(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037339
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】スクライブ装置
(51)【国際特許分類】
C03B 33/027 20060101AFI20220302BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20220302BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20220302BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C03B33/027
B28D5/00 Z
B26F3/00 A
B28D7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141422
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】516065135
【氏名又は名称】株式会社IHI物流産業システム
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆太
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
4G015
【Fターム(参考)】
3C060AA08
3C060CB03
3C069AA03
3C069BA04
3C069BB01
3C069BB04
3C069BC02
3C069CA11
3C069CB01
3C069EA01
4G015FA03
4G015FB01
4G015FC02
4G015FC07
(57)【要約】
【課題】スクライブ装置において、ホイールが設けられたヘッドの移動速度を抑えつつ短時間で対象基板に対してスクライブラインを形成可能とする。
【解決手段】ガラス基板の表面に対してスクライブラインを形成するスクライブ装置1であって、直線状に延伸されたリニアガイド4と、ガラス基板の表面に当接されるホイールを有すると共にリニアガイド4にスライド可能に取り付けられたヘッドユニット5とを備え、1つのリニアガイド4に対して、複数のヘッドユニット5が取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象基板の表面に対してスクライブラインを形成するスクライブ装置であって、
直線状に延伸されたガイドと、
支持された対象基板の表面に当接されるホイールを有すると共に前記ガイドにスライド可能に取り付けられたヘッドユニットとを備え、
1つの前記ガイドに対して、複数のヘッドユニットが取り付けられている
ことを特徴とするスクライブ装置。
【請求項2】
前記ヘッドユニットを前記ガイドに沿って移動させるアクチュエータを前記ヘッドユニットごとに備えることを特徴とする請求項1記載のスクライブ装置。
【請求項3】
前記ヘッドユニットは、前記ホイールを前記対象基板の表面に押圧する押圧部を有することを特徴とする請求項1または2記載のスクライブ装置。
【請求項4】
複数の前記ヘッドユニットの前記ホイールが前記対象基板の表面に当接された状態で、複数の前記ヘッドユニットを同一方向に移動させる制御部を有することを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載のスクライブ装置。
【請求項5】
載置された前記対象基板を下方から支持するテーブルユニットを備え、
前記テーブルユニットは、
平面視にて前記ホイールの移動領域の一方側にて前記対象基板を下方から支持する固定ステージと、
平面視にて前記ホイールの移動領域の他方側にて前記対象基板を下方から支持する支持姿勢と前記支持姿勢に対して傾斜された傾斜姿勢とに姿勢変更可能とされた可動ステージと
を備えることを特徴とする請求項1~4いずれか一項に記載のスクライブ装置。
【請求項6】
前記固定ステージと前記可動ステージとの間に隙間が設けられ、前記隙間が前記ホイールの移動領域の直下に配置されていることを特徴とする請求項5記載のスクライブ装置。
【請求項7】
前記可動ステージは、前記隙間あるいは前記隙間の直下に配置された回転軸芯を中心として前記支持姿勢と前記傾斜姿勢とに姿勢変更可能とされていることを特徴とする請求項6記載のスクライブ装置。
【請求項8】
前記対象基板が垂直姿勢に支持され、
前記ヘッドユニットに対して前記対象基板を間に挟んで反対側に配置される当て板を備える
ことを特徴とする請求項1~4いずれか一項に記載のスクライブ装置。
【請求項9】
前記当て板は、
前記対象基板に対して当離可能に移動可能とされ、
