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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037418
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】試料調製装置及び試料調製システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20220302BHJP
   G01N 1/34 20060101ALI20220302BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20220302BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20220302BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C12M1/26
G01N1/34
G01N1/10 B
G01N1/28 J
C12M1/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141546
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】中鉢 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】町田 賢三
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義明
(72)【発明者】
【氏名】渕上 彩
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AD09
2G052AD29
2G052AD49
2G052CA03
2G052CA04
2G052CA12
2G052CA35
2G052EA02
2G052EA06
2G052EA17
4B029AA07
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC01
4B029FA05
4B029GA08
4B029GB05
4B029GB10
4B029HA05
4B029HA10
(57)【要約】
【課題】
本技術は、目的細胞の含有割合を高めるための試料調製システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
本技術は、容器と、前記容器に収容されている、生体粒子含有液体が流れる流路と、を含み、前記流路は、前記生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており、且つ、前記流路の外周壁は、前記生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている、試料調製装置を提供する。また、本技術は、前記試料調製装置と前記流路を通過した生体粒子含有液体の分析を実行する分析装置とを含む試料調製システムも提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器に収容されている、生体粒子含有液体が流れる流路と、
を含み、
前記流路は、前記生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており、且つ、
前記流路の外周壁は、前記生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている、
試料調製装置。
【請求項2】
前記流路が螺旋形状を有する、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項3】
前記流路は、1つの軸の周囲を回るようなカーブ形状を有する、請求項2に記載の試料調製装置。
【請求項4】
前記流路が、前記軸の周囲を1回以上回るように形成されている、請求項3に記載の試料調製装置。
【請求項5】
前記流路の外周壁が、所定の曲率を有している、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項6】
前記流路が円筒形状を有する、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項7】
前記生体粒子含有液体が、前記円筒形状の軸の周囲を回る流れを形成するように構成されている、請求項6に記載の試料調製装置。
【請求項8】
前記流路がU字形状を有する、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項9】
U字形状を有する前記流路を複数含み、当該複数のU字形状流路が互いに接続されて、1筋の流れを形成する、請求項8に記載の試料調製装置。
【請求項10】
前記外周壁が多孔性である、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項11】
前記外周壁が、前記生体粒子含有液体に含まれる生体粒子の一部を通過させ、残りの生体粒子を通過させない、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項12】
前記容器は、前記生体粒子含有液体を前記流路へ導入する第一インレットと、前記流路を通過した前記生体粒子含有液体を前記容器の外へ排出する第一アウトレットとを有し、且つ、
前記容器は、前記流路の外部へ移行した前記成分を受け取る液体を前記容器内に導入する第二インレットと、前記液体を前記容器の外へ排出する第二アウトレットとを有する、
請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項13】
前記試料調製装置は、前記第二インレットから導入された前記液体が前記容器内を旋回して流れるように構成されている、請求項12に記載の試料調製装置。
【請求項14】
前記第二インレット及び前記第二アウトレットが、前記容器の中心軸から逸れた位置に向かって開口している、請求項12に記載の試料調製装置。
【請求項15】
前記第二インレットが、前記第二アウトレットよりも上に配置されている、請求項12に記載の試料調製装置。
【請求項16】
前記容器は、前記第二インレット及び前記第二アウトレットをそれぞれ複数有する、請求項12に記載の試料調製装置。
【請求項17】
前記容器と前記流路とのセットを複数有し、
各セットの流路の外周壁から外部へと移行可能な成分のサイズが互いに異なる、
請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項18】
前記第一アウトレットから出た生体粒子含有液体が、前記第一インレットから再度前記容器内へと入ることができるように構成されている、
請求項12に記載の試料調製装置。
【請求項19】
血液成分を分離するために用いられる、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項20】
容器と、前記容器に収容されている生体粒子含有液体が流れる流路と、を含み、前記流路は前記生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており且つ前記流路の外周壁は前記生体粒子含有液体の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている試料調製装置と;
前記流路を通過した生体粒子含有液体の分析を実行する分析装置と
を含む試料調製システム。
【請求項21】
容器と、
前記容器に収容されている、微小粒子含有液体が流れる流路と、
を含み、
前記流路は、前記微小粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており、且つ、
前記流路の外周壁は、前記微小粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている、
試料調製装置。
【請求項22】
容器と、前記容器に収容されている微小粒子含有液体が流れる流路と、を含み、前記流路は前記微小粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており且つ前記流路の外周壁は前記微小粒子含有液体の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている試料調製装置と;
前記流路を通過した微小粒子含有液体の分析を実行する分析装置と
を含む試料調製システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、試料調製装置及び試料調製システムに関し、特には生体粒子を含む試料を調製するために用いられる試料調製装置及び試料調製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液細胞の分析を行うために、フローサイトメトリー(以下FCMともいう)などの生体粒子分析が行われる。血液は多種類の構成成分を含むので、当該生体粒子分析に付される試料は、分析対象でない構成成分は極力含まないことが望ましい。
【0003】
