(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037385
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】ワイヤガイド、および、当該ワイヤガイドを備えたワイヤ送給装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/133 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
B23K9/133 502C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141493
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】清水 康隆
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶接ワイヤのセットアップを容易にし、また、溶接ワイヤの削れカスの発生を抑制できるワイヤガイドを提供する。
【解決手段】ワイヤ送給装置A1に内蔵され、溶接ワイヤWを挿通されるワイヤガイド6において、筒状で、単一の部材で構成されているガイド本体61と、ガイド本体61の側壁を貫通する第1孔部631と、ガイド本体61の軸方向に直交する第1方向(z方向)において、第1孔部631に対向する位置で側壁を貫通する第2孔部632とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ送給装置に内蔵され、溶接ワイヤを挿通されるワイヤガイドであって、
筒状で、単一の部材で構成されているガイド本体と、
前記ガイド本体の側壁を貫通する第1孔部と、
前記ガイド本体の軸方向に直交する第1方向において、前記第1孔部に対向する位置で前記側壁を貫通する第2孔部と、
を備えているワイヤガイド。
【請求項2】
前記ガイド本体は、前記第1孔部と前記第2孔部とに挟まれた連結部を備え、
前記連結部の前記第1方向の最小寸法は、前記溶接ワイヤの直径の半分以下である、
請求項1に記載のワイヤガイド。
【請求項3】
前記第1孔部は送給ロールに対向する位置に配置され、前記第2孔部は加圧ロールに対向する位置に配置されている、
請求項1または2に記載のワイヤガイド。
【請求項4】
前記第1孔部から前記ガイド本体の軸方向に離間した位置で前記側壁を貫通する第3孔部と、
前記第1方向において、前記第3孔部に対向する位置で前記側壁を貫通する第4孔部と、
をさらに備えている、
請求項1ないし3のいずれかに記載のワイヤガイド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のワイヤガイドと、
前記第1孔部において前記溶接ワイヤに接触して送給する送給ロールと、
前記第2孔部において前記溶接ワイヤに接触し、前記送給ロールとの間で当該溶接ワイヤを挟持する加圧ロールと、
を備えているワイヤ送給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ送給装置に内蔵され、溶接ワイヤを案内する部材であるワイヤガイド、および、当該ワイヤガイドを備えたワイヤ送給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極型の溶接システムにおいて、ワイヤ送給装置は、溶接ワイヤを溶接トーチに送給する。特許文献1には、4ロール型のワイヤ送給装置が開示されている。4ロール型のワイヤ送給装置は、溶接ワイヤの送給方向における上流側(ワイヤリール側)に配置された送給ロールおよび加圧ロールと、下流側(溶接トーチ側)に配置された送給ロールおよび加圧ロールとで、溶接ワイヤを送給している。このようなワイヤ送給装置は、内部で溶接ワイヤを案内する部材として、3個のガイド部材を備えている。上流側のガイド部材は、ワイヤリールに巻回された溶接ワイヤを上流側の送給ロールまで案内し、例えばインレットガイドなどと呼ばれる。中央のガイド部材は、溶接ワイヤを上流側の送給ロールから下流側の送給ロールまで案内し、例えばセンタガイドなどと呼ばれる。下流側のガイド部材は、溶接ワイヤを下流側の送給ロールからワイヤ送給装置の送出口まで案内し、例えばアウトレットガイドなどと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業者は、溶接作業の前に溶接ワイヤをワイヤ送給装置にセットアップする際、溶接ワイヤをインレットガイド、センタガイド、およびアウトレットガイドの3個のガイド部材に順に通す必要がある。したがって、セットアップに手間と時間がかかる。また、溶接ワイヤの中心のパスラインがずれて芯ずれが発生すると、各ガイド部材の入口部で溶接ワイヤがこすれて、削れカスが発生する場合がある。