前記ホイールが前記対象基板に当接される前に前記対象基板に対して当接され、
前記ホイールが前記対象基板から離間した後に前記対象基板から離間される
ことを特徴とする請求項8記載のスクライブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクライブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス等の脆弱な材料で形成された基板を分割する場合には、スクライブ装置によって溝状のスクライブラインを表面に形成し、その後スクライブラインに沿って基板を分割する。このようなスクライブ装置は、例えば特許文献1に示されているように、ガイドに沿って移動可能なヘッドを備えており、ヘッドに設けられたホイールを基板の表面に当接させた状態でヘッドを移動させることによってスクライブラインを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホイールは回転しながら基板の表面を移動している。このようなヘッドの移動を高速化すると、ホイールが基板の表面で空転する場合があり、一定の深さのスクライブラインを形成することが難しい。このため、ヘッドの移動速度を高速化することは難しい。しかしながら、近年においては基板の大型化が進んでいる。ヘッドの移動速度を高速化できないことから、大型の基板においてはスクライブラインの形成に時間を要することとなっている。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、スクライブ装置において、ホイールが設けられたヘッドの移動速度を抑えつつ短時間で対象基板に対してスクライブラインを形成可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、対象基板の表面に対してスクライブラインを形成するスクライブ装置であって、直線状に延伸されたガイドと、支持された対象基板の表面に当接されるホイールを有すると共に上記ガイドにスライド可能に取り付けられたヘッドユニットとを備え、1つの上記ガイドに対して、複数のヘッドユニットが取り付けられているという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ヘッドユニットを上記ガイドに沿って移動させるアクチュエータを上記ヘッドユニットごとに備えるという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記ヘッドユニットは、上記ホイールを上記対象基板の表面に押圧する押圧部を有するという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、複数の上記ヘッドユニットの上記ホイールが上記対象基板の表面に当接された状態で、複数の上記ヘッドユニットを同一方向に移動させる制御部を有するという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、載置された上記対象基板を下方から支持するテーブルユニットを備え、上記テーブルユニットが、平面視にて上記ホイールの移動領域の一方側にて上記対象基板を下方から支持する固定ステージと、平面視にて上記ホイールの移動領域の他方側にて上記対象基板を下方から支持する支持姿勢と上記支持姿勢に対して傾斜された傾斜姿勢とに姿勢変更可能とされた可動ステージとを備えるという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記固定ステージと上記可動ステージとの間に隙間が設けられ、上記隙間が上記ホイールの移動領域の直下に配置されているという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記可動ステージが、上記隙間あるいは上記隙間の直下に配置された回転軸芯を中心として上記支持姿勢と上記傾斜姿勢とに姿勢変更可能とされているという構成を採用する。
【0014】
第8の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記対象基板が垂直姿勢に支持され、上記ヘッドユニットに対して上記対象基板を間に挟んで反対側に配置される当て板を備えるという構成を採用する。
【0015】