分析対象でない構成成分を除外する技術に関して、例えば下記特許文献1には、「遠心分離ロータと、前記遠心分離機に取り付けられ且つ流出ラインを有する分離チャンバであって、前記流出ラインの少なくとも1部分が前記遠心分離ロータから延在する分離チャンバと、前記少なくとも1つの流出ラインに流体連通する溶液ラインと、 流入口及び流出口を有する採取チャンバと、を備える血液処理装置であって、前記分離チャンバの流出口は前記採取チャンバの前記流入口に流体連通することを特徴とする血液処理装置。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表第2013-514863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体粒子分析に付される試料は、分析対象である生体粒子の割合を高める処理に付されることがある。本技術は、当該処理を、簡便に且つ効率的に行うための新たな手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の試料調製装置によって上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本技術は、
容器と、
前記容器に収容されている、生体粒子含有液体が流れる流路と、
を含み、
前記流路は、前記生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており、且つ、
前記流路の外周壁は、前記生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている、
試料調製装置を提供する。
本技術の一つの実施態様において、前記流路は螺旋形状を有していてよい。
この実施態様において、前記流路は、1つの軸の周囲を回るようなカーブ形状を有していてよい。
この実施態様において、前記流路が、前記軸の周囲を1回以上回るように形成されていてよい。
この実施態様において、前記流路の外周壁が、所定の曲率を有していてよい。
本技術の他の実施態様において、前記流路は円筒形状を有していてよい。
この実施態様において、前記生体粒子含有液体は、前記円筒形状の軸の周囲を回る流れを形成するように構成されていてよい。
本技術のさらに他の実施態様において、前記流路はU字形状を有していてよい。
この実施態様において、U字形状を有する前記流路を複数含み、当該複数のU字形状流路が互いに接続されて、1筋の流れを形成していてよい。
本技術において、前記外周壁は多孔性であってよい。
前記外周壁は、前記生体粒子含有液体に含まれる生体粒子の一部を通過させ、残りの生体粒子を通過させないものであってよい。
前記容器は、前記生体粒子含有液体を前記流路へ導入する第一インレットと、前記流路を通過した前記生体粒子含有液体を前記容器の外へ排出する第一アウトレットとを有してよく、且つ、
前記容器は、前記流路の外部へ移行した前記成分を受け取る液体を前記容器内に導入する第二インレットと、前記液体を前記容器の外へ排出する第二アウトレットとを有してよい。
前記試料調製装置は、前記第二インレットから導入された前記液体が前記容器内を旋回して流れるように構成されていてよい。
前記第二インレット及び前記第二アウトレットが、前記容器の中心軸から逸れた位置に向かって開口していてよい。
前記第二インレットは、前記第二アウトレットよりも上に配置されていてよい。
前記容器は、前記第二インレット及び前記第二アウトレットをそれぞれ複数有しうる。
本技術の試料調製装置は、前記容器と前記流路とのセットを複数有してよく、
各セットの流路の外周壁から外部へと移行可能な成分のサイズが互いに異なりうる。
本技術の試料調製装置は、前記第一アウトレットから出た生体粒子含有液体が、前記第一インレットから再度前記容器内へと入ることができるように構成されていてよい。
本技術の試料調製装置は、血液成分を分離するために用いられてよい。
【0007】
また、本技術は、
容器と、前記容器に収容されている生体粒子含有液体が流れる流路と、を含み、前記流路は前記生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており且つ前記流路の外周壁は前記生体粒子含有液体の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている試料調製装置と;
前記流路を通過した生体粒子含有液体の分析を実行する分析装置と
を含む試料調製システムも提供する。
また、本技術は、
容器と、
前記容器に収容されている、微小粒子含有液体が流れる流路と、
を含み、
前記流路は、前記微小粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており、且つ、
前記流路の外周壁は、前記微小粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている、
試料調製装置も提供する。
また、本技術は、
容器と、前記容器に収容されている微小粒子含有液体が流れる流路と、を含み、前記流路は前記微小粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており且つ前記流路の外周壁は前記微小粒子含有液体の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている試料調製装置と;
前記流路を通過した微小粒子含有液体の分析を実行する分析装置と
を含む試料調製システムも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】Ficoll試薬を用いて全血を遠心処理することにより形成される4層を示す模式図である。
図2】デッドエンド濾過を説明するための模式図である。
図3】クロスフロー濾過を説明するための模式図である。
図4】本技術の試料調製装置の構成例を示す模式図である。
図5】本技術の試料調製装置を含む試料調製システムの構成例の模式図である。
図6】本技術の試料調製装置を用いた試料調製方法のフロー図の一例である。
図7】本技術の試料調製装置の構成例を示す模式図である。
図8】本技術の試料調製装置に含まれる流路を示す模式図である。
図9】本技術の試料調製装置に含まれる流路を示す模式図である。
図10】本技術の試料調製装置の構成例を示す模式図である。
図11】本技術の試料調製装置に含まれる流路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。なお、本技術の説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施形態(試料調製装置)
(1)第1の実施形態の説明
(2)本技術に従う試料調製装置の例(螺旋形状を有する流路)
(2-1)試料調製装置の構成例
(2-2)試料調製装置を含むシステムの例及び試料調製方法の例
(2-2-1)試料調製システムの構成例
(2-2-2)試料調製方法
(2-2-3)操作例(血液から赤血球(RBC)を除去して白血球(WBC)の含有割合の高い試料を調製する例)
(3)本技術に従う試料調製装置の第一変形例(円筒形状を有する流路)
(4)本技術に従う試料調製装置の第二変形例(U字形状を有する流路)
(5)本技術に従う試料調製装置の第三変形例(複数の装置の接続)
(6)本技術に従う試料調製装置の第四変形例(濃度調整)
2.第2の実施形態(試料調製システム)
【0010】
1.第1の実施形態(試料調製装置)
【0011】
(1)第1の実施形態の説明
【0012】
本技術の試料調製装置は、容器と、前記容器に収容されている、生体粒子含有液体が流れる流路と、を含む。前記流路は、前記生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており、且つ、前記流路の外周壁は、前記生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている。これにより、生体粒子が前記流路を流れながら、前記少なくとも一部の成分は、前記遠心力の作用によって、前記流路の外部へと移行することができる。そのため、目的外の成分を目的生体粒子から分離することができ、簡便に且つ効率的に目的生体粒子の割合を高めることができる。
【0013】
本技術について、従来技術を参照しながら以下でより詳細に説明する。
【0014】
目的生体粒子を目的外の成分から分離する処理は、血液細胞の分析のためにしばしば行われる。血液細胞の分析を行うために、例えば末梢血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cell、以下「PBMC」ともいう)が、赤血球(以下「RBC」ともいう)から分離される。PBMCをRBCから分離して回収するための手法として、Ficoll試薬を用いて密度勾配遠心を行う方法が知られている。この方法において用いられるFicoll試薬は、PBMC及びRBCの中間の密度(比重)を有し、当該試薬を血液に加えて遠心を行うことによって、PBMCとRBCとの間に、Ficoll試薬層によって間隔が開けられる。例えば図1に示されるようなチューブに、Ficoll試薬が添加された全血を入れて遠心を行うことで、同図に示されるように、血しょう(Plasma)、PBMC層、Ficoll試薬、及びRBCの4つの層に分けられる。そして、PBMC層だけをピペットによって採取することによって、RBCから分離されたPBMCが得られる。
【0015】
しかしながら、ピペットによる採取は手作業であるため、目的細胞であるPBMCを全て採取することは難しく、回収率が低い。また、ピペットによる採取は手作業であるため、RBCを吸い上げてしまう場合もある。そのため、PBMCの回収率を上げるためには、熟練が必要である。さらに、この方法では、ピペット採取以外の手作業も行われる必要があり、煩雑でもある。
また、この方法では、通常は例えば15mlチューブ又は50mlチューブなどを用いて遠心が行われるので、試料を大量に処理することは難しい。
また、この方式は、開放系で行われるので、無菌操作ができない。
【0016】