【0005】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、溶接ワイヤのセットアップを容易にし、また、溶接ワイヤの削れカスの発生を抑制できるワイヤガイドを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面によって提供されるワイヤガイドは、ワイヤ送給装置に内蔵され、溶接ワイヤを挿通されるワイヤガイドであって、筒状で、単一の部材で構成されているガイド本体と、前記ガイド本体の側壁を貫通する第1孔部と、前記ガイド本体の軸方向に直交する第1方向において、前記第1孔部に対向する位置で前記側壁を貫通する第2孔部とを備えている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ガイド本体は、前記第1孔部と前記第2孔部とに挟まれた連結部を備え、前記連結部の前記第1方向の最小寸法は、前記溶接ワイヤの直径の半分以下である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1孔部は送給ロールに対向する位置に配置され、前記第2孔部は加圧ロールに対向する位置に配置されている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1孔部から前記ガイド本体の軸方向に離間した位置で前記側壁を貫通する第3孔部と、前記第1方向において、前記第3孔部に対向する位置で前記側壁を貫通する第4孔部とをさらに備えている。
【0011】
本発明の第2の側面によって提供されるワイヤ送給装置は、本発明の第1の側面によって提供されるワイヤガイドと、前記第1孔部において前記溶接ワイヤに接触して送給する送給ロールと、前記第2孔部において前記溶接ワイヤに接触し、前記送給ロールとの間で当該溶接ワイヤを挟持する加圧ロールとを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るワイヤガイドは、第1方向において互いに対向する第1孔部および第2孔部を備えている。したがって、当該ワイヤガイドは、第1孔部および第2孔部を、ワイヤ送給装置の送給ロールおよび加圧ロールの位置に合わせて配置されることで、送給ロールおよび加圧ロールを、ワイヤガイドに挿通された溶接ワイヤに接触させることができる。したがって、当該ワイヤガイドは、従来のワイヤ送給装置の送給ロールの上流側のガイド部材および下流側のガイド部材に代えて用いることができる。作業者は、従来の2個に分かれていたガイド部材のそれぞれに溶接ワイヤを通す場合と比較して、溶接ワイヤのセットアップを容易にできる。また、当該ワイヤガイドは、芯ずれが発生した場合に、従来の2個に分かれていたガイド部材と比較して、溶接ワイヤの削れカスの発生を抑制できる。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るワイヤ送給装置を示す正面図である。
【
図3】第1実施形態に係るワイヤガイドを示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は(a)のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るワイヤガイドの変形例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は(a)のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】第2実施形態に係るワイヤ送給装置を説明するための図であり、(a)はワイヤ送給装置を示す正面図であり、(b)はワイヤガイドを示す平面図であり、(c)はワイヤガイドを示す正面図である。
【
図6】第3実施形態に係るワイヤ送給装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1~
図3は、第1実施形態に係るワイヤ送給装置A1を説明するための図である。
図1は、ワイヤ送給装置A1を示す正面図である。
図2は、
図1の部分拡大図である。なお、
図2においては、理解の便宜上、溶接ワイヤWの視認できる部分にハッチングを付している。
