(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037412
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】感染抑制装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20220302BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20220302BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20220302BHJP
B60H 3/06 20060101ALI20220302BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20220302BHJP
F24F 13/068 20060101ALI20220302BHJP
B64D 11/06 20060101ALI20220302BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20220302BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
A61L9/00 Z
F24F7/00 A
F24F9/00 B
F24F9/00 M
B60H3/06 B
B60H3/06 Z
B60H1/00 102V
B60H1/00 103S
F24F13/068 C
B64D11/06
B60N2/56
A47C7/74 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141535
(22)【出願日】2020-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中摩 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】仲村渠 波
(72)【発明者】
【氏名】河内 雅之
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3L211
4C180
【Fターム(参考)】
3B084JA01
3B084JA02
3B087DE09
3B087DE10
3L211BA08
3L211BA09
3L211BA53
3L211DA53
3L211DA73
3L211DA74
3L211DA75
3L211DA96
3L211EA12
3L211EA13
3L211EA17
3L211EA18
3L211GA82
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180CC03
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH19
4C180KK01
4C180KK03
4C180MM08
(57)【要約】
【課題】汎用性が高く導入コストを抑制可能な感染抑制装置を提供する。
【解決手段】座席10に着席する着席者の空気感染を抑制するための感染抑制装置1であって、吸気口21、吸気口21から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構22、及び、座席10の前方に清浄空気を吹き出す吹出口23を有し、吹出口23から座席10の左右方向に対して垂直な層状に清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニット2を備え、エアバリア形成ユニット2は、座席10に対して着脱可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に着席する着席者の空気感染を抑制するための感染抑制装置であって、
吸気口、前記吸気口から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構、及び、前記座席の前方に前記清浄空気を吹き出す吹出口を有し、前記吹出口から前記座席の左右方向に対して垂直な層状に前記清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニットを備え、
前記エアバリア形成ユニットは、前記座席に対して着脱可能に構成されている、
感染抑制装置。
【請求項2】
前記エアバリア形成ユニットは、前記座席の背もたれ又はヘッドレストを左右から挟み込むように設けられた2つのアーム部を有し、前記2つのアーム部のそれぞれの前端部に、前記吹出口が形成されている、
請求項1に記載の感染抑制装置。
【請求項3】
前記エアバリア形成ユニットは、前記ヘッドレストの上方に前記座席の前方に臨むように形成され、前方に前記座席の左右方向に対して平行な層状に前記清浄空気を吹出す上側吹出口をさらに有する、
