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特開2022-37443腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物及びこれを含む飲食品
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  • 特開-腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物及びこれを含む飲食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037443
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物及びこれを含む飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20220302BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220302BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20220302BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20220302BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20220302BHJP
【FI】
A23L33/135
A61P3/02
A61P1/14
A61K35/747
A23K10/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141586
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】507039187
【氏名又は名称】株式会社ニコリオ
(71)【出願人】
【識別番号】505164690
【氏名又は名称】有限会社バイオ研
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中上 元弘
(72)【発明者】
【氏名】横川 剛
(72)【発明者】
【氏名】生天目 由里子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 卓巳
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AB03
2B150AC05
4B018MD86
4B018ME14
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA73
4C087ZC22
4C087ZC61
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腸内における短鎖脂肪酸、特に、酪酸、プロピオン酸、酪酸等の産生を促す効果を有する、新たな機能性素材を提供する。
【解決手段】クレモリス菌を含有する腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物である。この組成物は、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上の腸内産生量を増加させるために用いられてよい。また、腸内細菌叢を改善するために用いられてよい。また、飲食品、飲食品添加用素材、医薬品、医薬品添加用素材、動物飼料、又は動物飼料添加用素材であってよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレモリス菌を含有することを特徴とする腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物。
【請求項2】
前記クレモリス菌は、Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受領番号:NITE ABP-03259)である、請求項1記載の腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物。
【請求項3】
少なくとも、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上の腸内産生量を増加させるために用いられる、請求項1又は2記載の腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物。
【請求項4】
飲食品、飲食品添加用素材、医薬品、医薬品添加用素材、動物飼料、又は動物飼料添加用素材である、請求項1~3のいずれか一項に記載の腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物を含む、飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内における短鎖脂肪酸、特に、酪酸、プロピオン酸、酪酸等の産生を促す効果を有する機能性素材に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸の絨毛組織は上皮細胞で覆われ、絨毛の基底部には陰窩が存在している。陰窩の中には粘膜分泌細胞が存在し、絶えず粘液を製造してこれが上皮細胞を覆い粘膜を保護するとともに糞便の移動を容易にしている。そして大腸の粘膜層の形成には酪酸の存在が不可欠であることが最近の研究で明らかにされてきた。
【0003】
腸内細菌によって産生される短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸等であるが、これらの有機酸は大腸で吸収され宿主の重要なエネルギー源になっている。ブタの場合、吸収されるエネルギーの30%はこれらの有機酸によるという。大腸から吸収された物質は門脈を通して肝臓に運ばれるが、門脈血中の有機酸を分析すると、酢酸とプロピオン酸しか検出されない。末梢血では酢酸のみが検出されるため、プロピオン酸は肝臓において糖新生に利用されていると考えられている。一方、酪酸は、大腸粘膜の再生のためのエネルギー源として直ちに利用される。また、粘膜上皮細胞の増殖のエネルギー源として使われるほかに、上皮細胞の分裂を促進し粘膜の肥厚化に寄与し、更には大腸運動を促進することが報告されている(非特許文献1,2,3参照)。
【0004】
一方、このような短鎖脂肪酸の重要な役割に着眼して、特許文献1には、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)及び/又はビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)の菌体を有効成分とする腸内酪酸濃度上昇促進剤の発明が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、動物の腸内から分離される細菌の死菌体を有効成分として含有することを特徴とする腸内酪酸生成促進剤の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Shimotoyodome,A.,Meguro,S.,Hase,T.,Tokimitsu,I.,Sakata,T.(2000)Short chain fatty acids but not lactate or succinate stimulate mucus release in the rat colon.Comp.Biochem.Physiol.125(4):pp.525-531.
【非特許文献2】Sakata,T.(1997)Influence of short-chain fatty acids on intestinal growth and functions.In:Dietary Fiber in Health and disease(Kritchevsky,D.and Bonfield,C.eds.),pp.191-199.Plenum Press,New York,NY.