図3は、第1実施形態に係るワイヤガイドを示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は(a)のIII-III線に沿う断面図である。
【0017】
ワイヤ送給装置A1は、4ロール型のワイヤ送給装置であり、上流側(
図1においては左側)に配置された図示しないワイヤリールに巻回された溶接ワイヤWを、下流側(
図1においては右側)に配置された図示しない溶接トーチまで送給する。溶接ワイヤWは、ワイヤ送給装置A1の内部を水平方向に送給される。以下では、ワイヤ送給装置A1内における溶接ワイヤWの送給方向をx方向とし、鉛直方向(平面視方向)をz方向とし、x方向およびz方向に直交する方向(正面視方向)をy方向とする。
図1に示すように、ワイヤ送給装置A1は、支持部材1、送給ロール2,4、加圧ロール3,5、およびワイヤガイド6を備えている。
【0018】
支持部材1は、例えば金属製の部材であり、送給ロール2,4および加圧ロール3,5を支持している。
【0019】
送給ロール2は、回転軸心21を中心として回転駆動可能に支持部材1に対して支持されている。送給ロール2には、ギヤ22が付設されており、当該ギヤ22が駆動ギヤ11に噛み合わされている。送給ロール4は、送給ロール2と同一外径を有し、送給ロール2の下流側(
図1においては右側)の同一高さ位置において、回転軸心41を中心として回転駆動可能に支持部材1に対して支持されている。送給ロール4には、ギヤ22と同径のギヤ42が付設されており、当該ギヤ42が駆動ギヤ11に噛み合わされている。駆動ギヤ11は、送給ロール2と送給ロール4との間に配置され、図示しない駆動モータによって回転駆動させられる。これにより、送給ロール2と送給ロール4とは、同一方向(
図1に矢印で示すN方向)に同一速度で回転させられる。また、送給ロール2の周面23および送給ロール4の周面43には、溶接ワイヤWの周面の一部が嵌り込む凹溝23a(
図2参照)が形成されている。
【0020】
加圧ロール3は、送給ロール2の鉛直方向(z方向)上側の位置において、送給ロール2との間に溶接ワイヤWを挟持し得るようにして、従動回転可能に設けられている。本実施形態では、加圧ロール3は、支持部材1に対して開閉回動可能に連結された回動アーム12に設けられた支軸31に対して回転可能に支持されている。回動アーム12は、支持部材1の中央付近上部を支点として開閉回動可能となっている。回動アーム12は、端部に支持したネジ部材121を支持部材1の適部にねじ付けることにより、閉状態が維持される。また、回動アーム12は、閉状態において、ネジ部材121の調整によって、送給ロール2との間で挟持される溶接ワイヤWに対する加圧ロール3の加圧力を調節できる。加圧ロール5は、加圧ロール3と同一外径を有し、送給ロール4の鉛直方向(z方向)上側の位置において、送給ロール4との間に溶接ワイヤWを挟持し得るようにして、従動回転可能に設けられている。本実施形態では、加圧ロール5は、支持部材1に対して開閉回動可能に連結された回動アーム13に設けられた支軸51に対して回転可能に支持されている。回動アーム13は、支持部材1の中央付近上部を支点として開閉回動可能となっている。回動アーム13は、端部に支持したネジ部材131を支持部材1の適部にねじ付けることにより、閉状態が維持される。また、回動アーム13は、閉状態において、ネジ部材131の調整によって、送給ロール4との間で挟持される溶接ワイヤWに対する加圧ロール5の加圧力を調節できる。
【0021】
ワイヤガイド6は、
図1に示すように、ワイヤ送給装置A1の内部において溶接ワイヤWを案内する部材であり、従来のワイヤ送給装置のインレットガイド、センタガイド、およびアウトレットガイドの3個のガイド部材を1個の部材にまとめたものである。ワイヤガイド6は、円筒形状をなし、例えば鉄などの金属からなる。本実施形態では、ワイヤガイド6は、単一の部材で構成されており、円柱形状の鉄の部材に加工を行うことで形成される。なお、ワイヤガイド6の形成方法は限定されない。例えば、ワイヤガイド6は、鉄の板部材を丸めて両端部を溶接することで円筒形状の部材に加工し、当該円筒形状の部材に加工を行うことで形成されてもよい。また、ワイヤガイド6の材料は、金属に限定されない。ワイヤガイド6は、例えば、合成樹脂製であってもよい。ワイヤガイド6は、
図3に示すように、ガイド本体61、第1孔部631、第2孔部632、第3孔部641、および第4孔部642を備えている。以下では、ワイヤガイド6(ガイド本体61)の延びる方向を軸方向とし、軸方向に直交する方向(円筒の径方向)を径方向として説明する。また、ワイヤガイド6においては、ワイヤ送給装置A1に取り付けられた状態を基準として、x方向、y方向、およびz方向を示している。したがって、軸方向はx方向に一致する。