請求項2に記載の感染抑制装置。
【請求項4】
前記エアバリア形成ユニットは、前記吸気口から吸気される空気の状態を検出するためのセンサと、前記センサで検出した前記吸気口から吸気される空気の状態を表示する表示器と、をさらに有する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の感染抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乗り物に搭載され、乗客間での感染を抑制するための感染抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機等の乗り物において、乗客間でのウィルスや細菌の感染が問題となっている。特許文献1では、座席のヘッドレストの側部から、座席に着席している乗客の顔の周囲へと清浄空気を供給する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、座席と一体に設けられている。そのため、特許文献1の装置を導入するためには、座席全体を取り替える必要があった。そのため、既存の座席をそのまま利用することができずに導入コストが高くなってしまうおそれがあった。また、特許文献1の装置では、様々な形状の座席に対応することが困難であり、汎用性が低いという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、汎用性が高く導入コストを抑制可能な感染抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、座席に着席する着席者の空気感染を抑制するための感染抑制装置であって、吸気口、前記吸気口から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構、及び、前記座席の前方に前記清浄空気を吹き出す吹出口を有し、前記吹出口から前記座席の左右方向に対して垂直な層状に前記清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニットを備え、前記エアバリア形成ユニットは、前記座席に対して着脱可能に構成されている、感染抑制装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、汎用性が高く導入コストを抑制可能な感染抑制装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係る感染抑制装置を座席に取付けた際の斜視図である。
【
図2】
図1の感染抑制装置におけるエアバリア形成ユニットの座席への取付けを説明する説明図である。
【
図3】
図1の感染抑制装置におけるエアバリア形成ユニットの構成例を示す模式図である。
【
図5】(a),(b)は、本発明の他の実施の形態に係る感染抑制装置を座席に取付けた際の斜視図である。
【
図6】
図5の感染抑制装置におけるエアバリア形成ユニットの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図1は、(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係る感染抑制装置を座席に取付けた際の斜視図である。
図2は、
図1の感染抑制装置におけるエアバリア形成ユニットの座席への取付けを説明する説明図である。
図3は、
図1の感染抑制装置におけるエアバリア形成ユニットの構成例を示す模式図である。
【0011】
図1~3に示すように、感染抑制装置1は、座席10に着席する着席者の空気感染を抑制するための装置である。本実施の形態では、感染抑制装置1を設ける座席10が、航空機の座席(客席)である場合について説明する。ただし、感染抑制装置1を設ける座席10は航空機の座席に限らず、例えば、新幹線や特急電車等の長距離列車、あるいはバス等の乗り物の座席であってもよく、乗り物以外の座席にも適用可能である。詳細は後述するが、感染抑制装置1では、細菌やウィルスの分解及び不活化のみならず、臭いの抑制や粒子状物質(PM)の除去も可能であるため、多数の乗客が長時間閉鎖空間で過ごすことが強いられる乗り物において、特に好適に用いることができる。
【0012】
座席10は、図示しない座面と、座面の後方の端部から上方に延びる背もたれ11と、を有している。背もたれ11の上部には、ヘッドレスト12が設けられている。座席10は、座面に対する背もたれ11の傾斜角度を調整可能なリクライニング機能を有していてもよい。
【0013】