前記方法を改良した手法も開発されている。例えば、Ficoll試薬などの所定の比重を有する試薬に加えて、特殊なゲル又はフィルターが予め充填されたチューブが市販されている(例えば、BDバキュテイナ(商標)CPT単核球分離用採血管及びLymphoprep(商標)Tubeなど)。しかしながら、これらのチューブを用いた場合であっても、やはりピペットによる手作業でのPBMC採取が必要であり、回収率は低く、回収率を上げるためには熟練が必要である。さらに、これらのチューブを用いた場合においても、ピペット採取以外の手作業も行われる必要があり、煩雑でもある。また、これらのチューブでは、試料を大量に処理することは難しい。また、これらのチューブを用いた処理は、開放系で行われるので、無菌操作ができない。
【0017】
目的細胞を目的外の成分から分離するために、例えばデッドエンド濾過を採用することが考えられる。デッドエンド濾過において、目的細胞より小さな穴径を有するフィルターを用いることで、目的細胞がフィルターにトラップされる。トラップした細胞を回収するには逆方向から何らかの溶液を流して回収する。デッドエンド濾過では、例えば図2に示されるように、フィルターの面に対して垂直方向に試料の流れLが形成され、同じ方向に圧力Pがかかる。これにより、フィルターを通過したろ液Fが生成され、これに伴い、前記穴を目的外細胞が通過する。一方で、目的細胞は、フィルターによってトラップされる。
デッドエンド濾過によってフィルターにトラップされた細胞を回収するには、溶液を逆流させる必要がある。しかしながら、逆流させたとしても、トラップされた細胞を完全に回収することは難しく、ある程度の数の細胞がフィルターに留まる。そのため、デッドエンド濾過による目的細胞の回収率は低い。また、デッドエンド濾過では、フィルターが詰まりやすく、濃い溶液には適用できない。
【0018】
目的細胞を目的外細胞から分離するために、クロスフロー濾過(タンデンシャルフローともいう)を採用することも考えられる。クロスフロー濾過において、側面に穴の開いたチューブ(膜)、特には中空糸が用いられる。クロスフロー濾過では、中空糸に溶液を流し、チューブ内の圧力をチューブ外の圧力より高くすることによって、チューブ内からチューブ外へ流れ出る濾液が生成される。例えば図3に示されるように、中空糸の壁面と平行な方向に溶液の流れLが形成される一方で、チューブ壁面に対して垂直方向に圧力Pがかかる。これにより、チューブ壁面を通過したろ液Fが形成される。
しかしながら、クロスフロー濾過において用いられる中空糸は、孔径に制限があり、最大で0.65μm程度である。そのため、これより大きなサイズを有する細胞については、分離することができない。また、クロスフロー濾過では、チューブ内の圧力とチューブ外の圧力とを調整することが必要であり、この調整は難しい場合がある。
【0019】
また、全血から白血球だけを回収するための手法として、溶血処理も知られている。全血をそのまま遠心分離すると通常は赤血球が一番下に溜まる。一方で、全血に溶血試薬を加えることで赤血球を破裂させた後に遠心分離すると、白血球が一番下に溜まる。そして、上清を吸いとることによって、赤血球が除去される。
しかしながら、溶血試薬は回収したい細胞のバイアビリティを低下させる。また、この手法において、ピペットを用いて手作業で上清が除去される。上清だけを吸い取ろうとしても白血球をある程度吸い上げてしまうことがあり、回収率が悪い。回収率を上げるには熟練が必要である。さらに、この手法では、手作業が多く、煩雑である。また、この手法では、通常は例えば15mlチューブ又は50mlチューブなどを用いて遠心が行われるので、試料を大量に処理することは難しい。また、この方式は、開放系で行われるので、無菌操作ができない。
【0020】
本技術の試料調製装置に含まれる流路内に生体粒子含有液体を流すという操作を行うことで、目的外の成分を目的生体粒子から分離することができる。そのため、本技術において、上記の遠心を行う手法において必要な煩雑な手作業は不要であり、簡便に目的生体粒子の割合を高めることができる。
また、本技術の試料調製装置では、流路内に生体粒子含有液体を流す操作が行われるので、流路壁面に留まる生体粒子を減らすことができ、これにより回収率を高めることができる。
また、本技術の試料調製装置では、上記で述べたチューブなどを用いる手法と異なり、大量の試料を処理することができる。
また、本技術において、デッドエンド濾過と比べると、生体粒子にかかる圧力は小さい。そのため、回収される生体粒子の損傷を抑制することができ、例えば回収される細胞のバイアビリティが向上される。
また、本技術において、クロスフロー濾過において必要な圧力調整は行われなくてよい。そのため、簡便に、目的生体粒子を回収することができる。
【0021】
本技術の一つの実施態様において、前記流路は螺旋形状を有するものであってよい。螺旋形状を有する前記流路内に生体粒子含有液体を流すことで、遠心力が当該液体に作用する。そして、当該遠心力によって、当該生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行する。この実施態様について、以下(2)でより詳細に説明する。
【0022】
本技術の他の実施態様において、前記流路は円筒形状を有するものであってよい。円筒形状を有する前記流路内に生体粒子含有液体を流すことによっても、遠心力を当該液体に作用させることができる。そして、当該遠心力によって、当該生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行する。この実施態様について、以下(3)でより詳細に説明する。
【0023】
本技術のさらに他の実施態様において、前記流路はU字形状を有するものであってよい。U字形状を有する前記流路内に生体粒子含有液体を流すことによっても、遠心力を当該液体に作用させることができる。そして、当該遠心力によって、当該生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行する。この実施態様について、以下(4)でより詳細に説明する。
【0024】
本技術において、前記容器は、前記生体粒子含有液体を前記流路へ導入する第一インレットと、前記流路を通過した前記生体粒子含有液体を前記容器の外へ排出する第一アウトレットとを有し、且つ、前記容器は、前記流路の外部へ移行した前記成分を受け取る液体を前記容器内に導入する第二インレットと、前記液体を前記容器の外へ排出する第二アウトレットとを有する。
前記第二インレット及び前記第二アウトレットによって、遠心力の作用によって前記流路から出た前記成分を受け取る液体を、前記容器内へ供給し及び前記容器から排出することができるので、例えば目的外の成分を効率的に前記容器から排出することができる。
【0025】
本明細書内において、生体粒子は、生物学的粒子であってよく、例えば生物を構成する粒子を意味しうる。生体粒子は、微小粒子でありうる。
生体粒子は、例えば細胞であってよい。細胞には、動物細胞(血球系細胞など)および植物細胞が含まれうる。細胞は、特には血液系細胞又は組織系細胞でありうる。前記血液系細胞して、例えば白血球(例えば末梢血単核細胞)、赤血球、及び血小板を挙げることができ、前記血液系細胞は、特には白血球を含む。白血球として、例えば単球(マクロファージ)、リンパ球、好中球、好塩基球、及び好酸球を挙げることができる。細胞は、例えばT細胞及びB細胞などの浮遊系細胞であってよい。前記組織系細胞は、例えば接着系の培養細胞又は組織からばらされた接着系細胞などであってよい。また、細胞は、腫瘍細胞であってもよい。細胞は、培養されたものであってよく又は培養されていないものであってもよい。生体粒子は、例えばスフェロイド及びオルガノイドなどの細胞塊であってもよい。
生体粒子は、非細胞性生体構成成分であってよく、例えば細胞外小胞、特にはエクソソーム又はマイクロベシクルなどであってもよい。
生体粒子は、微生物又はウィルスであってもよい。微生物には、大腸菌などの細菌類及びイースト菌などの菌類が含まれうる。ウィルスは、例えばDNAウィルス又はRNAウィルスであってよく、エンベロープを有する又は有さないウィルスであってよい。
生体粒子は、核酸、タンパク質、及びこれらの複合体などの生物学的高分子も包含されうる。これら生物学的高分子は、例えば細胞から抽出されたものであってよく又は血液サンプル若しくは他の液状サンプルに含まれるものであってもよい。
また、本技術における試料調製装置において、生体粒子含有液体に代えて、非生体粒子を含有する液体が、前記流路へ導入されてもよい。当該非生体粒子を形成する材料は、例えば、有機もしくは無機材料、特には有機若しくは無機高分子材料であってよく、又は、金属であってよい。有機高分子材料には、例えばポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレートなどが含まれる。無機高分子材料には、ガラス、シリカ、磁性体材料などが含まれる。当該非生体粒子は、例えば、ラテックス粒子又はゲル粒子であってよい。
すなわち、本技術は、生体粒子及び非生体粒子を包含する微小粒子を含有する液体(微小粒子含有液体)を処理するために用いられる試料調製装置も提供する。すなわち、当該試料調製装置は、容器と、前記容器に収容されている、微小粒子含有液体が流れる流路と、を含んでよく、前記流路は、前記微小粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており、且つ、前記流路の外周壁は、前記微小粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されていてよい。
【0026】