【0022】
ガイド本体61は、ワイヤガイド6の本体であり、円筒形状をなし、軸方向に貫通する挿通孔62に溶接ワイヤWが挿通される。なお、ガイド本体61は、円筒形状に限定されず、多角形の筒形状であってもよい。ガイド本体61は、単一の部材で構成されている。なお、ワイヤガイド6は、ガイド本体61の例えば両端部に、それぞれ別の部材が固定されたものであってもよい。
【0023】
第1孔部631、第2孔部632、第3孔部641、および第4孔部642は、それぞれ、ガイド本体61の側壁に形成された、外側の側面から挿通孔62まで貫通した貫通孔である。第1孔部631、第2孔部632、第3孔部641、および第4孔部642は、
図3(b)に示すように、ガイド本体61の側壁が正面視において上側と下側からそれぞれ円弧形状に削り取られることで形成されている。第1孔部631、第2孔部632、第3孔部641、および第4孔部642の平面視形状は、
図3(a)に示すように、軸方向(x方向)に長い楕円形状である。
【0024】
第1孔部631は、ガイド本体61の軸方向(x方向)の中央より一方側(
図3においては左側)寄りで、鉛直方向(z方向)の下側に形成されている。第2孔部632は、ガイド本体61の径方向において、第1孔部631に対向する位置、すなわち、鉛直方向(z方向)の上側に形成されている。第3孔部641は、第1孔部631から軸方向に離間した位置で、ガイド本体61の軸方向の中央より他方側(
図3においては右側)寄りに形成されており、鉛直方向(z方向)の下側に形成されている。第4孔部642は、ガイド本体61の径方向において、第3孔部641に対向する位置、すなわち、鉛直方向(z方向)の上側に形成されている。本実施形態では、鉛直方向(z方向)が本発明の「第1方向」に相当する。
図1に示ように、第1孔部631、第2孔部632、第3孔部641、および第4孔部642は、ワイヤガイド6がワイヤ送給装置A1に取り付けられたときに、それぞれ、送給ロール2、加圧ロール3、送給ロール4、および加圧ロール5に対向する位置に配置されている。
【0025】
ガイド本体61は、第1孔部631と第2孔部632とに挟まれた部位である2個の連結部633と、第3孔部641と第4孔部642とに挟まれた部位である2個の連結部643とを備えている。
図2に示すように、連結部633の、鉛直方向(z方向)の最小の寸法X2は、溶接ワイヤWの直径の寸法X1より小さい。したがって、ワイヤガイド6に挿通された溶接ワイヤWは、正面視において、連結部633に重ならない部分(
図2のハッチング部分)を有している。本実施形態では、寸法X2は、寸法X1の半分以下である。なお、寸法X2は、これに限定されず、寸法X1より小さければよい。ただし、寸法X2は、寸法X1の半分以下であることが望ましい。連結部643の、鉛直方向(z方向)の最小の寸法(本実施形態では寸法X2と同じ寸法)も、同様である。
【0026】
ワイヤガイド6がワイヤ送給装置A1に取り付けられ、挿通孔62に溶接ワイヤWが挿通された状態で、
図2に示すように、送給ロール2は、第1孔部631において、ガイド本体61に接触することなく溶接ワイヤWに接触し、加圧ロール3は、第2孔部632において、ガイド本体61に接触することなく溶接ワイヤWに接触する。また、送給ロール4は、第3孔部641において、ガイド本体61に接触することなく溶接ワイヤWに接触し、加圧ロール5は、第4孔部642において、ガイド本体61に接触することなく溶接ワイヤWに接触する。溶接ワイヤWは、送給ロール2と加圧ロール3とによって挟持され、また、送給ロール4と加圧ロール5とによって挟持される。そして、
図1に示すように、送給ロール2,4が矢印で示すN方向に回転することで、溶接ワイヤWは下流側(
図1においては右側)に送給される。
【0027】
ワイヤガイド6は、あらかじめワイヤ送給装置A1に取り付けられており、溶接ワイヤWは、ワイヤガイド6の挿通孔62の上流側の開口から挿入されて、下流側の開口まで挿通孔62内を挿通される。なお、先に挿通孔62に溶接ワイヤWが挿通されたワイヤガイド6を、ワイヤ送給装置A1に取り付けてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係るワイヤガイド6の作用効果について説明する。
【0029】