航空機のキャビンには、複数の座席10が整列して配置されている。より詳細には、座席10の前後方向及び左右方向に、複数の座席10が整列して配置されている。なお、ここでは、座席10の背もたれ11側を後方、その反対側を前方としている。また、座席10の側方を左右方向としている。一般的な航空機(旅客機)においては、乗り物の進行方向に対する前後方向、左右方向が、座席10の前後方向、左右方向と一致しているが、これに限らず、乗り物の進行方向と座席10の前後方向、左右方向が一致していなくてもよい。以下、前後、左右、上下の各方向は、座席10を基準とした方向を表すものとする。
【0014】
感染抑制装置1は、エアバリア形成ユニット2を備えている。エアバリア形成ユニット2は、座席10毎に設けられる。エアバリア形成ユニット2は、後方から吸気する吸気口21と、吸気口21から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構22と、前方に清浄空気を吹き出す吹出口23と、を有している。エアバリア形成ユニット2の詳細については、後述する。
【0015】
本実施の形態に係る感染抑制装置1では、エアバリア形成ユニット2は、座席10に対して着脱可能に構成されている。すなわち、感染抑制装置1は、エアバリア形成ユニット2を、座席10に対して着脱可能に取付ける取付部3を備えている。
【0016】
図3に示すように、本実施の形態では、取付部3が、マジックテープ(登録商標)31から構成されている。マジックテープ(登録商標)31は、座席10のヘッドレスト12の上面及び両側面に取付けられると共に、エアバリア形成ユニット2におけるヘッドレスト12との接触面(後述する本体部24の下面、左右に延びるアーム部25の下面、及び上下に延びるアーム部25の側面)に、それぞれ設けられている。詳細は後述するが、エアバリア形成ユニット2では、光源223として発光ダイオードを用いているために非常に軽量であり、マジックテープ(登録商標)31のような簡易な取付部3を用いても、容易にかつ十分に固定可能である。
【0017】
なお、取付部3の具体的な構成はこれに限らず、例えば、ボルトを用いてエアバリア形成ユニット2を座席10に締結固定してもよいし、ナイロンバンドやゴムバンド等のバンドを用いてエアバリア形成ユニット2を座席10(例えばヘッドレスト12の部分)に固定してもよい。また、座席10に専用の治具を取付け、その治具にエアバリア形成ユニット2を固定するように構成してもよい。例えば、ヘッドレスト12の支柱に治具を固定し、その治具にエアバリア形成ユニット2を取付ける構成とすることもできる。また、座席10の枠等に係止するラッチ等の係止部をエアバリア形成ユニット2に設けておき、係止部を座席10に係止してエアバリア形成ユニット2を固定する構造等も可能である。
【0018】
エアバリア形成ユニット2を、座席10に対して着脱可能とすることで、既存の座席10をそのまま利用することが可能になり、座席10ごと取り替える従来技術と比較して、導入コストを大幅に抑えることが可能になる。また、様々な形状の座席10に対応できるため、汎用性が向上する。
【0019】
以下、エアバリア形成ユニット2について詳細に説明する。エアバリア形成ユニット2の吸気口21は、空気清浄化機構22を収容する本体部24の背面24aに設けられた開口であり、本実施の形態では左右に延びるスリット状に形成されている(
図1(b)参照)。本実施の形態では、本体部24はヘッドレスト12の上に載置されており、本体部24から左右に延び、ヘッドレスト12を左右から挟み込むように2つのアーム部25が形成されている。エアバリア形成ユニット2は、全体として、前方から見て反時計回りに90度回転したコ字状に形成されており、ヘッドレスト12の上方と側方を覆うように配置されている。
【0020】
吹出口23は、2つのアーム部25のそれぞれの前端部(ヘッドレスト12の側方に位置するアーム部25の前端部)に形成された開口であり、上下に延びるスリット状に形成されている。本実施の形態では、両吹出口23は、ヘッドレスト12を左右から挟み込むように、ヘッドレスト12の側方に形成されることになる。吹出口23からは、座席10の左右方向に対して垂直(すなわち、上下及び前後方向に対して平行)な層状となるように、清浄空気がそれぞれ吹出される(
図1(a)の破線矢印A)。
【0021】
また、エアバリア形成ユニット2は、ヘッドレスト12の上方に座席10の前方に臨むように形成された上側吹出口26をさらに有している。上側吹出口26は、本体部24及びヘッドレスト12の上方に位置するアーム部25の前端部に形成された開口であり、左右に延びるスリット状に形成されている。上側吹出口26からは、前方に向かって、座席10の左右方向に対して平行な層状に清浄空気が吹き出される。ここでは、座面(床面)に対して平行に清浄空気を吹き出しており、上側吹出口26から吹き出される清浄空気は、上下方向に対して垂直な層状(左右及び前後方向に平行な層状)とされる(
図1(a)の破線矢印B)。
【0022】