第9の発明は、上記第8の発明において、上記当て板は、上記対象基板に対して当離可能に移動可能とされ、上記ホイールが上記対象基板に当接される前に上記対象基板に対して当接され、上記ホイールが上記対象基板から離間した後に上記対象基板から離間されるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ホイールを備えるヘッドユニットが1つの直線状のガイドに対して複数取り付けられている。このため、従来1つのヘッドユニットによって形成されていた同一直線状のスクライブラインを複数のヘッドユニットで分割形成することができる。したがって、各々のヘッドユニットの移動速度を高速化することなく、短時間でスクライブラインを形成することが可能となる。よって、本発明によれば、スクライブ装置において、ホイールが設けられたヘッドの移動速度を抑えつつ短時間で対象基板に対してスクライブラインを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態におけるスクライブ装置の概略構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるスクライブ装置の概略構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるスクライブ装置の概略構成を示す側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態におけるスクライブ装置が備える可動ステージを含む
図3の要部拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態におけるスクライブ装置の変形例が備える可動ステージを含む要部拡大図である。
【
図6】本発明の一実施形態におけるスクライブ装置の変形例が備える可動ステージ駆動ユニットを説明するための模式的な要部側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態におけるスクライブ装置の変形例を示す模式的な斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態におけるスクライブ装置の変形例を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るスクライブ装置の一実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のスクライブ装置1の概略構成を示す正面図である。
図2は、本実施形態のスクライブ装置1の概略構成を示す平面図である。
図3は、本実施形態のスクライブ装置1の概略構成を示す側面図である。なお、以下の説明においては、
図1~
図3に示すように、
図1の紙面に対して垂直な方向を前後方向とし、
図2の紙面に対して垂直な方向を上下方向とし、
図3の紙面に対して垂直な方向を左右方向とする。
【0020】
本実施形態のスクライブ装置1は、ガラス基板X(
図4参照)に対してスクライブラインを形成すると共に、ガラス基板X(対象基板)をスクライブラインに沿って分割する装置である。なお、本発明によってスクライブラインが形成される対象基板は、ガラス基板に限定されるものではなく、特に脆弱性材料よって形成された対象基板に対してスクライブラインを好適に形成可能である。この本実施形態のスクライブ装置1は、
図1~
図3に示すように、フレーム2と、テーブルユニット3と、リニアガイド4(ガイド)と、ヘッドユニット5と、駆動部6(アクチュエータ)と、制御部7とを備えている。
【0021】
フレーム2は、スクライブ装置1の骨格を形成しており、直接的あるいは間接的に、例えばフレーム2、テーブルユニット3、リニアガイド4、ヘッドユニット5及び駆動部6を支持している。フレーム2は、左右方向に離間して配置された一対のフレーム脚2aと、これらのフレーム脚2aを左右方向に接続する複数の接続アーム2bとを有している。
【0022】
また、フレーム2は、2つのフレーム脚2aに立設されると共にテーブルユニット3を避けるように門型とされた門型部2cを有している。この門型部2cは、フレーム脚2aから上方に延出すると共に左右方向に離間されて配置された一対の支柱2dと、これらの支柱2dの上端同士を接続する梁部2eとを有している。この門型部2cは、
図2及び
図3に示すように、フレーム脚2aの前後方向における中央部に配置されており、梁部2eが左右方向に水平に延伸されている。
【0023】
テーブルユニット3は、スクライブラインが形成されるガラス基板Xが載置されるユニットであり、例えば
図1に示すように、2つのフレーム脚2aに下方から支持されて左右方向にて門型部2cの内側に配置されている。このテーブルユニット3は、固定ステージ3aと、可動ステージ3bと、把持部3cと、インデックスプランジャ3dと、位置決めブロック3eと、押さえ機構3fとを備えている。
【0024】
固定ステージ3aは、例えば
図3に示すように、前後方向にてフレーム2の中央よりも後部に配置されたステージであり、テーブルユニット3に載置されたガラス基板Xの後部を下方から支持する。この固定ステージ3aは、フレーム2に対して移動しないように固定されている。