本明細書内において、生体粒子含有液体は、生物から得られる液体であってよく、例えば体液であってよい。体液は、血液、リンパ液、組織液(例えば組織間液、細胞間液、及び間質液など)、又は体腔液(例えば漿膜腔液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液(髄液)、関節液(滑液)など)であってよい。また、生体粒子含有液体は、これら体液から得られる液体であってもよい。本技術の一つの実施態様において、前記生体粒子含有液体は、血液であってよい。すなわち、本技術の試料調製装置は、血液成分を分離するために用いられうる。
【0027】
(2)本技術に従う試料調製装置の例(螺旋形状を有する流路)
【0028】
(2-1)試料調製装置の構成例
【0029】
本技術の試料調製装置の例を、図4を参照しながら以下で説明する。
【0030】
図4に示される試料調製装置100は、容器110と、容器110内に収容されている流路120と、を備えている。流路120内を、生体粒子含有液体が流れる。
【0031】
容器110は、流路120を収容することができればよく、その形状及び寸法は当業者により選択されてよい。容器110の形状は、例えば円柱形状又は角柱形状(例えば四角柱、五角柱、又は六角柱形状)であってよい。容器110の形状は、好ましくは円柱形状である。円柱形状によって、後述するとおり、容器内に旋回流を発生させやすい。円柱の直径は、例えば3cm以上、4cm以上、又は5cm以上であってよい。また、円柱の直径は、例えば50cm以下、40cm以下、又は30cm以下であってよい。
【0032】
流路120は、図4に示されるように、螺旋形状を有する。螺旋形状を有する流路内を前記生体粒子含有液体が流れることによって、当該生体粒子含有液体に遠心力が作用する。
【0033】
本明細書内において、螺旋形状は、1つの軸の周囲を回るようなカーブ形状を意味してよい。例えば、図4に示されるように、流路120は、軸Aの周囲を回るようなカーブ形状を有する。好ましくは、流路120は、軸Aの周囲を1回以上回るように形成されていてよく、例えば2回以上、3回以上、又は4回以上回るように形成されていてよい。これにより、前記生体粒子含有液体に遠心力が作用する区間が長くなり、生体粒子含有液体の成分が流路の外部へと移行することが可能な面積を増やすことができる。そのため、目的外成分を、効率的に流路外へと移行させることができる。
流路120が軸Aの周囲を回る回数の上限値は特に設定される必要はないが、例えば容器110のサイズ及び/又は流路120のサイズなどの要因に応じて決定されてもよい。流路120が軸Aの周囲を回る回数は、例えば100回以下、50回以下、20回以下、又は10回以下でありうる。
【0034】
流路120の外周壁125は、当該生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分(特には少なくとも一部の生体粒子)が前記流路の外部へと移行できるように構成されている。これにより、当該生体粒子含有液体に遠心力が作用することで、前記少なくとも一部の成分が流路120の外へと移行することが促進され、例えば目的外の成分(例えば目的外の生体粒子)を、目的生体粒子から分離することができる。外周壁125は、前記遠心力が作用した前記少なくとも一部の成分が接触する部分の壁であってよい。
外周壁125は、例えば所定の曲率を有していてよい。当該曲率は、例えば1/5[1/mm] ~1/50[1/mm]~であってよく、特には1/10[1/mm]~1/20[1/mm]であってよい。
また、当該生体粒子含有液体に、例えば10[G]~1000[G]、特には20[G]~8000[G]の相対遠心加速度がかかるように、試料調製装置100は構成されてよい。
螺旋の半径は、例えば5[mm]以上、7[mm]以上、又は10[mm]以上であってよい。螺旋の半径は、50[mm]以下、30[mm]以下、又は20[mm]以下であってよい。螺旋の半径は、軸Aから流路の横断面の中心までの距離を意味してよい。
【0035】
外周壁125は、例えば多孔性であってよく、特には多孔性の膜を含んでよい。外周壁125を形成する多孔性の膜の材料の例として、例えばポリカーボネートを挙げることができる。このような材料は、生体成分の外周壁への吸着を抑制するために好ましい。
当該多孔性の膜の平均孔径は、流路120の外部へと移行させる成分(例えば生体粒子)のサイズに応じて当業者により適宜選択されてよいが、例えば20μm以下、特には15μm以下、より特には12μm以下であってよく、さらにより特に約10μmであってもよい。当該平均孔径は、例えば1μm以上、3μm以上、又は5μm以上であってよい。このような平均孔径は、例えば、本技術によって血液からRBCから除去するために適している。平均孔径は、例えば共焦点顕微鏡を用いて測定することができる。平均孔径は、例えば、共焦点顕微鏡の原理を応用した非接触三次元測定装置を用いて測定されてよい。当該装置として、例えば三鷹光器のNHシリーズの装置が挙げられる。
【0036】
外周壁125は、多孔性の膜と当該膜を支持する支持体とを含みうる。当該支持体によって、流路の形状をより安定的に維持することができる。例えば、当該支持体は、流路120を包むように配置されてよく、又は、外周壁125の部分だけをカバーするように配置されてもよい。当該支持体の材料は、前記少なくとも一部の成分の流路外への移行を妨げないように構成されていることが好ましく、例えばメッシュ状の材料であってよい。支持体の材料は、例えばナイロン、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂、又は金属であってよい。当該支持体のメッシュの目開きは、流路120の外部へと移行させる成分の移行を妨げないように設定されてよく、例えば10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、又は30μ以上であってよい。また、流路形状の維持のために、例えば1000μm以下、700μm以下、500μm以下、400μm以下、又は300μm以下であってよい。
【0037】
好ましくは、外周壁125は、前記生体粒子含有液体に含まれる生体粒子の一部を通過させ、残りの生体粒子を通過させないように構成される。これにより、当該液体に含まれる生体粒子のうちから、一部を除去することができ、例えば血液のうちから赤血球を除去することができる。
【0038】
流路120の横断面(生体粒子含有液体の進行方向に対して垂直な面)の形状は、例えば図4に示されるように円形であってよいが、これに限定されない。当該形状は、例えば楕円形、矩形、又は矩形以外の多角形であってもよい。なお、「円形」は「略円形」を包含し、「楕円形」は「略楕円形」を包含する。「矩形」は、例えば正方形又は長方形であってよい。
【0039】
流路120の横断面のサイズは、当該横断面の形状が円形又は楕円形である場合、直径又は長径は、例えば1mm以上、2mm以上、又は3mm以上であってよい。当該直径又は長径は、例えば30mm以下、20mm以下、又は10mm以下であってよい。
流路120の横断面のサイズは、当該横断面の形状が正方形又は長方形である場合、一遍又は長辺は、例えば1mm以上、2mm以上、又は3mm以上であってよい。当該直径又は長径は、例えば30mm以下、20mm以下、又は10mm以下であってよい。
【0040】
容器110は、前記生体粒子含有液体を流路120へ導入する第一インレット122と、流路120を通過した前記生体粒子含有液体を容器110の外へ排出する第一アウトレット124とを有する。
第一インレット122は、容器110の壁面に存在してよく、例えば容器110の外から容器110内へ生体粒子含有液体を導入する導入流路121と、容器110の流路120と、の接続部分を意味してよい。
第一アウトレット124は、容器110の壁面に存在してよく、容器110の流路120と、容器110内から容器110の外へ生体粒子含有液体を排出する排出流路123と、の接続部分を意味してよい。
【0041】
また、容器110は、流路120の外部へ移行した前記成分を受け取る液体を容器110内に導入する第二インレット112と、前記液体を容器110の外へ排出する第二アウトレット114とを有する。
第二インレット112は、容器110の壁面に存在してよく、例えば容器110の外から容器110内へ、前記成分を受け取る液体を導入する供給口を意味してよい。
第二アウトレット114は、容器110の壁面に存在してよく、例えば、容器110の中から容器110の外へ、前記成分を受け取る液体を排出する排出口を意味してよい。
【0042】
好ましくは、試料調製装置100は、第二インレット112から導入された前記液体が容器110内を旋回して流れるように構成されうる。このように旋回する流れを形成するために、例えば、第二インレット112及び/又は第二アウトレット114が、前記容器の中心軸Aから逸れた位置に向かって開口していてよい。
前記旋回する流れを形成するために、例えば、流路111と容器110の外壁との接続箇所において、流路111と容器110の外壁とが鋭角(例えば90°未満、特には80°以下、より特には70°以下の角度)を形成するように、流路111が容器110に接続されうる。例えば第二インレット112から導入された直後の前記液体が容器110の中心に進行しないように、第二インレット112が設けられてよい。より具体的には、第二インレットから導入された直後の前記液体が、容器110の中心軸と容器内壁面との間に向かって流れるように、第二インレット112が設けられてよい。
また、前記旋回する流れを形成するために、例えば、流路113と容器110の外壁との接続箇所において、流路113と容器110の外壁とが鋭角(例えば90°未満、特には80°以下、より特には70°以下の角度)を形成するように、流路113が容器110に接続されうる。