本実施の形態では、両吹出口23の上端部と上側吹出口26の側端部が連結され、2つの吹出口23と上側吹出口26とが一体となっている。ただし、これに限らず、吹出口23と上側吹出口26とを連結せず、吹出口23と上側吹出口26とを別個に構成してもよい。上側吹出口26を有することで、座席10の上側からの空気の侵入が抑えられ、乗客等の飛沫感染をより抑制可能になる。なお、上側吹出口26は必須ではなく、省略可能である。
【0023】
図3に示すように、本体部24には、空気清浄化機構22とファン27とが設けられている。空気清浄化機構22は、吸気口21から導入された空気に対して、細菌やウィルスの分解及び不活化を行い、かつ、臭いの抑制や粒子状物質の除去を行うものである。空気清浄化機構22は、紫外線の照射により光触媒機能を発揮する光触媒が担持され塵埃を捕集する光触媒担持フィルタ221と、光触媒担持フィルタ221を通過した塵埃を捕集する捕集フィルタ222と、光触媒担持フィルタ221に紫外線を照射する光源223と、を有している。
【0024】
本実施の形態では、光源223として、紫外光を発する発光ダイオードを平面状に配置した第1発光ダイオード群223a及び第2発光ダイオード群223bを用いている。また、これら両発光ダイオード群223a,223bの間に光触媒担持フィルタ221と捕集フィルタ222を配置している。また、本実施の形態では、吸気口21の近傍に、また、ネット状(あるいはスポンジ状)のプレフィルタ224が設けられている。空気清浄化機構22は、吸気口21側(図示右側)から順に、プレフィルタ224、第1発光ダイオード群223a、光触媒担持フィルタ221、捕集フィルタ222、及び第2発光ダイオード群223bを順次配置して構成されている。
【0025】
本実施の形態では、両発光ダイオード群223a,223bとして発光波長が異なるものを用いている。具体的には、第1発光ダイオード群223aでは、波長250nm以上280nm以下の深紫外光を発する発光ダイオードを用い、第2発光ダイオード群223bでは、波長360nm以上380nm以下の紫外光を発する発光ダイオードを用いた。第1発光ダイオード群223aは、主に細菌やウィルスの不活化のために用いられ、第2発光ダイオード群223bは、主に光触媒を活性化させるために用いられる。
【0026】
さらに、本実施の形態では、光触媒担持フィルタ221として、第1発光ダイオード群223a側に、アパタイトを含有する光触媒が担持され、第2発光ダイオード群223b側に、酸化チタンを含む光触媒が担持されたものを用いた。殺菌能力が高いものの比較的強度の弱い波長250nm以上280nm以下の深紫外光が照射される第1発光ダイオード群223a側に、細菌やウィルスの吸着力及び不活化する能力が高いアパタイトを含む光触媒を担持させることで、細菌やウィルスを不活化させる能力をより高めることができる。
【0027】
光触媒担持フィルタ221としては、例えば、ハニカム状に多数の空間を仕切る壁部材を有し、当該壁部材で仕切られた各空間内に多数の光触媒の粒子が封じ込められたものを用いることができる。光触媒担持フィルタ221は、例えば、0.4μmの粒子の捕集率が99%未満である中高性能フィルタとされる。
【0028】
捕集フィルタ222としては、例えば、0.3μmの粒子の捕集率が90%以上の準HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)を用いることができる。なお、捕集フィルタ222は必須ではなく、省略可能である。
【0029】
このような構成の空気清浄化機構22を用いることで、細菌やウィルスの分解及び不活化のみならず、臭いの原因物質の除去による臭いの抑制や粒子状物質の除去も可能となり、乗客の快適性を向上できる。この空気清浄化機構22では、NOxなども分解可能であり、またPM2.5等の微粒子も除去可能である。
【0030】
図示していないが、空気清浄化機構22の前後には、紫外光を遮断する遮光部材が設けられてもよい。遮光部材としては、光を遮蔽しつつも空気の通過を妨げないものを用いることが望ましく、例えば、多数の孔を有するパンチングメタルを複数枚用い、孔の位置をずらし所定の間隔をあけて重ねられた部材等を用いることができる。
【0031】
ファン27は、空気の吸入(吸気)及び排出(吹き出し)を行うためのものであり、空気清浄化機構22の下流(吸気口21とは反対側)に設けられている。ファン27によって吸気口21から本体部24内に導入された空気は、空気清浄化機構22によって浄化され清浄空気となり、本体部24内の流路やアーム部25内の流路を通って、吹出口23や上側吹出口26から層状に吹き出されることになる。なお、ファン27を設ける位置は図示のものに限らず、例えば、吹出口23や上側吹出口26の近傍に設けてもよく、吹出口23や上側吹出口26の近傍と本体部24との両方にファンを設けてもよい。また、ファン27としては、縦型ファン(ラインフローファン(登録商標))や、複数の小型のファンを上下に並べて配置したものを用いてもよい。