【0025】
可動ステージ3bは、例えば
図3に示すように、前後方向にてフレーム2の中央よりも前部に配置されたステージであり、テーブルユニット3に載置されたガラス基板Xの前部を下方から支持する。
図4は、可動ステージ3bを含む
図3の要部拡大図である。この図に示すように、可動ステージ3bは、フレーム2に対して回動可能に支持されており、
図4にて実線で示す支持姿勢と、
図4にて仮想線で示す傾斜姿勢とに姿勢変更可能とされている。
【0026】
支持姿勢は、テーブルユニット3に載置されたガラス基板Xを下方から当接して支持する可動ステージ3bの姿勢である。この支持姿勢では、可動ステージ3bの上面(支持面)は、固定ステージ3aの上面(支持面)と面一とされている。なお、本実施形態においては、
図4に示すように、固定ステージ3aの下方に配置された左右方向に水平に延伸する回転軸芯Lを中心として可動ステージ3bが回動可能とされている。
【0027】
傾斜姿勢は、可動ステージ3bの前端を下方に下げるようにして支持姿勢に対して傾斜された姿勢である。この傾斜姿勢では、ガラス基板Xを支持する上面が水平面に対して傾斜される。ガラス基板Xにスクライブラインを形成した後に、可動ステージ3bを傾斜姿勢とすることによって、スクライブラインを境としてガラス基板Xが分割される。
【0028】
このような固定ステージ3aと可動ステージ3bとの間には、例えば
図4に示すように隙間Sが設けられている。この隙間Sは、ヘッドユニット5が備える後述するホイール5cが移動される領域(ホイールの移動領域)の直下に配置されている。つまり、本実施形態のスクライブ装置1を側方(左右方向)から見た場合には、ホイール5cから鉛直方向の下方に移動した位置に隙間Sが配置されている。このような隙間Sは、ガラス基板Xが分割された場合に生じた微小な切片をテーブルユニット3の下方に落下させるための通路となる。
【0029】
把持部3cは、可動ステージ3bの前縁に設けられている。この把持部3cは、インデックスプランジャ3dによるロックが外された状態で、作業者が可動ステージ3bを支持するための把手である。インデックスプランジャ3dは、フレーム2に対して固定されており、支持姿勢とされた可動ステージ3bに差込可能とされている。インデックスプランジャ3dが可動ステージ3bに差し込まれることによって、可動ステージ3bがロックされて支持姿勢に保持される。
【0030】
位置決めブロック3eは、テーブルユニット3に載置されるガラス基板Xの位置を規定するものであり、固定ステージ3aの上面と可動ステージ3bの上面との各々に設けられている。これらの位置決めブロック3eは、固定ステージ3aの上面あるいは可動ステージ3bの上面から上方に向けて突出して設けられており、水平方向からガラス基板Xが当接されることで、ガラス基板Xの水平方向の位置を規定する。
【0031】
押さえ機構3fは、固定ステージ3aの上面と可動ステージ3bの上面との各々に設けた長板状の部材である。これらの押さえ機構3fは、長手方向の一端が固定ステージ3aあるいは可動ステージ3bに対して回動可能に蝶番によって接続されており、長手方向おける他端が固定ステージ3aあるいは可動ステージ3bに対して着脱可能に係合されている。これらの押さえ機構3fは、固定ステージ3aの上面及び可動ステージ3bの上面に載置されたガラス基板Xを上方から押さえることによって、ガラス基板Xが固定ステージ3a及び可動ステージ3bに対して移動することを防止する。
【0032】
リニアガイド4は、フレーム2の門型部2cに設けられた梁部2eに固定されており、左右方向に直線状に延伸して設けられている。つまり、リニアガイド4は、テーブルユニット3の除法に配置されると共に平面視直線状に延伸されている。このようなリニアガイド4は、左右方向に移動可能な2つの可動コア4aを有している。これらの可動コア4aは、
図4等に示すように、リニアガイド4の前部に配置されており、左右方向にスライド可能とされている。
【0033】
ヘッドユニット5は、リニアガイド4の可動コア4aの各々に対して設けられており、本実施形態においては、2つ設けられている。各々のヘッドユニット5は、ベース5aと、エアシリンダ5b(押圧部)と、ホイール5cとを有している。ベース5aは、エアシリンダ5b及びホイール5cを支持しており、リニアガイド4の可動コア4aに対して前方から固定されている。
【0034】
エアシリンダ5bは、ベース5aに固定されており、制御部7の制御の下で上下方向に伸縮されるロッドを有している。このようなエアシリンダ5bは、空気圧によってホイール5cをガラス基板Xの表面に押圧する。ホイール5cは、エアシリンダ5bのロッドの先端に回転可能に接続されており、ガラス基板Xの表層を薄く削ることによってスクライブラインを形成する。本実施形態のスクライブ装置1は、エアシリンダ5bのロッド位置を調整することによって、ホイール5cの上下方向の位置を調整すると共に、ホイール5cのガラス基板Xに対する押圧力を調整することが可能とされている。