【非特許文献3】Yajima,T.(1995)Sensory mechanisms for short-chain fatty acids in the colon.pp.209-221.In:Physiological and clinical aspects of short-chain fatty acids.(Cummings,J.H.,Rombeau,J.L.and Skata,T.eds.),Cambridge University Press,Cambridge,UK.
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-84909号公報
【特許文献2】特開2004-346043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、ラクトバシルス・アシドフィルスやビフィドバクテリウム・ロンガムの菌体を含む飼料をラットに摂取させると、ラットの盲腸内の酪酸濃度が上昇することが記載されているが、酪酸以外の短鎖脂肪酸については明らかにされていない、
【0009】
また、特許文献2では、エンテロコッカス・フェカリスの菌体を餌に配合してブタに給餌すると、盲腸内の酪酸濃度が対照に比べて増加することが記載されているが、酪酸以外の酢酸やプロピオン酸については有意な変化が得られずに、総短鎖脂肪酸濃度の経時的な変化も認められなかったことが記載されている(特許文献2の段落0046)。
【0010】
本発明の目的は、従来技術にかんがみ、腸内における短鎖脂肪酸、特に、酪酸、プロピオン酸、酪酸等の産生を促す効果を有する、新たな機能性素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者らは、種々研究した結果、カスピ海ヨーグルト由来の乳酸菌として知られるクレモリス菌に、腸内における短鎖脂肪酸の産生を促す作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、クレモリス菌を含有することを特徴とする腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物を提供するものである。
【0013】
前記クレモリス菌としては、Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受領番号:NITE ABP-03259)であることが好ましい。
【0014】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、少なくとも、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上の腸内産生量を増加させるために用いることができる。
【0015】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、飲食品、飲食品添加用素材、医薬品、医薬品添加用素材、動物飼料、又は動物飼料添加用素材であることができる。
【0016】
本発明は、別の観点では、上記腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物を含む飲食品を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クレモリス菌を利用して、腸内における短鎖脂肪酸、特に、酪酸、プロピオン酸、酪酸等の産生を促す効果を有する、新たな機能性素材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】試験例1において、クレモリス菌で処理したラット盲腸内容物サンプル中の短鎖脂肪酸濃度を測定した結果を示す図表である。
図2】試験例2において、通常ヨーグルトで使用する菌組成物で処理したラット盲腸内容物サンプル中の短鎖脂肪酸濃度を測定した結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に用いられるクレモリス菌は、カスピ海ヨーグルト由来の乳酸菌として知られ、学名ではLactococcus lactis subsp.cremorisである。例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託されている、Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受領番号:NITE ABP-03259)などが挙げられる。
【0020】
クレモリス菌の培養、菌体の維持等は、様々なの技術によって行うことができる。例えば、乳酸菌の培養に適した培地としては、脱脂粉乳培地が挙げられ、あるいは、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、塩類、ミネラル類等を含む液体培地が挙げられる。市販の培地として「MRSブイヨン MERCK」(商品名、Chemicals社)、「Difco Lactobacilli MRS Broth」(商品名、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)などがあり、そのような市販の培地を用いてもよい。
【0021】
一般に乳酸菌の培養は、制限されないが、例えば、静置で行なうことができる。また、乳酸菌の代謝産物(乳酸等)によるpHの低下を抑制するように、培地にアルカリ剤を添加してpH調整しながら、培養(中和培養)を行ってもよい。その場合、添加するアルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水溶液や、アンモニアなどを用いることができる。培養におけるpHは、pH5.0~7.5の範囲であってよく、あるいはpH6.0~7.0の範囲であってよく、そのpHに調整、維持することが好ましい。pH調整は手動で行ってもよいが、pH自動制御装置(pHスタット)などを利用すれば簡便で正確である。