本実施形態によると、ワイヤガイド6は、鉛直方向(z方向)において互いに対向する第1孔部631および第2孔部632を備えている。送給ロール2は、第1孔部631において溶接ワイヤWに接触し、加圧ロール3は、第2孔部632において溶接ワイヤWに接触する。また、ワイヤガイド6は、鉛直方向(z方向)において互いに対向する第3孔部641および第4孔部642を備えている。送給ロール4は、第3孔部641において溶接ワイヤWに接触し、加圧ロール5は、第4孔部642において溶接ワイヤWに接触する。これにより、ワイヤ送給装置A1は、送給ロール2,4を回転させることで、溶接ワイヤWを送給できる。つまり、ワイヤガイド6は、従来のインレットガイド、センタガイド、およびアウトレットガイドの3個のガイド部材に代えて、用いることができる。作業者は、溶接ワイヤWのセットアップにおいて、溶接ワイヤWをワイヤガイド6のみに通すだけである。したがって、従来の3個に分かれていたガイド部材のそれぞれに溶接ワイヤWを通す場合と比較して、溶接ワイヤWのセットアップを容易にできる。また、ワイヤガイド6は、芯ずれが発生した場合に、従来の3個に分かれていたガイド部材と比較して、溶接ワイヤWの削れカスの発生を抑制できる。また、ワイヤ送給装置A1の部品点数が削減されるので、部品の在庫管理が簡易になり、また、ユーザの把握すべき消耗部品の点数が削減される。
【0030】
また、本実施形態によると、ワイヤガイド6が1個の部材なので、溶接ワイヤWのセットアップにおいて、作業者は、先にワイヤガイド6の挿通孔62に溶接ワイヤWを挿通し、溶接ワイヤWが挿通されたワイヤガイド6を、ワイヤ送給装置A1に取り付けるという方法を行うことができる。これにより、溶接前のセットアップが、より容易になる。
【0031】
また、本実施形態によると、連結部633および連結部643の、鉛直方向(z方向)の最小の寸法X2は、溶接ワイヤWの直径の寸法X1の半分以下である。これにより、送給ロール2(4)と加圧ロール3(5)とが、連結部633(643)に接触することを防止しつつ、溶接ワイヤWを適切な圧力で挟持可能である。
【0032】
なお、本実施形態においては、第1孔部631、第2孔部632、第3孔部641、および第4孔部642が、ガイド本体61の側壁を円弧形状に削り取ることで形成された、平面視形状が楕円形状である場合について説明したが、これに限られない。例えば、第1孔部631、第2孔部632、第3孔部641、および第4孔部642は、
図4(b)に示すように、ガイド本体61の側壁が正面視において上側と下側からそれぞれ矩形状に削り取られることで形成されてもよい。この場合、第1孔部631、第2孔部632、第3孔部641、および第4孔部642の平面視形状は、
図4(a)に示すように、軸方向(x方向)に長い長矩形状になる。第1孔部631、第2孔部632、第3孔部641、および第4孔部642の形状は限定されず、送給ロール2,4および加圧ロール3,5が溶接ワイヤWに接触でき、かつ、ガイド本体61に接触しない形状であればよい。
【0033】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態に係るワイヤ送給装置A2を説明するための図である。同図(a)は、ワイヤ送給装置A2を示す正面図である。同図(b)は、第2実施形態に係るワイヤガイド7を示す平面図であり、(c)はワイヤガイド7を示す正面図である。
図5において、ワイヤ送給装置A1(
図1参照)およびワイヤガイド6(
図3参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。本実施形態に係るワイヤ送給装置A2は、溶接ワイヤWを案内するガイド部材の構成が、ワイヤ送給装置A1と異なる。
【0034】
ワイヤ送給装置A2は、ワイヤガイド6に代えて、ワイヤガイド7およびインレットガイド8を備えている。インレットガイド8は、従来のワイヤ送給装置に用いられるインレットガイドと同様のガイド部材である。インレットガイド8は、ワイヤリールに巻回された溶接ワイヤWを送給ロール2まで案内する。
【0035】
ワイヤガイド7は、従来のワイヤ送給装置に用いられるセンタガイドおよびアウトレットガイドの2個のガイド部材を1個の部材にまとめたものであり、x方向の寸法が小さく、第3孔部641および第4孔部642を有しない以外は、ワイヤガイド6と同様のものである。ワイヤガイド7は、溶接ワイヤWを送給ロール2からワイヤ送給装置A2の送出口まで案内する。ワイヤガイド7は、
図5(b)および(c)に示すように、ガイド本体61、第1孔部631、および第2孔部632を備えている。ワイヤガイド7は、