【0035】
このように、本実施形態のスクライブ装置1においては、ガラス基板Xの表面に当接されるホイール5cを有すると共にリニアガイド4にスライド可能に取り付けられたヘッドユニット5とを備え、1つのリニアガイド4に対して、2つ(複数)のヘッドユニット5が取り付けられている。
【0036】
駆動部6は、ヘッドユニット5を移動させる動力を生成するアクチュエータであり、例えばリニアモータ等によって構成されている。駆動部6は、各々のヘッドユニット5に対して設けられている。このように駆動部6がヘッドユニット5ごとに設けられていることにより、各々のヘッドユニット5は個別に移動することが可能となる。
【0037】
制御部7は、駆動部6に接続されており、予め記憶されたプログラム等に基づいて、駆動部6を介してヘッドユニット5のリニアガイド4に沿った移動を制御する。また、制御部7は、ヘッドユニット5のエアシリンダ5bの制御も行う。例えば、本実施形態において制御部7は、2つのヘッドユニット5を同一方向に移動させることで、ガラス基板Xにスクライブラインを形成する。
【0038】
このような構成の本実施形態のスクライブ装置1によって、ガラス基板Xにスクライブラインを形成すると共に、ガラス基板Xをスクライブラインに沿って分割する場合には、まずガラス基板Xをテーブルユニット3に対してガラス基板Xを載置する。ここでは、作業員が、ガラス基板Xの端部をテーブルユニット3の位置決めブロック3eに側方から当接させた状態でガラス基板Xを固定ステージ3aと可動ステージ3bとを跨ぐように載置する。なお、ガラス基板Xを載置する場合には、可動ステージ3bは支持姿勢とされ、押さえ機構3fは長手方向における他端が持ち上げられた状態とされる。
【0039】
ガラス基板Xが固定ステージ3a及び可動ステージ3b上に載置されると、作業員が、押さえ機構3fによってガラス基板Xを押さえ、その後、制御部7にスクライブライン形成の指令を入力する。制御部7は、スクライブラインの形成の指令が入力されると、駆動部6にヘッドユニット5を初期位置に移動させる。ここでは、例えば、左側のヘッドユニット5のホイール5cがガラス基板Xの左端の上方に位置し、右側のヘッドユニット5のホイール5cがガラス基板Xの左右方向における中央の上方に位置するヘッドユニット5の位置を初期位置とする。
【0040】
続いて、制御部7は、エアシリンダ5bによってホイール5cを下降させ、ホイール5cをガラス基板Xの表面に当接させる。その後、制御部7は、ホイール5cがガラス基板Xの表面に当接された状態で、駆動部6にヘッドユニット5を移動させる。例えば、左側のヘッドユニット5のホイール5cがガラス基板Xの左端から左右方向の中央まで移動され、右側のヘッドユニット5のホイール5cがガラス基板Xの左右方向の中央から右端まで移動されるように、2つのヘッドユニット5が同一方向に移動される。
【0041】
このようにヘッドユニット5が移動されることによって、ホイール5cがガラス基板Xの表面を溝状に削り、直線状のスラクライブラインが形成される。左側のヘッドユニット5のホイール5cによって形成されたスクライブラインと、右側のヘッドユニット5のホイール5cによって形成されたスクライブラインとは接続されて1本のスクライブラインとされる。このように、本実施形態のスクライブ装置1では、同一直線状に沿って形成された2つのスクライブラインの端部同士が接続されることで、1つのスクライブラインが形成される。つまり、本実施形態のスクライブ装置1では、1つのスクライブラインを2つのヘッドユニット5によって分割形成している。
【0042】
なお、左側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインと、右側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインとが、必ずしも接続される必要はない。つまり、左側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインの右端と、右側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインとの左端とが離間した状態としても良い。このように、左側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインと、右側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインとが離間している状態であっても、ガラス基板Xを分割することは可能である。