【0043】
好ましくは、第二インレット112及び第二アウトレット114は、生体粒子の沈降方向(例えば重力作用方向)における異なる位置に配置されていてよい。好ましくは、第二インレット112が、前記沈降方向の後方に配置され、且つ、第二アウトレット114が、前記沈降方向のより前方に配置される。例えば、重力の作用方向に沿って、第二インレット112が、第二アウトレット114よりも上に配置されていてよい。これにより、流路120の外に移行した成分(特には生体粒子)を、効率的に第二アウトレット114から排出することができる。
【0044】
好ましくは、第一インレット122及び第一アウトレット124は、生体粒子の沈降方向(例えば重力作用方向)における異なる位置に配置されていてよい。好ましくは、第一インレット122が、前記沈降方向の後方(沈降元側)に配置され、且つ、第一アウトレット124が、前記沈降方向のより前方(沈降先側)に配置される。例えば、重力の作用方向に沿って、第一インレット122が、第一アウトレット124よりも上に配置されていてよい。これにより、生体粒子含有液体が、流路120内を、第一インレット122から第一アウトレット124へ進行することが促される。
【0045】
図4において、流路120の外部へ移行した前記成分を受け取る液体を容器110内に導入する第二インレット112が1つ設けられているが、第二インレットの数は1つに限定されず、複数であってもよい。例えば2つ、3つ、又は4つの第二インレットが容器110に接続されていてよい。
また、図4において、第二インレット112から導入された前記液体を容器110の外へ排出する第二アウトレット114が1つ設けられているが、第二アウトレット114の数は1つに限定されず、複数であってもよい。例えば2つ、3つ、又は4つの第二アウトレットが容器110に接続されていてよい。
このように、本技術において、前記容器は、前記第二インレット及び前記第二アウトレットをそれぞれ複数有していてよい。
【0046】
(2-2)試料調製装置を含むシステムの例及び試料調製方法の例
【0047】
本技術に従う試料調製装置を用いて試料を調製するために、例えば図5に示されるとおりの試料調製システムが構成されてよい。以下で、当該試料調製システムを説明し、次に、当該システムを用いた試料調製方法の例を説明する。
【0048】
(2-2-1)試料調製システムの構成例
【0049】
図5の試料調製システム1は、図4を参照して説明した試料調製装置100を含む。試料調製装置100に接続されている流路の構成及び各種液体を含む容器について以下で説明する。
【0050】
試料調製装置100の容器110へ液体(流路120の外部へ移行した成分を受け取る液体)を導入する流路111上にはポンプP1が設けられている。さらに、流路111は、流路120の外部へ移行した成分を受け取る液体が収容されている容器130に接続されている。ポンプP1を駆動させることによって、容器130内の液体が容器110へ供給される。
【0051】
試料調製装置100の容器110から液体(流路120の外部へ移行した成分を受け取る液体)を排出する流路113上記にはポンプP2が設けられている。さらに、流路113は、排出された当該液体を回収する回収用容器(「廃液容器」ともいう)131に、接続されている。ポンプP2を駆動させることによって、容器110内の液体が、廃液容器131へ回収される。
【0052】
試料調製装置の流路120へ生体粒子含有液体を導入する流路121上にはポンプP3が設けられている。さらに、流路121は、生体粒子含有液体が収容されている容器132に接続されている。ポンプP3を駆動することによって、容器132内の生体粒子含有液体が、流路120へと供給される。
また、流路121上には、バルブV1が設けられている。バルブV1の開閉によって、容器132内の生体粒子含有液体の流路120への供給が可能又は不可能となる。
【0053】
試料調製装置の流路120を通過した生体粒子含有液体を容器110から排出する流路123上にはポンプP4が設けられている。さらに、流路123は、流路120を通過した生体粒子含有液体が回収される回収容器133に接続されている。ポンプP4を駆動することによって、流路120を通過した生体粒子含有液体が、回収容器133へと送液される。
また、流路121上には、バルブV1が設けられている。バルブV1の開閉によって、容器132内の生体粒子含有液体の流路120への供給が可能又は不可能となる。
【0054】
回収容器133は、コネクタC1及びC2を備えている。コネクタC1は、流路123と回収容器133とを接続する。コネクタC2は、容器133と、バルブV3が設けられている流路126とを接続する。バルブV3の開閉によって、回収容器133内の液体を、流路126を通って流路120へと進行させることが可能又は不可能となる。
【0055】
流路126は、流路121に合流するように構成されている。流路126のうち、流路126と流路121との合流地点の直前に、バルブV2が設けられている。バルブV2の開閉によって、回収容器133又は容器134内の液体を、流路126を通って流路120へと進行させることが可能又は不可能となる。
【0056】
流路126には、回収用溶液が充填されている容器134と接続されている流路127が合流している。流路127上には、バルブV4が設けられている。バルブV4の開閉によって、容器134内の液体を、流路126を通って流路120へと進行させることが可能又は不可能となる。
【0057】
試料調製システム1は、さらに、回収容器133内の液体を分析する分析装置140を含む。分析装置140は、例えば回収容器133内の液体の色を分析する装置、当該液体に含まれる成分の濃度を測定する装置、又は、当該液体に含まれる生体粒子の含有量を測定する装置であってもよい。
なお、分析装置140は、容器133内の液体の分析を行うのでなく、流路123又は126を流れる液体を分析する分析装置として構成されていてもよい。
【0058】
(2-2-2)試料調製方法
【0059】
試料調製システム1による試料調製方法のフロー図を図6に示す。図6に示されるとおり、試料調製システム1により試料調製方法は、容器110内を、流路120の外部へ移行した成分を受け取る液体によって充填する容器充填工程S101、生体粒子含有液体を流路120へと供給する供給工程S102、当該生体粒子含有液体に、流路120を含む循環流路を循環させる循環工程S103、及び流路内液体回収工程S104を含む。
【0060】
容器充填工程S101において、試料調製装置100の容器110内(特には、容器110内の空間のうち、流路120によって占められる空間を除く)が、容器130内の液体によって満たされる。容器130内の液体は、上記で述べたとおり、生体粒子含有液体を流路120内に流した際に、流路120の外周壁を通って流路120の外部へ移行した成分を受け取る液体である。
【0061】
容器充填工程S101を行うために、ポンプP1が駆動される。ポンプP1を駆動させることにより、容器130内の液体が、流路111を通って、容器110内に導入される。
【0062】
供給工程S102において、容器132に含まれている生体粒子含有液体が、流路120へと供給される。
【0063】
供給工程S102を行うために、バルブV1が開けられ、そして、ポンプP3及びP4が駆動される。ポンプP3及びP4の駆動によって、容器132内の生体粒子含有液体が、流路121を通り、そして、流路120へと導入される。流路120は螺旋形状を有するので、流路120を流れる生体粒子含有液体に遠心力が作用する。当該遠心力は、生体粒子含有液体に含まれる生体粒子を、流路120の外周壁に向かって進行させるように作用する。そのため、生体粒子含有液体の一部の成分(例えば一部の生体粒子)が、流路120の外周壁を通過して、流路120の外部へと移行する。
【0064】
流路120の外部へと移行した成分は、容器110を満たす液体によって受け取られる。当該成分を含む当該液体は、廃液容器131に回収される。当該回収を行うために、ポンプP2が駆動される。これにより、当該成分を含む当該液体が、流路113を通って、廃液容器131へと進行する。
【0065】
循環工程S103において、流路120を含む循環流路を、生体粒子含有液体に循環させる。当該循環流路は、第一アウトレット124から流路120を出た生体粒子含有液体が、第一インレット122から再度流路120へと供給されるように構成されていてよい。例えば、図5に示される試料調製システムにおいて、循環流路は、流路120と、流路123、容器133、流路126、及び、流路121のうちの流路126との合流地点から第一インレット122までの部分である。
【0066】
循環工程S103に先立ち、まず、容器132内の生体粒子含有液体が全て流路120へと供給されることによって当該供給が終了されてよく又は容器132内の生体粒子含有液体のうち所定量が流路120へと供給されることによって当該供給が終了されてもよい。当該供給が終了したら、バルブV1が閉じられる。
【0067】
そして、循環工程S103を行うために、バルブV2及びV3を開き、ポンプP3及びP4が駆動される。ポンプP3及びP4の駆動によって、前記循環流路内の生体粒子含有液体が、当該循環流路内を循環させられ、これにより、流路120内を繰り返し通過する。
これにより、供給工程S102に関して述べたとおり、生体粒子含有液体の一部の成分(例えば一部の生体粒子)が、流路120の外周壁を通過して、流路120の外部へと移行する。すなわち、より多くの成分が、生体粒子含有液体から除去されうる。
また、循環工程S103を行う時間を制御することで、生体粒子含有液体中の当該成分の濃度や含有割合を調整することもできる。