図5(a)に示すように、第1孔部631が送給ロール4に対向し、第2孔部632が加圧ロール5に対向するように、ワイヤ送給装置A2に取り付けられている。送給ロール4は、第1孔部631において、ガイド本体61に接触することなく溶接ワイヤWに接触し、加圧ロール5は、第2孔部632において、ガイド本体61に接触することなく溶接ワイヤWに接触する。
【0036】
本実施形態によると、ワイヤガイド7は、従来のセンタガイドおよびアウトレットガイドの2個のガイド部材に代えて、用いることができる。作業者は、溶接ワイヤWのセットアップにおいて、溶接ワイヤWをインレットガイド8およびワイヤガイド7の2個のガイド部材に通すだけである。したがって、従来の3個に分かれていたガイド部材のそれぞれに溶接ワイヤWを通す場合と比較して、溶接ワイヤWのセットアップを容易にできる。また、ワイヤガイド7は、芯ずれが発生した場合に、従来のセンタガイドおよびアウトレットガイドと比較して、溶接ワイヤWの削れカスの発生を抑制できる。また、ワイヤ送給装置A2の部品点数が削減されるので、部品の在庫管理が簡易になり、また、ユーザの把握すべき消耗部品の点数が削減される。
【0037】
なお、本実施形態では、ワイヤ送給装置A2がワイヤガイド7およびインレットガイド8を備えている場合について説明したが、これに限られない。ワイヤ送給装置A2は、
従来のワイヤ送給装置に用いられるインレットガイドおよびセンタガイドの2個のガイド部材を1個の部材にまとめたワイヤガイド7と、従来のワイヤ送給装置に用いられるアウトレットガイドとを備えてもよい。
【0038】
〔第3実施形態〕
図6は、第3実施形態に係るワイヤ送給装置A3を説明するための図であり、ワイヤ送給装置A3を示す正面図である。
図6において、ワイヤ送給装置A1(
図1参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。本実施形態に係るワイヤ送給装置A3は、2ロール型のワイヤ送給装置である点で、ワイヤ送給装置A1と異なる。
【0039】
ワイヤ送給装置A3は、送給ロール4および加圧ロール5を備えていない。また、ワイヤ送給装置A3は、ワイヤガイド6に代えて、第2実施形態に係るワイヤガイド7を備えている。ワイヤガイド7は、従来の2ロール型のワイヤ送給装置に用いられるインレットガイドおよびアウトレットガイドの2個のガイド部材に代えて、用いられる。本実施形態では、ワイヤガイド7は、第1孔部631が送給ロール2に対向し、第2孔部632が加圧ロール3に対向するように、ワイヤ送給装置A3に取り付けられている。送給ロール2は、第1孔部631において、ガイド本体61に接触することなく溶接ワイヤWに接触し、加圧ロール3は、第2孔部632において、ガイド本体61に接触することなく溶接ワイヤWに接触する。
【0040】
本実施形態によると、ワイヤガイド7は、従来のインレットガイドおよびアウトレットガイドの2個のガイド部材に代えて、用いることができる。作業者は、溶接ワイヤWのセットアップにおいて、溶接ワイヤWをワイヤガイド7のみに通すだけである。したがって、従来の2個に分かれていたガイド部材のそれぞれに溶接ワイヤWを通す場合と比較して、溶接ワイヤWのセットアップを容易にできる。また、ワイヤガイド7は、芯ずれが発生した場合に、従来のインレットガイドおよびアウトレットガイドと比較して、溶接ワイヤWの削れカスの発生を抑制できる。また、ワイヤ送給装置A3の部品点数が削減されるので、部品の在庫管理が簡易になり、また、ユーザの把握すべき消耗部品の点数が削減される。
【0041】
また、本実施形態によると、ワイヤガイド7が1個の部材なので、溶接ワイヤWのセットアップにおいて、作業者は、先にワイヤガイド7の挿通孔62に溶接ワイヤWを挿通し、溶接ワイヤWが挿通されたワイヤガイド7を、ワイヤ送給装置A3に取り付けるという方法を行うことができる。これにより、溶接前のセットアップが、より容易になる。
【0042】
本発明に係るワイヤガイドおよびワイヤ送給装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るワイヤガイドおよびワイヤ送給装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0043】
A1~A3:ワイヤ送給装置、2,4:送給ロール、3,5:加圧ロール、6:ワイヤガイド、61:ガイド本体、631:第1孔部、632:第2孔部、641:第3孔部、642:第4孔部、633,643:連結部、W:溶接ワイヤ