222を、負極シート30の正極集電側端部とセパレータ40の正極集電側端部の間に形成し、かつ、正極シート20の積層数の半分以下の層を構成する正極シート20の未塗工部22に形成した場合、正極シート20からのイオンの析出を低減すると共に、短絡の発生を防止できることが判明した。
【0037】
さらに、上述した実施形態では、正極集電側において正極シート20の未塗工部22を束ねる正極集箔部50をさらに備える。これにより、正極シート20の未塗工部22が正極集箔部50に向かって引っ張られ、極間距離を縮めることができる。
【0038】
さらに、上述した実施形態では、正極シート20は、半径方向外側へ湾曲する湾曲部を有する。第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222は、少なくとも湾曲部の正極シート20の未塗工部22に形成される。湾曲部では、電極シートが巻き緩むことより、電極シートの極間距離が、湾曲部以外の極間距離と比べて長くなる傾向がある。すなわち、湾曲部では、正極シート20からイオンが析出する可能性が最も高い。そのため、湾曲部の正極シート20の未塗工部22に第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222を形成することにより、湾曲部における極間距離を短くすることができ、正極シート20からのイオンの析出を効果的に抑制することができる。
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限られたものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、他の実施形態では、負極シート30の正極集電側端部とセパレータ40の正極集電側端部との間に位置する正極シート20の未塗工部22に、複数の第1の屈曲部221と、複数の第2の屈曲部222を形成してもよい。
【0040】
また、他の実施形態では、セパレータ40の正極集電側端部よりも捲回軸方向外側に位置する正極シート20の未塗工部22に、第1の屈曲部221及び第2の屈曲部222を形成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 二次電池
11 正極集電部
12 負極集電部
13 上部
14 下部
20 正極シート
21 塗工部
22 未塗工部
221 第1の屈曲部
222 第2の屈曲部
30 負極シート
32 未塗工部
40 セパレータ
41 第1の屈曲部
42 第2の屈曲部
50 正極集箔部
51 負極集箔部