このように、本技術において、好ましくは、前記第一アウトレットから出た生体粒子含有液体が、前記第一インレットから再度前記容器内へと入ることができるように構成されていてよい。
【0068】
流路120の外部へと移行した成分は、容器110を満たす液体によって受け取られる。当該成分を含む当該液体は、廃液容器131に回収される。当該回収を行うために、ポンプP2が駆動される。これにより、当該成分を含む当該液体が、流路113を通って、廃液容器131へと進行する。
【0069】
循環工程S103の終了のタイミングは、ユーザにより適宜選択されてよい。例えば、回収容器133内の生体粒子含有液体をユーザが観察し、ユーザが循環工程S103の終了タイミングを決定してよく、又は、分析装置140による当該液体の分析結果に応じて、ユーザが循環工程S103の終了タイミングを決定してもよい。循環工程S103を終了するために例えば、バルブV3が閉じられてよい。
また、当該終了のために、ポンプP3及びP4の駆動が停止されてもよい。
循環工程S103は、自動的に終了されてもよい。例えば、分析装置140によって所定の分析結果が得られたことに応じて、循環工程S103が自動的に終了されてもよい。例えば、所定の分析結果が得られたことに応じて、バルブV3が閉じられてよい。
【0070】
なお、流路120を生体粒子含有液体に1回通過させることによって、所望の試料が得られる場合は、循環工程S103は行われなくてもよい。
【0071】
本技術において、供給工程S102の終了時点又は循環工程S103の終了時点において回収容器133内に存在する生体粒子含有液体が、調製された試料として用いられてよい。
本技術の好ましい実施態様において、供給工程S102の終了後又は循環工程S103の終了後に、流路内に存在する生体粒子含有液体を回収容器133内に回収する流路内液体回収工程S104が実行されてよい。これにより、より多くの試料を、回収容器133内に回収することができる。
【0072】
流路内液体回収工程S104において、例えば前記循環流路のうち、回収容器133以外の部分(流路120、流路123、流路126、及び、流路121のうちの流路126との合流地点から第一インレット122までの部分)に存在する生体粒子含有液体が、回収容器133内に回収される。
【0073】
流路内液体回収工程S104を行うために、バルブV2及びV4を開けた状態で、ポンプP3及びP4が駆動される。当該駆動によって、容器134内の回収用溶液が、流路127を通って、流路126へと供給され、そしてその後、流路121、流路120、及び123を流れる。回収用溶液がこのように流れることによって、これらの流路内に存在する生体粒子含有液体が、回収容器133内に回収される。回収後、全てのポンプを停止して、流路内液体回収工程S104が終了される。そして、回収容器133内の生体粒子含有液体が、試料調製システム1によって調製された試料として取り扱われてよい。
【0074】
なお、当業者は、回収用溶液が流れる流路内の容積は予め知ることができるので、流路内液体回収工程S104の終了のタイミングを適宜決定することができる。
【0075】
本技術は、試料調製方法も提供する。当該試料調製方法は、例えば、前記供給工程を含む。さらに、当該試料調製方法は、前記循環工程及び/又は前記流路内液体回収工程をさらに含みうる。
【0076】
(2-2-3)操作例(血液から赤血球(RBC)を除去して白血球(WBC)の含有割合の高い試料を調製する例)
【0077】
以下で、試料調製システム1によって血液から赤血球(RBC)を除去して白血球(WBC)の含有割合の高い試料を調製するための操作例を以下に説明する。
【0078】
容器充填工程S101に先立ち、容器132に血液が充填され、且つ、容器134に回収用液体が充填される。また、容器130には、血液が流路120内を流れることに伴い流路120の外へ出たRBCを受け取る液体(例えばバッファーなど)が充填される。以下、当該RBCを受け取る液体を洗浄用液体ともいう。
【0079】
容器充填工程S101において、ポンプP1が駆動される。ポンプP1を駆動させることにより、容器130内の洗浄用液体が、流路111を通って、容器110内に導入される。これにより、容器110内(特には、容器110内の空間のうち、流路120によって占められる空間を除く)が、洗浄用液体によって満たされる。
【0080】
容器充填工程S101において、例えば他のポンプは駆動されていなくてよい。また、容器充填工程S101において、バルブV1~V4は全て閉じられていてよい。
【0081】
供給工程S102において、バルブV1が開けられ、そして、ポンプP3及びP4が駆動される。ポンプP3及びP4の駆動によって、容器132内の血液が、流路121を通り、そして、流路120へと導入される。流路120は螺旋形状を有するので、流路120を流れる生体粒子含有液体に遠心力が作用する。そして、当該遠心力の作用によって、RBCが流路120の外周壁を通過して、流路120の外部へと移行する。
【0082】
RBCは、容器110を満たしている洗浄用液体によって受け取られる。そして、RBCを含む洗浄用液体は、廃液容器131に回収される。当該回収を行うために、ポンプP2が駆動される。これにより、RBCを含む洗浄用液体が、流路113を通って、廃液容器131へと進行する。当該回収を行うために、ポンプP1も駆動されていてよい。ポンプP1及びP2の駆動によって、容器110内に旋回する流れを発生させることができる。これにより、例えば効率的な廃液回収が可能となる。例えば、RBCが容器内に沈降することを防ぐことができる。
【0083】
容器132内の血液全てが流路120へと供給されたら、バルブV1が閉じられる。
【0084】
循環工程S103を行うために、バルブV2及びV3が開けられる。循環工程S103において、バルブV2及びV3を開けた状態で、ポンプP3及びP4が駆動される。ポンプP3及びP4の駆動によって、血液が、循環流路(流路120と、流路123、容器133、流路126、及び、流路121のうちの流路126との合流地点から第一インレット122までの部分)を循環し、これにより、血液は流路120内を繰り返し通過する。これにより、より多くのRBCが、流路120の外周壁を通過して、流路120の外部へと移行し、洗浄用液体によって受け取られる。すなわち、循環流路内の血液から、赤血球が除去される。
【0085】
RBCを受け取った洗浄用液体は、廃液容器131に回収される。当該回収を行うために、ポンプP2が駆動される。これにより、当該洗浄用液体が、流路113を通って、廃液容器131へと進行する。
【0086】
循環工程S103が継続されるにつれて、循環流路内の血液からRBCが徐々に除去される。すなわち、血液細胞中のWBCの割合が高められる。そのため、循環工程S103の時間の経過にともない、容器133内の液体の赤みが減少する。例えば、容器133内の赤みが無くなったら(すなわち、RBC濃度が十分に下がったら)、バルブV3が閉じられる。このようにして、容器133内に、RBCの含有割合が下がり且つWBCの含有割合が高められた血液試料が得られる。
【0087】
バルブV3を閉じるタイミングは、赤みを観察しているユーザにより決定されてよい。
代替的には、循環流路内のいずれかの位置における液体を分析する分析装置(例えば、濃度を測定する濃度センサー又は色を検出する色センサー)によって、リアルタイムで当該液体がモニターされてもよい。そして、所定の分析結果が得られた段階(例えば所定の濃度又は色に達した段階)で、バルブV3が閉じられてよい。
【0088】
流路内液体回収工程S104において、バルブV2及びV4を開けた状態で、ポンプP3及びP4が駆動される。当該駆動によって、容器134内の回収用溶液が、流路127を通って、流路126へと供給され、そしてその後、流路121、流路120、及び123を流れる。回収用溶液がこのように流れることによって、これらの流路内に存在する血液試料(RBC量が減少した血液試料)が、回収容器133内に回収される。回収後、全てのポンプを停止して、流路内液体回収工程S104が終了される。そして、回収容器133内の血液試料が、試料調製システム1によって調製された試料として取り扱われる。
【0089】
(3)本技術に従う試料調製装置の第一変形例(円筒形状を有する流路)
【0090】
本技術に従う試料調製装置に含まれる、遠心力が作用するように構成されて流路の形状は、上記(2)において述べた螺旋形状に限定されず、例えば円筒形状であってもよい。円筒形状の流路を有する試料調製装置を、以下で図7を参照しながら説明する。
【0091】
図7に示される試料調製装置200は、螺旋形状の流路120の代わりに円筒形状の流路220を有していること以外は、図4を参照して上記(2)において述べた試料調製装置100と同じである。そのため、容器110及び各種流路は、上記(2)において説明したとおりであり、その説明が図7の試料調製装置200にもあてはまる。以下では、円筒形状の流路220について説明する。
【0092】
流路220は、図7に示されるように、円筒形状を有する。円筒形状を有する流路内を前記生体粒子含有液体が流れることによって、特には図7中の矢印に示されるとおり軸Aの周囲を旋回するように流れる(渦を形成するように流れる)ことによって、当該生体粒子含有液体に遠心力が作用する。当該遠心力によって、当該液体に含まれる少なくとも一つの成分(例えば生体粒子)が、流路220の外周壁225を通過して流路220の外へ移行する。当該移行した成分は、容器110内の液体によって受け取られる。
このように、本技術において、試料調製装置は、生体粒子含有液体が、円筒形状の軸の周囲を回る流れを形成するように構成されていてよい。