【0022】
本発明においては、クレモリス菌は、培養液の状態から、クレモリス菌が濃縮された菌体濃縮液を調製してもよく、あるいは、好ましくは賦形剤を加えたうえ凍結乾燥してもよい。菌体濃縮液は、培養液をそのまま濃縮して調製することもできるが、好ましくは、遠心分離やろ過などの手段によって集菌し、この菌体を更に精製水などによって洗浄し、所定の菌体濃度になるように精製水などに懸濁させることによって調製することができる。菌体濃縮液100質量%中のクレモリス菌の菌体の含有量は、乾燥菌体換算で0.1~30質量%の範囲であってよく、0.5~20質量%の範囲であってよく、1~10質量%の範囲であってよい。
【0023】
また、菌体濃縮液には賦形剤を含有せしめてもよい。これによれば、凍結したり、凍結乾燥したりした後にも、水と再構成した後に生きた菌としての性質が維持されやすくなる。また、別の態様として、菌体を粉砕・分散した場合、得られる乳酸菌末の再凝集を防止することができる。賦形剤の含有量としては、乾燥物換算で10~99質量%の範囲であってよく、20~95質量%の範囲であってよく、50~90質量%の範囲であってよい。
【0024】
賦形剤としては、特に限定されず、例えば、デキストリン;マルトデキストリン;キサンタンガム;ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール類;デキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース、ショ糖等の糖類;アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0025】
本発明においては、クレモリス菌は、粉砕・分散の処理を施してもよい。例えば、上記した菌体濃縮液を、攪拌、ミキサー、ホモゲナイザー、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ジェネレーター等の手段を用いて粉砕・分散することができる。
【0026】
本発明に用いるクレモリス菌は、生きた生菌を用いてもよい。その場合、培養した後に、上記した賦形剤を添加したうえ、凍結乾燥して粉体状に調製したものを用いることが好ましい。これによれば、クレモリス菌を、生きたまま、カプセル剤、顆粒、ヨーグルト等の形態と成して、提供するのに都合がよい。
【0027】
一方、クレモリス菌は、死菌体を用いてもよい。例えば、上記した菌体濃縮液を粉砕・分散する工程の前又は後に、菌体濃縮液に加熱処理を施すことができる。更に、上記した菌体濃縮液を粉砕・分散する工程の後に、乾燥粉末化することができる。乾燥粉末化方法としては、凍結乾燥、減圧噴霧乾燥、熱風を用いた噴霧乾燥等の手法が挙げられる。なお、熱風を用いた噴霧乾燥(スプレードライ)を行うことで、通常、乳酸菌は滅失し、死菌体を得ることができる。
【0028】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、上記のようにして調製することができるクレモリス菌又はその処理物を有効成分として用いて、これをヒト又はヒト以外の動物に投与することで、腸内における短鎖脂肪酸の産生を促進するものである。投与方法は、特に制限はないが、例えば、経口的に投与することが好ましい。腸内の短鎖脂肪酸とは、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸等である。本発明の腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、特に、大腸内の細菌叢による酢酸、プロピオン酸、及び/又酪酸の産生を促進することで、酢酸、プロピオン酸、及び/又酪酸の濃度を上昇させると考えられる。
【0029】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、腸内の短鎖脂肪酸を増加させることで、具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸によるミネラルの吸収促進や、酪酸による大腸がん発症抑制の作用効果を得ることができる(下記参考文献1参照)。また、例えば、腸管のバリア機能の向上や、腸管粘膜で制御性T細胞(Treg)への作用により、過剰免疫を抑制することができ、アレルギー症状や感染性腸炎の症状を緩和することができる(下記参考文献2参照)。また、例えば、腸管L細胞に発現し短鎖脂肪酸の受容体として知られるGPR41等を介して、エネルギー消費を高めることができる(下記参考文献2参照)。また、例えば、同じく腸管L細胞に発現し短鎖脂肪酸の受容体として知られるGPR43等を介して、脂肪蓄積を抑制することができる(下記参考文献2参照)。
【0030】
・文献1:原博著、「プレバイオティクスから大腸で産生される短鎖脂肪酸の生理効果」、腸内細菌学雑誌(2002)16:pp.35-42
・文献2:Hidenori Shimizu, Ryuji Ohue-Kitano, Ikuo Kimura「Regulation of host energy metabolism by gut microbiota-derived short-chain fatty acids」Glycative Stress Research 2019; 6 (3): 181-191
【0031】
本発明の別の態様においては、本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、また、例えば、腸内細菌のうちのファーミキューテス属(Firmicutes)に属する微生物の割合を抑えることができる。あるいは、例えば、腸内細菌のうちのバクテロイデテス属(Bacteroidetes)に属する微生物の割合を高めることができる。これにより、ファーミキューテス属(Firmicutes)/バクテロイデテス属(Bacteroidetes)比を減少させて、腸内細菌叢のバランスを整えることができる。