また、左側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインと、右側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインとを接続しないことで、一方のヘッドユニット5で先に形成されたスクライブラインに他方のヘッドユニット5のホイール5cが掛かることを防止でき、ガラス基板X上の同一箇所がホイール5cで2度削られることを防止することができる。このように、本実施形態のスクライブ装置1は、必ずしも1つに接続されるスクライブラインを形成するものに限定されず、同一直線状に沿って配列される複数のスクライブラインを形成することも可能である。例えば、厚さ0.5mmの無アルカリガラスからなるガラス基板Xを、スクライブ装置1にて後続のホイール5cを先に形成されたスクライブラインの約0.25mm手前で停止させ、その後にガラス基板Xを分割した場合には、良好な断面品質が得られた。
【0043】
このようにガラス基板Xに対してスクライブラインが形成されると、制御部7は、エアシリンダ5bによってホイール5cを上昇させることで、ホイール5cをガラス基板Xから離間する。例えば、制御部7は、スクライブラインの形成が完了したことを作業者に通知する。
【0044】
作業者は、ガラス基板Xにスクライブラインが形成されると、インデックスプランジャ3dによって可動ステージ3bのロックを解除し、把持部3cを把持しながら可動ステージ3bを傾斜姿勢とする。このように支持姿勢とされていた可動ステージ3bを傾斜姿勢とすることによって、ガラス基板Xが曲げられ、最終的にスクライブラインを境としてガラス基板Xが割れる。これによって、ガラス基板Xがスクライブラインに沿って分割される。
【0045】
以上のような本実施形態のスクライブ装置1は、ガラス基板Xの表面に対してスクライブラインを形成する装置であって、ガラス基板Xが載置されるテーブルユニット3と、テーブルユニット3の上方に配置されると共に平面視直線状に延伸されたリニアガイド4と、ガラス基板Xの表面に当接されるホイール5cを有すると共にリニアガイド4にスライド可能に取り付けられたヘッドユニット5とを備え、1つのリニアガイド4に対して、複数のヘッドユニット5が取り付けられている。
【0046】
本実施形態のスクライブ装置1によれば、ホイール5cを備えるヘッドユニット5が1つの直線状のリニアガイド4に対して複数取り付けられている。このため、従来1つのヘッドユニット5によって形成されていた同一直線状のスクライブラインを複数のヘッドユニット5で分割形成することができる。したがって、各々のヘッドユニット5の移動速度を高速化することなく、短時間でスクライブラインを形成することが可能となる。よって、本実施形態のスクライブ装置1によれば、ホイール5cが設けられたヘッドの移動速度を抑えつつ短時間でガラス基板Xに対してスクライブラインを形成することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態のスクライブ装置1においては、ヘッドユニット5をリニアガイド4に沿って移動させる駆動部6をヘッドユニット5ごとに備えている。このため、2つのヘッドユニット5を個別に移動させることが可能となる。したがって、例えば、左側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインと、右側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインとを接続したり、左側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインと、右側のヘッドユニット5で形成されるスクライブラインとを離間したりすることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のスクライブ装置1においては、ヘッドユニット5が、空気圧によってホイール5cをガラス基板Xの表面に押圧するエアシリンダ5bを有している。このため、本実施形態のスクライブ装置1によれば、空気圧によってホイール5cをガラス基板Xに対して押圧するため、ホイール5cのガラス基板Xに対する押圧力を細かく調整することが可能となる。なお、エアシリンダ5bに換えて、リニアモータ等の他の動力源を押圧部として備えることも可能である。
【0049】
また、本実施形態のスクライブ装置1においては、複数のヘッドユニット5のホイール5cがガラス基板Xの表面に当接された状態で、複数のヘッドユニット5を例えば同一方向に移動させる制御部7を有している。このように2つのヘッドユニット5を同一方向に移動させることによって、ヘッドユニット5同士が干渉することを防止することができる。