【0093】
本明細書内において、円筒形状は、直円筒形状及び斜円筒形状を包含する。好ましくは、流路220は、図7に示されるように、直円筒形状である。
【0094】
円筒形状を構成する2つの底面の寸法は、同じであってよく又は異なっていてもよい。例えば、上側底面(生体粒子の沈降方向における沈降元側の底面)が下側底面(同沈降方向における沈降先側の底面)よりも大きくてよく、又は、小さくてもよい。
【0095】
流路220の外周壁225について、上記(2)における外周壁125に関する説明があてはまる。例えば、外周壁225は、上記(2)で説明したとおり、多孔性であってよい。
【0096】
また、円筒形状の流路220には、生体粒子含有液体を導入するための第三インレット227及び流路220内を流れた生体粒子含有液体を排出する第三アウトレット226を備えている。第三インレット227及び/又は第三アウトレット226は、円筒形状の流路220内に上記のとおり旋回する流れを形成するように構成されうる。このような流れを形成するために、例えば、第三インレット227及び/又は第三アウトレット226が、前記容器の中心軸Aから逸れた位置に向かって開口していてよい。
前記旋回する流れを形成するために、例えば、流路121と流路220の外周壁225との接続箇所において、流路121と容器220の外壁とが鋭角(例えば90°未満、特には80°以下、より特には70°以下の角度)を形成するように、流路121が外周壁225に接続されうる。例えば第三インレット227から導入された直後の生体粒子含有液体が流路220の中心に進行しないように、第三インレット227が設けられてよい。より具体的には、第三インレット227から導入された直後の生体粒子含有液体が、流路220の中心軸と容器内壁面との間に向かって流れるように、第三インレット227が設けられてよい。
また、前記旋回する流れを形成するために、例えば、流路123と流路220の外周壁225との接続箇所において、流路123と流路220の外周壁225とが鋭角(例えば90°未満、特には80°以下、より特には70°以下の角度)を形成するように、流路123が流路220の外周壁225に接続されうる。
【0097】
好ましくは、第三インレット227及び第三アウトレット226は、生体粒子の沈降方向(例えば重力作用方向)における異なる位置に配置されていてよい。好ましくは、第三インレット227が、前記沈降方向の後方(沈降元側)に配置され、且つ、第三アウトレット226が、前記沈降方向の前方(沈降先側)に配置される。例えば、重力の作用方向に沿って、第三インレット227が、第三アウトレット226よりも上に配置されていてよい。これにより、流路220内を旋回する生体粒子含有液体が、第三インレット227から第三アウトレット226へと進行することが促され、生体粒子含有液体が、効率的に第三アウトレット226から排出される。
【0098】
(4)本技術に従う試料調製装置の第二変形例(U字形状を有する流路)
【0099】
本技術に従う試料調製装置に含まれる、遠心力が作用するように構成されて流路の形状は、上記(2)において述べた螺旋形状及び上記(3)において述べた円筒形状に限定されず、例えばU字形状であってもよい。U字形状の流路の例を、以下で図8及び9を参照しながら説明する。
【0100】
図8に示される流路320は、図9A及びBに示されるU字形状流路ユニットが複数重ねられている。図9A及びBに示されるU字形状流路ユニットは、遠心力が作用する外周壁が、生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分が、流路の外部へと移行できるように構成されている。例えば、多孔性の膜326と当該膜を支持する支持体325とから形成されている。膜326及び支持体325は、上記(2)において説明したとおりである。このようなU字形状流路ユニットを複数組み合わせることによって、特には図8に示されるように複数積層することによって、上記(2)で述べた螺旋形状の流路と同様の機能が発揮される。各U字形状流路ユニットは、図8に示されるように、例えばチューブなどの流路328によって、接続される。
【0101】
例えば図8に示される流路320に関して、上側矢印に示されるとおり、流路321から生体粒子含有液体が導入され、そして、当該液体は、U字形状流路ユニットのインレット327-1からU字形状流路ユニットへと入る。そして、生体粒子含有液体は、U字形状流路ユニットのアウトレット327-2から出て、チューブ328を通り、すぐ下のU字形状流路ユニットへと再度入る。これを繰り返すことによって、外周壁から、生体粒子含有液体に含まれる少なくとも一部の成分(例えば生体粒子の一部)が、流路の外部へと移行する。
このように、本技術の試料調製装置は、U字形状を有する前記流路を複数含み、当該複数のU字形状流路が互いに接続されて、1筋の流れを形成しうる。
【0102】
(5)本技術に従う試料調製装置の第三変形例(複数の装置の接続)
【0103】
本技術に従う試料調製装置は、前記容器と前記遠心力が作用するように構成されている流路とのセットを複数有していてよい。当該セットを複数有する試料調製装置において、例えば、各セットの流路の外周壁から外部へと移行可能な成分のサイズが互いに異なっていてよい。より具体的には、各セットの流路の外周壁は多孔性であり、各セットの流路の外周壁の孔サイズが互いに異なっていてよい。当該複数のセットを有する試料調製装置によって、サイズの異なる複数種類の成分(特には生体粒子)を、分取することができる。この変形例について、図10を参照しながら以下で説明する。
【0104】
図10に示される試料調製装置1000は、上記(2)で説明した容器110と流路120とのセットを3つ含む。具体的には、容器110-1及び流路120-1(以下「第一セット」ともいう)、容器110-2及び流路120-2(以下「第二セット」ともいう)、並びに、容器110-3及び流路120-3(以下「第三セット」ともいう)を含む。
【0105】
第一セットの排出流路123-1が、第二セットの導入流路121-2と接続されている。これにより、第一セットにおける流路120-1を通過した生体粒子含有液体が、第二セットにおける流路120-2へと導入される。
第二セットの排出流路123-2が、第三セットの導入流路121-3と接続されている。これにより、第二セットにおける流路120-2を通過した生体粒子含有液体が、第三セットにおける流路120-3へと導入される。
以上のように、複数のセットを直列することによって、生体粒子含有液体から分離されるべき成分を、効率的に分離することができる。
【0106】
また、このように複数のセットが直接されている場合において、異なるサイズの成分(特には生体粒子)を分取することもできる。このように構成するために、第一セットの外周壁125-1の孔径を第二セットの外周壁125-2の孔径よりも小さくし、且つ、第二セットの外周壁125-2孔径を第三セットの外周壁125-3の孔径よりも小さくする。すなわち、生体粒子含有液体の流れる方向に沿って、外周壁の孔径を大きくする。これにより、例えば、第一セットの排出流路113-1から、最も小さいサイズを有する生体粒子が排出され、第二セットの排出流路113-2から、2番目に小さいサイズを有する生体粒子が排出され、そして、第三セットの排出流路113-3から、3番目に小さいサイズを有する生体粒子が排出される。そして、第三セットの排出流路123-3からは、これら3種の生体粒子よりも大きいサイズを有する生体粒子が排出される。このようにして、サイズの異なる4種類の粒子を分取することができる。
このように、本技術の試料調製装置は、前記容器と前記流路とのセットを複数有し、各セットの流路の外周壁から外部へと移行可能な成分のサイズが互いに異なっていてよい。例えば、本技術の試料調製装置は、前記容器と前記流路とのセットを複数有し、各セットの流路の外周壁は多孔性であり、各セットの流路の外周壁の孔サイズが互いに異なっていてよい。
【0107】
(6)本技術に従う試料調製装置の第四変形例(濃度調整)
【0108】
本技術に従う試料調製装置において、生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されている流路内に、さらに流路が設けられていてよい。
図11にそのような流路の横断面の模式図を示す。図11に示されるとおり、流路120内に、流路150(以下「内部流路」ともいう)が設けられていてよい。内部流路150は、その内側(符号150で示される円の内部)に液体を通流させることができるように構成されていてよく、好ましくは内部流路150内の圧力を当該液体によって調整することができるように構成されていてよい。この流路120において、生体粒子含有液体は、符号120で示される円と符号150で示される円との間の空間を流れる。
【0109】
内部流路150に液体を通流させて内部流路の圧力を調整することによって、内部流路150から流路120へ液体が供給される。これにより、流路120内の濃度が下がり濃度調整(希釈)する事ができる。
【0110】
流路150は、例えばメンブレンフィルターにより形成されていてよく、特には回収したい生体粒子のサイズよりも小さい孔径を有するメンブレンフィルターにより形成されていてよい。すなわち、流路150の孔径は、外周壁125の孔径よりも小さいことが好ましい。
【0111】
2.第2の実施形態(試料調製システム)
【0112】
本技術は、上記1.において説明した試料調製装置を含む試料調製システムも提供する。当該試料調製システムは、例えば、上記1.の(2)で説明したとおりに構成されうる。
【0113】