【0032】
吹出口23及び上側吹出口26から層状に空気を吹き出すことによって、座席10の両側及び上方にエアバリア、すなわち空気の障壁(エアカーテンとも呼称される)を形成することができる。このエアバリアによって区画された空間への細菌やウィルスの侵入を抑制し、座席10の着席者の空気感染を抑制することが可能になる。
【0033】
また、エアバリア形成ユニット2に、吸気口21から吸気される空気の状態を検出するためのセンサ28と、センサ28が検出した空気の状態を表示する表示器29と、を有している。センサ28としては、温度センサ、湿度センサ、臭いセンサ、埃センサのいずれか、あるいは1つ以上を組み合わせて用いることができる。また、現在は実用化されていないが、将来的には、センサ28として、ウィルスや細菌を検出可能なセンサ(バイオセンサ等)を用いることもできる。
【0034】
表示器29は、本体部24の前面(上側吹出口26よりも上側の部分)に前方に臨むように設けられている。表示器29は、例えば液晶ディスプレイからなり、吸気口21から吸気される空気の状態を表示する。これに限らず、エアバリア形成ユニット2と別体に表示器29を有する小型端末を備えるようにし、エアバリア形成ユニット2と小型端末との間で無線通信を行うことで、小型端末の表示器29に空気の状態を表示するように構成することもできる。小型端末を座席10のアームレスト等に配置することで、着席者は振り返ったり立ち上がったりすることなく、より容易に空気の状態を確認することが可能になる。
【0035】
また、センサ28で検出した空気の状態は、無線通信等により外部装置に出力するように構成することもできる。これにより、例えば、外部装置にて、乗り物内(キャビン内など)の空気の状態の分布(例えば温度の分布、臭いの分布など)を解析することができ、分析結果を基に、例えば、新規な機体の開発や、航空機空調設計(空調解析)等を行うことが可能になる。また、分析結果を表示する表示器をコックピット等に設けることで、コックピット等でも、空気の状態分布を把握することが可能になる。
【0036】
また、エアバリア形成ユニット2は、吹出口23や上側吹出口26からの清浄空気の吹出量を調整可能な風量調整機構を有していてもよい。風量調整機構は、例えば、ファン27の駆動電流の制御、あるいはPWM制御等の適宜な制御によってファン27の回転数を調整することにより、清浄空気の吹出量を調整可能に構成される。また、風量調整機構は、吹出口23からの清浄空気の吹出量をゼロにする、すなわち清浄空気の吹き出し(エアバリアの形成)を停止できるように構成されてもよい。
【0037】
風量の調整については、座席10のアームレスト等に着席者が操作可能なコントローラを設け、当該コントローラの操作によってエアバリア形成ユニット2毎に(あるいは座席10毎に)個別に調整可能としてもよい。また、着席者による個別の風量の調整は不可とし、乗り物内(キャビン内)の全てのエアバリア形成ユニット2の風量を一括管理するように構成することもできる。上述のように外部装置にて空気の状態の分布を分析する場合、その外部装置により、それぞれのエアバリア形成ユニット2の風量(吹出量)を自動的に調整するように構成することもできる。例えば、空気の状態の分布の分析結果を基に、臭いの検出値が大きいエリアでエアバリア形成ユニット2の風量(吹出量)を大きくする等の制御を行うことができる。
【0038】
さらに、エアバリア形成ユニット2は、背もたれ11のリクライニング角度(座面と背もたれ11とのなす角度)に応じて、吹出口23や上側吹出口26からの清浄空気の吹き出し方向を制御する吹き出し方向制御機構を有していてもよい。吹き出し方向制御機構は、吹出口23に設けられたフィン23a(
図3参照)の角度を、背もたれ11のリクライニング角度に応じて制御することで、リクライニング角度によらず、前方に清浄空気を吹き出すことができる。また、吹き出し方向制御機構は、吹出口23や上側吹出口26からの清浄空気の吹き出し方向が、座面(床面)に対して平行か、あるいは背もたれ11に垂直な方向かを選択可能に構成されてもよい。なお、清浄空気の吹き出し方向が床面側に向いていると、床面の塵等が舞い上がり周囲に悪影響を及ぼすおそれがあるため、清浄空気の吹き出し方向は、床面に対して水平方向か、水平方向よりも上方の方向であるとよい。
【0039】
図1~3では図示を省略しているが、ヘッドレスト12の大きさが異なる座席10にも対応できるように、アーム部25は左右方向に伸縮可能に構成されていることが望ましい。アーム部25を伸縮する機構の具体的な構成については特に限定されるものではないが、例えば
図4に示すように、アーム部25のうち左右に延びる部分を分割すると共に、その分割部の外壁25a,25b同士を重ね合わせるように構成し、その重なり幅を変更することで、アーム部25を伸縮可能に構成してもよい。