【0050】
また、本実施形態のスクライブ装置1においては、テーブルユニット3が、平面視にてホイール5cの移動領域の一方側にてガラス基板Xを下方から支持する固定ステージ3aと、平面視にてホイール5cの移動領域の他方側にてガラス基板Xを下方から支持する支持姿勢と支持姿勢に対して傾斜された傾斜姿勢とに姿勢変更可能とされた可動ステージ3bとを備えている。このため、ガラス基板Xに対してスクライブラインを形成した後に、可動ステージ3bを支持姿勢から傾斜姿勢に姿勢変更することでガラス基板Xを割ることが可能となる。つまり、本実施形態のスクライブ装置1によれば、ガラス基板Xに対するスクライブラインの形成のみならず、ガラス基板Xをスクライブラインに沿って分割することも可能となる。
【0051】
また、本実施形態のスクライブ装置1においては、固定ステージ3aと可動ステージ3bとの間に隙間Sが設けられ、隙間Sがホイール5cの移動領域の直下に配置されている。このため、スクライブラインに沿ってガラス基板Xが割れた際に生じた微細なガラス片を、隙間Sを通じてテーブルユニット3の下方に落下させることができる。したがって、ガラス片がテーブルユニット3に残存することを抑制し、次のガラス基板Xへのスクライブラインの形成及びガラス基板Xの分割作業において、残存するガラス片による悪影響が生じることを抑止することが可能となる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、1つのリニアガイド4に対して2つのヘッドユニット5がスライド可能に取り付けられた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つのリニアガイド4に対して3つ以上のヘッドユニット5がスライド可能に取り付けられた構成を採用することも可能である。
【0054】
また、上記実施形態においては、
図4に示すように、固定ステージ3aの下方に配置された左右方向に水平に延伸する回転軸芯Lを中心として可動ステージ3bが回動可能とされている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、可動ステージ3bが、隙間Sの直下に配置された回転軸芯Lを中心として支持姿勢と傾斜姿勢とに姿勢変更可能とされた構成を採用することも可能である。このような構成を採用することによって、ガラス基板Xがスクライブラインの真下を中心として折り曲げられるため、スクライブラインの形成位置に曲げ応力を集中させることができ、ガラス基板Xをより確実にスクライブラインに沿って割ることが可能となる。また、回転軸芯Lを隙間Sに配置することも可能である。この場合も、隙間Sの直下に回転軸芯Lが配置された場合と同様の効果を得られる。
【0055】
なお、
図5に示すように、可動ステージ3bが隙間Sに配置された回転軸芯Lを中心として支持姿勢と傾斜姿勢とに姿勢変更可能とされた構成を採用する場合には、隙間Sに軸部材を設けることはできない。このため、例えば、固定ステージ3aと可動ステージ3bとに配置された軸受部によって、固定ステージ3aと可動ステージ3bとを連結する。
【0056】
また、上記実施形態においては、テーブルユニット3が把持部3cを備え、作業者が把持部3cを把持して可動ステージ3bの姿勢を変更する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
図6は、可動ステージ駆動ユニット8を備える構成について説明するための模式的な要部側面図である。この図に示すように、可動ステージ駆動ユニット8は、可動ステージ3bの下方に設けられており、傾動用アクチュエータ8aと、可動ステージ用リンク機構8bと、分離用アクチュエータ8cとを備えている。
【0057】
傾動用アクチュエータ8aは、例えば支柱2d(
図6においては不図示)に対してブラケット8dを介して回動可能に取り付けられたシリンダであり、可動ステージ用リンク機構8bを介して可動ステージ3bに下方から接続されている。
【0058】
可動ステージ用リンク機構8bは、傾動用アクチュエータ8aと可動ステージ3bとの間に設置されており、傾動用アクチュエータ8aのロッドの伸縮動作を、可動ステージ3bが回転軸芯Lを中心として回動する回転運動に変換して伝達する。また、可動ステージ用リンク機構8bは、分離用アクチュエータ8cのロッドの伸縮動作を、可動ステージ3bが傾斜姿勢のまま固定ステージ3a(
図6においては不図示)に対して離れたり近づいたりする直進運動に変換して伝達する。
【0059】