【0032】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物の投与量は、対象者の健康状態や年齢、あるいはどの程度の腸内短鎖脂肪酸の産生促進の作用効果を必要としているかなどに応じて、適宜設定すればよい。典型的には、上記クレモリス菌の菌体又はその処理物の乾燥物換算での摂取量にして、0.001mg~100mg/日/kg体重の範囲であってよく、0.01mg~20mg/日/kg体重の範囲であってよく、0.1mg~10mg/日/kg体重の範囲であってよい。
【0033】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物には、本発明による作用効果を阻害しない範囲であれば、上記クレモリス菌に由来するもの以外の微生物の菌体又はその処理物を含んでいてもよい。例えば、クレモリス菌以外の乳酸菌、ビフィズス菌、枯草菌、酪酸菌、酵母、麹菌、放線菌等が挙げられる。
【0034】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、腸内短鎖脂肪酸産生促進用の飲食品として提供されるものであってもよい。すなわち、上記クレモリス菌の菌体又はその処理物を、そのまま、あるいは他の飲食品用原料を組み合わせて、飲食品と成してもよい。上記クレモリス菌の菌体又はその処理物に組み合わせる飲食品用原料としては、例えば、各種糖質や乳化剤、甘味料、酸味料、果汁、フレーバー等が挙げられる。より具体的には、グルコース、シュークロース、フラクトース、蜂蜜等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット等の糖アルコール、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤が挙げられる。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE等の各種ビタミン類やハーブエキス、穀物成分、野菜成分、乳成分等が挙げられる。
【0035】
飲食品としては、例えば、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープ等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、飲食品の他の例としては、腸内短鎖脂肪酸産生促進用の健康食品、サプリメント、特定保健用食品、ないし機能性表示食品が挙げられ、例えば、錠剤、顆粒、粉末、カプセル、ドリンク、ゼリーなどの形態で提供されてもよい。
【0036】
一方、本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、上記のような飲食品に添加されるものとして利用される、腸内短鎖脂肪酸産生促進用の飲食品添加用素材として提供されてもよい。
【0037】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、腸内短鎖脂肪酸産生促進用の医薬品として提供されてもよい。すなわち、上記クレモリス菌の菌体又はその処理物を、そのまま、あるいは他の医薬用原料と組み合わせて、医薬用の組成物と成してもよい。上記クレモリス菌の菌体又はその処理物に組み合わせる他の医薬用原料に特に制限はなく、必要に応じて、薬学的に許容される基材や担体を添加して、公知の製剤方法によって、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、散剤、液剤、粉末剤、ゼリー状剤、飴状剤等の形態にして、これを経口剤として利用することができる。
【0038】
一方、本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、そのような医薬品に添加されるものとして利用される、腸内短鎖脂肪酸産生促進用の医薬品添加用素材であってもよい。
【0039】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、腸内短鎖脂肪酸産生促進用の動物飼料であってもよい。すなわち、例えば、上記クレモリス菌の菌体又はその処理物を、そのまま、あるいは他の動物飼料用原料と組み合わせて、動物食餌用の組成物と成してもよい。例えば、家畜、競走馬、鑑賞用動物、ペット等、動物用の飼料に利用してもよい。
【0040】
一方、本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物は、そのような動物飼料に添加されるものとして利用される、腸内短鎖脂肪酸産生促進用の動物飼料添加用素材であってもよい。
【0041】
本発明にかかる腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物において、上記菌体又はその処理物の含有量は、各種の形態とした場合に、それが使用される量と有効投与量との関係を勘案して適宜定めればよい。典型的には、上記菌体又はその処理物の乾燥物換算の含有量にして、0.1~100質量%の範囲であってよく、1~50質量%の範囲であってよく、10~30質量%の範囲であってよい。また、菌体数に換算した含有量にして、1×10~1×10cfu/gの範囲であってよく、1×10~5×10cfu/gの範囲であってよく、1×10~3.3×10cfu/gの範囲であってよい。
【実施例0042】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
<試験例1>
ラット盲腸内容物をPBS(-)にて5倍希釈した後、クレモリス菌(Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受領番号:NITE ABP-03259))を終濃度1×10cfu/mLになるよう添加し、嫌気環境で10時間培養後の短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)の濃度を測定した。短鎖脂肪酸の測定は、サンプルを前処理の後、HPLC分析することにより行った。