図4の例では、重なり部分で内側に位置するアーム部25の外壁25aに外方に突出する突起251を設けると共に、重なり部分で外側に位置するアーム部25の外壁25bに突起251を収容する複数の凹部252を左右方向に離間して設け、突起251を収容する凹部252を適宜選択することで、アーム部25の左右方向における伸縮幅を調整可能となっている。
図4の例では、突起251をバネ等の付勢部材253により外方に付勢するよう構成することで、突起251を収容する凹部252の変更、すなわちアーム部25の伸縮幅の調整をより容易としている。ただし、
図4の機構はあくまで一例であり、アーム部25を伸縮する機構の具体的な構成は図示のものに限定されない。
【0040】
空気清浄化機構22やセンサ28等への電源供給は、内蔵されたバッテリにより行われてもよいし、外部から電源供給するように構成してもよい。外部から電源供給する場合、例えば、エアバリア形成ユニット2を乗り物の電源等の外部電源に接続するとよい。外部電源への接続形態としては、交流または直流の電源供給に用いる一般的な電源ケーブルを用いてもよいし、例えば、USBケーブルによる電源供給、シガーソケットからの電源供給も可能である。
【0041】
さらに、本実施の形態では、ヘッドレスト12にエアバリア形成ユニット2を設けるため、ファン27の音や空気の流れによる音が着席者に不快感を与えないように、本体部24やアーム部25の外壁を防音性の高い材質や構造で構成することがより好ましい。例えば、本体部24やアーム部25の外壁の少なくとも一部に、グラスウールやウレタンスポンジなどの吸音材や、エンボスや凹凸板等を用いた吸音構造を設けてもよい。
【0042】
本実施の形態では、感染抑制装置1を1人用の座席10に適用する場合について説明したが、本実施の形態におけるエアバリア形成ユニット2はヘッドレスト12に取付けられる構造となっているため、1人用の座席10に限らず、ヘッドレスト12が個別に設けられたベンチシートにも、本実施の形態は適用可能である。
【0043】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る感染抑制装置1では、エアバリア形成ユニット2が、座席10に対して着脱可能に構成されている。これにより、既存の座席10にエアバリア形成ユニット2を取り付けるのみで感染抑制装置1を導入可能となり、座席10ごと取り替える必要がある従来技術と比較して、導入コストを大幅に削減することが可能になる。また、座席10と別体にエアバリア形成ユニット2を構成することにより、様々な形状の座席10にもエアバリア形成ユニット2を適用可能となり、座席10とエアバリア形成ユニット2とを一体に構成した従来技術と比較して、汎用性を高めることが可能である。本実施の形態に係る感染抑制装置1を用いることで、ソーシャルディスタンスを確保することが難しい乗り物等の狭い空間においても、乗客間の感染抑制が可能になる。
【0044】
(他の実施の形態)
図5(a),(b)は、本発明の他の実施の形態に係る感染抑制装置1aを座席に取付けた際の斜視図である。
図6は、
図5の感染抑制装置1aにおけるエアバリア形成ユニット2の構成例を示す模式図である。
【0045】
図5,6に示す感染抑制装置1aでは、本体部24が座席10の背面に設けられており、本体部24から左右に延びるアーム部25が背もたれ11を左右から挟み込むように設けられている。また、本体部24から上方に延び、ヘッドレスト12の上方で前方に臨むように設けられたヘッド部241を有しており、ヘッド部241の前端部に上側吹出口26が設けられている。本体部24でファン27により送り出された清浄空気は、両アーム部25とヘッド部241とに分配され、両吹出口23及び上側吹出口26から吹き出される。感染抑制装置1aでは、本体部24が座席10の背面に設けられるため、ファン27の音や振動による着席者の不快感がより抑制される。
【0046】
(変形例)
上記実施の形態では、1つのエアバリア形成ユニット2が2つの吹出口23と上側吹出口26とを有する場合について説明したが、これに限らず、例えば、2つの吹出口23を有するエアバリア形成ユニットと、上側吹出口26を有するエアバリア形成ユニットとを別体に構成してもよい。また、吹出口23,26毎に別体にエアバリア形成ユニットを構成することもできる。つまり、複数のエアバリア形成ユニットを1つの座席10に取付けるようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、上側吹出口26を有する場合について説明したが、上側吹出口26は必須ではなく、省略可能である。
【0048】
また、上記実施の形態では、座席10が飛行機の座席である場合について説明したが、本発明は、乗り物以外の座席、例えば、映画館や劇場等の座席、あるいは病院の待合室の座席や治療時に使用される座席等にも適用可能である。