この可動ステージ用リンク機構8bは、スクライブ装置1の前後方向に離間して可動ステージ3bに接続された2つの縦リンク棒8b1と縦リンク棒8b2とを備えている。縦リンク棒8b1は、縦リンク棒8b2よりも前方に配置されている。また、可動ステージ用リンク機構8bは、縦リンク棒8b1と縦リンク棒8b2とを水平方向に接続する水平リンク棒8b3とを備えている。この水平リンク棒8b3は、縦リンク棒8b1と縦リンク棒8b2とに対して回動可能に接続されており、中間部分に傾動用アクチュエータ8aが下方から接続されている。また、可動ステージ用リンク機構8bは、縦リンク棒8b2の下端と支柱2dとに対して回動可能に接続された接続リンク棒8b4を備えている。
【0060】
分離用アクチュエータ8cは、例えば支柱2dに対してロッドが回動可能に固定されたシリンダであり、シリンダ本体部が縦リンク棒8b2の途中部位に回動可能に接続されている。
【0061】
このような構成を採用する場合には、
図6(a)に示す可動ステージ3bが支持姿勢である状態から、
図6(b)に示すように傾動用アクチュエータ8aのロッドを縮めることによって、可動ステージ3bが傾斜姿勢となる。また、可動ステージ3bが傾斜姿勢である状態で、
図6(c)に示すように分離用アクチュエータ8cのロッドを伸ばすことによって、可動ステージ3bが傾斜姿勢のまま固定ステージ3a(
図6においては不図示)から遠ざけられる。これらの傾動用アクチュエータ8aと分離用アクチュエータ8cとの進出タイミングを調整することによって、ガラス基板X(
図6においては不図示)がスクライブラインに沿って分割される。
【0062】
このような可動ステージ駆動ユニット8を備えることによって、作業者の力によって可動ステージ3bの姿勢変更を行う必要がなくなる。このため、把持部3cやインデックスプランジャ3dを省略することが可能となる。ただし、支持姿勢とされた可動ステージ3bの位置決めのために、インデックスプランジャ3dに換えて、支持姿勢とされた可動ステージ3bの上面に当接するストッパ(例えばストッパボルト)を設けることが望ましい。
【0063】
さらに、上記実施形態においては、ガラス基板Xを水平状態で支持する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
図7及び
図8は、ガラス基板Xを垂直姿勢で支持した状態でガラス基板Xに対してスクライブラインを形成する例について説明するための模式図である。
【0064】
例えば、
図7に示すように、ガラス基板Xを垂直姿勢で不図示の支持機構で支持し、複数のヘッドユニット5を水平方向に移動させてスクライブラインを形成するようにしても良い。このような場合には、
図7に示すように、ヘッドユニット5に対してガラス基板Xを間に挟んで反対側に配置される当て板9を備えることが望ましい。このような当て板9によってガラス基板Xが支持されることによって、ヘッドユニット5のホイール5c(
図7においては不図示)をガラス基板Xに対して一定の押圧力で安定して当接させることができる。
【0065】
この当て板9は、例えば、不図示の移動装置によって、ガラス基板Xに対して当離可能に移動可能とされ、ホイール5cがガラス基板Xに当接される前にガラス基板Xに対して当接され、ホイール5cがガラス基板Xから離間した後にガラス基板Xから離間されるようにしても良い。これによって、ガラス基板Xを移動させる場合に、当て板9がガラス基板Xの移動の妨げとなることを防止できる。
【0066】
なお、スクライブラインが形成された後は、例えばスクライブラインの下方のガラス基板Xの部位をロボットアーム等で曲げることで、ガラス基板Xをスクライブラインに沿って分割することができる。
【0067】
また、
図8に示すように、ガラス基板Xを垂直姿勢で不図示の支持機構で支持し、複数のヘッドユニット5を鉛直方向に移動させてスクライブラインを形成するようにしても良い。なお、スクライブラインが形成された後は、例えばスクライブラインよりも外側のガラス基板Xの部位にリンク機構10を接続し、リンク機構10を介して曲げ動力を伝達することで、ガラス基板Xをスクライブラインに沿って分割することができる。
【符号の説明】
【0068】
1……スクライブ装置、2……フレーム、2a……フレーム脚、2b……接続アーム、2c……門型部、2d……支柱、2e……梁部、3……テーブルユニット、3a……固定ステージ、3b……可動ステージ、3c……把持部、3d……インデックスプランジャ、3e……位置決めブロック、3f……押さえ機構、4……リニアガイド(ガイド)、4a……可動コア、5……ヘッドユニット、5a……ベース、5b……エアシリンダ、5c……ホイール、6……駆動部(アクチュエータ)、7……制御部、8……可動ステージ駆動ユニット、9……当て板、10……リンク機構、L……回転軸芯、S……隙間、X……ガラス基板(対象基板)