【0044】
(前処理)
盲腸内容物を0.3mL分取し、0.6mLの蒸留水で懸濁し12%過塩素酸0.09mL加えよく懸濁し氷上で10分間静置した。遠心分離にてタンパク質を沈殿させた後、上清を0.45μmフィルターでろ過し、減圧下で脱気して炭酸ガスを除去したものをサンプルとし5μL分析に供した。
【0045】
(HPLC分析)
・Shim-Pack SCR-102(H)(H型スルホ基、7μm、300mm×8mm、株式会社島津製作所)
・カラム温度:45℃
・移動相:5mMp-トルエンスルホン酸を含有するHPLC用蒸留水
・ポストカラム反応相:5mMp-トルエンスルホン酸、20mMBis-tris、100μMEDTAを含有するHPLC用蒸留水
・検出器:Waters431電気伝導度計(検出ベース電圧:2000mV、検出感度:0.01)
・システムコントローラー:CBM-20A(株式会社島津製作所)
・成分同定:CBM-20A内臓データモジュール
【0046】
【表1】
【0047】
その結果、表1及び図1に示されるように、クレモリス菌で処理したラット盲腸内容物サンプルでは、添加しないコントロールに比べて、短鎖脂肪酸量が増加した。
【0048】
<試験例2>
通常ヨーグルトで使用する複合菌組成物(Streptococcus thermophilus、及びLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusを含有)について、ラット盲腸内容物のPBS(-)による5倍希釈液に終濃度1×10cfu/mLになるよう添加し、試験例1と同様に試験した。
【0049】
【表2】
【0050】
その結果、表2及び図2に示されるように、通用ヨーグルトで使用する菌組成物で処理したラット盲腸内容物サンプルでは、添加しないコントロールに比べて、短鎖脂肪酸量の増加はみられなかった。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレモリス菌を含有することを特徴とする腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物。
【請求項2】
前記クレモリス菌は、Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受領番号:NITEP-03259)である、請求項1記載の腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物。
【請求項3】
少なくとも、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上の腸内産生量を増加させるために用いられる、請求項1又は2記載の腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物。
【請求項4】
飲食品、飲食品添加用素材、医薬品、医薬品添加用素材、動物飼料、又は動物飼料添加用素材である、請求項1~3のいずれか一項に記載の腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の腸内短鎖脂肪酸産生促進用組成物を含む、飲食品。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、腸内における短鎖脂肪酸、特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の産生を促す効果を有する機能性素材に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の目的は、従来技術にかんがみ、腸内における短鎖脂肪酸、特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の産生を促す効果を有する、新たな機能性素材を提供することにある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
前記クレモリス菌としては、Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受領番号:NITEP-03259)であることが好ましい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明によれば、クレモリス菌を利用して、腸内における短鎖脂肪酸、特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の産生を促す効果を有する、新たな機能性素材を提供することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
本発明に用いられるクレモリス菌は、カスピ海ヨーグルト由来の乳酸菌として知られ、学名ではLactococcus lactis subsp.cremorisである。例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託されている、Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受領番号:NITEP-03259)などが挙げられる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
<試験例1>
ラット盲腸内容物をPBS(-)にて5倍希釈した後、クレモリス菌(Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受領番号:NITEP-03259))を終濃度1×10cfu/mLになるよう添加し、嫌気環境で10時間培養後の短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)の濃度を測定した。短鎖脂肪酸の測定は、サンプルを前処理の後、HPLC分析することにより行った。