【0049】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0050】
[1]座席(10)に着席する着席者の空気感染を抑制するための感染抑制装置(1)であって、吸気口(21)、前記吸気口(21)から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構(22)、及び、前記座席(10)の前方に前記清浄空気を吹き出す吹出口(23)を有し、前記吹出口(23)から前記座席の左右方向に対して垂直な層状に前記清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニット(2)を備え、前記エアバリア形成ユニット(2)は、前記座席(10)に対して着脱可能に構成されている、感染抑制装置(1)。
【0051】
[2]前記エアバリア形成ユニット(2)は、前記座席(10)の背もたれ(11)又はヘッドレスト(12)を左右から挟み込むように設けられた2つのアーム部(25)を有し、前記2つのアーム部(25)のそれぞれの前端部に、前記吹出口(23)が形成されている、[1]に記載の感染抑制装置(1)。
【0052】
[3]前記エアバリア形成ユニット(2)は、前記ヘッドレスト(12)の上方に前記座席(10)の前方に臨むように形成され、前方に前記座席(10)の左右方向に対して平行な層状に前記清浄空気を吹出す上側吹出口(26)をさらに有する、[2]に記載の感染抑制装置(1)。
【0053】
[4]前記エアバリア形成ユニット(2)は、前記吸気口(21)から吸気される空気の状態を検出するためのセンサ(28)と、前記センサ(28)で検出した前記吸気口(21)から吸気される空気の状態を表示する表示器(29)と、をさらに有する、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の感染抑制装置(1)。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…感染抑制装置
2…エアバリア形成ユニット
21…吸気口
22…空気清浄化機構
23…吹出口
24…本体部
25…アーム部
26…上側吹出口
27…ファン
28…センサ
29…表示器
3…取付部
31…マジックテープ(登録商標)
10…座席
11…背もたれ
12…ヘッドレスト
【手続補正書】
【提出日】2021-11-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に着席する着席者の空気感染を抑制するための感染抑制装置であって、
吸気口、前記吸気口から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構、及び、前記座席の前方に前記清浄空気を吹き出す吹出口を有し、前記吹出口から前記座席の左右方向に対して垂直な層状に前記清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニットを備え、
前記エアバリア形成ユニットは、前記座席に対して着脱可能に構成されており、
前記エアバリア形成ユニットは、前記座席のヘッドレストの上方に前記座席の前方に臨むように形成され、前方に前記座席の左右方向に対して平行な層状に前記清浄空気を吹出す上側吹出口をさらに有する、
感染抑制装置。
【請求項2】
前記エアバリア形成ユニットは、前記座席の背もたれ又は前記ヘッドレストを左右から挟み込むように設けられた2つのアーム部を有し、前記2つのアーム部のそれぞれの前端部に、前記吹出口が形成されている、
請求項1に記載の感染抑制装置。
【請求項3】
前記エアバリア形成ユニットは、前記吸気口から吸気される空気の状態を検出するためのセンサと、前記センサで検出した前記吸気口から吸気される空気の状態を表示する表示器と、をさらに有する、
請求項1または2に記載の感染抑制装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、座席に着席する着席者の空気感染を抑制するための感染抑制装置であって、吸気口、前記吸気口から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構、及び、前記座席の前方に前記清浄空気を吹き出す吹出口を有し、前記吹出口から前記座席の左右方向に対して垂直な層状に前記清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニットを備え、前記エアバリア形成ユニットは、前記座席に対して着脱可能に構成されており、前記エアバリア形成ユニットは、前記座席のヘッドレストの上方に前記座席の前方に臨むように形成され、前方に前記座席の左右方向に対して平行な層状に前記清浄空気を吹出す上側吹出口をさらに有する、感染抑制装置を提供する。