例えば、当該試料調製システムは、流路内を流れる生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されている前記流路へと生体粒子含有液体を供給する少なくとも一つのポンプを含んでよい。当該少なくとも一つのポンプは、例えば、上記1.の(2)で説明したP3のように構成されうる。
【0114】
当該試料調製システムは、流路内を流れる生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されている前記流路から生体粒子含有液体を排出する少なくとも一つのポンプを含んでよい。当該少なくとも一つのポンプは、例えば、上記1.の(2)で説明したP4のように構成されうる。
【0115】
例えば、当該試料調製システムは、前記流路が収容されている容器へ、流路120の外部へ移行した成分を受け取る液体を供給する少なくとも一つのポンプを含んでよい。当該少なくとも一つポンプは、例えば、上記1.の(2)で説明したP1のように構成されうる。
【0116】
例えば、当該試料調製システムは、前記流路が収容されている容器から、流路120の外部へ移行した成分を受け取る液体を排出するなくとも一つのポンプを含んでよい。当該少なくとも一つポンプは、例えば、上記1.の(2)で説明したP2のように構成されうる。
【0117】
また、本技術の試料調製システムは、生体粒子含有液体を、当該液体に遠心力が作用するように構成されている前記流路へと供給する流路上に設けられている少なくとも一つのバルブを含みうる。当該少なくとも一つのバルブは、当該供給を制御するものであってよく、特には当該バルブの開閉によって、当該供給が可能又は不可能とされうる。当該少なくとも一つのバルブは、例えば、上記1.の(2)で説明したV1のように構成されうる。
【0118】
また、本技術の試料調製システムは、前記第一アウトレットから出た生体粒子含有液体が、前記第一インレットから再度前記容器内へと入ることができるように構成されていてよい。例えば、本技術の試料調製システムは、前記第一アウトレットから出た生体粒子含有液体を、前記第一インレットから再度前記容器内へと入ることを可能とする循環流路を有していてよい。当該循環流路は、上記1.の(2)において説明したとおりに構成されていてよい。当該循環流路上に、本技術の試料調製システムにより調製された試料(生体粒子含有液体)が回収される回収容器が設けられていてよい。
【0119】
また、本技術の試料調製システムは、当該システムを構成する流路内の液体又は容器内の液体を分析する分析装置を含んでよい。
当該分析装置は、例えば、前記循環流路上のいずれかの位置に設けられていてよく、例えば上記1.の(2)において説明した遠心力が作用するように構成された前記流路を通過した生体粒子含有液体を分析する分析装置であってよい。
また、当該分析装置は、遠心力が作用するように構成された前記流路から外部へと移行した成分を受け取る液体を分析する分析装置であってよい。当該分析装置は、例えば、上記1.の(2)において説明した容器110内の当該液体を分析する分析装置であってよく、又は、流路113を流れる液体若しくは容器131内の液体を分析する分析装置であってもよい。
【0120】
前記分析装置は、液体に含まれる成分の濃度を測定する濃度測定装置であってよく、又は、液体の色を測定する色測定装置であってもよい。前記分析装置による分析結果に応じて、特には前記濃度又は色の測定結果に応じて、前記試料調製システムの動作が制御されてよく、例えば前記試料調製システムによる各種処理(例えば上記1.の(2)において述べた循環工程など)が開始又は終了されてよい。
【0121】
本技術の試料調製システムは、当該システムを構成する各要素の動作を制御する制御部をさらに含みうる。当該制御部は、例えば、上記で述べたポンプ群及び/又はバルブ群の動作を制御しうる。例えば、当該制御部は、所定のプログラムに従って、前記ポンプ群及び/又はバルブ群の動作を制御しうる。
【0122】
また、当該制御部は、前記分析装置による分析結果を受信するように構成されていてよい。当該制御部は、前記分析装置による分析結果に応じて、前記ポンプ群及び/又はバルブ群の動作を制御してよい。例えば、当該制御部は、所定の分析結果を受信したことに応じて、前記ポンプ群のいずれか一つ又は二つ以上の駆動を制御してよく、特には駆動を開始又は停止させうる。また、当該制御部は、所定の分析結果を受信したことに応じて、前記バルブ群のいずれか一つ又は二つ以上の開閉を制御しうる。
【0123】
当該制御部は、情報処理装置(コンピュータ)として構成されてよく、例えば汎用のコンピュータによって当該制御部の機能が実現されうる。
【0124】
なお、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
〔1〕
容器と、
前記容器に収容されている、生体粒子含有液体が流れる流路と、
を含み、
前記流路は、前記生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており、且つ、
前記流路の外周壁は、前記生体粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている、
試料調製装置。
〔2〕
前記流路が螺旋形状を有する、〔1〕に記載の試料調製装置。
〔3〕
前記流路は、1つの軸の周囲を回るようなカーブ形状を有する、〔2〕に記載の試料調製装置。
〔4〕
前記流路が、前記軸の周囲を1回以上回るように形成されている、〔3〕に記載の試料調製装置。
〔5〕
前記流路の外周壁が、所定の曲率を有している、〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載の試料調製装置。
〔6〕
前記流路が円筒形状を有する、〔1〕に記載の試料調製装置。
〔7〕
前記生体粒子含有液体が、前記円筒形状の軸の周囲を回る流れを形成するように構成されている、〔6〕に記載の試料調製装置。
〔8〕
前記流路がU字形状を有する、〔1〕に記載の試料調製装置。
〔9〕
U字形状を有する前記流路を複数含み、当該複数のU字形状流路が互いに接続されて、1筋の流れを形成する、〔8〕に記載の試料調製装置。
〔10〕
前記外周壁が多孔性である、〔1〕~〔9〕のいずれか一つに記載の試料調製装置。
〔11〕
前記外周壁が、前記生体粒子含有液体に含まれる生体粒子の一部を通過させ、残りの生体粒子を通過させない、〔1〕~〔10〕のいずれか一つに記載の試料調製装置。
〔12〕
前記容器は、前記生体粒子含有液体を前記流路へ導入する第一インレットと、前記流路を通過した前記生体粒子含有液体を前記容器の外へ排出する第一アウトレットとを有し、且つ、
前記容器は、前記流路の外部へ移行した前記成分を受け取る液体を前記容器内に導入する第二インレットと、前記液体を前記容器の外へ排出する第二アウトレットとを有する、
〔1〕~〔11〕のいずれか一つに記載の試料調製装置。
〔13〕
前記試料調製装置は、前記第二インレットから導入された前記液体が前記容器内を旋回して流れるように構成されている、〔12〕に記載の試料調製装置。
〔14〕
前記第二インレット及び前記第二アウトレットが、前記容器の中心軸から逸れた位置に向かって開口している、〔12〕又は〔13〕に記載の試料調製装置。
〔15〕
前記第二インレットが、前記第二アウトレットよりも上に配置されている、〔12〕~〔14〕のいずれか一つに記載の試料調製装置。
〔16〕
前記容器は、前記第二インレット及び前記第二アウトレットをそれぞれ複数有する、〔12〕~〔15〕のいずれか一つに記載の試料調製装置。
〔17〕
前記容器と前記流路とのセットを複数有し、
各セットの流路の外周壁から外部へと移行可能な成分のサイズが互いに異なる、
〔1〕~〔16〕のいずれか一つに記載の試料調製装置。
〔18〕
前記第一アウトレットから出た生体粒子含有液体が、前記第一インレットから再度前記容器内へと入ることができるように構成されている、
〔12〕~〔17〕のいずれか一つに記載の試料調製装置。
〔19〕
血液成分を分離するために用いられる、〔1〕~〔18〕のいずれか一つに記載の試料調製装置。
〔20〕
容器と、前記容器に収容されている生体粒子含有液体が流れる流路と、を含み、前記流路は前記生体粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており且つ前記流路の外周壁は前記生体粒子含有液体の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている試料調製装置と;
前記流路を通過した生体粒子含有液体の分析を実行する分析装置と
を含む試料調製システム。
〔21〕
容器と、
前記容器に収容されている、微小粒子含有液体が流れる流路と、
を含み、
前記流路は、前記微小粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており、且つ、
前記流路の外周壁は、前記微小粒子含有液体の少なくとも一部の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている、
試料調製装置。
〔22〕
容器と、前記容器に収容されている微小粒子含有液体が流れる流路と、を含み、前記流路は前記微小粒子含有液体に遠心力が作用するように構成されており且つ前記流路の外周壁は前記微小粒子含有液体の成分が前記流路の外部へと移行できるように構成されている試料調製装置と;
前記流路を通過した微小粒子含有液体の分析を実行する分析装置と
を含む試料調製システム。
【符号の説明】
【0125】
100 試料調製装置
110 容器
120 流路
125 外周壁

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11